伊世賀美隧道
伊世賀美隧道(いせがみずいどう)は、愛知県豊田市の伊勢神峠にあるトンネル。通称として旧伊勢神トンネルとも呼ばれる。
概要
[編集]1897年(明治30年)11月竣工[1]。開通当時の荷物輸送の主役であった飯田街道[注釈 1]の伊勢神峠に建設された全長308メートル、高さ3.3メートル[注釈 2]、幅員3.15メートルのトンネルで[2]、標高705メートルに位置する[3]。断面の大きさは軍隊の大砲が通過できることを基準としたという[1]。また、当初はレンガ造のトンネルとして設計されたが、現地の地層や湧水による崩落の可能性から、石造のトンネルに変更された[3]。
トンネルは花崗岩造でルスチカ積み[注釈 3]の付柱に迫石を二重の馬蹄形に組み上げた断面形状をしている[4] [5]。2000年(平成12年)9月26日には国の登録有形文化財となった[5]。
このトンネルの完成によって荷馬車の往来が可能となったが[2]、モータリゼーションが進んだ昭和30年代には荷物を満載したトラックがトンネルを通過できず、現地で一旦荷を下ろしてから通り抜けたり、定期バスが錘によって車高を低くしてから通ることもあった[6][注釈 4]。
1960年(昭和35年)に現在の伊勢神トンネル(当初は有料道路であった。1971年(昭和46年)から無料開放。延長1,245メートル)が開通したため[7]この古いトンネルはほとんど使われていない。なお、トンネル東側には1917年(大正6年)に作られた旧 郡界橋(コンクリートアーチ橋)がある。
2022年(令和4年)に行われる世界ラリー選手権ラリージャパン2022において、本隧道を含む区間がSS(スペシャルステージ)2と5「伊勢神SS “Isegami's Tunnel”」として指定された。ところが「未舗装路」と「トンネル」という悪条件が重なり、かなりリスキーなコースとなった。特に後続車になればなるほど前走者の巻き上げた砂塵によって視界不良となる中で走らざるを得ず[8]、さらにはこの狭さの中で車体自体も左右に振られながら走っていく状況[9]へと追い込まれた。
2023年(令和5年)も引き続き世界ラリー選手権ラリージャパン2023のSS区間として設定された。前年の問題を解決するため、舗装工事が行われた[10]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 愛知の歴史街道、P.242
- ^ a b 調査報告書 VIII、P.28
- ^ a b “近代化遺産調査報告 伊世賀美隧道と大正時代の鉄筋コンクリート(RC)アーチ橋”. 豊田市近代の産業とくらし発見館 (2011年12月9日). 2012年2月24日閲覧。
- ^ “伊世賀美隧道”. 文化財ナビ愛知 (2011年5月6日). 2012年2月25日閲覧。
- ^ a b “伊世賀美隧道”. 文化遺産オンライン. 2012年2月25日閲覧。
- ^ 愛知の歴史街道、P.243~244
- ^ 愛知の歴史街道、P.244
- ^ ラリージャパン序盤の肝になった? “名所”旧伊勢神トンネルは超難関で視界不良も「リスクを負う人負わない人で差が出た」 2022/11/11 14:54、jp.motorsport.com
- ^ 車載映像 (車体:ヤリス・ロバンペラ号) - J SPORTS公式twitter、2022年11月11日
- ^ “ジャパン名物・旧伊勢神トンネルの舗装が完了 WRC速報!! ラリーXモバイル / RALLY-X mobile(PC版)”. WRC速報!! ラリーXモバイル / RALLY-X mobile(PC版). 2023年11月17日閲覧。
参考文献
[編集]- 愛知県教育委員会編『愛知県文化財調査報告書第六三集 平成四年度 愛知県歴史の道調査報告書 VIII -飯田街道・足助街道-』文化財図書普及会 発行、1993年
- 『愛知の歴史街道』愛知古道研究会、1997年
外部リンク
[編集]座標: 北緯35度10分19.9秒 東経137度25分46.86秒 / 北緯35.172194度 東経137.4296833度