歌ってみた
歌ってみた(うたってみた)とは、SNSや動画共有サイト上にて自ら歌ってカバーした動画のジャンルを表す用語。歌ではなく楽器でカバーする場合は、「演奏してみた」「弾いてみた」などとも呼ばれる。
概要
[編集]自分の歌声を録音または撮影し、SNSやインターネット上に配信することである[1]。「歌ってみた」を配信した動画のことを「歌ってみた動画」という。
日本では、2000年代中盤にニコニコ動画やYouTubeといった動画投稿サイトが誕生したことにより、サイト上に既存の楽曲をカバーした動画を投稿するアマチュアシンガーが登場し、動画投稿者を当初「歌手ではない」「歌手ほど大それたものではない」という意味合いで「歌い手」と呼ぶ文化が定着していった[2]。
「歌ってみた」という表現は、2007年5月にこの単語がニコニコ動画内の動画ジャンルを表すカテゴリタグに採用されたことが由来となっている(カテゴリタグとしては2019年に廃止)。
一般的にはアマチュアシンガーによって使われる用語であるが、プロのシンガーが自身または他アーティストの曲をネット上でカバーする「歌ってみた動画」が注目されることもある[3]。また、著名なレーベルからメジャーデビューし音楽活動を行う歌い手も多数存在する。
歌ってみたと著作権
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音楽作品には、著作権の他に、著作隣接権というものが存在する。著作権は創作をした人に、著作隣接権は演奏をした人などに与えられる権利である。そのため、カラオケの音源などを無断で使用して歌ってみた動画を配信すると、著作隣接権の侵害となる。また、音楽家だけでなく、絵師、動画師、MIX師、エンコード師なども著作権を所有しているため、無断でイラストや動画を使用して歌ってみた動画を配信することも著作権の侵害となる[4]。
JASRACやNexTone等の著作権管理会社と包括利用許諾契約を結んでいる、Youtubeやニコニコ動画、Tiktokに代表される、ストリーミング配信を提供するサイトではサイトが著作権料を支払うことで管理楽曲の演奏や歌唱に関してユーザーは著作権料の支払いを免除されている[1]。ただし原曲の無許可配信は違反である。
ボカロと「歌ってみた」の関係
[編集]2007年8月にVOCALOIDライブラリの初音ミクが登場して以降は、「ボカロP」が制作したボカロ曲を二次創作としてカバーし活動するアマチュアシンガーが増加した。とくに2007年12月にryoがニコニコ動画に投稿した楽曲『メルト』は、halyosyやガゼルなど当時活動していた多数の歌い手にカバーされ、「歌ってみた」の人気を勢いづけるきっかけとなった[5]。VOCALOID文化とともに、それを歌う「歌い手」文化が相互に作用し、ニコニコ動画やYouTubeで人気ジャンルとして成長していった[2][6]。
「歌ってみた」動画の原曲にボーカロイド曲が採用されることが多い理由としては、複雑な構成を持つボーカロイド曲を歌うことで歌い手の歌唱力を披露できることや、ボーカロイド曲の制作者がカラオケ音源をピアプロなどのCGM支援サイト上に公開しており動画制作が容易なことなどが挙げられる[2][7]。
歌い手
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前述の通り「歌ってみた」を中心に活躍するアマチュア歌手は「歌い手」と呼ばれており、歌い手は既存の楽曲やボーカロイドのカバーを行っていた。 また歌い手が集まった「歌い手グループ」も登場した。
しかしながらその後、歌い手がオリジナル曲も出すようになることで歌い手とネットシンガーの違いは小さくなっていき[8][9]、2020年代にはオリジナル曲でデビューする歌い手グループも登場している[10]。
歌い手をテーマとした作品
[編集]- 一般漫画
- れぇ『うちの旦那は歌い手です。』 PHP研究所 2013年4月10日[12] ISBN 978-4569810843
- 矢田恵梨子『茜色のコンポーザー』→『アカネノネ』 月刊!スピリッツ→週刊ビッグコミックスピリッツ連載[13] 2022年〜2024年
- むぐら『escape into the light』 まんがタイムきららキャラット連載[14] 2023年〜
- こきち『いれいすハウスへようこそ!~個性バラバラな歌い手が一緒に住むことになった件~』 りぼん連載 2024年〜[15]
- 小説
- *あいら*『ウタイテ!』 野いちごジュニア文庫
脚注
[編集]- ^ “「歌ってみた」はデビューの近道?歌唱力に自信があるなら動画配信してみよう♪”. ミュージックプラネットブログ (2019年6月28日). 2020年6月17日閲覧。
- ^ a b c “「小さな恋のうた」は誰の唄か-SNS時代の若者の音楽消費文化について考える”. ニッセイ基礎研究所. 2021年5月26日閲覧。
- ^ 広瀬香美「◯◯歌ってみた」シリーズ 大人気となった秘密は NEWSポストセブン
- ^ “【宇宙一わかりやすい!!】歌ってみたと著作権についてまとめてみた | 歌い手部”. utaitebu.com (2019年12月10日). 2020年6月17日閲覧。
- ^ “「メルト」10周年記念リミックスがこんなにもエモい理由”. KAI-YOU.net | POP is Here .. 2022年9月15日閲覧。
- ^ “この10年間で“歌い手”という存在はどう変わったのか 歌い手「そらる」に聞く“歌ってみた”の可能性”. ねとらぼ. 2021年5月26日閲覧。
- ^ “piapro(ピアプロ)|はじめにお読みください”. piapro.jp. 2023年12月23日閲覧。
- ^ 掘れば掘るほどいい曲が盛りだくさん! アニソンシーンでも勢いを増す「歌い手」の魅力とは?【歌い手を知ろう!・連載第1回】 アニメイト 2021年12月18日
- ^ 歌い手とは?歌手との違いも徹底解説!【2024年最新】 トランス 2024年11月11日
- ^ 大手企業を退職し、無名の歌い手へ――急成長する歌い手グループ「いれいす」ないこ、「仕事を辞めても人生は終わらない」 ITmedia 2023年4月25日
- ^ TVアニメ「UniteUp!」歌い手出身のメンバーたちとアイドルを目指すPV第1弾公開 ナタリー 2022年11月5日
- ^ 「歌ってみた」動画投稿に命を燃やす“旦那くん”、それを見守る”嫁”-話題のWeb漫画が書籍化『うちの旦那は歌い手です。』 おたくま経済新聞 2013年4月10日
- ^ 凡才ボカロPが運命の歌い手に出会う、矢田恵梨子「アカネノネ」1巻 ナタリー 2022年8月30日
- ^ わがまま歌姫を復活させるため陰キャファンがんばる「escape into the light」1巻 ナタリー 2024年3月27日
- ^ 歌い手グループ・いれいす題材の漫画『りぼん』で連載開始 作者はこきち氏 オリコン 2024年4月3日
- ^ 2015年11月23日 アキバBlog