歴史の起原と目標
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歴史の起原と目標(Vom Ursprung und Ziel der Geschichte)はドイツの実存主義哲学者で精神科医のカール・ヤスパースが1949年に刊行し、「枢軸時代」の観点を提示して世界史の再解釈をほどこし、新しい世界史像を提唱した哲学書。重田英世による日本語訳がある。
大まかな構成
[編集]従来までの世界史を扱った第一部、現在と未来について論じた第二部、歴史の意味について論じた第三部の3部構成になっている。
章・節の構成
[編集]第一部 世界史
[編集]- 緒論 世界史の構造
- 第一章 枢軸時代
- a 枢軸時代の輪郭
- b 枢軸時代という観点から構想された世界史の構造
- c 枢軸時代という提言の検討
- 1 この事実は存在したのか?
- 2 いかなるたぐいの平行論が主張されているのか?
- 3 この事実は何に起因するのか?
- 4 枢軸時代の意義の問題
- 第二章 世界史の図式
- 第三章 先史時代
- a 歴史と先史
- b 先史への態度
- c 先史時代の時間的図式
- d 先史時代に何が起こったのか?
- 1 人間の生物学的諸性質
- 2 歴史的な獲得
- e 先史全体としての様相
- f 全人間の同属性の問題
- 第四章 古代史上の高度文化
- a 概観
- b いかなる出来事が歴史を準備したか?
- c 古代高度文化の共通性と相違性
- 第五章 枢軸時代とその結果
- a 枢軸時代による世界史の構成
- b 破開以後の世界史
- c インド・ゲルマン民族の意義
- d 西洋の歴史
- 1 全体としてみた様相
- 2 キリスト教的枢軸の意義
- 3 西洋における教養の連続性
- 第六章 西洋の特異性
- 第七章 東洋(オリエント)と西洋(オクシデント)
- 第八章 再論 世界史の図式
第二部 現在と未来
[編集]- 第一章 本質的に新たなもの 科学と技術
- 緒論
- Ⅰ 近代科学
- a 近代科学の特性
- b 近代科学の由来
- c 近代科学の課題と逸脱
- 近代技術
- a 技術の本質
- 1 技術の定義
- 2 技術史上の大きな断層
- b 労働の本質
- 1 労働の定義
- 2 近代技術の断層以後の労働
- c 労働と技術の評価
- 労働の評価
- 近代技術の評価
- 1 自然からの疎外と自然への新たな接近
- 2 技術の限界の誤認
- 3 技術の魔性の認知
- a 技術の本質
- 第二章 現代世界の直面する状況
- 緒論
- a 現代の情勢の特徴
- 1 大衆が生起の決定的因子となる
- 2 伝統的価値の崩壊(信仰の喪失)
- b 現代の情勢の由来
- c 総括
- a 現代の情勢の特徴
- 第三章 未来の問題
- Ⅰ 目標、すなわち自由
- a 自由の哲学的概念
- b 権力と政治的自由
- Ⅱ 基本的傾向
- a 社会主義
- 1 社会主義の源泉と概念
- 2 権力
- 3 計画化と全体計画化
- 4 経済構造の未来像、自由競争か計画経済か?
- 5 計画化の手段、すなわち官僚制
- 6 有意義な計画化の限界
- 7 社会主義と全体計画化
- 8 全体計画の動機と全体計画化の克服
- b 世界の統一
- 緒論 枢軸時代末期への史的類似
- 1 世界帝国もしくは世界秩序
- 2 強国の政治的支配
- 3 世界秩序への途上における危険
- 4 世界秩序の可能性に反対する思想
- 5 世界秩序の理念
- c 信仰
- 1 信仰とニヒリズム
- 2 現代の情勢の展望
- 3 永遠の信仰の基本的範疇
- 4 未来における信仰
- a 社会主義
第三部 歴史の意味
[編集]- 緒論 歴史的考察の意義
- 第一章 歴史の限界
- a 自然と歴史
- b 遺伝と伝統
- c 歴史と宇宙
- 第二章 歴史の基本的構造
- a 一般者と個体
- b 歴史の過渡的存在
- 第三章 歴史の統一性
- 緒論
- a 統一を暗示する諸事実
- 1 人間本性の統一性
- 2 普遍的なもの
- 3 進歩
- 4 空間と時間における統一
- 5 幾多の特殊な統一
- b 意味と目標による統一
- c 全体的思惟にとっての統一
- 総括
- 第四章 現代の歴史的意義
- a 研究方法の多面性と厳密性
- b 全体思惟の克服
- c 単なる審美的考察の克服
- d 人類の統一
- e 歴史と現在はわれわれにとって不可分となる
- 第五章 歴史の克服
日本語訳
[編集]- カール・ヤスパース 『ヤスパース選集Ⅸ 歴史の起原と目標』 Vom Ursprung und Ziel der Geschichte 重田英世訳、理想社、1964
- 『世界の大思想 40 ヤスパース(歴史の起原と目標、理性と実存、哲学の小さな学校)』 重田英世ほか訳、河出書房新社、1972。ワイド版2005