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池袋暴走事故 (2014年)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
池袋暴走事故
場所 日本の旗 日本東京都豊島区南池袋1丁目
池袋駅西口付近の路上
日付 2014年6月24日
午後7時55分頃
死亡者 1人
負傷者 6人
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池袋暴走事故(いけぶくろぼうそうじこ)とは、2014年(平成26年)6月24日東京都豊島区南池袋で発生した交通事故脱法ドラッグ(危険ドラッグ)を吸った男(当時37歳)の運転する乗用車が歩道を暴走、男女7人を死傷させた[1]

「脱法ドラッグ」の危険性が強く認知され、「危険ドラッグ」の呼称が生まれるきっかけとなった[1]

概要

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2014年(平成26年)6月24日午後7時55分頃、池袋駅西口付近の路上で、暴走したRV日産・エクストレイル)が歩行者に突っ込み次々にはねた。これにより中国人の飲食店店員の女性が死亡[2]、6人が重軽傷を負った。RVを暴走させた男は脱法ハーブを吸った直後に運転し、意識が朦朧とした状態で事故を起こした[3]。男は自動車運転処罰法違反で現行犯逮捕され、また逮捕時にはよだれを垂らしていた[4][5]

捜査の結果、男の車内で発見された植物片から合成カンナビノイドの一種である5F-AMB英語版AB-CHMINACA英語版が検出された[6][7]。これらは当時は法律の規制にかからない「脱法ドラッグ」だったが、この事件が契機となって同年7月15日に指定薬物に指定する省令が交付され、7月25日に施行された[8]

影響

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東京都知事の舛添要一6月30日の定例会見で、取り締まりを強化する考えを示した[9]。豊島区では7月4日に区議会定例会で「違法ドラッグ・脱法ドラッグ撲滅都市宣言」が全会一致で可決された。この宣言では、違法ドラッグ・脱法ドラッグを許さないと明記し、このような事故を二度と繰り返さないという意思が表明された[10][11]7月5日には事故現場の近くで違法ドラッグの撲滅を訴える集会が行われ、約1000人の参加者が集まった。集会には厚生労働大臣田村憲久も参加し、死亡した女性を悼み、献花が行われ、道行く人にも違法ドラッグの撲滅が呼びかけられた[12][13]

危険ドラッグについて、以前は「脱法ドラッグ」と呼ばれていたが、脱法ドラッグの危険性がこの事故で大きく取り上げられ、危険ドラッグへと呼称が改められるきっかけとなったといわれている[14]。また事故後、受けて国の法改正だけでなく独自に条例を制定する自治体も増え、都内の危険ドラッグ販売店の数は、2014年7月の時点では68店舗あったが、2015年6月24日現在は2店舗に減少した(ただし、警視庁は「『合法ハーブ』と称してインターネ­ットを通じて販売する店があり、危険ドラッグの乱用者は後を絶たない」と述べている)[15]

裁判

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男は2003年11月25日、貸金業法違反(無登録営業)と出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)違反(高金利)容疑で逮捕されたことがあった[16]

男は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)違反の罪で起訴され、男は被告人質問で「事件前に吸ったドラッグは初めて買った種類のもので、意識を失うような効果があるとは考えていなかった」と主張、弁護側も2015年11月20日の論告求刑公判で、「被告はドラッグの効果について認識していなかった。初めて購入したものなので試しに車の中で2、3口吸ったら気分が悪くなったので、ブレーキを踏み込んだ。被告人は周囲からは『温厚で優しく愛される人物』と評価されている」と主張し、被害者およびその遺族全員と示談が成立していることも挙げ、情状酌量を求めた。

東京地方検察庁は同日、「過去に一緒に危険ドラッグを吸った友人が、気分が悪くなる姿を見たことがあり、近年はニュースなどで危険ドラッグによる事故が何度も報じられていることからも、吸引すれば運転に支障が出ることを知らなかったとは、到底考えられない」「強い常習性があり、同様の事故が今後再発しないためにも、厳しい処罰が必要」と主張し、示談についても「損害保険会社の努力だ」と一蹴、懲役10年を求刑した。男は「私の浅はかな行動で被害を与えてしまったことは申し訳なく思います。深く反省し、心よりお詫び申し上げます」と謝罪[17][4]

2016年1月15日、東京地方裁判所は「制御を失った車は走る凶器と化した。極めて危険で悪質な犯行だ」と指摘、懲役8年の判決を下した[18]。2016年6月8日、東京高等裁判所は地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。

出典

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以下の出典において、記事名に実名が使われている場合、この箇所を伏字とする

  1. ^ a b 産経新聞』2014年11月23日東京朝刊19頁「【用語解説】池袋駅前7人死傷暴走事故」(産経新聞東京本社
  2. ^ “池袋暴走事故、死亡は中国籍の女性店員”. 日本経済新聞. (2014年6月26日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2604F_W4A620C1CC1000/ 
  3. ^ “池袋事故:駅近くの歩道に車突っ込む 1人死亡6人けが”. 毎日新聞. オリジナルの2014年6月26日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140626031118/http://mainichi.jp/select/news/20140625k0000m040144000c.html 
  4. ^ a b 池袋・危険ドラッグ暴走事故 検察「厳罰求刑と被告糾弾」の真意東スポWeb2015年11月22日7時0分配信(2015年12月9日閲覧)
  5. ^ LINEニュース(2015年12月9日閲覧)
  6. ^ 「池袋暴走 車内の植物片に大麻に似た作用、警視庁検出」、日本経済新聞2014年7月11日
  7. ^ 2014年池袋暴走事件、脱法ドラッグ中に新種の合成カンナビノイド(2014/07/12 03:44)、リキッド通販ショップ
  8. ^ 新たに2物質を指定薬物に指定する省令を公布しました厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課、2014年7月15日2017年1月17日閲覧)
  9. ^ 舛添知事 池袋死傷事故受け、取り締まり強化する考えTOKYO MX公式YouTubeチャンネル2014年6月30日公開(2015年12月9日閲覧)
  10. ^ “脱法ドラッグ撲滅宣言”. 読売新聞. http://www.yomiuri.co.jp/local/tokyo23/news/20140705-OYTNT50048.html [リンク切れ]
  11. ^ 豊島区議会「違法ドラッグ・脱法ドラッグ撲滅都市宣言」を可決”. 豊島区役所. 2015年8月21日閲覧。
  12. ^ ““脱法ドラッグ撲滅”訴えパレード 豊島区”. 日テレNEWS24. https://web.archive.org/web/20140714214226/http://news24.jp/articles/2014/07/05/07254432.html 
  13. ^ “「脱法ドラッグ許さない」 東京・池袋で撲滅集会”. 日本経済新聞. 共同通信. (2015年7月5日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0502C_V00C14A7CC1000/ 2015年8月21日閲覧。 
  14. ^ “「脱法ドラッグ」改め「危険ドラッグ」に 新呼称発表”. 日本経済新聞. (2014年7月22日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG22012_S4A720C1CR0000/ 2015年7月31日閲覧。 
  15. ^ 危険ドラッグ撲滅への対策は? 池袋暴走事故から1年TOKYO MX公式YouTubeチャンネル2015年6月24日公開(2015年12月9日閲覧)
  16. ^ ◯◯容疑者の素顔とは-池袋脱法ハーブ車暴走事件日刊時事ニュース2014年6月25日15時24分公開(2015年12月9日閲覧)
  17. ^ ◯◯被告に懲役10年求刑 危険ハーブ吸引し自動車運転、8人を死傷スポーツ報知2015年11月20日15時28分配信(2015年12月9日閲覧)
  18. ^ 池袋危険ドラッグ暴走懲役8年テレビ東京系列(2016年1月15日)2016年1月15日閲覧。

関連項目

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