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沖ノ鳥島港湾工事事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
沖ノ鳥島港湾工事事故
日付 2014年3月30日7時30分頃[1]
概要 設置工事中の桟橋が転覆して投げ出された作業員16名のうち7名が死亡し、4名が負傷した
原因 海上に浮かべた重さ約700トンの桟橋を曳航する際に作用する外力を正確に把握してバランスが崩れても復元するように設計することを怠った
死亡者 7人
負傷者 4人
被害者 作業員
容疑 業務上過失致死傷
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沖ノ鳥島港湾工事事故(おきのとりしまこうわんこうじじこ)は、2014年3月30日に、東京都小笠原村沖ノ鳥島で発生した港湾工事事故

概要[編集]

小さな岩礁である沖ノ鳥島を、国際的に排他的経済水域(Exclusive Economic Zone、略称:EEZ)や大陸棚の基点とできる「島」と主張するために、海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)第121条 第3項の「人間の居住又は独自の経済的生活を維持」ができているとの条件をみたすため、周辺海域からの開発採取した資源の一時貯蔵や荒天時の船舶の係留を目的として4つの桟橋をつなげた港湾係留施設の建設工事が進められていた[2]。計画の存在自体は知られていたが、中国など外国の反発を懸念して工事実施自体は秘密工事として進められていた[3]

沖ノ鳥島において五洋建設が請け負った港湾整備事業において、長さ30メートル、幅20メートル、高さ5メートルの中央桟橋を、運搬用の台船を沈めて桟橋を浮かせた後、設置場所まで曳航する途中で桟橋がひっくり返り、作業員16人が投げ出された[2]。事故当日に5人の死亡、2人の行方不明、4人の軽傷が確認された[4]。行方不明になっていた2人も後に遺体で発見され、この事故による死者数は計7人となった[5]

国土交通省による7月2日の中間報告によれば、桟橋の補強などにより重量が設計よりも増したうえ、もともと桟橋上にあったクレーンの設置場所が中心からずれていて不安定になったことが、事故の原因となった[6]

2019年12月26日、横浜海上保安部などは、工事を受注した共同企業体の設計担当だった男性ら2名を業務上過失致死傷の容疑で東京地方検察庁書類送検し、「容疑者の2名は、海上に浮かべた重さ約700トンの桟橋を曳航する際に作用する外力を正確に把握してバランスが崩れても復元するように設計することを怠って転覆を招いた」という内容の発表を行った。書類送検された2名は、一般財団法人港湾空港総合技術センターの元職員の男性と、新日鉄住金エンジニアリング(現・日鉄エンジニアリング)の男性社員である。両名は桟橋の設計や構造の検討を担当した。なお、関東地方整備局が設置した「原因究明・再発防止検討委員会」は、「桟橋の重量が設計よりも増加して不安定になり、搭載していたクレーンの位置がずれたことなどが影響し、大きく揺れて転覆につながった」という内容の報告をしている[7][8]

現在は、2029年度完成を目指して、やはり4つの桟橋と荷捌き施設を備えた、あらたな港湾施設工事が行われている[9]

脚注[編集]

注釈・出典[編集]

  1. ^ 沖ノ鳥島工事事故報告 関東地方整備局港湾空港部
  2. ^ a b 沖ノ鳥島で桟橋転覆、5人死亡2人不明 設置作業中 - 日本経済新聞”. 日本経済新聞社. 2024年6月23日閲覧。
  3. ^ 沖ノ鳥島桟橋工事は「極秘計画」だった 事故の結果、中国、韓国の反発招く可能性も”. J-CAST ニュース. 株式会社ジェイ・キャスト. 2024年6月23日閲覧。
  4. ^ “沖ノ鳥島で事故、5人死亡・2人不明 桟橋の工事現場”. 朝日新聞. (2014年3月30日). オリジナルの2014年3月30日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/zhDEb 2015年9月9日閲覧。 
  5. ^ “最後の1人か、遺体発見 沖ノ鳥島事故”. 産経新聞. (2014年4月20日). オリジナルの2014年4月20日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140420205334/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140420/dst14042022240007-n1.htm 2015年9月9日閲覧。 
  6. ^ “補強で重量増やクレーンずれ不安定に 沖ノ鳥島の桟橋転覆”. 日本経済新聞. (2014年7月2日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG02014_S4A700C1CR0000/ 2015年9月9日閲覧。 
  7. ^ 日本経済新聞(2019年12月26日)「沖ノ鳥島事故で書類送検 11人死傷、設計担当者ら
  8. ^ 朝日新聞(2019年12月26日)「沖ノ鳥島の桟橋事故、設計者を書類送検 業過致死傷容疑
  9. ^ 日本最南端・沖ノ鳥島で「大型船の直接係留」が可能に!? 活動拠点整備に今年度88億円”. 乗りものニュース. 株式会社メディア・ヴァーグ. 2024年6月23日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]