涵養
水文学において涵養(かんよう)、または地下水涵養[1]は、地表水(降水を主としてほかにも、湖沼水・河川水、貯水池・雨水浸透ますなどの水、その他)が地下浸透して帯水層に水が供給されること[2][1][2]。その供給源を涵養源[3]、供給元となっている河川域を涵養域(英語 recharge area)[4]という。
対義語としては「流出」あるいは「湧出」を用いる[2]。涵養の起こる場所は「涵養域(かんよういき)」といい[2]、対して、流出・湧出の起こる場所は「流出域」もしくは「湧出域」という[2]。こちらの語意でも用いるのは日本語だけで[要出典]、中国語では「地下水補給」などという。現代日本語の公文書等では「涵」の字を「かん」とし混ぜ書きすることがある(用例:水源かん養保安林)。英語では "groundwater recharge[1]" などという。
河川や湖沼といった地表水・表流水に水が加わってもそれを「涵養」とは呼ばない。
語源
[編集]一般に、自然に水が沁み込むのと同じように、無理をしないで少しずつ教え養うことを涵養と言う[5]。「涵」の字義は「ひたす(浸す)」[6]。初出は『陳書 沈炯伝』真愚稿(1422年頃か)[7]。用例を挙げるならば、「徳性を涵養する[6]」「読書力を涵養する[8]」。今でも用いているのは日本語だけで、おおもとの中国語ではこの熟字をこの語意では用いない[要出典]。なお、現代日本語において、「涵」の字は常用漢字表外字のため、公文書等では交ぜ書きで「かん養」と表記する。
人工的涵養
[編集]帯水層への自然状態での涵養量が少なく、地盤沈下や、河川基底流量減少、湧水枯渇などの対策を行うため、人為的に帯水層への涵養を行うことがある。
人為的な涵養方法は、以下の方法がある。
- 涵養井(かんようせい、Recharge well)または注入井(ちゅうにゅうせい、Injection well)
- 休耕田・農閑期・非灌漑期の水田の湛水
- 涵養される量は土壌の浸透能によって制限されるため、長期間、広い土壌面積に対して水面を形成しておくことが良いとされる。休耕田に水を溜めることで、自然の降雨と同じように涵養できる。
涵養量の推定
[編集]直接測定することができないため、地表の水量の時間変化を測定し、その量から蒸発散量を差し引くことで推定している。
脚注
[編集]- ^ a b c “地下水涵養”. EICネット(公式ウェブサイト). 一般財団法人 環境イノベーション情報機構 (2003年9月12日作成、2015年1月22日更新). 2019年5月15日閲覧。
- ^ a b c d e 内閣官房 内閣広報室. “地下水用語集(立ち上げ段階版)” (PDF). 公式ウェブサイト. 首相官邸. 2019年5月15日閲覧。※p.11(コマ番号では18/43)
- ^ くらしと農業用水 農業用水の多面的役割 9.水源かん養
- ^ 『自然地理学事典』p.162
- ^ “涵養”. コトバンク. 2019年5月15日閲覧。
- ^ a b “涵養”. 三省堂『大辞林』第3版. コトバンク. 2019年5月15日閲覧。
- ^ “涵養”. 小学館『精選版 日本国語大辞典』. コトバンク. 2019年5月15日閲覧。
- ^ “涵養”. 小学館『デジタル大辞泉』. コトバンク. 2019年5月15日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 涵養(かんよう)活動 - サントリーのエコ活