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演奏会用アレグロ (エルガー)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

演奏会用アレグロConcert AllegroOp. 46は、エドワード・エルガー1901年に作曲したピアノ独奏曲。ピアニストファニー・デイヴィスの要望を受けて書かれた[1]、エルガー唯一の演奏会用ピアノ作品である[2]

演奏時間は約10分。調性はハ長調[3]

概要

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エルガーはピアノという楽器をさほど好んでいなかった。レパートリーに新しい曲を加えたいというファニー・デイヴィスからの繰り返しの懇願に応え、デュッセルドルフにおけるオラトリオゲロンティアスの夢』の初演準備に忙しい最中、彼はしぶしぶ作曲を行うことになった[4]。曲は書きはじめから一気に書き上げられ、事実、楽曲には性急な作曲の跡がいくつか残されている[5]。作曲途中でエルガーはデイヴィスに助言を仰いでおり、彼女は「謹んで、F.D.」という署名とともに数多くの改善提案を行った[3]。エルガーはこれらのアイデアの大半を採用した[6]。完成された曲は彼女に献呈されている。

デイヴィスは1901年12月2日ロンドンのセント・ジェームズ・ホールにおいて催された「パーセルからエルガーへ」と題した演奏会で曲を初演した[3]タイムズ紙の批評家は曲を「バッハリストの結婚のようである」と評している[2][注 1]。初演については「説得力がなく胡散臭い」ものだったとされており、ある記者はデイヴィスが作品に「致命傷を与えた」と述べた[7]

デイヴィスの演奏や作品自体に向けられたこうした批評を受け、エルガーは曲の改訂を決意し、繰り返しをいくつか削除することで全体を縮小させた[8]。また、曲をピアノ協奏曲へと改作する案も戯れに検討されたものの[注 2]、この構想が実現することはなかった[1]。彼は1913年にもピアノ協奏曲の作曲に取り掛かるが、本作品とは無関係の題材によるものである。この協奏曲も未完成に終わり、他者の手でまとめられてOp.90を与えられている[7]

デイヴィスは1906年までにオリジナル版をさらに幾度か演奏している。エルガーの改訂作業は完了に至ることなく、楽譜も散逸してしまった。これ以上作品に取り組む意欲を失い、放り出してしまったのかもしれない[注 3][9]1942年にタイムズ紙の音楽評論家は、楽譜の簡単な写しを目にしたことがあると証言している.[4]。1942年以前にも作曲家指揮者アンソニー・バーナードは曲のピアノと管弦楽用への編曲を依頼されたが、これを行わないことにした[4]第二次世界大戦の戦火によってバーナードの研究は焼失し、また多くの書類が失われており、『演奏会用アレグロ』の楽譜もそれらと運命を共にしたものと思われていた。しかしながら、1963年のバーナードの死後、未亡人が夫の書類の中から草稿を見つけ出している[1][4]

曲には多くの取り消しと追加が行われており、さらに大量の修正が施されている[9]。演奏可能な版はジョン・オグドンダイアナ・マクヴェイによってもたらされた。オグドンは1969年2月2日にイギリスのテレビ放送で復刻版の初演を行った。さらに彼は曲の録音を行い、その後は自らの演奏レパートリーに取り入れていた。この版はこれまでに他の多くのピアニストが録音を行っている。

エルガーが当初意図していた繰り返しを全て含む原典版は、デイヴィッド・オーウェン・ノリスが再現して演奏している[8][10]。また、イアイン・ファーリントンが曲をピアノと管弦楽用に編曲している[9]

『演奏会用アレグロ』の作品番号には混乱が見られ、出典次第でOp.41またはOp.46のいずれの番号が用いられることもある。エルガー自身の自筆譜にはOp.41と記されているが、当時Op.46は『フォルスタッフ』と名付けられた演奏会用序曲のために空けていた。この作品は日の目を見ることはなかったが、1913年になって交響的習作『フォルスタッフ』として発表されることになり、Op.68という番号と共に出版された。一方でOp.41にはアーサー・クリストファー・ベンソン英語版の詩による2つの歌曲が割り当てられた。以上の経緯から、『演奏会用アレグロ』はエルガーの生前には出版されなかったにもかかわらず、作品番号としてOp.46を与えられることになったのである。

脚注

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注釈

  1. ^ このコメントは指揮者ハンス・リヒターのものであるともされている。
  2. ^ エルガーはタイトルページを「(管弦楽のない)協奏曲」[3]から「ピアノと管弦楽」[9]へと書き変えさえした。
  3. ^ 彼は曲を出版すべくノヴェロ社(Novello & Co)に楽譜を持ち込むが、断られている。

出典

  1. ^ a b c Elgar – His Music: Other music for solo piano”. 2014年7月5日閲覧。
  2. ^ a b Diana M., McVeagh. Elgar the Music Maker. ISBN 9781843832959. https://books.google.com.au/books?id=RER-0fT8y4YC&pg=PA89&lpg=PA89&dq=concert+allegro+elgar&source=bl&ots=6TLNlbPX6o&sig=QRca6XZAr26aI12Kh0JkwGqbLRA&hl=en&ei=zi7QSbPnBoWG6AP32enXAg&sa=X&oi=book_result&resnum=3&ct=result 
  3. ^ a b c d Elgar and the Salon”. The Victorian Web. 2014年7月5日閲覧。
  4. ^ a b c d Diana McVeigh, Liner notes for the John Ogdon recording, 1970.
  5. ^ Elgar:Symphony No.1 & Organ Sonata, CHSA 5049”. Music Web International. 2014年7月5日閲覧。
  6. ^ Elgar: Works for Piano, CHAN 10429X”. Web International. 2014年7月5日閲覧。
  7. ^ a b Elgar's latest”. The Telegraph. 2014年7月5日閲覧。
  8. ^ a b School of Music, University of Leeds [リンク切れ]
  9. ^ a b c d Farrington’s arrangement [リンク切れ]
  10. ^ Seen and Heard International [リンク切れ]

外部リンク

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