漫符
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漫符(まんぷ)は漫画などに特有な記号表現のことである。
漫符は主として、漫画などのキャラクターの内面を表現するための、独特の視覚言語やアイコノグラフィーに属するシンボル(アイコン)である。
現代では主に日本において漫画や、漫画の影響を受けたアニメ作品において漫符的な表現が見られる。また、欧米などの漫画(アメリカン・コミックス、バンド・デシネなど)においても漫符に相当する表現技法が見られる場合があるが、概してその種類は少ない。
なお、本項目では実体の記号として描写されるものについて扱う。その他の日本の漫画について特有の表現技法については、同項目を参照のこと。
概要
[編集]漫符の起源や変遷は漫画の起源と同様に古いと考えられるが、ここでは昭和初期以降に日本において普及した漫画[1][2]、いわゆる現代漫画における漫符について主に取り扱う。
用語
[編集]古くから見られるが、具体例を示して「漫符」という呼称を使用した初出は『サルでも描けるまんが教室』[J 1]の第3回である[いつ?]。同作品では漫符を「感情や感覚を視覚化した、まんがならではの符号(記号)」と定義している。
夏目房之介は独立に形喩(けいゆ)という用語を造語している[3]。
具体例
[編集]分類名はあくまでも便宜的なものであるか、一般的に多用されている呼称であり、用語として定義されている訳ではない。
感情の表現
[編集]- 汗・涙(汗マーク)
- 汗の水滴を戯画化している。焦りや悲しみを表現する[J 1]:?[J 2]:9。
- 主として顔の側面に描かれるが、キャラクターを背後から見た後頭部、更にキャラクターの外側に離れて四方に飛散するように描かれる場合もある。
- 青筋(怒りマーク)
- 3 - 4本の曲線によって額などに浮き出る血管を戯画化している。怒りを表現する。[J 1]:?
- 照れ線・赤面
- 斜線を多数密集させた表現で、主として頬付近や耳など顔面が紅潮しやすい部分[注 1]に描かれ、照れや赤面、恥ずかしさなどを象徴する表現である。ハッチング由来であり、クロスハッチング線(Xのように交差する斜線)で描かれる場合もある[注 2]。
- これは両頬の頬骨付近に常に描かれるいわゆる「コテ線」とは異なる。
- 湯気
- 頭部などから噴出する湯気を戯画化している。激怒を表現する。[J 1]:?
- 全体的にはブロッコリーを縦に切った断面を簡素化し線画化したものに類似する。
- 垂れ線・青ざめ
- 縦線を多数密集させた表現で、主として顔面の額や、目の周囲、または目の周囲から上の部分に描かれる。青ざめた顔として、不安、焦燥、沈鬱、心身の落ち込みなどを表現する。
- コマ全体の背景としても描かれる
情況や効果の表現
[編集]- 笑み線・ワイワイ・賑わい
- キャラクターの外側に離れて囲むように1 - 数個程度、線の組み合わせとして描かれる表現。短い円弧に小さい線を1 - 数個程度クロスさせたものが多い。
- キャラクターが笑っている状態や、複数のキャラクターが談笑しているような場面で、そのような雰囲気を表現するために使われる。
- 気付き線
- 3つ程度の小さい線を拡がるように並べて描かれ[注 3]、何かに気付いた事などを表現する。なお、驚く程度だった場合には波線が使われる。
その他
[編集]- コテ線
- 「照れ線」とは異なり、頬の頂点にアクセントまたは立体感を出すために描かれる、原則としてキャラクター毎に不変の記号。「ホホタッチ」、「ヒゲ」などとも呼ばれる。派生としてN線、W線などがある。単なる汚れの表現や、本物のヒゲの場合もある。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]漫符の辞典
[編集]- ^ a b c d 相原コージ、竹熊健太郎『サルでも描けるまんが教室』小学館。[要ページ番号]
- ^ こうの史代『ギガタウン 漫符図譜』朝日新聞出版、東京、2018年1月19日。ISBN 9784022515124。
- 漫符の使用例を数多く、鳥獣戯画風のキャラクターを使った4コマ漫画により解説している。
- web試読: こうの史代. “ギガタウン 漫符図譜”. マンガ無料ためし読み ソノラマプラス. 朝日新聞出版. 2021年2月12日閲覧。
- (書籍 p9相当) (1)水滴 (2)汗・涙・申し訳なさ
- (書籍 p18相当) 動線
- (書籍 p24相当) 青ざめ
- (書籍 p25相当) (1)赤らみ (2)照れ・恥じらい
- (書籍 p34相当) 朝
- (書籍 p35相当) 夕方
- (書籍 p49相当) (1)白目 (2)精神的衝撃 (3)呆れ果て
- (書籍 p64相当) 出費
- (書籍 p85相当) ラブレター
- (書籍p112相当) (1)もやもや (2)湯気
その他の出典
[編集]- ^ 茨木正治『メディアのなかのマンガ』臨川書店、2007年。
- ^ “漫画会館所蔵品展「楽天・異国へのまなざし」”. さいたま市プラザノース (2011年1月). 2014年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月10日閲覧。 “(北沢)楽天は政治風刺画や風俗漫画の執筆で活躍した日本で初めての職業漫画家でした。明治期に外国から入ってきた「comic(コミック)」「cartoon(カートゥーン)」の訳語として漫画という言葉を広めたのもまた、楽天でした。”
- ^ 夏目房之介『マンガはなぜ面白いのか その表現と文法』日本放送出版協会〈NHKライブラリー〉、1997年11月20日、87頁。ISBN 9784140840665。