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火山雷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
インドネシアガルングン山の噴火で発生した火山雷(1982年)

火山雷(かざんらい、Volcanic lightningDirty thunderstorm)とは、火山噴火によってもたらされるのことである。この雷は、火山という条件上とても近づきにくい条件で発生するため、詳しい諸量の観測はしにくい。

発生メカニズム

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火山が噴き上げる水蒸気火山灰火山岩などの摩擦電気により生じる。また、水蒸気が少ない場合でも発生できる。

しかしながら流動性の高い高温なパホイホイ溶岩などの溶岩を吹き上げる火山の場合は、高温な溶岩が電気を通しやすい性質上、雷はほとんど発生しない。また、火山灰、火山岩などの固体による摩擦電気がもたらす雷であるので、通常の雷よりも静電エネルギー量は一般的に高いとされている。阿蘇山での観測結果では粒子が細かいと発生しやすいとする報告がある[1]

桜島で噴火と火山雷には一定のパターンがあり、2012年に発生モデルが提唱された[2]

記録

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イタリアヴェスヴィオス火山で観測された火山雷(1944年)

火山雷は古くから記述が見られ、『続日本紀天平宝字8年(764年)12月条に、大隅国薩摩国の境で3つの島が誕生した記述(桜島と関連するものと見られる)に、「煙のような雲が空を覆い、電光が度々走った」「雷音に似ているようで雷ではない」といった記述がなされている。この他にも、「火山噴火と共に雷の記述が記録されている」例としては、『日本後紀延暦19年(800年)6月6日条(『日本紀略』に引用され、逸文という形で残る)、3月14日から4月18日にかけての富士山噴火(延暦噴火)の記述として、「富士山自ら焼け、夜も火の光が照らし、雷灰が落ち、山下の川水は紅色になった」とある。

観測

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近代的な観測が開始されたのは2000年代以降で[3]、閃光を目視観測するほか、電波による観測が行われる。日本での電波による観測は、JLDN(Japanese Lightning Detection Network) などが行っている[4]。落雷による地電流パルスが検出される[5]

脚注

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  1. ^ 今中宏, 松井孝典, 井田喜明「A15 火山雷の発生機構について」『日本火山学会講演予稿集』第1997巻、日本火山学会、1997年、15頁、doi:10.18940/vsj.1997.2.0_15ISSN 2433-5320NAID 110003000982 
  2. ^ 前畑大樹, 西歩実, 徳満賢, 林優花, 湯地友美「桜島における火山雷の特性評価と発生のモデルの提唱」(PDF)『形の科学会誌』第26巻第3号、2012年3月、308-309頁、ISSN 09156089NAID 10030513901 
  3. ^ 相澤広記, Corrado Cimarelli, Miguel A Alatorre-Ibarguengoitia, 横尾亮彦, Bettina Scheu, Sebastian Mueller, 井口正人「B1-10 高サンプリング磁場観測と高速度撮影から推定する桜島火山雷の性質(噴火ダイナミクス,口頭発表)」『日本火山学会講演予稿集』第2015巻セッションID: B1-10、日本火山学会、2015年、56頁、doi:10.18940/vsj.2015.0_56ISSN 2433-5320NAID 110010018505 
  4. ^ 藤居文行, 石井勝, 杉田明子「JLDNで観測した日本の火山雷」『【B】平成21年電気学会電力・エネルギー部門大会講演論文集』2009年8月。 
  5. ^ 相澤広記, 神田径, 横尾亮彦, 小川康雄「B40 桜島火山雷起源の地電流パルス(火山電磁気学,日本火山学会2008年秋季大会)」『日本火山学会講演予稿集』第2008巻セッションID: B40、2008年、92頁、doi:10.18940/vsj.2008.0_92 

関連項目

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外部リンク

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