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無線航行陸上局

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

無線航行陸上局(むせんこうこうりくじょうきょく)は、無線局の種別の一つである。

定義

[編集]

総務省令電波法施行規則第4条第1項第17号に「移動しない無線航行局」と定義している。 ここで無線航行局とは第4条第1項第16号に「無線航行業務を行う無線局」と定義している。また、

  • 「無線航行」を第2条第1項第30号に「航行のための無線測位(障害物の探知を含む。)」
  • 「無線測位」を第2条第1項第29号に「電波の伝搬特性を用いてする位置の決定又は位置に関する情報の取得」
  • 「無線航行業務」を第3条第1項第10号に「無線航行のための無線測位業務」
  • 「海上無線航行業務」を第3条第1項第11号に「船舶のための無線航行業務」
  • 「航空無線航行業務」を第3条第1項第12号に「航空機のための無線航行業務」

と定義している。

概要

[編集]

定義を敷衍してみるとおり、陸上から船舶・航空機に位置決定させるか位置情報を提供する為に電波を発射する移動しない無線局である。 無線測位局の一種であって陸上局ではなく、陸上の無線局でもない。

実際

[編集]
用途

局数の推移に見るとおり航空運輸用とその他国家行政用(海上保安用・航空保安用を含む。)である。

電波の型式及び周波数について、

周波数
海上無線航行業務
  • ロランCは、90~110kHz(ロランCシステム用)
  • レーダーは、13.4~14GHz
  • 国際VHFは、156~157.45MHzおよび160.6~162.05MHz
  • レーダービーコンは、9200~9500MHz
  • ディファレンシャルGPSは、285~325kHz(衛星測位誤差補正システム用、無線標識用)

の中から割り当てられる。[5]

航空無線航行業務
  • 航空用DME、タカン、ILS、VOR又はATCRBSについては、電波法施行規則第13条第3項に基づく別表第2号の3から抜粋する。

(1) VOR、ILSのローカライザ、ILSのグライド・パス、MLS角度系、地上DME、地上タカンの無線局の周波数

チヤネル 周波数(MHz)
VOR又はILSのローカライザ ILSのグライド・パス 地上DME及び地上タカン
1X 962
1Y 1088
2X 963
2Y 1089
3X 964
3Y 1090
4X 965
4Y 1091
5X 966
5Y 1092
6X 967
6Y 1093
7X 968
7Y 1094
8X 969
8Y 1095
9X 970
9Y 1096
10X 971
10Y 1097
11X 972
11Y 1098
12X 973
12Y 1099
13X 974
13Y 1100
14X 975
14Y 1101
15X 976
15Y 1102
16X 977
16Y 1103
17X 108.00 978
17Y 108.05 1104
17Z 1104
18X *108.10 334.70 979
18W 979
18Y *108.15 334.55 1105
18Z 1105
19X 108.20 980
19Y 108.25 1106
19Z 1106
20X *108.30 334.10 981
20W 981
20Y *108.35 333.95 1107
20Z 1107
21X 108.40 982
21Y 108.45 1108
21Z 1108
22X *108.50 329.90 983
22W 983
22Y *108.55 329.75 1109
22Z 1109
23X 108.60 984
23Y 108.65 1110
23Z 1110
24X *108.70 330.50 985
24W 985
24Y *108.75 330.35 1111
24Z 1111
25X 108.80 986
25Y 108.85 1112
25Z 1112
26X *108.90 329.30 987
26W 987
26Y *108.95 329.15 1113
26Z 1113
27X 109.00 988
27Y 109.05 1114
27Z 1114
28X *109.10 331.40 989
28W 989
28Y *109.15 331.25 1115
28Z 1115
29X 109.20 990
29Y 109.25 1116
29Z 1116
30X *109.30 332.00 991
30W 991
30Y *109.35 331.85 1117
30Z 1117
31X 109.40 992
31Y 109.45 1118
31Z 1118
32X *109.50 332.60 993
32W 993
32Y *109.55 332.45 1119
32Z 1119
33X 109.60 994
33Y 109.65 1120
33Z 1120
34X *109.70 333.20 995
34W 995
34Y *109.75 333.05 1121
34Z 1121
35X 109.80 996
35Y 109.85 1122
35Z 1122
36X *109.90 333.80 997
36W 997
36Y *109.95 333.65 1123
36Z 1123
37X 110.00 998
37Y 110.05 1124
37Z 1124
38X *110.10 334.40 999
38W 999
38Y *110.15 344.25 1125
38Z 1125
39X 110.20 1000
39Y 110.25 1126
39Z 1126
40X *110.30 335.00 1001
40W 1001
40Y *110.35 334.85 1127
40Z 1127
41X 110.40 1002
41Y 110.45 1128
41Z 1128
42X *110.50 329.60 1003
42W 1003
42Y *110.55 329.45 1129
42Z 1129
43X 110.60 1004
43Y 110.65 1130
43Z 1130
44X *110.70 330.20 1005
44W 1005
44Y *110.75 330.05 1131
44Z 1131
45X 110.80 1006
45Y 110.85 1132
45Z 1132
46X *110.90 330.80 1007
46W 1007
46Y *110.95 330.65 1133
46Z 1133
47X 111.00 1008
47Y 111.05 1134
47Z 1134
48X *111.10 331.70 1009
48W 1009
48Y *111.15 331.55 1135
48Z 1135
49X 111.20 1010
49Y 111.25 1136
49Z 1136
50X *111.30 332.30 1011
50W 1011
50Y *111.35 332.15 1137
50Z 1137
51X 111.40 1012
51Y 111.45 1138
51Z 1138
52X *111.50 332.90 1013
52W 1013
52Y *111.55 332.75 1138
52Z 1139
53X 111.60 1014
53Y 111.65 1140
53Z 1140
54X *111.70 333.50 1015
54W 1015
54Y *111.75 333.35 1141
54Z 1141
55X 111.80 1016
55Y 111.85 1142
55Z 1142
56X *111.90 331.10 1017
56W 1017
56Y *111.95 330.95 1143
56Z 1143
57X 112.00 1018
57Y 112.05 1144
58X 112.10 1019
58Y 112.15 1145
59X 112.20 1020
59Y 112.25 1146
60X 1021
60Y 1147
61X 1022
61Y 1148
62X 1023
62Y 1149
63X 1024
63Y 1150
64X 1151
64Y 1025
65X 1152
65Y 1026
66X 1153
66Y 1027
67X 1154
67Y 1028
68X 1155
68Y 1029
69X 1156
69Y 1030
70X 112.30 1157
70Y 112.35 1031
71X 112.40 1158
71Y 112.45 1032
72X 112.50 1159
72Y 112.55 1033
73X 112.60 1160
73Y 112.65 1034
74X 112.70 1161
74Y 112.75 1035
75X 112.80 1162
75Y 112.85 1036
76X 112.90 1163
76Y 112.95 1037
77X 113.00 1164
77Y 113.05 1038
78X 113.10 1165
78Y 113.15 1039
79X 113.20 1166
79Y 113.25 1040
80X 113.30 1167
80Y 113.35 1041
80Z 1041
81X 113.40 1168
81Y 113.45 1042
81Z 1042
82X 113.50 1169
82Y 113.55 1043
82Z 1043
83X 113.60 1170
83Y 113.65 1044
83Z 1044
84X 113.70 1171
84Y 113.75 1045
84Z 1045
85X 113.80 1172
85Y 113.85 1046
85Z 1046
86X 113.90 1173
86Y 113.95 1047
86Z 1047
87X 114.00 1174
87Y 114.05 1048
87Z 1048
88X 114.10 1175
88Y 114.15 1049
88Z 1049
89X 114.20 1176
89Y 114.25 1050
89Z 1050
90X 114.30 1177
90Y 114.35 1051
90Z 1051
91X 114.40 1178
91Y 114.45 1052
91Z 1052
92X 114.50 1179
92Y 114.55 1053
92Z 1053
93X 114.60 1180
93Y 114.65 1054
93Z 1054
94X 114.70 1181
94Y 114.75 1055
94Z 1055
95X 114.80 1182
95Y 114.85 1056
95Z 1056
96X 114.90 1183
96Y 114.95 1057
96Z 1057
97X 115.00 1184
97Y 115.05 1058
97Z 1058
98X 115.10 1185
98Y 115.15 1059
98Z 1059
99X 115.20 1186
99Y 115.25 1060
99Z 1060
100X 115.30 1187
100Y 115.35 1061
100Z 1061
101X 115.40 1188
101Y 115.45 1062
101Z 1062
102X 115.50 1189
102Y 115.55 1063
102Z 1063
103X 115.60 1190
103Y 115.65 1064
103Z 1064
104X 115.70 1191
104Y 115.75 1065
104Z 1065
105X 115.80 1192
105Y 115.85 1066
105Z 1066
106X 115.90 1193
106Y 115.95 1067
106Z 1067
107X 116.00 1194
107Y 116.05 1068
107Z 1068
108X 116.10 1195
108Y 116.15 1069
108Z 1069
109X 116.20 1196
109Y 116.25 1070
109Z 1070
110X 116.30 1197
110Y 116.35 1071
110Z 1071
111X 116.40 1198
111Y 116.45 1072
111Z 1072
112X 116.50 1199
112Y 116.55 1073
112Z 1073
113X 116.60 1200
113Y 116.65 1074
113Z 1074
114X 116.70 1201
114Y 116.75 1075
114Z 1075
115X 116.80 1202
115Y 116.85 1076
115Z 1076
116X 116.90 1203
116Y 116.95 1077
116Z 1077
117X 117.00 1204
117Y 117.05 1078
117Z 1078
118X 117.10 1205
118Y 117.15 1079
118Z 1079
119X 117.20 1206
119Y 117.25 1080
119Z 1080
120X 117.30 1207
120Y 117.35 1081
121X 117.40 1208
121Y 117.45 1082
122X 117.50 1209
122Y 117.55 1083
123X 117.60 1210
123Y 117.65 1084
124X 117.70 1211
124Y 117.75 1085
125X 117.80 1212
125Y 117.85 1086
126X 117.90 1213
126Y 117.95 1087

注 *印を付した周波数は、ILSのローカライザを使用する無線局に限る。

(2) ILSのマーカ・ビーコンを使用する無線局 75MHz

(3) ATCRBSの無線局で地表に開設するもの 1030MHz、1090MHz

免許

種別コードRL。免許の有効期間は5年。但し、当初に限り有効期限は5年以内の一定の11月30日となる。(沿革を参照)

運用

運用について、

  • 海上無線航行業務は、無線局運用規則第108条で告示するものとされ、当該告示[1]に運用時間、位置などが規定されている。
  • 航空無線航行業務は、従前は告示するものとされていたが、航空路誌で情報提供できるとして廃止[3]された。廃止時の告示[4]には無線設備、位置などが規定されていた。

また、電波法第16条第1項ただし書および電波法施行規則第10条の2により、運用開始の届出を要する。

操作

無線航行局は、陸上の無線局ではないので陸上特殊無線技士では操作できず、告示されているものでは、最低でも海上系または航空系の無線従事者による管理(常駐するという意味ではない。)を要する。

電波法施行規則第34条の2の「無線従事者でなければ行つてはならない無線設備の操作」の第4号にあるその他告示するものに基づく告示 [6] により、国土交通省地方公共団体成田国際空港株式会社関西国際空港株式会社又は中部国際空港株式会社所属の無線航行陸上局であって、航空機の航行の安全確保の用に供するものの無線設備の操作は無線従事者でなければ行ってはならない。

促音の表記は原文ママ

検査
  • 落成検査は、国以外が設置する場合に限り登録検査等事業者等による点検が可能でこの結果に基づき一部省略される。
  • 定期検査は、電波法施行規則別表第5号第15号により周期は1年。落成検査と同様に国以外が設置する場合に限り登録検査等事業者等による点検が可能でこの結果に基づき一部省略される。
  • 変更検査は、落成検査と同様である。

沿革

[編集]

1950年(昭和25年)- 電波法施行規則制定 [7] 時に定義された。 免許の有効期間は5年間。但し、当初の有効期限は電波法施行の日から2年6ヶ月後(昭和27年11月30日)までとされた。

1952年(昭和27年)- 12月1日に最初の再免許がなされた。

  • 以後、5年毎の11月30日に満了するように免許される。

1963年(昭和38年)

  • 海上無線航行業務の電波の型式及び周波数ならびに運用について告示するものとされた。[8]
  • 航空無線航行業務の電波の型式及び周波数ならびに運用について告示するものとされた。[9]

2020年(令和2年)- 航空無線航行業務の電波の型式及び周波数ならびに運用について告示することが廃止された。 [10]

局数の推移
年度 平成13年度末 平成14年度末 平成15年度末 平成16年度末 平成17年度末 平成18年度末 平成19年度末 平成20年度末
総数 472 443 449 456 488 465 473 474
航空運輸用 305 318 324 326 333 339 339 331
その他国家行政用 128 127 128 128 129 131 130 130
年度 平成21年度末 平成22年度末 平成23年度末 平成24年度末 平成25年度末 平成26年度末 平成27年度末 平成28年度末
総数 479 446 483 491 493 485 486 476
航空運輸用 345 352 349 358 360 351 352 353
その他国家行政用 131 131 131 130 129 130 130 119
年度 平成29年度末 平成30年度末 令和元年度末 令和2年度末 令和3年度末 令和4年度末 令和5年度末
総数 483 459 479 482 479 484 481
航空運輸用 360 364 385 389 386 390 387
その他国家行政用 120 92 91 90 90 91 91  
各年度の地域・局種別無線局数[11]による。

旧技術基準の機器の免許

[編集]

無線設備規則のスプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準改正 [12] により、旧技術基準に基づく無線設備が条件なしで免許されるのは「平成29年11月30日」まで [13]、 使用は「平成34年11月30日」まで [14] とされた。

旧技術基準の無線設備とは、

  • 「平成17年11月30日」[15]までに製造された機器、検定合格した検定機器または認証された適合表示無線設備
  • 経過措置として、旧技術基準により「平成19年11月30日」までに製造された機器[16]、検定合格した検定機器[17]または認証された適合表示無線設備[18]

である。

2017年(平成29年)12月1日以降の旧技術基準の無線設備に対応する手続き [19] は次の通り

  • 新規免許は不可
  • 検定機器以外の再免許はできるが有効期限(新技術基準の無線設備と混在する場合は旧技術基準の無線設備の使用期限)は「令和4年11月30日」までとなる。
  • 検定機器は設置が継続される限り検定合格の効力は有効[20]
    • 検定機器は設置され続ける限り再免許できる。

その他

[編集]
  • 無線標識局は電波法施行規則第4条第1項20号に「無線標識業務を行う無線航行局」と定義されており、無線航行陸上局と機能的に近い。電波法関係審査基準 地域周波数利用計画策定基準一覧表 別表第5号無線航行局においても、2.無線航行陸上局及び無線標識局として事実上同種別のものとして扱っている。
  • VORTACやVOR/DMEの内、VORについてはベリカードを発行している。これらは無線局の義務ではなく厚意によるものである。

脚注

[編集]
  1. ^ a b 平成14年総務省告示第203号 無線局運用規則第107条及び第108条の規定に基づく海上無線航行業務に使用する電波の型式及び周波数等(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  2. ^ 電波法施行規則等の一部を改正する省令案等に係る意見募集-公共業務用無線局等の免許状記載事項等の公表- 総務省報道資料 令和2年2月7日
  3. ^ a b 令和2年総務省告示第136号による平成31年総務省告示第78号の令和2年4月15日廃止
  4. ^ a b 平成31年総務省告示第78号 無線局運用規則第178条及び第182条において準用する第108条の規定に基づく航空無線航行業務に使用する電波の型式及び周波数等(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  5. ^ 周波数割当計画 第2周波数割当表を参照
  6. ^ 平成16年総務省告示第287号 電波法施行規則第34条の2第4号の規定に基づく無線従事者でなければ行ってはならない無線設備の操作 (総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  7. ^ 昭和25年電波監理委員会規則第3号
  8. ^ 昭和38年郵政省令第12号による無線局運用規則改正
  9. ^ 昭和38年郵政省令第28号による無線局運用規則改正
  10. ^ 令和2年総務省令第38号による無線局運用規則改正
  11. ^ 用途別無線局数 総務省情報通信統計データベース
  12. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正
  13. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第2項および平成19年総務省令第99号による同附則同条同項改正
  14. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第1項
  15. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正の施行日の前日
  16. ^ 平成19年総務省告示第513号 無線設備規則の一部を改正する省令附則第3条第2項の規定に基づく平成29年11月30日までに限り、無線局の免許等若しくは予備免許又は無線設備の工事設計の変更の許可をすることができる条件(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  17. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第4条第2項
  18. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第5条第4項
  19. ^ 新スプリアス規格への対応に関する手続き (PDF) p.2 無線設備のスプリアス発射の強度の許容値(総務省電波利用ホームページ - 無線設備のスプリアス発射の強度の許容値)
  20. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第4条第1項ただし書き

関連項目

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外部リンク

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