熔成リン肥
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熔成リン肥(ようせいリンぴ)とは、リン酸肥料の一種。熔リン(ようりん)と略称される。「溶成-」の字も用いる。
熔成リン肥はリン酸やアルカリ分(石灰、苦土)などを含んだ、ガラス様の固溶体である。リン鉱石や蛇紋岩などを原料とし、炉で溶融し急冷破砕して作られる。通常は砂状であるが、造粒剤を用いて粒状に成形したものもある。
広義の熔成リン肥(英: fused phosphate)には様々な種類があるが、日本ではもっぱら熔成苦土リン肥(英: fused magnesium phosphate)を指し、本項もこれを扱う。熔成苦土リン肥の前身となるものは1930年代から1940年代にかけてドイツおよびアメリカで開発された。日本では春日井新一郎、中川正男らの研究により1950年に国産化され、酸性土壌や老朽化水田における土作りに好適として広まった。農林省で公式に命名される際には、「苦土」の字に当時の日之出化学工業社長・今井富之助が「土を苦しめる」と反対し、省いたという逸話がある[1]。
成分
[編集]以下は日本の公定規格(平成28年4月施行)[2]における含有成分の最小量である。
その他副成分として微量の鉄、銅、コバルト、亜鉛、ホウ素などを含む。原料にホウ砂やマンガン鉱石を加え、ホウ素(B)とマンガン(Mn)を保証するものは「BMようりん」と呼ばれる。
性質、施肥方法
[編集]- 元肥として利用される。リン酸のほとんどが、く溶性のため緩効性であり流亡しない。
- く溶性リン酸は土壌と結合しにくいので、リン酸が土壌で無駄になることは少ない。
- 酸性土壌を矯正する。アルカリ性は強くないが、過剰な施肥は土壌のアルカリ化を招く。
- 有機JAS適合資材としても使われる(すべてではない)。
脚注
[編集]- ^ 熊澤喜久雄 (1991). “鎌谷栄次と土壌肥料研究・行政”. 土壌化学 (肥料科学研究所) (14): 1-17 .
- ^ 「肥料取締法に基づき普通肥料の公定規格を定める等の件」改正平成28年3月30日農林水産省告示第884号 施行平成28年4月1日
参考文献
[編集]- 施肥コストの低減: 処方箋に使われる主な土づくり肥料: 2.ようりん, 全国農業協同組合連合会.
- 持続的農業を推進する静岡県土壌肥料ハンドブック: 第3部 土づくりと土壌改善基準 6 肥料の特性, 静岡県, 平成21年3月.
- 有機食品の検査認証制度: はじめての人のための有機JAS規格, 農林水産省.
- “溶成リン肥”, 世界大百科事典 第2版 (日立ソリューションズ・クリエイト) 2016年10月7日閲覧。
- 矢ケ部望; 松田竹三郎 (1977). “熔成燐肥について”. 東洋曹達研究報告 (東洋曹達工業) 21 (1): 33-44. ISSN 00410144 .