熱帯 (小説)
概要
[編集]同書は、2018年11月に文藝春秋より出版された森見登美彦の小説である[2]。この題材を思いついたのが2009年頃であり、10年からウェブで連載を始めたが、翌年の11年に持っていた連載をすべて一度停止する。その後大幅に書き直して、後半を新たに書き足し出来た作品である[3][4]。作者の森見登美彦は同書を書き上げるのに8年かかったとしている[5]。執筆が苦しかったため、こういう小説はもう二度と書きませんと述べている[6][7]。
同書は、「汝にかかわりなきことを語るなかれ しからずんば汝は好まざることを聞くならん」という警句で始まっている[8]。
同作は第1章の「沈黙読書会」、第2章の「学団の男」、第3章の「満月の魔女」、第4章の「不可視の群島」、第5章の「『熱帯』の誕生」の5章から主に成り立っている[9]。
あらすじ
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
沈黙読書会
[編集]学生時代、主人公の「私」こと森見登美彦は京都の古書店で1982年に出版された佐山尚一の『熱帯』と題された本を購入した。南洋の孤島に流れ着いた男の奇妙な冒険譚を描いた同作は、読み終えるよりも早く、忽然と部屋から姿を消していた。後に成人して作家となった「私」は執筆に困っている途中に都内の読書会「沈黙読書会」に参加した。そこで『熱帯』を手にしていた白石さんという女性と出会い、「この本を最後まで読んだ人はいないんです」という謎多き発言をされる。そこから、白石さんは『熱帯』にまつわる長い物語を語り始めた[9][10]。
学団の男
[編集]第二章になると白石さんへと視点替わる。白石さんもその『熱帯』をかつて読みかけのまま紛失してしまった。いつかまた読みたいと思っていると、同じく『熱帯』の続きを知りたい池内さんなる人物と知り合うこととなる。池内さんは同じく『熱帯』を求める同志が集う「学団」という読書会に白石さんを誘ってくれる。池内さんに加えて、中津川さん、新城くん、そして千夜さんなる女性の四人で行われている「学団」。年齢もバラバラな四人であるが全員が『熱帯』を手にし、読んでいたにもかかわらず、みんな途中で紛失してしまったという。彼らは定期的に集まっては、それぞれ記憶を出し合いながら『熱帯』の復元に努めている。しかし、物語のある個所まで思い起こせるものの、そこからは全員の記憶が食い違い、復元作業は暗礁に乗り上げているのだという。白石さんの登場で物語は少しだけ前進したが、この会の参加者たちにどこか気味の悪さを覚える。全員が『熱帯』に憑りつかれたとでもいうべき偏執ぶりだった。後日、参加者のひとり千夜さんから自宅に招待される。そこで彼女は『熱帯』の作品で起こる現象の幻覚を体験する。鍵は「満月の魔女」である。
主な登場人物
[編集]森見登美彦(もりみとみひこ)
受賞
[編集]年 | 賞の名前 | 回 | 最終結果 | 参考文献 |
---|---|---|---|---|
2019年 | 本屋大賞 | 16回 | 4位 | [11] |
2019年 | 高校生直木賞 | 6回 | 大賞 | [12] |
2019年 | 直木三十五賞 | 160回 | 候補 | [13] |
評価
[編集]直木賞では、『熱帯』はあまり高い評価を受けなかった。
脚注
[編集]- ^ 登美彦, 森見. “『熱帯』森見登美彦 「幻の本についての小説を書いてみたいと思っていた。」 ──登美彦氏による書き下ろしエッセイ | 森見 登美彦 | コラム・エッセイ”. 文藝春秋BOOKS. 2020年11月14日閲覧。
- ^ “熱帯 - 国立国会図書館リサーチ”. 2020年11月14日閲覧。
- ^ 日本経済新聞社・日経BP社. “森見登美彦の『熱帯』 「小説とは何か」に挑んだ怪作|エンタメ!|NIKKEI STYLE”. NIKKEI STYLE. 2021年4月8日閲覧。
- ^ “森見登美彦が小説という"謎"に真っ向から挑んだ怪作『熱帯』”. ほんのひきだし (2018年11月16日). 2021年4月8日閲覧。
- ^ “小説家としての「思春期」越えた過去最長の物語 森見登美彦さん「熱帯」|好書好日”. 好書好日. 2020年11月14日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2018年12月16日). “【聞きたい。】森見登美彦さん『熱帯』 「人生の空白期」が生んだ怪作”. 産経ニュース. 2021年4月8日閲覧。
- ^ “森見登美彦さん「もう二度と嫌」 新作小説との格闘談:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年4月8日閲覧。
- ^ “「誰も結末にたどり着けない」謎の本をめぐる、究極の冒険譚! 森見登美彦『熱帯』”. ダ・ヴィンチニュース. 2020年11月14日閲覧。
- ^ a b “『熱帯』森見登美彦 | 単行本”. 文藝春秋BOOKS. 2020年11月14日閲覧。
- ^ “「物語ること」の魔力あふれる物語 森見登美彦「熱帯」など4冊|好書好日”. 好書好日. 2020年11月14日閲覧。
- ^ “これまでの本屋大賞 | 本屋大賞”. www.hontai.or.jp. 2020年11月14日閲覧。
- ^ “高校生直木賞”. 高校生直木賞. 2020年11月14日閲覧。
- ^ “直木賞-選評の概要-第160回|直木賞のすべて”. prizesworld.com. 2020年11月14日閲覧。