燕三条背脂ラーメン
燕三条背脂ラーメン(つばめさんじょうせあぶらラーメン)とは、新潟県県央地域(燕市・三条市)のご当地ラーメン。発祥の新潟県燕市や隣接する三条市を中心として広まっているため、燕三条系と呼ばれている[1]:188。
概要
[編集]新潟県県央地域における背脂ラーメンは、1932年(昭和7年)に福来亭の前身となる屋台を浙江省出身の徐昌星が燕町(当時)で開業したのが発祥とされている[2]:61[3]:2-3。昭和30年前後に、徐は洋食器産業の工員の出前のラーメンについて、工員達の要望で味を濃くした上でバランスを考えて豚の脂を加え、さらに出前しても麺が伸びにくいように、小麦粉の原料を中力粉から強力粉に変え[2]:186-187、麺を極太にした[3]:4[4][5]。出前をしてもスープが冷めないように蓋をするかのように大量に背脂が入れられる[5]。
麺はうどんのような極太麺[4]。煮干しなどの魚介類の出汁が効いた、濃口醤油のスープに、豚の背脂が表面を覆っているのが特徴[4]。具としては長ネギではなく玉ネギが用いられることが多い[6]。
名称にはぶれがあり、燕三条背脂ラーメン[7]:6[8]:12[9]:86-87[10]:13[11]のほか、燕三条系ラーメン(つばめさんじょうけいラーメン)[12][13][2]:61,187[5]、燕背脂ラーメン(つばめせあぶらラーメン)[3]:5[14]:16[15][16]:206[17][18]とも紹介されている。単に背脂ラーメンや燕系ラーメンと呼ばれることもある[注 1]。
石神秀幸による新潟四大ラーメンの分類では燕三条流背脂ラーメン[19]または燕三条背脂ラーメン[20]:109-111として紹介されている。また、大崎裕史は、著書で新潟の四大ご当地ラーメンの背脂系として紹介している[21]:181[1]:187-188。
岩岡洋志は、このラーメンが「背脂チャッチャ系」の元祖なのではないかと推測し[2]:186-187、石神秀幸が監修した漫画『ラーメン発見伝』も「燕三条ラーメンは背脂チャッチャ系よりも遥かに長い歴史がある」としている[22]。
三条市に本社のあるタクシー会社「中越交通」は、貸し切りで運転手がおすすめする背脂ラーメンの店を案内する「燕背脂ラーメンタクシー」を運行している[15]。
2022年には、文化庁が選ぶ「100年フード」の「未来の100年フード部門」で、背脂ラーメンが選ばれている[23][24]。
代表的な店舗
[編集]- 杭州飯店[4][25][2]:186-187[21]:181[1]:188[26]
- 徐昌星は「福来亭」の創業後、2号店「杭州飯店」を開き、こちらに本店を移した[20]:110。
- 徐昌星の息子である徐勝二が経営しており後継とされている。
- 福来亭(閉店)[21]:181[1]:188
- まつや食堂[21]:181[1]:188
- 酒麺亭 潤[21]:181[1]:188
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f 大崎裕史『日本ラーメン秘史』日本経済新聞出版社〈日経プレミアシリーズ〉、2011年10月12日。ISBN 978-4532260811。
- ^ a b c d e 岩岡洋志『ラーメンがなくなる日』主婦の友社〈主婦の友新書〉、2010年12月10日。ISBN 978-4072756591。
- ^ a b c 「燕の背脂ラーメン発祥80年」『広報つばめ』平成25年11月1日号、燕市、2013年11月1日、2-5頁、2021年11月13日閲覧。
- ^ a b c d e 『新潟のラーメン屋』株式会社ジョイフルタウン〈月刊新潟タウン情報 MOOK〉、2005年、88頁。
- ^ a b c 新潟郷土史研究会『新潟「地理・地名・地図」の謎 意外と知らない新潟県の歴史を読み解く!』実業之日本社〈じっぴコンパクト新書〉、2015年1月6日、187頁。ISBN 978-4408111155。
- ^ “新潟名物・燕の背脂ラーメン 進化の裏にある職人への愛”. 朝日新聞社. (2020年11月23日) 2021年11月13日閲覧。
- ^ “産業観光を核とした観光振興に関する調査業務 報告書” (PDF). 国土交通省 北陸信越運輸局 (2015年3月). 2020年3月18日閲覧。
- ^ 地球の歩き方編集室『W32 日本のグルメ図鑑 47都道府県の名物料理を旅の雑学とともに解説』Gakken〈地球の歩き方BOOKS〉、2024年2月8日。ISBN 978-4058021590。
- ^ モトツーリング編集部「全国王道ラーメン完全網羅ガイド」『モトツーリング』2023年3月号、内外出版社、2023年2月。
- ^ 鳴見なる「六十五杯目 温泉ラーメン」『ラーメン大好き小泉さん』 9巻、竹書房〈バンブーコミックス〉、2020年8月28日。ISBN 978-4-8019-7041-0。
- ^ 新潟県 県民生活・環境部 新潟暮らし推進課 (2019年12月20日). “にいがたじかん” (PDF). 新潟県. p. 4. 2021年11月13日閲覧。
- ^ “燕市内36のラーメン店の「自慢の1杯」収録したラーメンマップ「燕ラーメン 三十六カ所*お遍路マップ」完成”. ケンオー・ドットコム. (2008年8月27日) 2020年2月23日閲覧。
- ^ 田中貴 (2017年7月7日). “「燕三条系ラーメン」がじわじわと勢力を拡大中! 田中 貴も足繁く通う“背脂煮干し”の実力とは?”. 毎日新聞 2020年2月23日閲覧。
- ^ “北陸地方整備局令和2年度新規事業候補箇所説明資料 一般国道116号吉田バイパス” (PDF). 国土交通省 北陸地方整備局 (2020年2月13日). 2020年3月18日閲覧。
- ^ a b “背脂ラーメン 新潟県燕市 職人向け、がっつりした味”. 毎日新聞. (2019年2月26日) 2020年2月24日閲覧。
- ^ 田中貴『ラーメン狂走曲』ワン・パブリッシング、2021年12月27日。ISBN 978-4651201726。
- ^ 新潟県包括外部監査人 公認会計士 植草寛 (2019年3月). “平成30年度 包括外部監査の結果報告書”. 新潟県. p. 12. 2020年2月23日閲覧。
- ^ “新潟5大ラーメンはこれを食べるべし! 地元情報誌『Komachi』が選ぶ10店”. 新潟のつかいかた. 新潟県広報広聴課 (2018年6月7日). 2020年2月23日閲覧。
- ^ 『月刊新潟Komachi』2007年10月号、ニューズ・ライン、2007年、34頁。
- ^ a b 石神秀幸『ラーメンの真髄』KKベストセラーズ〈ベスト新書〉、2007年7月25日。ISBN 978-4584121542。
- ^ a b c d e 大崎裕史『無敵のラーメン論』講談社、2002年3月20日。ISBN 978-4061495951。
- ^ 久部緑郎、河合単 2002.
- ^ “背脂ラーメン”. 食文化あふれる国・日本. 文化庁. 2022年4月27日閲覧。
- ^ “新潟5大ラーメンの先陣を切って燕・背脂ラーメンが文化庁「100年フード」に認定”. ケンオー・ドットコム (2022年4月27日). 2022年4月27日閲覧。
- ^ 一個人編集部『大人のラーメン大賞』KKベストセラーズ、2008年、137頁。ISBN 978-4-584-16589-8。
- ^ 長橋亮文 (2020年11月23日). “新潟名物・燕の背脂ラーメン 進化の裏にある職人への愛”. 朝日新聞DIGITAL. 2022年3月8日閲覧。
参考文献
[編集]- 久部緑郎、河合単『ラーメン発見伝』 6巻、小学館、2002年、172-180頁。ISBN 4-09-185616-0。 - 杭州飯店をモデルにした「剛州飯店」が燕三条流・背脂ラーメンの店として紹介。