燕京伶人抄
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『燕京伶人抄』(ペキンれいじんしょう、中国語読み:エンチンリンレンチャオ)は、皇なつきによる日本の漫画作品。1997年、あすかコミックスDX 角川書店
概要
[編集]前半は京劇を中心に話が進む。これは、作者が当時『さらば我が愛-覇王別姫-』に影響を受けたことによる[1]。
登場人物
[編集]- 楊 洛仙(ヤン ルオシェン)
- 人気の旦角(女形)。漫画・初版のメインとなるキーキャラクター。
- 馮 如海(フォン ルウハイ)
- 昔から京劇が好きで、自分が書いた戯曲が舞台で演じられることが夢だったが、夢を諦め、真面目な銀行員として暮らしていた。如山がきっかけで洛仙と出会い、芝居への情熱を取り戻す。漫画・初版と[弐]版に登場する。
- 馮 如山(フォン ルウシャン)
- 如海の年の離れた弟。大の芝居好きだが、これ以上うつつを抜かされては困ると、祖父から観劇を禁じられている。役者を目指し、家出する。
- 蓮湘(リェンシァン)
- 洛仙と同じ劇団の役者。女性。男女共演が禁じられている中、男の振りをして舞台に立っている。
- 陳(チェン)
- 馮家の使用人。
- 鳳霞(フォンシャ)
- 如海の妻。お互いの顔も知らぬまま結婚した。毎晩帰りの遅い夫を起きて待つ。どんなに愛しても愛してくれない夫に寂しさを募らせる。
- 采蘋(ツァイピン)
- 如海の妹。「女子無才便是徳(女はばかな方がいい)」という考えを持つ祖父に反発する。漫画・初版から登場し、[弐]版「暁の聲」以外のメインとなるキーキャラクター。
- 綉文(シウウェン)
- 芝居好きの少女。親が決めた結婚のために女学校を辞めさせられる。
- 敏鴻(ミンホン)
- 綉文の親友。采蘋とも友人。漫画・初版と[弐]版に登場する。
- 小 翠環(シァオ ツイファン)
- 洛仙の一座に新たにやって来た少年。兄であり師父と慕う者に芝居の手ほどきを受けている。
- 曹 玉芳(ツァオ ユイファン)
- かつて洛仙と張り合い、人気を二分していた役者。
- 韓 雁(ハン イェン)
- 采蘋の婚約者。采蘋がまだ母親のお腹の中にいた頃に、父親同士が「この子が女の子だったら結婚相手に」と決めた。
- 如英(ルウイン)
- 如海の弟、采蘋の兄。漫画・初版と[弐]版に登場する。
- 晋華(チンホワ)
- 敏鴻や采蘋の友人。汪(ワン)将軍に見初められ、父親より年上の汪に妾として嫁がされる。
- 汪太太(ワンタイタイ)/毓貞(ユイチェン)
- 汪将軍の正妻。夫が妾を欲しがれば、自らいい女を探して来たり、大勢いる妾たちにも優しく接し、貞女の鑑だと噂される。亡くなった第二夫人の亡霊に悩まされる。
- 阿環(アファン)/春生(チュンション)
- 敏鴻の姪。義母・文絶に無視されている。
- 培源(ペイユァン)
- 敏鴻の兄。文絶という親が決めた妻がいたが、宜萱と結婚した。しかし、仕事もろくに見つからず、結局宜萱に一言もないまま実家に戻り、文絶と復縁した。
- 宜萱(イーシュアン)
- 若い頃、留学先の日本で培源と知り合い、親の反対を押し切り、結婚、阿環をもうける。培源に置いていかれた後も、阿環と慎ましやかに暮らしていたが、やがて阿環も培源に引き取られた。
- 文絶(ウェンチェ)
- 培源の妻。培源が宜萱を選び、離縁を申し入れたが、親が断固として受け入れず、そのまま妻として彼の家で待っていた。培源が帰ってきてからは4人の子をもうける。
- 十三爺(シーサンイエ)
- 北京の富豪。彼に逆らえば、北京ではまともに生きていけないと言われるほどの権力者。漫画・初版と[弐]版に、名前のみで登場する。
- 丹娘(タンニャン)
- 父親は暗殺された軍閥将軍、母親はロシア人。かつて汪将軍の妾だった。劇団を首になり、お金に困り、ある学校のヌードモデルを引き受ける。
- 翡翡(フェイフェイ)
- 丹娘の同居人。汪将軍の遺児。お嬢様育ちで、金がないのに金のかかることを好む。
- 周 友善(チョウ ヨウシャン)
- 学生。丹娘のことを好きになる。
各話あらすじ
[編集]- 鳳凰乱舞(ほうおうらんぶ)
- 大の芝居好きの如山は、いつか自分も役者になりたいと願っていた。しかし、名家の出である如山にそれは許されなかった。(※ 役者はこの時代、乞食同然の身分だった)
- 愁雨歳月(しゅううさいげつ)
- 17歳で嫁いで以来、夫・如海に愛されたいと願い続けてきた鳳霞。夫は、忘れていた芝居への情熱を取り戻し、仕事を終えた後も熱心に脚本を書き、今にも体を壊しそうだった。やがて、全て旦角の洛仙のせいだと思い始める。
- 鏡花水月(きょうかすいげつ)
- 芝居好きの少女・綉文は、洛仙の大ファンだった。しかし、親に結婚相手を決められ、通っていた女学校も辞めさせられようとしていたある日、偶然洛仙と出会い、諦めきれない、と思い直すが……。
- 落下流水(らっかりゅうすい)
- 一座と新たに契約を結んだ少年・小翠環。彼と洛仙が共演する舞台は、いずれも大入りで大人気だった。初めてなのに、とても演じやすいと感じる洛仙。洛仙は過去の出来事を思い出す。
- 女兒情(じょじじょう)
- 亡き父が勝手に決めていた婚約の話。活発な少女・采蘋は、その話に憤り、親友の敏鴻の元へ家出する。翌日、兄から、婚約者が突然訪ねてきた、と告げられる。采蘋は、兄に協力してもらい、この話を断ろうとするが、楊(ヤン)と名乗り、別人として振る舞ううちに、次第に彼のことが気に入っていく。
- 雪晨(せっしん)
- 親友の晋華が妾として嫁がされることを知った采蘋。泣き悲しんでいた晋華だったが、その家の正妻に優しくされ、美しく着飾った幸せな生活を送っていた。その正妻は、妾を許し、夫のために自分で探してくるほどだと知った采蘋は、そんなのはおかしい、と考えを改めるよう日参するが……。
- 寶貝歌(ほうばいか)
- 今や、正妻の子になっている、実子・阿環を見にやって来た宜萱。事情を良く知らない義妹・敏鴻に、昔の話を聞かせる。
- 暁の聲(あかつきのこえ)
- 劇団を首になり、お金に困っていた丹娘はある学校の美術の授業でヌードモデルを引き受ける。丹娘の美しい肢体に夢中になる周友善。ある日、丹娘は周に「モデルをやめてほしい」と言われる。
脚注
[編集]- ^ 文庫版あとがきより
書籍情報
[編集]- 単行本(角川書店、絶版)
- 燕京伶人抄(1996年6月)
- 燕京伶人抄[弐]女兒情(1997年6月)
- 文庫本(潮出版社)
- 燕京伶人抄(2004年10月、ISBN 4267017115)
- 復刊版(角川書店から発行、B5判)
- 燕京伶人抄(2019年2月22日発売、ISBN 978-4-04-107938-6)
- 収録作品:「鳳凰乱舞」「愁雨歳月」「鏡花水月」「落花流水」
- 燕京伶人抄 [弐] 女兒情(2019年2月22日発売、ISBN 978-4-04-107939-3)
- 収録作品:「女兒情」「雪晨」「寶貝歌」「暁の聲」
- 燕京伶人抄(2019年2月22日発売、ISBN 978-4-04-107938-6)