特別勘定 (保険)
特別勘定(とくべつかんじょう)は変額年金保険等の運用財産を他の財産と区別するために設定する保険会社の勘定である。根拠法令は保険業法第118条である。
導入の経緯
[編集]1995年の保険業法(平成七年法律第百五号)制定時は、特別勘定を設定することができるとする規定であった[1]。
その一方、保険契約者保護制度について、1998年の制度創設から2004年までに生命保険会社6社が相次ぎ破綻したことから、金融審議会において制度の運営改善が検討され[2]、その一環として特別勘定の厳格な管理が提案された。[2]
金融審議会の報告書等を踏まえ、2006年に保険業法が改正され、「保険金等が運用実績に連動する保険契約は、他契約と別の管理・取扱いとする。(100%保全を可能に)」[3]となると共に、実効性確保のため対象契約について特別勘定の設定が義務付けられた。[4]
対象契約
[編集]前述の第118条を受け、保険業法施行規則第74条において特別勘定を設定しなければならない契約が列挙されている。
条項 | 例[5] | 法文 |
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1号イ |
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その保険料として収受した金銭を運用した結果に基づいて保険金等の全部又は一部を支払うことを保険契約者に約した保険契約であって、当該保険金等の全部又は一部として当該運用した結果のみに基づく金額を支払うもの(ロに掲げるものを除く。) |
1号ロ |
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その保険料として収受した金銭を運用した結果に基づいて保険金等を支払うことを保険契約者に約した保険契約であって、当該保険契約に係る責任準備金(第六十九条第一項第三号の危険準備金を除く。次号において同じ。)の額が、保険金等の支払時において当該支払のために必要な金額を下回った場合に、当該下回った金額に相当する保険料を保険契約者又は被保険者が払い込むこととされており、かつ、当該下回った金額について保険会社が負担することとされていないもの |
2号 |
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その保険料として収受した金銭の運用により生じた利益及び損失を勘案して保険金等を支払うことを保険契約者に約した保険契約であって、当該保険契約に係る責任準備金の額が、保険金等の支払時において当該支払のために必要な金額を下回った場合に、当該下回った金額に相当する保険料を保険契約者又は被保険者が払い込むこととされているもの(前号ロに掲げるものを除く。) |
3号 |
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その保険料として収受した金銭の運用により生じた利益及び損失を勘案して保険金等を支払うことを保険契約者に約した保険契約のうち、第一号イ及びロ並びに前号に掲げるものを除いたもの |
関連項目
[編集]- 運用実績連動型保険契約
- 保険業法施行規則第74条第1号に該当する契約
- 特定特別勘定
- 運用実績連動型保険契約に係る特別勘定(保険業法施行規則第75条第1項柱書)
- 一般勘定
- 特別勘定以外の勘定(保険業法施行規則第75条第1項第1号)
脚注
[編集]- ^
“保険業法(法律第百五号(平七・六・七))”. 2017年8月30日閲覧。第118条第1項 保険会社は、大蔵省令で定める保険契約について、当該保険契約に係る責任準備金の金額に対応する財産をその他の財産と区別して経理するため、特別の勘定(次項及び次条において「特別勘定」という。)を設けることができる。
- ^ a b
“保険契約者保護制度の見直しについて” (pdf). 金融審議会第二部会. 2017年8月30日閲覧。とりわけ、最低給付保証が付されていない団体年金保険に関しては、 類似の金融商品である年金信託との平仄から、保険会社の破綻時にも実質的に対応資産が保全されるように、厳格な分別管理を前提として責任準備金を削減しない取扱いを可能とする制度整備が望ましく、これが実現すれば、保険契約者保護制度の対象外とすることが適当であると考えられる。
- ^ “保険のセーフティネットの見直し” (pdf). 金融庁. 2017年8月30日閲覧。
- ^
第118条第1項 保険会社は、運用実績連動型保険契約その他の内閣府令で定める保険契約について、当該保険契約に基づいて運用する財産をその他の財産と区別して経理するための特別の勘定(以下この条において「特別勘定」という。)を設けなければならない。
- ^ 本規定制定時のパブリックコメントにおいて金融庁が例示したもの“コメントの概要とコメントに対する金融庁の考え方(平成18年3月13日公表)” (pdf). 金融庁. 2017年8月30日閲覧。
- ^ パブリックコメント実施時点の状況