コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

キジノオシダ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Keisotyo (会話 | 投稿記録) による 2024年9月20日 (金) 05:55個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (分布と種)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

キジノオシダ属
Plagiogyria tuberculata(スマトラ島)
分類
: 植物界 Plantae
: シダ植物門 Pteridophyta
: シダ綱 Pteridopsida
: ヘゴ目 Cyatheales
: キジノオシダ科 Plagiogyriaceae
: キジノオシダ属 Plagiogyria
下位分類
  • 本文参照
図版(種名は同定されているが読み取れない)

キジノオシダ属 Plagiogyria (Kunze) Mett. は、シダ植物の1群。単独でキジノオシダ科を構成する。単羽状複葉の葉には二形性が明瞭で、毛や鱗片を一切生じない。

特徴

この類は形態的には共通点が多く、よくまとまっている。以下のような特徴を共有する[1]

中型以下の地上性、多年生草本常緑性または夏緑性根茎は短く直立、または斜上するが、匍匐茎を伸ばすものもある。茎の表面には古い葉の基部が残り、根を多数付けて大きな株になる。茎や葉柄など、植物体表面に鱗片などを全く生じない。若芽が粘液を出す性質がある。

葉には栄養葉と胞子葉の二形があり、単羽状複葉。葉柄の基部は左右に広がって断面は三角形になり、腹面(葉の裏面側)の基部に通気孔がある。これは見かけ上は突起の形になる。

単羽状の栄養葉の羽片はなめらかか鋸歯がある程度で、深く切れ込むことはない。葉脈は遊離し、つまり先端でくっついて網状になることはない。

胞子葉では羽片は線形、つまりごく狭い幅の葉身しか持たず、胞子嚢は少し隆起した脈に沿って胞子嚢群をなし、包膜も側糸も無い。胞子嚢には環帯があるが、高等なシダでは胞子嚢を垂直に断ち切った方向に一周しているのに対して、この類では斜めの位置を一周している[2]。胞子はすべて同型で、胞子に葉緑体はなく、三稜性の四面体型。前葉体は普通のハート形。

分布と種

分布域は日本から東アジア、東南アジア、インド、ニューギニアと、中央アメリカから南アメリカ北部にかけてである。種数は定説がないがおおよそ50種ほど。このうち、南北アメリカにはヤマソテツに似た1群(種数は1から9で諸説)のみを産する[3]

以下、日本産の種をあげる[4]

  • P. adnata タカサゴキジノオ
    • var. yakushimensis ヤクシマキジノオ
  • P. japonica キジノオシダ
    • var. pseudo-japonica ヒメキジノオ
  • P. euphlebia オオキジノオ
  • P. koidzumii リュウキュウキジノオ
  • P. matsumureana ヤマソテツ
  • P. stenoptera シマヤマソテツ

なお、沖縄にはオキナワキジノオというシダがあるが、これは本科ではなくオシダ科のものである。

分類

この属単独でキジノオシダ科 Plagiogyriaceae を構成する。

原始的な特徴を多く持つ群である[5]が、系統上の位置については明らかではない。外形的な特徴からシシガシラ科ホウライシダ科イワガネゼンマイなどと結びつける説もあったが、これは特定の形質の類似だけに基づくものである。植物体に毛も鱗片も持たないこと、葉柄の基部の構造、若芽が粘液を出すことなどはゼンマイ科と共通する特徴で、その類縁性を認める説も一定の支持を受けてきた[3]分子系統の情報からはヘゴ科タカワラビ科との近縁性が示唆されている[6]

その他

シダにおいて毛や鱗片がないというのはかなり珍しい特徴である。本科の外見的な特徴である『単羽状複葉で側羽片が細長く、葉に栄養葉と胞子葉の二形があり、胞子葉が非常に細くなっている』に当てはまるものとしては、他にシシガシラなどのシシガシラ科シシガシラ属のもの、オシダ科イヌガンソクコウヤワラビなど幾つかの群に跨って存在し、それらは本属のものに多少とも似ている。シシガシラなど、かなり似ているが、これらは茎や葉柄の基部に鱗片や毛を持っているので、その点を見ればすぐに判別できる。ただしゼンマイ科にもヤマドリゼンマイなどこの型のものがあり、これには当てはまらない。もっとも、ゼンマイ科のものは、葉には毛を持つ例がある。

この類は生きた株を掘ってきて栽培するのがとても難しい[3]。光田は「意外に難物」で何年も育て続けることを「いまのところ不可能」としている[7]

出典

  1. ^ 以下、主として岩槻編(1992),p.75
  2. ^ 田村(1999),p.73
  3. ^ a b c 岩槻編(1992),p.75
  4. ^ 岩槻編(1992),p.75-77
  5. ^ 田川(1959),p.68
  6. ^ 中池(1997),p.77
  7. ^ 光田(1986),p.76

参考文献

  • 岩槻邦男編著、『日本の野生植物 シダ』、(1992)、平凡社
  • 田川基二、『原色日本羊歯植物図鑑』、(1959)、保育社
  • 中池敏之、「キジノオシダ科」:『朝日百科 植物の世界 12』、(1997)、朝日新聞社:p.77
  • 田村道夫、『植物の系統』、(1999)、文一総合出版
  • 光田重光、『しだの図鑑』、(1986)、保育社