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ニュースキャスター

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ニュースキャスターとは、報道番組に出演し、ニュースを紹介しながら司会・進行する役割の呼称、または職業

アンカーについては、#原義と類義語の節を参照。

ニュースキャスターを単に「キャスター」と略すのは和製英語である。#日本のニュースキャスターの節を参照。

概要

ニュースキャスターとは、テレビラジオなどの放送メディア報道番組に出演し、番組全体または特定のコーナーを、ニュースを紹介しながら司会・進行する役割の呼称、または職業である。番組の出演者はニュースキャスター一人の場合もあるが、規模の大きな番組では複数キャスター制をとったり、コメンテーターアナウンサーを伴ったりする場合もある。ニュースの読み上げはニュースキャスターかアナウンサーが行う。ニュースに対してのコメントや解説はニュースキャスターかコメンテーターが行う。番組にゲストとして話題の人物が招かれ、ニュースキャスターがインタビューすることもある。

同じような時間帯の報道番組を比較すると、ニュースのラインナップは似たようなものになりがちである。番組タイトルやスタジオの造り、ニュースの切り口、特集、スクープなどで違いを出せるが、最も他との差別化を果たしうるものの一つは、個性あるニュースキャスターの存在であろう。ニュースキャスターに寄せる信頼感・安心感・好意は、視聴者聴取者チャンネルを選択する動機となるので、放送局は人気・実力のあるニュースキャスターの獲得に躍起になる。「筑紫哲也 NEWS23」や“NBC Nightly News with Brian Williams”(NBCナイトリーニュース)のように、タイトルにニュースキャスターの名前を含め、明確にニュースキャスターの個性を前面に出している番組もある。

ニュースキャスターにはジャーナリスティックな資質が不可欠である。番組出演中は、たとえば現地中継のリポーターやゲストに的確な質問をぶつけて情報を引き出す場面や、臨時ニュースが入ってきて情報が錯綜しているときに、視聴者・聴取者が混乱しないように情報の真偽を見極めつつ整理しながら伝える場面などで、ニュースの背景についての理解と判断力が問われる。ニュースキャスターは「情報の交通整理員」だという人もいる。

アメリカを典型として、によってはニュースキャスターは番組出演のほかに、ニュースの取材・編集や番組構成にも影響を及ぼし、一定の責任を負っているとみなされる。その多くは、報道記者として長年経験を積んだ経歴を持つ。日本ではこの傾向は強くないが、TBS筑紫哲也 NEWS23」の筑紫哲也フジテレビニュースJAPAN」の松本方哉などが当てはまる。この2つの番組ではキャスター編集長という名称を使っている。就任年齢は、ブラジル韓国では低く(Globoの“Jornal Nacional”のウィリアム・ボネーや韓国MBCの「MBCニュースデスク」のオム・ギヨンは30代後半)、アメリカでは高い(ABCの「ABCワールド・ニュース」のチャールズ・ギブソンは60代前半)傾向にある。

ニュースメディアがニュースに対して特定の立場を取ることは、偏向報道としてニュースの信用を落とすことにもなりかねない。ニュースの事柄の賛否にまで踏み込むような発言は、ニュースキャスターではなくコメンテーターが行うか、ニュースキャスターが「私個人としては…」と前置きをつけたり、番組内にニュースキャスターが意見を述べるための時間帯を設けたりして、「事実」と「意見」を分ける努力がなされる。しかし、ニュースキャスターがズバズバと意見を言う番組や、逆にコメントを排除し、ニュースを伝えるのみの番組もある。

スタジオからの出演が通常であるが、重大ニュースが発生したときなどに、ニュースキャスターが現地からリポートする場合がある。ニュースキャスターが現地に飛んだからといって、報道態勢の向上に貢献できるとは限らないのであるが、普段からなじみのあるニュースキャスターがその場所に行って話すことが、ニュースの臨場感を高める効果を持つ。もっとも、実際にリポート能力を期待されて現地派遣される場合や、リポート取材を好むニュースキャスターの場合もありうる。

原義と類義語

ニュースキャスターはもとは英語である。英語のnewscaster(ニュースキャスター[1])は、news(ニュース)とbroadcast(放送する)の合成が語源であり、直訳すると「ニュースを放送する人」といった意味になる。

ニュースキャスターとほぼ同じ役割を指す語として、アンカーがある。英語のanchor(アンカー、リレー競技の最終走者)であるが、現場で取材したニュース素材が、記者、編集者、技術者らを介してあたかもバトンのように受け渡され、最後に番組の出演者(アンカー)から視聴者に伝えられる様子を例えたものである。1952年アメリカ大統領選挙の際、プロデューサードン・ヒューイットウォルター・クロンカイトに対して用いたのが始まりとされる。アンカーはその番組の報道チームの責任者・リーダー格の意味合いを持つ。一方、ニュースキャスターはアンカーとほぼ同様の役割・権限を持つが、原義からして取材・編集過程や番組構成への関与はアンカーほど明確でない。アンカーはアメリカ英語である[2]。日本ではあまり使われない語である。アンカーパーソンの言い方もなされる。男性、女性を指す語としてそれぞれアンカーマンアンカーウーマンもある。

報道番組における英語のpresenter(プレゼンター、披露する人)は、イギリス英語で用いられた場合、アンカーに近い意味になる。アメリカ英語で用いられた場合、アナウンサーに近い意味になる。日本ではほぼ使われない。

イギリス英語寄りの語として、newsreader(ニュースリーダー、ニュースを読む人)がある。番組出演時の役割はニュースキャスターやアンカーと同様であるが、ニュースの取材・編集過程や番組構成への関与の意味合いはなくなる。日本ではほぼ使われない。

ニュースキャスターの意味するところは、番組制作への関与の度合いや私見の扱いの点において、文化圏や個人の信条により若干の差異が見られる。

日本のニュースキャスター

概要

日本では、ニュースキャスターのニュースの取材・編集過程や番組構成への関与の度合いにはあまり注意が払われず、単に報道番組の司会者であればニュースキャスターと呼ばれる。アナウンサー出身が多く、他は報道記者やタレント文化人の出身に分かれる。

ニュースキャスターを単に「キャスター」と略すのは和製英語である。「キャスター」は、報道番組だけでなく情報番組の司会者にも用いられる。 スポーツニュースを専門に担当するスポーツキャスター天気予報を専門に担当するお天気キャスターまたは気象キャスターといった用語がある。(スポーツキャスターはsportscaster、お天気キャスターはweathercasterという語が英語にもある。)その他、芸能ニュース専門の芸能キャスター、ファッショングルメなどの肩肘の張らない話題を伝える情報キャスター、リポート取材専門のフィールドキャスターなど、さまざまな「(ジャンル)+キャスター」の形の用語が作られている。「キャスター」はこれらの総称の場合もある。スポーツキャスターであれば元スポーツ選手、お天気キャスターであれば気象予報士のように、その業界出身のキャスターも存在する。お天気キャスターや情報キャスターを中心に、大学卒業後間もない、または大学在学中の、若々しいが経験の浅い女性が起用されるケースが見られる。

キャスターとアナウンサーの違い

本来、アナウンサーは渡されたニュース原稿を無表情に読み上げるだけで、ニュースの内容には関知しないはずである。しかし、日本はアナウンサーの業務の幅が広く、ニュースに臨機応変にコメントしたり、ニュースの取材・編集の人員に加わったりすることもある。またニュースキャスターという語も、アメリカに比べるとジャーナリスティックな要素よりも番組出演に重きが置かれるので、両者の区別はしばしばあいまいである。森田美由紀は、「みんな困っていると思うんですよ。周りがキャスターと呼べばキャスターですし、アナウンサーと呼べばアナウンサーですしね。」と語っている[3]。ただ、一般に放送局社員の募集職種や役職の名称はアナウンサーで統一されている。放送局所属のアナウンサーはアナウンサーともキャスターとも呼ばれるが、報道記者やタレントなどの出身のキャスターがアナウンサーと呼ばれることはない。(出身業界は見た目ではわからないので、実際にはアナウンサーの経歴がなくても、印象でアナウンサーと呼ばれることはある。)番組内にキャスターとアナウンサーと呼ばれる人間が両方いたとき、キャスターがメイン、アナウンサーがサブの位置付けにはなるが、逆になることはない、といった違いはある。

本来の意味にしたがった両者の違いは、「アナウンサーはニュースを『読み上げる』、ニュースキャスターはニュースを『語りかける』」と表現されることがある。

1997年スーパーJチャンネル石田純一らがキャスターに起用されて以降、報道関連の経験のないタレントや文化人が報道番組でニュースキャスターを務めるケースが相次ぎ、定義がますますあいまいになっている。

歴史

日本のニュースキャスター第1号は、1962年10月1日にスタートした「JNNニュースコープ」(TBS)の田英夫戸川猪佐武とされる。

NHKでは1974年4月磯村尚徳による「ニュースセンター9時」が放送開始。ニュース原稿を読み上げるのみであったそれまでの「NHKニュース」とは違い、喋り言葉を積極的に使った。政治経済社会というNHKでは当たり前だった放送順序の慣例を、意識的に排除するなどの変化も見せた。

それまで男性のキャスターがニュース番組の進行を務める事が多かったが、1980年代に各局が女性キャスターを起用し始める。その先駆けとなったのが、「きょうの出来事」(日本テレビ)を担当した櫻井よしこである。だが実際は、1978年田丸美寿々日本ニュース時事能力検定協会理事)が「ニュースレポート」を担当し、既にキャスターの位置付けをとっており、田丸を日本初の女性キャスターだとする意見もある。様々意見は分かれるが、テレビ証券は「田丸さんは、日本でいうキャスターの先駆けで、ジャーナリストからアンカーを務める米国流で言えば、櫻井さんが日本初のアンカーパーソン。」と、両者ともにキャスターの先駆けである事に違いはない、と述べている。

1984年10月1日にスタートした「FNNスーパータイム」(フジテレビ)においては、今までに無い視聴者の目線を意識したニュースリポートや特集などを組み、メインキャスターの逸見政孝安藤優子はそれを象徴する存在となった。

1985年10月にスタートした久米宏による「ニュースステーション」(テレビ朝日)は、それまでのニュース番組を変えた番組と認識されている。インタビュー取材でよく久米は「私はニュースキャスターでなく司会者」と発言している。

1989年10月、筑紫哲也による「筑紫哲也 NEWS23」の放送がスタート。平日のニュース番組でキャスターの名前が番組名に記載されたのは初めて。

2006年4月、NHKの「ニュースウオッチ9」が放送開始。キャスターの柳澤秀夫伊東敏恵はニュースの紹介に徹し、原稿やプロンプターを一切使わずに放送する試みを行う。

アメリカのニュースキャスター

概要

アメリカでは、小都市のローカル局のリポーターを振り出しに、現場や報道局で実力をつけてから大都市の地方局でリポーターやアンカーを務め、40代~50代でネットワーク局のアンカーになるのが通常である。新人のアナウンサーやキャスターが全国ニュースを読むことはありえない。

CBSNBCABC の三大ネットワークで平日夕刻の全国ニュースを担当するアンカーを特にチーフアンカーと言い、彼らがそれぞれの「ネットワークを代表する顔」となっている。チーフアンカーにはジャーナリストとしての知識や経験のほかに、個々のニュースに対する深い理解と徹底した中立性が求められる。そのため彼らは一般市民から高い信頼がおかれており、チーフアンカーを粗末に扱うと次の選挙で票に跳ね返るため、政治家も彼らに対して敬意を払うことを忘れない。アメリカでは「大統領が勝手なことを言えない者がこの国に三人だけいる。三大ネットのチーフアンカーだ。」という格言まである。

なお1980年代終わり頃からは、三大ネットのチーフアンカーに、CNN (24時間ケーブルニュースネットワーク) と、PBS (公共放送ネットワーク) の各チーフアンカーを加えた五人が、「アメリカ放送ジャーナリズムの顔」と位置付けられている。

歴史

第二次世界大戦時、CBSエドワード・R・マローは、ヨーロッパの各地から自身が組織した特派員たちとともにリポートを送り続けた。

1951年、マローがホストを務めるCBSの報道番組「シー・イット・ナウ」の放送が開始された。

1963年ウォルター・クロンカイトCBSイブニングニュースのアンカーに就任した。

1981年ダン・ラザーがCBSイブニングニュースのアンカーに就任した。1983年ピーター・ジェニングスABCワールド・ニュースの単独アンカーに昇格した。同年、トム・ブロコウNBCナイトリーニュースの単独アンカーに昇格した。これらにより、三大ネットのチーフアンカーによる本格的な視聴率競争の時代が始まった。

各国のニュースキャスター

イギリス

  • アメリカと同様に、取材経験を積んだ記者が40代~50代でキャスターを務めるのが通常となっている。
  • 同じ英語圏からか、元アメリカ国務省報道官のジェームス・ルービンのように、アメリカ人がキャスターを務めるケースがある。

フランス

  • アメリカと同様に、取材経験を積んだ記者がキャスターを務めるのが定番となっていたが、近年では、M6でキャスターを務めるメリッサ・テュリオのように、入社3年でキャスターを務めるケースも出ている。

ブラジル

  • ブラジルでいうキャスターは、Apresentadores(プレゼンターの意味)にあたる。
  • ブラジルの主要ニュース番組のキャスターの殆どが、Globoのキャスター経験者である。これは、ブラジルのテレビ界においてGloboの一人勝ちの状況が続いていることにより、人材がGloboに集中していることが背景として挙げられる。

韓国

  • 取材経験を積んだ報道次長、若しくは報道部長クラスの記者が、キャスターを務めるのが定番となっている。
  • かつてはアメリカ同様男性が単独でキャスターを務めていたが、近年では女性キャスターと2人で番組を進行している。

ニュースキャスターと私見

日本

  • JNNニュースコープ」で17年間キャスターを務めた古谷綱正は、あくまでストレートにニュースを伝えることに徹し、「日本のウォルター・クロンカイト」と評された。当時古谷は「キャスターがいい気になって意見を言うのは、反感を呼び不信感を煽るでしょう。大切なのはニュースに対する『姿勢』というものです」とあくまで客観的にニュースを伝えることこそが重要だとした。
  • フジテレビ「FNNニュースレポート23:00」のキャスターを務めた俵孝太郎は「ニュースは鉄仮面のごとく読むべきだ」と述べ、「JNN報道特集」で長年キャスターを務めた堀宏サイゾーのインタビューで、「(放送法の規定を挙げた上で)ニュース番組は新聞のように評論をすべきではない」と発言している。
  • きょうの出来事」(日本テレビ)で長年アンカーパーソンを務めた櫻井よしこは、「アンカーパーソンは言葉で批判するのではなく、データの選定で批判するべき。」と、データの上でのキャスターである為、キャスターは私的なコメントで判断を下してはいけないと語っている。
  • RKBニュースワイド」(RKB毎日放送)初代キャスターの三善英毅(現在第一経済大学教授)は1982年、朝日新聞のインタビュー記事で「キャスターはニュースの解説役という考えもあるが、私はニュースの整理役だと思う。ニュースに手を加え、データを盛り込んでいったら終わり。」と発言している。
  • 現在、多くの報道番組はキャスターが自分の思想・意見を積極的に述べ、取り上げるニュースにもそれが反映される形態が多い。こうしたキャスターの傾向に対しては、雑誌等の一部活字メディアでは「電波芸者」と揶揄している。FOX News Channelビル・オライリーに代表されるように、キャスター(ホスト)がトークラジオのように進行する番組が人気を博している。評論家や識者が集まってトークする番組も人気である。

アメリカ

  • アメリカではかつて、アンカーがニュースに対する私見を述べても良いか否かという論争があった。番組の終わりに自論のコーナーを設けていた代表的なアンカーにエドワード・R・マローが、逆に私見は徹底的に避けるべきだとした代表的なアンカーにウォルター・クロンカイトがいた。
  • 現在、アメリカの主要なニュース番組である三大ネットの夕方のニュースは、放送時間が30分しかなく、アンカーがニュースにいちいちコメントをつけることはしない。

韓国

  • キャスターはあくまでニュースを読むことに徹していなければならず、日本のようにキャスターがふざけたり長々と私見を述べたりすれば、視聴者から苦情が殺到すると言われている。

著名ニュースキャスター

日本

アメリカ

現在のチーフアンカー

その他の主要アンカー

引退または死去した主要アンカー

  • ダン・ラザー (Dan Rather): CBS、1981~2005年チーフアンカー。現在では報道特別番組に時折登場している。
  • ボブ・シーファー (Bob Schieffer): CBS、2005~2006年チーフアンカー。
  • エド・ブラッドレー (Ed Bradley): CBS、2006年11月に白血病で急逝。
  • トム・ブロコウ (Tom Brokaw): NBC、1983~2004年チーフアンカー。現在では報道特別番組に時折登場している。
  • ピーター・ジェニングス (Peter Jennings): ABC、1978~2005年チーフアンカー。2005年4月肺癌治療のため一時降板、間もなく8月に死去。
  • コニー・チャン (Connie Chung): 三大ネットとCNNの四局で報道番組を担当した唯一のアンカー。CBSでは1993~1995年にダン・ラザーと二人制でチーフアンカーを務めている。現在ではMSNBCで週末の二ユース番組を担当。
  • バーバラ・ウォルターズ (Barbara Walters): ABC、1976~1978年にハリー・リーズナーと二人制で女性初のチーフアンカーを務めた。その後は現在に至るまで数多くの報道番組やインタビュー番組を担当。

イギリス

ブラジル

  • ウィリアム・ボネー: Globo
  • カルロス・ナシメント: SBT
  • ファティマ・ベルナンディス: Globo

注記

  1. ^ newsは慣例的に「ニュース」とカタカナ転写されるが、「ニュー」とした方がより原音に近い。
  2. ^ 以降この節のアメリカ英語かイギリス英語かの区別は、Longman Dictionary of Contemporary English(1995年版)による。
  3. ^ 『ダカーポ』No.295 1994年2月16日号 マガジンハウス、74頁。