コンテンツにスキップ

西部警察 SPECIAL

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。218.222.71.113 (会話) による 2009年5月29日 (金) 16:31個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎概要)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

西部警察 > 西部警察 SPECIAL

西部警察 SPECIAL(せいぶけいさつスペシャル)は、石原プロモーション制作の刑事ドラマである。2004年10月31日テレビ朝日系で放送された。なお、制作予定であった連ドラ版をめぐる経緯もこのスペシャル版に大きく関わっているため、連ドラ版に関してもある程度とりあげる。

概要

2003年1月20日、このドラマの主演でもあった石原裕次郎の十七回忌、石原プロモーション創立40周年、そしてテレビ朝日開局45周年に合わせて、石原プロの代表作「西部警察」が19年ぶりに復活することが渡哲也から発表された。復活第一弾として『西部警察 WESTERN POLICE 2003』と題した2時間のスペシャルドラマを制作することとなり、同年4月から5月にかけて宮崎県(「シェラトン・リゾート・フェニックス・シーガイア」など)にてロケーションを敢行した。また撮影開始前日の4月12日には、主なロケ地となる「シェラトン・リゾート・フェニックス・シーガイア」の野外広場にて、かつての全国縦断ロケ同様に「西部警察復活1万人コンサート」と銘打ったイベントを開催した。宮崎、東京、ニューヨークにおいて無事に撮影を終了し、後に放映予定日が同年9月6日と決まった。ところが、下記に示す「スペシャル版放映を延期させた出来事」となる事故によりスペシャルの放送は無期延期となった。

その「出来事」から1年後の2004年8月11日、渡は前年に完成していた2時間のスペシャルドラマを同年10月31日に放送することを発表した。撮影の責任者に対する刑事処分が同年4月に確定、負傷者も既に回復し、放映への了解を得たことを受けて、お蔵入り寸前だった作品がようやく日の目を見ることになった。放映にあたっては再編集の上で15分間延長され、テレビ朝日開局45周年記念作品・日曜洋画劇場特別企画『西部警察 SPECIAL』として放映された(なお、宮崎ロケでの制作協力先であるUMKテレビ宮崎においては、1週遅れの11月7日に放映された)。

なお、本作のストーリーはCORNER ROUNGEが登場する事からも「PART-I」の直接の続編と位置づけられている(PART-II及びPART-IIIはパラレルワールドに位置付けられたことになる)。そのため、放送前に一部で騒がれたように殉職した大門が生き返ったわけではない。また「PART-I」の直接の続編であることを印象付けるように、オープニング・エンディングのテーマソングが「PART-I」で使用されたOP/ED曲のアレンジ版である。

ストーリー

ニューヨーク市警に研修で派遣されていた刑事、橘数馬はNYでの相棒、ボブと共に西部署から派遣された鳩村、堀内と協力して元警察庁キャリア、新美正臣の逮捕に成功するが、ボブは殉職してしまう。その悲しみが消える間も無く、数馬は新美の護送のため鳩村達と共に日本に一時帰国する。 が、それと前後してチェチェンにおいて正体不明の日本人""『スズキ・マコト』""が大量の武器を購入したという情報が入り、これを睨んでの国際テロ対策会議が宮崎フェニックス・シーガイアで極秘に開かれることになった。しかしこれを察知したスズキも同時期に宮崎入りしていたことが羽田空港の監視カメラからわかる。 会議場はスズキ率いるテロ組織『ブラック・ホーク』によって占拠され、西部署や数馬とも馴染み深い日下警視正を初めとするテロ捜査官が人質にされてしまう。その際、日下の同僚である服部が射殺される。携帯は服部を除き没収され全てスズキの目の前に置かれた。新見が指名され、警察庁長官への連絡をするように言われる。立場上直接連絡を取れないことから瓜生官房長へ連絡をした。スズキが官房長へ要求したのは新美の釈放であった。事件を知った数馬は宮崎へ飛び、鳩村に事件捜査への参加を志願するのであった。

事件を知った上層部の判断は「いかなる取引もしない」。これは人質の見殺しを意味する。

人質の日下から鳩村の携帯へ「爆破テロ」という文面のメールが入った。日下は唯一没収されなかった故・服部の携帯でメールしていた。その後日下がわざと殴られることを言い、殴られた拍子にスズキが使用しているカーナビの機種名を認識し、早速送信した。鳩村らがそれを頼りに捜査した結果、市内在住のハッカーが絡んでいることがわかり、市内のネットカフェにいることも判明、急行するが後一息のところで自殺をさせてしまう。三上の優れたコンピュータ関連技術を使った調査により、宮崎市内を走る観光バスに仕掛けられていることがわかった。早速全員でバスの元へ急行、バスの乗客乗員を退避させ爆弾を処理しようとするがガードがあって外せない。結果、バスを宮崎港まで運び、爆破された。ブラックホークはテロを阻止され悔しがる。

大門は新見の釈放を決断した。坂東の捜査により、新見正臣とスズキ(新見旭)が過去に政情不安があった某国の日本大使館員夫妻の兄弟であり、両親はその国内でスパイの濡れ衣により銃殺されたこと、新見は警察庁へ入りその両親の無念を晴らしてほしいと何度も上層部に掛け合ったが警察含む国家は一切黙殺したこと、これらにより兄弟は日本への恨みから一連の行動に至った事がわかった。兄・正臣の釈放を確認した弟・旭は次なる爆弾の起爆を解除する約束をした(それは嘘だと言うことがすぐにわかる)。

それを見抜いていた日下はそれをメールで知らせようとしていたが旭に見つかり、「殺される」と電話をしろ、と迫られた。日下は電話をするや否や逃げ出し、大門に爆弾が仕掛けられてる場所を言おうとするが旭に撃たれる。旭から「スパイは処刑しました」と連絡が入る。

正臣の引き渡しの時間がやってきた。若手刑事はすきをぬって窓から侵入。兄弟の四半世紀ぶりの対面となる。ここから始まるバトルの火ぶたを切ったのは旭だった。銃弾が飛び、新見兄弟とその他テロリストを乗せた車は逃走。追いかける宮崎県警のパトカーに無反動砲が浴びせられ、次々に破壊されていく。撃たれた日下の娘であり西部署所属である直美はさっきまで占拠されていた建物から父の亡骸を見つけ号泣する。同時に爆弾の場所を示すものが全て破壊されたことも知った。大門もそこに現れる。日下の手にペンがあるのを見つけた大門は日下の手を開く。そこには「マリンエキスプレス」と書かれていた。撃たれた後、事切れるまでの間に日下が書いたものだった。直美はそのフェリーに急行し、決死の覚悟で爆弾を処理し成功した。

ある山中に新見らはアジトを構えて潜伏していた。鳩村がそこを突き止めた時、ヘリコプターで逃走しようとしていた。鳩村は正臣を射殺した。 旭はヘリのパイロットに正臣の遺体をのせ「海へ行け」と指示し、アジトにこもった。テロリストが猛攻撃をし、警察は傷ついていく。旭はアジトの中で1人考えていた。そのうちに鳩村と橘がアジトに侵入する。次々にテロリストが殺される。旭は鳩村や橘に撃たれる。旭は最後にニトロ自爆装置を点火した。鳩村と橘、その他刑事は間一髪で脱出。旭は脱出のためのマンホールへ向かった。要塞は大爆発。

官房長は日下の二階級特進を大門に伝えたが大門は「官房長…日下は喜ぶでしょうか?そんなもんはいらん、日下の声が聞こえます」と言い、無力さを痛感する官房長を残してその場を去る。

数日後、橘は西部署捜査課の一員となった。

反響

同時期は刑事ドラマが多種多様に変革している時期であり、日本のドラマでは『踊る大捜査線』等、海外では『24 -TWENTY FOUR-』等、組織や日常におけるリアル性を非常に重視した作品(いわゆる「警察ドラマ」)が登場してきている。そのため、本作品でもテロという非常に大きな事件に対して警察庁官房長が陣頭指揮するシーンが描かれているものの、上層部としては結局瓜生官房長が出てくるのみであったり、本来警備部・公安部担当事案であるテロを(設定上西部署の捜査課が警察組織内においてあらゆる事案においての解決の手腕を認められ特別視されているとはいえ)旧来の刑事ドラマでの描写に沿ったまま所轄警察署の捜査課が中心となって捜査してしまった所に、「警察ドラマ」としてのリアリティが欠けてしまったことが、現代の視聴者層から離れてしまった観がある。

旧来の西部警察ファンからも往年の大門軍団の活躍を期待していたという声も少なくなく、主人公「橘 数馬」役であり21世紀の石原裕次郎として本作でデビューした徳重聡中心に出来上がってしまったという所に賛否両論があった。

また、アクションシーンや爆発シーンについて旧シリーズ以上のものを期待していたファンからすれば、この21世紀版西部警察は期待にこたえたものとは言えなかった。ただこれは、撮影事情が前シリーズと比べて格段に厳しくなった状況でのアクションの限界であるという説もある。旧シリーズはフィルム撮影だったのに対し、本作はVTR撮影であったが、VTR映像は写実的で粗が探しやすく、本作のような創作性の強い作品にはやや不相応であった。

更に「カーマニアの憧れるような車によるアクションを見せたい」という思いで外国製スーパースポーツカーを多数導入したが、さすがの石原プロと言えどもこれらの車両(1台1000万円以上する車両も数台ある。その上これらの車は石原プロが自腹で購入している)で旧シリーズさながらの転倒・爆破を含んだ、あまり派手なアクションをするわけにも行かず、更にスーパースポーツカーは余りにも大出力な上操縦も難しい車(俳優が運転しながら演技するどころか、神経を使って運転しないと普通に走らせるだけで危険を伴う程)であるため、カーアクションもスケールがやや小さいものになってしまい、その上前述の事故発生で連続ドラマ版が放送中止に追い込まれ、制作上完全に裏目に出る結果となった。ファンの中には後期のシリーズに登場したスーパーZやマシンRSといった特撮番組さながらのスーパーマシンの現代版(現行のフェアレディZスカイラインを使用した改造車)を期待していた者もいたが、日産自動車は制作サイドの車両協力要請に対し「車が壊れる事が前提のドラマに車両提供はできない」と断ったという裏話もある。

また、このドラマのために当時最新式の消防車を購入し、爆破スタントの消火用と劇用車として登場させたものの、それ以降使われることはなかった。2008年11月13日放送の『ナニコレ珍百景』で紹介された際、きちんとメンテナンスをするならプレゼントすると発表された。

なお現在でも、ファンの間には連ドラもしくは新たな単発スペシャルの制作を望む声は多い。

スペシャル版放映を延期させた出来事

事故現場のスーパーオートバックス名古屋ベイ店
事故車と同型の車(TVR・タスカン

スペシャル版は映像が完成し、後は放映を待つだけの段階となっていた。しかし、その後の出来事により一年の間放映ができなくなった。

2003年7月17日、まさに石原の十七回忌命日でもあるその日、『西部警察 2003』と題した連続ドラマ(同年10月から12月までの毎週木曜日夜8時からの1時間枠にて全10話を放映予定であった)の制作を開始することが渡から発表された。制作費は1話につき1億、計10億円。発表段階で名古屋、大阪、広島と地方ロケが決まっていた、という昔と同様派手なドラマとなる予定であった。他に、本スペシャル版で自爆したと思われた新見旭がマンホールから脱出し、西部署に再び闘いを挑むストーリーがある、という情報もあった(つまりスペシャル版は連ドラ版への布石ということになる)。

同年8月11日早朝、愛知県名古屋市において、市街地(栄)でのビル爆破シーンの撮影からクランクインした。この後「金城埠頭」「ガーデン埠頭」「南京大路」でカーチェイス、通常走行シーンの撮影が行われた。ただし、「金城埠頭」「ガーデン埠頭」の撮影は名古屋港管理組合が許可していたが「南京大路」に関しては組合はおろか、所轄警察署の道路使用許可を得ていない撮影だった事がわかった。この件に関しては事故後に所轄に制作サイドから謝罪があり、厳重注意という処分であった(警察官が駆けつけたときには既に撮影が終わっており、現認できなかったため)。

栄でのビル爆破によって華々しく撮影がスタートしたその翌日の8月12日13時50分頃、同市港区の撮影現場スーパーオートバックス名古屋ベイ店の駐車場内において、松山高之役の池田努が運転する英国スポーツカーであるTVRタスカンのハンドル操作を誤りオーバーステアを起こし、そのまま見物客に突っ込み男女5人を負傷させる人身事故が発生。この事故の影響を受け、石原プロモーション社長でもある渡が入院中の負傷者を訪問し、事故を起こした俳優とともに謝罪した。

渡は連続ドラマの制作を中止、予定していた10月からの放映を取りやめることを決断する。これには事故で負傷した見物客やその家族からも製作続行を望む声が上がったが、最終的にはテレビ朝日常務取締役(当時)早河洋もこれに同意、翌日の8月13日に制作の打ち切りと10月からの放映中止を発表した。併せて、既に制作が終了し放映を待つのみとなっていた『西部警察 WESTERN POLICE 2003』についても、この影響により放映を無期限延期とすることが決まり、放映予定日には通常の土曜ワイド劇場が代替放送された。なお、連続ドラマ版『西部警察2003』が放送されるはずだった木曜夜8時の枠では、同枠の後番組として既に製作が開始されていた『新・京都迷宮案内』をスタッフ・出演者の協力の下、前倒しの形で放送された(西部警察2003の代替のテレビ朝日開局45周年記念ドラマとして制作・放送されたのは2004年1月~3月に、木曜ドラマ枠女優上戸彩主演のエースをねらえ!)。

なお、事故の法的処罰は、運転していた池田、監督の吉田啓一郎、現場責任者の小林石原プロ専務は業務上過失致傷罪に問われ、池田と吉田は起訴猶予(それぞれ、急発進の演出を小林から要請されたとしている)、小林に関しては急発進の要請も含め、ギャラリーとの間にさくを設けるなどの「安全管理の責任を怠った」として略式起訴された。

キャスト

西部警察の登場人物を参照。

登場特殊車両

  • 大門 - ブラバスS6.7 (メルセデス・ベンツ Sクラスのチューンドカー) - 提供のオートトレーディング社長南原氏の愛車である。ただし本編には登場していない。
  • 鳩村 - TVR・サーブラウ - 2台用意された。
  • 橘 - ロータス・エリーゼ - 2台用意された。
  • 堀内 - TVR・タモーラ - 2台用意された。
  • 松山 - TVR・タスカン - 2台用意された。
  • 三上 - モノクラフトGT300 (トヨタ・MR-Sのカスタムカー) - 宮崎ロケで爆破された観光バスとの市街地走行シーンでアクシデント衝突し、フェンダーがへこんだ。2台用意されていた。
  • 日下 - TVR・タスカン

スタッフ

撮影中のエピソード

  • かつては、ロケ中の食事は同じ席で取るのが原則としていたが、役作りのため、ブラックホーク組と西部署組は別々に取っていた。その理由として、「撮影の期間中はずっと敵でいたかった」から。
  • 今回の撮影においても、ブラックホークによって爆弾が仕掛けられた観光バスの乗客、警察官、機動隊員等の役で、多数のエキストラが出演した。撮影中は、「スタッフ・キャストの区別なく同じものを食べる」という石原プロの伝統に倣い、エキストラにも一人前1500円相当といわれる豪華なロケ弁当が配られた。また撮影終了時には、かつて石原プロワールドで販売されていた西部警察グッズのお土産が付いた。
  • 制作中止となった連続ドラマ版では、戸田菜穂演じる日下直美刑事に代わって、中山忍が演じる女性刑事が出演することが決まっていた(事故報道の際、事故現場を撮影していた視聴者提供のビデオ映像に彼女の姿が確認できる)。