ミネラルウォーター
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この記事はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。 (2015年3月) |
ミネラルウォーター(mineral water)とは、容器入り飲料水のうち、地下水を原水とするものを言う。
ヨーロッパでは古くより飲泉の習慣があったが、17世紀にイギリスのマルヴァーンの水を瓶につめて販売したのがミネラルウォーターのはじまりである。19世紀になると瓶詰めにかかるコストが軽減したことで、水道よりも安全な水として(20世紀以前の水道は塩素殺菌をしていなかった)普及した。
日本では特に、原水の成分に無機塩添加などの調整を行っていないものは、ナチュラルウォーター・ナチュラルミネラルウォーターと呼ぶ。一方、原水が地下水でないものは、ボトルドウォーターと呼ぶ。これらの区分については、農林水産省がガイドラインを定めている。市販品では、各地の名水や大自然のイメージを前面に押し出しているものが多い。
成分
ミネラルウォーターとの名称から、ミネラル(無機物)を多く含んだ飲料水のことと思っている人も多いが、ミネラルウォーターにはミネラル成分の品質規定があるわけではない。ミネラルウォーターには大豆や魚と比較してカリウムやマグネシウム、カルシウムといったミネラル分はほとんど含まれておらず、1日の基準摂取量を満たすには数十リットルから数百リットル飲む必要がある。基本的に水であるため、大量に摂取すれば摂取するほどに尿の量も増え、それに伴ってミネラル分も吸収した傍から排出される。前提としてミネラル分はきちんと食事から摂取した方が良い。
軟水と硬水
水に含まれるカルシウム塩とマグネシウム塩の量の指標(硬度)が一定水準より少ない場合を軟水、多い場合を硬水という。一般的に、日本国内で産出されるミネラルウォーターは軟水のものが多く、欧州で産出されるものには硬水が多い。WHOの基準では、これらの塩類の量を炭酸カルシウムに換算したアメリカ硬度(mg/L)において、0~60のものを軟水、120~180のものを硬水、180以上のものを非常な硬水というように決められている。
なお、日本では水道水よりも水質基準がゆるく(砒素濃度が水道水の5倍まで認められるなど)、また水質検査間隔などの規制もゆるい。あくまで、飲料のみの用途を想定しているためであり、日常的に料理などに使用するのは基準の想定外である。安全性という点では、日本においては水道水に劣っている[要出典]。
炭酸含有の有無
欧米では、ミネラルウォーターの原料となる水に元々炭酸が含まれているものがあり、ミネラルウォーターといえば炭酸水を指すことが多い(代表例:サンペレグリノ、ゲロルシュタイナー)。炭酸水を冷やさずに常温で飲むと独特の味わいになるため、日常的に炭酸水を飲む習慣がない日本人には馴染めないことがある。特に「ガスなし」と断らないと炭酸水が出てくることがあるので注意すること。
「ガスなし」ミネラルウォーターには、炭酸を抜く工程を加えたもの(例:サンペレグリノの無炭酸)や、元々炭酸を含まない水を利用したもの(例:エビアン)などがある。
ミネラルウォーターをスティルウォーター(英: still water)、発泡ミネラルウォーターをスパークリングウォーター(英: sparkling water)という。
健康食品として
従来は、単に風味の良い水として販売されていたミネラルウォーターではあるが、近年においてバナジウムが糖尿病抑制効果があるとして[1]、このバナジウムを含む地下水が健康食品の一種として販売されている。なお、このバナジウムの糖尿病抑制効果には明確な裏付けがある訳ではなく、あくまでも「そのような説が発表された」という段階なのだが、早くも多くの中小の健康食品メーカーがこれらバナジウムを含む地下水の販売を行っている模様で、既に大手清涼飲料水メーカーの一部にもこれを扱う所が見られる。
なお特保の認可を得ない限り、食品に効果の表示はできない。現在、ミネラルウォーターに特保の認可を受けた商品はなく、そのため「糖尿病抑制効果がある水」などと表示する商品は無い(表示すれば医薬品医療機器等法に抵触する)。
機能水
医学的に効果が証明されていないので、特保の認可を得ているわけではないが、各社より健康に良い等の機能を謳った機能水が販売されている。アルカリイオン水などが有名である。
日本における歴史
日本では、明治時代に宮内省が兵庫県多田村平野(現在の川西市平野3-23-1)の平野鉱泉を用いて炭酸水の御料工場を建てたことから始まった。その後、工場は三菱財閥に払い下げられ、炭酸泉を瓶に詰め、1884年『鉱泉 平野水』として発売、1885年に明治屋が権利を得て『三ツ矢印 平野水』としてそれ以外の地域にも発売したのが始まり。また炭酸を含まないものは、1929年に堀内合名会社(現 富士ミネラルウォーター株式会社)が山梨県下部(現 山梨県南巨摩郡身延町下部)の富士身延鉄道(現 JR東海 身延線)の土地で湧出した水を『日本ヱビアン』(NIPPON EVIAN)として発売したのが始まり。
1960年代には大手酒類メーカーが業務用としてミネラルウォーターの販売を開始。一般家庭には、1983年にハウス食品『六甲のおいしい水』[2]・サントリー『山崎の名水』が発売されたことをきっかけとして普及。日本国外のミネラルウォーターは、1980年代終盤から1995年にかけて輸入量が急伸し、これにより一般に普及した[3]。
近年では、比較的水事情の良いと思われていた日本国内でも、大都市圏などの水道水には、水源の有機物系の臭いや水道配管の錆、さらには消毒のための塩素の臭いやトリハロメタンの危険性など、水質に問題があると感じる消費者も増えている。日本の残留塩素や総トリハロメタンの基準はWHO基準より遥かに低いものの、業者が「健康を害する」と非科学的な宣伝を行っているのが現状である。ミネラルウォーターはこのような地域を中心に売上を伸ばす傾向にあり[要出典]、コンビニエンスストアなどでも普遍的に見かける定番商品となっている。また、これらから製造された氷も見掛けられる。
現代の日本国内生産量では山梨県が1位(34%)であり、以下、静岡県(2位:14%)、鳥取県(3位:14%)と続く(2009年)[4]。
ミネラルウォーターの表示区分
この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
日本においては、ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン(農林水産省:平成2年3月30日食品流通局長通達「2食流第1071号」、平成7年2月17日「7食流第398号」改正)により内容物の表示を定めている。
- 適用範囲
- 地下水などのうち飲用適の水(カルシウム、マグネシウムなど(硬度)及びpH値を除き、水道法第4条に適合する水をいう)を容器に詰めたもの(炭酸飲料の日本農林規格(昭和49年6月27日農林省告示第567号)に規定する炭酸飲料を除く)。これを「ミネラルウォーター類」という。
- ナチュラルウォーター
- ナチュラルミネラルウォーター
- ミネラルウォーター
- 飲用水、ボトルドウォーター
- ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター及びミネラルウォーター以外のもの。
代表的な商品
日本において2008年に販売されたミネラルウォーター類の、上位10銘柄は次の通りである。
商品名 | シェア | メーカー |
---|---|---|
日本の天然水 | 20.7% | サントリー |
森の水だより | 14.8% | 日本コカ・コーラ |
キリン アルカリイオンの水 | 11.3% | キリンMCダノンウォーターズ |
ボルヴィック | 7.6% | キリンMCダノンウォーターズ |
六甲のおいしい水 | 6.1% | ハウス食品 |
富士山のバナジウム天然水 | 3.2% | アサヒ飲料 |
エビアン | 2.6% | 伊藤園 |
コントレックス | 1.4% | サントリー |
財宝温泉水 | 1.4% | 財宝 |
採水に関わる問題
ミネラルウォーターの需要が増加する一方で、採水地においては、過剰な地下水の採取を問題視する動きもある。
サントリー天然水を製造している山梨県北杜市の白州蒸溜所近辺では、近年、地下水の水位の低下や混濁が起きており、これは同工場による過剰な地下水の採取が原因ではないかとする考えがある。
近年、日本国内の良質な地下水(表流水の一部も含むと言われている)を輸出するため、国外企業が、経済的に疲弊している林業事業者から大規模に森林(水源林を含む)を購入していることが明らかとなった。日本には規制する法令等が未整備であることから、大量の採水が行われることにより国土の荒廃を招く事が危惧されている[6]。
調乳に対する注意
2011年東北地方太平洋沖地震が原因の東京電力福島第一原子力発電所事故で、外部に多量の放射能(放射性物質)が流出したことから、東京など関東地方の一部の水道水から高濃度の放射能(放射性ヨウ素)が検出され、乳児への摂取を中止するよう要請があったことから、直後にミネラルウォーターが非常に品薄な状態になった。一部の店頭では乳幼児がいる世帯であると証明できる場合に陳列分とは別枠で提供していた。なお、2011年6月時点で在庫は十分確保されるようになり、品薄状態は改善された。
日本の粉ミルクは硬度の低い日本の水道水で溶かすことを前提に成分が設計されているため、外国製を主体とした硬度の高い製品では、ミネラル分の過剰摂取となり、乳児の体に負担をかけることが指摘されている。ミルク用にはできる限り硬度の低い製品を使うことが求められる[7]。もし適した水(軟水)が入手できない場合は、通常通りに水道水を使用することの見解が日本小児科学会などから発表されている[8]。これは、放射性物質を含んだ水を摂取するよりも、ミルクを与えないことによる脱水症状の方が危険であるという理由からである。
また「小児、妊娠中および授乳中の女性は上限値が設定できないため、食品由来以外のバナジウムは摂取しないこと」という事が危険情報として独立行政法人国立健康・栄養研究所から発表[9]されており、ミルクメーカーによってはバナジウムを含んたミネラルウォーターを推奨しない場合もある。
脚注
- ^ http://ee-job.com/19.html
- ^ 2010年に販売権をアサヒ飲料に移譲。2013年に「アサヒおいしい水」のシリーズ商品として発売を続けている。
- ^ 株式会社日刊経済通信社 調査部「清涼飲料水市場」『DATA500 酒類・食品産業 on GRAPHICS ―21世紀への設計―』日刊経済通信社、東京、2000年。ISBN 4-931500-53-6。
- ^ 日本ミネラルウォーター協会「都道府県別生産数量の推移」(パーセンテージについては小数点以下四捨五入)
- ^ 株式会社日刊経済通信社 調査部『酒類食品産業の生産・販売シェア-需給の動向と価格変動- 2009年版』日刊経済通信社、東京、2009年。ISBN 978-4-931500-16-7。
- ^ 「日本の水源林の危機 ~グローバル資本の参入から『森と水の循環』を守るには~」(2009)、「グローバル化する国土資源(土・緑・水)と土地制度の盲点 日本の水源林の危機 II」(2010)、いずれも東京財団
- ^ ミルク調乳とミネラルウォーター
- ^ 「食品衛生法に基づく乳児の飲用に関する暫定的な指標値100Bq/キログラムを超過する濃度の放射性ヨウ素が測定された水道水摂取」に関する、日本小児科学会、日本周産期・新生児医学会、日本未熟児新生児学会の共同見解平成23年3月24日
- ^ 「健康食品」の安全性・有効性情報/独立行政法人国立健康・栄養研究所
関連項目
外部リンク
- 日本ミネラルウォーター協会 - 業界団体