脳震盪
脳震盪(のうしんとう、英: cerebral concussion、brain concussion)は、頭部に衝撃を受けた直後に発症する、一過性および可逆性の意識や記憶の喪失を伴う症状である。損傷部位が特定できないびまん性の脳損傷[1]。
「震盪」とは、激しく揺れ動かすという意味で、「盪」の漢字は使わず「脳震とう」と表記されることが多い。スポーツ時のものはスポーツ障害にも分類される。脳震盪を繰り返すと、将来になって、様々なダメージが出てくる事が明らかとなり、深刻に取り扱うべきとされている[2]。
原因
頭部・顎付近に対する衝撃によりおこる、神経伝達物質の過剰放出による脳代謝の障害で脳機能障害。
症状
一般的な画像診断では異常が見られない場合が多い[3]。脳神経伝達物質の代謝が正常に戻るまで、年齢、性別により差があり2週間から6週間必要とする報告がある[4]。
- 意識喪失
- 軽度の一瞬程度のものから、重度のもので数時間に及ぶ場合もある。短時間の場合でも、当人は何が起こったか理解出来ない場合が多い。
- 意識喪失の後によく見られる。前後の記憶が混乱し、直後の記憶がはっきりしないことなどがある。
- めまい・ふらつき
- 意識の混濁や、バランス感覚の麻痺による。
- 軽度のものでは発症しないこともあるが、重度の場合 数ヶ月間に渡り運動に伴い痛むこともある。
対症
動く・動かすことは不適とされ、安静にし氷や濡れタオルで頭部を冷やすことがのぞましい。
気絶するような、中度以上の脳震盪の場合、脳が損傷を負っている可能性がかなり高いため、ボクシングなどのスパーリングや試合を続行することは極めて危険である。脳が完全に回復する前に、再度強い衝撃を受けると、セカンドインパクト症候群を発症し、脳に重篤な障害が残ったり死亡してしまう場合が多いので絶対に行ってはならない。
そのため、脳震盪を起こした場合、頭痛が取れ完全に回復するまで最低二週間以上の安静が必要とされている。
フットボール・ラグビーにおける脳震盪の扱い
「脳震盪を起こした場合」、「脳震盪の疑いのある場合」、「バランステストの異常」のいずれかひとつに該当する競技者(選手)は、即刻退場となり競技および練習を継続することはできない。また、医師の診察や医療機関受診が必須となる。更に、受傷後最低14日間は、いかなる運動も禁止して安静する。アスピリン、鎮痛剤なども使用しないこと[5][6]などがガイドラインとして発表されている。
また、競技に復帰する際は、段階的競技復帰プロトコル(GRTP)に従って復帰することが求められている[7]。
- 脳震盪の疑いの所見とは、
- 意識消失
- ぼんやりする
- 嘔吐
- 不適切なプレーをする
- ふらつく
- 反応が遅い
- 感情の変化(興奮状態、怒りやすい、神経質、不安)
- 脳震盪の疑いの症状とは、
- 頭痛(プレーを続けることができない程度)
- ふらつき
- 霧の中にいる感じ
- 以下の質問に正しく答えられない(見当識障害・記憶障害)
- 『自分のチーム名を言いなさい』、『今日は何月何日ですか』、『ここはどこの競技場ですか』、『今は、前半と後半のどちらですか』
- バランステストとは、
『利き足でないほうの足を後ろにして、そのつま先に反対側の足の踵をつけて一直線上に立つ。両足に体重を均等にかけ、手を腰にして、目を閉じて20秒間じっと立つ。もしバランスを崩したら、目を開けて元の姿勢に戻してまた、目を閉じて続ける』を行う。
このとき、20秒間で、6回以上バランスを崩したら(下記のようなことが起こったら)、退場
- 手が腰から離れる
- 目を開ける
- よろめく
- 5秒以上、元の姿勢に戻れない
鑑別診断
頭部への衝撃は数時間から数日経ってから生命に関わる重大な疾患を起こすことがある。主に以下のものである。
脚注
- ^ 脳損傷の生成機序に関する最近の進歩 可視化情報学会誌 Vol.20 (2000) No.1Supplement P11-16
- ^ IRB脳震盪ガイドライン
- ^ ラグビーにおける脳震盪の取り扱い(2011年9月 5日) そめや内科クリニック
- ^ スポーツによる脳震盪の診断治療 (PDF)
- ^ 「脳震盪/脳震盪の疑い」簡易判断表 日本ラグビーフットボール協会 (PDF)
- ^ 脳振盪が疑われたら 日本ラグビーフットボール協会
- ^ 脳振盪 ガイドライン等について
関連項目
外部リンク
- 外傷性脳損傷 日本語版メルクマニュアル
- Jリーグにおける脳振盪に対する指針 JFA公益財団法人日本サッカー協会 (PDF)