ティム・バートンのコープスブライド
ティム・バートンのコープスブライド | |
---|---|
Tim Burton's Corpse Bride | |
監督 |
ティム・バートン マイク・ジョンソン |
脚本 |
パメラ・ペトラー キャロライン・トンプソン ジョン・オーガスト |
製作 |
ティム・バートン アリソン・アベイト |
製作総指揮 | ジェフリー・オーバック |
出演者 |
ジョニー・デップ ヘレナ・ボナム=カーター エミリー・ワトソン |
音楽 | ダニー・エルフマン |
撮影 | ピート・コザチク |
編集 |
クリス・レベンゾン ジョナサン・ルーカス |
製作会社 | ライカ |
配給 | ワーナー・ブラザース |
公開 |
2005年9月23日 2005年10月22日 |
上映時間 | 76分 |
製作国 |
アメリカ合衆国 イギリス |
言語 | 英語 |
製作費 | $40,000,000 |
興行収入 |
$53,337,600 $117,195,061 [1] |
『ティム・バートンのコープスブライド』(Tim Burton's Corpse Bride)は、2005年公開のティム・バートン監督によるロシアの民話を元にしたファンタジーアニメーション映画。1993年公開の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』同様、ストップモーション・アニメーション撮影で製作された。
アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートし、2005年度ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞の長編アニメ賞に輝いた。
あらすじ
時は19世紀、舞台はヨーロッパのとある小さな村。成金の金持ちだが品格のない魚屋のヴァン・ドート夫妻の息子ヴィクター(声:ジョニー・デップ)は、由緒正しい身分ながら破産して一文無しの没落貴族であるエヴァーグロット夫妻の娘ヴィクトリア(声:エミリー・ワトソン)との結婚が親同士の政略により着々と進められていた。お互い、逢ったこともない人と結婚することを不安がってはいたが、結婚式の前日、式のリハーサルのために初めて対面した2人は互いにまんざらでもない様子で、次第に両者ともに結婚に前向きになっていく。しかしドジなヴィクターは緊張の余り、リハーサルで失敗を連発。怒った牧師に式の延期を言い渡されてしまう。
切羽詰まった彼は一人、夜の森で結婚式の練習をする。すると、すらすらと結婚の誓いの台詞が言えたではないか。調子に乗ったヴィクターはその辺に突き出ていた枝を花嫁ビクトリアの指に見たて、指輪をそこへはめる。しかしその行動が一大事を引き起こす。枝だと思っていたのは“コープス・ブライド”(死体の花嫁 声:ヘレナ・ボナム=カーター)の指だったのだ。婚姻の誓いを受けたと勘違いしたコープス・ブライド―エミリーはビクターを花婿と信じこみ、彼を地中にある“死者の世界”に連れ去ってしまう。
意外なことに、死者の世界は陰鬱とした空気に満ちた地上世界と大違いであった。24時間営業のパブ、地上世界のしがらみから解き放たれにぎやかに歌うガイコツたち、カラフルな色彩の建物……。常識はずれのパワフルなエネルギーに満ちた死者の世界に、ヴィクターは次第に魅せられていく。その一方で、結婚詐欺によって殺されたエミリーの境遇に同情しつつなんとか地上に戻ろうと画策するが、生きている婚約者がいることを知られエミリーを傷つけてしまう。彼女の怒りをなだめるように弾き始めたピアノをきっかけに、ヴィクターはエミリーと心を通わせ、ただ一途に愛を追い求め続ける彼女の哀しみを深く理解していくようになる。そしてヴィクトリアとの再会を諦め、自ら死者となってエミリーの愛を受け入れることを決心するのだった。ヴィクターの故郷の教会で滞りなく式は進み、ついにエミリーの手からヴィクターへ、毒入りワインの盃が手渡された。しかし、自分のために愛する人とその想い人の夢を犠牲にすることを躊躇ったエミリーは寸前でヴィクターを静止し、駆けつけてきたヴィクトリアを笑顔で迎え入れる。生きた世界の2人の手を優しく重ね合わせ、2人の幸せのために仲人として式を続けようとするエミリー。
そこへ、ヴィクターとヴィクトリアの式のリハーサルに姿を現し、ヴィクトリアの第2の花婿候補となった素性不明の男バーキスが乱入し、ヴィクトリアを我が物にせんと暴れ始める。エミリーは彼こそが自分を騙し死に追いやった詐欺師であったことを思いだし、彼の手から奪い取った剣を突きつけ出ていけと凄む。バーキスは怯みつつも憎まれ口を叩きながら、毒入りワインの杯を口にしてしまい、たちまちの内に死者と化す。そして彼の所業に怒った死者の国の仲間たちの手により、死者の国へと引きずり込まれてしまった。
全てが終わった後、エミリーはヴィクターに指輪を返し、無数の蝶となって天に召されていった。愛を渇望し続けた自分を妄執から解き放ってくれたことへの感謝の言葉を残して……。
キャラクター
主要人物
- ヴィクター・ヴァン・ドート
- 主人公の内気な青年。犬が好きでピアノが上手い。金持ち夫婦の間に生まれるが、日々の生活に息苦しさを感じ、階級違いの結婚に不安を抱いていたが、結婚式のリハーサル直前に対面したヴィクトリアに惹かれ結婚に前向きになる。しかし、肝心のリハーサルで失敗を繰り返してしまい、真夜中の森で式の練習をした際に誤って死体の花嫁エミリーと婚姻関係を結んでしまう。そのまま死者の世界へ連れていかれるが、何とか地上へと戻ろうと画策する。初めは、不幸な境遇に同情はするものの、死体であるエミリーを敬遠していたが、次第に彼女の健気さや一途な心を好ましく思うようになる。
- コープスブライド(エミリー)
- 本作のヒロインである、「死体の花嫁」。数年前に一文無しの恋人との結婚を父親に反対され駆け落ちを計画。決行の夜、母親のウェディングドレスで身を包み、ほんの少しの金と宝石を持って森で待ち合わせていたが、駆け落ちするはずだった恋人に殺害され、金と宝石を奪われてしまった。以後、彼女はウェディングドレス姿のまま死者の世界をさまよい、運命の人が現れるのを待っていた。そこへ現れたヴィクターからプロポーズされたと勘違いし、ヴィクターとの関係を深めようとするも生きている婚約者がいることを知って深く傷つき、生者と死者という壁ゆえに報われぬヴィクターへの想いに苦悩する。
- ヴィクトリア・エヴァーグロット
- 没落貴族であるエヴァーグロット家の娘で、ヴィクターの本来のフィアンセ。両親が勝手に決めた財産目当ての結婚に少し不安を感じていたが、相手のヴィクターと顔を合わせたその日に彼と心通わせ、彼と同様に心から結ばれたいと望むようになる。物静かでおしとやかな性格で、自分の気持ちとは裏腹に強引に決められた結婚に不満を抱きつつ諦めを覚えていたが、一目ぼれしたヴィクターがエミリーに連れ去られたことで、内に秘めていた芯の強さと行動力を発揮していくようになる。しかし高圧的な両親の態度には逆らえず、音沙汰のないヴィクターとの婚約を一方的に破棄された上、バーキスと結婚させられることになってしまう。
地上の世界
- ウィリアム・ヴァン・ドート
- ヴィクターの父親。おとぼけた性格で品格がない。妻のネルはお世辞で相手を持ち上げようとするが、それに対してウィリアムの方は、ちょっとしたケチを付けるような物言いをする。自分の魚店の商売を成功させ、大きな財を築く。妻のネルとともに上流階級への仲間入りを夢見ている。
- ネル・ヴァン・ドート
- ヴィクターの母親。肥満した体に高価な服や毛皮、帽子に扇子を身につけた成金婦人。夫と共に上流階級への仲間入りを夢見ている。ヴィクターが姿を消した夜、その夢のために必死に彼を捜索する。
- フィニス・エヴァーグロット
- ヴィクトリアの父親。没落貴族で路頭に迷うことを恐れ、娘を成金と結婚させようと計画する。いらつきやすい。マスケット銃を用いようとすることが多い。
- モーデリン・エヴァーグロット
- ヴィクトリアの母親。夫とは愛し合っていないと断言し、結婚に愛は必要ないと言う。音楽は情熱的過ぎるとしてピアノを弾くことを禁じている。
- メイヒュー
- ヴァン・ドート魚店の従業員で馬車の御者。呼吸器が悪いのか、しょっちゅう咳をしており、物語の途中で呼吸器不全で死亡、死者の世界でヴィクターと再会する。
- ヒルデガート
- エヴァーグロット家に仕えるメイド。ヴィクトリアの世話をしている。
- エミール
- エヴァーグロット家に仕える執事。エヴァーグロット邸に死者が大勢進入した際、主人たちを見捨てて逃げ出した。
- バーキス・ビターン卿
- 結婚リハーサルにいきなりやってきた男。ヴィクターが行方不明になったことをいいことに、エヴァーグロット夫妻に取り入ってヴィクトリアと結婚しようと目論む。
- ゴールズウェルズ牧師
- 非常に頭が固く、意地悪な牧師。ちょっとしたことで怒鳴り、ヴィクターを杖で叩くことがあった。クライマックスでは、教会に入り込もうとした大勢の死者達を追い返そうとするも、マナー違反を指摘されて茫然自失、成す術もなく押し入られてしまう。
- 町の触れ役
- ベルを鳴らし、大声で町のニュースを叫んで知らせる。ヴィクターの結婚リハーサルの失敗や、エミリーとの逢引きや姿の晦ましなど、情報を掴むのはかなり早い。
死者の世界
- マゴット
- エミリーの良き理解者で、彼女の頭蓋骨の中に住み着いている蛆。蛆は人の頭に住み奇想や妄想をもたらすという伝承が存在する。
- クロゴケグモ
- 自称後家さん(英語名のBlack Widow Spider のwidowにも、後家の意味がある)。エミリーの頭の中に住み着いているマゴットといい関係になっている。仲間の蜘蛛とともにヴィクターの服を縫う。
- スクラップス
- ヴィクターが子供の頃に飼っていた犬。亡くなって久しく、死者の国すでに白骨化していたが、エミリーによって結婚の贈り物としてヴィクターに返された。死んでいるため、生前は得意技だった“死んだフリ”ができなくなっている。
- グートネクト長老
- 死者の世界の頼れる長。彼の部屋は埃の積もった本で溢れ返っている。定期的に薬を飲むのが習慣になっており、頭蓋骨のてっぺんが割れて開いている。エミリーの結婚に、知恵を貸す形で尽力する。
- ポール・ヘッド・ウェイター
- パブの“ウェイター頭”。新たな死人が死者の世界にやってくるとすぐ急行し、自己紹介する。たくさんのゴキブリに首を持ち上げてもらって移動する。
- ミセス・プラム
- パブの女将さん。体中に包丁が刺さっている旦那らしき料理人と共にパブの料理やウェディングケーキを作っているが、男に目がない。
- ちび将軍/ドワーフ将軍
- 胸にサーベルが刺さった将軍。相方の長身将軍とは日々杯を交わしている。
- 長身将軍/ウェリントン将軍
- 腹部に大砲であいた大きな穴がある。ドワーフの相方。特典映像の中では大砲(キャノンボール)将軍とテロップがあった。
- ボーンジャングルズ
- パブの人気歌手。下あごの大きいメインボーカルは肉のある女に目がないらしい。他のバンドメンバーは自身を楽器にしつつ、バックダンスと演奏をこなす。
- ピアニスト
- ボーンジャングルズの歌を演奏していた骸骨。サングラス着用。
- アルフレッド
- いつもタバコを吸っている骸骨。妻のガートルートはまだ生きており、ヴィクターの結婚式の為に地上に出た際に再会する。
- スケルトンボーイ & ガール
- おもちゃのボートを持って水兵の格好をした骸骨の男の子と、金髪ツインテールでピンクのワンピースを着た骸骨の女の子。
- ハーフマン
- 体が正面から真っ二つに切れている紳士。パブでもお酒を半分しか頼まない。
キャスト
役名 | 原語版声優 | 日本語吹替 |
---|---|---|
ヴィクター・ヴァン・ドート | ジョニー・デップ | 木内秀信 |
コープスブライド (エミリー) | ヘレナ・ボナム=カーター | 山像かおり |
ヴィクトリア・エヴァーグロット | エミリー・ワトソン | 小林さやか |
ネル・ヴァン・ドート | トレイシー・ウルマン | さとうあい |
ヒルデガード | 定岡小百合 | |
ウィリアム・ヴァン・ドート | ポール・ホワイトハウス | 鈴木勝美 |
メイヒュー | 宮澤正 | |
ポール・ヘッド・ウェイター | いずみ尚 | |
モーデリン・エヴァーグロット | ジョアンナ・ラムレイ | 宮寺智子 |
フィニス・エヴァーグロット | アルバート・フィニー | 土師孝也 |
バーキス・ビターン卿 | リチャード・E・グラント | 山野井仁 |
ゴールズヴェルス牧師 | クリストファー・リー | 家弓家正 |
グートネクト長老 | マイケル・ガフ | 西川幾雄 |
クロゴケグモ | ジェーン・ホロックス | まるたまり |
ミセス・プラム | 磯辺万沙子 | |
マゴット | エン・ライテル | チョー |
東西屋 | 大西健晴 | |
ちび将軍 | ディープ・ロイ | 宮田幸季 |
ボーンジャングルズ | ダニー・エルフマン | 南木直樹 |
エミール | スティーブン・バランタイン | 岩崎ひろし |
厳粛なビレッジボーイ | リサ・ケイ | 本城雄太郎 |
その他 | ||
歌唱 |
スタッフ
- 監督:ティム・バートン、マイク・ジョンソン
- 製作:ティム・バートン、アリソン・アベイト
- 脚本:ジョン・オーガスト、キャロライン・トンプソン、パメラ・ペトラー
- 製作総指揮:ジェフリー・オーバック
- 撮影:ピート・コザチク
- 美術:アレックス・マクダウェル
- 編集:ジョナサン・ルーカス、クリス・レベンソン、A.E.C
- 音楽:ダニー・エルフマン
- 視覚効果:ムービング・ピクチャー・カンパニー
日本語吹替えスタッフ
プロデューサー | 尾谷アイコ 小出春美(ワーナー・ホーム・ビデオ) |
翻訳 | 桜井裕子 |
演出 | 三好慶一郎 |
訳詞・音楽演出 | 亀川浩未 |
録音 | 山本和利 |
音響録音 | 久連石由文 |
制作 | ワーナー・ホーム・ビデオ 東北新社 |
作品解説
本作品は同監督による『チャーリーとチョコレート工場』と同時進行で制作され、主演のジョニー・デップを始め、キャスト・スタッフは一部重複している。ジョニーは本作品が声優初挑戦となった。日本では「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」が少し遅れてブームになっていたことも合わさり、ジョニー・デップの知名度や人気が一気に上昇した。
反響
本作品中に登場する、ボーンジャングルズがコープス・ブライドの生前の境遇を説明する歌において、“(a story) of our own jubiliciously lovely Corpes Bride”という歌詞が存在し、英語には本来存在しない“jubiliciously”という単語の意味をめぐって母語話者の間でも小論議が起こった。“jubilant”と“delicious”を組み合わせた造語であると解釈されるが、製作者側からの公式なコメントは特に無い。
受賞・ノミネート
- 第78回アカデミー賞:長編アニメ賞ノミネート
- 第33回アニー賞:作品賞ノミネート
- 第10回サテライト賞:アニメ・ミックスメディア映画賞・作曲賞ノミネート
- 第11回放送映画批評家協会賞:アニメ映画賞ノミネート
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー:最優秀アニメーション映画賞受賞
- 第32回サターンアニメ映画賞受賞
出典
- ^ “Tim Burton's Corpse Bride (2005)”. Box Office Mojo. 2009年9月17日閲覧。