コスモポリタニズム
コスモポリタニズム(英: cosmopolitanism)とは、全世界の人々を自分の同胞ととらえる思想。世界市民主義・世界主義とも呼ばれる。コスモポリタニズムに賛同する人々をコスモポリタン(訳語は地球市民)と呼ぶ。
概要
古代ギリシャのディオゲネスが初めて唱えた。その背景にはポリスの衰退により「ポリス中心主義」が廃れたこととアレクサンドロス3世(大王)の世界帝国構想があった。その後のストア哲学では禁欲とともにコスモポリタニズムを挙げて人間の理性に沿った生き方を説いた。近代ではカントが穏健なコスモポリタニズム的思想を打ち出した。
コスモポリタニズムの発展的・急進的形態として世界国家構想が挙げられる。これは「人種・言語の差を乗り越えた世界平和には全ての国家を統合した世界国家を建設すべきである」という考え方に立って主張されたものである。
現在においてこの構想に似た理想を掲げている組織はEUだが、EUはあくまでヨーロッパ圏内の統合を目指すものとされており、世界国家或いは世界政府を志向するものではない。
また、第二次世界大戦後のアメリカ合衆国はグローバリズムを掲げて世界各国に政治的・軍事的に介入をしており、事実上世界政治に最も実行力を持つ政府である。しかしアメリカは伝統的にはモンロー主義に代表される内向き・地域主義志向が強く、第一次世界大戦でモンロー主義から脱却した後も孤立主義的行動をしばしば採っている。
過去において最もコスモポリタニズムを指向した国家はソビエト連邦ともいわれる。ロシア革命を起こしたボリシェヴィキは、ロシア革命を世界革命の発端として考えていた。しかし、ソ連が期待していた西欧諸国での革命は起こらず、ソ連もスターリンが実権を握った後は一国社会主義に傾き、コスモポリタニズム的な世界革命論を唱えたトロツキーは追放された。
帝国主義もある意味では世界国家を目指す動きであるともいえる。帝国主義はしばしば普遍的理想を掲げるが、その統合のやり方が「世界の人々を同胞として捉える」のではなく、特定(当該国)の国家や民族が絶対的優位に立ち、自国は他国をも膝下に統べる資格があると唱える統合であるため、通常コスモポリタニズムとは呼ばない。
しばしば誤解されるが、アナキズムと同一ではない。アナキズムが政府を否定する考え方なのに対し、コスモポリタニズムは国家や政府の存在を肯定している。
関連項目
- 世界連邦運動
- 世界システム論
- 世界革命論
- ネオコン
- 世界の一体化
- パックス・アメリカーナ
- 新左翼
- トロツキズム
- スープラナショナリズム
- グローバリゼーション
- 帝国主義
- 国際連盟、国際連合、国連中心主義
- 国際連合議会会議
- フリーメイソン
- 八紘一宇、五族協和
外部リンク
- Cosmopolitanism - スタンフォード哲学百科事典「コスモポリタニズム」の項目。