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著作権法 (アメリカ合衆国)

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本項では、著作権の世界共通概念を踏まえた上で、アメリカ合衆国の著作権法 (英語: Copyright law of the United States、以下「米国著作権法」) について解説する。本項の対象は成文化された現行法の内容だけに留まらず、立法 (法改正による変遷)、司法 (著作権侵害訴訟の個別判断)、行政 (著作権移転などの管理業務) の三権の観点からも俯瞰する。また米国著作権法の適用範囲は米国外に及ぶこともあるため、本項の解説対象とする。

概説

米国著作権法は各州が独自の法律を有していたものの、1790年に初めて米国連邦法として成文化され、1947年からは合衆国法典第17編 (17 U.S.C.) に収録されている[1]。そのため、今日の米国著作権法の条文と言えば、主に合衆国法典第17編を指す[註 1]。立法府である連邦議会 (上院と下院の総称) によって米国著作権法の条文に多数の改正が重ねられ[註 2]著作者著作物とその利用者を取り巻く社会環境の時代的な変化に対応してきた。その立法権限の根拠が、合衆国憲法上で規定されているのが米国著作権法の特徴の一つである[註 3]。合衆国憲法の第1条第8節は連邦議会の有する権限全てが列記されており[註 4]、その第8項は著作権条項英語版 (Copyright ClauseまたはIntellectual Property Clause) の通称で知られ、著作権を含む知的財産権を保護する権限が記されている[註 5]

国際社会における米国著作権法の位置付けを見てみると、著作権に関連する主な国際条約にはベルヌ条約万国著作権条約WIPO著作権条約およびTRIPS協定の4本があり、米国はいずれも批准して加盟国入りしている。そのため日本を含むこれら条約の加盟国と米国との間で、権利保護の対象や保護の方法などの基本的な考え方は共通化している。また、合衆国法典第17編第104条によると、米国国籍者による著作物や米国内で流通する著作物だけでなく、条約加盟国の著作物にも米国著作権法で定めた権利保護が適用される。

19世紀から2010年代に亘る米国著作権法の主な改正ポイントとして「著作物の定義の拡大」、「著作権の保護期間の延長」、「米国籍以外の著作者や米国外に流通する著作物への追加対応」、著作物が所管官庁に登録されなくとも自動で権利保護される「無方式主義の採用」、「デジタル著作物への著作権侵害の罰則と免責の明確化」などが挙げられる。詳細は#法改正の歴史の節で後述する。

個々の著作物に目を向けると、米国著作権の保護対象には文芸、美術、音楽、学術、ソフトウェアなど多用な創作物が含まれ、かつそれらが社会に流通するプロセスが多様化していることから、著作権侵害の有無が問われる訴訟も多い。そのため著作権法には、合衆国法典第17編に収録された「成文法」としての側面だけでなく、司法府である裁判所の解釈が積み重なった「判例法」としての側面も強い。一部の訴訟は、米国に本社を置くグローバル企業が被告または原告となるケースもあり、これらに対する最高裁判所や連邦控訴裁判所の司法判断は、米国内外を問わず広く報じられることも多い。詳細は#司法判断の節で後述する。

市民への日々の政府サービス機能としては、アメリカ合衆国著作権局 (略称: USCO) がアメリカ議会図書館の一部門として設けられ、著作物の登録や著作権の移転などの管理業務を担っている[4]他、一般向けに著作権法の理解を深める情報発信も行っている[註 6]。日本の類似機能としては、文化庁著作権課 (前身は文部省文化局) がこれに該当するが、文化庁著作権課が行政府の一機能であるのに対し、USCOは組織定義上は立法府の一機関という差異がある[註 7]。著作権は財産の一部であることから、土地・建物のように自由に著作者が第三者に著作権を相続・売却したり、著作権は保持しつつも使用許諾を第三者に与えることができる。その際、権利者の名義が移転する (書き換えられる) ため、USCOがその管理を行っている。ベルヌ条約の批准に伴い、無方式主義を米国も採用するようになったことから[7]、著作権保護の観点ではUSCOへの著作物の登録は必須ではなくなった[註 8]。その反動で、著作物を利用したくとも許諾を求める相手が不明な著作物 (orphan works、直訳は孤児著作物) が増加し、著作物の社会利用が妨げられるジレンマを抱えるようになった[8]

著作権者と著作物の利用者間を仲介する民間サービスとしては、著作権管理団体の存在が挙げられる。著作権管理団体は著作権者に代わって著作物の利用ライセンスを販売したり、ライセンス料を徴収・分配する集中管理・決済機能を果たしており、音楽や映画、出版など業界別に複数の団体が米国に存在する[9]。著作権管理団体は民間ではあるものの、多くの著作物のライセンス権を取り扱うことから、司法省の監督の元で反トラスト法 (米国の独占禁止法) の規制が一部掛かっている[9]

現行法の主な特徴

※本節における「現行」とは、特記のない限り2019年2月現在の合衆国法典第17編 (米国著作権法) [10]に基づき記述している。条文内の専門用語は、合衆国著作権局 (USCO) による定義解説に準拠する[6]。各種用語の日本語訳は、公益社団法人著作権情報センターの表記を一部参照しつつ[2]日本国著作権法で多用される一般的な著作権用語に一部置き換えている。

※米国著作権法は特にデジタル著作物に関連する法改正が頻繁に発生しており、1998年10月28日から2014年12月4日の約16年間を例にとると、この期間に可決・制定された著作権の改正立法は計20本以上に上る[2]。条文の最新は合衆国法典の公式ウェブサイトを参照すること。

合衆国法典第17編の全体構成

  • 第1章 著作権の対象および範囲 (Chapter 1: Subject matter and scope of copyright) - 第101~122条
  • 第2章 著作権の帰属および移転 (Chapter 2: Copyright ownership and transfer) - 第201~205条
  • 第3章 著作権の保護期間 (Chapter 3: Duration of Copyright) - 第301~305条
  • 第4章 著作権表示、納付および登録 (Chapter 4: Copyright notice, deposit and registration) - 第401~412条
  • 第5章 著作権侵害および救済 (Chapter 5: Copyright infringement and remedies) - 第501~513条
  • 第6章 輸入および輸出 (Chapter 6: Importation and Exportation) - 第601~603条
  • 第7章 著作権局 (Chapter 7: Copyright office) - 第701~710条
  • 第8章 著作権使用料審判官による手続 (Chapter 8: Proceeding by copyright royalty judges) - 第801~805条
  • 第9章 半導体チップ製品に対する保護 (Chapter 9: Protection of semiconductor chip products) - 第901~914条
  • 第10章 デジタル音声録音装置および媒体 (Chapter 10: Digital audio recording devices and media) - 第1003~1010条
  • 第11章 録音物および音楽ビデオ (Chapter 11: Sound recordings and music videos) - 第1101条
  • 第12章 著作権保護および管理システム (Chapter 12: Copyright protection and management systems) - 第1201~1205条
  • 第13章 創作的なデザインの保護 (Chapter 13: Protection of original designs) - 第1301~1332条
  • 第14章 -- (Chapter 14: Unauthorized use of pre-1972 sound recordings) - 第1401条

合衆国法典第17編は章 (Chapter) の名称とその内容に一部不一致が起こっており、章の下の条 (Section) レベルで参照しないと、全体構成が把握できないため注意が必要である。これは米国著作権法の改正が頻繁に起こり、その度に権利保護の対象となる著作物が増え、例外や罰則などが追加で規定されてきたためである[11]

著作物の利用者の観点では、著作権者に無断で利用しても著作権侵害に当たらないケースとして、フェアユース (公正利用、第107条) が知られている。しかしフェアユースは原則論に留まっており、著作物の種別や条件に応じた個別規定は複数の条にまたがっている点に留意が必要である。

また日米の著作権法を比較すると、その目次構成が異なる。これは世界の著作権法の考え方が大陸法と英米法に大きく分かれ、日本は大陸法、米国は英米法の流れをそれぞれ汲んでいるためである。日本の著作権法は著作権を「著作者の権利」(著作者本人) と「著作隣接権」(著作物の流通に寄与する実演家や放送事業者など) に大きく分けているのに対し、米国著作権法では著作隣接権と銘打った章はない。これは英米法がもともと、著作隣接権を著作権の一部として見なしていなかった経緯がある。

著作権の対象と範囲

著作物の類型

米国著作権法が定める著作物とは「言語著作物」、「音楽著作物」(これに伴う歌詞を含む)、「演劇著作物」(これに伴う音楽を含む)、「無言劇および舞踊の著作物」、「絵画、図形および彫刻の著作物」、「映画およびその他の視聴覚著作物」、「録音物」、「建築著作物」の8種に分類されているが、例示でありこれらに限らないと記されている (第102条)。

著作権と産業財産権 (特許権や商標権などの総称) は共に知的財産権の一種であることから、各国の法律では著作権と産業財産権のどちらで保護するか境界線が曖昧な対象物があり、その代表例がコンピュータ・プログラムである。著作権とは一般的に「文化の創造・発展のための表現」を保護するのに対し、産業財産権は「産業の発達のための技術的思想・アイデア」が保護の対象となっている。しかし米国著作権法では、実用的・機能的なコンピュータ・プログラムも著作権法の保護対象としている[12][13]

また、原著作物を活用した「編集著作物」と「二次的著作物」も法の保護の対象となる。編集著作物とは、既存の素材またはデータを選択し、整理しまたは配列し、これらを収集し編成して作られた著作物である。二次的著作物とは、原著作物を用いて、翻訳、編曲、脚色、映画化、改訂するなどして創作された作品を指す (第102条)。これらの編集ないし二次的著作物と、その素材となった原著作物の著作権は別個に存在する (第103条)。

著作物の発表の定義

著作物の流通の観点からは、「既発表」(published) と「未発表」(unpublished) に分類され、著作権の保護範囲が異なる[註 9]。「発表」(publication, publish) の定義とは (第101条)、「著作物を複製 (copy) またはレコード収録 (phonerecord) し、一般に頒布すること」であり、「販売その他手段による所有権の移転、レンタル、リースや貸与」が頒布の具体的手段として挙げられている。そして「更なる頒布、実演または展示を目的として、複製またはレコード収録した著作物を特定の団体組織に提供することを発表と呼ぶ」としている。注意点として、「著作物を公に実演したり展示する行為そのものは、ここでの発表には含まれない」とされる[註 10]

著作物の多くがインターネットを介して流通している現代社会において、発表の境界線をどのように解すべきか、いくつかのアプローチがとられている。全米の著作権関連団体・企業などが参加する米国著作権連盟英語版 (The Copyright Alliance) によると、公衆向けに流通・販売・展示する目的で、著作物が複製またはレコード収録された最初の日が、既発表と未発表の境目だとされる。既発表の著作物の場合、発表日を起点として著作権の保護期間が計算される[14]

また米国メディア写真家協会英語版 (ASMP) は、写真のデジタル画像をウェブサイトにアップロードした場合、発表に相当するのかについて回答を寄せている[15]。同協会によると、

  • 顧客に依頼されて撮影した写真をデジタルデータの形式で納品した場合、「複製またはレコード収録した著作物を特定の団体組織に提供」に該当するため、発表と見なされる可能性がある
  • 写真家個人が運用するウェブサイトにデジタル画像を掲載した場合、そのサイトが一般からアクセス可能な状態であれば発表と見なされ、またそのウェブサイト自体が写真だけでなく文章やイラストなどの著作物で構成されているため、ウェブサイト全体が著作権保護の対象となるだろう

と解説している。ただし個別ケースの判断においてはUSCOのCircular (手引書) を参照するよう推奨している。Circular 66では、ウェブサイトおよびそのコンテンツに関する著作権登録について記述されている[16]

国際的な著作物への米国著作権法の適用範囲

著作物や著作者の国際化の観点からは、既発表と未発表著作物で対応が異なる (第104条)。未発表著作物の場合、著作者の国籍や現在居住地は不問で著作権の保護対象になる。一方の既発表著作物は、以下6要件のいずれか1つ以上に該当すれば、米国著作権法が適用される。なお、文中の「条約加盟国」の定義は#国際条約の加盟で後述する。

  1. 発表初日の段階で、著作者の一人以上が「米国籍あるいは米国住民」、「条約加盟国の国民、住民、あるいは加盟国の政府機関などの主権者」、「無国籍者 (現在居住地は問わない)」のいずれかに該当する場合
  2. 米国内で最初に発表されたか、あるいは発表初日の段階で条約加盟済の国で発表された場合
  3. 音声レコーディングのうち、条約加盟国内で最初に録音完了したもの
  4. 絵画、図形または彫刻作品のうち、ビルなどの建造物に組み込まれている場合、あるいは建築著作物のうち、米国ないし条約加盟国内のビルなどの建造物に組み込まれている場合
  5. 最初の発表者が国際連合もしくは国際連合の専門機関、または米州機構 (OAS) の場合
  6. 一定の条件下で、米国大統領の布告 (proclamation) によって保護すると指定された著作物
著作者の有する排他的権利

著作者が有する諸権利を日本の著作権法ではまとめて「支分権」と呼んでいるが、米国著作権法では「排他的な権利」(exclusive rights) という強い表現が使われているのが特徴である。具体的に排他的権利とは「著作物のコピーまたはレコード複製」、「二次的著作物の作成」、「販売、所有権の移転、貸与による頒布」、「著作物を使った実演」、「著作物を使った展示」、「録音物の場合、デジタル音声送信による実演」の6点だと定義されている (第106条)。換言すると、複製や頒布などを著作者の許諾なしに第三者が行うと著作権侵害になることを意味する (第501条)。

さらに1990年制定の法改正 (Copyright Act of 1990) により、いわゆる著作者人格権が付け加わった (第106A条)。ただし日本の著作権法と異なり、著作者人格権が認められるのは視覚芸術著作物 (visual arts) に限定されている。米国著作権法における視覚芸術著作物とは、絵画・素描・版画・彫刻・展示目的の現像写真の5種類に限られている。さらにこれら5種類のうち、複製が200点以下であり、シリアルナンバーと著者の署名が刻まれているものに限定し、著作者人格権が認められる (第101条)。つまり、容易に大量複製や翻案化できるもの、あるいは大衆向け商業目的の著作物には著作者人格権が認められない。著作者人格権が認められないケースとして、ポスター、地図・地球儀、海図、技術図面、図表、模型、応用美術、映画などの動画、書籍、雑誌、新聞、定期刊行物、データベース、電子情報サービス、電子出版物、商品、広告宣伝・説明、パッケージなどの包装・容器、職務著作物が挙げられている (第101条)。

複製された著作物の所有者の権利

米国著作権法では、著作者本人だけでなく、著作物のコピーまたはレコードの「所有者」の権利についても定められている。所有者とは例えば、出版された書籍や音楽ダウンロードサービスで楽曲を購入した消費者である。これら所有者は、著作権者の許諾なしで自由に所有物を売却処分することができる。ただし、録音物またはその録音物に含まれる音楽著作、あるいはコンピュータ・プログラムのコピー所有者が処分する際には、一部の例外を除き、著作権者の許諾が必要になる。また所有者は、著作物のコピーまたはレコード複製を使って、その場で一般の観衆向けに展示することができる。展示が許されるのは所有者であり、著作権者から著作物を貸与された場合は適用外となる (第109条)。

著作権保護の例外と制約

米国著作権法では、権利の強い排他性を第106条と第106A条で述べ、第107条以降でその排他性を緩和する諸々の例外と制約事項が付け加えられる条文の構造となっている。

著作権で保護されない著作物はパブリック・ドメイン (公有) とみなされ、その内訳は著作権が元来発生しない性質の著作物と、著作権は発生したが後に消滅した著作物に大きく分けられる。これらパブリック・ドメインに帰す著作物を第三者が利用しても、上述の排他的権利を侵害したことにはならない。また著作物そのものはパブリック・ドメインに帰してはいないものの、一定の条件を満たしていれば著作者に無断で利用しても著作権侵害とはならない。その代表例がフェア・ユース (公正利用) である。

パブリック・ドメインの著作物

合衆国法典上、元来権利が発生しない著作物としては合衆国政府の著作物が挙げられる (第105条)。ただし、州政府などの地方自治体の著作物については、合衆国法典の規定の範囲外であり、各自治体で別途定められている。例えばオレゴン州ジョージア州などでは、注釈付きの州法法令集は著作権保護の対象内だとしている[註 11]

著作権保護が消滅してパブリック・ドメインに帰す著作物には、著作権の保護期間切れなどがある。保護期間の詳細は#著作権の保護期間で後述する。

フェアユース (総論)

フェアユースの利用シーンとしては「批評、解説、ニュース報道、教育、研究または調査」が例示されており、また最終的には「使用の目的」(非営利の教育など)、「著作物の内容」、「量・質の両側面から著作物が使用された割合」、「使用によって著作物の市場価値にどの程度影響を及ぼすか」などを考慮して総合して判断される。条文ではincludingやsuch asといった表現が使われていることから、これら利用シーンや考慮点はあくまで例示である点に留意が必要である (第107条)[註 12]

保護制限の個別規定

第107条のフェアユースとは別に、特定条件下で著作権者の排他的権利に制限がかかり、利用が緩和・促進されている条項が複数ある (第108条~122条)。例えば、図書館や文書資料館による複製は公共の利益目的であり、著作権侵害に該当しないとされている (第108条)。またコンピュータ・プログラムにも著作権が認められるが、そのプログラムのコピー所有者が著作者に無断で新たにコピーまたは翻案物 (adaptation) を作成する場合、一定の条件を満たしていれば著作権侵害とならない。その条件とは、コンピュータ・プログラムを内蔵した機械・端末を生産する目的であり、それ以外に転用されないこと、あるいは保存目的で更なるコピーまたは翻案物を作成し、所有者が所有権を喪失した時点で廃棄することの2点である (第117条)。

著作者と第三者の権利関係

個人・団体を問わず著作権を有する者を「著作権者」と呼ぶが、米国著作権法では著作権が誰に帰属するのかを大きく3つに分けて定義している (第201条)。第一に、著作物の著作者 (最初の作成者) が著作権者だとする「原始的帰属」 (Initial ownership) という基本的な考え方である。第二に、雇用主の命により業務の一環で従業員が著作物を作成した場合は、著作者である従業員個人ではなく雇用主が著作権者だとする「職務著作」 (Works made for hire、またはWorks for hire) の考え方である。第三に、個々の著作物を寄せ集めて作成・編纂された「集合著作物」である。複数の楽曲を収録した音楽アルバムや、複数のジャーナリストが寄稿して発行される雑誌などが集合著作物に該当する。集合著作物の著作権と、それを構成する個々の著作物の著作権は別個に存在する。

また第106条で定められた排他的権利 (支分権) は、譲渡や独占ライセンス許諾、抵当設定、相続などによって著作者から第三者に移転 (transfer) することができる。移転は支分権全てである必要はなく、その一部のみ移転させることが可能である。例えば、小説の作者が小説出版権 (原著作物の頒布権) を出版A社に売却し、小説の映画化権 (二次的著作物の作成権) を映画配給B社に売却するといったように、諸権利をバラバラに分解する行為も移転と定義される。また、独占ライセンスの許諾に有効期限を設定したり、その独占をある地域に限定するといった、時空を特定することも可能である (第201条)。ただし、米国著作権法上の移転の定義には、非独占ライセンス許諾は含まれない (第101条)。また移転の対象に第106A条は含まれないことから、著作者が死去すると著作者人格権は第三者に継承できないと解される (第201条)。

ここでいう著作権者とは、著作物の排他的権利を有している者であって、排他的権利を行使して作成された実物の所有者 (購入者) とは分けて捉えられている (第202条)。例えば小説を執筆した著作者がその小説を出版販売したとしても、小説の購入者が所有しているのは小説という実物の商品のみであって、小説の著作権まで購入したわけではないという意味である。

著作権の移転が効力を発揮するには、著作権者あるいはその代理人による署名付きの書面作成が必須となる (第204条)。この譲渡証書は任意でUSCOに登録することもできる (第205条)。

著作権の保護要件

著作権の保護期間

原則は著作者の没後70年間が保護期間となる。しかし著作権の保護期間は数回の法改正により延伸していることから、現行法においては著作物の発表日が1978年1月1日 (1976年制定の著作権改正法の発効日) を境にして保護期間が異なるほか、様々な条件分岐が発生している。未発表または米国内で初めて発表された著作物 (但し録音物および建築物を除く) を例にとると、保護期間は以下となる[19]

1976年制定の改正法以前の法的スキーム (旧法) が適用される著作物[註 13]
発表日 著作権表示あり 著作権
表示なし
更新手続あり 更新手続なし
1923年以前 PD PD PD
1924年1月1日 - 1963年12月31日 発95 PD PD
1964年1月1日 - 1977年12月31日 発95 発95 発95
1976年制定の改正法以降の法的スキーム (新法) が適用される著作物[註 14]
発表日[註 15] 創作日 実名著作物 実名著作物以外
著作権
表示あり
著作権表示なし 著作権
表示あり
著作権表示なし
事後登録
あり
事後登録
なし
事後登録
あり
事後登録
なし
1978年1月1日 -
1989年2月28日
1977年以前 旧法 or
2047末
没70 PD 旧法 or
2047末
発95 or
創120
PD
1978年以降 没70 没70 PD 発95 or
創120
発95 or
創120
PD
1989年3月1日 -
2002年12月31日
1977年以前 旧法 or
2047末
旧法 or
2047末
旧法 or
2047末
旧法 or
2047末
旧法 or
2047末
旧法 or
2047末
1978年以降 没70 没70 没70 発95 or
創120
発95 or
創120
発95 or
創120
2003年以降 1977年以前 没70 没70 没70 発95 or
創120
発95 or
創120
発95 or
創120
1978年以降 没70 没70 没70 発95 or
創120
発95 or
創120
発95 or
創120
未発表 不問 没70 没70 没70 創120 創120 創120
凡例
凡例 解説
没70 著作者の没後70年間
発95 or 創120 発表から95年間、あるいは創作から120年間のいずれか短い方
(職務著作、変名著作、無名著作、著作者の死亡日不明など、実名著作で定めた「没後70年間」を適用できないため)
発95 発表から95年間
創120 創作から120年間
旧法 or 2047末 旧法で規定の保護期間満了まで、あるいは2047年12月31日までのいずれか長い方
PD 保護期間が消滅し、パブリック・ドメインに帰す

1978年1月1日以降に創作された著作物に対しては、米国著作権法では一般的に著作者の没後70年までとされる。著作者が複数人いる場合は、最も生存の長かった者を基準とする。ただし、職務著作・無名著作 (著作者不明)・変名著作 (ペンネームや芸名などを使った創作)・著作者の没年不明の場合は、創作日から120年あるいは発表から95年のいずれか短い年数が適用される (第302条)。

1978年1月1日より前 (1977年12月31日以前) に創作された著作物の保護は、既発表と未発表で保護期間が異なる。未発表かつパブリック・ドメインにも帰していない場合は、上述の第302条と同期間が適用される。ただし、この未発表著作物が1978年1月1日~2002年12月31日の間に発表された場合は、2047年12月31日まで著作権の保護が認められる (第303条)。また、1978年1月1日より前に頒布していても、レコードに関しては既発表とは見なされない例外が設けられている (第303条)。

1978年1月1日より前に創作された既発表著作物のうち、1978年1月1日時点で最初の保護期間中の場合は、28年間が認められる。また最初の保護期間が満了した後、一定の条件を満たせばさらに67年間更新延長できる (第304条)[註 16]

ただし、著作者の生死に関わらず、1923年12月31日以前に創作 (楽曲の場合は1922年12月31日以前に作曲) された著作物は、保護期間が消滅してパブリック・ドメインと見なされる[19]

米国著作権法の場合、保護期間の満了日は暦年の最終日までとされる (第305条)。例えば1980年代に創作され、著作者が1990年9月1日に死去した場合、著作権の保護期間は死後70年のため2060年であり、その暦年の最終日である2060年12月31日が満了日となる。日本の著作権法でも死後70年で満了の場合、死去日の翌年から起算して70年間のため、満了日は必ず暦年の最終日 (12月31日) に到来する[20]。したがって米国と日本の満了日の計算方法は実質的に同じである。

著作権保護の手続

著作権侵害と救済

民事訴訟

侵害された被害者 (著作権者) は、請求権が発生してから3年以内であれば民事訴訟を起こすことが可能である (第507条)。裁判は長期化することもあるため、短期的な救済として差止命令、差押や処分を被害者は裁判所に請求し、さらなる侵害を食い止めることができる。差止命令とは侵害者の行為を止めさせる裁判所命令であり、合衆国全域で効力を発揮する。換言すると、差止命令の法的強制力は米国外には及ばないことを意味する。差止命令の法的根拠と手続については、合衆国法典第28編 (各種訴訟法) の第1498条 (特許権および著作権) に定められている。また、著作物を違法に複製している場合などは、その複製物を差押するだけでなく、複製のために用いられる版木やテープといった手段も廃棄処分できる。

金銭的な補償として、被害者は現実損害賠償あるいは法定損害賠償を選択できる。現実損害賠償の場合、被害者が被った現実損害の額と、著作権侵害者が得た利益の総額で算出される。被害者は侵害者の総収入のみ立証責任がある。総収入のうち、著作権侵害以外から得た収入などがある場合は、侵害者側の申告で初めて控除され、現実損害賠償額が最終決定される。

一方、法定損害賠償を選択した場合、著作物1点あたり、原則は750ドル以上3万ドル未満で裁判所が賠償金額を決定する。原著作物を用いて作成された編集著作物や二次的著作物も著作権侵害を被った場合、著作物1点あたりの賠償単価が上乗せされることはあるが、「著作物1点」がダブルカウントされるわけではない。また、著作権侵害が故意だと認められた場合は、賠償単価の上限が3万ドル未満から15万ドル未満まで増額される。逆に侵害者が知らずに侵害していた場合は、賠償単価の下限が750ドル以上から200ドル以上まで減額される[註 17]

損害賠償に加えて、民事訴訟に要した費用も請求できる。具体的には提訴に要する諸手続の費用の他、雇用した弁護士への報酬支払額も補填の対象となる。

インターネット関連事業者への免責

著作権侵害がインターネットを介して行われた場合、その通信環境を提供したインターネットサービスプロバイダー (ISP)、またはオンラインサービスプロバイダー (OSP) あるいはデータキャッシング事業者各社は、一定の条件下で損害賠償を免責される (第512条)。この免責条件は1998年制定・施行のデジタルミレニアム著作権法によって加えられ、いわゆるセーフハーバー英語版条項とされる[註 18]。ISPやOSPに適用される免責条件を例に取ると、以下の5要件全てを満たしている必要がある。

  1. 著作権侵害のデジタルデータがISPやOSP以外の第三者によって送信されたこと
  2. 送信・転送・接続・データの蓄積が自動的に行われていること
  3. データの受信相手をISPやOSPが指定していないこと (ただし相手からの返信で自動送信したケースは「指定」に含まれない)
  4. 受信者以外の第三者がアクセス可能な方法でシステム上に侵害データを保存していないこと (受信者が未受信のままサーバー上のメールボックスに保存されている分には問題ない)
  5. 送信の際にデジタルデータをISPやOSPが改変していないこと

また同512条では、いわゆる「ノーティス・アンド・テイクダウン」手続についても規定している。これは著作権者の許可なく著作物が第三者によってウェブサイトに掲載されたと通知 (notice) を受けた場合、そのウェブサイトの運営者が速やかに削除 (takedown) すれば損害賠償などを免責されるという仕組みである。運営者が免責される要件や要点は以下の通りである[22]

  • ウェブサイトの運営者は、著作権者が侵害を通知できる連絡先を常に掲示しておかなければならない。
  • 著作権者から削除要請の通知を受けた時点で、実際に著作権侵害に当たるか否かをウェブサイト運営者自身が判断する必要はない。
  • 削除した後、運営者はその情報を無断掲載した本人に対し、削除済の通告をしなければならない。
  • 無断掲載者から反対通知 (著作権侵害ではないとの反論) がなければ、たとえ著作権侵害に当たらない内容だったとしても削除されたままで問題ない。
  • 無断掲載者から反対通知が届いた場合、ウェブサイトの運営者はその反対通知の写しを著作権者にも提供しなければならない。
  • 反対通知の写しを受領した著作権者が10~14営業日以内に提訴しない限り、ウェブサイトの運営者は削除済の内容を復活させる。
  • ただし、ウェブサイトの運営者が著作権侵害の事実を明確に知りえた場合は、著作権者からの削除申請通知がなくても、削除などの適切な対応をとらなければならない。

米国のノーティス・アンド・テイクダウン手続は、ウェブサイトの運営者に対して「『とりあえず削除』のインセンティブを高めてしまうのではないか」との懸念が呈されており、日本においても2012年総務省主催の専門家ワーキンググループ会合にて、日本に同様の法制度を導入することへの慎重論が展開された[22][23]。また、米国のオンラインニュースTechCrunchでは「史上最高に馬鹿げた著作権侵害のDMCA通告」と題して批判している[24]

刑事手続

被害者による民事訴訟以外に、警察や検察が刑事事件として手続を執る場合がある。著作権侵害が刑法上で扱われるのは、(1) 故意で商業的あるいは私的利益を目的とした場合、(2) 過去180日以内に総額1000ドル以上の市場価値を有する複製または頒布を行った場合、(3) 商業的な目的でインターネット上で著作物を頒布した場合の3条件のいずれかに該当する場合である。

具体的には合衆国法典第18編 (刑法および刑事訴訟法) の第2323条 で定められた方法に従って、没収・破棄・返還を行うことができる。また他者を欺く目的で偽りの著作権表示を行ったり、そのような欺罔的な表示の複製品を頒布・輸入したり、著作権表示自体を除去したり、偽りの著作権登録申請を行った場合は、それぞれ2500ドル以下の罰金に処せられる。

侵害が発生してから5年以内であれば刑事手続の着手は可能で、刑事手続の詳細は合衆国法典第18編の第2319条 (著作権侵害) に定められている。

法改正の歴史

連邦法初の著作権法は1790年に新聞の一面に全文が掲載された。

米国の著作権法は、世界初の本格的な著作権の制定法とも言われる英国のアン法の流れを汲み[25]、独自の米国連邦法としては初めて1790年に著作権法 (Copyright Act of 1709) が制定された[註 19]。議会可決後の承認署名は初代大統領のジョージ・ワシントンである[25]。その後、時代の変遷に合わせて多くの改正が重ねられている。

米国内法の主な改正点

改正立法は無数に存在するが、以下が著作物のジャンル横断で適用される主な改正点である[註 20][註 21]

初期

1790年制定の米国著作権法では、著作物は登録しなければ権利の保護対象とはならなかった。かつ、登録された著作物の保護期間は作成から14年間であり、著作者が生存している場合はさらに14年間が延長されるため、最大で計28年間が認められていた[26]。1790年当時の著作物の対象は書物 (books)、地図 (maps) および図表 (charts) の3種類に限定されていた[27]。音楽は著作権保護の対象として明文化されていなかったものの、慣習的に「書物」に分類され、著作物の登録がなされていた。音楽が著作権の保護対象として正式に明文化されたのは、1831年の著作権改正法である。また、絵画 (paintings) やデッサン (drawings) が明文化されたのは、1870年の著作権改正法である[28]

また1790年の米国著作権法では、その権利保護の対象は米国籍の著作者であり、米国内に流通する著作物に限定されていた[29]。すなわち米国内で出版した海外からの輸入本や、米国籍の著作者が米国外で販売した音楽レコード輸出などは権利保護の対象外であったことから、これらの著作者に印税やライセンス料が入らない事態が発生していた[30]。1891年の国際著作権改正法によって、著作権保護の対象がこれらの国際的な著作物にまで広がることとなる[28]

国際条約に基づく大幅改正

米国著作権法における20世紀最大の大幅改正が、1976年の著作権改正法 (Copyright Act of 1976; 1976年制定、1978年1月1日施行) である[註 22]。当改正以前は連邦法が既発表著作物を、そして州法が未発表著作物の著作権をそれぞれカバーしていたが、当改正によって正式に未発表著作物も連邦法による保護下に含まれることとなった。これに伴い、USCOへの著作物の登録も任意となっている[32]。また当改正以前は、フェアユースが専ら司法判断に任されていたものの、当改正によって正式に成文化された[33]。これらの改正の背景としては、万国著作物条約の批准後の国内法整備、およびベルヌ条約批准に向けた準備が挙げられる。

また技術革新や社会需要に伴い、1976年の著作権改正法では著作物の定義が広がった。定義を記した第102条や、連邦議会に提出された改正法の主旨文には、映画、テレビ、ラジオ、コンピューター・プログラムなどの文言が登場している[34]。映画を例にとると、米国における映画館のスクリーン数は1975年頃を境に急激に増加しており、ハリウッド映画業界の転換期とされている[35]。またIT業界では、マイクロソフト社の前身であるTraf-O-Data社が1972年に[36]アップルコンピュータ社が1976年にそれぞれ創業するなど[37]、コンピューター・プログラムが米国産業の成長の柱となり始めた時代でもある。貿易赤字に苦しんでいた当時の米国にとって、米国著作権法を改正することで、映画やITなどの知的財産を国際水準で保護して、輸出を促進する狙いがあったとの指摘もある[7]

デジタル著作物対応

国際条約の加盟

司法判断

著作権管理サービス

合衆国著作権局

著作権管理団体

関連項目

  • 著作権 - 世界各国共通の法的概念を解説
  • 著作権法 - 日本の著作権法に特化した詳細解説

註釈

  1. ^ 完全に州法が廃止されたわけではなく、州法は主にUSCO未登録の著作物を対象とした権利保護に活用されている。また、連邦法で著作権の保護対象外として挙げられていない著作物が、州法では保護対象内であると規定されているケース (例: 州法の条文や州政府の発行書物など) がある。
  2. ^ 1998年10月28日から2014年12月4日を例にとると、この期間に可決・制定された著作権の改正立法は計20本以上に上る[2]
  3. ^ 日米で比較すると、日本国憲法第41条~第64条が「国会」に関する記述であるが、主に国会の運営方法について定められており、国会が有する権限 (なすべき役割) として著作権あるいはその上位概念の知的財産権保護という文言は登場しない[3]
  4. ^ この列記された諸権限をEnumerated Powersと呼ぶ。
  5. ^ 知的財産権は著作権 (文化の創造と表現の保護) と、特許権などの産業財産権 (産業アイディアを促進) に分けられる。Copyright Clauseと一般的には呼ばれることが多いが、著作権と産業財産権の双方を包含した知的財産権全般を指している条項であることから、Intellectual Property Clauseの方がより正確である。
  6. ^ その一例として、難解な米国著作権法の条文を読み解く上での手引き書として、Circularsと呼ばれるレポート[5]の他、専門用語の定義をまとめたFAQ (よくある質問) コーナー[6]などもサイト上に公開している。
  7. ^ 連邦議会の運営を助けるため、様々な著作物を収集するアメリカ議会図書館が生まれた。そして図書館の充実を図るために著作物を収集する過程で、著作物を登録して著作者を保護する業務が発生したことから、アメリカ議会図書館内にUSCOが部局として設けられている。
  8. ^ ただし著作権侵害などで訴訟を起こす際には、米国籍の著作者あるいは米国で発表された著作物に限り、USCOへの著作物の事前登録が必要となる[7]
  9. ^ publishは「発表」や「公表」以外に「発行」の日本語訳が充てられることがあるが、いずれにしても紙で印刷された著作物に限定されない。
  10. ^ 原文は"Publication" is the distribution of copies or phonorecords of a work to the public by sale or other transfer of ownership, or by rental, lease, or lending. The offering to distribute copies or phonorecords to a group of persons for purposes of further distribution, public performance, or public display, constitutes publication. A public performance or display of a work does not of itself constitute publication.である。
  11. ^ 州法法令集の著作権を巡っては、ジョージア州対マラムッド裁判などが起こっている。2015年7月、ジョージア州はPublic.Resource.Org英語版の創設者でありオープンコンテンツ推進の活動家でもあるカール・マラムッド英語版を相手取り、著作権侵害でアトランタの連邦裁判所に提訴した。訴状によると、注釈付きのジョージア州法をマラムッド自身のウェブサイトに掲載した著作権侵害は「テロ行為」(terrorism) だとジョージア州は糾弾しているものの、両者の主張は対立している[17][18]
  12. ^ 用語の定義が記された第101条において、"The terms "including" and "such as" are illustrative and not limitative." (includingやsuch asといった表現はイメージの例示であり、例以外を排除するものではない) と記されている。
  13. ^ 旧法では未発表の著作物、および既発表でも著作権表示や延長更新手続を怠った著作物は、著作権法の保護対象外であった。
  14. ^ 1976年制定の改正法が1978年1月1日より施行され、未発表著作物も保護対象となった他、著作権表示や登録などの手続が保護要件から外されたほか、著作権保護期間が全般的に延伸した。またソニー・ボノ著作権延長法によりさらに期間が延伸し、下表の状況に至る。
  15. ^ Copyright Act of 1976 (1976年制定の改正法) が1978年1月1日より施行、Berne Convention Implementation Act of 1988 (1988年制定のベルヌ条約履行法) が1989年3月1日より施行。
  16. ^ ここでの「最初の保護期間」であるが、1976年制定の著作権改正法以前は、保護期間が28年 + 更新延長28年の2段階方式に設定されており、「最初」は前者を指している。最初の保護期間が満了した時点で著作者が生存していれば、更新延長が可能であった。
  17. ^ 「侵害者が知らずに」の例として、第107条のフェアユースが挙げられている。侵害者は自らの行為がフェアユースだと信じていて、かつその侵害者が非営利の教育機関、図書館、資料館、あるいは公共放送事業者であった場合、減額される。
  18. ^ 法学におけるセーフハーバー (safe harbor、安全な港) とは、ある一定条件下での行為であれば違法ではないとする例外規定のことである。例えば土地の所有者に対して、土地面積を計測して報告する義務を課す州法が新たに成立したとする。後に報告された面積が実態と乖離していたら、罰金を科すのを原則とする。ただしこの乖離が計測器の不備や外部委託業者の不手際で生じた場合、土地所有者に対する罰金は免ぜられる。このような免責をセーフハーバー条項と呼ぶ[21]
  19. ^ 1790年以前も一部の州では州法レベルで著作権を成文化していた。
  20. ^ "Act of 西暦年"となっているがこれらは法律の制定年であり、施行年ではない。例えばCopyright Act of 1976は1976年に連邦議会で可決されて制定されたものの、施行は1978年1月1日である。
  21. ^ 「1976年制定の著作権法 (Copyright Act of 1976) が現行法である」との記述が一部見受けられるが、これは誤りである。1790年の初回立法以外はほぼ部分修正・加筆の改訂法であり、1976年制定の改正法もその後一部が上書きされている。米国連邦法は、まず連邦議会に法案 (Bill) が提出され、可決・承認されると制定法 (Act) になり、現行法に修正・加筆がなされて更新されるプロセスを経る。したがって、著作権法の現行法全量は主に合衆国法典第17編のことを指し、Copyright Act of 1976など初回立法以外のActには改正の差分しか含まれていない。
  22. ^ 当改正の結果、著作権法を収録した合衆国法典第17編の条 (section) の採番体系が全面的に刷新されたため、1977年以前と1978年以降で条文を参照する際には対比表を用いる必要がある[31]

出典

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  11. ^ 例えば20世紀に入ってから世に登場した半導体チップ製品は、その著作権について第9章にまとめて追記されている。その一方で、衛星放送によるテレビ番組の遠隔二次放送に関しては、第1章の第119条に規定されている。この第119条には章名に呼応した著作権保護の範囲だけでなく、著作権侵害発生時の救済手段、放送コンテンツの使用許諾の手続やUSCOへの支払明細書の送付方法など、他章に横断する委細が記述されている。
  12. ^ 仙元隆一郎 (同志社大学教授) (2002年). “コンピュータ・プログラムと著作権”. Accume vol.11. 京都コンピュータ学院. 2019年2月23日閲覧。
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  20. ^ Q. 保護期間の計算方法について教えてください。”. 著作権なるほど質問箱. 文化庁. 2019年2月28日閲覧。 “死後70年、公表後70年、創作後70年の計算方法は、死亡等の日の属する年の翌年から起算します。例えば、2005年1月12日に著作者が死亡した場合の著作権は、原則として2005年に70年を加えた2075年の12月31日までということになります。”
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