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監査の歴史

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監査の歴史(かんさのれきし)では、監査の歴史について、公認会計士による財務諸表監査の歴史を中心に説明する。

20世紀 

日本において企業の会計を扱う専門家の必要性は、1908年に発覚した日本製糖汚職事件(帳簿操作で贈賄金を捻出したとされた)に際して、イギリス人株主(駐日大使のクロード・マクドナルド)が提起したことで認識されたといわれている[1][2]

1927年計理士が会計専門の国家資格として創設され、その業務は「計理士は計理士の称号を用いて会計に関する検査、調査、鑑定、証明、計算、整理又は立案を為すことを業とするものとす」(計理士法第1条)とされて、「検査」「証明」が盛り込まれた。しかし、戦前における計理士は、「計算」をその業務の中心としており(この当時はまだ税理士の資格も存在せず、計理士にはそれらの業務も含まれていた)、監査系の仕事の占める割合は10%にも満たず、監査を中心とする計理士事務所もごくわずかであった[3]。会計監査を主たる業務とする「検査計理士」を新たに創設する法改正運動も計理士側からなされたが、太平洋戦争が終わるまで実現することはなかった[3]

1948年に計理士法にかわって公認会計士法が公布されることで、財務諸表監査を資格独占業務とする公認会計士が誕生した。計理士も継続して監査業務は可能であったが、証券取引法で企業に義務づけられた監査証明は公認会計士のみが可能となった(計理士資格は1967年3月で廃止)。

1950年には、監査基準が発表される。その後、財務諸表監査において不祥事が発生するたびに、それにあわせて財務諸表監査制度はより厳格なものへと変化していった。

1965年に山陽特殊製鋼倒産事件における粉飾決算などの影響から個人事務所による財務諸表監査の限界が明らかになり、監査法人制度が導入された[4]

21世紀

2001年にアメリカでエンロン・ワールドコム事件が発生すると、エンロンの監査を担当していた巨大会計事務所アーサー・アンダーセンの信用は失われ、解散に追い込まれた。この影響で、国際的な監査の厳格化が進んだ。

2003年には、都市銀行の一つりそな銀行や大手地方銀行である足利銀行が、いずれも繰延税金資産の過大計上を監査法人に指摘され、債務超過状態に陥って経営破綻に追い込まれた。監査法人の判断によって有力銀行が破綻することもありうることが明らかになり、社会的な注目を集めた[5]

2005年にカネボウが長年にわたって粉飾決算が行われていたことが明らかになると、監査を担当していた中央青山監査法人は業務停止命令を受けて解散に追い込まれた。2006年のライブドア事件などもあり、現状の財務諸表監査制度と財務諸表監査に対する社会の期待の乖離(いわゆる「期待ギャップ」)が注目されるようになった。

2011年のオリンパス事件が起こると、新たに不正リスク対応基準が策定された。企業の不正会計に対応するために監査事務所間の引き継ぎの手続きなどがより厳密化された[6]

2015年には東芝工事進行基準の不適切な適用などの手口を用いて利益を1500億円ほど水増ししていたことが発覚した[7]。この結果、東芝の会計監査人であった新日本有限責任監査法人に対して、21億円の課徴金と約3ヶ月の新規契約の締結の禁止という、従来の処分と比較して著しく重い処分がくだされた[8]

一方、監査法人の指摘によって、会計不正が発覚する事例も増加している。2016年3月期のテクノメディカ社の会計不正は、監査法人トーマツの指摘を端緒として第三者委員会による調査を受けることとなった[9]

脚注

  1. ^ 計理士法の制定に際して - 京城日報1927年11月10日(神戸大学電子図書館システム新聞記事文庫)。コメントしている木村禎橘は、平野(2012)において、計理士法改正運動に絡んで詳述されている人物である。
  2. ^ 百合野正博「『公認会計士制度調査書』の今日的意味 (PDF) 」『同志社商学』第48巻4-6号、同志社大学商学部、1997年。百合野はこの中で、日本製糖汚職事件との関連について否定的な意見も紹介しながら、マクドナルドの「外圧があったと考えた方が納得しやすい」としている。
  3. ^ a b 平野由美子「昭和初期における計理士法改正運動 (PDF) 」『立命館経営学』第50巻5号、pp.57 - 79、立命館大学、2012年
  4. ^ 盛田良久蟹江章長吉眞一編著『スタンダードテキスト監査論 第3版』中央経済社、2013年、p50
  5. ^ *「特集 戦後会計史9大事件――現行制度の源流を探る」](『企業会計』2015年11月号)、中央経済社
  6. ^ 監査法人の引き継ぎをより厳密に、不正リスク対応基準がまとまる、2016年1月30日閲覧
  7. ^ 東芝「不適切会計」とは、何だったのか (東洋経済オンライン、2016年2月7日閲覧)。
  8. ^ 東芝不正で処分の新日本監査法人、解体の可能性も…会計士引き抜き争奪戦が加熱 (Business Journal、2016年2月7日閲覧)。
  9. ^ 株式会社テクノメディカ第三者委員会『調査報告書』

参考文献

関連項目

外部リンク