コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「岸辺露伴 ルーヴルへ行く (映画)」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
制作: 企画が始動した時期を明記
選考での指摘をもとに改稿(利用者:Euph0956/岸辺露伴 ルーヴルへ行く (映画)より転記)
31行目: 31行目:
| 次作 =
| 次作 =
}}
}}
『'''岸辺露伴 ルーヴルへ行く'''』(きしべろはん ルーヴルへいく)は[[2023年]][[5月26日]]公開の[[日本映画|日本の映画]]。{{出典範囲|text1=[[荒木飛呂彦]]による漫画シリーズ『[[ジョジョの奇妙な冒険]]』のスピンオフ作品『[[岸辺露伴は動かない]]』の一編であり、[[ルーヴル美術館]]が主催するバンド・デシネプロジェクトのために書き下ろされた[[岸辺露伴 ルーヴルへ行く|同名の漫画作品]]が原作となっている。監督の[[渡辺一貴 (演出家)|渡辺一貴]]、脚本の[[小林靖子]]を始め、[[NHK総合テレビジョン|NHK総合]]で放送されたテレビドラマ『[[岸辺露伴は動かない#テレビドラマ|岸辺露伴は動かない]]』のキャスト・スタッフが続投する形で制作された|ref1=<ref name="realsound20230105">{{Cite web|title=『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』映画化決定 高橋一生、飯豊まりえ、スタッフ陣が再集結|url=https://realsound.jp/movie/2023/01/post-1227907.html|website=リアルサウンド映画部|publisher=blueprint|date=2023-01-05|accessdate=2023-01-05}}</ref>}}
『'''岸辺露伴 ルーヴルへ行く'''』(きしべろはん ルーヴルへいく)は[[2023年]][[5月26日]]公開の[[日本映画|日本の映画]]。[[荒木飛呂彦]]による漫画シリーズ『[[ジョジョの奇妙な冒険]]』のスピンオフ作品『[[岸辺露伴は動かない]]』の一編であり、[[ルーヴル美術館]]が主催するバンド・デシネプロジェクトのために書き下ろされた[[岸辺露伴 ルーヴルへ行く|同名の漫画作品]]が原作となっている。監督の[[渡辺一貴 (演出家)|渡辺一貴]]、脚本の[[小林靖子]]を始め、[[NHK総合テレビジョン|NHK総合]]で放送されたテレビドラマ『[[岸辺露伴は動かない#テレビドラマ|岸辺露伴は動かない]]』のキャスト・スタッフが続投する形で制作された。


本作の主人公である漫画家・岸辺露伴が、ルーヴル美術館に存在するといわれる「この世で最も黒い絵」が引き起こす怪異に巻き込まれる物語が描かれる。企画は2020年、ドラマシリーズの放送前に始動し、2022年9月から2023年3月にかけて撮影が行われた。パリ市街や[[ルーヴル美術館]]でのロケも行われ、日本映画がルーヴル美術館で撮影されるのは『[[Qシリーズ (小説)#映画『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』|万能鑑定士Q モナ・リザの瞳]]』以来2作目となった。
日本映画としては『[[Qシリーズ (小説)#映画『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』|万能鑑定士Q モナ・リザの瞳]]』以来2作目となる[[ルーヴル美術館]]でのロケが行われた{{R|realsound20230105}}。また、NHKが製作したドラマの映画化作品としては初めて興行収入が10億円を突破した<ref name="animeanime20230619">{{Cite web|和書|url=https://animeanime.jp/article/2023/06/19/78033.html|title=映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」興行収入10億円を突破! 渡辺一貴監督による全国ティーチインイベントも開催 |accessdate=2023-12-01|author=仲瀬コウタロウ|date=2023-06-19|website=アニメ!アニメ!|publisher=イード}}</ref>。

興行収入は12.5億円を記録し、NHKが製作したドラマの映画化作品としては初めて10億円を突破した。


== あらすじ ==
== あらすじ ==
69行目: 71行目:


== キャスト ==
== キャスト ==
* 岸辺露伴、山村仁左右衛門:[[高橋一生]]{{R|realsound20230105}}{{R|oricon20230201}}<ref name="realsound1350204">{{Cite web|和書|url=https://realsound.jp/book/2023/06/post-1350204.html|title=映画『岸辺露伴ルーヴルへ行く』原作を補う“改変”が見事 高橋一生が見せた、最も切ない「ヘブンズ・ドアー」の卓越さ|accessdate=2023-12-20|author=島田一志|date=2023-06-15|website=リアルサウンド映画部|publisher=blueprint}}</ref>
* 岸辺露伴、山村仁左右衛門:[[高橋一生]]<ref name="realsound20230105">{{Cite web|title=『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』映画化決定 高橋一生、飯豊まりえ、スタッフ陣が再集結|url=https://realsound.jp/movie/2023/01/post-1227907.html|website=リアルサウンド映画部|publisher=blueprint|date=2023-01-05|accessdate=2023-01-05}}</ref>{{R|oricon20230201}}<ref name="realsound1350204">{{Cite web|和書|url=https://realsound.jp/book/2023/06/post-1350204.html|title=映画『岸辺露伴ルーヴルへ行く』原作を補う“改変”が見事 高橋一生が見せた、最も切ない「ヘブンズ・ドアー」の卓越さ|accessdate=2023-12-20|author=島田一志|date=2023-06-15|website=リアルサウンド映画部|publisher=blueprint}}</ref>
* 泉京香:[[飯豊まりえ]]{{R|realsound20230105}}
* 泉京香:[[飯豊まりえ]]{{R|realsound20230105}}
* 岸辺露伴(青年):[[長尾謙杜]]<ref name="oricon20230201">{{Cite web|url=https://www.oricon.co.jp/news/2265869/full/|title=青年期の岸辺露伴役はなにわ男子・長尾謙杜 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』追加キャスト4人発表|date=2023-02-01|website=ORICON NEWS|publisher=oricon ME|accessdate=2023-02-01}}</ref>
* 岸辺露伴(青年):[[長尾謙杜]]<ref name="oricon20230201">{{Cite web|url=https://www.oricon.co.jp/news/2265869/full/|title=青年期の岸辺露伴役はなにわ男子・長尾謙杜 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』追加キャスト4人発表|date=2023-02-01|website=ORICON NEWS|publisher=oricon ME|accessdate=2023-02-01}}</ref>
110行目: 112行目:
== 制作 ==
== 制作 ==
=== 企画 ===
=== 企画 ===
監督の渡辺とNHKエンタープライズのプロデューサー・土橋圭介は2018年テレビドラマ『岸辺露伴は動かない』(以下、「ドラマシリーズ」という)企画段階から妄想レベルで本作を構想しており、「このドラマがうまくいってシリーズ化、最後は長編映画で、長編やるならやっぱり『ルーヴルへ行く』だよね」と話をしていた<ref name="cinematoday20230427">{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136520|title=「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」映画化が実現するまで パリロケで思わぬハプニングも|accessdate=2023-11-03|author=石井百合子|date=2023-04-27|website=シネマトゥデイ}}</ref>。また撮影中においても、露伴を演じた高橋一生と渡辺は雑談中に度々「『ルーヴルへ行く』を映画でできたらいいね」と話をしていたという{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=116}}。
監督の渡辺とNHKエンタープライズのプロデューサー・土橋圭介は2018年ごろにテレビドラマ『岸辺露伴は動かない』(以下、「ドラマシリーズ」という)企画している時から妄想レベルで本作を構想しており、「このドラマがうまくいってシリーズ化、最後は長編映画で、長編やるならやっぱり『ルーヴルへ行く』だよね」と話をしていた<ref name="cinematoday20230427">{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136520|title=「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」映画化が実現するまで パリロケで思わぬハプニングも|accessdate=2023-11-03|author=石井百合子|date=2023-04-27|website=シネマトゥデイ}}</ref>。また撮影中においても、露伴を演じた高橋一生と渡辺は雑談中に度々「『ルーヴルへ行く』を映画でできたらいいね」と話をしていたという{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=116}}。


本作の企画はドラマシリーズ第1期のキービジュアルが発表された後に、アスミック・エースのプロデューサー・井出陽子が渡辺と土橋に、ドラマシリーズを再編集し応援上映を行う企画を持ちかけたことがきっかけとなり、本格的に動き出した{{Efn2|ドラマシリーズ第1期のキービジュアルが発表されたのは2020年10月14日のこと<ref>{{Cite web|和書|url=https://natalie.mu/comic/news/400587|title=荒木飛呂彦「岸辺露伴は動かない」NHKでドラマ化!露伴は高橋一生、脚本は小林靖子|accessdate=2024-04-21|date=2020-10-14|website=コミックナタリー|publisher=ナターシャ}}</ref>。}}{{R|cinematoday20230427}}。井出は『ジョジョ』シリーズのファンであり、ドラマシリーズのキービジュアルを観た際に「原作ファンも喜ぶ作品になる」と直感し、話を持ちかけたと語っている<ref name="finders20230526">{{Cite interview|和書|date=2023-05-26|subject=井手陽子(映画プロデューサー、アスミック・エース所属)|interviewer=赤井大祐、文:船岡花奈 |title=『岸辺露伴』はどのように「ルーヴル」へ行ったのか。プロデューサーが語る制作秘話|url=https://finders.me/kqFQpDM3Mzk|work=FINDERS|publisher=シー・エヌ・エス・メディア|accessdate=2023-12-15}}</ref>。{{出典範囲|text1=話を受けた渡辺と土橋は応援上映ではなく『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の実写化の企画書を書き上げて井出に提出し、|ref1={{R|cinematoday20230427}}|text2=打ち合わせを重ねる中で劇場版にチャレンジすることが決まった|ref2={{R|finders20230526}}}}。
本作の企画はドラマシリーズ第1期のキービジュアルが発表された後に、アスミック・エースのプロデューサー・井出陽子が渡辺と土橋に、ドラマシリーズを再編集し応援上映を行う企画を持ちかけたことがきっかけとなり、本格的に動き出した{{Efn2|ドラマシリーズ第1期のキービジュアルが発表されたのは2020年10月14日のこと<ref>{{Cite web|和書|url=https://natalie.mu/comic/news/400587|title=荒木飛呂彦「岸辺露伴は動かない」NHKでドラマ化!露伴は高橋一生、脚本は小林靖子|accessdate=2024-04-21|date=2020-10-14|website=コミックナタリー|publisher=ナターシャ}}</ref>。}}{{R|cinematoday20230427}}。井出は『ジョジョ』シリーズのファンであり、ドラマシリーズのキービジュアルを観た際に「原作ファンも喜ぶ作品になる」と直感し、話を持ちかけたと語っている<ref name="finders20230526">{{Cite interview|和書|date=2023-05-26|subject=井手陽子(映画プロデューサー、アスミック・エース所属)|interviewer=赤井大祐、文:船岡花奈 |title=『岸辺露伴』はどのように「ルーヴル」へ行ったのか。プロデューサーが語る制作秘話|url=https://finders.me/kqFQpDM3Mzk|work=FINDERS|publisher=シー・エヌ・エス・メディア|accessdate=2023-12-15}}</ref>。{{出典範囲|text1=話を受けた渡辺と土橋は応援上映ではなく『ルーヴルへ行く』の実写化の企画書を書き上げて井出に提出し、|ref1={{R|cinematoday20230427}}|text2=打ち合わせを重ねる中で劇場版にチャレンジすることが決まった|ref2={{R|finders20230526}}}}。


数ある原作のエピソードの中で『ルーヴルへ行く』を選んだ理由を、井出は以下のように語っている。
原作者荒木[[版元]]集英社の許諾を得て企画は進み始めたが、[[コロナ禍]]の影響などからルーヴル美術館と撮影交渉は困難を極めパリでの撮影日程が決まったのは日本での撮影が始まってからであった{{R|cinematoday20230427}}。また、円安の影響から制作費がかさみ、一部費用が足りなくなったことから、[[テレビ東京]]が製作に参加し出資した{{R|finders20230526}}。
{{Quotation|テレビと違って映画はお金を払って観るメディアですよね。{{Interp|中略|和文=1}}ドラマとは違う面白さを感じるものでなければならない。そう考えた時に、『ルーヴルへ行く』は、露伴が海外に赴く話なのでスケールも大きく、なおかつ露伴の過去や、露伴のルーツに迫っていくという、ドラマの中では描かれていない切り口があったので|井出陽子|{{R|cinematoday20230427}}}}


原作者の荒木と[[版元]]の集英社の許諾を得、2021年10月ごろより本格的に企画は進み始めた。高橋によれば、脚本の初稿が俳優陣に上がってきたのはドラマシリーズ第2期が終わる頃(2021年12月末)であったという<ref>{{Cite web|和書 |url=https://www.gqjapan.jp/article/20230524-kishiberohan-movie-issey-takahashi-interview |title=高橋一生「ずっと岸辺露伴でもいいですよ」──映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』インタビュー |accessdate=2024-01-16 |author=斎藤岬 |date=2023-05-24 |website=GQ Japan |publisher=CONDÉ NAST }}</ref>。{{出典範囲|text1=脚本を担当した小林はルーヴルでの撮影交渉が難航した影響で、パリおよびルーヴル美術館でのシナリオハンティングなしで脚本を書き上げる事になったが、|ref1={{R|cinematoday20230427}}|text2=ルーヴル美術館に詳しい人や[[東京藝術大学]]保存修復日本画研究室教授の荒井経に取材を行い、脚本に反映させた|ref2={{R|natalie20230608}}}}。また、原作者の荒木から受けたいくつかの要望に従い、原作からいくつかの要素が足されている([[#原作との違い|後述]])。
本作は監督の渡辺をはじめ、ドマシリーズのスタッフが引き続き担当ている{{R|realsound20230105}}。{{出典範囲|text1=渡辺はドラマシリーズから作り方を変えるということはせず、今までやってきたことをそのまま落とし込むことを意識したという。また本作では露伴の過去や江戸時代など様々な時代が描かれるが、過去の記憶でも現実よりも鮮明に記憶されていることもあるので、白黒やセピア色にするといった映像上の演出はしないよう意識された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=118}}}}。


{{出典範囲|text1=脚本骨格が出来上がり始めた頃、ルーヴル美術館との撮影交渉も進み始めた。原作がルーヴル美術館の主催するバンド・デシネプロジェクトの作品であるため、ルーヴル美術館サイドの反応は上々であったが、[[コロナ禍]]の影響などから日程など具体的な交渉は困難を極めた。2022年6月には撮影日程が固まらないままパリでのロケハンが行われ、ようやく撮影日程が決まったのは日本での撮影が始まってから(2022年9月)であった|ref1={{R|cinematoday20230427}}}}。また、円安の影響から制作費がかさみ、一部費用が足りなくなったことから、[[テレビ東京]]が製作に参加し出資した{{R|finders20230526}}。
=== 脚本 ===

=== 原作との違い ===
ドラマシリーズに引き続き脚本を務めた小林は荒木より、仁左右衛門と奈々瀬を悲恋にすること、そしてルーヴル美術館で死ぬ消防士たちを悪者にしてほしいという要望を受けていた{{R|natalie20230608}}。そのため本作ではZ-13倉庫のシーンのあとに、新たに書き起こされた尺の長い過去編が入る構成となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=124}}。また、本作の露伴は原作より年齢が高く設定されているため{{Efn2|明確な年齢は設定されていないが、演じている高橋と同じくらいの30代後半と設定されている{{R|natalie20230608}}。なお、原作の露伴は27歳。}}、奈々瀬を思い出す展開に違和感が生じないよう、モリス・ルグランや黒い絵の設定を足し、「露伴が漫画のために美術を調べていて、そのためにオークションに潜入し、そこから事件に巻き込まれることで過去に少しずつ繋がっていく」という展開となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=127}}。
ドラマシリーズに引き続き脚本を務めた小林は荒木より、仁左右衛門と奈々瀬を悲恋にすること、そしてルーヴル美術館で死ぬ消防士たちを悪者にしてほしいという要望を受けていた{{R|natalie20230608}}。そのため本作ではZ-13倉庫のシーンのあとに、新たに書き起こされた尺の長い過去編が入る構成となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=124}}。また、本作の露伴は原作より年齢が高く設定されているため{{Efn2|明確な年齢は設定されていないが、演じている高橋と同じくらいの30代後半と設定されている{{R|natalie20230608}}。なお、原作の露伴は27歳。}}、奈々瀬を思い出す展開に違和感が生じないよう、モリス・ルグランや黒い絵の設定を足し、「露伴が漫画のために美術を調べていて、そのためにオークションに潜入し、そこから事件に巻き込まれることで過去に少しずつ繋がっていく」という展開となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=127}}。


ドラマシリーズから引き継がれたオリジナル要素の一つとして、露伴と京香のコンビがある。ドラマシリーズでの京香は荒木の物語に存在する「ユーモア」の要素を引き受ける、息抜きになるようなキャラクターとして描かれた<ref>{{Cite web|和書|url=https://mindra.jp/post/154/|title=演出・渡辺一貴インタビュー『岸辺露伴~』は作り続けたい|accessdate=2023-12-10 |date=2021-12-23|website=TVガイドみんなドラマ|publisher=東京ニュース通信社}}</ref>。小林は二人の関係を「全然住む世界が違っていて、普通なら友だちになることもなく関係が終わっちゃうふたり」と捉えており、本作では、露伴は京香を「ちょっと面白いかも」と感じるようにはなりつつも、それ以上の関係にはならないように意識されている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=129}}。この二人の関係やコミカルな掛け合いは、シリアスな物語の中の清涼剤として高く評価された{{R|kinejun_review}}{{R|realsound20230619}}。
ドラマシリーズから引き継がれたオリジナル要素の一つとして、露伴と京香のコンビがある。ドラマシリーズでの京香は荒木の物語に存在する「ユーモア」の要素を引き受ける、息抜きになるようなキャラクターとして描かれた<ref>{{Cite web|和書|url=https://mindra.jp/post/154/|title=演出・渡辺一貴インタビュー『岸辺露伴~』は作り続けたい|accessdate=2023-12-10 |date=2021-12-23|website=TVガイドみんなドラマ|publisher=東京ニュース通信社}}</ref>。小林は二人の関係を「全然住む世界が違っていて、普通なら友だちになることもなく関係が終わっちゃうふたり」と捉えており、本作では、露伴は京香を「ちょっと面白いかも」と感じるようにはなりつつも、それ以上の関係にはならないように意識されている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=129}}。


=== キャスティング ===
{{出典範囲|text1=ルーヴルでの撮影交渉が難航したことからシナリオハンティングなしで脚本を書き上げる事になったが、|ref1={{R|cinematoday20230427}}|text2=ルーヴル美術館に詳しい人や[[東京藝術大学]]保存修復日本画研究室教授の荒井経に取材を行い、脚本に反映させた|ref2={{R|natalie20230608}}}}。
青年期の露伴には[[長尾謙杜]]が起用された。{{出典範囲|text1=キャスティングの際には憂いがあり、また駆け出しでスタイルが確立されていない「まだ完成される前の露伴」が前提となり、渡辺が画像検索で長尾の写真を見つけ、キャストの検討会議に提案した。渡辺は長尾が人気アイドルであること、また「ジョジョ」のファンであることを知らずに推薦したため、土屋は不思議な縁を感じたという|ref1=<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136616|title=青年期の岸辺露伴に長尾謙杜を起用した理由 不思議な巡り合わせも|accessdate=2023-11-25|author=石井百合子|date=2023-05-02|website=シネマトゥデイ}}</ref>}}。長尾は渡辺のアドバイスから高橋の露伴を意識しないようにし、また年齢感が近いことから原作だけでなく『[[ダイヤモンドは砕けない]]』も読み直し、役作りを行った{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=144}}。


=== 衣装 ===
=== 衣装・劇中画 ===
{{出典範囲|text1=ドラマシリーズに引き続き人物デザイン監修{{Efn2|扮装のコンセプトを決め、各キャラクターのデザインを描き、登場人物の扮装を統括する役割<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136435 |title=実写「岸辺露伴」の衣装、なぜモノトーン?大反響のビジュアルが出来上がるまで|accessdate=2023-11-25|author=石井百合子|date=2023-04-22|website=シネマトゥデイ}}</ref>。}}を担当した[[柘植伊佐夫]]は原作を読んだ際、辻褄が合っているのに合っていないような不思議な読後感を感じたといい、本作では各パートごとに分裂した、整合性や共通性のなさを意識したという。またドラマシリーズでは元気さや生命力がイメージされていたが、今作は悲劇性のある物語であることから、より重みのある印象になるよう意識されている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=132-134}}}}。なお、京香の衣装はドラマシリーズに引き続き、靴とタイツ以外のすべてが[[オートクチュール]]となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=143}}。
{{出典範囲|text1=ドラマシリーズに引き続き人物デザイン監修{{Efn2|扮装のコンセプトを決め、各キャラクターのデザインを描き、登場人物の扮装を統括する役割<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136435 |title=実写「岸辺露伴」の衣装、なぜモノトーン?大反響のビジュアルが出来上がるまで|accessdate=2023-11-25|author=石井百合子|date=2023-04-22|website=シネマトゥデイ}}</ref>。}}を担当した[[柘植伊佐夫]]は原作を読んだ際、辻褄が合っているのに合っていないような不思議な読後感を感じたといい、本作では各パートごとに分裂した、整合性や共通性のなさを意識したという。またドラマシリーズでは元気さや生命力がイメージされていたが、今作は悲劇性のある物語であることから、より重みのある印象になるよう意識されている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=132-134}}}}。なお、京香の衣装はドラマシリーズに引き続き、靴とタイツ以外のすべてが[[オートクチュール]]となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=143}}。パリパートの衣装は「パリの街やルーヴルに露伴と京香が立ったとき、しっくり来るものなのか」を意識して制作された{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=134}}。また、ルーヴルで撮影すると聞いた時点で映画『[[シャレード (1963年の映画)|シャレード]]』の[[ケーリー・グラント]]と[[オードリー・ヘプバーン]]のようにしたいと考え、色の組み合わせなどをオマージュしている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=136}}。


{{出典範囲|text1=オークションを始めとした現代パートにて京香が着用している紫のワンピースは、落ち着きと華やかさの両方を柘植が欲していたため取り入れられた。作中では京香が「もっとドレスっぽいのを着てこようと思った」と話している衣装であり、柘植は「オークションでこれはすでにかなり派手だよ?!」と突っ込みたくなると語っている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=138-139}}}}。飯豊はこの衣装のゴージャスな雰囲気が、いち編集部員というより編集長並みの貫禄を感じさせてくれたと回想している{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=143}}。

過去編にて登場する青年期の露伴は、現在の露伴がもつ明快さをまだ持ち合わせておらず、また演じた長尾謙杜もふわふわしたところがあったため、曖昧な白の階調が意識された衣装となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=137-138}}。柘植はこの白の風合いを出すための素材を見つけるのに苦労したと語っている{{R|cinematoday20230521}}。

パリパートの衣装は「パリの街やルーヴルに露伴と京香が立ったとき、しっくり来るものなのか」を意識して制作された{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=134}}。また、ルーヴルで撮影すると聞いた時点で映画『[[シャレード (1963年の映画)|シャレード]]』の[[ケーリー・グラント]]と[[オードリー・ヘプバーン]]のようにしたいと考え、色の組み合わせなどをオマージュしている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=136}}。

{{出典範囲|text1=パリでの京香の衣装である黒の革のワンピースは彼女のアイコンであるリボン以外の装飾が排されたミニマムなものとなっている。このワンピースは本来フロントジップで作られたものだったが、衣装合わせの際の飯豊の提案から前後逆に着ることになった。京香が時折羽織っていたシャンパンゴールドのコートは、ベージュと黒はフランス人の好む組み合わせであり、パリの建築物ともマッチすると考えられたことから採用された。なお、ドラマシリーズ第8話「ジャンケン小僧」にて京香がレザーのショートパンツを履いていたのは、今作に向けての匂わせの一つだったという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=134-135}}}}。

パリでの露伴は、シリーズを通して初めてタイを着用しており、保守的なイメージのタイをいかにアバンギャルドなイメージの露伴に馴染ませるかが意識された。そのためシャツの襟の構造から見直し、襟の中にタイが通る不思議な構造になっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=135}}。{{出典範囲|text1=また、コートもシリーズを通して初めて着用しており、パリの雰囲気に即したシックなものになっている。スタンドカラーに大きなボタンが3つあしらわれており、柘植は偶然にも「ジョジョ」のキャラクターがしばしば着用している学ランのようなシルエットになったと語っている|ref1=<ref name="cinematoday20230521">{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136906|title=岸辺露伴、パリで初のコート&タイ姿!人物デザイン監修・柘植伊佐夫、驚きの仕掛け明かす |accessdate=2023-11-29|author=石井百合子|date=2023-05-21|website=シネマトゥデイ}}</ref>}}。{{出典範囲|text1=生地には起毛したウールが使われており、|ref1={{R|cinematoday20230521}}|text2=高橋は撮影中コートの温かさがとても助かったと語っている|ref2={{R|moviewalker20230609}}}}。

=== 劇中画 ===
{{出典範囲|text1=仁左右衛門の描いた絵画を始めとした劇中画は日本画家の宮崎優が担当した。劇中で仁左右衛門の描いた「蘭画」「微笑む奈々瀬」は1770年代の[[秋田蘭画]]を参考に約250年前の画材や技法で制作された。一方、物語の肝となる「黒い絵」は時代考証を無視して制作され、遠目から見ると真っ黒な板に見えるほどの絵画に仕上がっている。「黒い絵」での奈々瀬の黒髪は、まるで奈々瀬の魂が閉じ込められているように、時間の止まった空間に漂うようなイメージで描かれている。宮崎は、仁左右衛門の描きたいものに執着し周りが見えなくなるところに共感し、「黒い絵」の制作時には最初から完成形がはっきりとイメージできたという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=154-155}}}}。
{{出典範囲|text1=仁左右衛門の描いた絵画を始めとした劇中画は日本画家の宮崎優が担当した。劇中で仁左右衛門の描いた「蘭画」「微笑む奈々瀬」は1770年代の[[秋田蘭画]]を参考に約250年前の画材や技法で制作された。一方、物語の肝となる「黒い絵」は時代考証を無視して制作され、遠目から見ると真っ黒な板に見えるほどの絵画に仕上がっている。「黒い絵」での奈々瀬の黒髪は、まるで奈々瀬の魂が閉じ込められているように、時間の止まった空間に漂うようなイメージで描かれている。宮崎は、仁左右衛門の描きたいものに執着し周りが見えなくなるところに共感し、「黒い絵」の制作時には最初から完成形がはっきりとイメージできたという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=154-155}}}}。


=== 撮影 ===
=== 撮影・演出 ===
本作は2022年9月にクンクイン{{R|productionnote}}。{{出典範囲|text1=渡辺は演出する際、ドラマシリーズから作り方を変えるということはせず、今までやってきたことをそのまま落とし込むことを意識したという。また本作では露伴の過去や江戸時代など様々な時代が描かれるが、過去の記憶でも現実よりも鮮明に記憶されていることもあるので、白黒やセピア色にするといった映像上の演出はしないよう意識された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=118}}}}。{{出典範囲|text1=参考にした作品として渡辺はベルナルド・ベルトルッチの映画『[[暗殺の森]]』を挙げており、『暗殺の森』でのパリのシーンが曇天であることから、今作でも曇天に拘って制作された。また、パリのシーンは観光名所巡りのような雰囲気は出さないことも意識されている|ref1={{R|cinematoday20230526}}}}。パリでのロケは2022年11月と2023年3月の2回に分けて行われ、2023年3月の撮影をもって本作はクランクアップとなった{{R|cinematoday20230427}}。
{{出典範囲|text1=本作は2022年9月にクランクインし、オークションのシーンから撮影が始められた。ロケ地は横浜の老舗ホテル・[[ホテルニューグランド]]が選定された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=20}}{{R|productionnote}}}}このホテルは渡辺が挙式した場所であり、クラシカルな場所というイメージで思い浮かんだことからオークション会場として選ばれた<ref name="cinematoday20230526">{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136997|title=『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』なぜ曇り空のパリ?渡辺一貴監督のロケーションの流儀|accessdate=2023-11-03|author=石井百合子|date=2023-05-26|website=シネマトゥデイ}}</ref>。美術の磯貝さやかは撮影前に実際のオークションに参加し取材を行ったが、そのオークションは会議室のようなあまり華やかでない場所で行われたため、本作では花などが並べられた「オークションのイメージ」が強い物となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=150}}。

{{出典範囲|text1=続いて、露伴の祖母・猷の下宿を舞台とした、露伴の青年期の撮影が行われた。ロケ地は会津若松の旅館・向瀧が選定された|ref1={{R|productionnote}}}}。この場所は渡辺が演出し高橋が主演を務めたNHKのテレビドラマ『[[雪国 (小説)#テレビドラマ|雪国 -SNOW COUNTRY-]]』のロケ地でもあり、渡辺は『雪国』の撮影中(2022年1月)から猷の下宿にも理想的だと考えていたという{{R|cinematoday20230526}}。{{出典範囲|text1=奈々瀬の部屋は向瀧の茶室が使用されており、磯貝は奈々瀬の実在感のない不思議な感じを表現するため、部屋の物を極力減らすよう意識した。また、対照的に猷の部屋は生活感を出すため、物の密度を高くし、ごちゃごちゃとさせている。なお、露伴の部屋のみ向瀧でない場所を使用しており、磯貝は部屋の木の色を向瀧と同じ色に塗り替えるなど同じ場所に見えるように意識したという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=151-152}}}}。

青年期の露伴には[[長尾謙杜]]が起用された。{{出典範囲|text1=キャスティングの際には憂いがあり、また駆け出しでスタイルが確立されていない「まだ完成される前の露伴」が前提となり、渡辺が画像検索で長尾の写真を見つけ、キャストの検討会議に提案した。渡辺は長尾が人気アイドルであること、また「ジョジョ」のファンであることを知らずに推薦したため、土屋は不思議な縁を感じたという|ref1=<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136616|title=青年期の岸辺露伴に長尾謙杜を起用した理由 不思議な巡り合わせも|accessdate=2023-11-25|author=石井百合子|date=2023-05-02|website=シネマトゥデイ}}</ref>}}。長尾は渡辺のアドバイスから高橋の露伴を意識しないようにし、また年齢感が近いことから原作だけでなく『[[ダイヤモンドは砕けない]]』も読み直し、役作りを行った{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=144}}。

仁左右衛門と奈々瀬の物語が描かれた江戸時代パートも会津若松にて撮影され、主に霧幻峡や大内宿が舞台となっている{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=101}}。{{出典範囲|text1=仁左右衛門が黒に魅せられていく場面はZ-13倉庫のシーンとリンクされており、蜘蛛の巣が徐々に増える演出が施されている。また、御神木の黒い樹液は、木から流れるものと指についたものとで素材を変えるなどこだわって制作された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=153}}}}。この江戸時代パートは原作から大きく加筆されている。{{出典範囲|text1=高橋はこの江戸時代パートがあることによって、タイトルが『ルーヴルへ行く』でありながらもパリに気触れず、自分たちが日本人であるというところに立ち返ることができると語っている。渡辺と高橋は大河ドラマ『[[おんな城主 直虎]]』でもタッグを組んだ間柄であり、高橋はデジャブを感じたものの渡辺が「([[小野政次]]{{Efn2|『おんな城主直虎』にて高橋が演じた。}}とは)また違う人ですね」と言ってくれたことで安心したという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=117}}}}。

[[File:Oya-saikutsujo-ato-2.jpg|thumb|Z-13倉庫でのシーンが撮影された大谷石採石場跡]]
続いて、大谷石採石場跡にて、本作のクライマックスシーンの一つであるZ-13倉庫のシーンが4日間にわたって撮影された{{R|productionnote}}{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=143}}。{{出典範囲|text1=渡辺は[[アンドレイ・タルコフスキー]]の映画『[[ストーカー (1979年の映画)|ストーカー]]』をイメージし、|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=152-153}} |text2=20分以上続く無機質な暗がりのシーンを、いかにエンターテイメントとして飽きさせないものにするかに注力したという<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.creativevillage.ne.jp/category/topcreators/visual-creators/135115/|title=映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』監督 渡辺一貴———引っ掛かるのは〝記憶″というキーワード。最近の作品はすべてそれがモチーフなのではと思うほど。|accessdate=2023-11-03|author=永瀬由佳|date=2023-05-24|website=CREATIVE VILLAGE|publisher=クリーク・アンド・リバー}}</ref>}}。{{出典範囲|text1=磯貝は原作を読んだときから再現に一番ハードルを感じていた場所だといい、洞窟や廃墟の資料や『ストーカー』を参考に、長い間放置されたような雰囲気を作り出したという。蜘蛛の巣は真綿を引き伸ばして作られており、カメラに収まるところに重点的に付けたり、レイヤーを重ねるようにしたりして、大量の蜘蛛の巣が張っているように見せている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=152-153}}}}。

{{出典範囲|text1=Z-13に続く地下通路は[[大森ベルポト]]の地下3階、および[[館山市]]にある能忍寺の廃トネルにて撮影された。螺旋階段のシーンの撮影では[[ステディカム]]が使用され、動きのあるダイナミックな映像となっている|ref1={{R|productionnote}}}}。

{{出典範囲|text1=続いて、神奈川県を中心に現代パートの撮影が進められた。露伴邸はドラマシリーズと同様[[葉山加地邸]]がロケ地なっ|ref1={{R|productionnote}}}}。{{出典範囲|text1=ドラマシリーズとの違いとして、部屋には顔料のもととなる植物などが大量に吊るされており、これらは磯貝が荒井に行った取材がもとになっている。また、ドラマシリーズとの繋がりが感じられるよう、ホットサマー・マーサのフィギュアやバキンのフードボウルなども置かれている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=150}}}}。

パリでの撮影は2022年11月と2023年3月の2回に分けて行われた{{R|cinematoday20230427}}。{{出典範囲|text1=渡辺はベルナルド・ベルトルッチの映画『[[暗殺の森]]』をベースに今作を演出しており、『暗殺の森』でのパリのシーンが曇天であることから、今作でも曇天に拘って制作されたという。また、パリのシーンは観光名所巡りのような雰囲気は出さないことも意識されている|ref1={{R|cinematoday20230526}}}}。

1回目のロケは3日間にわたって行われ、パリ市街を舞台としたシーンが撮影された。露伴と京香が2階建てバスに乗り、[[エトワール凱旋門]]から[[シャンゼリゼ通り]]の方へ抜けるシーンの撮影では、信号や他の車のタイミングが合わず、理想の画が撮れるまで30分以上、何十周も凱旋門を周回したという{{R|cinematoday20230427}}{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=79}}。また、カフェ・ルテシアでのシーンでは、エキストラの女性が偶然『[[ジョジョリオン]]』の登場人物・東方大弥のような耳付きのフードを被っており、その女性が映るように撮り直したという{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=119}}。

ルーヴル美術館文化メディエーション部のオフィスはヴィクトル・ユゴーの弁護士事務所にて撮影された。磯貝自身は現地に赴くことはできなかったものの、現地スタッフとオンライン上で打ち合わせを重ね、オフィスを美術で飾ったという。

[[File:La Joconde (Le Louvre) (8226631218).jpg|thumb|飯豊は、モナ・リザの前で大きな声を出しながらの演技は貴重な体験だったと語っている<ref name="moviewalker20230609">{{Cite web|和書|url=https://moviewalker.jp/news/article/1138223/|title=高橋一生&飯豊まりえが語り合う、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』で再確認した異形のバディ感|accessdate=2023-11-25|author=タナカシノブ |date=2023-06-09|website=MOVIE WALKER PRESS|publisher=ムービーウォーカー}}</ref>。]]
2回目のロケではルーヴル美術館での撮影が3日間にわたって行われた{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=80}}。原作ではルーヴル美術館のシーンは少なく、すぐにZ-13倉庫に行ってしまうことから、映画化に際し館内の描写が多く足されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://otocoto.jp/interview/ikenobe210/ |title=渡辺一貴監督が語る 現実にルーヴルへ行くという奇跡が起きた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』 |accessdate=2023-11-19 |author=池ノ辺直子 |date=2023-05-27 |website=otocoto |publisher=バカ・ザ・バッカ |page=1}}</ref>。撮影は閉館後から翌朝にかけて行われた。渡辺らによる下見は10回ほど行われたが、閉館後の人がいない美術館は雰囲気が全く異なり、本番では考えてきたことをリセットし、その場で感じたことを大事にしながら撮影は行われたという<ref>{{Cite web|和書|url=https://otocoto.jp/interview/ikenobe210/2/|title=渡辺一貴監督が語る 現実にルーヴルへ行くという奇跡が起きた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』|accessdate=2023-11-19|author=池ノ辺直子|date=2023-05-27|website=otocoto|publisher=バカ・ザ・バッカ|page=2}}</ref>。飯豊は閉館後の館内は常に誰かに見られているような不思議な空気感があり、貴重な経験だったと回想している{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=142}}

{{出典範囲|text1=高橋は、露伴ならルーヴル美術館は畏敬する場所でありながらも「こんなすごい絵を書きやがって、腹立つ」と思うだろうと想像し、かつての画家に対してのライバル心を意識して露伴を演じた。その意識は[[モナ・リザ]]に背を向けながらスケッチをするという演技に繋がっているという|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=122}}}}。


==== ロケ地 ====
最終日はカルーゼル凱旋門前の広場からルーヴル美術館のピラミッドを臨む撮影が行われ、これをもって本作はクランクアップとなった{{R|productionnote}}。なお、カルーゼル凱旋門自体は撮影当時工事中だったため、本作には登場していない{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=159}}。撮影中は太陽が月に見えるほどの厚い雲が空を覆い、気温は1℃ほどと非常に低く、高橋と飯豊は不穏な天気が幻想的でラストシーンにピッタリであったと回想している{{R|productionnote}}{{R|moviewalker20230609}}。
;[[ホテルニューグランド]]
:オークションのシーン撮影された。渡辺が挙式した場所であり、クラシカルな場所というイメージで思い浮かんだことからオークション会場として選ばれた<ref name="cinematoday20230526">{{Cite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/news/N0136997|title=『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』なぜ曇り空のパリ?渡辺一貴監督のロケーションの流儀|accessdate=2023-11-03|author=石井百合子|date=2023-05-26|website=シネマトゥデイ}}</ref>
;[[葉山加地邸]]
:テレビドラマシリーズに引き続き、露伴の自宅して使用された。{{出典範囲|text1=ドラマシリーズとの違いとして、部屋には顔料のもととなる植物などが大量に吊るされており、これらは磯貝が荒井に行った取材がもとになっている。また、ドラマシリーズとの繋がりが感じられるよう、ホットサマー・マーサのフィギュアやバキンのフードボウルなども置かれている|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=150}}}}。
;向瀧
:会津若松市の旅館。露伴の祖母・猷の下宿を舞台とした、露伴の青年期の撮影が行われた。この場所は渡辺が演出し高橋が主演を務めたNHKのテレビドラマ『[[雪国 (小説)#テレビドラマ|雪国 -SNOW COUNTRY-]]』のロケ地でもあり、渡辺は『雪国』の撮影中(2022年1月)から猷の下宿にも理想的だと考えていたという{{R|cinematoday20230526}}。
;[[エトワール凱旋門]]・[[シャンゼリゼ通り]]
:露伴と京香が2階建てバスに乗るシーンが撮影された。このシーンでは信号や他の車のタイミングが合わず、理想の画が撮れるまで30分以上、何十周も凱旋門を周回したという{{R|cinematoday20230427}}{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=79}}。
;ヴィクトル・ユゴーの弁護士事務所
:ルーヴル美術館文化メディエーション部のオフィスとして使用された。
;ルーヴル美術館
:撮影は閉館後から翌朝にかけて行われた。渡辺らによる下見は10回ほど行われたが、閉館後の人がいない美術館は雰囲気が全く異なり、本番では考えてきたことをリセットし、その場で感じたことを大事にしながら撮影は行われたという<ref>{{Cite web|和書|url=https://otocoto.jp/interview/ikenobe210/2/|title=渡辺一貴監督が語る 現実にルーヴルへ行くという奇跡が起きた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』|accessdate=2023-11-19|author=池ノ辺直子|date=2023-05-27|website=otocoto|publisher=バカ・ザ・バッカ|page=2}}</ref>。
;[[大森ベルポート]]地下3階・能忍寺の廃トンネル
:Z-13に続く地下通路のシーン撮影された。螺旋階段のシーンの撮影では[[ステディカム]]が使用され、動きのあるダイナミックな映像となっている{{R|productionnote}}。
;大谷石採石場跡
:本作のクライマックスシーンの一つであるZ-13倉庫のシーンが撮影された{{R|productionnote}}{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=143}}。{{出典範囲|text1=渡辺は[[アンドレイ・タルコフスキー]]の映画『[[ストーカー (1979年の映画)|ストーカー]]』をイメージし、|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|pp=152-153}} |text2=20分以上続く無機質な暗がりのシーンを、いかにエンターテイメントとして飽きさせないものにするかに注力したという<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.creativevillage.ne.jp/category/topcreators/visual-creators/135115/|title=映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』監督 渡辺一貴———引っ掛かるのは〝記憶″というキーワード。最近の作品はすべてそれがモチーフなのではと思うほど。|accessdate=2023-11-03|author=永瀬由佳|date=2023-05-24|website=CREATIVE VILLAGE|publisher=クリーク・アンド・リバー}}</ref>}}。
;霧幻峡・大内宿
:仁左右衛門と奈々瀬の物語が描かれた江戸時代パートが撮影された。{{出典範囲|text1=仁左右衛門が黒に魅せられていく場面はZ-13倉庫のシーンとリンクされており、蜘蛛の巣が徐々に増える演出が施されている。また、御神木の黒い樹液は、木から流れるものと指についたものとで素材を変えるなどこだわって制作された|ref1={{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=153}}}}。


=== 音楽 ===
=== 音楽 ===
ドラマシリーズに引き続き音楽を担当した[[菊池成孔]]は原作を読んだことはなかったものの、周囲には「ジョジョ」の熱狂的なファンが多くおり、ある程度予備知識を持った状態で制作に臨むことができたという{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=147}}。本作の音楽制作は映像がすべて完成してから行われ、菊池は様々な時代が描かれる映像に合わせて、音楽も統一感を出さず[[オムニバス]]のような形で制作した。なお、本作ではドラマシリーズに引き続き「新音楽制作工房{{Efn2|菊池の私塾「ペンギン音楽大学」の生徒らと菊池自身が立ち上げた音楽ギルド<ref name="snrec20231121">{{Cite interview|和書|date=2023-11-21|subject=菊地成孔|subjectlink=菊地成孔|interviewer=Satoshi Torii、写真:Hiroki Obara|subject2=佐々木語|subject3=丹羽武史|subject4=大野格|title=『岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く』OST〜菊地成孔/新音楽制作工房が紡ぐ新時代の劇伴とは|url=https://www.snrec.jp/entry/ex/interview/kishiberohan_kikuchi-naruyoshi_shin-on-gak|work=サンレコ|publisher=リットーミュージック|accessdate=2023-12-15}}</ref>。}}」も音楽制作を行っている{{Sfnp|パンフレット|2023|p=19}}。
ドラマシリーズに引き続き音楽を担当した[[菊池成孔]]は原作を読んだことはなかったものの、周囲には「ジョジョ」の熱狂的なファンが多くおり、『ルーヴルへ行く』についてもある程度予備知識を持った状態で制作に臨むことができたという{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=147}}。本作の音楽制作は映像がすべて完成してから行われ、菊池は様々な時代が描かれる映像に合わせて、音楽も統一感を出さず[[オムニバス]]のような形で制作した。なお、本作ではドラマシリーズに引き続き「新音楽制作工房{{Efn2|菊池の私塾「ペンギン音楽大学」の生徒らと菊池自身が立ち上げた音楽ギルド<ref name="snrec20231121">{{Cite interview|和書|date=2023-11-21|subject=菊地成孔|subjectlink=菊地成孔|interviewer=Satoshi Torii、写真:Hiroki Obara|subject2=佐々木語|subject3=丹羽武史|subject4=大野格|title=『岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く』OST〜菊地成孔/新音楽制作工房が紡ぐ新時代の劇伴とは|url=https://www.snrec.jp/entry/ex/interview/kishiberohan_kikuchi-naruyoshi_shin-on-gak|work=サンレコ|publisher=リットーミュージック|accessdate=2023-12-15}}</ref>。}}」も音楽制作を行っている{{Sfnp|パンフレット|2023|p=19}}。


菊池はドラマシリーズとの違いとして、[[シネマコンプレックス|シネコン]]の大出力のスピーカーにも耐えうる音の厚みを心がけたといい、ドラマシリーズでは4人編成でダビングを2回行い最大8人分の音だったストリングスが、今作では14人編成でレコーディングが行われた{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=148}}。メインテーマである「大空位時代」も今作に向けて音を厚くアレンジされており、この曲のブローアップが本作の最初のミッションだったという{{Sfnp|パンフレット|2023|p=19}}。
菊池はドラマシリーズとの違いとして、[[シネマコンプレックス|シネコン]]の大出力のスピーカーにも耐えうる音の厚みを心がけたといい、ドラマシリーズでは4人編成でダビングを2回行い最大8人分の音だったストリングスが、今作では14人編成でレコーディングが行われた{{Sfnp|ヴィジュアルブック|2023|p=148}}。メインテーマである「大空位時代」も今作に向けて音を厚くアレンジされており、この曲のブローアップが本作の最初のミッションだったという{{Sfnp|パンフレット|2023|p=19}}。
188行目: 177行目:


=== 公開後 ===
=== 公開後 ===
本作は2023年5月26日に全国272スクリーンで公開され、翌27日には[[六本木ヒルズ#TOHOシネマズ六本木ヒルズ|TOHOシネマズ六本木ヒルズ]]にて公開記念舞台挨拶が行われた{{R|animeanime20230619}}<ref name="natalie20230527">{{Cite web|和書|url=https://natalie.mu/eiga/news/526262|title=「岸辺露伴」高橋一生は目の奥が真っ黒、木村文乃は長尾謙杜の“立ち振る舞い”を絶賛|accessdate=2023-12-01|date=2023-05-27|website=映画ナタリー|publisher=ナターシャ}}</ref>。舞台挨拶の最後に高橋は次のように述べている。
本作は2023年5月26日に全国272スクリーンで公開され、翌27日には[[六本木ヒルズ#TOHOシネマズ六本木ヒルズ|TOHOシネマズ六本木ヒルズ]]にて公開記念舞台挨拶が行われた<ref name="animeanime20230619">{{Cite web|和書|url=https://animeanime.jp/article/2023/06/19/78033.html|title=映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」興行収入10億円を突破! 渡辺一貴監督による全国ティーチインイベントも開催 |accessdate=2023-12-01|author=仲瀬コウタロウ|date=2023-06-19|website=アニメ!アニメ!|publisher=イード}}</ref><ref name="natalie20230527">{{Cite web|和書|url=https://natalie.mu/eiga/news/526262|title=「岸辺露伴」高橋一生は目の奥が真っ黒、木村文乃は長尾謙杜の“立ち振る舞い”を絶賛|accessdate=2023-12-01|date=2023-05-27|website=映画ナタリー|publisher=ナターシャ}}</ref>。舞台挨拶の最後に高橋は次のように述べている。


{{Quotation|この作品は娯楽です。娯楽作品は人の心を動かし得るものだと思っています。僕は岸辺露伴の役をいただいたときに、この虚構の世界で皆さんに夢を見ていただき、現実で生きる力を携えていただきたいと思い、3年間やってきました。その集大成がこの作品に詰まっています。|高橋一生|{{R|natalie20230527}}}}
{{Quotation|この作品は娯楽です。娯楽作品は人の心を動かし得るものだと思っています。僕は岸辺露伴の役をいただいたときに、この虚構の世界で皆さんに夢を見ていただき、現実で生きる力を携えていただきたいと思い、3年間やってきました。その集大成がこの作品に詰まっています。|高橋一生|{{R|natalie20230527}}}}

2024年4月24日 (水) 05:23時点における版

岸辺露伴 ルーヴルへ行く
ROHAN AU LOUVRE
監督 渡辺一貴
脚本 小林靖子
原作 荒木飛呂彦
製作 土橋圭介
井手陽子
ハンサングン
製作総指揮 豊島雅郎
出演者 高橋一生
飯豊まりえ
長尾謙杜
安藤政信
美波
池田良
前原滉
中村まこと
増田朋弥
白石加代子
木村文乃
音楽 菊地成孔 / 新音楽制作工房
撮影 山本周平
田島茂
編集 鈴木翔
制作会社 アスミック・エース
NHKエンタープライズ
P.I.C.S.
製作会社 「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会
配給 アスミック・エース
公開 日本の旗 2023年5月26日
中華民国の旗 2023年9月22日
上映時間 119分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
フランス語
興行収入 12.5億円[1]
テンプレートを表示

岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(きしべろはん ルーヴルへいく)は2023年5月26日公開の日本の映画荒木飛呂彦による漫画シリーズ『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』の一編であり、ルーヴル美術館が主催するバンド・デシネプロジェクトのために書き下ろされた同名の漫画作品が原作となっている。監督の渡辺一貴、脚本の小林靖子を始め、NHK総合で放送されたテレビドラマ『岸辺露伴は動かない』のキャスト・スタッフが続投する形で制作された。

本作の主人公である漫画家・岸辺露伴が、ルーヴル美術館に存在するといわれる「この世で最も黒い絵」が引き起こす怪異に巻き込まれる物語が描かれる。企画は2020年、ドラマシリーズの放送前に始動し、2022年9月から2023年3月にかけて撮影が行われた。パリ市街やルーヴル美術館でのロケも行われ、日本映画がルーヴル美術館で撮影されるのは『万能鑑定士Q モナ・リザの瞳』以来2作目となった。

興行収入は12.5億円を記録し、NHKが製作したドラマの映画化作品としては初めて10億円を突破した。

あらすじ

次回作として故買屋をモチーフにと考えた岸辺露伴は、取材に訪れた骨董店で、美術品オークションに出品されるフランスの画家モリス・ルグランによる黒い絵を知って興味を抱き、その絵を落札するが、競売相手だった男らに絵を強奪される。絵は手元に戻るが、その絵の裏にはフランス語でモリス・ルグランによる「これはルーヴルで見た黒。後悔」という言葉が書かれていることが分かる。

黒い絵について思案する中、露伴は青年期に出会った女性・奈々瀬のことを思いだす。露伴の祖母が運営する下宿に暮らしていた奈々瀬は、露伴の描く漫画に興味を示し「この世で最も黒く、邪悪な絵」の存在を教える。露伴は奈々瀬に惹かれ、彼女をモデルとして漫画に描くが、その絵を見た奈々瀬は突然取り乱して漫画を切り裂き、露伴に詫びて姿を消す。露伴は彼女が「最も黒い絵」がルーヴル美術館にあると示唆していたことを思いだし、その絵を見るため同美術館へ取材に行く決意をする。

泉京香とともにルーヴルを訪ねた露伴は、問題の絵である日本の画家・山村仁左右衛門の作品が、閉鎖され作品が保管されていないはずのZ-13倉庫にあると示される。美術館関係者も把握していない事態に、露伴は通訳のエマ・野口や東洋美術のキュレーター・辰巳隆之介、消防士たちを伴う条件で絵の見学を許される。一行はZ-13倉庫で、ヨハネス・フェルメールの作とみられる絵画を発見する。辰巳はその絵を贋作と断言するが、真作であると見抜いた露伴は、辰巳らに抱いていた不信感とともに、青年期に祖母宅に絵を引き取りに来たフランス人男性の記憶を思い出し、彼や辰巳、消防士らが美術館の所蔵品をモリスが描いた贋作にすりかえる犯罪グループであるとの推理を披露する。

露伴は辰巳らと格闘するが、その最中に職員たちは次々と幻覚を見て怯え、銃撃や火災などの怪異現象によって死亡してゆく。彼らの見る幻覚と怪異がそれぞれの「後悔」や血縁者の罪に基づくものと気づいた露伴は、我が子の事故死による罪の意識から怪異に見舞われるエマを、京香に指示してその場から離れさせ救う。やがて露伴は怪異を起こすものが倉庫奥にある仁左右衛門の絵であると気付き、自身の前にも、黒い顔料にまみれた武士の霊が現れる。追い詰められた露伴の前に、和装の奈々瀬が現れ、武士を押しとどめ「何もかも、すべて忘れて」と露伴に告げる。露伴はこれを好機に自らにヘブンズ・ドアーを仕掛けて脱出に成功、呪われた仁左右衛門の絵は倉庫内の火災によって焼失する。

帰国後、露伴は湖畔に打ち捨てられた奈々瀬と仁左右衛門夫妻の墓を見つけ出す。露伴は奈々瀬の霊に再会し、彼女にヘブンズ・ドアーを仕掛け、江戸時代に生きていた夫妻の悲劇を読む。の御用絵師家系だった仁左右衛門は、新しい絵画表現への挑戦を保守的な父に否定され、妻の奈々瀬とともに実家を出る。しかし奈々瀬が病に倒れて困窮した仁左右衛門は父に頭を下げ家への復帰を頼み、条件として父を超える絵を描けと指示され、愛妻の黒髪の美を再現する絵に執着してゆく。奈々瀬が神社の御神木から黒の樹液を発見し、理想の画材を得たと仁左右衛門は喜ぶが、神聖な木を傷つけたと告発される。捕縛されようとする夫をかばった奈々瀬は役人たちに打ち据えられて死亡し、逆上した仁左右衛門は役人らを皆殺しにする。彼が絶筆として、恨みを込めて描いた妻の肖像が呪われた黒い絵であった。絵の呪いを解くため、自分の子孫にあたる露伴を巻き込んでしまったと詫びる奈々瀬に、露伴はあの夏も自分にとって必要な過去だったと伝え、奈々瀬は微笑んで彼の前から消える。謎が解けた後、露伴は再び漫画家としての日常に戻ってゆく。

登場人物

岸辺露伴(きしべ ろはん)
相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むこともできる特殊能力「ヘブンズ・ドアー」を持った人気漫画家[2]。新作執筆の過程で、かつて奈々瀬より聞かされた「この世で最も黒い絵」の存在を思い出し、その画の謎を追うためルーヴル美術館に訪れる[3]
泉京香(いずみ きょうか)
岸辺露伴の担当編集。露伴の取材に同行し、ともに事件に巻き込まれる[4]

本作では京香の父が5歳の頃に亡くなっていたことが明らかになるが、この設定はテレビドラマ『岸辺露伴は動かない』第1話「富豪村」で登場する、助監督が制作した京香の本に書かれていた設定であり、本作の制作にあたりこの設定の一部が活かされた[4][5]

奈々瀬(ななせ)
露伴が青年の頃、祖母の家で出会ったミステリアスな女性[6]。露伴に「この世で最も黒い絵」がルーヴル美術館にあることを教える[7]
正体は江戸時代に生きた画家・山村仁左右衛門の妻。旧姓は岸辺であり、露伴とは血縁がある[8]。「黒い絵」に取り憑かれた仁左右衛門が引き起こした悲劇により命を落とす。
原作では「藤倉奈々瀬」という名前であったが、偽名を名乗った理由が不明であることから、本作では名字が削除されている[9]
山村仁左右衛門(やまむら にざえもん)

江戸時代の御用絵師。妻である奈々瀬の黒髪をよりよく表現しようとするうちに「黒い絵」に取り憑かれ、悲劇を起こす。生涯の最後に「この世で最も黒い絵」を描く[10]

演じた高橋は「露伴も一歩間違えたらこうなっていたかもしれない」と感じたという[8]
辰巳隆之介(たつみ りゅうのすけ)
東洋美術の専門家であり、ルーヴル美術館の依頼で発見された収蔵品の調査を行っている[11]
当初は原作に登場する「ゴーシェ」というキャラクターが悪人を務める予定であったが、セリフがフランス語ばかりになってしまうことから、新たにオリジナルキャラクターとして隆之介が創作された[12]
エマ・野口(のぐち)
ルーヴル美術館文化メディエーション部の職員であり、取材にやってきた露伴たちをアテンドする[11]
モリス・ルグラン
ルーヴル美術館にてよく模写をしていた画家。彼の描いた黒い絵を露伴はオークションで競り落とす。

キャスト

スタッフ

制作

企画

監督の渡辺とNHKエンタープライズのプロデューサー・土橋圭介は2018年ごろにテレビドラマ『岸辺露伴は動かない』(以下、「ドラマシリーズ」という)を企画している時から妄想レベルで本作を構想しており、「このドラマがうまくいってシリーズ化、最後は長編映画で、長編やるならやっぱり『ルーヴルへ行く』だよね」と話をしていた[20]。また撮影中においても、露伴を演じた高橋一生と渡辺は雑談中に度々「『ルーヴルへ行く』を映画でできたらいいね」と話をしていたという[21]

本作の企画はドラマシリーズ第1期のキービジュアルが発表された後に、アスミック・エースのプロデューサー・井出陽子が渡辺と土橋に、ドラマシリーズを再編集し応援上映を行う企画を持ちかけたことがきっかけとなり、本格的に動き出した[注 1][20]。井出は『ジョジョ』シリーズのファンであり、ドラマシリーズのキービジュアルを観た際に「原作ファンも喜ぶ作品になる」と直感し、話を持ちかけたと語っている[23]話を受けた渡辺と土橋は応援上映ではなく『ルーヴルへ行く』の実写化の企画書を書き上げて井出に提出し、打ち合わせを重ねる中で劇場版にチャレンジすることが決まった[20][23]

数ある原作のエピソードの中で『ルーヴルへ行く』を選んだ理由を、井出は以下のように語っている。

テレビと違って映画はお金を払って観るメディアですよね。〔中略〕ドラマとは違う面白さを感じるものでなければならない。そう考えた時に、『ルーヴルへ行く』は、露伴が海外に赴く話なのでスケールも大きく、なおかつ露伴の過去や、露伴のルーツに迫っていくという、ドラマの中では描かれていない切り口があったので — 井出陽子、[20]

原作者の荒木と版元の集英社の許諾を得、2021年10月ごろより本格的に企画は進み始めた。高橋によれば、脚本の初稿が俳優陣に上がってきたのはドラマシリーズ第2期が終わる頃(2021年12月末)であったという[24]脚本を担当した小林はルーヴルでの撮影交渉が難航した影響で、パリおよびルーヴル美術館でのシナリオハンティングなしで脚本を書き上げる事になったが、ルーヴル美術館に詳しい人や東京藝術大学保存修復日本画研究室教授の荒井経に取材を行い、脚本に反映させた[20][18]。また、原作者の荒木から受けたいくつかの要望に従い、原作からいくつかの要素が足されている(後述)。 脚本の骨格が出来上がり始めた頃、ルーヴル美術館との撮影交渉も進み始めた。原作がルーヴル美術館の主催するバンド・デシネプロジェクトの作品であるため、ルーヴル美術館サイドの反応は上々であったが、コロナ禍の影響などから日程などの具体的な交渉は困難を極めた。2022年6月には撮影日程が固まらないままパリでのロケハンが行われ、ようやく撮影日程が決まったのは日本での撮影が始まってから(2022年9月)であった[20]。また、円安の影響から制作費がかさみ、一部費用が足りなくなったことから、テレビ東京が製作に参加し出資した[23]

原作との違い

ドラマシリーズに引き続き脚本を務めた小林は荒木より、仁左右衛門と奈々瀬を悲恋にすること、そしてルーヴル美術館で死ぬ消防士たちを悪者にしてほしいという要望を受けていた[18]。そのため本作ではZ-13倉庫のシーンのあとに、新たに書き起こされた尺の長い過去編が入る構成となっている[25]。また、本作の露伴は原作より年齢が高く設定されているため[注 2]、奈々瀬を思い出す展開に違和感が生じないよう、モリス・ルグランや黒い絵の設定を足し、「露伴が漫画のために美術を調べていて、そのためにオークションに潜入し、そこから事件に巻き込まれることで過去に少しずつ繋がっていく」という展開となっている[12]

ドラマシリーズから引き継がれたオリジナル要素の一つとして、露伴と京香のコンビがある。ドラマシリーズでの京香は荒木の物語に存在する「ユーモア」の要素を引き受ける、息抜きになるようなキャラクターとして描かれた[26]。小林は二人の関係を「全然住む世界が違っていて、普通なら友だちになることもなく関係が終わっちゃうふたり」と捉えており、本作では、露伴は京香を「ちょっと面白いかも」と感じるようにはなりつつも、それ以上の関係にはならないように意識されている[27]

キャスティング

青年期の露伴には長尾謙杜が起用された。 キャスティングの際には憂いがあり、また駆け出しでスタイルが確立されていない「まだ完成される前の露伴」が前提となり、渡辺が画像検索で長尾の写真を見つけ、キャストの検討会議に提案した。渡辺は長尾が人気アイドルであること、また「ジョジョ」のファンであることを知らずに推薦したため、土屋は不思議な縁を感じたという[28]。長尾は渡辺のアドバイスから高橋の露伴を意識しないようにし、また年齢感が近いことから原作だけでなく『ダイヤモンドは砕けない』も読み直し、役作りを行った[29]

衣装・劇中画

ドラマシリーズに引き続き人物デザイン監修[注 3]を担当した柘植伊佐夫は原作を読んだ際、辻褄が合っているのに合っていないような不思議な読後感を感じたといい、本作では各パートごとに分裂した、整合性や共通性のなさを意識したという。またドラマシリーズでは元気さや生命力がイメージされていたが、今作は悲劇性のある物語であることから、より重みのある印象になるよう意識されている[31]。なお、京香の衣装はドラマシリーズに引き続き、靴とタイツ以外のすべてがオートクチュールとなっている[32]。パリパートの衣装は「パリの街やルーヴルに露伴と京香が立ったとき、しっくり来るものなのか」を意識して制作された[33]。また、ルーヴルで撮影すると聞いた時点で映画『シャレード』のケーリー・グラントオードリー・ヘプバーンのようにしたいと考え、色の組み合わせなどをオマージュしている[34]仁左右衛門の描いた絵画を始めとした劇中画は日本画家の宮崎優が担当した。劇中で仁左右衛門の描いた「蘭画」「微笑む奈々瀬」は1770年代の秋田蘭画を参考に約250年前の画材や技法で制作された。一方、物語の肝となる「黒い絵」は時代考証を無視して制作され、遠目から見ると真っ黒な板に見えるほどの絵画に仕上がっている。「黒い絵」での奈々瀬の黒髪は、まるで奈々瀬の魂が閉じ込められているように、時間の止まった空間に漂うようなイメージで描かれている。宮崎は、仁左右衛門の描きたいものに執着し周りが見えなくなるところに共感し、「黒い絵」の制作時には最初から完成形がはっきりとイメージできたという[10]

撮影・演出

本作は2022年9月にクランクインした[17]渡辺は演出する際、ドラマシリーズから作り方を変えるということはせず、今までやってきたことをそのまま落とし込むことを意識したという。また本作では露伴の過去や江戸時代など様々な時代が描かれるが、過去の記憶でも現実よりも鮮明に記憶されていることもあるので、白黒やセピア色にするといった映像上の演出はしないよう意識された[8]参考にした作品として渡辺はベルナルド・ベルトルッチの映画『暗殺の森』を挙げており、『暗殺の森』でのパリのシーンが曇天であることから、今作でも曇天に拘って制作された。また、パリのシーンは観光名所巡りのような雰囲気は出さないことも意識されている[35]。パリでのロケは2022年11月と2023年3月の2回に分けて行われ、2023年3月の撮影をもって本作はクランクアップとなった[20]

ロケ地

ホテルニューグランド
オークションのシーンが撮影された。渡辺が挙式した場所であり、クラシカルな場所というイメージで思い浮かんだことからオークション会場として選ばれた[35]
葉山加地邸
テレビドラマシリーズに引き続き、露伴の自宅として使用された。

ドラマシリーズとの違いとして、部屋には顔料のもととなる植物などが大量に吊るされており、これらは磯貝が荒井に行った取材がもとになっている。また、ドラマシリーズとの繋がりが感じられるよう、ホットサマー・マーサのフィギュアやバキンのフードボウルなども置かれている[36]

向瀧
会津若松市の旅館。露伴の祖母・猷の下宿を舞台とした、露伴の青年期の撮影が行われた。この場所は渡辺が演出し高橋が主演を務めたNHKのテレビドラマ『雪国 -SNOW COUNTRY-』のロケ地でもあり、渡辺は『雪国』の撮影中(2022年1月)から猷の下宿にも理想的だと考えていたという[35]
エトワール凱旋門シャンゼリゼ通り
露伴と京香が2階建てバスに乗るシーンが撮影された。このシーンでは信号や他の車のタイミングが合わず、理想の画が撮れるまで30分以上、何十周も凱旋門を周回したという[20][37]
ヴィクトル・ユゴーの弁護士事務所
ルーヴル美術館文化メディエーション部のオフィスとして使用された。
ルーヴル美術館
撮影は閉館後から翌朝にかけて行われた。渡辺らによる下見は10回ほど行われたが、閉館後の人がいない美術館は雰囲気が全く異なり、本番では考えてきたことをリセットし、その場で感じたことを大事にしながら撮影は行われたという[38]
大森ベルポート地下3階・能忍寺の廃トンネル
Z-13に続く地下通路のシーンが撮影された。螺旋階段のシーンの撮影ではステディカムが使用され、動きのあるダイナミックな映像となっている[17]
大谷石採石場跡
本作のクライマックスシーンの一つであるZ-13倉庫のシーンが撮影された[17][32]

渡辺はアンドレイ・タルコフスキーの映画『ストーカー』をイメージし、20分以上続く無機質な暗がりのシーンを、いかにエンターテイメントとして飽きさせないものにするかに注力したという[39][40]

霧幻峡・大内宿
仁左右衛門と奈々瀬の物語が描かれた江戸時代パートが撮影された。

仁左右衛門が黒に魅せられていく場面はZ-13倉庫のシーンとリンクされており、蜘蛛の巣が徐々に増える演出が施されている。また、御神木の黒い樹液は、木から流れるものと指についたものとで素材を変えるなどこだわって制作された[41]

音楽

ドラマシリーズに引き続き音楽を担当した菊池成孔は原作を読んだことはなかったものの、周囲には「ジョジョ」の熱狂的なファンが多くおり、『ルーヴルへ行く』についてもある程度予備知識を持った状態で制作に臨むことができたという[42]。本作の音楽制作は映像がすべて完成してから行われ、菊池は様々な時代が描かれる映像に合わせて、音楽も統一感を出さずオムニバスのような形で制作した。なお、本作ではドラマシリーズに引き続き「新音楽制作工房[注 4]」も音楽制作を行っている[44]

菊池はドラマシリーズとの違いとして、シネコンの大出力のスピーカーにも耐えうる音の厚みを心がけたといい、ドラマシリーズでは4人編成でダビングを2回行い最大8人分の音だったストリングスが、今作では14人編成でレコーディングが行われた[45]。メインテーマである「大空位時代」も今作に向けて音を厚くアレンジされており、この曲のブローアップが本作の最初のミッションだったという[44]今作の音楽制作にはAIを使用した楽曲が使われており「AI制作によるふたつの弦楽四重奏の同時演奏」がその一つである。この曲はMaxが2台入ったモデルを使い、片方のMaxが生成したものにもう片方のMaxを反応させて制作されている[46]露伴の青年期が描かれる過去編の音楽は、菊池が映像を見た際に花街のような印象を受けたことから、浄瑠璃音楽の一つ清元節を元に、インドネシアの打楽器アンサンブルであるガムランとシンセサイザーの一種モジュールシンセをミクスチャーしたものとなっている。レコーディングではこれらの奏者を集め、本編映像を観ながらのセッションが24分間ノンストップで行われた[47]パリパートの音楽は日本人がパリ風の音楽を制作すると陥りがちな「疑似ミシェル・ルグラン」にならないように意識し、モーリス・ラヴェルクロード・ドビュッシーのようなフランスの近代音楽風のものを、新音楽制作工房のメンバー・丹羽武史が菊池の依頼を受けて制作した[45][43]

江戸時代パートの音楽は新音楽制作工房のメンバー・大野格と菊池の共作となっている[43]。大河ドラマのようになるのを避けるため、グスタフ・マーラージャコモ・プッチーニのようなドラマティックなクラシックが作曲された[44]。ラストシーンにて使用された「愛の遺伝」は「大空位時代」と同じくボーカロイドが歌唱したアリアがトップノート[注 5]になっており、「大空位時代」へのアンサーとなっている[43][44]

封切り

制作発表から公開まで

2022年12月27日に放送されたテレビシリーズ第8話「ジャンケン小僧」のエンドロール後に京香が本作を匂わすセリフ[注 6]を発し、それから9日後の2023年1月5日、ティザービジュアルと超特報映像とともに本作の映画化が発表された[49][13]。4月24日には初号試写が行われ、翌25日には当時ルーヴル美術館展が行われていた国立新美術館にて完成報告イベントが開催された[50]5月18日にはTOHOシネマズ日比谷にて先行上映会が行われ、高橋と渡辺が登壇した。イベントの最後にはサプライズとして荒木が本作に描き下ろしたイラストの複製原画が高橋に送られた[51]。この描き下ろしイラストはのちに第2弾入場者プレゼントとして配布された[52]

公開後

本作は2023年5月26日に全国272スクリーンで公開され、翌27日にはTOHOシネマズ六本木ヒルズにて公開記念舞台挨拶が行われた[53][54]。舞台挨拶の最後に高橋は次のように述べている。

この作品は娯楽です。娯楽作品は人の心を動かし得るものだと思っています。僕は岸辺露伴の役をいただいたときに、この虚構の世界で皆さんに夢を見ていただき、現実で生きる力を携えていただきたいと思い、3年間やってきました。その集大成がこの作品に詰まっています。 — 高橋一生、[54]

また、公開に際し、原作者の荒木は以下のコメントを寄せた。

ドラマや本劇場作を拝見して感じることは、出演される俳優さんたちに恵まれているということです。(中略)画面の向こうに本当に存在しているように思えて、原作を忘れて観てしまいます。着ている衣装や包み込む音楽がその世界観をさらに煽ってくるのです。きっと映画を見た皆様の心の中にも深く残るキャラクターたちになってくれているのだと思います。 — 荒木飛呂彦、[55]

同年6月9日からはスマートフォンアプリ「HELLO! MOVIE」を利用した副音声コメンタリー上映が行われ、高橋一生、飯豊まりえ、木村文乃、渡辺一貴が参加した[56]

同年9月6日に公式X(旧Twitter)で、本作の日本国内での上映を終了したことが発表された[57]

同年9月22日には台湾にて『岸邊露伴在羅浮』の題で公開された[58]。公開に先立ち、高橋と渡辺は15日から17日までの3日間の日程で台湾に渡り、3回の上映会に参加した[59]

評価

興行収入

本作は公開3日間で22万1000人を動員し、興行収入は3億1500万円を記録した[60]これは2023年に公開された300館以下の劇場映画の初週3日間の成績としては同年5月末時点で最高の興行収入であり、ライターの宇野維正映連4社以外の配給作品としては異例であると述べている[61][60]。本作はその後も成績を伸ばし、6月18日にはNHKの連続ドラマの映画化作品として初めて興行収入が10億円を突破した[53]

宇野は、NHKの連続ドラマの映画化作品は公共放送局というNHKの特性上、ドラマの放送から映画公開までのタイムラグが大きく、また民放のような局を挙げての宣伝ができないため大きなヒットに繋がりにくいという特徴があるが、本作はドラマシリーズの最新話の放送から映画公開までが6か月以内というタイムリーさを実現したため、快挙と言っていい成績を残すことができたと述べている[60]

反響

本作は公開直後からパンフレットを始めとしたグッズの売り切れが続出し、MANTANWEBが関係者に取材した話によると、観客は女性が多く、劇場内の物販コーナーは行列状態であったという[62]

批評

キネマ旬報』のレビューでは、宇野維正・北川れい子・千浦僚がレビューを行った。映画ライターの宇野は星3つとし、美点として「(露伴と京香の)『作家と編集者』や『男と女』の定型に収まらない洒脱な関係性と軽妙な台詞の掛け合い」を、欠点として「アート作品『風』の小賢しいカメラの構図の多用と、散見される稚拙な編集」をそれぞれ挙げ、トリッキーな設定に慣れるのには時間を要したが最終的にはかなり楽しめたと評している。映画評論家の北川は原作漫画もドラマも未読と断った上で星2つとし、露伴のヘアバンドを始めとした形振りや特殊能力、そしてルーヴル美術館を巻き込んだ因縁話はかなりぶっ飛んでおり、「映画のリアリティーを超越した幻覚的ミステリ」と述べている。元映写技師で、映画評論家として活動している千浦は星3つとし、ミステリアスなネタを追う展開はキビキビとして飽きさせず、パリの街とルーヴル美術館でのロケ撮影も効果的であったと評し、本作と同じくパリでロケを行った2015年の映画『王妃の館』と非常に近い作品だと述べている[63]シネマトゥデイ』の短評では、なかざわひでゆき・村松健太郎が短評を寄せた。映画ライターのなかざわは星3つをし、プロットが複雑なうえ説明過多なセリフが多いことからストーリーがわかりにくくなっているものの、大正ロマン的な幻想怪奇ムードや陰鬱なパリの景色は魅力的であったと評している。映画ライターの村松健太郎は星4つとし、テンションの高い劇画的な原作が、どこかこの世の話ではない雰囲気が漂う、非常に風変わりな怪奇譚に仕上がっていると評している[64]元漫画雑誌編集者で、『漫画家、映画を語る。』などの著書がある島田一志は、リアルサウンドでの特集記事において、原作ではやや分かりにくかった部分を本作ではオリジナルエピソードによって補完しており、かつその改変部分には原作への深い愛情と敬意が感じられるため全く気にならないと評している。特に本作で深く掘り下げられた仁左右衛門のエピソードは、仁左右衛門を高橋が一人二役で演じたことによって、露伴もまた仁左右衛門と同じく「呪われた絵師」になりうると暗に語る物語になったと述べている。また、露伴を演じた高橋の演技は、漫画では難しい複雑な感情表現が為されており、そういった意味で本作は漫画の実写化に「成功」しているといってもいいと評価している[15]お笑い芸人の宮下兼史鷹は、リアルサウンドで連載している自身の映画コラム「宮下兼史鷹のムービーコマンダー」にて、ドラマシリーズの劇場版でありながらスケールが大きくなりすぎず、ドラマシリーズの良さがしっかり活きた作品になっていたと評している。また自身は木村文乃のファンであると語っており、木村の演技については彼女の陰の部分を強調した役柄を評し、露伴のように恋をしてしまったと述べている[65]

サウンドトラック

『「岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く」オリジナル・サウンドトラック』
菊池成孔、新音楽制作工房サウンドトラック
リリース
録音
  • Sound City Annex
  • Sound City Annex T-1
  • ONKIO HAUS
  • FREEDOM STUDIO INFINITY
  • Syn Studio
時間
レーベル 日本コロムビア
プロデュース 菊地成孔
チャート最高順位
EANコード
EAN 4549767187495
テンプレートを表示

菊地成孔と新音楽制作工房によるサウンドトラックは、ドラマシリーズの劇伴とカップリングされ、2023年10月25日に発売された[66]。同年6月に本作の制作が発表された際には9月13日に発売予定であると予告されていたが、制作上の都合により延期された[67]。同年12月1日には本作のスペシャルイベントが開催され、菊地成孔、高橋一生、飯豊まりえ、渡辺一貴が出演した[68]。初週のオリコンの週間アルバムチャートでは25位を記録した[69]

Disc 1
出典[70]
#タイトル作詞作曲時間
1.「大空位時代のためのレチタティーヴォ(叙唱)」 菊地成孔 
2.「実験室のブードゥー」 菊地成孔 
3.「明日きっと、晴天から降り注ぎ、わたしを支配する美しい響き」   
4.「海亀が陸上を、野牛が水中を歩む」 菊地成孔、田島浩一郎 
5.「雨音」 菊地成孔 
6.「去年マリエンバードで(I)」 菊地成孔 
7.「電子音による空間彫刻」 菊地成孔 
8.「ピアノソナタ 第一番」 菊地成孔 
9.「ドン・イシドロ・パロディの6つの難事件(I)」 菊地成孔 
10.「東京-ブエノスアイレス」 早川純 
11.「ガラスの動物園」 菊地成孔 
12.「夕映」 早川純 
13.「愛の悦び」 菊地成孔 
14.「ザ・ラン」 菊地成孔 
15.「去年マリエンバードで(II)」 菊地成孔 
16.「六壁坂(I)」 菊地成孔 
17.「六壁坂(II)」 菊地成孔 
18.「フィットネスジム暴走/ランニングマシン」 高橋大地 
19.「フィットネスジム暴走/ダンベルたち」 高橋大地 
20.「優雅で感傷的なミニマル」 菊地成孔 
21.「ピアノソナタ 第二番」 菊地成孔 
22.「愛のテーマ」 菊地成孔 
23.「闘争のエチカ」 菊地成孔、高橋大地 
24.「目眩」 djapon 
25.「AI制作による恐怖映画」 薬袋正宗 
26.「イブの歌」 菊地成孔古川琴音、菊地成孔
27.「イブの呪い」 菊地成孔古川琴音
28.「大空位時代」 菊地成孔、佐々木語菊地成孔
合計時間:
Disc 2
出典[70]
#タイトル作詞作曲時間
1.「AI制作による二つの弦楽四重奏の同時演奏」 大野格 
2.「夢の中の軍楽」 OGAWA SEIJI 
3.「ROBOTme」 委細昌嗣 
4.「メリーゴーラウンド」 高橋大地 
5.「nu_nu JAZZ」 田島浩一郎 
6.「夢で見た工場」 薬袋正宗 
7.「ジャンケン小僧と露伴の台詞(I)」 田島浩一郎 
8.「露伴とジャンケン小僧の対決その始まり」 菊地成孔 
9.「ジャンケン小僧と露伴の台詞(II)」 田島浩一郎 
10.「ジャンケン小僧と露伴の台詞(III)」 田島浩一郎 
11.「露伴とジャンケン小僧の対決のその終わり」 菊地成孔 
12.「4つの黒」 菊地成孔 
13.「NU_jazz_NU」 佐々木語 
14.「5つの黒」 菊地成孔 
15.「都鳥(レコーディング・セッション版)」 菊地成孔 
16.「7つの黒」 菊地成孔 
17.「ピアノソナタ 第三番」 菊地成孔 
18.「ピアノソナタ 第四番」 菊地成孔 
19.「machine/mazurka」 大野格 
20.「La Seine」 丹羽武史 
21.「交響曲「音声ファイル」」 田島浩一郎 
22.「琴とノイズ」 大野格 
23.「愛の遺伝」 菊地成孔、大野格菊地成孔
24.「ルーヴル美術館内動く歩道での即興」 菊地成孔 
25.「Le Lourve」 丹羽武史 
26.「大空位時代」 菊地成孔、佐々木語 
合計時間:

関連商品

ノベライズ
ヴィジュアルブック
  • 『岸辺露伴 ルーヴルへ行く VISUAL BOOK』集英社、2023年5月26日発売、ISBN 978-4-0879-0119-1
映像ソフト
Blu-rayとDVDがNHKエンタープライズより2024年7月26日に発売予定[71]

イベント

試写会、および先行上映会は#封切りを参照のこと。

ティーチイン

監督の渡辺一貴とゲストが対談するティーチインが2023年6月より順次行われた。開催日時、場所、出演者は以下の通り。

日時 場所 ゲスト 出典
6月8日 TOHOシネマズ池袋 小林靖子 [18]
6月15日 TOHOシネマズ六本木ヒルズ 菊池成孔 [53]
6月22日 TOHOシネマズ日本橋 柘植伊佐夫
6月25日 TOHOシネマズ梅田 土橋圭介
あべのアポロシネマ
ミッドランドスクエア シネマ
シネシティザート
7月3日 シネクイント [72]

体験型イベント

本作の体験型イベント「岸辺露伴 ルーヴルへ行く 体験型イベント 〜ようこそ、岸辺露伴の世界へ〜」が2023年9月より池袋、梅田、博多の「バンダイナムコ Cross Store」にて順次開催された。オリジナルグッズやコラボメニューの販売や、自分だけの「ヘブンズ・ドアー」の記事を作れるアトラクションなどが行われた[73]

コラボレーション

2023年5月15日から6月15日にかけて京王電鉄とのタイアップ企画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く×KEIO」が行われ、「ヘブンズ・ドアー」を模した京王井の頭線の記念乗車券が発売された[74]

2023年5月15日から6月11日にかけてフランス料理店「俺のフレンチ」とのタイアップ企画が行われ、コラボメニュー「高知県産カツオのたたきルーヴル仕立て 〜岸辺露伴のノワールを添えて〜」が販売された[75]

脚注

注釈

  1. ^ ドラマシリーズ第1期のキービジュアルが発表されたのは2020年10月14日のこと[22]
  2. ^ 明確な年齢は設定されていないが、演じている高橋と同じくらいの30代後半と設定されている[18]。なお、原作の露伴は27歳。
  3. ^ 扮装のコンセプトを決め、各キャラクターのデザインを描き、登場人物の扮装を統括する役割[30]
  4. ^ 菊池の私塾「ペンギン音楽大学」の生徒らと菊池自身が立ち上げた音楽ギルド[43]
  5. ^ 曲中で最も高い音のこと。
  6. ^ (ルーヴル美術館にて京香の父が撮った写真を掲げながら)「パリ……ルーブル美術館!」[48][49]

出典

  1. ^ 2023年(令和5年)全国映画概況” (pdf). 一般社団法人 日本映画製作者連盟 公式サイト. 日本映画製作者連盟 (2024年1月30日). 2024年2月2日閲覧。
  2. ^ パンフレット (2023), p. 3.
  3. ^ 緑里孝行 (2023年5月26日). “映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」本日公開! 岸辺露伴最大の事件が完全映画化”. GAME Watch. インプレス. 2023年11月3日閲覧。
  4. ^ a b パンフレット (2023), p. 4.
  5. ^ 石井百合子 (2023年5月27日). “実写「岸辺露伴」で泉京香が全エピソードに登場する理由”. シネマトゥデイ. 2023年12月1日閲覧。
  6. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 128.
  7. ^ パンフレット (2023), p. 5.
  8. ^ a b c ヴィジュアルブック (2023), p. 118.
  9. ^ パンフレット (2023), p. 20.
  10. ^ a b ヴィジュアルブック (2023), pp. 154–155.
  11. ^ a b パンフレット (2023), p. 11.
  12. ^ a b ヴィジュアルブック (2023), p. 127.
  13. ^ a b c d e f g h i 『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』映画化決定 高橋一生、飯豊まりえ、スタッフ陣が再集結”. リアルサウンド映画部. blueprint (2023年1月5日). 2023年1月5日閲覧。
  14. ^ a b c d e 青年期の岸辺露伴役はなにわ男子・長尾謙杜 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』追加キャスト4人発表”. ORICON NEWS. oricon ME (2023年2月1日). 2023年2月1日閲覧。
  15. ^ a b 島田一志 (2023年6月15日). “映画『岸辺露伴ルーヴルへ行く』原作を補う“改変”が見事 高橋一生が見せた、最も切ない「ヘブンズ・ドアー」の卓越さ”. リアルサウンド映画部. blueprint. 2023年12月20日閲覧。
  16. ^ a b c d e パンフレット (2023), p. 13.
  17. ^ a b c d e f 渡辺彰浩. “PRODUCTION NOTES”. 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』公式サイト. 2023年11月3日閲覧。
  18. ^ a b c d e 「岸辺露伴」ネタバレありで制作陣が語りまくり、「この先も期待していい?」への回答は”. コミックナタリー. ナターシャ (2023年6月8日). 2023年11月3日閲覧。
  19. ^ a b c d e f g h i j k l m n パンフレット (2023), pp. 42–43.
  20. ^ a b c d e f g h 石井百合子 (2023年4月27日). “「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」映画化が実現するまで パリロケで思わぬハプニングも”. シネマトゥデイ. 2023年11月3日閲覧。
  21. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 116.
  22. ^ 荒木飛呂彦「岸辺露伴は動かない」NHKでドラマ化!露伴は高橋一生、脚本は小林靖子”. コミックナタリー. ナターシャ (2020年10月14日). 2024年4月21日閲覧。
  23. ^ a b c 井手陽子(映画プロデューサー、アスミック・エース所属)(インタビュアー:赤井大祐、文:船岡花奈)「『岸辺露伴』はどのように「ルーヴル」へ行ったのか。プロデューサーが語る制作秘話」『FINDERS』、シー・エヌ・エス・メディア、2023年5月26日https://finders.me/kqFQpDM3Mzk2023年12月15日閲覧 
  24. ^ 斎藤岬 (2023年5月24日). “高橋一生「ずっと岸辺露伴でもいいですよ」──映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』インタビュー”. GQ Japan. CONDÉ NAST. 2024年1月16日閲覧。
  25. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 124.
  26. ^ 演出・渡辺一貴インタビュー『岸辺露伴~』は作り続けたい”. TVガイドみんなドラマ. 東京ニュース通信社 (2021年12月23日). 2023年12月10日閲覧。
  27. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 129.
  28. ^ 石井百合子 (2023年5月2日). “青年期の岸辺露伴に長尾謙杜を起用した理由 不思議な巡り合わせも”. シネマトゥデイ. 2023年11月25日閲覧。
  29. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 144.
  30. ^ 石井百合子 (2023年4月22日). “実写「岸辺露伴」の衣装、なぜモノトーン?大反響のビジュアルが出来上がるまで”. シネマトゥデイ. 2023年11月25日閲覧。
  31. ^ ヴィジュアルブック (2023), pp. 132–134.
  32. ^ a b ヴィジュアルブック (2023), p. 143.
  33. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 134.
  34. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 136.
  35. ^ a b c 石井百合子 (2023年5月26日). “『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』なぜ曇り空のパリ?渡辺一貴監督のロケーションの流儀”. シネマトゥデイ. 2023年11月3日閲覧。
  36. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 150.
  37. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 79.
  38. ^ 池ノ辺直子 (2023年5月27日). “渡辺一貴監督が語る 現実にルーヴルへ行くという奇跡が起きた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』”. otocoto. バカ・ザ・バッカ. p. 2. 2023年11月19日閲覧。
  39. ^ 永瀬由佳 (2023年5月24日). “映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』監督 渡辺一貴———引っ掛かるのは〝記憶″というキーワード。最近の作品はすべてそれがモチーフなのではと思うほど。”. CREATIVE VILLAGE. クリーク・アンド・リバー. 2023年11月3日閲覧。
  40. ^ ヴィジュアルブック (2023), pp. 152–153.
  41. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 153.
  42. ^ ヴィジュアルブック (2023), p. 147.
  43. ^ a b c d 菊地成孔; 佐々木語; 丹羽武史; 大野格(インタビュアー:Satoshi Torii、写真:Hiroki Obara)「『岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く』OST〜菊地成孔/新音楽制作工房が紡ぐ新時代の劇伴とは」『サンレコ』、リットーミュージック、2023年11月21日https://www.snrec.jp/entry/ex/interview/kishiberohan_kikuchi-naruyoshi_shin-on-gak2023年12月15日閲覧 
  44. ^ a b c d パンフレット (2023), p. 19.
  45. ^ a b ヴィジュアルブック (2023), p. 148.
  46. ^ 小池直也 (2023年9月16日). “菊地成孔が考えるAIと音楽のこれから 常識を揺るがす可能性があるも“100パーセント肯定”な理由”. リアルサウンド音楽部. blueprint. 2023年12月1日閲覧。
  47. ^ ヴィジュアルブック (2023), pp. 148–149.
  48. ^ パンフレット (2023), p. 8.
  49. ^ a b 笠緒 (2022年12月28日). “飯豊まりえ“京香”のセリフに「匂わせワードが盛り沢山」、SNSでは早くも“次回作”考察…「岸辺露伴は動かない」第8話”. シネマカフェ. イード. 2023年12月1日閲覧。
  50. ^ 高橋一生が不思議で素敵な「岸辺露伴」アピール、長尾謙杜は「ジョジョ好きだよね?」で仲間入り”. 映画ナタリー. ナターシャ (2023年4月25日). 2023年12月1日閲覧。
  51. ^ 「岸辺露伴」高橋一生、荒木飛呂彦とは「芝居とマンガで文通している感覚だった」”. 映画ナタリー. ナターシャ (2023年5月18日). 2023年12月1日閲覧。
  52. ^ 「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」入場者特典第2弾は荒木飛呂彦描き下ろしのイラストカード”. コミックナタリー. ナターシャ (2023年5月31日). 2023年12月1日閲覧。
  53. ^ a b c 仲瀬コウタロウ (2023年6月19日). “映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」興行収入10億円を突破! 渡辺一貴監督による全国ティーチインイベントも開催”. アニメ!アニメ!. イード. 2023年12月1日閲覧。
  54. ^ a b 「岸辺露伴」高橋一生は目の奥が真っ黒、木村文乃は長尾謙杜の“立ち振る舞い”を絶賛”. 映画ナタリー. ナターシャ (2023年5月27日). 2023年12月1日閲覧。
  55. ^ パンフレット (2023), p. 17.
  56. ^ HELLO! MOVIEアプリにて、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(アスミック・エース 配給)、「副音声コメンタリー上映」実施のご案内”. エヴィクサー 公式サイト (2023年6月6日). 2023年12月1日閲覧。
  57. ^ 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』公式 [@rohan_movie] (2023年9月6日). "映画『#岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は先日国内上映を終了いたしました。". X(旧Twitter)より2023年12月15日閲覧
  58. ^ 王心妤(文)、名切千絵(編集) (2023年8月30日). “高橋一生、映画PRで来月15~17日に台湾訪問 ファンの前に”. フォーカス台湾. 中央通訊社. 2023年12月1日閲覧。
  59. ^ 王心妤(文)、田中宏樹(編集) (2023年9月17日). “高橋一生が映画PRで台湾訪問 中国語であいさつ「一生愛してる」”. フォーカス台湾. 中央通訊社. 2023年12月1日閲覧。
  60. ^ a b c 宇野維正 (2023年6月2日). “『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』好スタート その「快挙」の背景にあるもの”. リアルサウンド映画部. blueprint. 2023年12月1日閲覧。
  61. ^ 映画『岸辺露伴』公開3日間で興収3億円突破 2023年300館以下の出足は最高興収”. ORICON NEWS. oricon ME (2023年5月29日). 2023年12月1日閲覧。
  62. ^ 岸辺露伴 ルーヴルへ行く:週末興行ランキングで邦画1位 3日で興入3億1400万円突破 パンフレット売り切れ続出”. MANTANWEB. MANTAN (2023年5月29日). 2023年12月1日閲覧。
  63. ^ 岸辺露伴 ルーヴルへ行くの映画専門家レビュー一覧”. キネマ旬報WEB. キネマ旬報社. 2023年12月1日閲覧。
  64. ^ 岸辺露伴 ルーヴルへ行く (2023):映画短評”. シネマトゥデイ. 2023年12月1日閲覧。
  65. ^ アナイス (2023年6月19日). “『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は完璧な映画化 宮下兼史鷹が高橋一生の“声”を絶賛”. リアルサウンド映画部. blueprint. 2023年12月10日閲覧。
  66. ^ 菊地成孔と新音楽制作工房が手掛ける『「岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く」オリジナル・サウンドトラック』10月25日発売”. TOWER RECORDS ONLINE. タワーレコード (2023年6月26日). 2023年12月1日閲覧。
  67. ^ コロムビアクラシック [@Co_Classics] (2023年8月25日). "【発売日変更】 9月13日に予定しておりました「岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く」オリジナル・サウンドトラック【完全生産限定版】の発売日を、制作上の都合により10月25日に延期させて頂くこととなりました。". X(旧Twitter)より2023年12月23日閲覧
  68. ^ 10月25日(水)発売『岸辺露伴』オリジナル・サウンドトラックのトークイベントに飯豊まりえの参加が決定!”. 時事ドットコム. 時事通信社 (2023年10月23日). 2023年12月1日閲覧。
  69. ^ 「岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く」オリジナル・サウンドトラック”. ORICON NEWS. oricon ME. 2023年12月23日閲覧。
  70. ^ a b 「岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く」オリジナル・サウンドトラック[2CD+ブックレット]<完全生産限定盤>”. タワーレコード オンライン. 2023年12月23日閲覧。
  71. ^ 野澤佳悟 (2024年4月2日). “「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」BD化。豪華版に日仏ロケの裏側に迫る秘蔵映像”. AV Watch. インプレス. 2024年4月15日閲覧。
  72. ^ 『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』渡辺一貴監督×スペシャルゲストによる追加ティーチイン開催決定!”. 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』公式サイト (2023年6月29日). 2023年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月2日閲覧。
  73. ^ 映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』体験型イベントが東京、大阪、福岡で開催。自分だけの“ヘブンズ・ドアー”記事が作成できるアトラクションが展開”. ファミ通.com. KADOKAWA Game Linkage (2023年8月23日). 2023年12月1日閲覧。
  74. ^ 西新宿LOVEWalker (2023年4月25日). “記念乗車券は京王線新宿駅でも販売! 「岸辺露伴 ルーヴルへ行く×KEIO」タイアップ企画を京王線・井の頭線にて5月15日~6月15日実施”. ASCII.jp. 角川アスキー総合研究所. 2023年12月1日閲覧。
  75. ^ 映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」と「俺のフレンチ」がコラボ!映画をテーマにしたスペシャルメニューをご注文で、オリジナルポストカードプレゼント!”. 俺の株式会社 公式サイト (2023年5月11日). 2023年12月1日閲覧。

参考文献

  • 井藤涼 編『岸辺露伴 ルーヴルへ行く VISUAL BOOK』瓶子吉久 発行、集英社、2023年5月31日。ISBN 978-4-0879-0119-1 
  • 渡辺彰浩、魚住桜子 著、東宝ステラ 編『岸辺露伴 ルーヴルへ行く パンフレット』大田圭二 発行、東宝、2023年5月26日。 

外部リンク