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「ライギョ」の版間の差分

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<table border="1" cellspacing="0" align="right" cellpadding="2">
<table border=1 cellspacing=0 align=right cellpadding=0>
<tr><th bgcolor="pink"></th></tr>
<tr><th align=center bgcolor=pink>ワンドジウ科 Channidae
<tr><td align=center>[[画像:Northern snakehead.jpg|240px]]<br/>カムルチー ''Channa argus''
<tr><td>
<tr><th align=center bgcolor=pink>[[生物の分類|分類]]
[[Image:Northern snakehead.jpg|300px|center|thumb|カムルチー ''Channa argus'']]
</td></tr>
<tr><td><table align=center>
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<tr><th bgcolor="pink">'''[[生物の分類|分類]]'''</th></tr>
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<tr><td><table align="center">
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<tr valign="top"><td>: </td><td>[[脊索動物|脊索動物門]] Chordata</td></tr>
<tr><td>:</td><td>[[条鰭綱]] Actinopterygii
<tr valign="top"><td>亜門: </td><td>[[脊椎動物|脊椎動物亜門]] Vertebrata</td></tr>
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<tr valign="top"><td>上綱: </td><td>[[魚類|魚上綱]] Pisciformes</td></tr>
<tr><td>亜目:</td><td>タイワンドジョウ亜目 Channoidei
<tr valign="top"><td>: </td><td>[[硬骨魚綱]] Osteichthyes</td></tr>
<tr><td>:</td><td>タイワンドジョウ科 [[w:Channidae|Channidae]]</table>
<tr><th align=center bgcolor=pink>下位分類
<tr valign="top"><td>目: </td><td>[[スズキ目]] Perciformes</td></tr>
<tr><td align=center>2属・31種([[#分類と分布|本文参照]])
<tr valign="top"><td>亜目: </td><td>タイワンドジョウ亜目 Channoidei</td></tr>
<tr><th align=center bgcolor=pink>英名
<tr valign="top"><td>科: </td><td>タイワンドジョウ科 Channidae</td></tr>
<tr><td align=center>Snakehead</table>
<tr valign="top"><td>属: </td><td>'''タイワンドジョウ属 <i>Channa</i>'''</td></tr>
'''ライギョ'''(雷魚)は、スズキ目・タイワンドジョウ科に属する[[魚類|魚]]の一種'''カムルチー''' ''Channa argus'' を指す呼称だが、広義には'''タイワンドジョウ科''' Channidae に分類される魚の総称としても用いられる。熱帯[[アフリカ]]と[[東南アジア]]周辺に広く分布する淡水性の大型肉食魚である。
</table></td></tr>
<tr><th bgcolor="pink">種</th></tr>
<tr><td align="left">
* カムルチー <i>Channa argus</i>
* タイワンドジョウ <i>Channa maculata</i>
* コウタイ <i>Channa asiatica</i>
<tr><th bgcolor="pink">英名</th></tr>
<tr><td align="center">
[[:en:Snakehead|Snakehead]]
</td></tr></table>


和名に「[[ドジョウ]]」の名があるが、[[コイ目]]・ドジョウ科に分類されるドジョウとは全く異なる。細長い体と[[ヘビ]]に似た頭部から、[[英語]]では"Snakehead"(スネークヘッド)と呼ばれ、[[釣り]]や[[観賞魚]]の愛好家はこちらで呼ぶことも多い。[[日本]]には自然分布しないが、カムルチー、タイワンドジョウ、コウタイの3種が移入され、各地で[[外来種]]として定着している。ライギョの他にライヒー、タイワンなどと呼ぶこともある。
'''ライギョ'''、'''雷魚'''は、[[スズキ目]] タイワンドジョウ科に属する[[魚類|魚]]で、'''カムルチー'''、'''タイワンドジョウ'''などをまとめて呼ぶときの一般名。カムルチーとタイワンドジョウの形態はよく似ており、細長い体で、頭部も長く、ヘビの頭部に似ていることから、英語では "Snakehead" と呼ばれる。
== 特徴 ==
全長はカムルチーで80cmに達する。体は前後に細長い円筒形をしている。背鰭と尻鰭は他のスズキ目のような棘条が発達しない。また、背鰭と尻鰭の基底も長く、背鰭は胴体のほとんど、尻鰭も胴体の後半部分に及ぶ。腹鰭は小さい。口は大きく、下顎が上顎よりも前に突き出ており、鋭い[[歯]]が並ぶ。口の中へ手を入れると噛みつかれて出血することがあるので、漁獲時などは十分な注意が必要である。
===空気呼吸===
また、空気[[呼吸]]ができるのも特徴である。外見ではわからないが、[[えら|鰓]]に近接した頭部の腔所に「上鰓器官」(じょうさいきかん、suprabranchial organ)と呼ばれる[[血管]]の発達した[[粘膜]]のひだをもつ。他に近縁のスズキ目・[[キノボリウオ亜目]](アナバス類)も同様の上鰓器官を持つ。


水面に口を出して空気を吸い込み、これを上鰓器官に送り込んで[[酸素]]を直接摂取する。その後は一旦水で満たして古い空気を追い出し、それから水を排出して新しい空気を吸い込む。
== 概要 ==
ライギョの口は、下顎が発達した独特の形をしており、歯が発達している。背ビレと尻ビレが長く、腹ビレは小さい。これらは、もともと[[ユーラシア大陸]]、特に[[東アジア]]に分布し、[[日本]]には人為的に導入された[[外来種]]である。導入当時には「チョウセンナマズ」と呼ばれた。


空気呼吸ができるため[[溶存酸素量]]が少ない劣悪な水環境でも生存できる。また、摂氏10度前後の気温であれば、3-4日程度なら水から出ていても生きているという。ただし体内の呼吸で発生する[[二酸化炭素]]は主に鰓から水中に排出するため、上鰓器官だけでは生存できない。一方、鰓だけでも生存に必要な酸素を得ることができず、[[網]]に掛かるなどして空気呼吸が阻害されると溺死する。
[[中華人民共和国|中国]]や[[朝鮮半島]]などでは食用にし、[[養殖]]も盛んである。しかし、'''[[有棘顎口虫]]の[[中間宿主]]のため生食は危険である'''。また、[[ルアー]]を用いた[[釣り]]の対象魚としてよく知られている。黄褐色の体に大型の鱗、大きな黒褐色の斑紋があり、[[ニシキヘビ]]の模様のようで美しいため、観賞魚として飼育されることもある。
===生態===
流れが緩やかで、[[ハス]]の葉などの[[水生植物]]が生い茂ったところに好んで生息する。[[湖沼]]や[[河川]]の中下流域などに多い。


[[湖沼]][[河川]]中下流域で流れが緩やかで[[蓮]]の葉などの[[生植物]]茂ったところ好んで生息する。基本的に魚食性他に[[カエル]]、[[エビ]]などの[[甲殻類]]、[[昆虫類|昆虫]]なども食べる。温が18℃超えると食を行うようになり、20℃以上になると活発に摂食するようになる。また、温が15℃以下なる捕食しなくな仮眠状態る。多くの文献等ではその姿形から獰猛というイメージが定着してるが実際は警戒心が強い部類の魚で臆病な面もある。捕食行動は水底にじっと潜み、通りかかる獲物に飛びかかる。朝や夕方の薄暗い時間帯に活発。雷魚の名の由来は、一般に、天候が悪く暗いときや、水が濁っているときなどに行動が活発になることから雷を呼ぶ魚、雷魚呼ばる説、獰猛な性格で、雷が鳴るまでくわえた獲物を離さないとする説などがある。
夕方薄暗い時間帯または水が濁ってる時活発に活動する。食性は基本的に魚食性だが、他に[[カエル]]、[[エビ]]などの[[甲殻類]]、[[昆虫類]]など水生動物幅広く捕食する。水じっ潜み、水中や水面かかる獲物飛びかかる。多くの文献等ではその姿形から獰猛というイメージもあるが警戒心が強臆病な面もある。雷魚の名の由来は、天候に行動ることから雷を呼ぶ見らたからとも、獰猛な捕食行動が「雷が鳴るまでくわえた獲物を離さない見られたからともいわれる。


繁殖時は親が[[水草]]で[[巣]]を作り、産卵後も巣の近くに留まって卵や稚魚を保護する。護岸など水草が生えない所では繁殖出来ないため、開発が進んだ地域では個体数が減少している所もある。
この仲間は、[[エラ|えら]]に近接した頭部の腔所に、上鰓器官(じょうさいきかん、suprabranchial organ)と呼ばれる血管の発達した粘膜のひだがあり、空気[[呼吸]]を行うことができる。水面に口を出して口の中に空気を取り入れ、空気から直接[[酸素]]を摂取する。このため、水中の溶存酸素が少ない劣悪な環境でも生存できる。また、摂氏10度前後の気温であれば、3~4日程度なら水から出ていても生きているという。ただし、上鰓器官内部の空気を入れ替えるのに際し、一旦ここを水で満たして古い空気を追い出し、それから水を排出して新しい空気を吸い込む機構上、また[[二酸化炭素]]は主にエラから水中に排出している点から、水の外で完全にうまく呼吸ができているわけではない。また、エラからは必要な酸素を十分得ることができないため、網などにかかって空気呼吸が阻害されると溺れ死ぬ。上鰓器官を持つ魚には、近縁のスズキ目[[キノボリウオ亜目]](アナバス類)がある。
==日本産3種==
日本にはカムルチー、タイワンドジョウ、コウタイの3種が分布する。これらはもともと[[東アジア]]に分布し、日本には人為的に導入された[[外来種]]である。導入当時には「チョウセンナマズ」とも呼ばれた。ライギョは特に全国に分布を広げたカムルチーを指す呼称として用いられる。21世紀初頭の時点では、タイワンドジョウとコウタイは移入された区域からそれほど広範には広がっていない。
===カムルチー===
学名 ''Channa argus''、英名 Snakehead、Spotted snakehead。「カムルチー」 ({{lang|ko|가물치}}) は[[朝鮮語]]での呼称である。


池、湖沼、川の流れのゆるい中下流域などに生息する。水温が18℃を超えると捕食を行うようになり、20℃以上になると活発に摂食するようになる。また、水温が15℃以下になると捕食をしなくなり仮眠状態に入る。様々な環境に適応可能で、成長も早い。生まれて2年で全長30cm程になり、性的に成熟し、繁殖可能になる。最大で90cm程度まで成長する。
繁殖に際しては親が水草で巣を作り、ここで卵や稚魚を保護するため、水草が生えている所で繁殖し、護岸されたところでの繁殖は殆ど出来ず、昨今ではその影響で個体数を減らしてきている。


[[中華人民共和国|中国]]と[[朝鮮半島]]南西部が原産地の中国亜種 ''C. a. argus'' と、[[ロシア]]の[[沿海地方]]([[ハンカ湖]]、[[アムール川]])などが原産地のアムール亜種 ''C. a. warpachowskii'' がいる。日本にいるのは中国亜種で、日本には[[1923年]]-[[1924年]]頃に、朝鮮半島から[[奈良県]]に持ち込まれ、以後全国に持ち出された。他にも米国などに移入されている。アムール亜種は、[[ウズベキスタン]]、[[カザフスタン]]にある[[アラル海]]沿岸の川に移入され定着している。それぞれの移入先では生態系に大きな影響を与えているといわれる。
ナマズなどと同様に魚食性が強いためルアーフィッシングの対象魚となっている。また、カエルを針につけて釣りをするポカン釣りという釣りの方法もある。
===タイワンドジョウ===
学名 ''Channa maculata''。全長20-60cm程度になる。カムルチーに比べて小型で、体側の斑点も細かい。中国南部、[[ベトナム]]、[[フィリピン]]などが原産地で、日本には[[1906年]]に台湾から[[大阪府]]に移入された。現在の日本での生息地は[[沖縄県]]、[[香川県]]、[[兵庫県]]、[[和歌山県]]に留まっている。
===コウタイ===
学名''Channa asiatica''、英名 Small snakehead。全長30cm程度の小型種で、腹鰭がないこと、尾柄に黄褐色の縁取りのある黒色眼状斑がひとつあることで他種と区別できる。


原産地は[[台湾]]、[[海南島]]、[[長江]]流域以南の[[中華人民共和国|中国]]である。[[日本]]へは[[台湾|台湾島]]から沖縄県[[石垣島]]に移入され、さらに[[大阪府]]にも移入した。[[湖沼]]にも生息するが、[[河川]]の流れのあるところを好む。原産地では山間部の流れに多い。
== 分類上の位置 ==
英名の "Snakehead" は、雷魚以外にも、他のタイワンドジョウ属、場合によってはタイワンドジョウ科の魚を一般に呼ぶ名前にもなっている。タイワンドジョウ科には、2属が含まれ、日本に分布する2種が含まれるタイワンドジョウ属は、この2種以外にも東南アジアからインドにかけて数種が知られている。もう1つの属はアフリカ産の3種を含む。ドジョウの名が付いてはいるが、[[コイ目]] ドジョウ科に分類される[[ドジョウ]]とは全く異なる魚である。


繁殖期は4-6月で、[[水草]]の上に薄黄色の粘着性の[[卵]]を1000個以上も産み付ける。親魚はカムルチーやタイワンドジョウのような巣を作らないが、卵や稚魚を保護するのは共通している。
タイワンドジョウ亜目にはタイワンドジョウ科だけが含まれるが、タイワンドジョウ科の分類上の位置づけについては何種類かの解釈がある。ここで用いているスズキ目タイワンドジョウ亜目とする分類以外に、タイワンドジョウ亜目を近縁のキノボリウオ亜目に含めてしまい、スズキ目キノボリウオ亜目タイワンドジョウ科とする分類、逆にスズキ目から分離させて、単独でタイワンドジョウ目にする分類などもある。
==利用==
[[中華人民共和国|中国]]や[[朝鮮半島]]などでは食用にされ、[[養殖]]も行われている。ただし[[有棘顎口虫]]という[[寄生虫]]の中間宿主なので、[[刺身]]等の生食は危険である。


食材としては淡白な白身魚で小骨も少なく、日本人にも食べやすい。中国では[[スープ]]の他にも土鍋煮込み、炒め物などにされる。カムルチーは[[中国語]]で「黒魚」(ヘイユー、<font lang="zh">hēiyú</font>)と呼ばれる事が多いが、[[広東語]]では「生魚」(サーンユー、saangyu)と呼ばれており、標準的な中国語で[[刺身]]を意味する「生魚片」(ションユーピエン、<font lang="zh">shēngyúpiàn</font>)と混同しやすい。
== 種ごとの特徴 ==
=== カムルチー ===
カムルチーは、学名 <i>Channa argus</i>、英名 Snakehead、Spotted snakehead。「カムルチー」 ({{lang|ko|가물치}}) は[[朝鮮語]]での呼称。


食用以外にも、各地で[[ルアー]]フィッシングの対象魚となっている。日本ではカエルを針につけて[[釣り]]をするポカン釣りという釣りの方法もある。また、斑紋のある[[ニシキヘビ]]のような体色から[[観賞魚]]として飼育する人もいる。
日本全国の湖沼、川の流れのゆるい中下流域などに生息する。もう1種のタイワンドジョウは日本での分布が限られていることから、ライギョと呼ばれているのは、カムルチーであることが多い。様々な環境に適応可能で、成長が早い。生まれて2年で体長 30 cm 程になり、性的に成熟し、繁殖可能になる。90 cm程度まで成長する。
==分類と分布==

[[画像:Channidae distribution.gif|thumb|240px|タイワンドジョウ科の分布。黄色がタイワンドジョウ属、橙色が ''Parachanna'' 属の分布を示す]]
[[中華人民共和国|中国]]と[[朝鮮半島]]南西部が原産地の中国亜種 <i>Channa argus ssp. argus</i> と、[[ロシア]]の[[沿海地方]]([[ハンカ湖]]、[[アムール川]])などが原産地のアムール亜種 <i>Channa argus ssp. warpachowskii</i> がいる。日本にいるのは、中国亜種で、これは他にも米国などに移入されている。アムール亜種は、[[ウズベキスタン]]、[[カザフスタン]]にある[[アラル海]]沿岸の川に移入され定着した。移入先の各地で生態系に大きな影響を与えているといわれる。
タイワンドジョウ亜目にはタイワンドジョウ科だけが含まれるが、タイワンドジョウ科の分類上の位置づけについては何種類かの解釈がある。ここで用いているスズキ目・タイワンドジョウ亜目とする分類以外に、タイワンドジョウ亜目を近縁のキノボリウオ亜目に含めてしまい、スズキ目・キノボリウオ亜目・タイワンドジョウ科とする分類、逆にスズキ目から分離させて単独でタイワンドジョウ目にする分類もある。

=== タイワンドジョウ ===
タイワンドジョウは、学名:<i>Channa maculata</i>。中国南部、[[ベトナム]]、[[フィリピン]]などが原産地。 20~60 cm 程度になる。日本では近畿地方を中心に分布。

=== コウタイ ===
コウタイは、学名 <i>Channa asiatica</i>、英名 Small snakehead。<br/>
[[台湾|台湾島]]、[[海南島]]、[[長江]]流域以南の[[中華人民共和国|中国]]が原産地。[[日本]]へは[[台湾|台湾島]]から[[沖縄県]]に移入([[沖縄県]]から[[大阪府]]にも移入)。

全長は約 30 cm。やや小型の種類で、体形はタイワンドジョウやカムルチーに類似するが、腹鰭がないことや、尾柄に黄褐色の縁取りのある黒色眼状斑がひとつあることで区別できる。小魚、小型の[[甲殻類]]、[[水生昆虫]]を主に食べる。[[夜行性]]。

[[湖沼]]にも生息するが、[[河川]]の流れのあるところを好む。原産地では山間部の流れに多い。

繁殖期は4~6月。産子数は 1000 以上。[[水草]]の上に薄黄色の粘着性の[[卵]]を産み付けるが、営巣習性はない。

== 食材 ==
食材としては、白身で淡白であり、小骨も少ないため、日本人にも食べやすい味である。中国では、[[スープ]]にすることが多いが、土鍋煮込み、炒め物などにもされる。

なお、カムルチーは[[中国語]]で「黒魚」(ヘイユー、<font lang="zh">hēiyú</font>)と呼ばれる事が多いが、[[広東語]]では「生魚」(サーンユー、saangyu)と呼ばれており、標準的な中国語で[[刺身]]を意味する「生魚片」(ションユーピエン、<font lang="zh">shēngyúpiàn</font>)と混同しやすい。[[有棘顎口虫]]が寄生している事が多く、食材として利用する際には[[刺身]]等の生食は避け、必ず加熱調理して食べる事が良い。

== 関連項目 ==
{{Commons|Channa argus|カムルチー}}
* [[魚の一覧]]

<!-- == 参考文献 == -->
<!-- == 外部リンク == -->

[[Category:スズキ目|らいきよ]]
[[Category:淡水魚|らいきよ]]
[[Category:食用川魚|らいきよ]]
[[Category:中華食材|らいきよ]]
[[Category:日本の外来種|らいきよ]]
[[Category:釣りの対象魚|らいきよ]]


英名"Snakehead"は、日本に定着した3種以外にも、他のタイワンドジョウ科に分類される魚の総称にもなっている。タイワンドジョウ科には2属が含まれ、タイワンドジョウ属 ''Channa'' は日本に定着した3種を含めて[[沿海地方]]から[[インド]]まで計28種が知られる。もう一つの ''Parachanna'' 属は熱帯[[アフリカ]]産の3種を含む。
===タイワンドジョウ属 ''Channa''===
*''C. amphibeus'' (McClelland, 1845)
*''C. argus'' (Cantor, 1842) - '''カムルチー'''
*''C. asiatica'' ([[カール・フォン・リンネ|Linnaeus]], 1758) - '''コウタイ'''
*''C. aurantimaculata'' Musikasinthorn, 2000
*''C. bankanensis'' (Bleeker, 1852)
*''C. barca'' (Hamilton, 1822)
*''C. bleheri'' Vierke, 1991
*''C. burmanica'' Chaudhuri, 1916
*''C. cyanospilos'' (Bleeker, 1853)
*''C. gachua'' (Hamilton, 1822) - [[ドワーフスネークヘッド]]
*''C. harcourtbutleri'' (Annandale, 1918)
*''C. lucius'' ([[ジョルジュ・キュヴィエ|Cuvier]], 1831)
*''C. maculata'' (Lacépède, 1801) - '''タイワンドジョウ'''
*''C. marulioides'' (Bleeker, 1851)
[[画像:Channa marulius.jpg|thumb|240px|''Channa marulius'' 親魚が稚魚を保護する]]
*''C. marulius'' (Hamilton, 1822)
*''C. melanoptera'' (Bleeker, 1855)
*''C. melasoma'' (Bleeker, 1851)
*''C. micropeltes'' (Cuvier, 1831)
*''C. nox'' Zhang, Musikasinthorn et Watanabe, 2002
*''C. orientalis'' Bloch et Schneider, 1801
*''C. panaw'' Musikasinthorn, 1998
*''C. pleurophthalmus'' (Bleeker, 1851)
*''C. punctata'' (Bloch, 1793)
*''C. stewartii'' (Playfair, 1867)
*''C. striata'' (Bloch, 1793)
===''Parachanna'' 属===
*''P. africana'' (Steindachner, 1879)
*''P. insignis'' (Sauvage, 1884)
*''P. obscura'' (Günther, 1861)
==参考文献==
{{Wikispecies|Channidae|タイワンドジョウ科}}
*川那部浩哉・水野信彦・細谷和海編(タイワンドジョウ科執筆者 : 前畑政善・瀬能宏)『山渓カラー名鑑 改訂版 日本の淡水魚』 ISBN 4-635-09021-3
*永岡書店編集部『釣った魚が必ずわかるカラー図鑑』 ISBN 4-522-21372-7
{{CommonscatN|Channidae|タイワンドジョウ科}}
{{DEFAULTSORT:らいきよ}}
[[Category:スズキ目]]
[[Category:淡水魚]]
[[Category:食用川魚]]
[[Category:中華食材]]
[[Category:日本の外来種]]
[[Category:釣りの対象魚]]
[[als:Schlangenkopffische]]
[[als:Schlangenkopffische]]
[[de:Schlangenkopffische]]
[[de:Schlangenkopffische]]

2007年12月25日 (火) 12:55時点における版

タイワンドジョウ科 Channidae

カムルチー Channa argus
分類
界:動物界 Animalia
門:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
綱:条鰭綱 Actinopterygii
目:スズキ目 Perciformes
亜目:タイワンドジョウ亜目 Channoidei
科:タイワンドジョウ科 Channidae
下位分類
2属・31種(本文参照
英名
Snakehead

ライギョ(雷魚)は、スズキ目・タイワンドジョウ科に属するの一種カムルチー Channa argus を指す呼称だが、広義にはタイワンドジョウ科 Channidae に分類される魚の総称としても用いられる。熱帯アフリカ東南アジア周辺に広く分布する淡水性の大型肉食魚である。

和名に「ドジョウ」の名があるが、コイ目・ドジョウ科に分類されるドジョウとは全く異なる。細長い体とヘビに似た頭部から、英語では"Snakehead"(スネークヘッド)と呼ばれ、釣り観賞魚の愛好家はこちらで呼ぶことも多い。日本には自然分布しないが、カムルチー、タイワンドジョウ、コウタイの3種が移入され、各地で外来種として定着している。ライギョの他にライヒー、タイワンなどと呼ぶこともある。

特徴

全長はカムルチーで80cmに達する。体は前後に細長い円筒形をしている。背鰭と尻鰭は他のスズキ目のような棘条が発達しない。また、背鰭と尻鰭の基底も長く、背鰭は胴体のほとんど、尻鰭も胴体の後半部分に及ぶ。腹鰭は小さい。口は大きく、下顎が上顎よりも前に突き出ており、鋭いが並ぶ。口の中へ手を入れると噛みつかれて出血することがあるので、漁獲時などは十分な注意が必要である。

空気呼吸

また、空気呼吸ができるのも特徴である。外見ではわからないが、に近接した頭部の腔所に「上鰓器官」(じょうさいきかん、suprabranchial organ)と呼ばれる血管の発達した粘膜のひだをもつ。他に近縁のスズキ目・キノボリウオ亜目(アナバス類)も同様の上鰓器官を持つ。

水面に口を出して空気を吸い込み、これを上鰓器官に送り込んで酸素を直接摂取する。その後は一旦水で満たして古い空気を追い出し、それから水を排出して新しい空気を吸い込む。

空気呼吸ができるため溶存酸素量が少ない劣悪な水環境でも生存できる。また、摂氏10度前後の気温であれば、3-4日程度なら水から出ていても生きているという。ただし体内の呼吸で発生する二酸化炭素は主に鰓から水中に排出するため、上鰓器官だけでは生存できない。一方、鰓だけでも生存に必要な酸素を得ることができず、に掛かるなどして空気呼吸が阻害されると溺死する。

生態

流れが緩やかで、ハスの葉などの水生植物が生い茂ったところに好んで生息する。湖沼河川の中下流域などに多い。

朝や夕方の薄暗い時間帯、または水が濁っている時に活発に活動する。食性は基本的に魚食性だが、他にもカエルエビなどの甲殻類昆虫類など水生動物を幅広く捕食する。水底にじっと潜み、水中や水面を通りかかる獲物に飛びかかる。多くの文献等ではその姿形から獰猛というイメージもあるが、警戒心が強く臆病な面もある。雷魚の名の由来は、悪天候時に行動することから「雷を呼ぶ」と見られたからとも、獰猛な捕食行動が「雷が鳴るまでくわえた獲物を離さない」と見られたからともいわれる。

繁殖時は親が水草を作り、産卵後も巣の近くに留まって卵や稚魚を保護する。護岸など水草が生えない所では繁殖出来ないため、開発が進んだ地域では個体数が減少している所もある。

日本産3種

日本にはカムルチー、タイワンドジョウ、コウタイの3種が分布する。これらはもともと東アジアに分布し、日本には人為的に導入された外来種である。導入当時には「チョウセンナマズ」とも呼ばれた。ライギョは特に全国に分布を広げたカムルチーを指す呼称として用いられる。21世紀初頭の時点では、タイワンドジョウとコウタイは移入された区域からそれほど広範には広がっていない。

カムルチー

学名 Channa argus、英名 Snakehead、Spotted snakehead。「カムルチー」 (가물치) は朝鮮語での呼称である。

池、湖沼、川の流れのゆるい中下流域などに生息する。水温が18℃を超えると捕食を行うようになり、20℃以上になると活発に摂食するようになる。また、水温が15℃以下になると捕食をしなくなり仮眠状態に入る。様々な環境に適応可能で、成長も早い。生まれて2年で全長30cm程になり、性的に成熟し、繁殖可能になる。最大で90cm程度まで成長する。

中国朝鮮半島南西部が原産地の中国亜種 C. a. argus と、ロシア沿海地方ハンカ湖アムール川)などが原産地のアムール亜種 C. a. warpachowskii がいる。日本にいるのは中国亜種で、日本には1923年-1924年頃に、朝鮮半島から奈良県に持ち込まれ、以後全国に持ち出された。他にも米国などに移入されている。アムール亜種は、ウズベキスタンカザフスタンにあるアラル海沿岸の川に移入され定着している。それぞれの移入先では生態系に大きな影響を与えているといわれる。

タイワンドジョウ

学名 Channa maculata。全長20-60cm程度になる。カムルチーに比べて小型で、体側の斑点も細かい。中国南部、ベトナムフィリピンなどが原産地で、日本には1906年に台湾から大阪府に移入された。現在の日本での生息地は沖縄県香川県兵庫県和歌山県に留まっている。

コウタイ

学名Channa asiatica、英名 Small snakehead。全長30cm程度の小型種で、腹鰭がないこと、尾柄に黄褐色の縁取りのある黒色眼状斑がひとつあることで他種と区別できる。

原産地は台湾海南島長江流域以南の中国である。日本へは台湾島から沖縄県石垣島に移入され、さらに大阪府にも移入した。湖沼にも生息するが、河川の流れのあるところを好む。原産地では山間部の流れに多い。

繁殖期は4-6月で、水草の上に薄黄色の粘着性のを1000個以上も産み付ける。親魚はカムルチーやタイワンドジョウのような巣を作らないが、卵や稚魚を保護するのは共通している。

利用

中国朝鮮半島などでは食用にされ、養殖も行われている。ただし有棘顎口虫という寄生虫の中間宿主なので、刺身等の生食は危険である。

食材としては淡白な白身魚で小骨も少なく、日本人にも食べやすい。中国ではスープの他にも土鍋煮込み、炒め物などにされる。カムルチーは中国語で「黒魚」(ヘイユー、hēiyú)と呼ばれる事が多いが、広東語では「生魚」(サーンユー、saangyu)と呼ばれており、標準的な中国語で刺身を意味する「生魚片」(ションユーピエン、shēngyúpiàn)と混同しやすい。

食用以外にも、各地でルアーフィッシングの対象魚となっている。日本ではカエルを針につけて釣りをするポカン釣りという釣りの方法もある。また、斑紋のあるニシキヘビのような体色から観賞魚として飼育する人もいる。

分類と分布

タイワンドジョウ科の分布。黄色がタイワンドジョウ属、橙色が Parachanna 属の分布を示す

タイワンドジョウ亜目にはタイワンドジョウ科だけが含まれるが、タイワンドジョウ科の分類上の位置づけについては何種類かの解釈がある。ここで用いているスズキ目・タイワンドジョウ亜目とする分類以外に、タイワンドジョウ亜目を近縁のキノボリウオ亜目に含めてしまい、スズキ目・キノボリウオ亜目・タイワンドジョウ科とする分類、逆にスズキ目から分離させて単独でタイワンドジョウ目にする分類もある。

英名"Snakehead"は、日本に定着した3種以外にも、他のタイワンドジョウ科に分類される魚の総称にもなっている。タイワンドジョウ科には2属が含まれ、タイワンドジョウ属 Channa は日本に定着した3種を含めて沿海地方からインドまで計28種が知られる。もう一つの Parachanna 属は熱帯アフリカ産の3種を含む。

タイワンドジョウ属 Channa

  • C. amphibeus (McClelland, 1845)
  • C. argus (Cantor, 1842) - カムルチー
  • C. asiatica (Linnaeus, 1758) - コウタイ
  • C. aurantimaculata Musikasinthorn, 2000
  • C. bankanensis (Bleeker, 1852)
  • C. barca (Hamilton, 1822)
  • C. bleheri Vierke, 1991
  • C. burmanica Chaudhuri, 1916
  • C. cyanospilos (Bleeker, 1853)
  • C. gachua (Hamilton, 1822) - ドワーフスネークヘッド
  • C. harcourtbutleri (Annandale, 1918)
  • C. lucius (Cuvier, 1831)
  • C. maculata (Lacépède, 1801) - タイワンドジョウ
  • C. marulioides (Bleeker, 1851)
Channa marulius 親魚が稚魚を保護する
  • C. marulius (Hamilton, 1822)
  • C. melanoptera (Bleeker, 1855)
  • C. melasoma (Bleeker, 1851)
  • C. micropeltes (Cuvier, 1831)
  • C. nox Zhang, Musikasinthorn et Watanabe, 2002
  • C. orientalis Bloch et Schneider, 1801
  • C. panaw Musikasinthorn, 1998
  • C. pleurophthalmus (Bleeker, 1851)
  • C. punctata (Bloch, 1793)
  • C. stewartii (Playfair, 1867)
  • C. striata (Bloch, 1793)

Parachanna

  • P. africana (Steindachner, 1879)
  • P. insignis (Sauvage, 1884)
  • P. obscura (Günther, 1861)

参考文献

  • 川那部浩哉・水野信彦・細谷和海編(タイワンドジョウ科執筆者 : 前畑政善・瀬能宏)『山渓カラー名鑑 改訂版 日本の淡水魚』 ISBN 4-635-09021-3
  • 永岡書店編集部『釣った魚が必ずわかるカラー図鑑』 ISBN 4-522-21372-7

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