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「バロック絵画」の版間の差分

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[[File:The Nightwatch by Rembrandt - Rijksmuseum.jpg|thumb|250px|『[[夜警 (絵画)|夜警]]』[[レンブラント・ファン・レイン]] ([[アムステルダム国立美術館]])、1642年<br />カンバスに油彩、{{convert|363|x|437|cm|in|abbr=on}}]]
{{統合提案|バロック美術|バロック美術}}
'''バロック絵画'''(バロックかいが)は、[[16世紀]]末から[[18世紀]]なかばの西洋芸術運動である[[バロック|バロック様式]]に分類される絵画。バロックは[[絶対王政]]、[[対抗宗教改革|カトリック改革]]、カトリック復興などと深い関連があり、ときには一体化したものと見なされることもあるが<ref name=ebo>[http://www.britannica.com/eb/article-9026564/Counter-Reformation Counter Reformation], from ''Encyclopædia Britannica Online'', latest edition, full-article.</ref><ref>[http://www.bartleby.com/65/co/CounterR.html Counter Reformation], from ''[[The Columbia Encyclopedia]]'', Sixth Edition. 2001-05.</ref>、[[バロック美術]]と[[バロック建築]]の傑作は絶対主義やキリスト教とは無関係に、作品自身が持つ魅力によって広く親しまれ、受け入れられている<ref>Helen Gardner, Fred S. Kleiner, and Christin J. Mamiya, "Gardner's Art Through the Ages" (Belmont, California: Thomson/Wadsworth, 2005)</ref>。
[[16世紀]]末から[[18世紀]]にかけて[[ヨーロッパ]]に広まった[[バロック]]様式の絵画表現。


もっとも重要で有名なバロック絵画は1600年ごろから18世紀初頭にかけて描かれた。バロック絵画は劇的な描写技法、豊かで深い色彩、強い明暗法などで特徴づけられる。ルネサンス美術とは異なり、バロック美術では大げさで芝居がかったような場面描写が好まれ、暗影を用いた動的な躍動感あふれる作品が多く制作された。[[盛期ルネサンス]]の代表的な芸術家[[ミケランジェロ・ブオナローティ|ミケランジェロ]]は彫刻[[ダビデ像 (ミケランジェロ)|ダビデ像]]を、[[ゴリアテ]]との戦いを控えて沈思する人物として表現した。一方、バロックの代表的な芸術家[[ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ|ベルニーニ]]は、ゴリアテに向かって石を投げつける瞬間をとらえた[[ダビデ像 (ベルニーニ)|ダビデ像]]を制作している。ルネサンス美術で賞賛された冷徹な理性ではなく、バロック美術では一瞬の感情や情熱の表現を追求していた。
これまでの均衡の保たれていた[[ルネッサンス絵画]]とは対照的に、バロック絵画には躍動感があふれ、明暗の対比がはっきりとし、描かれている人物たちの動きは流動的である。


バロック絵画を代表する画家として、イタリアの[[ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ|カラヴァッジョ]]<ref>[http://www.getty.edu/vow/ULANFullDisplay?find=Caravaggio&role=&nation=&prev_page=1&subjectid=500115312 Getty profile, including variant spellings of the artist's name.]</ref>、オランダの[[レンブラント・ファン・レイン|レンブラント]]<ref name="Gombrich, p. 420">Gombrich, p. 420.</ref>、[[ヨハネス・フェルメール|フェルメール]]<ref>W. Liedtke (2007) Dutch Paintings in the Metropolitan Museum of Art, p. 867.</ref>、フランドルの[[ピーテル・パウル・ルーベンス|ルーベンス]]<ref>Belkin (1998): 11–18.</ref>、スペインの[[ディエゴ・ベラスケス|ベラスケス]]、フランスの[[ニコラ・プッサン|プッサン]]<ref>His ''Lives of the Painters'' was published in Rome, 1672. Poussin's other contemporary biographer was André Félibien.</ref>らの名前があげられる。バロック絵画にはカラヴァッジョが多用した明暗法の一種である[[キアロスクーロ]]の使用によって劇的な物語性を表現した画家が多い。カラヴァッジョは盛期ルネサンスの人文主義を受け継ぎ、自身が独自に発展させた人物を写実的に描く手法と強烈なキアロスクーロを用いて劇的な効果をもたらす技法は同時代の芸術家たちの大きな影響を与え<ref>「ホセ・デ・リベーラ、フェルメール、ラ・トゥール、レンブラントは、もしカラヴァッジョがいなければ存在しえない画家だっただろう。また、ドラクロワ、クールベ、マネらの芸術も全く異なったものになっていたに違いない」Roberto Longhi, quoted in Lambert, op. cit., p.15</ref>、西洋美術史に新たな流れを生み出した。その他にフランドルの画家[[アンソニー・ヴァン・ダイク]]が描いた優美かつ力強い肖像画も、とくにイングランドで大きな影響を及ぼした絵画である。
代表作家としては、[[ミケランジェロ・メリージ|カラヴァッジョ]]や[[ピーテル・パウル・ルーベンス|ルーベンス]]、[[ディエゴ・ベラスケス]]、[[レンブラント・ファン・レイン|レンブラント]]、[[フェルメール]]、[[ニコラ・プッサン]]などが挙げられる。

17世紀オランダの隆盛は巨大な美術市場を形成し、画家たちは[[風景画]]、[[静物画]]、[[肖像画]]、[[歴史画]]、[[風俗画]]など、さまざまなジャンルに特化した作品を描いた。[[オランダ黄金時代の絵画|当時のオランダ人画家]]たちの絵画技術は非常に高く、20世紀の[[モダニズム]]萌芽まで美術界に影響を与え続けた。

== 歴史 ==
[[File:JosefaObidos1.jpg|thumb|『キリスト生誕』(1669年)<br />ジョセファ・ドビドス、[[国立古美術館]](リスボン)]]
1543年から1563年にかけて招集された[[カトリック教会|ローマ・カトリック教会]]の公会議[[トリエント公会議]]は、プロテスタントの台頭に起因したカトリック教会内部の姿勢とともに、カトリック宗教施設が保有するそれまでの芸術作品にも大きな変化をもたらした。当時大きな影響力を持っていたルーヴェン大学の神学教授ヤン・ファン・デル・メーレン(1533年 - 1585年)([[:en:Molanus]]) は、カトリック教会が保有する彫刻や絵画は主題が明確で、力強く、敬虔な作品でなければならず、現在主流の[[マニエリスム]]様式はこの概念に合致していないとした。そして同様の解釈、意見がほかにも多くの聖職者たちが共有するものとなっていった。こういった流れを受けて、[[ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ|カラヴァッジョ]]と[[アンニーバレ・カラッチ|アンニーバレ]]、[[アゴスティーノ・カラッチ|アゴスティーノ]]のカラッチ兄弟から教会芸術の変革が開始されたことは多くの現代美術史家が指摘している。いずれも1600年ごろにローマを中心として活動し、多くの絵画制作の依頼を受けていた画家たちだが、カラッチ兄弟とは違ってカラヴァッジョの作品には品位が欠けているという根強い批判があった<ref>Giorgi, p.80.</ref>。<!--しかしながら、宗教画、歴史画、寓意画、肖像画は依然としてカトリックの教会芸術では高い価値があるとされており、逆に風景画、静物画、風俗画はプロテスタントの教会芸術ではより多く用いられるジャンルになっていった。-->

=== 用語 ===
「バロック」という用語はもともと侮蔑的に使用され始め、作品の強調表現があまりに行き過ぎていて品位に欠けるいびつなものという意味が含まれていた。また、[[アリストテレス]]の[[三段論法]]についての著作の歴史的用語「バロコ (Baroco)」を語源とするという考えもある<ref>{{Citation2 |df=ja | last=Panofsky | first=Erwin | contribution=What is Baroque? | title=Three Essays on Style| publisher=The MIT Press | year=1995 | pages=19}}</ref>。奇抜な強調表現、過剰なまでに描きこまれた細部表現を意味する用語で、ルネサンス芸術の特性である合理的で抑制された作風とは好対照をなすものとして用いられていた。「バロック」におけるこのような否定的な意味合いを最初に払拭したのはスイス人美術史家[[ハインリヒ・ヴェルフリン]](1864年 - 1945年)である。ヴェルフリンは著書『ルネサンスとバロック』(1888年)で、バロックは「(美術を)大衆へともたらした芸術運動」であり、それまでのルネサンス美術とは対極にあるものと位置づけた。ヴェルフリンは他の現代美術史家とは違ってマニエリスムとバロックとを区別してはおらず、18世紀の後期バロック([[ロココ]])も完全に無視している。ロココが隆盛したフランスやバロックの影響がほとんど見られなかったイギリスでは、ヴェルフリンの学説がドイツの学会で認められるまで、バロックはまともな研究対象とみなされていなかった。

[[初期フランドル派|北方写実主義]]からの伝統的な作風を受け継ぐ[[オランダ黄金時代の絵画|17世紀のオランダ]]では、他の国とはやや異なるバロック美術が発展した。宗教画も歴史画もほとんど制作されず、静物画、日常生活を描いた風俗画、風景画といった、宗教には直接関係のないジャンルの重要な絵画が多く制作された。当時のオランダを代表する画家レンブラントの作品はバロック絵画の典型ともいわれているが、フェルメールなど他のオランダ人画家の作品がバロック様式であるといわれることはあまりない。隣接する[[フランドル|フランドル地方]]でも、伝統的な作風の絵画は一部で描き続けられていた。

== 主要な画家 ==
=== オランダ ===
[[File:Il castello di Bentheim (Jacob Van Ruisdael).jpg|thumb|『ベントハイム城 』(1653年)<br />[[ヤーコプ・ファン・ロイスダール]]、アイルランド国立美術館]]
*[[フランス・ハルス]](1580年 - 1666年)
*[[レンブラント・ファン・レイン]](1606年 - 1669年)
*[[ヤン・ステーン]](1626年 - 1679年)
*[[ヤーコプ・ファン・ロイスダール]](1628年 - 1682年)
*[[ヨハネス・フェルメール]](1632年 - 1675年)

===チェコ(ボヘミア) ===
*ヴェンツェスラウス・ホラー ([[:en:Václav Hollar]]) (1607年 - 1677年)
*カレル・スクレタ ([[:en:Karel Škréta]])(1610年 - 1674年)
*ペトル・ブランドル ([[:en:Petr Brandl]]) (1668年 - 1735年)
*ヴェンツェル・ロレンツ・ライナー ([[:en:Wenzel Lorenz Reiner]]) (1686年 - 1743年)

=== フランドル ===
[[File:Jan Brueghel the Elder - Flowers in a Wooden Vessel - Google Art Project.jpg|thumb|『花束』(1606年)<br />[[ヤン・ブリューゲル (父)]]]]
*[[ヤン・ブリューゲル (父)]](1568年 - 1625年)
*[[ピーテル・パウル・ルーベンス]](1577年 - 1640年)
*[[フランス・スナイデルス]](1579年 - 1657年)
*[[ヤーコブ・ヨルダーンス]](1593年 - 1678年)
*[[アンソニー・ヴァン・ダイク]](1599年 - 1641年)
*[[ダフィット・テニールス (子)]] ([[:en:David Teniers the Younger]])(1610年 - 1691年)

=== フランス ===
[[File:La Tour.jpg|thumb|『大工聖ヨセフ』(1642年)<br />[[ジョルジュ・ド・ラ・トゥール]]、[[ルーブル美術館]]]]
*ジャン・ド・ボーグラン ([[:en:Jean de Beaugrand]])(1584年 - 1640年)
*[[ジョルジュ・ド・ラ・トゥール]](1593年 - 1652年)
*[[ニコラ・プッサン]](1594年 - 1665年)
*ル・ナン三兄弟 ([[:en:Le Nain]]))
**アントワーヌ・ル・ナン(1599年頃 - 1648年)
**ルイ・ル・ナン(1593年頃 - 1648年)
**マチュー・ル・ナン(1607年 - 1677年)
*[[クロード・ロラン]](1600年 - 1682年)
*[[イアサント・リゴー]](1659年 - 1743年)

=== イタリア ===
*[[ルドヴィコ・カラッチ]](1555年 - 1619年)
*[[アゴスティーノ・カラッチ]](1557年 - 1602年)
*[[アンニーバレ・カラッチ]](1560年 - 1609年)
*[[オラツィオ・ジェンティレスキ]](1563年 - 1639年)
*[[ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ]](1571年 - 1610年)
*[[グイド・レーニ]](1575年 - 1642年)
*[[グエルチーノ]](1591年 - 1666年)
*[[アルテミジア・ジェンティレスキ]](1593年 - 1652年頃)
*[[ピエトロ・ダ・コルトーナ]](1596年 - 1669年)
*[[サルヴァトル・ローザ]](1615年 - 1673年)
*[[アンドレア・ポッツォ]](1642年 - 1709年)
*[[ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ]](1696年 - 1770年)

=== ポルトガル ===
*ジョセファ・ドビドス ([[:en:Josefa de Óbidos]])(1630年 - 1684年)

=== スペイン ===
[[File:Inmaculada (Zurbarán).jpg|thumb|『無原罪の御宿り』(1630年頃)<br />[[フランシスコ・デ・スルバラン]]、[[プラド美術館]]]]
*[[フランシスコ・リバルタ]] (1565年 - 1628年)
*[[ホセ・デ・リベーラ]](1591年 - 1652年)
*[[フランシスコ・デ・スルバラン]](1598年 - 1664年)
*[[ディエゴ・ベラスケス]](1599年 - 1660年)
*[[アロンソ・カーノ]] (1601年 - 1667年)
*[[バルトロメ・エステバン・ムリーリョ]](1617年 - 1682年)
*[[フアン・デ・バルデス・レアル]](1622年 - 1690年)
*[[スペイン黄金時代美術]]に詳しい

== ギャラリー ==
<gallery perrow="4">
file:Caravaggio - Taking of Christ - Dublin.jpg|『キリストの捕縛』(1598年頃)<br />[[ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ|カラヴァッジョ]]、[[ウフィツィ美術館]](フィレンツェ
file:GENTILESCHI Judith.jpg|『ホロフェルネスの首を斬るユディト』(1614年 - 1620年頃)<br />[[アルテミジア・ジェンティレスキ]]、ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
file:Frans Hals 008.jpg|『ジプシー女』(1628年 - 1630年)<br />[[フランス・ハルス]]、[[ルーブル美術館]](パリ)
file:Rubens_-_Judgement_of_Paris.jpg|『[[パリスの審判 (ルーベンス)|パリスの審判]]』(1636年頃)<br />[[ピーテル・パウル・ルーベンス|ルーベンス]][[ナショナル・ギャラリー (ロンドン)|ナショナル・ギャラリー]](ロンドン)
file:Poussin RapeSabineLouvre.jpg|『サビニの女たちの略奪』(1637年 - 1638年)<br />[[ニコラ・プッサン]]、ルーブル美術館(パリ)
file:José de Ribera 054.jpg|『聖フィリポの殉教<ref>以前は聖バルトロメオの殉教が描かれているといわれていたが、現在では聖フィリポとされている (Museo del Prado, Catálogo de las pinturas, 1996, p. 315, Ministerio de Educación y Cultura, Madrid)</ref>』(1639年)<br />[[ホセ・デ・リベーラ]]、[[プラド美術館]](マドリード)
file:Self-portrait_by_Salvator_Rosa.jpg|『自画像』(1640年)<br />[[サルヴァトル・ローザ]]、ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
file:Rembrandt Harmensz. van Rijn - The Abduction of Europa - Google Art Project.jpg|『エウロペの誘拐』(1632年)<br />[[レンブラント・ファン・レイン|レンブラント]]、[[J・ポール・ゲティ美術館]](ロサンゼルス)
file:Claude Lorrain 008.jpg|『シバの女王の船出』(1648年)<br />[[クロード・ロラン]]、ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
File:Las Meninas, by Diego Velázquez, from Prado in Google Earth.jpg|『[[ラス・メニーナス]]』(1656年 - 1657年)<br />[[ディエゴ・ベラスケス]]、プラド美術館(マドリード)
File:Johannes Vermeer (1632-1675) - The Girl With The Pearl Earring (1665).jpg|『真珠の耳飾の少女』(1665年頃)<br />[[ヨハネス・フェルメール]]、[[マウリッツハイス美術館]](ハーグ)
Gimbattiasta Tiepolo - La morte di Giacinto (1752-53) - Museo Nacional Thyssen-Bornemisza Madrid.jpg|『ヒュアキントスの死』(1752年)<br />[[ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ]]、[[ティッセン=ボルネミッサ美術館]](マドリード)
</gallery>

== 出典 ==
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* {{cite book
| last = Belkin
| first = Kristin Lohse
| authorlink =
| title = Rubens
| publisher = Phaidon Press
| year = 1998
| pages =
| doi =
| isbn = 0-7148-3412-2 }}
* {{cite book
| last = Belting
| first = Hans
| authorlink =
| title = Likeness and Presence: A History of the Image before the Era of Art
| publisher = [[University of Chicago Press]]
| year = 1994
| pages =
| doi =
| isbn = 0226042154
| others = Edmund Jephcott }}
* Mark Getlein, ''Living With Art, 8th edition''.
*Ernst Gombrich|Gombrich, E.H., ''The Story of Art'', Phaidon, 1995. ISBN 0-7148-3355-X
*Christine Buci-Glucksmann, Baroque Reason: The Aesthetics of Modernity, Sage, 1994
*Michael Kitson, 1966. ''The Age of Baroque'
*Heinrich Wölfflin, 1964. ''Renaissance and Baroque'' (Reprinted 1984; originally published in German, 1888) The classic study. ISBN 0-8014-9046-4
*Gilles Lambert, Caravaggio, Taschen, (2000) ISBN 978-3-8228-6305-3
*Rosa Giorgi, Caravaggio: Master of light and dark - his life in paintings, Dorling Kindersley (1999) ISBN 978-0-7894-4138-6

== 邦語文献 ==
* ハインリッヒ・ヴェルフリン(上松佑二訳)『ルネサンスとバロック : イタリアにおけるバロック様式の成立と本質に関する研究』(中央公論美術出版、1993)<small>ISBN 4805502142</small>
* 深谷訓子著 『ローマの慈愛 : 「キモンとペロー」の図像表現』(京都大学学術出版会、2010)<small>ISBN 9784876985937</small>
* エーゴン・フリーデル(宮下啓三訳)『バロックとロココ:啓蒙と革命』(みすず書房、1987)<small>ISBN 462200609X</small>
* アロイス・リーグル(蜷川順子訳)『ローマにおけるバロック芸術の成立』(中央公論美術出版、2009)<small>ISBN 9784805505960</small>
* マリオ・プラーツ(伊藤博明訳)『フランチェスコ・ピアンタの奇矯な彫刻:エンブレムのバロック的表象』(ありな書房、2008)<small>ISBN 9784756608017</small>
* 萩島哲『バロック期の都市風景画を読む:ベロットが描いたドレスデン, ピルナ, ケーニヒシュタインの景観』(九州大学出版会、2006)<small>ISBN 4873788986</small>
* 関根秀一編『イタリア・ルネサンス美術論 : プロト・ルネサンス美術からバロック美術へ』(東京堂出版、2000)<small>ISBN 9784490204025</small>

; 概説・入門書など
* 逸身喜一郎『ギリシャ神話 : ルネッサンス・バロック絵画から遡る』(NHK出版、2011)<small>ISBN 9784149107813</small>
* 中島智章『図説バロック : 華麗なる建築・音楽・美術の世界』(河出書房新社、2010)<small>ISBN 9784309761497</small>
* 宮下規久朗『イタリア・バロック:美術と建築』(山川出版社、2006)<small>ISBN 4634633507</small>
* 宮下規久朗『バロック美術の成立(世界史リブレット:77)』(山川出版社、2003)<small>ISBN 9784634347700</small>
* 木村三郎『美術史と美術理論 : 西洋十七世紀絵画の見方 改訂版』(放送大学教育振興会、1996)<small>ISBN 4595552203</small>

; 画集・図録
* アラン・グルベールほか(鈴木杜幾子監訳)『古典主義とバロック (ヨーロッパの装飾芸術:2)』(中央公論新社、2001)<small>ISBN 4120030741</small>
* 高階秀爾『バロックとロココ 新装版』(柳宗玄ほか編〈岩波美術館〉第10巻、岩波書店、2003)<small>ISBN 4000089501</small>
* 神吉敬三, 若桑みどり編『バロック』(『世界美術大全集 西洋編』第16-17巻、小学館、1994-1995)<small>ISBN 4096010162</small>

== 関連項目 ==
{{Commons|Baroque paintings}}
*[[バロック]]
*[[バロック建築]]
*[[バロック美術]]
*[[バロック音楽]]
*[[バロック文学]]
*[[オランダ黄金時代の絵画]]


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夜警レンブラント・ファン・レイン (アムステルダム国立美術館)、1642年
カンバスに油彩、363 cm × 437 cm (143 in × 172 in)

バロック絵画(バロックかいが)は、16世紀末から18世紀なかばの西洋芸術運動であるバロック様式に分類される絵画。バロックは絶対王政カトリック改革、カトリック復興などと深い関連があり、ときには一体化したものと見なされることもあるが[1][2]バロック美術バロック建築の傑作は絶対主義やキリスト教とは無関係に、作品自身が持つ魅力によって広く親しまれ、受け入れられている[3]

もっとも重要で有名なバロック絵画は1600年ごろから18世紀初頭にかけて描かれた。バロック絵画は劇的な描写技法、豊かで深い色彩、強い明暗法などで特徴づけられる。ルネサンス美術とは異なり、バロック美術では大げさで芝居がかったような場面描写が好まれ、暗影を用いた動的な躍動感あふれる作品が多く制作された。盛期ルネサンスの代表的な芸術家ミケランジェロは彫刻ダビデ像を、ゴリアテとの戦いを控えて沈思する人物として表現した。一方、バロックの代表的な芸術家ベルニーニは、ゴリアテに向かって石を投げつける瞬間をとらえたダビデ像を制作している。ルネサンス美術で賞賛された冷徹な理性ではなく、バロック美術では一瞬の感情や情熱の表現を追求していた。

バロック絵画を代表する画家として、イタリアのカラヴァッジョ[4]、オランダのレンブラント[5]フェルメール[6]、フランドルのルーベンス[7]、スペインのベラスケス、フランスのプッサン[8]らの名前があげられる。バロック絵画にはカラヴァッジョが多用した明暗法の一種であるキアロスクーロの使用によって劇的な物語性を表現した画家が多い。カラヴァッジョは盛期ルネサンスの人文主義を受け継ぎ、自身が独自に発展させた人物を写実的に描く手法と強烈なキアロスクーロを用いて劇的な効果をもたらす技法は同時代の芸術家たちの大きな影響を与え[9]、西洋美術史に新たな流れを生み出した。その他にフランドルの画家アンソニー・ヴァン・ダイクが描いた優美かつ力強い肖像画も、とくにイングランドで大きな影響を及ぼした絵画である。

17世紀オランダの隆盛は巨大な美術市場を形成し、画家たちは風景画静物画肖像画歴史画風俗画など、さまざまなジャンルに特化した作品を描いた。当時のオランダ人画家たちの絵画技術は非常に高く、20世紀のモダニズム萌芽まで美術界に影響を与え続けた。

歴史

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『キリスト生誕』(1669年)
ジョセファ・ドビドス、国立古美術館(リスボン)

1543年から1563年にかけて招集されたローマ・カトリック教会の公会議トリエント公会議は、プロテスタントの台頭に起因したカトリック教会内部の姿勢とともに、カトリック宗教施設が保有するそれまでの芸術作品にも大きな変化をもたらした。当時大きな影響力を持っていたルーヴェン大学の神学教授ヤン・ファン・デル・メーレン(1533年 - 1585年)(en:Molanus) は、カトリック教会が保有する彫刻や絵画は主題が明確で、力強く、敬虔な作品でなければならず、現在主流のマニエリスム様式はこの概念に合致していないとした。そして同様の解釈、意見がほかにも多くの聖職者たちが共有するものとなっていった。こういった流れを受けて、カラヴァッジョアンニーバレアゴスティーノのカラッチ兄弟から教会芸術の変革が開始されたことは多くの現代美術史家が指摘している。いずれも1600年ごろにローマを中心として活動し、多くの絵画制作の依頼を受けていた画家たちだが、カラッチ兄弟とは違ってカラヴァッジョの作品には品位が欠けているという根強い批判があった[10]

用語

[編集]

「バロック」という用語はもともと侮蔑的に使用され始め、作品の強調表現があまりに行き過ぎていて品位に欠けるいびつなものという意味が含まれていた。また、アリストテレス三段論法についての著作の歴史的用語「バロコ (Baroco)」を語源とするという考えもある[11]。奇抜な強調表現、過剰なまでに描きこまれた細部表現を意味する用語で、ルネサンス芸術の特性である合理的で抑制された作風とは好対照をなすものとして用いられていた。「バロック」におけるこのような否定的な意味合いを最初に払拭したのはスイス人美術史家ハインリヒ・ヴェルフリン(1864年 - 1945年)である。ヴェルフリンは著書『ルネサンスとバロック』(1888年)で、バロックは「(美術を)大衆へともたらした芸術運動」であり、それまでのルネサンス美術とは対極にあるものと位置づけた。ヴェルフリンは他の現代美術史家とは違ってマニエリスムとバロックとを区別してはおらず、18世紀の後期バロック(ロココ)も完全に無視している。ロココが隆盛したフランスやバロックの影響がほとんど見られなかったイギリスでは、ヴェルフリンの学説がドイツの学会で認められるまで、バロックはまともな研究対象とみなされていなかった。

北方写実主義からの伝統的な作風を受け継ぐ17世紀のオランダでは、他の国とはやや異なるバロック美術が発展した。宗教画も歴史画もほとんど制作されず、静物画、日常生活を描いた風俗画、風景画といった、宗教には直接関係のないジャンルの重要な絵画が多く制作された。当時のオランダを代表する画家レンブラントの作品はバロック絵画の典型ともいわれているが、フェルメールなど他のオランダ人画家の作品がバロック様式であるといわれることはあまりない。隣接するフランドル地方でも、伝統的な作風の絵画は一部で描き続けられていた。

主要な画家

[編集]

オランダ

[編集]
『ベントハイム城 』(1653年)
ヤーコプ・ファン・ロイスダール、アイルランド国立美術館

チェコ(ボヘミア)

[編集]

フランドル

[編集]
『花束』(1606年)
ヤン・ブリューゲル (父)

フランス

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『大工聖ヨセフ』(1642年)
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールルーブル美術館

イタリア

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ポルトガル

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スペイン

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『無原罪の御宿り』(1630年頃)
フランシスコ・デ・スルバランプラド美術館

ギャラリー

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出典

[編集]
  1. ^ Counter Reformation, from Encyclopædia Britannica Online, latest edition, full-article.
  2. ^ Counter Reformation, from The Columbia Encyclopedia, Sixth Edition. 2001-05.
  3. ^ Helen Gardner, Fred S. Kleiner, and Christin J. Mamiya, "Gardner's Art Through the Ages" (Belmont, California: Thomson/Wadsworth, 2005)
  4. ^ Getty profile, including variant spellings of the artist's name.
  5. ^ Gombrich, p. 420.
  6. ^ W. Liedtke (2007) Dutch Paintings in the Metropolitan Museum of Art, p. 867.
  7. ^ Belkin (1998): 11–18.
  8. ^ His Lives of the Painters was published in Rome, 1672. Poussin's other contemporary biographer was André Félibien.
  9. ^ 「ホセ・デ・リベーラ、フェルメール、ラ・トゥール、レンブラントは、もしカラヴァッジョがいなければ存在しえない画家だっただろう。また、ドラクロワ、クールベ、マネらの芸術も全く異なったものになっていたに違いない」Roberto Longhi, quoted in Lambert, op. cit., p.15
  10. ^ Giorgi, p.80.
  11. ^ Panofsky, Erwin (1995年), "What is Baroque?", Three Essays on Style, The MIT Press, p. 19
  12. ^ 以前は聖バルトロメオの殉教が描かれているといわれていたが、現在では聖フィリポとされている (Museo del Prado, Catálogo de las pinturas, 1996, p. 315, Ministerio de Educación y Cultura, Madrid)

参考文献

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  • Belkin, Kristin Lohse (1998). Rubens. Phaidon Press. ISBN 0-7148-3412-2 
  • Belting, Hans (1994). Likeness and Presence: A History of the Image before the Era of Art. Edmund Jephcott. University of Chicago Press. ISBN 0226042154 
  • Mark Getlein, Living With Art, 8th edition.
  • Ernst Gombrich|Gombrich, E.H., The Story of Art, Phaidon, 1995. ISBN 0-7148-3355-X
  • Christine Buci-Glucksmann, Baroque Reason: The Aesthetics of Modernity, Sage, 1994
  • Michael Kitson, 1966. The Age of Baroque'
  • Heinrich Wölfflin, 1964. Renaissance and Baroque (Reprinted 1984; originally published in German, 1888) The classic study. ISBN 0-8014-9046-4
  • Gilles Lambert, Caravaggio, Taschen, (2000) ISBN 978-3-8228-6305-3
  • Rosa Giorgi, Caravaggio: Master of light and dark - his life in paintings, Dorling Kindersley (1999) ISBN 978-0-7894-4138-6

邦語文献

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  • ハインリッヒ・ヴェルフリン(上松佑二訳)『ルネサンスとバロック : イタリアにおけるバロック様式の成立と本質に関する研究』(中央公論美術出版、1993)ISBN 4805502142
  • 深谷訓子著 『ローマの慈愛 : 「キモンとペロー」の図像表現』(京都大学学術出版会、2010)ISBN 9784876985937
  • エーゴン・フリーデル(宮下啓三訳)『バロックとロココ:啓蒙と革命』(みすず書房、1987)ISBN 462200609X
  • アロイス・リーグル(蜷川順子訳)『ローマにおけるバロック芸術の成立』(中央公論美術出版、2009)ISBN 9784805505960
  • マリオ・プラーツ(伊藤博明訳)『フランチェスコ・ピアンタの奇矯な彫刻:エンブレムのバロック的表象』(ありな書房、2008)ISBN 9784756608017
  • 萩島哲『バロック期の都市風景画を読む:ベロットが描いたドレスデン, ピルナ, ケーニヒシュタインの景観』(九州大学出版会、2006)ISBN 4873788986
  • 関根秀一編『イタリア・ルネサンス美術論 : プロト・ルネサンス美術からバロック美術へ』(東京堂出版、2000)ISBN 9784490204025
概説・入門書など
  • 逸身喜一郎『ギリシャ神話 : ルネッサンス・バロック絵画から遡る』(NHK出版、2011)ISBN 9784149107813
  • 中島智章『図説バロック : 華麗なる建築・音楽・美術の世界』(河出書房新社、2010)ISBN 9784309761497
  • 宮下規久朗『イタリア・バロック:美術と建築』(山川出版社、2006)ISBN 4634633507
  • 宮下規久朗『バロック美術の成立(世界史リブレット:77)』(山川出版社、2003)ISBN 9784634347700
  • 木村三郎『美術史と美術理論 : 西洋十七世紀絵画の見方 改訂版』(放送大学教育振興会、1996)ISBN 4595552203
画集・図録
  • アラン・グルベールほか(鈴木杜幾子監訳)『古典主義とバロック (ヨーロッパの装飾芸術:2)』(中央公論新社、2001)ISBN 4120030741
  • 高階秀爾『バロックとロココ 新装版』(柳宗玄ほか編〈岩波美術館〉第10巻、岩波書店、2003)ISBN 4000089501
  • 神吉敬三, 若桑みどり編『バロック』(『世界美術大全集 西洋編』第16-17巻、小学館、1994-1995)ISBN 4096010162

関連項目

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