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「慈恵医大青戸病院事件」の版間の差分

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{{複数の問題
'''慈恵医大青戸病院事件'''(じけいいだいあおどびょういんじけん)とは[[2002年]]に発生した事件。
| 参照方法 =2021年7月6日
| 出典の明記 =2021年7月6日
| 一次資料 = 2021年7月6日
| 特筆性 = 2021年7月6日
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[[File:Jikei University Aoto Hospital.JPG|300px|thumb|東京慈恵会医科大学附属青戸病院]]
'''慈恵医大青戸病院事件'''(じけいいだいあおどびょういんじけん)とは[[2002年]]に発生した[[医療過誤]]事件。


==概要==
== 診療経過 ==
=== 手術前 ===
2002年[[11月8日]]、慈恵医大青戸病院の医師3人前立腺癌の摘出手術について[[内視鏡]]による[[腹腔鏡]]手術を行った。腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して術後の臥床期間を短縮することができるメリットがあるが、手術の術野が狭くて遠近感がつかみ難いなど技術の難易度が高いデメリットがあった。医師3人は腹腔鏡手術がうまくいかず出血した際に失敗し、それでもより確実な開腹手術をせずに腹腔鏡下手術を続行し、開始からほぼ12時間後により確実な手法の開腹手術にようやく切り替えた。手術終了後に男性患者は大量[[出血]]による脳死状態になり、約1カ月後の12月8日に死亡した。
[[2002年]][[11月8日]]、東京慈恵会医科大学附属青戸病院(現:[[東京慈恵会医科大学葛飾医療センター]])の[[泌尿器科]]において、[[前立腺癌]]と診断された60代の男性患者に対して、当時[[高度先進医療]]に指定されていた[[腹腔鏡]]下前立腺摘出術が行われた。腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して術後の臥床期間を短縮することができるメリットがあるが、手術の術野が狭くて遠近感がつかみ難いなど技術の難易度が高いデメリットがあった。当時同大学においては[[高度先進医療]]を行う際には、同大学内の規定に基づき、学内の倫理委員会での承認を必要とするとされていたが、承認過程を経ることはなかった。同院同科診療部長であった[[助教授]]は、術者・第一助手・第二助手(主治医)での手術の申し出に対して、当初は指導医を招聘しての手術を指示したが、3人の希望が強かったため許可したとされる。


その後医師3人に腹腔鏡下術の執刀経験がないことが発覚。3人医師らうち1名だけは以前に腹腔鏡手術の助手が2回していたが術者として実施したことく、他の2名の医師腹腔鏡手術見学すら無かったが判明
なお術者は「腹腔鏡下前立腺摘出」の助手の経験はあったものの、術者としての経験く、第一助手・第二助手いずれも手術経験も手術見学無かったとしている


=== 手術 ===
また、学内規定では[[倫理]]委員会の承認を得る必要があった<!-- どういう場合に倫理委員会の承認を得る*必要がある*のか? -->が診療部長は指導医無しの執刀を独断で認めたこと、患者に執刀医に関する情報提供([[インフォームド・コンセント]])が成されていないこと、手術中に器具のマニュアルを読みながら手術を行っていたこと、大量出血に備えた輸血用血液を確保していなかったこと、止血に失敗して危険な状態にも摘出した前立腺癌を産婦人科医が出産した男の子のように例える冗談を言ってたこと、巡回していた麻酔医から執刀医の技術の低さと開腹手術に即時切り替えを指摘されていたことなど、医師個人や病院の医療体制について様々な問題が指摘された。
[[2002年]][[11月8日]]9時頃に、術者・第一助手・第二助手・麻酔科医で、[[腹腔鏡]]下前立腺摘出術が開始された。


手術には、医療機器メーカーの社員を立ち会わせて、機材のマニュアルを確認しながら行われた。
この事件は刑事事件に発展し、医師3人が業務上過失致死で起訴され、診療部長は起訴猶予となり、麻酔科医2人は不起訴処分となった。


12時頃に術中に静脈損傷を生じ、止血処置が難渋し出血が持続。16時過ぎ頃に術者が開腹手術への移行を提案したが、主治医でもあった第二助手が手術続行を主張し、18時過ぎ頃に再度術者が開腹手術への移行を提案したが、手術はそのまま続行された。19時過ぎにやっと前立腺を摘出。しかしその後も出血が持続し、21時過ぎに[[麻酔科医]]からの強い要請で開腹手術へ移行して止血処置を施行し、22時30分に手術は終了した。
大学は手術を許可した診療部長(同大[[助教授]])と術者と第二助手に[[懲戒解雇]]、第一助手に出勤停止10日間の処分を行った。第一助手は、手術の計画・立案に関わっていないという理由で出勤停止10日の処分となった。また、[[厚生労働省]]は術者と第二助手に、医業停止2年の処分を行った。


患者の血液型はAB型であり、同院ではAB型輸血製剤は在庫が無く、麻酔科医が[[日本赤十字社]]へ緊急で輸血発注を掛けるも間に合わず、手術終了後も血圧低下が続き、23時頃に一時心拍停止となり[[心臓マッサージ]]を施行し、辛うじて心拍維持は出来て手術を退室した。
[[2006年]][[6月15日]]、東京地方裁判所は「医師に経験を積ませることを優先させた」という指摘し「医師の基本を忘れた無謀な行為」として有罪判決を下し、第助手<!--第二助手には主治医であった上に、指導医の立ち会いを断った等、最も罪が重いとして-->に禁固2年6ヶ月執行猶予5年、執刀医と第助手に禁固2年・執行猶予4年が下った。第一助手は控訴したが、2007年6月7日に高裁は禁固1年6ヶ月、執行猶予4年に減刑して確定した。

=== 手術後 ===
術後は心拍停止後の低酸素脳症での[[脳死]]状態で意識の改善の無いままに、約1カ月後の12月8日に死亡した。

== 逮捕・起訴 ==
=== 逮捕 ===
[[警視庁]][[捜査一課]]は、術者・第一助手・第二助手を[[業務上過失致死]]容疑で[[逮捕]][[勾留]]して身柄を[[送検]]し、診療部長(同大学[[助教授]])・麻酔科医2人を[[書類送検]]とした。

=== 起訴 ===
[[東京地方検察庁]]は、術者・第一助手・第二助手を、[[業務上過失致死]]容疑で起訴した。
診療部長は[[起訴猶予]]となり、[[麻酔科医]]2人は[[不起訴]]処分となった。

== 裁判 ==
=== 公判 ===
公判では、術者・第二助手・第一助手はそれぞれ「大量出血にて死亡に至ることは予見出来なかった」と[[無罪]]を主張した。

また弁護側は「術中管理の責任を負う麻酔科医が適切な輸血指示を怠った過失が大きい」とも主張した。

=== 判決 ===
[[2006年]][[6月15日]]、[[東京地方裁判所]](栃木力[[裁判長]])は、第助手<!--第二助手には主治医であった上に、指導医の立ち会いを断った等、最も罪が重いとして-->に[[禁固]]2年6ヶ月・[[執行猶予]]5年、術者と第助手に[[禁固]]2年・[[執行猶予]]4年の判決が下した。
判決理由として「手術技量の無いままで、手術経験を積みたいという自己中心的な利益を優先し、術中の止血処理を怠って手術を続け、適切な時期に開腹手術へ変更する判断を損なったことで、結果的に大量出血にての経過として死亡に至った」と述べた。

=== 控訴 ===
第一助手は第一審判決を不服として[[控訴]]し、改めて[[無罪]]を主張したが、[[2007年]][[6月7日]]に[[東京高等裁判所]]([[長岡哲次]][[裁判長]])は「責任は病院上層部や麻酔科医にもあるとしながらも、責任の重さは術者や主治医と同じとは言えない」として[[禁固]]1年6ヶ月・[[執行猶予]]4年に減刑しての有罪判決が下り確定した。

== 処分 ==
=== 大学側の処分 ===
[[東京慈恵会医科大学]]は以下の処分を決定した。
*[[懲戒解雇]]:診療部長(同大[[助教授]] 診療監督責任)・術者・第二助手
*出勤停止:第一助手(手術の計画・立案に関わっていないという理由)

=== 行政処分 ===
[[2004年]][[3月18日]]に、[[厚生労働省]][[医道審議会]]は、術者と第二助手に「医業停止2年」、診療部長に「医業停止3か月」の行政処分を行った。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[内視鏡]]
*[[腹腔鏡]]
*[[医療訴訟]]
*[[医療訴訟]]
*[[群馬大学病院腹腔鏡手術後8人死亡事故]]
*[[医療過誤]]
*[[東京慈恵会医科学附属青戸病院]]
*[[福島県立病院事件]]
*[[昭光]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
*[http://www.jikei.ac.jp/news/200312_1.html 青戸病院医療事故のお詫び]
* [https://www.jikei.ac.jp/hospital/daisan/news/200309.html 青戸病院医療事故のお詫び]
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東京慈恵会医科大学附属青戸病院

慈恵医大青戸病院事件(じけいいだいあおどびょういんじけん)とは、2002年に発生した医療過誤事件。

診療経過

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手術前

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2002年11月8日、東京慈恵会医科大学附属青戸病院(現:東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)の泌尿器科において、前立腺癌と診断された60代の男性患者に対して、当時高度先進医療に指定されていた腹腔鏡下前立腺摘出術が行われた。腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して術後の臥床期間を短縮することができるメリットがあるが、手術の術野が狭くて遠近感がつかみ難いなど技術の難易度が高いデメリットがあった。当時同大学においては高度先進医療を行う際には、同大学内の規定に基づき、学内の倫理委員会での承認を必要とするとされていたが、承認過程を経ることはなかった。同院同科診療部長であった助教授は、術者・第一助手・第二助手(主治医)での手術の申し出に対して、当初は指導医を招聘しての手術を指示したが、3人の希望が強かったため許可したとされる。

なお、術者は「腹腔鏡下前立腺摘出術」の助手の経験はあったものの、術者としての経験は無く、第一助手・第二助手はいずれも手術経験も手術見学も無かったとしている。

手術

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2002年11月8日9時頃に、術者・第一助手・第二助手・麻酔科医で、腹腔鏡下前立腺摘出術が開始された。

手術には、医療機器メーカーの社員を立ち会わせて、機材のマニュアルを確認しながら行われた。

12時頃に術中に静脈損傷を生じ、止血処置が難渋し出血が持続。16時過ぎ頃に術者が開腹手術への移行を提案したが、主治医でもあった第二助手が手術続行を主張し、18時過ぎ頃に再度術者が開腹手術への移行を提案したが、手術はそのまま続行された。19時過ぎにやっと前立腺を摘出。しかしその後も出血が持続し、21時過ぎに麻酔科医からの強い要請で開腹手術へ移行して止血処置を施行し、22時30分に手術は終了した。

患者の血液型はAB型であり、同院ではAB型輸血製剤は在庫が無く、麻酔科医が日本赤十字社へ緊急で輸血発注を掛けるも間に合わず、手術終了後も血圧低下が続き、23時頃に一時心拍停止となり心臓マッサージを施行し、辛うじて心拍維持は出来て手術を退室した。

手術後

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術後は心拍停止後の低酸素脳症での脳死状態で意識の改善の無いままに、約1カ月後の12月8日に死亡した。

逮捕・起訴

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逮捕

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警視庁捜査一課は、術者・第一助手・第二助手を業務上過失致死容疑で逮捕勾留して身柄を送検し、診療部長(同大学助教授)・麻酔科医2人を書類送検とした。

起訴

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東京地方検察庁は、術者・第一助手・第二助手を、業務上過失致死容疑で起訴した。 診療部長は起訴猶予となり、麻酔科医2人は不起訴処分となった。

裁判

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公判

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公判では、術者・第二助手・第一助手はそれぞれ「大量出血にて死亡に至ることは予見出来なかった」と無罪を主張した。

また弁護側は「術中管理の責任を負う麻酔科医が適切な輸血指示を怠った過失が大きい」とも主張した。

判決

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2006年6月15日東京地方裁判所(栃木力裁判長)は、第二助手に禁固2年6ヶ月・執行猶予5年、術者と第一助手に禁固2年・執行猶予4年の判決が下した。 判決理由として「手術技量の無いままで、手術経験を積みたいという自己中心的な利益を優先し、術中の止血処理を怠って手術を続け、適切な時期に開腹手術へ変更する判断を損なったことで、結果的に大量出血にての経過として死亡に至った」と述べた。

控訴

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第一助手は第一審判決を不服として控訴し、改めて無罪を主張したが、2007年6月7日東京高等裁判所長岡哲次裁判長)は「責任は病院上層部や麻酔科医にもあるとしながらも、責任の重さは術者や主治医と同じとは言えない」として禁固1年6ヶ月・執行猶予4年に減刑しての有罪判決が下り確定した。

処分

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大学側の処分

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東京慈恵会医科大学は以下の処分を決定した。

  • 懲戒解雇:診療部長(同大助教授 診療監督責任)・術者・第二助手
  • 出勤停止:第一助手(手術の計画・立案に関わっていないという理由)

行政処分

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2004年3月18日に、厚生労働省医道審議会は、術者と第二助手に「医業停止2年」、診療部長に「医業停止3か月」の行政処分を行った。

関連項目

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外部リンク

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