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「JR東海371系電車」の版間の差分

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{{予定|date=2011年10月17日 (月) 12:48 (UTC)}}
{{鉄道車両
{{鉄道車両
|車両名=JR東海371系電車
|車両名 =JR東海371系電車
|社色=#f77321
|社色 =#f77321
|画像=JRC EC371 Asagiri Matsuda.jpg
|画像 =JRC EC371 Asagiri Matsuda.jpg
|pxl =300px
|画像説明=371系電車(2009年10月23日 / [[松田駅]])
|画像説明 =371系電車(2009年10月23日 / [[松田駅]])
|両数=7両編成 (5M2T) 1本
|unit =self
|起動加速度=2.0
|編成 =7両固定編成
|営業最高速度=110
|起動加速度 =2.0[[メートル毎秒毎秒|km/h/s]]<ref name="360-34">[[#RF360|『鉄道ファン』通巻360号 p.34]]</ref>
|設計最高速度=120
|速度(通常)=3.5
|営業最高速度 =
|設計最高速度 =145[[キロメートル毎時|km/h]]<ref name="360-34"/>
|減速度(非常)=3.5
|最高速度 =120km/h<ref name="360-34"/>
|車両定員=普60名(クモハ371形、モハ370形0番台)<br/>普58名(モハ370形100番台)<br/>普68名(モハ371形)<br/>普18名+G32名(サロハ371形)
|定格速度 =
|編成定員=342名(普通席)<br/>64名(グリーン席)
|減速度(常用最大)=4.0km/h/s<ref name="360-34"/>
|全長=21,250mm(クモハ371形)<br/>20,000mm(モハ370形、モハ371形)<br/>20,500mm(サロハ371形)
|減速度(非常) =4.0km/h/s<ref name="360-34"/>
|全幅=2,900
|編成定員 =
|全高=4,037mm(クモハ371形)<br/>3,940mm(モハ370形 パンタグラフ折畳高さ)<br/>4,023mm(モハ371形)<br/>4,055mm(サロハ371形)
|車両定員 =408名<ref name="294-95">[[#鈴木294|『鉄道ジャーナル』通巻294号 p.95]]</ref><br/>(うちグリーン席64名)
|車両重量=40.0t(クモハ371形)<br/>39.0t(モハ370形、モハ371形)<br/>38.0t(サロハ371形)※いずれも新造時
|編成重量=273.0t(新造時)
|編成=
|最大寸法 =21,250[[ミリメートル|mm]]×2,900mm×4,057mm(Mc)<ref name="360-34"/><br/>20,000mm×2,900mm×3,940mm(M'-1)<ref name="360-34"/><br/>20,000mm×2,900mm×4,058mm(M'-101)<ref name="360-34"/><br/>20,000mm×2,900mm×4,023mm(M)<ref name="360-34"/><br/>20,250mm×2,900mm×4,055mm(T<small>SD</small>)<ref name="360-34"/>
|軌間=1067
|全長 =
|電気方式=直流1500V
|全幅 =
|駆動装置=
|全高 =
|主電動機= [[直巻整流子電動機|直流直巻電動機]]<br/>C-MT61A・C-MT64A (120kW)
|車体長 =
|編成出力=480kW×5=2,400kW
| =19:80 (4.21)
|車体幅 =
|車体高 =
|制御装置=[[電気車の速度制御#抵抗制御|抵抗制御、直並列組合せ制御]]<br/>[[界磁添加励磁制御]]
|編成質量 =273t<ref name="294-95"/>
|駆動装置=
|車両質量 =
|台車=円錐積層ゴム式ボルスタレス台車<br />C-DT59・C-TR243
|軸配置 =
|ブレーキ方式=[[電気指令式ブレーキ|電気指令式]]<br/>([[回生ブレーキ|回生]]・直通予備・[[抑速ブレーキ|抑速]]・勾配起動ブレーキ、応荷重装置付)
|軌間 =1,067mm
|保安装置=ATS-ATS-S<small>T</small>・ATS-P<small>T</small>・OM-ATS
|電気方式 =[[直流電化|直流]]1,500[[ボルト (単位)|V]]<br/>([[架空電車線方式]])
|メーカ=[[日本車輌製造]]・[[川崎重工業車両カンパニー|川崎重工業]]・[[日立製作所]]
|備考=
|出力 =
|主電動機 =C-MT61A (Mc,M') <ref name="360-28">[[#RF360|『鉄道ファン』通巻360号 p.28]]</ref><br/>C-MT64A (M) <ref name="360-33">[[#RF360|『鉄道ファン』通巻360号 p.33]]</ref><br/>
|モーター出力 =120[[ワット|kW]]([[直巻整流子電動機|直流直巻補極付電動機]])<ref name="294-95"/>
|機関出力 =
|編成出力 =
|定格出力 =
|定格引張力 =
|駆動装置 =
|歯車比 =80:19=4.21<ref name="294-95"/>
|変速段 =
|台車 =C-DT59(動力台車)<ref name="360-34"/><br/>C-TR243(付随台車)<ref name="360-34"/>
|制御装置 =CS57A<ref name="360-28"/>・C-CS59A<ref name="360-33"/><br/>([[電気車の速度制御#抵抗制御|直並列組合せ抵抗制御]]・[[界磁添加励磁制御]])
|ブレーキ方式 =[[回生ブレーキ]]併用[[電気指令式ブレーキ|電気指令式空気ブレーキ]]<ref name="294-95"/><br/>([[直通予備ブレーキ]]・[[抑速ブレーキ]]・勾配起動ブレーキ・[[応荷重装置]]付)
|保安装置 =[[自動列車停止装置#ATS-S改良形(ATS-Sx形)|ATS-S<small>T</small>]]<ref name="294-95"/>・[[自動列車停止装置#多変周式信号ATS(多変周式(点制御、連続照査型))|OM-ATS]]<ref name="294-95"/>
|製造メーカー =[[日本車輌製造]]<ref name="gd">{{Cite web|author=[http://www.g-mark.org/ 日本デザイン振興会]|url=http://www.g-mark.org/award/detail.html?id=18866|title=Good Design Award|work=|publisher=|language=日本語|accessdate=2011-11-18}}</ref>・[[川崎重工業車両カンパニー|川崎重工業]]<ref name="gd"/>・[[日立製作所]]<ref name="gd"/>
|備考 =設計最高速度は平坦線均衡速度を記述
|備考全幅 =
}}
}}
'''371系電車'''(371けいでんしゃ)は、[[東海旅客鉄道]](JR東海)の[[直流電化|直流]][[特急形車両]]。
<!--「である」を消す奴が居るけど理由は?←貴方のノートページに答えは書いてありますが、ご覧になられていないようなので。理由は、無意味な編集合戦を防ぐために「○○である」という言葉を付加するのは推奨されていないのと、wikiのサーバへの負荷を減らすためです。貴方は既にログインユーザより投稿できなくなる可能性を警告されています。以後このような編集は控えた方が良いですよ。でないと管理者によってブロックされて以後編集できなくなりますよ。-->


'''371系電車'''(371けいでんしゃ)は、[[東海旅客鉄道]](JR東海)が[[1991年]]に運用を開始した[[特急形車両|特急形]][[直流電化|直流]][[電車]]である。
7両編成1本(7両)のみが製造され、[[1991年]]([[平成]]3年)[[3月16日]]に営業運転を開始した。[[デザイン]]はJR東海車両部とTDOの手銭正道、戸谷毅史、松本哲夫、木村一男らによる。1991年度[[経済産業省|通商産業省]]グッドデザイン商品(現在の日本産業デザイン振興会[[グッドデザイン賞]])<!--現行の名称は1998年から-->商品デザイン部門に選定された。


[[御殿場線]]と[[小田急電鉄]](小田急)[[小田急小田原線|小田原線]]を[[直通運転|相互直通運転]]するために登場した車両で、JR東海となってから初めて新造した[[在来線]]用特急形電車である<ref name="521-46">[[#RJ521|『鉄道ジャーナル』通巻521号 p.46]]</ref>。7両固定編成×1編成のみが製造され、当時の[[通商産業省]]より1991年度[[グッドデザイン賞|グッドデザイン商品]]に選定された<ref name="gd"/>。登場以来、特急「[[あさぎり (列車)|あさぎり]]」と静岡地区の「[[ホームライナー]]」のみに使用されていた<ref name="521-43">[[#RJ521|『鉄道ジャーナル』通巻521号 p.43]]</ref>が、[[2012年]]3月で特急運用から外れて団体専用車両となる予定と報道されている<ref name="ats20111018">{{Cite web|author=|date=2011-10-18|url=http://www.at-s.com/news/detail/100069491.html|title=「371系」来春引退 JR東海の特急「あさぎり」|work=[http://www.at-s.com/ 「アットエス」]|publisher=[[静岡新聞]]|language=日本語|accessdate=2011-10-18}}</ref>。
1編成のみの存在だが、製造は[[日本車輌製造]]、[[川崎重工業]]、[[日立製作所]]の3社が担当している。小田急ロマンスカーの一員として含める場合もある<ref>小田急ロマンスカーの車型・編成・時刻表が掲載された冊子に写真のみ登場している</ref>。

本項では以下、[[日本国有鉄道]]は「国鉄」、[[小田急3000形電車 (初代)|小田急3000形]]は「SE車」、[[小田急20000形電車|小田急20000形]]は「RSE車」と表記する。


== 登場の経緯 ==
== 登場の経緯 ==
御殿場線では、小田急が[[1950年]]から[[あさぎり (列車)#小田急線御殿場線直通列車の沿革|新宿から直通する準急列車]]を運行しており<ref name="294-99">[[#RJ294|『鉄道ジャーナル』通巻294号 p.99]]</ref>、御殿場線が[[鉄道の電化|電化]]された[[1968年]]7月以降は8両連接から5両連接に短縮したSE車を使用した[[あさぎり (列車)#小田急線御殿場線直通列車の沿革|連絡急行「あさぎり」]]として御殿場線に乗り入れていた<ref name="297-30">[[#松本297|『鉄道ジャーナル』通巻297号 p.30]]</ref>。1968年7月からは国鉄でも、[[東京駅|東京]]から[[東海道本線]]経由で直通する[[急行列車]]として「[[東海 (列車)#急行「ごてんば」の登場と「東海」|ごてんば]]」を[[国鉄165系電車|165系電車]]によって運行していた<ref name="297-34">[[#須田297|『鉄道ジャーナル』通巻297号 p.34]]</ref>が、所要時間が「あさぎり」と比較して長かったこともあって乗客が定着せず<ref name="297-34"/>、[[1985年]]3月13日限りで廃止されていた。一方、1964年ごろからは乗り入れ区間を[[沼津駅|沼津]]まで延長するという要望が出ていた<ref name="297-34"/>が、当時の御殿場線は[[御殿場駅|御殿場]]から[[裾野駅|裾野]]までの約15kmにわたって[[行き違い施設|列車交換設備]]がなく<ref name="297-34"/>、国鉄の財政的な問題もあって進展をみなかった<ref name="297-34"/>。
[[小田急電鉄]]は、[[小田急3000形電車 (初代)|3000形「SSE」]]を使用した、JR東海[[御殿場線]]に乗入れる連絡急行「[[あさぎり (列車)|あさぎり]]」を[[新宿駅]] - [[御殿場駅]]間に運行していたが、使用車両の老朽化に伴い、1991年3月のダイヤ改正において[[特別急行列車|特急]]に格上げし、運転区間を新宿駅 - [[沼津駅]]間に拡大するとともに小田急とJR東海による共同運行とすることになった。そのためにJR東海が製造したのが371系である。同時に小田急が製造した[[小田急20000形電車|20000形「RSE」]]とは、走行性能や定員などの基本仕様は合わせられているが、具体的な設計についてはそれぞれに任されたため、両社の設計思想の違いが見られる。


[[国鉄分割民営化]]後の[[1988年]]7月に、小田急からJR東海に対して車齢30年を超えたSE車の更新について申し入れがあったこと<ref name="297-35">[[#須田297|『鉄道ジャーナル』通巻297号 p.35]]</ref>や、御殿場線の利用者が増加したことに対応して[[1989年]]に[[富士岡駅|富士岡]]と[[岩波駅|岩波]]に列車交換設備が新設された<ref name="297-35"/>ことがきっかけとなり、小田急とJRの間で相互直通運転に関する協議が進められることになった<ref name="297-35"/>。この協議の中で、特急に格上げした上で運行区間も沼津 - 新宿間に延長し<ref name="2005-50"/>、あわせて2社がそれぞれ新形車両を導入した上で相互直通運転に変更することとなった<ref name="2005-50">[[#生方2005|『小田急ロマンスカー総覧』 p.50]]</ref>。
== 車体構造 ==
車体は、JR東海が新製した[[在来線]]特急用車両の中で唯一の[[炭素鋼|普通鋼]]製であるが、同社の標準であるワイドビュー仕様で、[[鉄道車両の座席|座席]]の肘掛より低く・荷棚の下端まで拡大された<ref>普通車の窓の天地寸法は1,020mmとなっている。</ref>連続窓が特徴である。前頭部は、大形の曲面ガラスを使用し、スカート([[排障器]])まで一体化した三次曲面による流線型で、2階建車においては、2階から1階までを一体に繋いだ超大型の曲面ガラスを使用した大胆な構成となっている。[[新幹線100系電車]]を意識して設計されたといわれ、内装も当時の100系と同様で、車体塗色も[[白3号]]に[[青20号]]の帯を巻いている。また、小田急線との[[連絡線]]にある[[デッドセクション]]で消灯しないよう客室灯には[[インバータ]]付[[直流]][[蛍光灯]]を使用している。


この頃のJR東海では、[[優等列車]]の車両置き換えによるイメージチェンジとあわせてイベントや観光開発を推進することで路線の総合改善を図るという手法を行なっており<ref name="297-35"/>、既に[[高山本線]]で実績をあげていた<ref name="297-35"/>。御殿場線においても同様の手法がとられることになり、新しい観光ルートの設定による広域観光の振興<ref name="297-35"/>、既存ルートとあわせた需要喚起<ref name="297-35"/>、赤字路線である御殿場線のイメージアップと活性化<ref name="297-35"/>という期待をかけ、近代的なイメージの車両を送り出すことになった<ref name="297-35"/>。
客用扉は[[プラグドア]]を採用した。なお、運転開始当初は小田急線内での乗車位置が編成中の一部の扉に限定されていたためドア開閉ボタンが設置されており、[[自動ドア#半自動|半自動]]扱いを可能としている<ref>ただし、この半自動扱いは、登場当初は乗車改札を行なう扉のみを開くため、1999年に乗車改札が廃止されて以降は車内整備の際に係員が必要に応じて開閉を扱う際に使用するためで、いずれも必要な際に係員が取り扱うものであって、乗客が扱うものではない。このため、当初よりドア操作スイッチは車内・車外ともに蓋で隠されており、乗客の目に付く場所にはない。</ref>。


こうして、「ソフトで洗練されたデザイン」をコンセプトとして<ref name="360-31">[[#RF360|『鉄道ファン』通巻360号 p.31]]</ref>、小田急との「相互直通運転車両の規格仕様に関する協定書」に基づき<ref name="829-277">[[#岸上829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.277]]</ref>、基本仕様を同社[[小田急20000形電車|RSE車]]と統一した<ref name="679-238">[[#大幡679|『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.238]]</ref>車両として登場したのが371系である。
[[2006年]](平成18年)10月から11月にかけて施工された[[鉄道車両の検査#全般検査|全般検査]]で[[集電装置|パンタグラフ]]が菱形のC-PS24A形から[[JR東海373系電車|373系]]などで採用されているシングルアーム式C-PS27A形に交換された。この他に、[[ドアチャイム]]が設置されたほか、乗務員室のドアも交換された。また、[[車掌スイッチ|ドア開閉スイッチ]]も新しいものに変更されている。


== 車両概説 ==
小田急電鉄の他のロマンスカーにあわせて2007年3月18日からは全席禁煙となったため、車内のすべての[[灰皿]]が撤去された。
本節では、登場当時の仕様を記述する。


371系は7両固定編成で、系列中に4形式が存在する。編成については、[[#編成表|巻末の編成表]]を参照のこと。
== 性能 ==
; クモハ371形 : 両端の先頭車となる[[制御車|制御電動車]] (Mc) で、集電装置と主制御装置を搭載する<ref name="360-28"/>。新宿側先頭車(7号車)が0番台<ref name="360-34"/>、沼津側先頭車(1号車)が100番台<ref name="360-34"/>。
[[ファイル:Truck C-DT56A.jpg|thumb|left|電動台車 C-DT56A]]
; モハ370形 : クモハ371形と電動車ユニットを構成し、2号車・6号車に組み込まれる[[動力車|中間電動車]] (M') で、補助電源装置を搭載する<ref name="360-28"/>。番号区分は同じユニットのクモハ371形と同様で、新宿側6号車が0番台<ref name="360-34"/>、沼津側2号車が100番台<ref name="360-34"/>。
主回路制御は、当時新製されていた近郊形の[[国鉄211系電車#JR東海により投入された5000・6000番台|211系5000・6000番台]]、[[国鉄213系電車#JR東海所属車両(5000番台)|213系5000番台]]、[[JR東海311系電車|311系]]に準じた[[界磁添加励磁制御]]で、最高運転速度は120km/h([[最高速度#平坦線均衡速度|平坦均衡速度]]145km/h)である。本系列が運用される[[東海旅客鉄道静岡支社|静岡支社]]エリアは最高速度が110km/hであるため、性能には余裕のある運転となる。211系5000番台や311系と同様に、クモハ371形とモハ370形でユニットを組んでいるが、モハ371形は213系に準じた1M車で編成中の電動車は5両となっている。これにより、御殿場線内の急勾配 (25‰) においても均衡速度100km/hを発揮し、33‰勾配で1ユニットをカットした状態で起動可能な性能を確保している。歯車比は4.21で小田急20000形に合わせているが、これは[[国鉄165系電車|165系]]などの急行形電車が採用していた数値でもある<!--御殿場線の[[線形 (路線)|線形]]も影響している事からであろう。--推定なのでコメント化-->。[[鉄道車両の台車|台車]]は、[[動力車|電動車]]がC-DT56A、[[付随車]]がC-TR243で、いずれも国鉄・JRでは[[国鉄205系電車|205系]]からの実績がある[[鉄道車両の台車史#ボルスタレス台車|ボルスタレス台車]]で、[[蛇行動#ヨーダンパ|ヨーダンパ]]を装備する。
; モハ371形 : 5号車に組み込まれる単独の中間電動車 (M) で、集電装置・主制御装置・補助電源装置を搭載する<ref name="360-28"/>。1両しか存在しないが、番号区分は200番台となっている<ref name="360-34"/>。
; サロハ371形 : 3・4号車に組み込まれる[[2階建車両|2階建て構造(ダブルデッカー)]]の[[普通車 (鉄道車両)|普通]]・[[グリーン車|グリーン]]合造[[付随車|付随車]] (T<small>SD</small>) 。新宿側(4号車)が0番台<ref name="360-34"/>、沼津側(3号車)が100番台<ref name="360-34"/>。


=== 車体 ===
ブレーキシステムは[[回生ブレーキ]]併用の[[電気指令式ブレーキ|電気指令式空気ブレーキ]]で、JR東海の車両としては初めて運転台の[[マスター・コントローラー]]にワンハンドル式を採用している。小田急電鉄の方式に合わせているため、JRグループの[[狭軌]][[在来線]]では唯一右手でマスター・コントローラーを操作する電車であり、乗務に当たっては指導操縦者とともに最低一度は見習として乗務が必要となる。
クモハ371形は車体長21,000mm・全長は21,250mm<ref name="360-34"/>、モハ370形とモハ371形は車体長19,500mm・全長20,000mm<ref name="360-34"/>、サロハ371形が車体長19,750mm・全長20,250mm<ref name="360-34"/>で、いずれも車体幅は2,900mmの全金属製車体である<ref name="294-95"/>。屋根と出入台・売店部分の床板はステンレス製<ref name="360-31"/>、それ以外は普通鋼製である<ref name="360-31"/>。


先頭部の形状は、3次元曲線で構成された[[流線形車両|流線形]]非貫通構造で<ref name="360-31"/>、6枚の3次元曲面ガラスで構成し<ref name="294-95">[[#鈴木294|『鉄道ジャーナル』通巻294号 p.95]]</ref>、屋根部分まで一体感のあるデザインとした<ref name="294-95"/>。先頭部下部には格納式[[連結器]]を装備する<ref name="360-28"/>。サロハ371形はボリューム感を持たせるために中央部の構体下部を膨らませた<ref name="294-95"/>ため、1車両で2種類の車体断面を有する<ref name="294-95"/>。
保安設備はJR東海用の[[自動列車停止装置#ATS-S改良形(ATS-Sx形)|ATS-S<small>T</small>]]と小田急用の[[自動列車停止装置#多変周式信号ATS(多変周式(点制御、連続照査型)) |OM-ATS]]を搭載する。{{要出典範囲|2011年2月から3月の検査で[[自動列車停止装置#ATS-PT形(JR東海ATS-P)|ATS-P<small>T</small>]]が新たに搭載された|date=2011年5月}}。


{{Double image aside|right|Plugdoor.JPG|180|JRC-Saroha371-Greencar.jpg|180|プラグドア|サロハ371の中央部は縦の連続窓風}}
== 編成と形式 ==
側面客用扉は各車両とも1箇所で、外引き式の[[プラグドア]]が採用され<ref name="360-32">[[#RF360|『鉄道ファン』通巻360号 p.32]]</ref>、扉幅は800mm幅とした<ref name="360-12301">[[#RF360|『鉄道ファン』通巻360号付図 (RF12301) ]]</ref>。限定した扉を扱うケース<ref group="注釈">1999年7月までは、小田急線内で特急に乗車する際には乗車口を限定した上で、ホームで特急券を確認する乗車改札を行っていた([[#細谷679|『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.25]])。</ref>に対応し<ref name="360-32"/>、乗務員室の操作で半自動開閉指令を行い、添乗員が各乗降口に設置されたスイッチ<ref group="注釈">乗客の目につく場所には設置されていない。</ref>で開閉する半自動扱いも可能としている<ref name="360-32"/>。
中間に[[2階建車両|2階建]]の[[グリーン車]](普通席との合造)2両を組込んだ7両編成で、編成は以下のとおりである。


普通車の側面窓は、眺望に配慮し、幅1,650mm×高さ1,020mmのサイズとして<ref name="360-12301"/>、窓柱の幅を350mmとして配置した<ref name="360-12301"/>。窓の上辺は車内の荷物棚下端で<ref name="294-95"/>、窓の下端は座席の肘掛より低い位置である<ref name="294-95"/>。サロハ371形の中央部は大型の曲面ガラスを縦の連続窓風に配置し、編成全体でダイナミックなアクセントとなることをねらった<ref name="294-95"/>。車両間の[[貫通扉|貫通路]]は750mm幅となっている<ref name="360-12301"/>が、2両のサロハ371形の間<ref group="注釈">3号車と4号車の間。</ref>は2階部分で貫通させており<ref name="360-30">[[#RF360|『鉄道ファン』通巻360号 p.30]]</ref>、この箇所のみ650mm幅(有効幅550mm)とした<ref name="360-12302">[[#RF360|『鉄道ファン』通巻360号付図 (RF12302) ]]</ref>。2階建て車両の1階海側には[[非常口]]を設置した<ref name="294-95"/>。
1編成しかないため、各形式(番台)とも1両ずつのみの存在である。[[2002年]](平成14年)に各車連結面に[[転落防止幌]]が設置された。


塗装デザインは[[新幹線100系電車]]と同一の色<ref group="注釈">[[白3号]]ベースに、窓周りが[[青20号]]の帯。</ref>を使用したデザインとした。側面方向幕は2種類の配置があり、クモハ371形とモハ371形は列車名と座席種別を横に並べたタイプ<ref name="360-33"/>、モハ370形とサロハ371形では列車名と座席種別を縦に並べたタイプである<ref name="360-33"/>。
なお、車内は全車禁煙である。
{{-}}


=== 内装 ===
{| class="wikitable" style="font-size:80%; text-align:center; margin:1em 0em 2em 3em;"
全車両に共通する内容として、室内照明はダブルデッカーの1階も含めて全て間接照明を採用し<ref name="294-95"/>、床は全てカーペット敷きとした<ref name="360-32"/>。また、客室端部には[[発光ダイオード|LED]]式の[[車内案内表示装置|情報案内表示器]]を設置した<ref name="294-95"/>。折り返し駅での[[鉄道車両の座席|座席]]方向転換の時間を短縮するため、電動式の一斉回転機構を採用した<ref name="360-32"/>。また、御殿場線と小田急小田原線を結ぶ[[連絡線]]には[[デッドセクション]]が存在するため<ref name="360-34"/>、セクション通過時に室内灯が消灯しないように[[インバータ]]付直流[[蛍光灯]]を採用した<ref name="360-34"/>。座席番号表示は、窓側と通路側をアルファベットで分ける国鉄時代からの方式ではなく、小田急と同様に車両ごとの連番とする方式である<ref name="297-25">[[#松本297|『鉄道ジャーナル』通巻297号 p.25]]</ref>。

{{Double image aside|right|Green Car of JR 371.jpg|180|Inside of JR 371.jpg|180|グリーン車車内|普通車車内}}
グリーン車の室内色は「季節感」をテーマとした<ref name="360-32"/>。座席は2人がけ座席の幅が幅1,250mm、1人がけ座席の幅は660mmのフリーストップ式回転[[リクライニングシート]]を採用し<ref name="294-96">[[#鈴木294|『鉄道ジャーナル』通巻294号 p.96]]</ref>、海側を1人がけ座席とした[[座席#シートピッチ|シートピッチ]]1,100mmで配置した<ref name="294-96"/>。座席には大型の背面テーブルとフットレストを装備し<ref name="294-96"/>、肘掛にインアームテーブル・液晶テレビ等のAV装置やスチュワーデスコールスイッチを組み込んだ<ref name="294-96"/>。座席上部にはスポット式空調吹き出し口と読書灯を設置した<ref name="360-30"/>。

普通車の室内色は、グレーと淡いピンクによって、明るく落ち着いたデザインとすることをねらった<ref name="360-32"/>。座席は回転式の2人がけフリーストップ式リクライニングシートを採用し<ref name="294-95"/>、シートピッチ1,000mmで配置した<ref name="294-95"/>。全ての座席には背面テーブルとフットレストを装備し、肘掛は[[皮革|レザー]]張りとした<ref name="294-95"/>。2人がけ座席では車両の縦列で表地の色調を変更した<ref name="294-95"/>。なお、サロハ371形の1階席のみシートピッチ1,100mmとし<ref name="294-96"/>、1階席海側のみ1人がけ座席を配置した<ref name="294-96"/>。また、サロハ371形の1階席窓下には前後方向に細長いテーブルと小物置き場を設置した<ref name="294-96"/>。

{{Triple image|right|JRC EC371 inside Economy lower deck.jpg|120|JRC-EC371-inside-Seat-Economy.jpg|120|JRC EC371 inside Double-decker entrance.jpg|120|サロハ371形1階席車内|1階席窓下にテーブルと小物置き場を設けた|サロハ371形の出入台}}
サロハ371形の出入台(デッキ)は[[車内販売#基本的な乗務内容|車販準備室]]や客室への階段などが配置されるオープンな機能空間としてデザインした<ref name="294-96"/>。2階客室への階段はメイン通路となるので幅1mと広くとり<ref name="294-96"/>、手すり部分には大型のガラスを収めた<ref name="294-96"/>。この階段の海側を電話コーナー<ref name="294-96"/>、山側を1階客室への階段とした<ref name="294-96"/>。[[車内販売]]の基地となる車販準備室はサロハ371形の平屋部分に設け<ref name="294-96"/>、海側にカウンターを設置し<ref name="294-96"/>、山側には折り戸の収納庫を設けた<ref name="294-96"/>。カウンター内には電子レンジや冷蔵庫を備え、簡単な調理が可能である<ref name="360-31"/>。

モハ370形には[[列車便所|トイレ]]と[[洗面器#洗面台・洗面所|化粧室]]を設けた。0番台(6号車)では[[便器#和式大便器(和風大便器)|和式便所]]、100番台(2号車)では身体障害者対応の[[便器#腰掛大便器(洋式・洋風大便器)|洋式便所]]とし<ref name="294-95"/>、男子用小便所を併設した<ref name="360-33"/>。また、列車内専用の[[車椅子]]を2号車に常備した<ref name="360-33"/>。

=== 主要機器 ===
電装品や台車については、[[国鉄213系電車|213系電車5000番台]]や[[JR東海311系電車|311系電車]]で採用実績のあるものを採用した<ref name="360-33"/>。

[[主電動機]]については、出力120kWの[[直巻整流子電動機|直流直巻補極付電動機]]を採用し、各電動台車に2台ずつ装架した。クモハ371形・モハ370形はC-MT61A形<ref name="360-28"/>、モハ371形ではC-MT64A形を使用した<ref name="360-33"/>。7両中5両が電動車となり、御殿場線内の急勾配においても100km/h以上の速度で登坂が可能な性能を有する<ref name="360-33"/>。主回路[[主制御器|制御装置]]についても採用実績のある回生ブレーキ機能付[[界磁添加励磁制御]]方式で<ref name="360-28"/>、クモハ371形に搭載されているのはCS57A形<ref name="360-28"/>、モハ371形に使用されているのはC-CS59A形である<ref name="360-33"/>。

[[File:Truck C-DT56A.jpg|thumb|C-DT59形台車]]
[[鉄道車両の台車|台車]]は、動力台車がC-DT59形<ref name="360-34"/>、付随台車がC-TR243形で<ref name="360-34"/>、いずれの台車も既に採用実績のあるヨーダンパ付軸ばね式軽量空気ばねボルスタレス台車である<ref name="294-95"/>。付随台車にはアンチローリング装置を設けた<ref name="294-95"/>。

[[集電装置]](パンタグラフ)は、菱形のC-PS24A形をクモハ371形とモハ371形に設置した<ref name="360-28"/><ref name="360-33"/>。

[[エアー・コンディショナー|冷房装置]]については、JR東海で標準となっている冷凍能力18,000[[カロリー|kcal]]/hのインバータクーラ<!--C-AU711?-->を各車両に2基ずつ搭載した<ref name="360-32"/>が、マイコン制御で冷暖房及び除湿と換気をコントロールする方式を採用し<ref name="360-32"/>、電子フィルターや脱臭装置も設けた<ref name="294-95"/>。暖房装置については座席下の脚台に吊り下げる方式として<ref name="294-95"/>、足元スペースを広くすることを図った<ref name="294-95"/>。

補助電源装置は、出力130kWの静止形インバータ (SIV) であるSC25A形<ref name="360-34"/>をモハ370形とモハ371形に搭載した<ref name="360-28"/>が、これも311系で採用実績がある機器である<ref name="360-34"/>。電動空気圧縮機 (CP) と蓄電池についてはモハ370形に搭載した<ref name="360-28"/>。

運転台の主幹制御器はJR東海で初採用となる右手操作のワンハンドル式を採用した<ref name="360-33"/>。松田での乗務員交代の際に保安装置の切り替えをマスコンキー1本で可能とする装置を設置した<ref name="360-33"/>。運転台のケーシングはつや消しのダークグレーとし<ref name="294-96"/>、運転中に使用しない機器はケーシング内に格納した<ref name="294-96"/>。

== 沿革 ==
{{Double image aside|right|JRC-EC371-Asagiri.jpg|180|JRC EC371 Tokaido.jpg|180|連絡線経由で小田急に乗り入れる371系|「ホームライナー」に使用される371系}}
1991年3月16日から運用を開始した。基本運用は、「ホームライナー」で静岡から沼津まで営業を行い<ref name="297-35"/>、沼津と新宿の間を「あさぎり2号」→「あさぎり3号」→「あさぎり6号」→「あさぎり7号」で2往復し<ref name="297-35"/>、いったん[[三島駅|三島]]に[[回送]]されてから「ホームライナー」で[[浜松駅|浜松]]まで運行した後に「ホームライナー」で静岡に戻る運用が組まれた<ref name="297-35"/><ref group="注釈">ただし、土休日ダイヤでは三島から静岡行きの「ホームライナー」の運用に入り、浜松までは運行しなかった。</ref>。この運用は登場以来ほとんど変更はなかったが、[[2009年]]3月14日のダイヤ改正以降は「あさぎり7号」到着後の「ホームライナー」が沼津始発に変更された<ref>{{Cite web|author=|date=2009-03-17|url=http://railf.jp/news/2009/03/17/120100.html|title=371系、三島乗入れ終了|work=[http://railf.jp/ railf.jp]|publisher=[[交友社]]|language=日本語|accessdate=2011-11-18}}</ref>ため、沼津から三島までの回送運用がなくなった。

371系は1編成しかないため、検査の際には「あさぎり」全列車にRSE車が運用される<ref name="297-25">[[#松本297|『鉄道ジャーナル』通巻297号 p.25]]</ref>。RSE車は「ホームライナー」には使用されず<ref name="2005-56">[[#生方2005|『小田急ロマンスカー総覧』 p.56]]</ref>、165系電車<ref name="1994-111112">[[#生方2005|『小田急ロマンスカー物語』 pp.111-112]]</ref>や[[JR東海313系電車|313系電車]]<ref>{{Cite web|author=|date=2009-01-27|url=http://railf.jp/news/2009/01/27/115000.html|title=“あさぎり”の371系運用を「RSE」が代走|work=[http://railf.jp/ railf.jp]|publisher=[[交友社]]|language=日本語|accessdate=2011-11-18}}</ref>などが「ホームライナー」に使用された実績がある。また、車両故障や不通の際には、一部区間を運休の上、小田急線内のみを小田急の特急車両で運行することがあった<ref>{{Cite web|author=|date=2010-11-26|url=http://railf.jp/news/2010/11/26/110900.html|title=“あさぎり”を「LSE」が代走|work=[http://railf.jp/ railf.jp]|publisher=[[交友社]]|language=日本語|accessdate=2011-11-18}}</ref>。なお、[[鉄道車両の検査|定期検査]]は[[東海旅客鉄道名古屋工場|名古屋工場]]へ入場する<ref>{{Cite web|author=|date=2011-03-23|url=http://railf.jp/news/2011/03/23/175400.html|title=371系が名古屋工場から出場|work=[http://railf.jp/ railf.jp]|publisher=[[交友社]]|language=日本語|accessdate=2011-11-18}}</ref>。

[[2003年]]4月6日から、小田急の座席予約システムが更新されると同時に、それまで連番方式だった座席番号の表示が、窓側をA席・D席、通路側をB席・C席とする表示方式に変更された<ref name="829-242">[[#岸上829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.242]]</ref>ため、371系の車内の座席番号表示も変更された。また、2009年時点では、[[集電装置|パンタグラフ]]が菱形のC-PS24A形からシングルアーム式に交換されている<ref>{{Cite web|author=[[東海旅客鉄道]]|url=http://recommend.jr-central.co.jp/others/museum/train/express/detail_02_04/index.html|title=371系|work=[http://recommend.jr-central.co.jp/others/museum/train/index.html JR東海車両図鑑]|publisher=]|language=日本語|accessdate=2011-11-18}}</ref>ほか、2号車(モハ370-101)の15番の座席が車椅子対応で1人がけ座席に変更されており<ref name="t2009-253">[[#時刻表2009|『小田急時刻表』 (2009) p.253]]</ref>、定員が2名減少している。

[[2011年]]10月17日、JR東海が「あさぎり」から2012年3月限りで371系を運用から外し、団体専用車両として2012年秋以降に運行する予定と報じられた<ref name="ats20111018"/>。

== 編成表 ==
; 凡例 : Mc …[[制御車|制御電動車]]、M …[[動力車|電動車]]、T…[[付随車]]、CON…[[主制御器|制御装置]]、SIV…補助電源装置、CP…[[圧縮機|電動空気圧縮機]]、PT…[[集電装置]]、BT…[[蓄電池]]<br/>乗 …乗務員室、グ…グリーン席、販…車販準備室、WC…[[列車便所|トイレ]]・[[洗面器#洗面台・洗面所|化粧室]]、電…[[公衆電話]]
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:80%; margin:1em 0em 2em 3em;"
|-
|-
| style="background-color:#ccc;"|&nbsp;
|style="border-bottom:solid 3px #003F6C; background-color:#E7E7E8;"|&nbsp;
| colspan="7" style="background-color:#eee;"|{{TrainDirection|沼津|新宿}}
|style="border-bottom:solid 3px #003F6C;" colspan="7"|{{TrainDirection|[[浜松駅|浜松]]・[[静岡駅|静岡]]・[[沼津|沼津]]|[[新宿駅|新宿]]・[[三島駅|三島]]}}
|-
|-
!号車
| style="background-color:#ddd;"|'''号車'''
| 1 || 2 || 3 || 4 || 5 || 6 || 7
| style="width:8em;"| 1
| style="width:8em;"| 2
| style="width:12em;"| 3
| style="width:12em;"| 4
| style="width:8em;"| 5
| style="width:8em;"| 6
| style="width:8em;"| 7
|-
|-
!形式
| style="background-color:#ddd;"|'''車両番号'''
| '''クモハ371''' || '''モハ370''' || '''サロハ371''' || '''サロハ371''' || '''モハ371''' || '''モハ370''' || '''クモハ371'''
|'''クモハ371'''-101
|'''モハ370'''-101
|'''サロハ371'''-101
|'''サロハ371'''-1
|'''モハ371'''-201
|'''モハ370'''-1
|'''クモハ371'''-1
|-style="border-bottom:solid 4px #36c;"
| style="background-color:#ddd;"|'''形式'''
|クモハ371形<br />100番台<br /> (Mc1)
|モハ370形<br />100番台<br /> (M'1)
|サロハ371形<br />100番台<br /> (Tsd1)
|サロハ371形<br />0番台<br /> (Tsd)
|モハ371形<br />200番台<br /> (M2)
|モハ370形<br />0番台<br /> (M')
|クモハ371形<br />0番台<br /> (Mc)
|-
|-
!
! rowspan="2"|客席
|[[ファイル:JRC Kumoha371-101.jpg|70px]]||[[ファイル:JRC Moha370-101.jpg|70px]]||[[ファイル:JRC Saroha371-101.jpg|70px]]||[[ファイル:JRC Saroha371-1.jpg|70px]]||[[ファイル:JRC Moha371-201.jpg|70px]]||[[ファイル:JRC Moha370-1.jpg|70px]]||[[ファイル:JRC Kumoha371-1.jpg|70px]]
| rowspan="2"|普通席<br />(60席)
| rowspan="2"|普通席<br />(58席)
| style="background-color:#cf9"|'''(2階)'''<br />グリーン席(32席)
| style="background-color:#cf9"|'''(2階)'''<br />グリーン席(32席)
| rowspan="2"|普通席<br />(68席)
| rowspan="2"|普通席<br />(60席)
| rowspan="2"|普通席<br />(60席)
|-
|-
!style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"|区分
|'''(1階)'''<br />普通席(18席)
|style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| Mc ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| M' ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| T<small>SD</small> ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| T<small>SD</small> ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| M ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| M' ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| Mc
|'''(1階)'''<br />普通席(18席)
|-
|-
!車両番号
!その他の<br />車内設備
| クモハ371-101|| モハ370-101 || サロハ371-101 || サロハ371-1 || モハ371-201 || モハ370-1 || クモハ371-1
|&nbsp;
|トイレ、洗面所、[[車椅子スペース]]
|'''(沼津側車端部)'''<br />[[車内販売]]カウンター
|'''(新宿側車端部)'''<br />車内販売カウンター
|&nbsp;
|トイレ、洗面所
|&nbsp;
|-
|-
!搭載機器
!製造所
| CON,PT || SIV,CP,BT || &nbsp; || &nbsp; || SIV,CON,PT || SIV,CP,BT || CON,PT
|colspan="2"|日立製作所
|-
|colspan="2"|川崎重工業
!style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"|自重
|colspan="3"|日本車輌製造
|style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| 40t ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| 39t ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| 39t ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| 38t ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| 38t ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| 39t ||style="border-bottom:solid 3px #003F6C;"| 40t
|-
!車内設備
| 乗 || WC || グ、販、電 || グ、販、電 || &nbsp; || WC || 乗
|-
!定員
| 60 || 60→58 || 32+18 || 32+18 || 68 || 60 || 60
|}
|}


== 脚注 ==
* クモハ371形
{{脚注ヘルプ}}
** 0番台
*: [[制御車|制御]][[動力車|電動車]]で、新宿寄り先頭車の'''7号車'''。モハ370-1とユニットを組む。パンタグラフ搭載。座席数は60席。
** 100番台
*: 制御電動車で、沼津寄り先頭車の'''1号車'''。向きは0番台と逆であり、モハ370-101とユニットを組む。基本構成は0番台と同じ。
* モハ370形
** 0番台
*: 中間電動車で'''6号車'''。インバータ方式の補助電源装置<!--211系5000番台と同一のDC-DCコンバータでは?-->と空気[[圧縮機]]を搭載する。クモハ371-1とユニットを組む。[[便器#和式大便器(和風大便器)|和式]][[列車便所|トイレ]]と[[便器#小便器|男性専用トイレ]]・[[洗面器#洗面台・洗面所|洗面所]]が設置されている。座席数は60席。
** 100番台
*: 中間電動車で'''2号車'''。向きは0番台と逆であり、クモハ371-101とユニットを組む。[[バリアフリー]]対応車で、[[車椅子]]対応の[[便器#腰掛大便器(洋式・洋風大便器)|洋式]]トイレと男性専用トイレ・洗面所が設置されている。[[2004年]](平成16年)に、一番新宿寄りの座席(15番席)が車椅子対応の1人掛席に交換されており、0番台より座席数が2席少ない58席となっている。
* モハ371形 200番台
*: 1M方式の中間電動車で'''5号車'''。パンタグラフ付き。インバータ方式の補助電源と空気圧縮機を搭載する。座席数は68席。
* サロハ371形
** 0番台
*: 2階が[[グリーン車]]、1階が[[普通車 (鉄道車両)|普通車]]構造のダブルデッカー式の[[付随車]]で'''4号車'''。[[売店]]が設置されている。かつては[[テレホンカード]]式の[[公衆電話]]が設置されていたが、2007年3月17日限りで使用停止ののち撤去された。このため小田急線内で[[小田急50000形電車|小田急50000形「VSE」]]・[[小田急60000形電車|60000形「MSE」]]とともに公衆電話の設置がない特急車両となっている。小田急20000形との相違点が最も多いのが本車両で、階下普通席が、小田急20000形では4人向い合せのセミコンパートメント席が3区画(12席)となっているのに対し、本車両では1+2配列のリクライニングシート18席となっている。この設計思想は、新幹線100系車両に相通じるものがある。グリーン席の設備には読書灯、スポット空調吹出口、オーディオコントロールパネル、係員呼出ボタンがある。かつては[[液晶ディスプレイ|液晶モニタ]]が各座席に設置され、[[衛星放送]]などを放送するサービスも行われていたが、現在は中止されており、液晶モニタも撤去している。
*: 階下席の側窓の日除けは横引きプリーツ[[カーテン]]でなくフリーストップ式のロールカーテンになっている。
*: 小田急線との[[デッドセクション]]でのサービス電源確保のため、[[無停電電源装置|無停電給電装置]]が搭載されている。
** 100番台
*: 2階がグリーン車、1階が普通車構造のダブルデッカー式の付随車で'''3号車'''。車両の向きは0番台と逆であるが、座席の配列は0番台とともに海側が1人掛席である。3号車と4号車の間は2階フロアレベルでの移動となり、階下席の奥は行き止まりになっている。突当りは非常用の避難口になっていて、[[プラットホーム|ホーム]]レベルで外に出られる緊急用扉が0番台とともに海側に設けられている。そのため2階客席に避難口のスペースが出っ張ってしまい、海側1人掛席が1席少なくなっている(現在はこの部分はブックラックとして使用されている)。階上・階下席とも、座席間隔は1,100mmとなっておりグリーン席は一般的な特急用車両 (1,160mm) よりも狭い値となっている。しかし普通席は他車より広い(他車は1,000mm)。
*: 階下席の側窓の日除けがロールカーテンになっているのは0番台と同様である。


=== 注釈 ===
<gallery style="font-size:90%;">
{{Reflist|group="注釈"}}
ファイル:Plugdoor.JPG|客用扉にはプラグドアが採用されている
ファイル:JRC-Saroha371-Greencar.jpg|2階建グリーン車部分
ファイル:Green Car of JR 371.jpg|1+2配列のグリーン車内
ファイル:Green Car's Seat of JR 371.JPG|グリーン席
ファイル:First Floor Inside of JR 371.jpg|ダブルデッカー1階部の1+2配列の普通車内
ファイル:Inside of JR 371.jpg|2+2配列の普通車内
ファイル:JRC-EC371-inside-Seat-Economy.jpg|普通席
</gallery>
<!--「形式紹介」と、記述がカブりませんか?-->


== 運用 ==
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
{{Double image aside|right|JRC-EC371-Odakyu-Line.jpg|180|JRC EC371 Tokaido satta.jpg|180|小田急線内を走る371系<br/>(2007年6月9日 / 本厚木駅 - 愛甲石田駅間)|東海道本線で「ホームライナー」に運用される371系(2011年11月4日 / 由比駅 - 興津駅間)}}
2010年3月時点の本系列の運用は次のとおり。ただし、1編成のみであることから、[[鉄道車両の検査|検査]]時などは「あさぎり」を小田急20000形が、「[[ホームライナー#東海旅客鉄道(JR東海)|ホームライナー]]」を373系または[[乗車整理券|乗車整理料金]]不要の[[快速列車]]に振り替えて[[JR東海313系電車|313系]]や211系が代走する。なお、代走日が1日のみの時は、「ホームライナー沼津」2号に使用後に[[静岡車両区]]へ戻して検査を実施し、終了後の夜に再び沼津へ[[回送]]して「ホームライナー浜松」5号から運用に復帰というパターンがとられる。

「ホームライナー」では3・4号車(2階グリーン席・1階普通席)の2階は通路としての利用はできるが、着席はできない(1階は着席可能)。


== 参考文献 ==
; 平日
=== 書籍 ===
: 「ホームライナー沼津」2号 - 「あさぎり」2号 - 「あさぎり」3号 - 「あさぎり」6号 - 「あさぎり」7号 - 「ホームライナー浜松」5号 - 「ホームライナー静岡」8号
* {{Cite book|和書|author = 生方良雄|authorlink = |coauthors = [[諸河久]]|year = 1994|title = 小田急ロマンスカー物語|publisher = 保育社|ref = 生方1994|id = |isbn = 978-4586180295}}
; 休日
* {{Cite book|和書|author = 生方良雄|authorlink = |coauthors = |year = 2005|title = 小田急ロマンスカー総覧|publisher = [[大正出版]]|ref = 生方2005|id = |isbn = 4811706552}}
: 「ホームライナー沼津」2号 - 「あさぎり」2号 - 「あさぎり」3号 - 「あさぎり」6号 - 「あさぎり」7号 - 「ホームライナー静岡」35号
* {{Cite book|和書|author = |authorlink = |coauthors = |year = 2009|title = 2009 小田急時刻表|publisher = 交通新聞社|ref = 時刻表2009|id = |isbn = 9784330083097}}
なお、[[2009年]][[3月13日]]まで、「ホームライナー」は[[三島駅]]始発であったため、「あさぎり」7号の沼津到着後に、三島まで回送列車を運転していたが、[[2001年から2010年のJRダイヤ改正#2009年(平成21年)|同年3月14日のダイヤ改正]]から「ホームライナー」も沼津始発に変更された。


=== 雑誌記事 ===
日本車輌豊川製作所での落成直後には[[飯田線]]を自走しており、また定期検査は[[東海旅客鉄道名古屋工場|名古屋工場]]で行われることから、名古屋地区周辺でも試運転が行われていたことがある。
* {{Cite journal|和書|author=大幡哲海 |year=1999 |month=12 |title=私鉄車両めぐり164 小田急電鉄 |journal=[[鉄道ピクトリアル]] |issue=679 |pages= 201-243 |publisher=[[電気車研究会]] |ref = 大幡679}}

* {{Cite journal|和書|author=岸上明彦 |year=2010 |month=1 |title=小田急電鉄現有車両プロフィール |journal=鉄道ピクトリアル |issue=829 |pages= 241-295 |publisher=電気車研究会 |ref = 岸上829}}
== 今後の予定 ==
* {{Cite journal|和書|author=鈴木厚志 |year=1991 |month=4 |title=JR東海371系特急電車 |journal=[[鉄道ジャーナル]] |issue=294 |pages= 92-96 |publisher=鉄道ジャーナル社 |ref = 鈴木294}}
[[2012年]](平成24年)3月をもって371系は「あさぎり」としての運行を終了し、[[団体専用列車]]用に改造・転用する予定で、JR東海は車両を新造せず「あさぎり」は全て小田急の車両で運行することが報じられた<ref>[http://www.at-s.com/news/detail/100069491.html 「371系」来春引退 JR東海の特急「あさぎり」] - 静岡新聞「アットエス」 2011年10月18日</ref>。2011年10月現在、JR東海と小田急電鉄はこの件に関する公式発表を行っていない。
* {{Cite journal|和書|author=[[須田寛]] |year=1991 |month=7|title=新特急あさぎり 経緯と期待 |journal=鉄道ジャーナル |issue=297 |pages= 34-35 |publisher=鉄道ジャーナル社 |ref = 須田297}}

* {{Cite journal|和書|author=[[東海旅客鉄道]](株)車両部車両課 |year=1991 |month=4 |title=371系直流特急形電車 |journal=[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]] |issue=360 |pages= 27-34 |publisher=[[交友社]] |ref = RF360}}
== 脚注 ==
* {{Cite journal|和書|author=細谷和一郎 |year=1999 |month=12 |title=営業設備とサービス |journal=鉄道ピクトリアル |issue=679 |pages= 22-25 |publisher=電気車研究会 |ref = 細谷679 }}
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* {{Cite journal|和書|author=松本典久 |year=1991 |month=7 |title=あさぎり 2つの顔の新特急 |journal=鉄道ジャーナル |issue=297 |pages= 22-33 |publisher=鉄道ジャーナル社 |ref = 松本297}}
{{Reflist|2}}
* {{Cite journal|和書|author= |year=2010 |month=3 |title=新宿発直通特急のその後 |journal=鉄道ジャーナル |issue=521 |pages= 36-47 |publisher=鉄道ジャーナル社 |ref = RJ521}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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* [[小田急ロマンスカー]]
* [[小田急ロマンスカー]]
* [[小田急20000形電車]]
* [[小田急20000形電車]]
{{-}}

== 外部リンク ==
* [http://recommend.jr-central.co.jp/others/museum/train/express/detail_02_04/index.html JR東海車両図鑑 371系(JR東海公式)]
* [http://www.g-mark.org/search/Detail?id=18866&lang=ja 1991年度グッドデザイン賞受賞の概要]
* [http://www.n-sharyo.co.jp/business/tetsudo/pages/jrc371.htm JR東海371系特急電車「あさぎり」] - [[日本車輌製造]]
* [http://www62.tok2.com/home/tsubame787/seat_371.html 座席探訪 371系あさぎり]


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2011年11月25日 (金) 13:51時点における版

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JR東海371系電車
371系電車(2009年10月23日 / 松田駅
基本情報
製造所 日本車輌製造[1]川崎重工業[1]日立製作所[1]
主要諸元
編成 7両固定編成
軌間 1,067mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
設計最高速度 145km/h[2]
最高速度 120km/h[2]
起動加速度 2.0km/h/s[2]
減速度(常用) 4.0km/h/s[2]
減速度(非常) 4.0km/h/s[2]
車両定員 408名[3]
(うちグリーン席64名)
編成重量 273t[3]
最大寸法
(長・幅・高)
21,250mm×2,900mm×4,057mm(Mc)[2]
20,000mm×2,900mm×3,940mm(M'-1)[2]
20,000mm×2,900mm×4,058mm(M'-101)[2]
20,000mm×2,900mm×4,023mm(M)[2]
20,250mm×2,900mm×4,055mm(TSD[2]
台車 C-DT59(動力台車)[2]
C-TR243(付随台車)[2]
主電動機 C-MT61A (Mc,M') [4]
C-MT64A (M) [5]
主電動機出力 120kW直流直巻補極付電動機[3]
歯車比 80:19=4.21[3]
制御装置 CS57A[4]・C-CS59A[5]
直並列組合せ抵抗制御界磁添加励磁制御
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ[3]
直通予備ブレーキ抑速ブレーキ・勾配起動ブレーキ・応荷重装置付)
保安装置 ATS-ST[3]OM-ATS[3]
備考 設計最高速度は平坦線均衡速度を記述
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371系電車(371けいでんしゃ)は、東海旅客鉄道(JR東海)が1991年に運用を開始した特急形直流電車である。

御殿場線小田急電鉄(小田急)小田原線相互直通運転するために登場した車両で、JR東海となってから初めて新造した在来線用特急形電車である[6]。7両固定編成×1編成のみが製造され、当時の通商産業省より1991年度グッドデザイン商品に選定された[1]。登場以来、特急「あさぎり」と静岡地区の「ホームライナー」のみに使用されていた[7]が、2012年3月で特急運用から外れて団体専用車両となる予定と報道されている[8]

本項では以下、日本国有鉄道は「国鉄」、小田急3000形は「SE車」、小田急20000形は「RSE車」と表記する。

登場の経緯

御殿場線では、小田急が1950年から新宿から直通する準急列車を運行しており[9]、御殿場線が電化された1968年7月以降は8両連接から5両連接に短縮したSE車を使用した連絡急行「あさぎり」として御殿場線に乗り入れていた[10]。1968年7月からは国鉄でも、東京から東海道本線経由で直通する急行列車として「ごてんば」を165系電車によって運行していた[11]が、所要時間が「あさぎり」と比較して長かったこともあって乗客が定着せず[11]1985年3月13日限りで廃止されていた。一方、1964年ごろからは乗り入れ区間を沼津まで延長するという要望が出ていた[11]が、当時の御殿場線は御殿場から裾野までの約15kmにわたって列車交換設備がなく[11]、国鉄の財政的な問題もあって進展をみなかった[11]

国鉄分割民営化後の1988年7月に、小田急からJR東海に対して車齢30年を超えたSE車の更新について申し入れがあったこと[12]や、御殿場線の利用者が増加したことに対応して1989年富士岡岩波に列車交換設備が新設された[12]ことがきっかけとなり、小田急とJRの間で相互直通運転に関する協議が進められることになった[12]。この協議の中で、特急に格上げした上で運行区間も沼津 - 新宿間に延長し[13]、あわせて2社がそれぞれ新形車両を導入した上で相互直通運転に変更することとなった[13]

この頃のJR東海では、優等列車の車両置き換えによるイメージチェンジとあわせてイベントや観光開発を推進することで路線の総合改善を図るという手法を行なっており[12]、既に高山本線で実績をあげていた[12]。御殿場線においても同様の手法がとられることになり、新しい観光ルートの設定による広域観光の振興[12]、既存ルートとあわせた需要喚起[12]、赤字路線である御殿場線のイメージアップと活性化[12]という期待をかけ、近代的なイメージの車両を送り出すことになった[12]

こうして、「ソフトで洗練されたデザイン」をコンセプトとして[14]、小田急との「相互直通運転車両の規格仕様に関する協定書」に基づき[15]、基本仕様を同社RSE車と統一した[16]車両として登場したのが371系である。

車両概説

本節では、登場当時の仕様を記述する。

371系は7両固定編成で、系列中に4形式が存在する。編成については、巻末の編成表を参照のこと。

クモハ371形
両端の先頭車となる制御電動車 (Mc) で、集電装置と主制御装置を搭載する[4]。新宿側先頭車(7号車)が0番台[2]、沼津側先頭車(1号車)が100番台[2]
モハ370形
クモハ371形と電動車ユニットを構成し、2号車・6号車に組み込まれる中間電動車 (M') で、補助電源装置を搭載する[4]。番号区分は同じユニットのクモハ371形と同様で、新宿側6号車が0番台[2]、沼津側2号車が100番台[2]
モハ371形
5号車に組み込まれる単独の中間電動車 (M) で、集電装置・主制御装置・補助電源装置を搭載する[4]。1両しか存在しないが、番号区分は200番台となっている[2]
サロハ371形
3・4号車に組み込まれる2階建て構造(ダブルデッカー)普通グリーン合造付随車 (TSD) 。新宿側(4号車)が0番台[2]、沼津側(3号車)が100番台[2]

車体

クモハ371形は車体長21,000mm・全長は21,250mm[2]、モハ370形とモハ371形は車体長19,500mm・全長20,000mm[2]、サロハ371形が車体長19,750mm・全長20,250mm[2]で、いずれも車体幅は2,900mmの全金属製車体である[3]。屋根と出入台・売店部分の床板はステンレス製[14]、それ以外は普通鋼製である[14]

先頭部の形状は、3次元曲線で構成された流線形非貫通構造で[14]、6枚の3次元曲面ガラスで構成し[3]、屋根部分まで一体感のあるデザインとした[3]。先頭部下部には格納式連結器を装備する[4]。サロハ371形はボリューム感を持たせるために中央部の構体下部を膨らませた[3]ため、1車両で2種類の車体断面を有する[3]

プラグドア サロハ371の中央部は縦の連続窓風
プラグドア
サロハ371の中央部は縦の連続窓風

側面客用扉は各車両とも1箇所で、外引き式のプラグドアが採用され[17]、扉幅は800mm幅とした[18]。限定した扉を扱うケース[注釈 1]に対応し[17]、乗務員室の操作で半自動開閉指令を行い、添乗員が各乗降口に設置されたスイッチ[注釈 2]で開閉する半自動扱いも可能としている[17]

普通車の側面窓は、眺望に配慮し、幅1,650mm×高さ1,020mmのサイズとして[18]、窓柱の幅を350mmとして配置した[18]。窓の上辺は車内の荷物棚下端で[3]、窓の下端は座席の肘掛より低い位置である[3]。サロハ371形の中央部は大型の曲面ガラスを縦の連続窓風に配置し、編成全体でダイナミックなアクセントとなることをねらった[3]。車両間の貫通路は750mm幅となっている[18]が、2両のサロハ371形の間[注釈 3]は2階部分で貫通させており[19]、この箇所のみ650mm幅(有効幅550mm)とした[20]。2階建て車両の1階海側には非常口を設置した[3]

塗装デザインは新幹線100系電車と同一の色[注釈 4]を使用したデザインとした。側面方向幕は2種類の配置があり、クモハ371形とモハ371形は列車名と座席種別を横に並べたタイプ[5]、モハ370形とサロハ371形では列車名と座席種別を縦に並べたタイプである[5]

内装

全車両に共通する内容として、室内照明はダブルデッカーの1階も含めて全て間接照明を採用し[3]、床は全てカーペット敷きとした[17]。また、客室端部にはLED式の情報案内表示器を設置した[3]。折り返し駅での座席方向転換の時間を短縮するため、電動式の一斉回転機構を採用した[17]。また、御殿場線と小田急小田原線を結ぶ連絡線にはデッドセクションが存在するため[2]、セクション通過時に室内灯が消灯しないようにインバータ付直流蛍光灯を採用した[2]。座席番号表示は、窓側と通路側をアルファベットで分ける国鉄時代からの方式ではなく、小田急と同様に車両ごとの連番とする方式である[21]

グリーン車車内 普通車車内
グリーン車車内
普通車車内

グリーン車の室内色は「季節感」をテーマとした[17]。座席は2人がけ座席の幅が幅1,250mm、1人がけ座席の幅は660mmのフリーストップ式回転リクライニングシートを採用し[22]、海側を1人がけ座席としたシートピッチ1,100mmで配置した[22]。座席には大型の背面テーブルとフットレストを装備し[22]、肘掛にインアームテーブル・液晶テレビ等のAV装置やスチュワーデスコールスイッチを組み込んだ[22]。座席上部にはスポット式空調吹き出し口と読書灯を設置した[19]

普通車の室内色は、グレーと淡いピンクによって、明るく落ち着いたデザインとすることをねらった[17]。座席は回転式の2人がけフリーストップ式リクライニングシートを採用し[3]、シートピッチ1,000mmで配置した[3]。全ての座席には背面テーブルとフットレストを装備し、肘掛はレザー張りとした[3]。2人がけ座席では車両の縦列で表地の色調を変更した[3]。なお、サロハ371形の1階席のみシートピッチ1,100mmとし[22]、1階席海側のみ1人がけ座席を配置した[22]。また、サロハ371形の1階席窓下には前後方向に細長いテーブルと小物置き場を設置した[22]

サロハ371形1階席車内 1階席窓下にテーブルと小物置き場を設けた サロハ371形の出入台
サロハ371形1階席車内
1階席窓下にテーブルと小物置き場を設けた
サロハ371形の出入台

サロハ371形の出入台(デッキ)は車販準備室や客室への階段などが配置されるオープンな機能空間としてデザインした[22]。2階客室への階段はメイン通路となるので幅1mと広くとり[22]、手すり部分には大型のガラスを収めた[22]。この階段の海側を電話コーナー[22]、山側を1階客室への階段とした[22]車内販売の基地となる車販準備室はサロハ371形の平屋部分に設け[22]、海側にカウンターを設置し[22]、山側には折り戸の収納庫を設けた[22]。カウンター内には電子レンジや冷蔵庫を備え、簡単な調理が可能である[14]

モハ370形にはトイレ化粧室を設けた。0番台(6号車)では和式便所、100番台(2号車)では身体障害者対応の洋式便所とし[3]、男子用小便所を併設した[5]。また、列車内専用の車椅子を2号車に常備した[5]

主要機器

電装品や台車については、213系電車5000番台311系電車で採用実績のあるものを採用した[5]

主電動機については、出力120kWの直流直巻補極付電動機を採用し、各電動台車に2台ずつ装架した。クモハ371形・モハ370形はC-MT61A形[4]、モハ371形ではC-MT64A形を使用した[5]。7両中5両が電動車となり、御殿場線内の急勾配においても100km/h以上の速度で登坂が可能な性能を有する[5]。主回路制御装置についても採用実績のある回生ブレーキ機能付界磁添加励磁制御方式で[4]、クモハ371形に搭載されているのはCS57A形[4]、モハ371形に使用されているのはC-CS59A形である[5]

C-DT59形台車

台車は、動力台車がC-DT59形[2]、付随台車がC-TR243形で[2]、いずれの台車も既に採用実績のあるヨーダンパ付軸ばね式軽量空気ばねボルスタレス台車である[3]。付随台車にはアンチローリング装置を設けた[3]

集電装置(パンタグラフ)は、菱形のC-PS24A形をクモハ371形とモハ371形に設置した[4][5]

冷房装置については、JR東海で標準となっている冷凍能力18,000kcal/hのインバータクーラを各車両に2基ずつ搭載した[17]が、マイコン制御で冷暖房及び除湿と換気をコントロールする方式を採用し[17]、電子フィルターや脱臭装置も設けた[3]。暖房装置については座席下の脚台に吊り下げる方式として[3]、足元スペースを広くすることを図った[3]

補助電源装置は、出力130kWの静止形インバータ (SIV) であるSC25A形[2]をモハ370形とモハ371形に搭載した[4]が、これも311系で採用実績がある機器である[2]。電動空気圧縮機 (CP) と蓄電池についてはモハ370形に搭載した[4]

運転台の主幹制御器はJR東海で初採用となる右手操作のワンハンドル式を採用した[5]。松田での乗務員交代の際に保安装置の切り替えをマスコンキー1本で可能とする装置を設置した[5]。運転台のケーシングはつや消しのダークグレーとし[22]、運転中に使用しない機器はケーシング内に格納した[22]

沿革

連絡線経由で小田急に乗り入れる371系 「ホームライナー」に使用される371系
連絡線経由で小田急に乗り入れる371系
「ホームライナー」に使用される371系

1991年3月16日から運用を開始した。基本運用は、「ホームライナー」で静岡から沼津まで営業を行い[12]、沼津と新宿の間を「あさぎり2号」→「あさぎり3号」→「あさぎり6号」→「あさぎり7号」で2往復し[12]、いったん三島回送されてから「ホームライナー」で浜松まで運行した後に「ホームライナー」で静岡に戻る運用が組まれた[12][注釈 5]。この運用は登場以来ほとんど変更はなかったが、2009年3月14日のダイヤ改正以降は「あさぎり7号」到着後の「ホームライナー」が沼津始発に変更された[23]ため、沼津から三島までの回送運用がなくなった。

371系は1編成しかないため、検査の際には「あさぎり」全列車にRSE車が運用される[21]。RSE車は「ホームライナー」には使用されず[24]、165系電車[25]313系電車[26]などが「ホームライナー」に使用された実績がある。また、車両故障や不通の際には、一部区間を運休の上、小田急線内のみを小田急の特急車両で運行することがあった[27]。なお、定期検査名古屋工場へ入場する[28]

2003年4月6日から、小田急の座席予約システムが更新されると同時に、それまで連番方式だった座席番号の表示が、窓側をA席・D席、通路側をB席・C席とする表示方式に変更された[29]ため、371系の車内の座席番号表示も変更された。また、2009年時点では、パンタグラフが菱形のC-PS24A形からシングルアーム式に交換されている[30]ほか、2号車(モハ370-101)の15番の座席が車椅子対応で1人がけ座席に変更されており[31]、定員が2名減少している。

2011年10月17日、JR東海が「あさぎり」から2012年3月限りで371系を運用から外し、団体専用車両として2012年秋以降に運行する予定と報じられた[8]

編成表

凡例
Mc …制御電動車、M …電動車、T…付随車、CON…制御装置、SIV…補助電源装置、CP…電動空気圧縮機、PT…集電装置、BT…蓄電池
乗 …乗務員室、グ…グリーン席、販…車販準備室、WC…トイレ化粧室、電…公衆電話
 
号車 1 2 3 4 5 6 7
形式 クモハ371 モハ370 サロハ371 サロハ371 モハ371 モハ370 クモハ371
区分 Mc M' TSD TSD M M' Mc
車両番号 クモハ371-101 モハ370-101 サロハ371-101 サロハ371-1 モハ371-201 モハ370-1 クモハ371-1
搭載機器 CON,PT SIV,CP,BT     SIV,CON,PT SIV,CP,BT CON,PT
自重 40t 39t 39t 38t 38t 39t 40t
車内設備 WC グ、販、電 グ、販、電   WC
定員 60 60→58 32+18 32+18 68 60 60

脚注

注釈

  1. ^ 1999年7月までは、小田急線内で特急に乗車する際には乗車口を限定した上で、ホームで特急券を確認する乗車改札を行っていた(『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.25)。
  2. ^ 乗客の目につく場所には設置されていない。
  3. ^ 3号車と4号車の間。
  4. ^ 白3号ベースに、窓周りが青20号の帯。
  5. ^ ただし、土休日ダイヤでは三島から静岡行きの「ホームライナー」の運用に入り、浜松までは運行しなかった。

出典

  1. ^ a b c d 日本デザイン振興会. “Good Design Award”. 2011年11月18日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab 『鉄道ファン』通巻360号 p.34
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab 『鉄道ジャーナル』通巻294号 p.95
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 『鉄道ファン』通巻360号 p.28
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 『鉄道ファン』通巻360号 p.33
  6. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻521号 p.46
  7. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻521号 p.43
  8. ^ a b 「371系」来春引退 JR東海の特急「あさぎり」”. 「アットエス」. 静岡新聞 (2011年10月18日). 2011年10月18日閲覧。
  9. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻294号 p.99
  10. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻297号 p.30
  11. ^ a b c d e 『鉄道ジャーナル』通巻297号 p.34
  12. ^ a b c d e f g h i j k l 『鉄道ジャーナル』通巻297号 p.35
  13. ^ a b 『小田急ロマンスカー総覧』 p.50
  14. ^ a b c d e 『鉄道ファン』通巻360号 p.31
  15. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.277
  16. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.238
  17. ^ a b c d e f g h i 『鉄道ファン』通巻360号 p.32
  18. ^ a b c d 『鉄道ファン』通巻360号付図 (RF12301)
  19. ^ a b 『鉄道ファン』通巻360号 p.30
  20. ^ 『鉄道ファン』通巻360号付図 (RF12302)
  21. ^ a b 『鉄道ジャーナル』通巻297号 p.25
  22. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 『鉄道ジャーナル』通巻294号 p.96
  23. ^ 371系、三島乗入れ終了”. railf.jp. 交友社 (2009年3月17日). 2011年11月18日閲覧。
  24. ^ 『小田急ロマンスカー総覧』 p.56
  25. ^ 『小田急ロマンスカー物語』 pp.111-112
  26. ^ “あさぎり”の371系運用を「RSE」が代走”. railf.jp. 交友社 (2009年1月27日). 2011年11月18日閲覧。
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  28. ^ 371系が名古屋工場から出場”. railf.jp. 交友社 (2011年3月23日). 2011年11月18日閲覧。
  29. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.242
  30. ^ 東海旅客鉄道. “371系”. JR東海車両図鑑. ]. 2011年11月18日閲覧。
  31. ^ 『小田急時刻表』 (2009) p.253

参考文献

書籍

  • 生方良雄、諸河久『小田急ロマンスカー物語』保育社、1994年。ISBN 978-4586180295 
  • 生方良雄『小田急ロマンスカー総覧』大正出版、2005年。ISBN 4811706552 
  • 『2009 小田急時刻表』交通新聞社、2009年。ISBN 9784330083097{{ISBN2}}のパラメータエラー: 無効なISBNです。 

雑誌記事

  • 大幡哲海「私鉄車両めぐり164 小田急電鉄」『鉄道ピクトリアル』第679号、電気車研究会、1999年12月、201-243頁。 
  • 岸上明彦「小田急電鉄現有車両プロフィール」『鉄道ピクトリアル』第829号、電気車研究会、2010年1月、241-295頁。 
  • 鈴木厚志「JR東海371系特急電車」『鉄道ジャーナル』第294号、鉄道ジャーナル社、1991年4月、92-96頁。 
  • 須田寛「新特急あさぎり 経緯と期待」『鉄道ジャーナル』第297号、鉄道ジャーナル社、1991年7月、34-35頁。 
  • 東海旅客鉄道(株)車両部車両課「371系直流特急形電車」『鉄道ファン』第360号、交友社、1991年4月、27-34頁。 
  • 細谷和一郎「営業設備とサービス」『鉄道ピクトリアル』第679号、電気車研究会、1999年12月、22-25頁。 
  • 松本典久「あさぎり 2つの顔の新特急」『鉄道ジャーナル』第297号、鉄道ジャーナル社、1991年7月、22-33頁。 
  • 「新宿発直通特急のその後」『鉄道ジャーナル』第521号、鉄道ジャーナル社、2010年3月、36-47頁。 

関連項目

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  1. ^ 地球環境保全への貢献”. 東海旅客鉄道. 2023年11月29日閲覧。