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'''スラッシュ'''(Slash fiction)は、2人以上の男性間における幻想に焦点を当てた[[ファン・フィクション]]であり<ref name="SATW">Bacon-Smith, Camille. "Spock Among the Women." New York Times Sunday Book Review, November 16, 1986.</ref><ref name=VisCult>{{cite book|title=Visual Culture: Images and Interpretations|author=Norman Bryson, Michael Ann Holly, and Keith P. F. Moxey|pages=304–305|chapter=Feminism, Psychoanalysis, and Popular Culture|year=1994|publisher=Wesleyan University Press|isbn=0-8195-6267-X}}</ref>、しばしば性的要素が入る。題材となるキャラクターは、「カノン」の世界(「正典」、「正史」、ファン・フィクションの世界とは違う原作の公式な世界設定を指す)では性的関係のみならず友情関係にも引き込まれていないこともある。また、この言葉は女性キャラクター同士の場合に当てはめることもできるが、別ジャンルとして「フェムスラッシュ」という言葉を用いるファンもいる<ref name="Kustritz">{{cite journal |
'''スラッシュ'''(Slash fiction)は、2人以上の[[男性]]間における[[幻想]]([[ボーイズラブ]])に焦点を当てた[[ファン・フィクション]]であり<ref name="SATW">Bacon-Smith, Camille. "Spock Among the Women." New York Times Sunday Book Review, November 16, 1986.</ref><ref name=VisCult>{{cite book|title=Visual Culture: Images and Interpretations|author=Norman Bryson, Michael Ann Holly, and Keith P. F. Moxey|pages=304–305|chapter=Feminism, Psychoanalysis, and Popular Culture|year=1994|publisher=Wesleyan University Press|isbn=0-8195-6267-X}}</ref>、しばしば[[性的]]要素が入る。題材となる[[キャラクター]]は、「カノン」の[[世界]](「正典」、「[[正史]]」、ファン・フィクションの世界とは違う[[原作]]の[[公式]]な世界設定を指す)では性的関係のみならず[[友情]]関係にも引き込まれていないこともある。また、この言葉は[[女性]]キャラクター同士([[ガールズラブ]]、百合)の場合に当てはめることもできるが、別ジャンルとして「フェムスラッシュ」という言葉を用いるファンもいる<ref name="Kustritz">{{cite journal |
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| quotes = | last = Kustritz | first = Anne | year = 2003 | month = September | title = Slashing the Romance Narrative | journal = The Journal of American Culture | volume = 26 | issue = 3 | pages = 371–384 | doi = 10.1111/1542-734X.00098 }}</ref> 。書き手および |
| quotes = | last = Kustritz | first = Anne | year = 2003 | month = September | title = Slashing the Romance Narrative | journal = The Journal of American Culture | volume = 26 | issue = 3 | pages = 371–384 | doi = 10.1111/1542-734X.00098 }}</ref> 。書き手および[[読者]]の多くは女性である。 |
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かつては1人もしくはそれ以上の男性キャラクターが |
かつては1人もしくはそれ以上の男性キャラクターが露骨な[[肉体]]関係に巻きこまれる様子に重きを置いた作品が多かったが、現在は単に男性キャラクターが結びつくファンフィクションがスラッシュと呼ばれることが一般的になっている。 |
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名前の由来は、話の中での[[カップリング (同人)|カップリング]]を示す際に[[スラッシュ (記号)|スラッシュ記号(/)]]を入れたためである。なお、単なる友人関係の場合は[[アンパサンド|アンパサンド(&)]]が用いられる(たとえば、アメリカにおいてこうしたフィクションの始まりとなった[[スタートレック]]シリーズの[[ジェームズ・カーク]]船長と副長の[[スポック]]の間の性的関係を描くフィクションは[[:en:Kirk/Spock|Kirk/Spock]]あるいはK/S、性的関係抜きの友情を描くものはK&Sと書かれる)。 |
名前の由来は、話の中での[[カップリング (同人)|カップリング]]を示す際に[[スラッシュ (記号)|スラッシュ記号(/)]]を入れたためである。なお、単なる友人関係の場合は[[アンパサンド|アンパサンド(&)]]が用いられる(たとえば、アメリカにおいてこうしたフィクションの始まりとなった『[[スタートレック]]』シリーズの[[ジェームズ・T・カーク|ジェームズ・カーク]]船長と副長の[[スポック]]の間の性的関係を描くフィクションは[[:en:Kirk/Spock|Kirk/Spock]]あるいはK/S、性的関係抜きの友情を描くものはK&Sと書かれる)。 |
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== 歴史 == |
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一般的に、現在のスラッシュの大本となっているのは、『[[宇宙大作戦]](原題:Star Trek)』の[[ファン・フィクション]]のファン([[愛好家]])たちの集まり([[ファンダム]])において作られた "{{仮リンク|カーク/スポック|en|Kirk/Spock}}"の作品群であるとされている<ref name="SATW"/>。このような作品群は[[女性]]のファンが書いてきたとされており、[[1970年代]]末に初めて登場した<ref name="SATW"/><ref name=CHot20thcent799>{{cite book |title=The Cambridge history of twentieth-century English literature |last= Laura |first= Marcus|authorlink= |coauthors= Peter Nicholls|year=2004 |publisher= Cambridge University Press|page= 799|isbn=978-0-521-82077-6}}</ref>。 |
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スラッシュという名前の由来は、前述の K/S のように、2人の[[恋愛]]関係(しばしば性的な関係になることもある)を描いた話を書く際、その2人の名前の間に[[スラッシュ (記号)|スラッシュ記号(/)]]がはいっていることからきており、スラッシュや''K/S''といったことばは交互に使われてきた。このような[[二次創作]]は『[[特捜班CI-5]]』、『[[刑事スタスキー&ハッチ]]』, ''[[:en:Blake's 7]]''などのファン層にも広まり<ref name="Kustritz"/> 、ついには、スラッシュそのものを扱ったファンダムまで出来上がった<ref name = "Boyd">Boyd, Kelly (2001) [http://ir.lib.sfu.ca/dspace/handle/1892/8734 "One index finger on the mouse scroll bar and the other on my clit" : slash writers' views on pornography, censorship, feminism and risk]</ref><ref name="Normal Female Interest">Henry Jenkins, with Cynthia Jenkins and Shoshanna Green,"'[http://web.mit.edu/cms/People/henry3/bonking.html The Normal Female Interest in Men Bonking': Selections from Terra Nostra Underground and Strange Bedfellows],"in Cheryl Harris and Alison Alexander (eds.) Theorizing Fandom: Fans, Subculture, and Identity (Hampton Press, 1998).</ref> 。 |
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初期のスラッシュでは、カーク/スポックやスタスキー/ハッチのようにメインキャラクター同士のカップリングが多かった一方、 [[:en:Roj Blake|Blake]]/[[:en:Kerr Avon|Avon]] のように、脇役とのカップリングもあった<ref name=Tosenberger/>。 |
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なお、単なる友人関係の場合は[[アンパサンド|アンパサンド(&)]]が用いられる |
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初期の K/Sは、『宇宙大作戦』のファン全体には当初受け入れられず<ref name="sinclair-01">Jenna Sinclair, [http://www.beyonddreamspress.com/history.htm Short History of Kirk/Spock Slash]. Retrieved 2008-06-30.</ref>、後に[[ジョアンナ・ラス]]といった作家が論文の中でスラッシュについて研究・発表を行ったことで、学術的な研究地位が与えられた<ref>Russ, Joanna, "Pornography by Women for Women, With Love" in her book, ''Magic Mommas, Trembling Sisters, Puritans & Perverts''. New York: The Crossing Press: 1985.</ref><ref>Penley, Constance, "Feminism, Psychoanalysis,and the Study of Popular Culture." In Grossberg, Lawrence, ed., ''Cultural Studies'', Rutledge 1992, p. 479. A detailed examination of K/S in terms of (among many other things) feminism and feminist studies.</ref> 。 |
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スラッシュの登場から時がたつにつれて、同性愛に対する寛容や受容が進み、マスメディアにおける男性同性愛者に対する描写への不満がスラッシュの主題へと昇華しつつある。『スター・トレック』シリーズのスラッシュのファン層はいまだに重要視されている一方、SFやアクション・冒険もののテレビ番組や映画・小説のスラッシュのファン層も新たに発生してきた。 |
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=== スラッシュが発生しやすい作品 === |
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スラッシュの誕生以来、[[スペキュレイティブ・フィクション]]において作り込まれた女性キャラクターの登場が少ないことや、キャラクターの関係をファンが再解釈しやすいことなどから、そのようなジャンルからインスパイアを受けているスラッシュ作品が多い<ref>[[David Seed]] Ed., ''A Companion to Science Fiction'', "Science Fiction/Criticism" p. 57, ISBN 1-4051-1218-2</ref><ref name=CHot20thcent798/>。しかし、『[[刑事スタスキー&ハッチ]]』や『特捜班CI-5』などの場合は、スペキュレイティブ・フィクションの要素はない。 |
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スラッシュは大衆的なメディアで発生し、継続的に新作が出続けており、元の作品の人気とファンダムの活発さには相互関係がある。スラッシュの読者や書き手は、原作に忠実であろうとする傾向にあり、そうしたファン層が個々の2次創作ジャンル(ファンダム)を作り出す。<!--Slash fiction readers and writers tend to adhere closely to the canonical source of their fiction, and create a [[fandom]] for that particular source.--> |
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しかし、原作のファンではないが、スラッシュのファンであるという者もいる<ref>Green, Shoshanna, Cynthia Jenkings and Henry Jenkins. "Normal Female Interest in Men Bonking: Selections From 'The Terra Nostra Underground' and 'Strange Bedfellows'." Ed. C. Harris & A. Alexander. Theorizing Fandom: Fans, Subculture and Identity. New Jersey: Hampton, 1998: pp. 9–38.</ref>。 |
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=== インターネットとの邂逅 === |
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1990年代前半にインターネットが一般に普及するまで、スラッシュは入手が困難であった。その発表形態はファンによる非営利の[[同人誌]](しばしば「zine」と呼ばれる)しかなかった。こうした同人誌は印刷代のみの値段で、イベント会場で販売されていた。<ref name="Kustritz" /> |
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インターネットが普及したことにより、ファンや書き手によるスラッシュのコミュニティが形成され、{{仮リンク|個人出版クラブ|en|Amateur Press Association}}から[[メーリングリスト]]へ、また同人誌からfanfiction.netといったウェブサイトへの移行が次第に進んでいった <ref name=CHot20thcent798>{{cite book |title=The Cambridge history of twentieth-century English literature |last= Laura |first= Marcus|authorlink= |coauthors= Peter Nicholls|year=2004 |publisher= Cambridge University Press|page= 798|isbn=978-0-521-82077-6}}</ref>。このような作品の発表の場がインターネットに移ったことで、書き手にとって視野が広まり、発表される二次創作も増加した。 |
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インターネットによりスラッシュの書き手に自由な発想ができるようになり、ストーリーに分岐やつながりができたり、コラージュがあったり、歌が入っていたりと様々な新要素が作品中に入るようになった。インターネットを通じて、スラッシュの読者は増え自宅に居ながら同人誌より低い費用でスラッシュを読めるようになり、SFやファンタジー、刑事ドラマを中心にファンダムの数は劇的に増加した<ref name="Kustritz" />。また、インターネットはファンが感想や批評を述べたり、スラッシュ自体について議論したりその傾向について意見を述べることも可能にした。 |
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そして『[[X-ファイル]]』、『[[スターゲイト]]』、『[[ハリー・ポッターシリーズ|ハリー・ポッター]]』シリーズ、『[[バフィー 〜恋する十字架〜]]』などを題材としたウェブサイト・同人誌が広く知られるようになり、現在でも多くのスラッシュ作品を読むことが可能である<ref name=CHot20thcent798/>。 |
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== 批評・クィア論者の反応 == |
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<!--この項ではスラッシュについての学術的理論について解説しています。--> |
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スラッシュは、二次創作のほかのジャンル以上に、学術方面から注目を浴びている<!--Slash fiction has received more academic attention than other genres of fan fiction.--><ref name=CHot20thcent799/> 。人間性の研究から発展したカルチュラル・スタディーズの一環として、スラッシュの研究は1990年代前半から注目されるようになった。スラッシュの研究の多くは、他のカルチュラル・スタディーズと同じように、民族の観点からスラッシュにアプローチし、スラッシュの書き手およびスラッシュ作品を中心に形成されたコミュニティについて主に議論した<!--Slash fiction was the subject of several notable academic studies in the early 1990s, as part of the [[cultural studies]] movement within the humanities: Most of these, as is characteristic of cultural studies, approach slash fiction from an ethnographic perspective and talk primarily about the writers of slash fiction and the communities that form around slash fiction. --> |
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スラッシュのファンの多くは既存の文化に抵抗するファンである<!--Slashers have been configured as fans who resisted culture.--><!-- ※「Allington」の参照が存在せずエラーとなっているため、コメントアウトします。[Overgo 2014/07/07]<ref name=Allington/>--> 。 |
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イタリアの人類学者Mirna Ciconiのように、スラッシュ作品のテクストそのものの分析に焦点を当てた研究者もいる。<!--Some studies ? for example by Italian anthropologist [[Mirna Ciconi]] ? focus on textual analysis of slash fiction itself.--> |
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スラッシュは[[クィア理論]]の研究者からは無視されることが多かったが<!--Slash fiction was often ignored by [[queer theory|queer theorists]].--><ref>{{cite journal | author = Dhaenens F.; Van Bauwel S.; Biltereyst D. | year = 2008 | month = | title = Slashing the Fiction of Queer Theory | journal = Journal of Communication Inquiry | volume = 32 | issue = 4 | pages = 335?347 | doi = 10.1177/0196859908321508 }}</ref>、近年では異性愛の強要が予期されることに対抗する観点からLGBTのコミュニティやクィア達のアイデンティティ形成に重要視される一方<!-- However, slash fiction has been described as important to the [[LGBT]] community and the formation of queer identities, as it represents a resistance to the expectation of compulsory heterosexuality,--><ref>{{cite book |title=Science Fiction Curriculum, Cyborg Teachers, & Youth Culture(s) |last=Weaver |first=John A. |authorlink= |coauthors=Karen Anijar, Toby Daspit |page=84|year=2003 |publisher=P. Lang |location=US |isbn=0-8204-5044-8}}</ref> 、スラッシュにおけるゲイのコミュニティは現実離れしておりむしろ有名なスペキュレイティブ・フィクションに対するフェミニストの不満が爆発した形だという指摘もある<!--but has also been noted as being unrepresentative of the gay community, being more a medium to express feminist frustration with popular and speculative fiction.--><ref>{{cite book |title=Liquid Metal: The Science Fiction Film Reader |last=Sean |first=Redmond |authorlink= |page = 279 |year=2004 |publisher=Wallflower Press |location=US |isbn=1-903364-87-6}}</ref>。 |
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== 定義 == |
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スラッシュのファンダムは分裂するかのように多様化していき、形成されるまでの経緯・人気作・人気作家の傾向や、ルールやエチケットはファンダムにより異なる。<!--Of the diverse and often segregated slash fandoms, each fandom has its own rules of style and etiquette, and each comes with its own history, favorite stories, and authors.--> |
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また、スラッシュは著作権の観点から商業目的の出版はできず、1990年代までは配布されることなく、同人誌として出版されることが多かった<!--Slash cannot be commercially distributed due to copyright, and up until the 1990s was either undistributed or published in [[Fanzine|zine]]s-->.<ref name=EEL>Decarnin, Camilla (2006) "Slash Fiction" in Gaetan Brulotte and John Phillips (eds.) ''Encyclopedia of Erotic Literature'' New York: Routledge, pp. 1233?1235.</ref> 。 |
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今日、スラッシュは[[LiveJournal]]やウェブサイトなどで公表することが可能であり、 {{仮リンク|記号化した民主主義|en|semiotic democracy}}としてスラッシュが利用できるよう著作権を改正すべきだと声を上げる法律学者もいる<!--Today, slash fiction is most commonly published on [[LiveJournal]] accounts and other websites online. Legal scholars promoting copyright reform sometimes use slash fiction as an example of [[semiotic democracy]].--><ref>See, e.g., Siva Vaidhyanathan, 'Critical Information Studies: A Bibliographic Manifesto' (2006) 20 ''Cultural Studies'' 292.</ref>。 |
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スラッシュという言葉の定義はあいまいである。<!--The term ''slash fiction'' has several noted ambiguities within it.--> |
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スラッシュの黎明期のテレビや映画などにおいて、キャラクター同士の同性愛関係は原作で言及されておらず、スラッシュを原作から著しくかけ離れた二次創作だともなすものもいた。<!--Due to the lack of canonical homosexual relationships in source media at the time, some came to see slash fiction as being exclusively outside of canon.--> |
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このような考えの者にとってスラッシュという言葉は、原作では言及されなかった人物関係について描かれた二次創作のみを指しており、したがって[[カノン (文芸)|原作]]でふれた同性愛関係を描いた二次創作はスラッシュではないということになる<!--These people held that the term "slash fiction" only applies when the relationship being written about is ''not'' part of the source's canon, and that fan fiction about [[canon (fiction)|canonical]] same-sex relationships is hence not slash.--><ref name=Tosenberger>Tosenberger, Catherine (2008) "Homosexuality at the Online Hogwarts: Harry Potter Slash Fanfiction" ''Children's Literature'' 36 pp. 185?207 {{doi|10.1353/chl.0.0017}}</ref> 。 |
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そのため、近年メディアにおいてゲイおよびバイセクシャルの描写がより明確になり、『[[バフィー 〜恋する十字架〜]]』の[[ウィロー・ローゼンバーグ]]と{{仮リンク|タラ・マックレー|en|Tara Maclay}}、『{{仮リンク|クィア・アズ・フォーク (イギリスのテレビドラマ)|label=クィア・アズ・フォーク |en|Queer as Folk (UK TV series)}}』の登場人物たち<!--The recent appearance of openly gay and bisexual characters on screen, such as [[Willow Rosenberg|Willow]] and [[Tara Maclay|Tara]] in the television series ''[[Buffy the Vampire Slayer (TV series)|Buffy the Vampire Slayer]]'', the characters of ''[[Queer as Folk (UK TV series)|Queer as Folk]]'',--><ref name=Tosenberger/>、『[[ドクター・フー]]』のキャプテン・ジャック・ハークネスおよび彼を主役としたスピンオフ『[[秘密情報部トーチウッド]]』の登場人物たち<!-- [[Jack Harkness]] in ''[[Doctor Who]]'', and numerous characters in ''[[Torchwood]]'',--><ref>Sarah Nathan (September 2006) [http://www.thesun.co.uk/sol/homepage/showbiz/tv/article64139.ece "Dr Ooh gets four gay pals"], ''The Sun", Retrieved 2006-10-06. "GAY Doctor Who star John Barrowman gets four BISEXUAL assistants in raunchy BBC3 spin-off Torchwood."</ref>に関する二次創作はスラッシュに入れるべきかどうか議論が続いている。<!--has added much to this discussion.--> |
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「スラッシュは原作にない同性愛関係を描いた二次創作である」という定義を受け入れるとなると、原作で触れられた同性愛関係について書かれた二次創作の立場があいまいになってしまうため、 この定義はあまり広く受け入れられていない<!--Abiding by the aforementioned definition leaves such stories without a convenient label, so this distinction has not been widely adopted.--><ref name=Tosenberger/>。 |
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スラッシュ作品の中には、[[トランスジェンダー]]をテーマにしたものもあり、[[インターセックス]]のキャラクターを登場させる作者もいる。<!--Some slash authors also write slash fiction which contains [[transgender]] themes and transgender/[[transsexual]] or [[intersex]] characters. --> |
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その結果、様々なファンダムにおいて、スラッシュの明確な定義についての議論が白熱している。<!--As a result, the exact definition of the term has often been hotly debated within various slash fandoms.--> |
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狭義のスラッシュは男性間のみの同性愛を題材としているため、後述のフェムスラッシュがサブジャンルとして発展した。<!-- The strictest definition holds that only stories about relationships between two male partners ('M/M') are 'slash fiction', which has led to the evolution of the term [[femslash]].--> |
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日本のアニメや漫画の二次創作においてもスラッシュに該当する作品はあるが、男性間の場合は[[やおい]]や[[少年愛]]と呼ばれており、女性間ならば[[少女愛]]([[百合 (ジャンル)|百合]])とそれぞれ住み分けがなされている。<!-- Slash-like fiction is also written in various Japanese [[anime]] or [[manga]] fandoms, but is commonly referred to as [[sh?nen-ai]] or [[yaoi]] for relationships between male characters, and [[sh?jo-ai]] or [[yuri (genre)|yuri]] between female characters respectively.--> |
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近年インターネット上においてスラッシュの人気が高まり流行になっているせいで、スラッシュという言葉を異性間/同性間問わず単に性的な二次創作について使用する者も出てきた。<!--Due to increasing popularity and prevalence of slash on the internet in recent years, some use ''slash'' as a generic term for any erotic fan fiction, whether it depicts heterosexual or homosexual relationships.--> |
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その結果、はっきりした定義がないにもかかわらず、スラッシュの作家が作品が性的なものとしてとらえられてしまう懸念を抱き、そのような定義をされると全年齢向けの同性愛作品からスラッシュという単語を抜かざるをえなくなる。<!-- This has caused concern for other slash writers who believe that while it can be erotic, slash is not by definition so, and that defining all erotic fic as slash takes the word away from all-ages-suitable homo-romantic fan fiction. --> |
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また、世間一般から見たファンフィクションのイメージを調べている多くのジャーナリストから、キャラクターがエロければ、どんなファンフィクションでもスラッシュとして世間から受け止められてしまっているということが明かされている<!--In addition, a number of journalists writing about the fan fiction phenomenon in general seem to believe that ''all'' fan fiction is slash, or at least erotic in character.--><ref>Dery, Mark. Glossary. Flame Wars: The Discourse of Cyber Culture. North Carolina: Duke UP, 1994.</ref><ref>Viegener, Matias. "The Only Haircut That Makes Sense Anymore." Queer Looks: Lesbian & Gay Experimental Media. Routledge, New York: 1993.</ref><ref>Dundas, Zach, "[http://wweek.com/story.php?story=5307 Hobbits Gone Wrong]." In ''Willamette Week'', July 14, 2004, retrieved 2008-07-15. A less-than-complimentary report on slash fiction and its role in the "Bit Of Earth" scam involving fans of ''[[The Lord of the Rings]]'' films.</ref>。 |
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そのような定義は性的なスラッシュと恋愛関係を描いたスラッシュ、そしてhet(異性愛を描いたスラッシュ)とgen (ただ単に恋愛を題材とした全年齢向け二次創作)との区別をつきにくくしているという結果をもたらした。<!-- Such definitions fail to distinguish between erotic and romantic slash, and between slash, het (works focusing primarily on heterosexual relationships) and gen (works which do not include a romantic focus).--> |
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なお同性愛/異性愛、性的かどうかにかかわらず、登場人物の名前の間にスラッシュが入った場合は、恋愛関係にあることを意味している<!--The slash mark itself (/), when put between character's names, has come to mean a shorthand label for a romantic relationship, regardless of whether the pairing is heterosexual or homosexual, romantic or erotic.--><ref name=Tosenberger/>。 |
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== 元の作品におけるスラッシュの扱い == |
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多くの人にとって、スラッシュは激しい論争の的である。<!--For many people, slash is a controversial subject.--> |
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もともとファンフィクションおよびファンアートというものには著作権の問題がつきもので、原作にないシチュエーションを描くということが原作のキャラクターにとって失礼であると考える者もいる<!-- In addition to the legal issues associated with traditional fan fiction, some people believe that it tarnishes established media characters to portray them in a way which was never illustrated canonically.--><ref>Hunter, Kendra. "Characterization Rape." ''The Best of Trek 2''. New York: New American Library, 1977.</ref> 。 |
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だが、原作者もスラッシュに対して非難しづらい立場にある。<!--But official disapproval of slash, specifically, is hard to find.--> |
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原作者による警告のうち、古いものとして、[[ルーカスフィルム]]がわいせつな内容のファンフィクションを書くファンに対して法的通知を送ったという事例がある<!-- As early as 1981, LucasFilms has issued legal notices to fans who wrote sexually-explicit stories.--><ref>{{Citation | last1 = Jenkins | first1 = Henry | author-link1 = Henry Jenkins | contribution = Quentin Tarantino's Star Wars Digital Cinema, Media Convergence, and Participatory Culture. | editor-last = Durham | editor-first = Meenakshi Gigi | editor2-last = Kellner | editor2-first = Douglas | editor-link1 = Meenakshi Gigi Durham | title = Media and cultural studies: keyworks | page = 558 | publisher = Wiley-Blackwell | location = Malden | year = 2012 | isbn = 9780470658086 }}</ref>。 |
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また、『[[ハリー・ポッター]]』シリーズで有名な[[J・K・ローリング]]と[[ワーナー・ブラザース]]も、インターネット上でわいせつなファンフィクションを公開するファンに対して警告状(なお、この時の文面は[http://www.chillingeffects.org/fanfic/notice.cgi?NoticeID=534 Chilling Effects]にて閲覧可能である)を送った。しかし、ローリングが二次創作に否定的かと言えばそうではなく、むしろ二次創作全体を認めており、自分のウェブサイトにファンフィクションへのリンクを張っているほか、"ハリー/ドラコ"や"ハリー/スネイプ"といった原作にはないカップリングを描いたスラッシュを認めている<!-- J. K. Rowling/Warner Brothers has sent cease-and-desist letters referencing "sexually explicit" writings on the web, , though Rowling approves the writing of fan fiction in general, posting links to fan fiction on her website and openly acknowledging slash fiction while maintaining that pairings such as those between Harry/Draco and Harry/Snape are non-canonical.-->。 |
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また、スラッシュを完全に受け入れている原作者もおり、テレビドラマ「エンジェル」の"[[:en:A Hole in the World (Angel episode)|A Hole in the World]]"のDVDコメンタリで原作者である[[ジョス・ウィードン]]は、「スパイクとエンジェル…二人はずーっとずーっと長いこと放浪していた。彼等は多くの意味ではみ出し者だった。IF展開を考えたくなる人もいるだろう。どうぞご自由に。彼らは心が広いんだ。」と話している。また、「[[パワープレー (エンジェルのエピソード)|パワープレー]]」の回ではスパイクも「エンジェルと俺が親友同士だったってことはない。あのときを除いてはな…。」とイリリアに話している<!--Some media creators seem down-right slash friendly. In the Angel DVD commentary for "[[A Hole in the World (Angel episode)|A Hole in the World]]", Joss Whedon, the creator of Angel said, "Spike and Angel...they were hanging out for years and years and years. They were all kinds of deviant. Are people thinking they never...? Come on, people! They're open-minded guys!" as well as Spike saying "Angel and me have never been intimate. Except that one..." to Illyria in the episode "Power Play."--> |
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似たような現象が『[[ヤング・スーパーマン]]』<ref>[http://www.ejumpcut.org/archive/jc48.2006/gaySmallville/index.html The Kryptonite closet: Silence and queer secrecy in Smallville]. Ejumpcut.org. Retrieved on 17 October 2011.</ref>や『[[スーパーナチュラル]]』<ref>{{cite journal |
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| last = Tosenberger |
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| first = Catherine |
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| date = |
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| year = 2008 |
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| month = |
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| title = "The epic love story of Sam and Dean": Supernatural, queer readings, and the romance of incestuous fan fiction |
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| journal = Transformative Works and Cultures |
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| volume = 1 |
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| issue = |
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| publisher = Organization for Transformative Works |
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| doi = 10.3983/twc.2008.0030 |
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| url = http://journal.transformativeworks.org/index.php/twc/article/view/30/36 |
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}} |
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</ref>、『[[騎馬警官 (テレビドラマ)|騎馬警官]]』<ref>{{cite book |
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|last = Bury |
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|first = Rhiannon |
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|title = The International Handbook of Virtual Learning Environments |
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|publisher = Springer Netherlands |
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|year = 2006 |
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|doi = 10.1007/978-1-4020-3803-7_46 |
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|isbn = 978-1-4020-3803-7 |
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|chapter= A Critical Eye for the Queer Text: Reading and Writing Slash Fiction on (the) Line |
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|pages= 1151?1167 |
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}}</ref>といった他作品でも起きていると指摘もある<!-- Some people say they see similar evidence of such relationships in other shows such as ''[[Smallville (TV series)|Smallville]]'',''[[Due South]]'' and ''[[Supernatural (U.S. TV series)|Supernatural]]''.--> 。 |
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『スーパーナチュラル」』の「神の預言者」(原題:[http://www.supernaturalwiki.com/index.php?title=4.18_The_Monster_At_The_End_Of_This_Book The End Of This Book ])では、ウィンチェスター兄弟が、ありもしない自分たちの関係を題材とした小説のシリーズを読んだり、ネット上でファンたちの集まりを見つけ、スラッシュの執筆を含むファン活動について意見を述べる場面がある。 |
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<!--In the episode The Monster At The End Of This Book of the TV show [[Supernatural (U.S. TV series)|Supernatural]], the main characters encounter fictional representations of themselves in a series of books. They find the online fandom, and comment about their activities including the writing of slash fanfiction.--> |
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このことはウィンセスト(主人公たちの名字であるウィンチェスターと、兄弟間の性的行為をさすインセストとの鞄語)と呼ばれるファンたちによってたびたび言及されている。<!-- This is often referred to by fans of Supernatural as Wincest, based on the characters' surname (Winchester) and the fact that they are brothers (incest).--> |
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リバイバル版ドクター・フーの脚本家で、自身もゲイであることを公言している[[ラッセル・T・デイヴィス]]は、あらゆる性癖を持つジャック・ハーネスおよび彼を主役としたスピンオフドラマ『[[秘密情報部トーチウッド]]』の登場人物はスラッシュのファンにはかなわないと話している<!--The revival of ''[[Doctor Who]]'' led by the openly gay writer [[Russell T Davies]] has also seen nods towards the slash fans beyond the omnisexual Captain Jack Harkness and other characters from the spin-off ''[[Torchwood]]''.--> |
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ドクターと6代目マスター(なお、このマスター役の[[ジョン・シム]]が『{{仮リンク|時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ|en|Life on Mars (UK TV series)}}』で演じたサム・テイラーを扱ったスラッシュも多数存在する)のやりとりから、ファンたちは彼らが以前付き合っていたかもしくは現在惹かれあっていると推測している。<!-- Many fans see exchanges between the Doctor and the Master (played in the new series by [[John Simm]], whose ''[[Life on Mars (UK TV series)|Life On Mars]]'' character Sam Tyler is also the subject of a lot of slash fiction) as indicative a previous relationship, or current attraction.--> |
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[[:en:Doctor Who: Children in Need]]でマスターがドクターに対して言った「きみが僕の名前を言うたび、僕はうれしくなる」や、5代目ドクターからマスターがいまだに髭を生やしているかどうか尋ねられた時、10代目が答えた「いや、この時髭はなかったよ。えっ、カミさん?」という台詞は、ファンが「ゲイの男性が世間体の関係から女性と結婚する際、その配偶者が "a beard"と呼ばれる事からこのような発言が生まれた」という推測を起こさせる結果となった。<!-- At one point the Master says to the Doctor "I like it when you use my name.", and in a [[Children in Need]] special, the tenth Doctor tells the fifth, after being asked whether the Master still has "that rubbish beard", "no, no beard this time. Well, a wife. " ? which fans point to as a reference to gay men marrying a woman for public respectability, the wife being referred to as "a beard". --> |
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このように、スラッシュの書き手にネタを与えるような内容は"pre-slashed"と形容され、 "pre-slashed for your convenience"という言葉が使われることもある。<!--The term for shows that seem to be giving material for slash writers to use is "pre-slashed", sometimes "pre-slashed for your convenience".--> |
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== サブジャンル == |
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=== フェムスラッシュ === |
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{{Main|[[:en:Femslash]]}} {{See also|百合 (ジャンル)}} |
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スラッシュの中でも、フェムスラッシュ(Femslash ,"f/f slash","femmeslash","saffic"{{Refnest|group="注"|{{仮リンク|レズビアンの歴史|label=サフィック・ラヴ|en|History of lesbianism}}からとった言葉<ref>{{Cite journal |journal=Web Based Communities 2006 (26/02/06 - 28/02/06) |title=Web Based Semantic Communities – Who, How and Why We Might Want Them in the First Place |author=K. Faith Lawrence and m. c. schraefel |year=2006 |url=https://eprints.soton.ac.uk/261800/}}</ref> }}とも)は、女性のキャラクター同士の恋愛関係(性的なものも含む)を描いたものである<ref name="Lo">Lo, Malinda. (4 January 2006) [http://www.afterellen.com/Print/2006/1/fanfiction.html Fan Fiction Comes Out of the Closet] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20080117044113/http://www.afterellen.com/Print/2006/1/fanfiction.html |date=2008年1月17日 }} [[AfterEllen.com and AfterElton.com|AfterEllen.com]]. Retrieved 19 July 2007.</ref> 。 |
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フェムスラッシュの対象となるキャラクターは、原作では異性愛者として描かれている場合が多い<ref>Herzing, Melissa. (April 2005) [http://etd.vcu.edu/theses/submitted/etd-05092005-125907/unrestricted/herzingmj_thesis.pdf The Internet World of Fan Fiction]{{リンク切れ|date=2017年9月 |bot=InternetArchiveBot }} [[Virginia Commonwealth University]]. Retrieved 12 August 2007.</ref> 。 |
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この言葉が使われるのは欧米の二次創作に対してのみであり、このような二次創作は日本では[[百合 (ジャンル)|百合]]と呼ばれている<ref>[http://dictionary.lunaescence.com/index.php?cat=9 Dictionary of Anime Fandom] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20070704015723/http://dictionary.lunaescence.com/index.php?cat=9 |date=2007年7月4日 }} Lunaescence. Retrieved 19 July 2007.</ref> <ref name="Tosenberger"/>。 |
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異性愛者の女性のスラッシュの書き手は女性間の恋愛について書くことが少ないため、男性間の恋愛を描いたスラッシュと比べるとフェムスラッシュの数は少なく<ref name="Bitch">{{cite web|last=Thrupkaew |first=Noy |url=http://bitchmagazine.org/article/fan-tastic-voyage |title=Fan/tastic Voyage |publisher=Bitch Magazine |date= |accessdate=6 March 2009}}</ref>、女性間の恋愛を扱ったファンダムの数も少ない<ref>{{Cite web |last=Lo |first=Malinda |url=http://www.afterellen.com/Print/2006/1/fanfiction.html?page=0%2C1 |title=Fan Fiction Comes Out of the Closet |publisher=AfterEllen.com |date=2006-01-04 |accessdate=2009-03-06 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20080516121400/http://www.afterellen.com/Print/2006/1/fanfiction.html?page=0%2C1 |archivedate=2008-05-16 |url-status=dead|url-status-date=2017-09 }}</ref>。 |
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スタートレックシリーズにおける代表的なフェムスラッシュに"ジェインウェイ/セブン"があるが、こちらは「深い感情のつながりと対立を伴った」本編中の出来事から発展したものである<ref>http://j-l-r.org/asmic/fanfic/print/jlr-cyborgsex.pdf</ref>。 |
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『[[バフィー 〜恋する十字架〜]]』の[[ウィロー・ローゼンバーグ]]と{{仮リンク|タラ・マックレー|en|Tara Maclay}}のような[[カノン (文芸)|原作]]において同性愛関係にあるキャラクターの恋愛を描いたファンフィクションがスラッシュに入るべきかどうかの議論が続いているが二人の関係は異性愛の関係よりも純愛ものに近く、ウィロー/タラのフェムスラッシュの書き手にとっては実際の二人の関係とのギャップを埋められるのにちょうどよいとみられており<ref>{{Cite web |last=Lo |first=Malinda |url=http://www.afterellen.com/Print/2006/1/fanfiction.html?page=0%2C2 |title=Fan Fiction Comes Out of the Closet |publisher=AfterEllen.com |date=2006-01-04 |accessdate=2009-03-06 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20080516121405/http://www.afterellen.com/Print/2006/1/fanfiction.html?page=0%2C2 |archivedate=2008-05-16 |url-status=dead|url-status-date=2017-09 }}</ref>、男性の書き手がフェムスラッシュを書き出したのは比較的最近のことである<ref>{{Cite web|和書|url=http://slayageonline.com/Volumes/Slayage_Volume_4.pdf |title=アーカイブされたコピー |accessdate=2010-11-19 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20110716091719/http://slayageonline.com/Volumes/Slayage_Volume_4.pdf |archivedate=2011-07-16 |url-status=dead|url-status-date=2017-09 }}</ref>。 |
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=== チャンスラッシュ === |
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チャンスラッシュは、スラッシュの中でも未成年者同士の性的関係を描いたものであり<!--Chanslash is the portrayal of underage characters in sexual situations in slash fiction.-->、日本でいう[[ショタコン]]に該当する。 |
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名前の由来は日本語において幼児や女性名などのあとにつけられる「[[ちゃん]]」である<!-- The prefix [[Japanese titles|chan]] most likely comes from the Japanese name suffix used as a term of endearment toward children or women.--><ref>{{cite journal| last1 = McLelland| first1 = Mark| last2 = Yoo |
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| first2 = Seunghyun| date =| year = 2007| month = March| title = The International Yaoi Boys' Love Fandom and the Regulation of Virtual Child Pornography: The Implications of Current Legislation| journal = Journal of Sexuality Research and Social Policy| volume = 4 |
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| issue = 1| pages = 93?104| publisher =| url = http://ro.uow.edu.au/artspapers/192/| doi = 10.1525/srsp.2007.4.1.93}}</ref> 。 |
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=== オリジナル・スラッシュ === |
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オリジナル・スラッシュとは、スラッシュ同様男性同士の恋愛を扱っていながら、オリジナルのキャラクター同士の恋愛を描いた小説である。これらの小説はオンラインで公開されることが多く、スラッシュの作者がレイティングや警告文などで使うことが多い。<!--Original slash stories are those that contain m/m content, but the characters are fictitious. These works are generally published online and use the same forms of rating, warnings and terminology that is commonly used by slash writers.--> |
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読者の多くが女性で、作風などが限られたコミュニティで共有されてきた結果、スラッシュはほかのゲイ文学とは読み手の感覚が異なり、情動的関係が重要視され、時にはセックスが物語の中で重要な役割を果たすことがある<!--Slash has a different sensibility than gay fiction, probably because most slash readers are female and in a closed community that shares their tastes, which makes most stories in the genre centered into emotional relationships, even as sex is very prominent.--> |
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性的な同性愛を描いた[[ボーイズラブ]]([[やおい]])の漫画や小説が翻訳された結果、このタイプのスラッシュが欧米にも広まった。<!--A different variety of homoerotic amateur fiction is original yaoi, from the [[manga]]/[[anime]] genre [[yaoi]] (boy-love), popularized in the West by subbers and scanlations.--> |
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スラッシュという単語が二次創作のみをさしていると感じるスラッシュのファンもいるため、オリジナルスラッシュ(オリジナルのボーイズラブも含む)という言葉について論争になることがある<!--Both (original slash and original yaoi) are terms that are considered somewhat controversial by some slash fans since they feel that the term ‘slash’ can only refer to works of fan fiction and not original works.--> |
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=== 注釈 === |
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*[[Stucky (ファンダム)]] - [[マーベル・コミック]]での例 |
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*[[カップリング (同人)]] |
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2024年7月14日 (日) 16:17時点における最新版
スラッシュ(Slash fiction)は、2人以上の男性間における幻想(ボーイズラブ)に焦点を当てたファン・フィクションであり[1][2]、しばしば性的要素が入る。題材となるキャラクターは、「カノン」の世界(「正典」、「正史」、ファン・フィクションの世界とは違う原作の公式な世界設定を指す)では性的関係のみならず友情関係にも引き込まれていないこともある。また、この言葉は女性キャラクター同士(ガールズラブ、百合)の場合に当てはめることもできるが、別ジャンルとして「フェムスラッシュ」という言葉を用いるファンもいる[3] 。書き手および読者の多くは女性である。
かつては1人もしくはそれ以上の男性キャラクターが露骨な肉体関係に巻きこまれる様子に重きを置いた作品が多かったが、現在は単に男性キャラクターが結びつくファンフィクションがスラッシュと呼ばれることが一般的になっている。
名前の由来は、話の中でのカップリングを示す際にスラッシュ記号(/)を入れたためである。なお、単なる友人関係の場合はアンパサンド(&)が用いられる(たとえば、アメリカにおいてこうしたフィクションの始まりとなった『スタートレック』シリーズのジェームズ・カーク船長と副長のスポックの間の性的関係を描くフィクションはKirk/SpockあるいはK/S、性的関係抜きの友情を描くものはK&Sと書かれる)。
歴史
[編集]一般的に、現在のスラッシュの大本となっているのは、『宇宙大作戦(原題:Star Trek)』のファン・フィクションのファン(愛好家)たちの集まり(ファンダム)において作られた "カーク/スポック"の作品群であるとされている[1]。このような作品群は女性のファンが書いてきたとされており、1970年代末に初めて登場した[1][4]。 スラッシュという名前の由来は、前述の K/S のように、2人の恋愛関係(しばしば性的な関係になることもある)を描いた話を書く際、その2人の名前の間にスラッシュ記号(/)がはいっていることからきており、スラッシュやK/Sといったことばは交互に使われてきた。このような二次創作は『特捜班CI-5』、『刑事スタスキー&ハッチ』, en:Blake's 7などのファン層にも広まり[3] 、ついには、スラッシュそのものを扱ったファンダムまで出来上がった[5][6] 。
初期のスラッシュでは、カーク/スポックやスタスキー/ハッチのようにメインキャラクター同士のカップリングが多かった一方、 Blake/Avon のように、脇役とのカップリングもあった[7]。
なお、単なる友人関係の場合はアンパサンド(&)が用いられる
初期の K/Sは、『宇宙大作戦』のファン全体には当初受け入れられず[8]、後にジョアンナ・ラスといった作家が論文の中でスラッシュについて研究・発表を行ったことで、学術的な研究地位が与えられた[9][10] 。
スラッシュの登場から時がたつにつれて、同性愛に対する寛容や受容が進み、マスメディアにおける男性同性愛者に対する描写への不満がスラッシュの主題へと昇華しつつある。『スター・トレック』シリーズのスラッシュのファン層はいまだに重要視されている一方、SFやアクション・冒険もののテレビ番組や映画・小説のスラッシュのファン層も新たに発生してきた。
スラッシュが発生しやすい作品
[編集]スラッシュの誕生以来、スペキュレイティブ・フィクションにおいて作り込まれた女性キャラクターの登場が少ないことや、キャラクターの関係をファンが再解釈しやすいことなどから、そのようなジャンルからインスパイアを受けているスラッシュ作品が多い[11][12]。しかし、『刑事スタスキー&ハッチ』や『特捜班CI-5』などの場合は、スペキュレイティブ・フィクションの要素はない。
スラッシュは大衆的なメディアで発生し、継続的に新作が出続けており、元の作品の人気とファンダムの活発さには相互関係がある。スラッシュの読者や書き手は、原作に忠実であろうとする傾向にあり、そうしたファン層が個々の2次創作ジャンル(ファンダム)を作り出す。 しかし、原作のファンではないが、スラッシュのファンであるという者もいる[13]。
インターネットとの邂逅
[編集]1990年代前半にインターネットが一般に普及するまで、スラッシュは入手が困難であった。その発表形態はファンによる非営利の同人誌(しばしば「zine」と呼ばれる)しかなかった。こうした同人誌は印刷代のみの値段で、イベント会場で販売されていた。[3] インターネットが普及したことにより、ファンや書き手によるスラッシュのコミュニティが形成され、個人出版クラブからメーリングリストへ、また同人誌からfanfiction.netといったウェブサイトへの移行が次第に進んでいった [12]。このような作品の発表の場がインターネットに移ったことで、書き手にとって視野が広まり、発表される二次創作も増加した。
インターネットによりスラッシュの書き手に自由な発想ができるようになり、ストーリーに分岐やつながりができたり、コラージュがあったり、歌が入っていたりと様々な新要素が作品中に入るようになった。インターネットを通じて、スラッシュの読者は増え自宅に居ながら同人誌より低い費用でスラッシュを読めるようになり、SFやファンタジー、刑事ドラマを中心にファンダムの数は劇的に増加した[3]。また、インターネットはファンが感想や批評を述べたり、スラッシュ自体について議論したりその傾向について意見を述べることも可能にした。
そして『X-ファイル』、『スターゲイト』、『ハリー・ポッター』シリーズ、『バフィー 〜恋する十字架〜』などを題材としたウェブサイト・同人誌が広く知られるようになり、現在でも多くのスラッシュ作品を読むことが可能である[12]。
批評・クィア論者の反応
[編集]スラッシュは、二次創作のほかのジャンル以上に、学術方面から注目を浴びている[4] 。人間性の研究から発展したカルチュラル・スタディーズの一環として、スラッシュの研究は1990年代前半から注目されるようになった。スラッシュの研究の多くは、他のカルチュラル・スタディーズと同じように、民族の観点からスラッシュにアプローチし、スラッシュの書き手およびスラッシュ作品を中心に形成されたコミュニティについて主に議論した スラッシュのファンの多くは既存の文化に抵抗するファンである 。 イタリアの人類学者Mirna Ciconiのように、スラッシュ作品のテクストそのものの分析に焦点を当てた研究者もいる。
スラッシュはクィア理論の研究者からは無視されることが多かったが[14]、近年では異性愛の強要が予期されることに対抗する観点からLGBTのコミュニティやクィア達のアイデンティティ形成に重要視される一方[15] 、スラッシュにおけるゲイのコミュニティは現実離れしておりむしろ有名なスペキュレイティブ・フィクションに対するフェミニストの不満が爆発した形だという指摘もある[16]。
定義
[編集]スラッシュのファンダムは分裂するかのように多様化していき、形成されるまでの経緯・人気作・人気作家の傾向や、ルールやエチケットはファンダムにより異なる。 また、スラッシュは著作権の観点から商業目的の出版はできず、1990年代までは配布されることなく、同人誌として出版されることが多かった.[17] 。
今日、スラッシュはLiveJournalやウェブサイトなどで公表することが可能であり、 記号化した民主主義としてスラッシュが利用できるよう著作権を改正すべきだと声を上げる法律学者もいる[18]。
スラッシュという言葉の定義はあいまいである。 スラッシュの黎明期のテレビや映画などにおいて、キャラクター同士の同性愛関係は原作で言及されておらず、スラッシュを原作から著しくかけ離れた二次創作だともなすものもいた。 このような考えの者にとってスラッシュという言葉は、原作では言及されなかった人物関係について描かれた二次創作のみを指しており、したがって原作でふれた同性愛関係を描いた二次創作はスラッシュではないということになる[7] 。 そのため、近年メディアにおいてゲイおよびバイセクシャルの描写がより明確になり、『バフィー 〜恋する十字架〜』のウィロー・ローゼンバーグとタラ・マックレー、『クィア・アズ・フォーク』の登場人物たち[7]、『ドクター・フー』のキャプテン・ジャック・ハークネスおよび彼を主役としたスピンオフ『秘密情報部トーチウッド』の登場人物たち[19]に関する二次創作はスラッシュに入れるべきかどうか議論が続いている。
「スラッシュは原作にない同性愛関係を描いた二次創作である」という定義を受け入れるとなると、原作で触れられた同性愛関係について書かれた二次創作の立場があいまいになってしまうため、 この定義はあまり広く受け入れられていない[7]。
スラッシュ作品の中には、トランスジェンダーをテーマにしたものもあり、インターセックスのキャラクターを登場させる作者もいる。 その結果、様々なファンダムにおいて、スラッシュの明確な定義についての議論が白熱している。 狭義のスラッシュは男性間のみの同性愛を題材としているため、後述のフェムスラッシュがサブジャンルとして発展した。
日本のアニメや漫画の二次創作においてもスラッシュに該当する作品はあるが、男性間の場合はやおいや少年愛と呼ばれており、女性間ならば少女愛(百合)とそれぞれ住み分けがなされている。
近年インターネット上においてスラッシュの人気が高まり流行になっているせいで、スラッシュという言葉を異性間/同性間問わず単に性的な二次創作について使用する者も出てきた。
その結果、はっきりした定義がないにもかかわらず、スラッシュの作家が作品が性的なものとしてとらえられてしまう懸念を抱き、そのような定義をされると全年齢向けの同性愛作品からスラッシュという単語を抜かざるをえなくなる。
また、世間一般から見たファンフィクションのイメージを調べている多くのジャーナリストから、キャラクターがエロければ、どんなファンフィクションでもスラッシュとして世間から受け止められてしまっているということが明かされている[20][21][22]。 そのような定義は性的なスラッシュと恋愛関係を描いたスラッシュ、そしてhet(異性愛を描いたスラッシュ)とgen (ただ単に恋愛を題材とした全年齢向け二次創作)との区別をつきにくくしているという結果をもたらした。
なお同性愛/異性愛、性的かどうかにかかわらず、登場人物の名前の間にスラッシュが入った場合は、恋愛関係にあることを意味している[7]。
元の作品におけるスラッシュの扱い
[編集]多くの人にとって、スラッシュは激しい論争の的である。 もともとファンフィクションおよびファンアートというものには著作権の問題がつきもので、原作にないシチュエーションを描くということが原作のキャラクターにとって失礼であると考える者もいる[23] 。 だが、原作者もスラッシュに対して非難しづらい立場にある。 原作者による警告のうち、古いものとして、ルーカスフィルムがわいせつな内容のファンフィクションを書くファンに対して法的通知を送ったという事例がある[24]。 また、『ハリー・ポッター』シリーズで有名なJ・K・ローリングとワーナー・ブラザースも、インターネット上でわいせつなファンフィクションを公開するファンに対して警告状(なお、この時の文面はChilling Effectsにて閲覧可能である)を送った。しかし、ローリングが二次創作に否定的かと言えばそうではなく、むしろ二次創作全体を認めており、自分のウェブサイトにファンフィクションへのリンクを張っているほか、"ハリー/ドラコ"や"ハリー/スネイプ"といった原作にはないカップリングを描いたスラッシュを認めている。
また、スラッシュを完全に受け入れている原作者もおり、テレビドラマ「エンジェル」の"A Hole in the World"のDVDコメンタリで原作者であるジョス・ウィードンは、「スパイクとエンジェル…二人はずーっとずーっと長いこと放浪していた。彼等は多くの意味ではみ出し者だった。IF展開を考えたくなる人もいるだろう。どうぞご自由に。彼らは心が広いんだ。」と話している。また、「パワープレー」の回ではスパイクも「エンジェルと俺が親友同士だったってことはない。あのときを除いてはな…。」とイリリアに話している 似たような現象が『ヤング・スーパーマン』[25]や『スーパーナチュラル』[26]、『騎馬警官』[27]といった他作品でも起きていると指摘もある 。 『スーパーナチュラル」』の「神の預言者」(原題:The End Of This Book )では、ウィンチェスター兄弟が、ありもしない自分たちの関係を題材とした小説のシリーズを読んだり、ネット上でファンたちの集まりを見つけ、スラッシュの執筆を含むファン活動について意見を述べる場面がある。 このことはウィンセスト(主人公たちの名字であるウィンチェスターと、兄弟間の性的行為をさすインセストとの鞄語)と呼ばれるファンたちによってたびたび言及されている。
リバイバル版ドクター・フーの脚本家で、自身もゲイであることを公言しているラッセル・T・デイヴィスは、あらゆる性癖を持つジャック・ハーネスおよび彼を主役としたスピンオフドラマ『秘密情報部トーチウッド』の登場人物はスラッシュのファンにはかなわないと話している ドクターと6代目マスター(なお、このマスター役のジョン・シムが『時空刑事1973 ライフ・オン・マーズ』で演じたサム・テイラーを扱ったスラッシュも多数存在する)のやりとりから、ファンたちは彼らが以前付き合っていたかもしくは現在惹かれあっていると推測している。 en:Doctor Who: Children in Needでマスターがドクターに対して言った「きみが僕の名前を言うたび、僕はうれしくなる」や、5代目ドクターからマスターがいまだに髭を生やしているかどうか尋ねられた時、10代目が答えた「いや、この時髭はなかったよ。えっ、カミさん?」という台詞は、ファンが「ゲイの男性が世間体の関係から女性と結婚する際、その配偶者が "a beard"と呼ばれる事からこのような発言が生まれた」という推測を起こさせる結果となった。 このように、スラッシュの書き手にネタを与えるような内容は"pre-slashed"と形容され、 "pre-slashed for your convenience"という言葉が使われることもある。
サブジャンル
[編集]フェムスラッシュ
[編集]スラッシュの中でも、フェムスラッシュ(Femslash ,"f/f slash","femmeslash","saffic"[注 1]とも)は、女性のキャラクター同士の恋愛関係(性的なものも含む)を描いたものである[29] 。 フェムスラッシュの対象となるキャラクターは、原作では異性愛者として描かれている場合が多い[30] 。
この言葉が使われるのは欧米の二次創作に対してのみであり、このような二次創作は日本では百合と呼ばれている[31] [7]。
異性愛者の女性のスラッシュの書き手は女性間の恋愛について書くことが少ないため、男性間の恋愛を描いたスラッシュと比べるとフェムスラッシュの数は少なく[32]、女性間の恋愛を扱ったファンダムの数も少ない[33]。 スタートレックシリーズにおける代表的なフェムスラッシュに"ジェインウェイ/セブン"があるが、こちらは「深い感情のつながりと対立を伴った」本編中の出来事から発展したものである[34]。 『バフィー 〜恋する十字架〜』のウィロー・ローゼンバーグとタラ・マックレーのような原作において同性愛関係にあるキャラクターの恋愛を描いたファンフィクションがスラッシュに入るべきかどうかの議論が続いているが二人の関係は異性愛の関係よりも純愛ものに近く、ウィロー/タラのフェムスラッシュの書き手にとっては実際の二人の関係とのギャップを埋められるのにちょうどよいとみられており[35]、男性の書き手がフェムスラッシュを書き出したのは比較的最近のことである[36]。
チャンスラッシュ
[編集]チャンスラッシュは、スラッシュの中でも未成年者同士の性的関係を描いたものであり、日本でいうショタコンに該当する。 名前の由来は日本語において幼児や女性名などのあとにつけられる「ちゃん」である[37] 。
オリジナル・スラッシュ
[編集]オリジナル・スラッシュとは、スラッシュ同様男性同士の恋愛を扱っていながら、オリジナルのキャラクター同士の恋愛を描いた小説である。これらの小説はオンラインで公開されることが多く、スラッシュの作者がレイティングや警告文などで使うことが多い。
読者の多くが女性で、作風などが限られたコミュニティで共有されてきた結果、スラッシュはほかのゲイ文学とは読み手の感覚が異なり、情動的関係が重要視され、時にはセックスが物語の中で重要な役割を果たすことがある
性的な同性愛を描いたボーイズラブ(やおい)の漫画や小説が翻訳された結果、このタイプのスラッシュが欧米にも広まった。
スラッシュという単語が二次創作のみをさしていると感じるスラッシュのファンもいるため、オリジナルスラッシュ(オリジナルのボーイズラブも含む)という言葉について論争になることがある
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
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関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- AFIslash.com the original AFI slash site [1]
- "Harry Potter and the mystery of an academic obsession" --an August, 2006 Observer article discussing Harry Potter slash.
- Slash Fiction/Fanfiction - The International Handbook of Virtual Learning Environments