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人間との関わり: 大調和会 小史
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|下位分類 =* ''P. p. cassinii'' ベニバラウソ<br />
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* ''P. p. griseiventris'' ウソ<br />
* ''P. p. rosacea'' アカウソ など<br />
* [[#亜種|詳細は本文の亜種の節を参照]]
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'''ウソ'''('''鷽'''、学名:''Pyrrhula pyrrhula'')は、[[スズメ目]][[アトリ科]]に分類される[[鳥類|鳥]]の一種である。名の由来は[[口笛]]を意味する古語「うそ」から来ており、ヒーホーと口笛のような鳴き声を発することから名付けられた。その細く、悲しげな調子を帯びた鳴き声は古くから愛されている。現在鷽は130円[[切手]]デザインのモデルなっている。
'''ウソ'''('''鷽'''、[[学名]]:''Pyrrhula pyrrhula'' {{AUY|Linnaeus|1758}})は、[[スズメ目]][[アトリ科]]に分類される[[鳥類|鳥]]の一[[ (分類学)|種]]である。[[和]]の由来は[[口笛]]を意味する古語「うそ」から来ており、ヒーホーと[[口笛]]のような鳴き声を発することから名付けられた<ref name="中川雄三 (2010)、220頁">[[#ひと目でわかる野鳥|中川雄三 (2010)、220頁]]</ref>。その細く、悲しげな調子を帯びた鳴き声は古くから愛され[[江戸時代]]には「弾琴鳥」や「うそひめ」と呼ばれこともあった<ref name="細川博昭 (2012)、97頁">[[#江戸時代に描かれた鳥たち|細川博昭 (2012)、97頁]]</ref>


== 分布 ==
== 分布 ==
[[ヨーロッパ]][[アジア]]の北部に分布する。冬季に北方に生息していた個体は南方へ移動する
[[ヨーロッパ]]から[[アジア]]の北部にかけて広く分布する<ref name="worldbirdnames" /><ref name="叶内拓哉 (2006)、570-571頁">[[#山溪ハンディ図鑑7日本の野鳥|叶内拓哉 (2006)、570-571頁]]</ref>。冬季に北方に生息していた個体は南方へ移動する


[[日本]]では、本州中部以北で繁殖し、冬は九州以北の地に移動する。また、[[冬鳥]]とも渡来する。
[[日本]]では、亜種ウソ(''P. p. griseiventris'')が本州中部以北の[[亜高山帯]]などで繁殖し、冬は九州以北の地に移動して越冬する<ref name="中川雄三 (2010)、220頁" />。また、亜種アカウソ(''P. p. rosacea'')は[[冬鳥]]とてし秋から春にかけて滞在する<ref name="中川雄三 (2010)、220頁" />


== 形態 ==
== 形態 ==
全長15-16cm、体重21-34g、翼長8.5cm。体は[[スズメ]]よりやや大きく、頭の上と尾、翼の大部分は[[黒色]]、背中は灰青色。[[くちばし]]は太く短く黒い。雄の頬、喉は淡桃色をしているが、雌にはこの淡桃色の部分はない。雄は照鷽(てりうそ)、雌は雨鷽(あめうそ)と呼ばれる。
全長15-16 [[センチメートル|cm]]<ref name="叶内拓哉 (2006)570-571頁" /><ref name="大橋弘一(2007)、64-65頁">[[#庭で楽しむ野鳥の本|大橋弘一 (2007)、64-65頁]]</ref>、[[翼幅|翼開長]]は約26 cm<ref name="中川雄三 (2010)、220頁" /><ref name="叶内拓哉 (2006/3)、168頁" />。体重21-34g。体は[[スズメ]]よりやや大きく、頭の上と尾、翼の大部分は[[黒色]]、背中は灰青色。[[くちばし]]は太く短く黒い。雄の頬、喉は淡桃色をしているが、雌にはこの淡桃色の部分はない。雄は照鷽(てりうそ)、雌は雨鷽(あめうそ)と呼ばれる。


== 生態 ==
== 生態 ==
繁殖期は山地の[[針葉樹]]林に生息し、非繁殖期には低地の林にも生息する。非繁殖期は小規模の群れを形成する。
繁殖期は山地の[[針葉樹]]林に生息し、非繁殖期には低地の林にも生息する。非繁殖期は10羽ほどの小規模の群れを形成する<ref name="高木清和 (2000)、142-143頁">[[#野山の鳥|高木清和 (2000)、142-143頁]]</ref>


春に木の[[実]]や[[芽]](時には[[サクラ]]、[[ウメ]]、[[モモ]]などの花や[[蕾]]<ref group="注釈">サクラの中で、特にソメイヨシノの蕾を好んで食べる。</ref><ref name="叶内拓哉 (2006)、570-571頁" />)などを食べ、繁殖期に[[昆虫]]の[[ガ]]の幼虫や[[クモ]]などを食べ<ref name="叶内拓哉 (2006/3)、168頁" />、秋には[[ズミ]]や[[ナナカマド]]の[[果実]]などを食べる<ref name="中川雄三 (2010)、220頁" />。
木の実や芽、[[昆虫]]などを食べ、時には[[サクラ]]、[[ウメ]]などの花やつぼみもエサとなる。


繁殖期は5-7月。針葉樹の枝の上に枯れ枝などを使って椀形の巣を作る。1腹4-6個の卵を産む。抱卵期間は12-14日で、雌が抱卵する。雛は12-18日で巣立ちする。
繁殖期は5-7月で、[[縄張り]]をもち[[一夫一婦制|つがい]]で生活する<ref name="中川雄三 (2010)、220頁" />。針葉樹の枝の上に枯れ枝などを使って椀形の[[]]を作る。1腹4-6個の[[]]を産む。抱卵期間は12-14日で、雌が抱卵する。雛は12-18日で巣立ちする。


囀声は「フィー、フィー」と口笛のような澄んだ声で、単調な節を交え、雄だけでなく雌も囀る。
囀声は「フィー、フィー」と口笛のような澄んだ声で<ref name="中川雄三 (2010)、220頁" />、単調な節を交え、雄だけでなく雌も囀る。飛翔は浅い波形<ref name="高木清和 (2000)、142-143頁" />


また、囀る時に、左右の脚を交互に持ち上げることから別名「弾琴鳥」とも呼ばれる。
また、囀る時に、左右の脚を交互に持ち上げることから別名「弾琴鳥」とも呼ばれる。
<gallery widths="125">
ファイル:Bullfinch Nest 16-05-10 (20 mm x 14.5 mm Egg Size) (4612522613).jpg|[[巣]]と[[卵]]
ファイル:JungerDompfaff.jpg|幼鳥
ファイル:Pyrrhula pyrrhula griseiventris eating.JPG|木の実を食べるウソ(オス)
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== 亜種 ==
== 分類 ==
=== 亜種 ===
広義のウソ(''Pyrrhula pyrrhula'')は、以下の[[亜種]]に分類されている<ref name="ITIS" /><ref name="worldbirdnames">{{Cite web |url=http://worldbirdnames.org/n-finches.html |title=IOC World Bird List Version 3.4 (Finches, NW warblers & orioles) |publisher=[[国際鳥類学会議|国際鳥類学会議(IOC)]] |language=英語 |accessdate=2013-08-12}}</ref><ref name="avibase">{{Cite web |url=http://avibase.bsc-eoc.org/species.jsp?lang=EN&avibaseid=24764DC7AD26E5F7 |title=Eurasian Bullfinch (Pyrrhula pyrrhula) (Linnaeus, 1758) |publisher=[[バードライフ・インターナショナル]] |language=英語 |accessdate=2013-08-12}}</ref>。
* ''P. p. pileata'' {{AU|MacGillivray, W}}, [[1837年|1837]] - [[ブリテン諸島]]に分布する。
* ''P. p. pyrrhula'' ({{AU|Linnaeus}}, [[1758年|1758]]) - ヨーロッパ(北部、中央南部、東部)と[[シベリア]]中央部に分布する。
* ''P. p. europoea'' {{AU|Vieillot}}, [[1816年|1816]] - ヨーロッパ西部に分布する。
* ''P. p. iberiae'' {{AU|Voous}}, [[1951年|1951]] - [[フランス]]南西部と[[イベリア半島]]北部に分布する。
* ''P. p. paphlagoniae'' {{AU|Roselaar}}, [[1995年|1995]] - [[トルコ]]北西部に分布する。
* ''P. p. rossikowi'' {{AU|Derjugin}} & {{AU|Bianchi}}, [[1901年|1901]] - トルコ北東部と[[コーカサス]]に分布する。
* ''P. p. cineracea'' {{AU| Cabanis}}, [[1872年|1872]] - 西[[シベリア]]と[[カザフスタン]]北東部から東シベリアと[[中国]]北東部にかけて分布する。
* ''P. p. caspica'' {{AU|Witherby}}, [[1908年|1908]] - [[アゼルバイジャン]]と[[イラン]]北部に分布する。
* ''P. p. cassinii'' {{AU|Baird, SF}}, [[1869年|1869]] - '''ベニバラウソ'''、シベリア東部に分布する。オスは胸から腹にかけて紅色<ref name="中川雄三 (2010)、220頁" />。冬鳥として、まれに日本の[[中部地方]]以北に飛来する<ref name="叶内拓哉 (2006)、570-571頁" /><ref name="叶内拓哉 (2006/3)、168頁">[[#絵解きで野鳥が識別できる本|叶内拓哉 (2006/3)、168頁]]</ref>。
* ''P. p. griseiventris'' {{AU|Lafresnaye}}, [[1841年|1841]] - '''ウソ'''、[[千島列島]]と日本に分布する。
* ''P. p. rosacea'' {{AU|Seebohm}}, [[1882年|1882]] - '''アカウソ'''、[[樺太]]に分布する。冬鳥として日本に飛来する。オスは胸から腹にかけて淡い紅色<ref name="中川雄三 (2010)、220頁" />。[[北海道]]では小数が繁殖しているとみられている<ref name="叶内拓哉 (2006)、570-571頁" />。
<gallery>
ファイル:Pyrrhula pyrrhula -Lochwinnoch, Renfrewshire, Scotland-8.jpg|''P. p. pileata''<br />オス
ファイル:Dompap.jpg|ベニバラウソ<br />''P. p. cassinii''<br />オス
ファイル:Pyrrhula pyrrhula griseiventris a2.JPG|ウソ<br />''P. p. griseiventris''<br />オス
ファイル:Pyrrhula pyrrhula rosacea male and female.JPG|アカウソ<br />''P. p. rosaceas''<br />左:オス、右:メス
</gallery>
=== 日本で見られる亜種 ===
日本で観察できるのは、次の3亜種である。
日本で観察できるのは、次の3亜種である。
*ウソ(''P.p.griseiventris'')
*ウソ(''P. p. griseiventris'')
*アカウソ(''P.p.rosacea'')
*アカウソ(''P. p. rosacea'')
冬鳥として九州以北に渡来する。[[利尻島]]では繁殖している可能性がある。
冬鳥として[[九州]]以北に渡来する。[[利尻島]]では繁殖している可能性がある。
*ベニバラウソ(''P.p.cassinii'')
*ベニバラウソ(''P. p. cassinii'')
冬に北海道や本州で、まれに観察される。
冬に北海道や[[本州]]で、まれに観察される<ref name="中川雄三 (2010)、220頁" />

== 種の保全状況評価 ==
個体数は減少傾向にあり、[[国際自然保護連合]](IUCN)により[[2004年]]から[[レッドリスト]]の[[軽度懸念]](LC)の指定を受けている<ref name="IUCN" />。

日本では亜種ウソ(''P. p. griseiventris'')が、以下の[[都道府県]]でレッドリストの指定を受けている<ref name="jpnrdb">{{Cite web |url=http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=02180240423 |title=日本のレッドデータ検索システム「ウソ」 |publisher=(エンビジョン環境保全事務局)|accessdate=2013-08-15}} - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典元の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。</ref>。
* 準絶滅危惧(NT) - [[東京都]](本土部)
* 希少種 - [[滋賀県]]<ref group="注釈">滋賀県の希少種は、[[環境省]]のレッドリストのカテゴリーの準絶滅危惧相当。</ref>


== 人間との関わり ==
== 人間との関わり ==
材木に付く虫を食べるためと、『鷽』という字が学の旧字『學』に似ていることから、[[太宰府天満宮]]や[[亀戸天神社]]では「天神様の使い」とされ、鷽を模した木彫りの人形「木鷽」が土産の定番となっている。この木鷽を使った[[鷽替え]]神事も[[菅原道真]]を祀った大きな神社の定番である。
材木に付く虫を食べるためと、『鷽』という字が学の旧字『學』に似ていることから、[[太宰府天満宮]]や[[亀戸天神社]]では「天神様の使い」とされ、鷽を模した[[木彫|木彫り]][[人形]][[木うそ|木鷽]]」が[[土産]]の定番となっている。この木鷽を使った[[鷽替え]]神事も[[菅原道真]]を祀った大きな[[神社]]の定番である<ref name="真木広造 (2012)、233頁">[[#名前がわかる野鳥大図鑑|真木広造 (2012)、233頁]]</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.kameidotenjin.or.jp/events/monthly01.html |title=祭り・年中行事「うそ替え神事」 |publisher=[[亀戸天神社]] |accessdate=2013-08-15}}</ref>
{{main|鷽替え}}
[[1839年]]([[天保]]10年)に毛利梅園による『梅園禽譜』で描写されている<ref name="細川博昭 (2012)、97頁" />。[[高村光太郎]]が[[1927年]]([[昭和]]2年)11月に第1回大調和美術展に「木彫ウソ鳥」を出展した時の思い出を随筆『木彫ウソを作った時』に綴っている<ref>{{Cite web |url=http://members3.jcom.home.ne.jp/daichowa/mokuji-all.html |title=大調和会 小史 |publisher=大調和会 |accessdate=2013-08-15}}</ref><ref>{{Cite web |author=高村光太郎 |url=http://www.aozora.gr.jp/cards/001168/files/46501_25619.html |title=木彫ウソを作った時 |publisher=[[青空文庫]] |accessdate=2013-08-15}}</ref>。

春先に[[公園]]の[[ソメイヨシノ]]や[[果樹園]]のウメやモモの蕾を摘み取ってしまうため、公園管理者や果樹農家から害鳥扱いされることもある<ref name="中川雄三 (2010)、220頁" />。日本ではオスのウソが130円[[日本の普通切手|切手]]デザインのモデルになっている<ref>{{Cite web |url=http://www.post.japanpost.jp/kitte_hagaki/stamp/standard/index.html |title=普通切手一覧 |publisher=[[日本郵政]] |accessdate=2013-08-15}}</ref>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
<div class="references-small">{{Reflist|group=注釈}}</div>
=== 出典 ===
<div class="references-small">{{Reflist|2}}</div>


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* [[黒田長久]]監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科9 鳥III』、[[平凡社]]、[[1986年]]、160頁。
* [[黒田長久]]監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科9 鳥III』、[[平凡社]]、[[1986年]]、160頁。
* 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、[[文一総合出版]]、[[2004年]]、318-319頁。
* 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、[[文一総合出版]]、[[2004年]]、318-319頁。
* {{Cite book|和書 |author=高木清和 |date=2000-08 |title=フィールドのための野鳥図鑑-野山の鳥 |publisher=[[山と渓谷|山と溪谷社]] |isbn=4635063313 |ref=野山の鳥}}
* {{Cite book|和書 |author=叶内拓哉 |date=2006-03 |title=絵解きで野鳥が識別できる本 |publisher=文一総合出版 |isbn=978-4829901717 |ref=絵解きで野鳥が識別できる本}}
* {{Cite book|和書 |author=叶内拓哉、安部直哉 |date=2006-10-01 |title=山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4635070077 |edition=第2版 |ref=山溪ハンディ図鑑7日本の野鳥}}
* {{Cite book|和書 |author=[[大橋弘一]] |date=2007-11-01 |title=庭で楽しむ野鳥の本 |publisher=山と溪谷社 |pages= |isbn=978-4635596190 |ref=庭で楽しむ野鳥の本}}
* {{Cite book|和書 |editor=中川雄三(監修) |date=2010-01 |title=ひと目でわかる野鳥 |publisher=成美堂出版 |isbn=978-4415305325 |ref=ひと目でわかる野鳥}}
* {{Cite book|和書 |author=真木広造 |date=2012-04-10 |title=名前がわかる野鳥大図鑑 |publisher=[[永岡書店]] |isbn=978-4522430866 |ref=名前がわかる野鳥大図鑑}}
* {{Cite book|和書 |author=細川博昭 |date=2012-02-16 |title=江戸時代に描かれた鳥たち 輸入された鳥、身近な鳥 |publisher=[[ソフトバンククリエイティブ]] |isbn=978-4797352566 |ref=江戸時代に描かれた鳥たち}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[スズメ]]
* [[アトリ科]]
* [[アトリ]]
* [[日本の野鳥一覧]]
* [[日本の野鳥一覧]]
* [[鷽替え]]
* [[鷽替え]]
* [[木うそ]]


== 外部リンク ==
{{commons|Pyrrhula pyrrhula}}
{{commons&cat|Pyrrhula pyrrhula|Pyrrhula pyrrhula}}
{{wikispecies|Pyrrhula pyrrhula}}
{{wiktionary|鷽}}
* [http://www.birdfan.net/pg/kind/ord17/fam1724/spe172415/ ウソ] ([[日本野鳥の会]])
* [http://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/9.html 日本の鳥百科「ウソ」] ([[サントリー]])


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2013年8月15日 (木) 11:05時点における版

ウソ
亜種ウソ♂ Pyrrhula pyrrhula griseiventris
亜種ウソ♂ Pyrrhula pyrrhula griseiventris
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
: アトリ科 Fringillidae
: Pyrrhula
: ウソ P. pyrrhula
学名
Pyrrhula pyrrhula Linnaeus1758
英名
Eurasian Bullfinch[2]
亜種


ウソ学名Pyrrhula pyrrhula Linnaeus1758)は、スズメ目アトリ科に分類されるの一である。和名の由来は口笛を意味する古語「うそ」から来ており、ヒーホーと口笛のような鳴き声を発することから名付けられた[3]。その細く、悲しげな調子を帯びた鳴き声は古くから愛され、江戸時代には「弾琴鳥」や「うそひめ」と呼ばれることもあった[4]

分布

ヨーロッパからアジアの北部にかけて広く分布する[5][6]。冬季に北方に生息していた個体は南方へ移動する。

日本では、亜種ウソ(P. p. griseiventris)が本州中部以北の亜高山帯などで繁殖し、冬は九州以北の低地に移動して越冬する[3]。また、亜種アカウソ(P. p. rosacea)は冬鳥とて飛来し秋から春にかけて滞在する[3]

形態

全長は15-16 cm[6][7]翼開長は約26 cm[3][8]。体重は21-34g。体はスズメよりやや大きく、頭の上と尾、翼の大部分は黒色、背中は灰青色。くちばしは太く短く黒い。雄の頬、喉は淡桃色をしているが、雌にはこの淡桃色の部分はない。雄は照鷽(てりうそ)、雌は雨鷽(あめうそ)と呼ばれる。

生態

繁殖期は山地の針葉樹林に生息し、非繁殖期には低地の林にも生息する。非繁殖期は10羽ほどの小規模の群れを形成する[9]

春に木の(時にはサクラウメモモなどの花や[注釈 1][6])などを食べ、繁殖期に昆虫の幼虫やクモなどを食べ[8]、秋にはズミナナカマド果実などを食べる[3]

繁殖期は5-7月で、縄張りをもちつがいで生活する[3]。針葉樹の枝の上に枯れ枝などを使って椀形のを作る。1腹4-6個のを産む。抱卵期間は12-14日で、雌が抱卵する。雛は12-18日で巣立ちする。

囀声は「フィー、フィー」と口笛のような澄んだ声で[3]、単調な節を交え、雄だけでなく雌も囀る。飛翔は浅い波形[9]

また、囀る時に、左右の脚を交互に持ち上げることから別名「弾琴鳥」とも呼ばれる。

分類

亜種

広義のウソ(Pyrrhula pyrrhula)は、以下の亜種に分類されている[2][5][10]

日本で見られる亜種

日本で観察できるのは、次の3亜種である。

  • ウソ(P. p. griseiventris
  • アカウソ(P. p. rosacea

冬鳥として九州以北に渡来する。利尻島では繁殖している可能性がある。

  • ベニバラウソ(P. p. cassinii

冬に北海道や本州で、まれに観察される[3]

種の保全状況評価

個体数は減少傾向にあり、国際自然保護連合(IUCN)により2004年からレッドリスト軽度懸念(LC)の指定を受けている[1]

日本では亜種ウソ(P. p. griseiventris)が、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている[12]

人間との関わり

材木に付く虫を食べるためと、『鷽』という字が学の旧字『學』に似ていることから、太宰府天満宮亀戸天神社では「天神様の使い」とされ、鷽を模した木彫り人形木鷽」が土産の定番となっている。この木鷽を使った鷽替え神事も菅原道真を祀った大きな神社の定番である[13][14]

1839年天保10年)に毛利梅園による『梅園禽譜』で描写されている[4]高村光太郎1927年昭和2年)11月に第1回大調和美術展に「木彫ウソ鳥」を出展した時の思い出を随筆『木彫ウソを作った時』に綴っている[15][16]

春先に公園ソメイヨシノ果樹園のウメやモモの蕾を摘み取ってしまうため、公園管理者や果樹農家から害鳥扱いされることもある[3]。日本ではオスのウソが130円切手デザインのモデルになっている[17]

脚注

注釈

  1. ^ サクラの中で、特にソメイヨシノの蕾を好んで食べる。
  2. ^ 滋賀県の希少種は、環境省のレッドリストのカテゴリーの準絶滅危惧相当。

出典

  1. ^ a b IUCN Red List of Threatened Species. 2013.1 (Pyrrhula pyrrhula)” (英語). IUCN. 2013年8月12日閲覧。
  2. ^ a b Pyrrhula pyrrhula (Linnaeus, 1758)” (英語). ITIS. 2013年8月15日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k 中川雄三 (2010)、220頁
  4. ^ a b 細川博昭 (2012)、97頁
  5. ^ a b IOC World Bird List Version 3.4 (Finches, NW warblers & orioles)” (英語). 国際鳥類学会議(IOC). 2013年8月12日閲覧。
  6. ^ a b c d e 叶内拓哉 (2006)、570-571頁
  7. ^ 大橋弘一 (2007)、64-65頁
  8. ^ a b c 叶内拓哉 (2006/3)、168頁
  9. ^ a b 高木清和 (2000)、142-143頁
  10. ^ Eurasian Bullfinch (Pyrrhula pyrrhula) (Linnaeus, 1758)” (英語). バードライフ・インターナショナル. 2013年8月12日閲覧。
  11. ^ Filipe M. Bianchi ブラジルの昆虫学者 or Valentin Lvovitsch Bianchi (1857-1920) ロシアの鳥類学者
  12. ^ 日本のレッドデータ検索システム「ウソ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2013年8月15日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典元の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  13. ^ 真木広造 (2012)、233頁
  14. ^ 祭り・年中行事「うそ替え神事」”. 亀戸天神社. 2013年8月15日閲覧。
  15. ^ 大調和会 小史”. 大調和会. 2013年8月15日閲覧。
  16. ^ 高村光太郎. “木彫ウソを作った時”. 青空文庫. 2013年8月15日閲覧。
  17. ^ 普通切手一覧”. 日本郵政. 2013年8月15日閲覧。

参考文献

  • 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科9 鳥III』、平凡社1986年、160頁。
  • 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、文一総合出版2004年、318-319頁。
  • 高木清和『フィールドのための野鳥図鑑-野山の鳥』山と溪谷社、2000年8月。ISBN 4635063313 
  • 叶内拓哉『絵解きで野鳥が識別できる本』文一総合出版、2006年3月。ISBN 978-4829901717 
  • 叶内拓哉、安部直哉『山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥』(第2版)山と溪谷社、2006年10月1日。ISBN 4635070077 
  • 大橋弘一『庭で楽しむ野鳥の本』山と溪谷社、2007年11月1日。ISBN 978-4635596190 
  • 中川雄三(監修) 編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年1月。ISBN 978-4415305325 
  • 真木広造『名前がわかる野鳥大図鑑』永岡書店、2012年4月10日。ISBN 978-4522430866 
  • 細川博昭『江戸時代に描かれた鳥たち 輸入された鳥、身近な鳥』ソフトバンククリエイティブ、2012年2月16日。ISBN 978-4797352566 

関連項目

外部リンク