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「ボンバルディア CRJ」の版間の差分

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{{ Infobox 航空機
{{ Infobox 航空機
| 名称 = ボンバルディア CRJ
| 名称 = ボンバルディア CRJ
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** ほか
<!-- 運用者の選択基準(出典{{sfn|Flightglobal|2013|p=17}})
1) 30機以上を運航しているブランドを選択。
2) 日本語記事であることを考慮し、日本の企業を追加。-->
| 初飛行年月日 = 1991年5月10日 (CRJ100){{sfn|青木|2014|p=126}}
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[[ファイル:Leave in Nagoya Airfield Aichi, JAPAN.jpg|thumb|right|乗降は、ドアと一体になったタラップを使用する。 - 名古屋飛行場]]
'''ボンバルディア CRJ'''(Bombardier Canadair Regional Jet)は、[[カナダ]]の[[ボンバルディア・エアロスペース]]社が製造・販売しているジェット[[旅客機]]のシリーズ名である。


'''ボンバルディア CRJ'''(Bombardier CRJ)は、[[カナダ]]の[[ボンバルディア・エアロスペース]]社が製造・販売している[[ジェット機|ジェット]][[旅客機]]の製品群であり、'''CRJファミリー'''あるいは'''CRJシリーズ'''とも呼ばれる{{sfn|青木|2014|p=126}}{{sfn|公式サイト Commercial Aircraft}}{{sfn|CRJ200 Fact Sheet}}。CRJファミリーを構成する主要モデルは、胴体長が短い順に '''CRJ100/200'''、 '''CRJ700'''、 '''CRJ900'''、 '''CRJ1000''' の4機種で、座席数や[[航続距離]]などが異なる細かい派生型が存在する{{sfn|青木|2014|pp=126-132}}。従来、座席数100席以下の短距離航空路線は[[プロペラ機]]が主流であったが、CRJの実用化成功により、小型ジェット機「[[リージョナルジェット]]」市場が大きく成長した{{sfn|青木|2014|p=130}}{{sfn|橋本|屋井|2011|pp=40-42}}{{sfn|細谷|2007|pp=40-45}}{{sfn|日機連|IADF|2006a|pp=5–1-5–2}}。
== 概要 ==
カナダの航空機製造メーカーである[[カナディア]]社は、[[1980年代]]に就航した[[ビジネスジェット]]である[[ボンバルディア チャレンジャー 600|CL-600 チャレンジャー]]をベースに胴体を延長する等の設計変更を施し、地方都市間輸送用の[[リージョナルジェット|リージョナル・ジェット]]の製造を計画した(そのため、書類上はCL-600の派生型という扱いになっていた)。機体の開発が開始された時、既にボンバルディア・エアロスペースはカナディア社を買収していたが、「CRJ(カナディア・リージョナル・ジェット)」の名称が付けられた。


== 開発の経緯 ==
最初のタイプであるCRJ100は[[1989年]]に開発が開始され、[[1991年]]5月に初飛行を行った50席級ジェット機のパイオニアである。2005年11月の時点で30以上の航空会社へ1,200機以上が引き渡されている。
=== リージョナルジェットCRJ100/200の登場 ===
1980年代において、旅客の少ない短距離路線を運航する航空機は、燃料消費が少なく経済的であることと、短距離ではジェット機の高速性による時間短縮効果が目立たないことからプロペラ機の方が適しているという考えが主流だった{{sfn|青木|2014|pp=16, 126}}{{sfn|細谷|2007|pp=40-45}}{{sfn|日機連|IADF|2006a|p=5–1}}。


当時、[[ビジネスジェット]]機[[ボンバルディア チャレンジャー 600|チャレンジャー600]]を製造していたカナダの航空機メーカーである[[カナディア]]社は、同機の設計を流用して開発費を抑えることで、低価格で経済的な小型ジェット旅客機を実用化できないか模索していた{{sfn|青木|2014|p=126}}{{sfn|細谷|2007|pp=44-45}}{{sfn|日機連|IADF|2006a|p=5–1}}。この構想は具体化され、[[1987年]]にCRJファミリー最初のモデルであるCRJ100の基本設計が開始された{{sfn|青木|2014|p=126}}{{sfn|橋本|屋井|2011|p=41}}。この時、カナディア社はボンバルディア社の傘下になっていたが{{refnest|group=注釈|1986年12月にカナディア社の株式がカナダ政府からボンバルディア社に売却された{{sfn|細谷|2007|p=190}}。}}、開発するモデルにはCRJ('''Canadair Regional Jet'''; カナディア・リージョナル・ジェット)とカナディアの名前が残された{{sfn|橋本|屋井|2011|p=41}}。
機体後部に集中装備された2発の[[ジェットエンジン]]とT字[[尾翼]]を持つ[[ナローボディ機|ナローボディ]]旅客機である。小さな機体に対応していない[[空港]]に乗り入れるため、機体に乗降用[[タラップ]](機体前部左舷のドアと一体になっている)が内蔵されていることなどが大きな特徴である。客室は他社のリージョナルジェットと同様に、通路を挟んで2席ずつの座席配置となっている。非常にコンパクトな機体で、身長170cmの大人が真っ直ぐ起立できるスペースは通路のみであり、トイレや客席部分では頭が天井に付く状態となっている。


CRJ100の胴体断面はチャレンジャーの設計が流用されたが、[[主翼]]は新規設計された{{sfn|青木|2014|p=126}}。翌[[1998年]]に機体全体の基本仕様がまとめられ、[[1989年]]3月に製造計画が正式に進められることになった{{sfn|青木|2014|p=126}}。さらに、[[1990年]]10月には航続距離を延ばした派生型のCRJ100ERが発表され、標準型と平行して開発されることになった{{sfn|青木|2014|p=126}}。CRJ100の初飛行は[[1991年]]5月10日で、その後、約1年3か月にわたる試験を経て、[[1992年]]7月にカナダの[[型式証明]]を取得した{{sfn|FAA|2013|p=10}}。続いて、[[1993年]]1月には[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[連邦航空局]](以下、FAA)と[[欧州航空安全機関]](以下、EASA)の型式証明も交付された{{sfn|青木|2014|p=126}}{{sfn|FAA|2013|p=10}}{{sfn|EASA|2010|p=4}}。初就航は[[ドイツ]]の[[ルフトハンザ・シティーライン]]により1992年11月に行われた{{sfn|青木|2014|p=126}}。
シリーズ中には座席数に応じて、CRJ200(50席)、CRJ700(70席)、CRJ900(90席)等のバリエーションが存在する。CRJ700、CRJ900の開発、製造には[[1990年代]]から[[日本]]の[[三菱重工業]]も参加しているが、[[MRJ]]との兼ね合いから[[2008年]]に離脱を決定した。


CRJ200は、CRJ100の[[エンジン]]を[[GE・アビエーション|ゼネラル・エレクトリック]](以下、GE)の[[ゼネラル・エレクトリック TF34/CF34|CF34-3B1]]に変更したもので、[[1995年]]に発表された{{sfn|青木|2014|p=127}}。CRJ200の最初の引き渡しは[[オーストリア]]の[[チロリアン航空]]に対して[[1996年]]1月に行われた{{sfn|青木|2014|p=128}}。生産227号機以降はCRJ200を標準型として生産されている{{sfn|青木|2014|p=127}}。
日本では[[ジェイエア|J-AIR]]が200型を9機保有し、[[北海道]]、[[東北地方|東北]]、[[九州]]、[[四国]]などの地方都市空港間の路線で使用している。また、[[アイベックスエアラインズ|IBEXエアラインズ]]が、100型、200型を各2機と700型を5機保有し、[[成田空港]]、[[大阪国際空港|伊丹空港]]、[[仙台空港]]を拠点として運用している。なお日本における販売代理店は[[総合商社]]の[[双日]]がつとめている。


=== 胴体延長モデル CRJ700の開発 ===
== 派生型 ==
1995年からは、リージョナルジェット市場の成長に対応するため、CRJ100/200の胴体を延長した機体(計画名はCRJ-X)の検討がすすめられた{{sfn|青木|2014|p=129}}。CRJ-Xの基本仕様は1996年に確定され、[[1997年]]にボンバルディア社の役員会の承認が下りて正式に製造計画が進められることになった{{sfn|青木|2014|p=129}}。
[[ファイル:Jlj 206j.JPG|thumb|right|ジェイエアのCRJ200(旧塗装)]]
[[ファイル:QXcr7DEN2 edit.JPG|thumb|right|ホライゾン・エアのCRJ700]]
=== CRJ100/CRJ200 ===
CRJ100はCRJシリーズの最初のモデル。50人乗りで[[GE・アビエーション|ゼネラル・エレクトリック]]の[[ゼネラル・エレクトリック TF34/CF34|CF34]]-3A1エンジンを搭載する。開発当時においては、西側諸国における初の本格的に量産された50席クラスのジェット旅客機であった。


その後、CRJ-Xは客席数が70席程度であることにちなんでCRJ700と命名され、[[1999年]]5月27日に初飛行した{{sfn|青木|2014|p=129}}。飛行試験と地上試験が重ねられて[[2000年]]12月にカナダの[[型式証明]]を取得し、翌[[2001年]]1月にEASA、同年2月にFAAの型式証明も取得した{{sfn|EASA|2010|p=11}}{{sfn|FAA|2013|p=13}}。顧客への引き渡しは、[[2002年]]2月に[[フランス]]の航空会社[[ブリテール]]に対して行われた{{sfn|青木|2014|p=129}}のが最初である。
CRJ200は、CRJ100のエンジンをゼネラル・エレクトリックのCF34-3B1に置き換え離陸重量を増加したタイプであり、胴体、翼などはCRJ100と変わらない。

=== さらなる大型化へ CRJ900の開発 ===
ボンバルディア社は1999年10月にCRJ700の胴体をさらに延長した機体の開発計画を発表した{{sfn|青木|2014|p=130}}。2000年3月には客室モックアップが完成し、2000年7月の[[ファーンボロー国際航空ショー]]期間中に計画が公にされた{{sfn|青木|2014|p=130}}。このモデルは標準的な客席数が90席であることからCRJ900と名付けられた{{sfn|青木|2014|p=130}}。

CRJ900試作機の初飛行は2001年2月21日であるが、この時の試作機はCRJ700試作機の胴体のみを延長したものであり<ref group="注釈">エンジン、降着装置、そして主翼構造などはCRJ700のままであった{{sfn|青木|2014|p=130}}</ref>{{sfn|青木|2014|p=130}}、最初からCRJ900として製造された機体の初飛行は2001年10月20日であった{{sfn|青木|2014|p=130}}。その後、各種試験が進められ、2002年9月にカナダの型式証明を取得、続いて同年10月にFAA、11月にEASAの型式証明を取得した{{sfn|青木|2014|p=130}}{{sfn|FAA|2013|p=18}}{{sfn|EASA|2010|p=25}}。顧客への最初の引き渡しは2003年2月、相手はアメリカの[[メサ航空]]だった{{sfn|青木|2014|p=130}}。

さらに、CRJ900のフレームを使用しつつ座席を減らすことで客室にゆとりを持たせたモデルがCRJ705として開発され、[[2005年]]5月にカナダとFAAの型式証明を取得し、同年11月にはEASAの型式証明も得た{{sfn|FAA|2013|p=16}}{{sfn|EASA|2010|p=18}}。

=== 日本企業の参画 ===
CRJ700、CRJ900の開発・製造には[[日本]]の[[三菱重工業]]も参加し、胴体後部とエンジン[[パイロン]]の設計と製造を担当した{{sfn|林賢吾|矢代廣志|水野鉄治|庄野貴志|2002}}。しかし、その後、三菱重工は[[ボーイング787]]の開発計画にも参画することになり開発・生産のリソースをボーイング787に集中する必要があるとの理由で、ボンバルディア社との製造契約を解消することが[[2008年]]2月に発表された{{sfn|レスポンス|2008}}。なお、提携解消に関しては、発表翌月に三菱重工が事業化を決定した[[MRJ]]{{sfn|MHI|2008}}との競合を避けるためとの見方もある{{sfn|日本政策投資銀行|十六銀行|2011|p=3}}。

=== NextGen への進化 ===
CRJファミリーの相次ぐ実用化により、ボンバルディア社はリージョナルジェット市場の開拓に成功した{{sfn|橋本|屋井|2011|pp=40-42}}{{sfn|日機連|IADF|2006a|pp=5–1-5–2}}。しかし、CRJに続いて[[ブラジル]]の[[エンブラエル]]社から[[エンブラエル ERJ 145|ERJ]]や[[エンブラエル 170|Eジェット]]といったライバル製品が市場に投入され、ビジネスジェット機から派生したCRJ100の設計を基本的に踏襲しているCRJファミリーは時代とともに見劣りするようになった{{sfn|青木|2014|p=131}}{{sfn|日機連|IADF|2006a|pp=5–2-5–3}}。

そこで、ボンバルディア社は、新規設計の[[ボンバルディア Cシリーズ|Cシリーズ]]の開発を進めるとともに{{sfn|青木|2014|p=131}}{{sfn|日機連|IADF|2006a|pp=5–3-5–7}}、CRJファミリーの設計を見直すことを決めた{{sfn|青木|2014|p=131}}。このCRJの改良版は“NextGen”と名付けられ、[[2007年]]5月に発表された{{sfn|青木|2014|p=131}}。NextGenファミリーで最初に公開されたのはCRJ900NextGenで、2007年6月の[[パリ航空ショー]]でのことだった{{sfn|青木|2014|p=131}}。同月には顧客への初引き渡しがアメリカのノースウェスト・エアリンクに対して行われた{{sfn|青木|2014|p=131}}。

NextGenの登場後には、CRJ700とCRJ900の生産はNextGenに移行された{{sfn|青木|2014|p=128}}。また、CRJ100/200にはNextGenモデルは開発されていないが、新規生産時や機体改修時にNextGenの構成要素をオプションとして追加することも可能とされている{{sfn|青木|2014|p=128}}。

=== 最大モデル CRJ1000 の投入 ===
CRJファミリー中で最大のモデルとなるCRJ1000NextGenは、2007年2月に計画名CRJ900Xとして開発が公式に開始された{{sfn|青木|2014|p=132}}。CRJ900X試作機の初飛行は2008年9月であったが、このときの機体はCRJ900試作機を再改造<ref group="注釈">改造元のCRJ900試作機は、CRJ700試作機の改造機である。</ref>した作られたものであった{{sfn|青木|2014|p=132}}。CRJ1000NextGenとして製造された機体の初飛行は[[2009年]]7月に行われた。
その後、飛行試験などが進められたが、飛行操縦ソフトウェアに問題が発見されるなどの理由で試験期間が延長された{{sfn|青木|2014|p=132}}。それにより、引き渡し開始時期もたびたび延期されたが、[[2010年]]11月にカナダとEASAの型式証明を取得、同年12月にはFAAの型式証明も得た{{sfn|青木|2014|p=132}}{{sfn|FAA|2013|p=20}}{{sfn|EASA|2010|p=32}}。同12月には[[スペイン]]の{{仮リンク|エア・ノストラム|en|Air Nostrum}}とフランスのブリテールに対して引き渡しが行われた{{sfn|青木|2014|p=132}}。

2013年9月末時点において、ファミリー全体で通算1,690機生産されている{{sfn|公式サイト Program Status Report}}。

== 機体の特徴 ==
[[File:IBEX JA06RJ 1.JPG|thumb|CRJ700NextGeneration。胴体後部にエンジンとT字型の尾翼を備える。]]
[[File:CRJ700 room001.JPG|thumb|CRJ700NextGenerationの客室]]

本節では、ファミリー全体に共通する特徴を述べる。各モデルごとの特徴は、[[#ファミリー構成・派生型]]を参照のこと。

CRJは機体後部に装備された2発の[[ジェットエンジン]]とT字[[尾翼]]を持つ旅客機である{{sfn|CRJ200 Fact Sheet}}{{sfn|CRJ Brochure}}。主翼はモデルにより部分的に設計が異なるが、全モデルに共通して主翼端に[[ウイングレット]]が装備されている{{sfn|青木|2014|pp=126-132}}。

{{Double image stack|right|Leave in Nagoya Airfield Aichi, JAPAN.jpg|IBEX Airlines CRJ CRJ700.JPG|220|客室ドアに乗降用階段が組み合わされている。空港設備のタラップを併用して乗降することもある(下)。}}

客室内は通路が1本の[[ナローボディ機]]で、[[エコノミークラス]]の座席配置は通路を挟んで2+2席、[[ビジネスクラス]]では1+2席の配置である{{sfn|青木|2014|p=127}}{{sfn|CRJ Brochure}}。座席頭上には手荷物入れが備えられている{{sfn|青木|2014|p=127}}{{sfn|CRJ Brochure}}。

乗降ドアは胴体前方の左舷に設置され、当機体に対応した[[タラップ]]や[[ボーディングブリッジ]]を備えていない[[空港]]で乗降を行えるように階段が内蔵されている{{sfn|青木|2014|p=127}}。非常口は、客室左右の両側の主翼の上にあたる位置に設けられている{{sfn|青木|2014|p=127}}。胴体後部には大型手荷物を収納するスペースがあり、そこにアクセスするためのドアが胴体後部の左側に設置されている{{sfn|青木|2014|p=127}}。

[[旅客機のコックピット|操縦席]]は、ロックウェル・コリンズ社のシステムを採用して6台のカラー[[ブラウン管|CRT]]を備えた[[グラスコックピット]]となっている{{sfn|CRJ200 Fact Sheet}}{{sfn|青木|2014|pp=127-129}}。標準搭載されている主要な操縦システムとしては、二重化された[[自動操縦装置]]をはじめ、[[対地接近警報装置]]、[[ウインドシア]]探知装置、デジタル[[気象レーダー]]、[[空中衝突防止装置]]、[[フライト・データ・レコーダー]]などがあげられる{{sfn|CRJ200 Fact Sheet}}{{sfn|青木|2014|pp=127-129}}。また、オプションとしてカテゴリーIIIa条件下で着陸が可能な[[計器着陸装置]]なども用意されている{{sfn|青木|2014|pp=127-129}}{{sfn|CRJ Brochure}}。

CRJは同一断面の胴体を使用し、それを延長することでラインナップの拡充が進められた。このことにより各モデルの共通性が高いという利点が得られる一方で、客室内の広さがベースとなったビジネスジェットの設計に縛られているとも言える
{{sfn|林賢吾|矢代廣志|水野鉄治|庄野貴志|2002}}{{sfn|青木|2014|p=131}}{{sfn|日機連|IADF|2006a|p=5–2}}。

== ファミリー構成・派生型 ==
CRJファミリーは胴体長の違いで分類すると、CRJ100/200、CRJ700、CRJ900、CRJ1000の4種類に分けられる{{sfn|青木|2014|pp=126-132}}。本節ではこの4種類を基本的な枠組みとして、細かい派生型やNextGenの改良点も含めて説明する述べる。

=== CRJ100/200 ===
{{Double image stack|right|IBX-CRJ100LR-JA02RJ-01.jpg|Jlj 206j.JPG|220|アイベックスエアラインズのCRJ100LR|ジェイエアのCRJ200ER(旧塗装)}}
CRJ100はCRJの最初のモデルで、標準座席数はファミリー最小の50席である{{sfn|青木|2014|p=126}}。胴体はチャレンジャーと同じ断面であるため、床面幅は同機と同じ2.18mであるが、客室の居住性向上を図るために内装の設計が見直されて、最大幅が2.49メートルから2.57メートルに拡大された{{sfn|青木|2014|p=127}}。エンジンはGEのCF34-3A1を搭載する{{sfn|青木|2014|p=127}}。

CRJ200は、CRJ100のエンジンをGEのCF34-3B1に置き換えたものであり、エンジン以外はCRJ100と同じで、座席数も50席である{{sfn|青木|2014|p=127}}。エンジンの変更により、燃費が向上し、離陸重量、巡航高度と巡航速度性能も増加した{{sfn|青木|2014|p=127}}。CRJ200登場後は200を標準モデルとして生産されている{{sfn|青木|2014|p=127}}。

CRJ100/200の派生型には、主翼中央に燃料タンクを増設して航続距離を伸ばしたER型型があり、CRJ200にはさらに距離を延長したLR型がある{{sfn|青木|2014|p=127}}。また、CRJ200の標準型、ER型、LR型には、高温・高地対応型のエンジンに置き換えたモデルCRJ200B、200B ER、200B LRも存在する{{sfn|青木|2014|p=128}}。

座席数が異なる派生型としては、CRJ200の標準座席数を44席に減らしてCRJ440と名付けられたモデルが生産されており、2002年1月から[[ノースウェスト航空]]に86機納入された{{sfn|青木|2014|p=128}}{{sfn|細谷|2007|pp=40-45}}。

さらに、CRJ200には貨物型も存在し、CRJ200パッケージフレイター (CRJ200PF) と呼ばれる{{sfn|青木|2014|p=128}}{{sfn|Flightglobal|2013|p=17}}{{sfn|CRJ200PF Fact Sheet}}。CRJ200LRの機体フレームに貨物用のドアを追加するなどの改修を加えたモデルである{{sfn|青木|2014|p=128}}。


=== CRJ700 ===
=== CRJ700 ===
[[File:QXcr7DEN2 edit.JPG|thumb|ホライゾン・エアのCRJ700]]
[[File:IBEX Airlines CRJ CRJ700.JPG|thumb|IBEX AirlinesのCRJ700。安全のために空港備品のタラップも併用することもある]]
CRJ700は70席クラスの機体である{{sfn|青木|2014|p=129}}{{sfn|林賢吾|矢代廣志|水野鉄治|庄野貴志|2002}}。
[[File:CRJ700 room001.JPG|thumb|ボンバルディアCRJ700の客室]]
CRJ200から胴体断面はそのままに胴体長が4.72m延ばされ、[[圧力隔壁]]の位置を1.29メートル後方に移動したことで、客室と貨物室容量の増加した{{sfn|青木|2014|p=129}}{{sfn|林賢吾|矢代廣志|水野鉄治|庄野貴志|2002}}。
CRJ700は胴体を延長した70席クラスの機体。初飛行は[[1999年]]で、[[2001年]]に市場に投入された。初期型はゼネラル・エレクトリックのCF34-8C1エンジンを採用していたが、その後CF34-8C5に置き換えられた。
また、客室床の位置を下げて客室天井高を上げるとともに窓位置を上げることで客室環境を向上させたほか{{sfn|青木|2014|p=129}}{{sfn|林賢吾|矢代廣志|水野鉄治|庄野貴志|2002}}、CRJ200には無かった床下の荷物室も確保された{{sfn|青木|2014|p=129}}。

主翼はCRJ200と同じ翼型であるが、翼の付け根部分に挿入部を追加して翼幅が合計1.83メートル拡大された{{sfn|青木|2014|p=129}}。また、運用重量増加に対応するため[[高揚力装置|スラット]]が追加されたことで前縁部が延長された{{sfn|青木|2014|p=129}}{{sfn|林賢吾|矢代廣志|水野鉄治|庄野貴志|2002}}。

エンジンもCRJ200から変更され、パイロンも強化された{{sfn|林賢吾|矢代廣志|水野鉄治|庄野貴志|2002}}。CRJ700の初期型はGEのCF34-8C1エンジンを採用していたが、NextGenではGE CF34-8C5に置き換えられている{{sfn|青木|2014|pp=129-132}}。

CRJ700は、座席数の違いによりCRJ700(68席)、CRJ701(71席)、CRJ702(72-78席)、CRJ705(CRJ900のフレームを使用して2クラスで70-75席)という細かいバリエーション展開がなされているが、これらを総称してCRJ700と呼ばれる{{sfn|青木|2014|p=129}}。CRJ700にも航続距離を延長したER型とLR型が設定されている{{sfn|青木|2014|p=129}}。

CRJ700のNextGenへの改良では、主に客室の改善と機体軽量化が行われた{{sfn|青木|2014|p=131}}。客室の改良点としては、窓の大型化、頭上の荷物入れの大型化、[[LED照明]]の採用、側壁と天井パネルの再設計などがあげられる{{sfn|青木|2014|p=131}}。機体軽量化の面では、機体構造にレジントランスファーモールディング (RTM)と呼ばれる複合材料の成形法が採用された{{sfn|青木|2014|p=131}}。

=== CRJ900 ===
[[File:Bombardier CRJ700 vs CRJ900.jpg|thumb|CRJ700(上)とCRJ900(下)との比較。胴体長の違いが見て取れる。]]

CRJ900は90席クラスの機体である{{sfn|青木|2014|p=130}}。CRJ700の胴体を主翼の前後でそれぞれ延長し、重量増加に対応するためエンジンはGE製CF34-8C5を使用している{{sfn|青木|2014|p=130}}。また、[[降着装置]]、[[ブレーキ]]、主翼構造がCRJ700から強化された{{sfn|青木|2014|p=130}}。

CRJ900にも航続距離を延長したER型とLR型が設定されている{{sfn|青木|2014|p=130}}。また、NextGenへのアップグレードでは、CRJ700と同様の改良内容が施された{{sfn|青木|2014|p=131}}。

=== CRJ1000 ===
[[File:PK-GRC.jpg|thumb|[[ガルーダ・インドネシア航空]]のCRJ1000NextGen]]

CRJ1000NexGenは100席クラスの機体である{{sfn|青木|2014|pp=131-132}}。
CRJ900の胴体を主翼の前後で延長して、主翼の翼幅と面積も拡大、エンジンはGE製CF34-8C5A1に変更された{{sfn|青木|2014|pp=131-132}}。CRJ1000はNextGen発表後に市場投入されたため、従来モデルは存在しない{{sfn|青木|2014|pp=131-132}}。

CRJ1000には派生型として、[[最大離陸重量]]が異なる軽量型のEL型と重量増加型のER型が存在する{{sfn|青木|2014|pp=131-132}}。標準型と派生型の最大離陸重量の違いは基本的に燃料搭載量の違いによるもので、EL、標準型、ERの順に航続距離が長くなる{{sfn|青木|2014|pp=131-132}}。

== 運用の状況・特徴 ==
北米や欧州でCRJを運用している航空会社は、主に[[地域航空会社]](コミューター航空会社、またはリージョナル航空会社)と呼ばれ、幹線路線を補完する小需要路線の運航を主に行っている{{sfn|細谷|2007|pp=40-45}}{{sfn|日機連|IADF|2006a|p=12–6}}{{sfn|橋本|屋井|2011|pp=48, 79-80}}。
2011年9月11日の[[アメリカ同時多発テロ事件]]後には航空旅客需要が落ち込み、大手航空会社が経営不振や破綻に陥ったため、中大型ジェット機よりも経済的でプロペラ機よりも高速で航続距離が長いというリージョナルジェットの特性を活かした地域航空会社の路線拡大が進んだ{{sfn|細谷|2007|pp=40-45}}{{sfn|橋本|屋井|2011|pp=45}}。

2013年7月末において、CRJファミリーの半数以上が[[北アメリカ|北米]]で運航されており、合計は1,000機弱にのぼる{{sfn|Flightglobal|2013|p=17}}。特に、[[スカイウェスト航空]]、ピナクル航空(現{{仮リンク|エンデバー航空|en|Endeavor Air}})、{{仮リンク|エクスプレスジェット|en|ExpressJet}}の各社では100機以上を運用している{{sfn|Flightglobal|2013|p=17}}。

2番目に運用機数が多いのが[[ヨーロッパ|欧州]]で200機を上回る{{sfn|Flightglobal|2013|p=17}}。こちらは、北米ほどの大量運用を行っている会社はないが、20機以上を就航させている会社としてフランスの[[オップ!]]、スペインのエア・ノストラム、ドイツの[[ルフトハンザドイツ航空]](ルフトハンザ・シティーライン、[[ユーロウイングス]])があげられる{{sfn|Flightglobal|2013|p=17}}。


上記以外の地域については、日本を含む[[アジア]]、[[中東]]、[[南米|南アメリカ]]、[[アフリカ]]において、複数の航空会社によりそれぞれ数機から10機程度ずつ運用されており、分布に偏りはあるが、世界の広い範囲でCRJファミリーが運航されている{{sfn|Flightglobal|2013|p=17}}。
CRJ700の主な競合機種は、[[ブラジル]]の[[エンブラエル]]社製の[[エンブラエル170]]や、[[日本]]の[[三菱航空機]]が開発している[[MRJ|MRJ70]]、[[ロシア]]の[[スホーイ・スーパージェット100|スホーイ・スーパージェット60/75]]である。


日本では、2013年時点で[[日本航空]]子会社の[[ジェイエア]]がCRJ200を9機保有{{sfn|Flightglobal|2013|p=17}}、[[アイベックスエアラインズ]]がCRJ100/200を合わせて4機とCRJ700を5機運航している{{sfn|Flightglobal|2013|p=17}}。
=== CRJ705/900 ===
なお、日本における総販売代理店は[[総合商社]]の[[双日]]がつとめている{{sfn|双日|2007}}。
CRJ900は[[2003年]]に登場した90席クラスのタイプ。700型の胴体をさらに延長し翼も大型化した。エンジンはCRJ700後期型と同じCF34-8C5を使用。900型の主な競合機種は[[エンブラエル170|エンブラエル175/190]]や日本の三菱航空機が開発中の[[MRJ|MRJ90]]、ロシア・[[スホーイ]]の[[スホーイ・スーパージェット]]75/95である。


== 主な事故・インシデント ==
CRJ705はCRJ900の機体をベースに[[ビジネスクラス]]を導入する代わりに、最大定員を75人にしたタイプである。CRJ900と比較して主翼の[[ウイングレット]]が改良されている。[[エア・カナダ]]の子会社である[[エア・カナダJazz]]が[[ローンチカスタマー]]となり、[[2005年]]に登場した。大手航空会社との競争下にあるリージョナル航空会社のサービス向上策の一つとして開発された。
CRJファミリーの主な事故を以下に示す。


* 2004年11月21日、[[中国東方航空]]5210便として運航されていたCRJ200が、[[中華人民共和国]][[内モンゴル自治区]]の[[包頭市]]内に墜落し、乗客乗員と地上にいた2人を合わせて55人が死亡した{{sfn|チャイナデイリー|2004}}。
=== CRJ1000 NextGen ===
{{main|中国東方航空5210便墜落事故}}
ボンバルディア・エアロスペースは、[[エンブラエル 170|エンブラエル195]]に対抗するため、CRJ900の胴体を延長したCRJ900Xを基にして100席のCRJ1000 NextGenが2007年2月に開発が開始された。2008年9月3日に[[ケベック]]で初飛行を行った。標準とER (Extended-Range) の2つのバージョンがある。すでにフランスの[[ブリッド・エア]]が15機とイタリアの[[MyAir]]が14機を確定発注をし、2009年の10月から12月にかけて納入される見込みである<ref>[http://www.aerospace-technology.com/projects/bombardier_crj1000/ Bombardier CRJ1000 Regional Jetliner, Aerospace Technology], 2009-11-22 確認</ref>。
* 2004年10月14日、ピナクル航空(現エンデバー航空)3710便として運航されていたCRJ200が、アメリカの[[ミズーリ州]][[ジェファーソンシティ (ミズーリ州)|ジェファーソン・シティ]]近郊の住宅地に墜落した{{sfn|NTSB|2007a}}。回送飛行中であったため乗客や客室乗務員はおらず、機長および副操縦士の2名が死亡した{{sfn|NTSB|2007a}}。
{{main|ピナクル航空3701便墜落事故}}
* 2006年8月27日、アメリカの[[ケンタッキー州]][[レキシントン]]にある[[ブルーグラス空港]]で[[コムエアー]]5191便が墜落し、乗客乗員50人のうち49人が死亡した{{sfn|NTSB|2007b}}{{sfn|47news|2006}}。事故機体はアメリカ[[国家運輸安全委員会]]の報告書ではCRJ100と記載されているが{{sfn|NTSB|2007b}}、CRJ200とする報道もある{{sfn|47news|2006}}。
{{main|コムエアー旅客機墜落事故}}
* 2011年4月4日、[[コンゴ民主共和国]]の[[首都]]である[[キンシャサ]]の[[ヌジリ国際空港]]で、CRJ100が着陸中に墜落した{{sfn|アルジャジーラ|2011}}{{sfn|BBC|2011}}。当該機は[[国際連合]](国連)により運航され、[[国際連合平和維持活動|PKO]]部隊の隊員や国連スタッフら33人が搭乗していたが、32人が死亡した{{sfn|47news|2011}}{{sfn|アルジャジーラ|2011}}{{sfn|BBC|2011}}{{sfn|AFPBB|2011}}。
{{main|:en:2011 United Nations Bombardier CRJ-100 crash}}
* 2013年1月29日、[[カザフスタン]]南部の[[アルマトイ]]で、スキャット航空({{仮リンク|SCAT航空|en|SCAT Airlines}})のCRJ200が墜落し、乗客16人と乗員5人の計21人全員が死亡した{{sfn|AFPBB|2013}}{{sfn|ロイター|2013}}。
{{main|:en:SCAT Airlines Flight 760}}


== 仕様 ==
== 主要諸元 ==
CRJファミリーの主なモデルの主要諸元を下表に示す。出典は、ボンバルディア社の公表値を用いる(CRJ200{{sfn|CRJ200 Fact Sheet}}、CRJ700、900、1000{{sfn|CRJ Brochure}})。
{| class=wikitable style="text-align: center;"
{| class="wikitable" style="font-size:90%; text-align:center;"
|+ モデルごとの主要諸元
|-
|-
! モデル名
! 型式
! CRJ700
! CRJ200
! CRJ700NextGen
! CRJ705
! CRJ900NextGen
! CRJ900
! CRJ1000NextGen
! CRJ1000
|-
|-
! 乗員
! 乗員
| colspan="4" align="center" | 2名
| colspan="4" align="center" | 2名
|-
|-
! 座席数
! 座席数<br/>(1クラス)
| 50席
| 78席 (1-クラス, 最大)<br/> 70席 (1-クラス, 標準)<br/>66席 (2-クラス, 標準)
| colspan=2 | 90 (1-クラス, 最大)<br/> 86 (1-クラス, 標準)<br/>75席 (2-クラス, 標準)
| 78最大<br/> 70標準
| 104 (1-クラス, 最大)<br/> 100席 (1-クラス, 標準)<br/>86席 (2-クラス, 標準)
| 90最大<br/> 86席標準
| 104席(最大)<br/> 100席(標準)
|-
! 座席数<br/>(2クラス)
| N/A
| 66席
| 78席
| 93席
|-
|-
! 全長
! 全長
| 32.51 m (106&nbsp;ft 8 in)
| 26.77&nbsp;[[メートル|m]]
| colspan=2 | 36.40 m (119&nbsp;ft 4 in)
| 32.3&nbsp;m
| 39.13 m (128&nbsp;ft 4.7 in)
| 36.2&nbsp;m
| 39.1&nbsp;m
|-
|-
! 全幅
! 全幅
| 23.24 m (76&nbsp;ft 3 in)
| 21.21&nbsp;m
| colspan=2 | 24.85 m (81&nbsp;ft 6 in)
| 23.2&nbsp;m
| 26.18 m (85&nbsp;ft 10.6 in)
| 24.9&nbsp;m
| 26.2&nbsp;m
|-
|-
! 全高
! 全高
| 7.57 m (24&nbsp;ft 10 in)
| 6.22&nbsp;m
| colspan=2 | 7.51 m (24&nbsp;ft 7 in)
| 7.6&nbsp;m
| 7.50 m (24&nbsp;ft 6 in)
| 7.5&nbsp;m
| 7.5&nbsp;m
|-
|-
! 翼面積
! 翼面積
| 48.35&nbsp;[[平方メートル|m<sup>2</sup>]]
| colspan=3 | 70.61 m² (760&nbsp;ft²)
| 77.4 (833&nbsp;ft²)
| colspan=2 | 70.6&nbsp;m{{sup|2}}
| 77.4&nbsp;m{{sup|2}}
|-
|-
!胴体最大直径
! 胴体最大直径
| colspan=4 | 2.7 m (8&nbsp;ft 10 in)
| 2.69&nbsp;m
| colspan=3 | 2.7&nbsp;m
|-
|-
!最機内幅
! 客室最大
| colspan=4 | 2.57 m (8&nbsp;ft 5 in)
| 2.53&nbsp;m
| colspan=3 | 2.55&nbsp;m
|-
|-
!
! 客室最大
| colspan=4 | 1.89 m (6&nbsp;ft 2 in)
| 1.85&nbsp;m
| colspan=3 | 1.89&nbsp;m
|-
|-
! 運用時非積載
! 運用
| 14,016&nbsp;[[キログラム|kg]]
| {{convert|19731|kg|lb|abbr=on}}
| 20,069&nbsp;kg
| colspan=2 | {{convert|21433|kg|lb|abbr=on}}
| 21,845&nbsp;kg
| {{convert|23179|kg|lb|abbr=on}}
| 23,188&nbsp;kg
|-
|-
! 燃料非搭載時最大重量 (ZFW)
! [[無燃料重量]] (ZFW)
| 19,958&nbsp;kg
| 28,259&nbsp;kg (62,300&nbsp;lb)<br/> LR: 28,801&nbsp;kg (63,495&nbsp;lb)
| 28,259&nbsp;kg
| colspan=2 | 31,751&nbsp;kg (70,000&nbsp;lb)<br/> LR: 32,024&nbsp;kg (70,600&nbsp;lb)
| 35,154&nbsp;kg (77,500&nbsp;lb)
| 31,751&nbsp;kg<br/> ER: 31,751&nbsp;kg<br/> LR: 32,092&nbsp;kg
| 35,154&nbsp;kg
|-
|-
! [[最大離陸重量]] (MTOW)
! 最大離陸重量 (MTOW)
| 32,999&nbsp;kg (72,750&nbsp;lb)<br/> ER: 34,019&nbsp;kg (75,000&nbsp;lb)<br/> LR: 34,926 &nbsp;kg (77,000&nbsp;lb)
| ER: 23,247&nbsp;kg<br/> LR: 24,154&nbsp;kg
| colspan=2 | 36,504&nbsp;kg (80,500&nbsp;lb)<br/> ER: 37,421&nbsp;kg (82,500&nbsp;lb)<br/> LR: 38,330&nbsp;kg (84,500&nbsp;lb)
| 32,999&nbsp;kg<br/> ER: 34,019&nbsp;kg<br/> LR: 34,926 &nbsp;kg
| EuroLite: 38,995&nbsp;kg (85,968&nbsp;lb)<br/> 40,824&nbsp;kg (90,000&nbsp;lb)<br/> ER: 41,640&nbsp;kg (91,800&nbsp;lb)
| 36,514&nbsp;kg<br/> ER: 37,421&nbsp;kg<br/> LR: 38,330&nbsp;kg
| 40,824&nbsp;kg<br/> EL: 38,995&nbsp;kg<br/> ER: 41,640&nbsp;kg
|-
|-
! 最大積載量
! 最大ペイロード
| 5,942&nbsp;kg
| 8,527&nbsp;kg (18,800&nbsp;lb)<br/> LR: 9,070&nbsp;kg (19,995&nbsp;lb)
| 8,190&nbsp;kg
| colspan=2 | 10,319&nbsp;kg (22,750&nbsp;lb)<br/> LR: 10,591&nbsp;kg (23,350&nbsp;lb)
| 11,975&nbsp;kg (26,400&nbsp;lb)
| 9,907&nbsp;kg<br/> ER: 9,907&nbsp;kg<br/> LR: 10,247&nbsp;kg
| 11,966&nbsp;kg
|-
|-
! 貨物容積
! 貨物容積
| 13.8&nbsp;[[立方メートル|m<sup>3</sup>]]
| {{convert|15.5|m3|cuft|abbr=on}}
| 15.5&nbsp;m{{sup|3}}
| colspan=2 | {{convert|16.8|m3|cuft|abbr=on}}
| 16.8&nbsp;m{{sup|3}}
| {{convert|19.4|m3|cuft|abbr=on}}
| 19.4&nbsp;m{{sup|3}}
|-
|-
! 巡航速度
! 最大離陸重量時の滑走距離([[国際標準大気|ISA]])
| [[マッハ]] 0.74 (488&nbsp;[[マイル毎時|mph]]; 785&nbsp;[[キロメートル毎時|km/h]])
| {{convert|1564|m|ft|abbr=on}}<br/> ER: {{convert|1676|m|ft|abbr=on}}<br/> LR: {{convert|1851|m|ft|abbr=on}}
| マッハ 0.78 (515&nbsp;mph; 829&nbsp;km/h)
| colspan=2 | {{convert|1778|m|ft|abbr=on}}<br/> ER: {{convert|1861|m|ft|abbr=on}}<br/> LR: {{convert|1944|m|ft|abbr=on}}
| マッハ 0.78 (515&nbsp;mph; 829&nbsp;km/h)
| EuroLite: {{convert|1822|m|ft|abbr=on}}<br/> {{convert|1996|m|ft|abbr=on}}<br/> ER: {{convert|2079|m|ft|abbr=on}}
| マッハ 0.78 (515&nbsp;mph; 829&nbsp;km/h)
|-
! 上昇限度
| colspan=4 | 12,497 m (41,000&nbsp;ft)
|-
! 基本巡航速度
| マッハ 0.78 (829&nbsp;km/h, 515&nbsp;mph)
| マッハ 0.78 (829&nbsp;km/h, 515&nbsp;mph)
| マッハ 0.80 (850&nbsp;km/h, 528&nbsp;mph)
| マッハ 0.78 (827&nbsp;km/h, 515&nbsp;mph)
|-
|-
! 最大巡航速度
! 最大巡航速度
| マッハ 0.825 (876&nbsp;km/h, 544&nbsp;mph)
| マッハ 0.81 (534&nbsp;mph; 860&nbsp;km/h)
| マッハ 0.83 (885&nbsp;km/h, 559&nbsp;mph)
| マッハ 0.825 (544&nbsp;mph; 876&nbsp;km/h)
| マッハ 0.83 (881&nbsp;km/h, 547&nbsp;mph)
| マッハ 0.83 (548&nbsp;mph; 882&nbsp;km/h)
| マッハ 0.82 (870&nbsp;km/h, 541&nbsp;mph)
| マッハ 0.82 (541&nbsp;mph; 871&nbsp;km/h)
|-
|-
! 最大航続距離
! 最大航続距離
| 1,434 nmi (2,656 km; 1,650 mi)<br/>ER: 1,732 nmi (3,208 km; 1,993 mi)<br/>LR: 2,002 nmi (3,708 km; 2,304 mi)
| ER: 1,345&nbsp;[[海里|nmi]] (2,491&nbsp;km; 1,548&nbsp;[[マイル|mi]])<br/>LR: 1,700&nbsp;nmi (3,148&nbsp;km; 1,956&nbsp;mi)
| 1,719 nmi (3,184 km; 1,978 mi)<br/>ER: 1,963 nmi (3,635 km; 2,259 mi)<br/>LR: 1,999 nmi (3,702 km; 2,300mi)
| 1,218&nbsp;nmi (2,256&nbsp;km; 1,402&nbsp;mi)<br/>ER: 1,504&nbsp;nmi (2,785&nbsp;km; 1,731&nbsp;mi)
| 1,350 nmi (2,500 km; 1,550 mi)<br/>ER: 1,593 nmi (2,950 km; 1,833 mi)<br/>LR: 1,828 nmi (3,385 km; 2,104mi)
| 1,048&nbsp;nmi (1,940&nbsp;km; 1,206&nbsp;mi)<br/>ER: 1,283&nbsp;nmi (2,376&nbsp;km; 1,477&nbsp;mi)<br/>LR: 1,515&nbsp;nmi (2,806&nbsp;km; 1,744&nbsp;mi)
| ユーロライト: 909 nmi (1,683 km; 1,046 mi)<br/>1,345 nmi (2,491 km; 1,548 mi)<br/>ER: 1,535 nmi (2,843 km; 1,766mi)
|1,425&nbsp;nmi (2,639&nbsp;km; 1,640&nbsp;mi)<br/> EL: 971&nbsp;nmi (1,798&nbsp;km; 1,118&nbsp;mi)<br/> ER: 1,622&nbsp;nmi (3,004&nbsp;km; 1,867&nbsp;mi)
|-
|-
! 離陸滑走距離<ref group="注釈">[[国際標準大気]]、最大離陸重量時</ref>
! 最大燃料積載量
| ER: 1,768&nbsp;m<br/> LR: 1,918&nbsp;m
| colspan=4 | {{convert|8822|kg|abbr=on}}
| 1724&nbsp;m<br/> ER: 1676&nbsp;m<br/> LR: 1851&nbsp;m
| 1778&nbsp;m<br/> ER: 1862&nbsp;m<br/> LR: 1954&nbsp;m
| 1979&nbsp;m<br/> EL: 1826&nbsp;m<br/> ER: 2053&nbsp;m
|-
|-
! エンジン (2x)
! エンジン (2x)
| GE CF34-3B1
| [[ゼネラル・エレクトリック TF34/CF34|GE CF34-8C5B1]]
| GE CF34-8C5B1
| [[ゼネラル・エレクトリック TF34/CF34|GE CF34-8C5]]
| GE CF34-8C5
| GE CF34-8C5
| [[ゼネラル・エレクトリック TF34/CF34|GE CF34-8C5A1]]
| GE CF34-8C5A1
|-
|-
! 離陸推力 (2x)
! 離陸推力 (2x)
| 56.4&nbsp;kN (12,670&nbsp;lbf)
| 38.84&nbsp;[[ニュートン|kN]]
| 58.4&nbsp;kN (13,123&nbsp;lbf)
| 56.4&nbsp;kN
| 59.4&nbsp;kN (13,360&nbsp;lbf)
| 59.4&nbsp;kN
| 60.6&nbsp;kN
| 60.6&nbsp;kN (13,630&nbsp;lbf)
|-
! APR推力 (2x)
| 61.3&nbsp;kN (13,790&nbsp;lbf)
| 63.4&nbsp;kN (14,255&nbsp;lbf)
| 64.5&nbsp;kN (14,510&nbsp;lbf)
| 64.5&nbsp;kN (14,510&nbsp;lbf)
|}
|}
出典: CRJ700,<ref>[http://www.crj700.com/CRJ/en/specifications.jsp?langId=en&crjId=700 CRJ700 Specifications]. ボンバルディア</ref><ref>[http://www2.bombardier.com/en/3_0/3_6/pdf/Paris2009/CRJ_700_Factsheet.pdf CRJ700 NextGen Fact Sheet]. Bombardier, June 2009.</ref><ref>[http://www.crjnextgen.com/CRJ/en/NextGen/pdf/CRJ700_EN.pdf CRJ700 NextGen Fact Sheet] at crjnextgen.com</ref> CRJ705,<ref>[http://www.crj700.com/CRJ/en/specifications.jsp?langId=en&crjId=705 CRJ705 Specifications]. Bombardier</ref><ref>[http://www.crj700.com/CRJ/en/specifications.jsp?langId=en&crjId=705 CRJ705 Interior]. Bombardier</ref> CRJ900,<ref>[http://www.crj.bombardier.com/CRJ/en/specifications.jsp?langId=en&crjId=900 CRJ900 Specifications]. Bombardier</ref><ref>[http://www2.bombardier.com/en/3_0/3_6/pdf/Paris2009/CRJ_900_Factsheet.pdf CRJ900 NextGen Fact Sheet]. Bombardier, June 2009.</ref><ref>[http://www.crjnextgen.com/CRJ/en/NextGen/pdf/CRJ900_EN.pdf CRJ900 NextGen Fact Sheet] at crjnextgen.com</ref> CRJ1000<ref>[http://www2.bombardier.com/en/3_0/3_6/pdf/Paris2009/CRJ_1000_Factsheet.pdf CRJ1000 NextGen Fact Sheet]. Bombardier, June 2009.</ref><ref>[http://crj1000nextgen.bombardier.com/pdf/CRJ1000_factsheet.pdf CRJ1000 NextGen Fact Sheet] at crjnextgen.com</ref><ref>[http://www.globalsecurity.org/military/world/canada/crj1000.htm Bombardier CRJ1000] at globalsecurity.org</ref><ref>[http://www.flightglobal.com/blogs/runway-girl/2008/07/meet-the-bombardier-crj1000-eu.html Meet the Bombardier CRJ1000 EuroLite] at flightglobal.com</ref> <br />
注記:
*デルタ・コネクション航空のCRJ900 航空機は座席が76席で4人の乗員でファースト/コーチクラスが組み合わせられた仕様である。<ref>[http://www.delta.com/planning_reservations/plan_flight/aircraft_types_layout/crj_900/index.jsp Canadair Regional Jet 900 (CRJ)]</ref>
<!---
{|class="wikitable" style="text-align:center"
|+ CRJ ファミリーの仕様
|-
!
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|-
! 座席数
| 50席 || 78席 || 75席 || 90席 || 100席
|-
! 全長
| 26.77m || 32.51m || 36.40m || 36.40m || 39.13m
|-
! 全高
| 6.22m || colspan="2" | 7.57m || 7.51m || 7.13m
|-
! 全幅
| 21.21m || 23.24m || colspan="2" | 24.85m || 26.18m
|-
! 巡航速度
| マッハ 0.81 || マッハ 0.825 || colspan="2" | マッハ 0.83 || マッハ 0.85
|-
!エンジン
| [[ゼネラル・エレクトリック|GE]] [[ゼネラル・エレクトリック TF34/CF34|CF34-3B1]] || colspan="3" | GE [[ゼネラル・エレクトリック TF34/CF34|CF34-8C5]] || GE [[ゼネラル・エレクトリック TF34/CF34|CF34-8C5A1]]
|-
! 推力
| 9,220lb || 13,790lb || colspan="2" | 14,255lb || 13,630lb
|-
! 航続距離(LR Version)
| 3,148 km || 3,708 km || 3,702 km || 3,385 km || 3,131 km (ER)
|-
! [[最大離陸重量]](LR Version)
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|-
! [[最大着陸重量]](LR Version)
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|-
! 離陸滑走距離(LR Version,最大離陸重量時)
| 1,918 m || 1,851 m || colspan="2" | 1,944 m || 2,079 m (ER)
|-
! 着陸滑走距離(LR Version,最大着陸重量時)
| 1,479 m || 1,560 m || colspan="2" | 1,622 m || 1,754 m (ER)
|}
--->


== 出典 ==
== 脚注 ==
===注釈===
{{Reflist}}
{{Reflist|group="注釈"}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commons|Bombardier Canadair Regional Jet}}
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2014年3月23日 (日) 14:05時点における版

ボンバルディア CRJ

ボンバルディア CRJ(Bombardier CRJ)は、カナダボンバルディア・エアロスペース社が製造・販売しているジェット旅客機の製品群であり、CRJファミリーあるいはCRJシリーズとも呼ばれる[1][6][7]。CRJファミリーを構成する主要モデルは、胴体長が短い順に CRJ100/200CRJ700CRJ900CRJ1000 の4機種で、座席数や航続距離などが異なる細かい派生型が存在する[8]。従来、座席数100席以下の短距離航空路線はプロペラ機が主流であったが、CRJの実用化成功により、小型ジェット機「リージョナルジェット」市場が大きく成長した[9][10][11][12]

開発の経緯

リージョナルジェットCRJ100/200の登場

1980年代において、旅客の少ない短距離路線を運航する航空機は、燃料消費が少なく経済的であることと、短距離ではジェット機の高速性による時間短縮効果が目立たないことからプロペラ機の方が適しているという考えが主流だった[13][11][14]

当時、ビジネスジェットチャレンジャー600を製造していたカナダの航空機メーカーであるカナディア社は、同機の設計を流用して開発費を抑えることで、低価格で経済的な小型ジェット旅客機を実用化できないか模索していた[1][15][14]。この構想は具体化され、1987年にCRJファミリー最初のモデルであるCRJ100の基本設計が開始された[1][2]。この時、カナディア社はボンバルディア社の傘下になっていたが[注釈 1]、開発するモデルにはCRJ(Canadair Regional Jet; カナディア・リージョナル・ジェット)とカナディアの名前が残された[2]

CRJ100の胴体断面はチャレンジャーの設計が流用されたが、主翼は新規設計された[1]。翌1998年に機体全体の基本仕様がまとめられ、1989年3月に製造計画が正式に進められることになった[1]。さらに、1990年10月には航続距離を延ばした派生型のCRJ100ERが発表され、標準型と平行して開発されることになった[1]。CRJ100の初飛行は1991年5月10日で、その後、約1年3か月にわたる試験を経て、1992年7月にカナダの型式証明を取得した[17]。続いて、1993年1月にはアメリカ連邦航空局(以下、FAA)と欧州航空安全機関(以下、EASA)の型式証明も交付された[1][17][18]。初就航はドイツルフトハンザ・シティーラインにより1992年11月に行われた[1]

CRJ200は、CRJ100のエンジンゼネラル・エレクトリック(以下、GE)のCF34-3B1に変更したもので、1995年に発表された[19]。CRJ200の最初の引き渡しはオーストリアチロリアン航空に対して1996年1月に行われた[20]。生産227号機以降はCRJ200を標準型として生産されている[19]

胴体延長モデル CRJ700の開発

1995年からは、リージョナルジェット市場の成長に対応するため、CRJ100/200の胴体を延長した機体(計画名はCRJ-X)の検討がすすめられた[21]。CRJ-Xの基本仕様は1996年に確定され、1997年にボンバルディア社の役員会の承認が下りて正式に製造計画が進められることになった[21]

その後、CRJ-Xは客席数が70席程度であることにちなんでCRJ700と命名され、1999年5月27日に初飛行した[21]。飛行試験と地上試験が重ねられて2000年12月にカナダの型式証明を取得し、翌2001年1月にEASA、同年2月にFAAの型式証明も取得した[22][23]。顧客への引き渡しは、2002年2月にフランスの航空会社ブリテールに対して行われた[21]のが最初である。

さらなる大型化へ CRJ900の開発

ボンバルディア社は1999年10月にCRJ700の胴体をさらに延長した機体の開発計画を発表した[9]。2000年3月には客室モックアップが完成し、2000年7月のファーンボロー国際航空ショー期間中に計画が公にされた[9]。このモデルは標準的な客席数が90席であることからCRJ900と名付けられた[9]

CRJ900試作機の初飛行は2001年2月21日であるが、この時の試作機はCRJ700試作機の胴体のみを延長したものであり[注釈 2][9]、最初からCRJ900として製造された機体の初飛行は2001年10月20日であった[9]。その後、各種試験が進められ、2002年9月にカナダの型式証明を取得、続いて同年10月にFAA、11月にEASAの型式証明を取得した[9][24][25]。顧客への最初の引き渡しは2003年2月、相手はアメリカのメサ航空だった[9]

さらに、CRJ900のフレームを使用しつつ座席を減らすことで客室にゆとりを持たせたモデルがCRJ705として開発され、2005年5月にカナダとFAAの型式証明を取得し、同年11月にはEASAの型式証明も得た[26][27]

日本企業の参画

CRJ700、CRJ900の開発・製造には日本三菱重工業も参加し、胴体後部とエンジンパイロンの設計と製造を担当した[28]。しかし、その後、三菱重工はボーイング787の開発計画にも参画することになり開発・生産のリソースをボーイング787に集中する必要があるとの理由で、ボンバルディア社との製造契約を解消することが2008年2月に発表された[29]。なお、提携解消に関しては、発表翌月に三菱重工が事業化を決定したMRJ[30]との競合を避けるためとの見方もある[31]

NextGen への進化

CRJファミリーの相次ぐ実用化により、ボンバルディア社はリージョナルジェット市場の開拓に成功した[10][12]。しかし、CRJに続いてブラジルエンブラエル社からERJEジェットといったライバル製品が市場に投入され、ビジネスジェット機から派生したCRJ100の設計を基本的に踏襲しているCRJファミリーは時代とともに見劣りするようになった[32][33]

そこで、ボンバルディア社は、新規設計のCシリーズの開発を進めるとともに[32][34]、CRJファミリーの設計を見直すことを決めた[32]。このCRJの改良版は“NextGen”と名付けられ、2007年5月に発表された[32]。NextGenファミリーで最初に公開されたのはCRJ900NextGenで、2007年6月のパリ航空ショーでのことだった[32]。同月には顧客への初引き渡しがアメリカのノースウェスト・エアリンクに対して行われた[32]

NextGenの登場後には、CRJ700とCRJ900の生産はNextGenに移行された[20]。また、CRJ100/200にはNextGenモデルは開発されていないが、新規生産時や機体改修時にNextGenの構成要素をオプションとして追加することも可能とされている[20]

最大モデル CRJ1000 の投入

CRJファミリー中で最大のモデルとなるCRJ1000NextGenは、2007年2月に計画名CRJ900Xとして開発が公式に開始された[35]。CRJ900X試作機の初飛行は2008年9月であったが、このときの機体はCRJ900試作機を再改造[注釈 3]した作られたものであった[35]。CRJ1000NextGenとして製造された機体の初飛行は2009年7月に行われた。 その後、飛行試験などが進められたが、飛行操縦ソフトウェアに問題が発見されるなどの理由で試験期間が延長された[35]。それにより、引き渡し開始時期もたびたび延期されたが、2010年11月にカナダとEASAの型式証明を取得、同年12月にはFAAの型式証明も得た[35][36][37]。同12月にはスペインエア・ノストラムとフランスのブリテールに対して引き渡しが行われた[35]

2013年9月末時点において、ファミリー全体で通算1,690機生産されている[5]

機体の特徴

CRJ700NextGeneration。胴体後部にエンジンとT字型の尾翼を備える。
CRJ700NextGenerationの客室

本節では、ファミリー全体に共通する特徴を述べる。各モデルごとの特徴は、#ファミリー構成・派生型を参照のこと。

CRJは機体後部に装備された2発のジェットエンジンとT字尾翼を持つ旅客機である[7][38]。主翼はモデルにより部分的に設計が異なるが、全モデルに共通して主翼端にウイングレットが装備されている[8]

 
客室ドアに乗降用階段が組み合わされている。空港設備のタラップを併用して乗降することもある(下)。

客室内は通路が1本のナローボディ機で、エコノミークラスの座席配置は通路を挟んで2+2席、ビジネスクラスでは1+2席の配置である[19][38]。座席頭上には手荷物入れが備えられている[19][38]

乗降ドアは胴体前方の左舷に設置され、当機体に対応したタラップボーディングブリッジを備えていない空港で乗降を行えるように階段が内蔵されている[19]。非常口は、客室左右の両側の主翼の上にあたる位置に設けられている[19]。胴体後部には大型手荷物を収納するスペースがあり、そこにアクセスするためのドアが胴体後部の左側に設置されている[19]

操縦席は、ロックウェル・コリンズ社のシステムを採用して6台のカラーCRTを備えたグラスコックピットとなっている[7][39]。標準搭載されている主要な操縦システムとしては、二重化された自動操縦装置をはじめ、対地接近警報装置ウインドシア探知装置、デジタル気象レーダー空中衝突防止装置フライト・データ・レコーダーなどがあげられる[7][39]。また、オプションとしてカテゴリーIIIa条件下で着陸が可能な計器着陸装置なども用意されている[39][38]

CRJは同一断面の胴体を使用し、それを延長することでラインナップの拡充が進められた。このことにより各モデルの共通性が高いという利点が得られる一方で、客室内の広さがベースとなったビジネスジェットの設計に縛られているとも言える [28][32][40]

ファミリー構成・派生型

CRJファミリーは胴体長の違いで分類すると、CRJ100/200、CRJ700、CRJ900、CRJ1000の4種類に分けられる[8]。本節ではこの4種類を基本的な枠組みとして、細かい派生型やNextGenの改良点も含めて説明する述べる。

CRJ100/200

アイベックスエアラインズのCRJ100LR
 
ジェイエアのCRJ200ER(旧塗装)

CRJ100はCRJの最初のモデルで、標準座席数はファミリー最小の50席である[1]。胴体はチャレンジャーと同じ断面であるため、床面幅は同機と同じ2.18mであるが、客室の居住性向上を図るために内装の設計が見直されて、最大幅が2.49メートルから2.57メートルに拡大された[19]。エンジンはGEのCF34-3A1を搭載する[19]

CRJ200は、CRJ100のエンジンをGEのCF34-3B1に置き換えたものであり、エンジン以外はCRJ100と同じで、座席数も50席である[19]。エンジンの変更により、燃費が向上し、離陸重量、巡航高度と巡航速度性能も増加した[19]。CRJ200登場後は200を標準モデルとして生産されている[19]

CRJ100/200の派生型には、主翼中央に燃料タンクを増設して航続距離を伸ばしたER型型があり、CRJ200にはさらに距離を延長したLR型がある[19]。また、CRJ200の標準型、ER型、LR型には、高温・高地対応型のエンジンに置き換えたモデルCRJ200B、200B ER、200B LRも存在する[20]

座席数が異なる派生型としては、CRJ200の標準座席数を44席に減らしてCRJ440と名付けられたモデルが生産されており、2002年1月からノースウェスト航空に86機納入された[20][11]

さらに、CRJ200には貨物型も存在し、CRJ200パッケージフレイター (CRJ200PF) と呼ばれる[20][4][41]。CRJ200LRの機体フレームに貨物用のドアを追加するなどの改修を加えたモデルである[20]

CRJ700

ホライゾン・エアのCRJ700

CRJ700は70席クラスの機体である[21][28]。 CRJ200から胴体断面はそのままに胴体長が4.72m延ばされ、圧力隔壁の位置を1.29メートル後方に移動したことで、客室と貨物室容量の増加した[21][28]。 また、客室床の位置を下げて客室天井高を上げるとともに窓位置を上げることで客室環境を向上させたほか[21][28]、CRJ200には無かった床下の荷物室も確保された[21]

主翼はCRJ200と同じ翼型であるが、翼の付け根部分に挿入部を追加して翼幅が合計1.83メートル拡大された[21]。また、運用重量増加に対応するためスラットが追加されたことで前縁部が延長された[21][28]

エンジンもCRJ200から変更され、パイロンも強化された[28]。CRJ700の初期型はGEのCF34-8C1エンジンを採用していたが、NextGenではGE CF34-8C5に置き換えられている[42]

CRJ700は、座席数の違いによりCRJ700(68席)、CRJ701(71席)、CRJ702(72-78席)、CRJ705(CRJ900のフレームを使用して2クラスで70-75席)という細かいバリエーション展開がなされているが、これらを総称してCRJ700と呼ばれる[21]。CRJ700にも航続距離を延長したER型とLR型が設定されている[21]

CRJ700のNextGenへの改良では、主に客室の改善と機体軽量化が行われた[32]。客室の改良点としては、窓の大型化、頭上の荷物入れの大型化、LED照明の採用、側壁と天井パネルの再設計などがあげられる[32]。機体軽量化の面では、機体構造にレジントランスファーモールディング (RTM)と呼ばれる複合材料の成形法が採用された[32]

CRJ900

CRJ700(上)とCRJ900(下)との比較。胴体長の違いが見て取れる。

CRJ900は90席クラスの機体である[9]。CRJ700の胴体を主翼の前後でそれぞれ延長し、重量増加に対応するためエンジンはGE製CF34-8C5を使用している[9]。また、降着装置ブレーキ、主翼構造がCRJ700から強化された[9]

CRJ900にも航続距離を延長したER型とLR型が設定されている[9]。また、NextGenへのアップグレードでは、CRJ700と同様の改良内容が施された[32]

CRJ1000

ガルーダ・インドネシア航空のCRJ1000NextGen

CRJ1000NexGenは100席クラスの機体である[43]。 CRJ900の胴体を主翼の前後で延長して、主翼の翼幅と面積も拡大、エンジンはGE製CF34-8C5A1に変更された[43]。CRJ1000はNextGen発表後に市場投入されたため、従来モデルは存在しない[43]

CRJ1000には派生型として、最大離陸重量が異なる軽量型のEL型と重量増加型のER型が存在する[43]。標準型と派生型の最大離陸重量の違いは基本的に燃料搭載量の違いによるもので、EL、標準型、ERの順に航続距離が長くなる[43]

運用の状況・特徴

北米や欧州でCRJを運用している航空会社は、主に地域航空会社(コミューター航空会社、またはリージョナル航空会社)と呼ばれ、幹線路線を補完する小需要路線の運航を主に行っている[11][44][45]。 2011年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件後には航空旅客需要が落ち込み、大手航空会社が経営不振や破綻に陥ったため、中大型ジェット機よりも経済的でプロペラ機よりも高速で航続距離が長いというリージョナルジェットの特性を活かした地域航空会社の路線拡大が進んだ[11][46]

2013年7月末において、CRJファミリーの半数以上が北米で運航されており、合計は1,000機弱にのぼる[4]。特に、スカイウェスト航空、ピナクル航空(現エンデバー航空英語版)、エクスプレスジェット英語版の各社では100機以上を運用している[4]

2番目に運用機数が多いのが欧州で200機を上回る[4]。こちらは、北米ほどの大量運用を行っている会社はないが、20機以上を就航させている会社としてフランスのオップ!、スペインのエア・ノストラム、ドイツのルフトハンザドイツ航空(ルフトハンザ・シティーライン、ユーロウイングス)があげられる[4]

上記以外の地域については、日本を含むアジア中東南アメリカアフリカにおいて、複数の航空会社によりそれぞれ数機から10機程度ずつ運用されており、分布に偏りはあるが、世界の広い範囲でCRJファミリーが運航されている[4]

日本では、2013年時点で日本航空子会社のジェイエアがCRJ200を9機保有[4]アイベックスエアラインズがCRJ100/200を合わせて4機とCRJ700を5機運航している[4]。 なお、日本における総販売代理店は総合商社双日がつとめている[47]

主な事故・インシデント

CRJファミリーの主な事故を以下に示す。

  • 2004年10月14日、ピナクル航空(現エンデバー航空)3710便として運航されていたCRJ200が、アメリカのミズーリ州ジェファーソン・シティ近郊の住宅地に墜落した[49]。回送飛行中であったため乗客や客室乗務員はおらず、機長および副操縦士の2名が死亡した[49]

主要諸元

CRJファミリーの主なモデルの主要諸元を下表に示す。出典は、ボンバルディア社の公表値を用いる(CRJ200[7]、CRJ700、900、1000[38])。

モデルごとの主要諸元
モデル名 CRJ200 CRJ700NextGen CRJ900NextGen CRJ1000NextGen
乗員 2名
座席数
(1クラス)
50席 78席(最大)
70席(標準)
90席(最大)
86席(標準)
104席(最大)
100席(標準)
座席数
(2クラス)
N/A 66席 78席 93席
全長 26.77 m 32.3 m 36.2 m 39.1 m
全幅 21.21 m 23.2 m 24.9 m 26.2 m
全高 6.22 m 7.6 m 7.5 m 7.5 m
翼面積 48.35 m2 70.6 m2 77.4 m2
胴体最大直径 2.69 m 2.7 m
客室内最大幅 2.53 m 2.55 m
客室内最大高 1.85 m 1.89 m
運用自重 14,016 kg 20,069 kg 21,845 kg 23,188 kg
無燃料重量 (ZFW) 19,958 kg 28,259 kg 31,751 kg
ER: 31,751 kg
LR: 32,092 kg
35,154 kg
最大離陸重量 (MTOW) ER: 23,247 kg
LR: 24,154 kg
32,999 kg
ER: 34,019 kg
LR: 34,926  kg
36,514 kg
ER: 37,421 kg
LR: 38,330 kg
40,824 kg
EL: 38,995 kg
ER: 41,640 kg
最大ペイロード 5,942 kg 8,190 kg 9,907 kg
ER: 9,907 kg
LR: 10,247 kg
11,966 kg
貨物容積 13.8 m3 15.5 m3 16.8 m3 19.4 m3
巡航速度 マッハ 0.74 (488 mph; 785 km/h) マッハ 0.78 (515 mph; 829 km/h) マッハ 0.78 (515 mph; 829 km/h) マッハ 0.78 (515 mph; 829 km/h)
最大巡航速度 マッハ 0.81 (534 mph; 860 km/h) マッハ 0.825 (544 mph; 876 km/h) マッハ 0.83 (548 mph; 882 km/h) マッハ 0.82 (541 mph; 871 km/h)
最大航続距離 ER: 1,345 nmi (2,491 km; 1,548 mi)
LR: 1,700 nmi (3,148 km; 1,956 mi)
1,218 nmi (2,256 km; 1,402 mi)
ER: 1,504 nmi (2,785 km; 1,731 mi)
1,048 nmi (1,940 km; 1,206 mi)
ER: 1,283 nmi (2,376 km; 1,477 mi)
LR: 1,515 nmi (2,806 km; 1,744 mi)
1,425 nmi (2,639 km; 1,640 mi)
EL: 971 nmi (1,798 km; 1,118 mi)
ER: 1,622 nmi (3,004 km; 1,867 mi)
離陸滑走距離[注釈 4] ER: 1,768 m
LR: 1,918 m
1724 m
ER: 1676 m
LR: 1851 m
1778 m
ER: 1862 m
LR: 1954 m
1979 m
EL: 1826 m
ER: 2053 m
エンジン (2x) GE CF34-3B1 GE CF34-8C5B1 GE CF34-8C5 GE CF34-8C5A1
離陸推力 (2x) 38.84 kN 56.4 kN 59.4 kN 60.6 kN

脚注

注釈

  1. ^ 1986年12月にカナディア社の株式がカナダ政府からボンバルディア社に売却された[16]
  2. ^ エンジン、降着装置、そして主翼構造などはCRJ700のままであった
  3. ^ 改造元のCRJ900試作機は、CRJ700試作機の改造機である。
  4. ^ 国際標準大気、最大離陸重量時
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出典

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  2. ^ a b c 橋本 & 屋井 2011, p. 41.
  3. ^ 細谷 2007, p. 48.
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  10. ^ a b 橋本 & 屋井 2011, pp. 40–42.
  11. ^ a b c d e 細谷 2007, pp. 40–45.
  12. ^ a b 日機連 & IADF 2006a, pp. 5–1-5–2.
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  15. ^ 細谷 2007, pp. 44–45.
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  17. ^ a b FAA 2013, p. 10.
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  20. ^ a b c d e f g 青木 2014, p. 128.
  21. ^ a b c d e f g h i j k l 青木 2014, p. 129.
  22. ^ EASA 2010, p. 11.
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  25. ^ EASA 2010, p. 25.
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  35. ^ a b c d e 青木 2014, p. 132.
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  42. ^ 青木 2014, pp. 129–132.
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参考文献

書籍

  • 青木謙知『旅客機年鑑2014-2015』イカロス出版、2014年2月25日。ISBN 978-4-86320-820-9 
  • 橋本安男; 屋井鉄雄『リージョナル・ジェットが日本の航空を変える』成山堂書店、2011年6月18日。ISBN 978-4425861910 
  • 細谷孝利 編『平成19年度版 世界の航空宇宙工業』、日本航空宇宙工業会、2007年3月31日。ISSN 09101535 

報告書・紀要

ウェブページ・報道記事・プレスリリース

外部リンク

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