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[[File:British PMC with G36K and ANA soldier.jpg|thumb|240px|[[アフガニスタンの軍事|アフガニスタン警察]]の隊員(左)と握手する[[イギリス]]の民間軍事会社のコントラクター(右)。]]
{{複数の問題
<!--[[ファイル:US Navy 041114-M-8205V-005 Iraqi Special Forces Soldiers assigned to the 1st Marines, patrol south clearing every house on their way through Fallujah, Iraq, during Operation Al Fajr (New Dawn).jpg|thumb|300px|廃墟と化した[[ファルージャ]]。<br />PMSCsコントラクター殺害事件から始まった戦いは[[9.11]]後最大の激戦へと発展した。]]-->
|独自研究=2013年12月
'''民間軍事会社'''(みんかんぐんじがいしゃ)とは、直接[[戦闘]]、[[要人警護]]や施設、車列などの[[警備]]、[[軍事教育]]、[[兵站]]などの[[軍事]]的[[サービス]]を行う[[企業]]。
|参照方法 = 2013年12月
|未検証 = 2013年12月
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|雑多な内容の箇条書き = 2013年12月
|内容過剰 = 2013年12月
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[[File:GK Sierra Security Contractors in Afganistan.gif|thumb|300px|GK シエラ社のコントラクター([[アフガニスタン]])。<br />PMSCのコントラクターは[[ジュネーヴ条約]]の適用を避けるため[[軍服]]を着用しないので(後述)、[[民間人]]に近い服装の上から[[ボディアーマー]]や[[タクティカルベスト]]を着用している。]]
[[ファイル:US Navy 041114-M-8205V-005 Iraqi Special Forces Soldiers assigned to the 1st Marines, patrol south clearing every house on their way through Fallujah, Iraq, during Operation Al Fajr (New Dawn).jpg|thumb|300px|廃墟と化した[[ファルージャ]]。<br />PMSCsコントラクター殺害事件から始まった戦いは[[9.11]]後最大の激戦へと発展した。]]
'''民間軍事会社'''(みんかんぐんじかいしゃ)とは、直接[[戦闘]]、[[要人警護]]や施設、車列などの[[警備]]、[[軍事教育]]、[[兵站]]などの[[軍事]]的[[サービス]]を行う[[企業]]であり、新しい形態の[[傭兵]]組織である。


'''PMC'''(private military company または private military contractor)、'''PMF'''(private military firm)、'''PSC'''(private security company または private security contractor)などと様々な略称で呼ばれるが、2008年9月17日にスイス・モントルーで採択された[[モントルー文書]]で定された'''PMSC'''(private military and security company複数形'''PMSCs''') 公的な略称である。
'''PMC'''(private military company または private military contractor)、'''PMF'''(private military firm)、'''PSC'''(private security company または private security contractor)、'''PMSC'''(private military and security company、複数形は'''PMSCs''') などと様々な略称で呼ばれる2008年9月17日にスイス・モントルーで採択された[[モントルー文書]]でその地位や法的責任などがされている。[[傭兵]]は[[ジュネーヴ条約]]違反であるが国家の法律上、国際法上民間軍事会社も性質はジュネーヴ条約違反である。また、存在ジュネーヴ条約違反であるために、民間軍事会社にジュネーヴ条約を守る責任や義務は無い(責任と義務は雇用主に発生する)。国家の法律上と国際法上の[[法解釈]]学では、存在はグレーゾーンとされる。


== 概要 ==
== 概要 ==
{{see also|傭兵}}
[[1980年代]]末期から[[1990年代]]にかけて誕生し、[[2000年代]]の「[[対テロ戦争]]」で急成長した。国家を顧客とし、人員を派遣、[[軍隊|正規軍]]の業務を代行したり、支援したりする企業であることから、新手の[[軍需産業]]と定義されつつある。
[[1980年代]]後半から[[1990年代]]にかけて誕生し、[[2000年代]]の「[[対テロ戦争]]」で急成長した。国家を顧客とし、人員を派遣、[[軍隊|正規軍]]の業務を代行したり、支援したりする企業であることから、新手の[[軍需産業]]と定義されつつある<ref>{{Cite web|和書|url=http://globalnewsview.org/archives/7525|title=戦争の民営化?民間軍事会社の台頭 {{!}}|accessdate=2019-01-19|last=Hawkins|first=Virgil|website=GNV|language=ja}}</ref>。


主な業務としては[[軍隊]]や特定の武装勢力・組織・国に対して武装した社員を派遣しての警備・戦闘業務に加え、[[兵站]]・[[整備]]・[[軍事訓練|訓練]]など旧来型の傭兵と異なり提供するサービスは多岐に渡る。軍の増派がたびたび政治問題化していることや、より多くの兵士を最前線に送るために[[後方支援]]や警備活動の[[民間委託]]が進んだこと、民間軍事会社の社員の死者は公式な[[戦死]]者に含まれない等の理由がその背景にある。従来であれば正規軍の二線級部隊が行ってきた警備や後方業務を外注する民間組織としてイラクとアフガニスタンで正規軍の後方を支える役目を担っている{{要出典|date=2010年3月}}
主な業務としては[[軍隊]]や特定の武装勢力・組織・国に対して武装した社員を派遣しての警備・戦闘業務、武装勢力拘束された人質の救出や窮地に陥った要人の逃亡支援など救助・救援業務<ref>[[NHK]](2020年1月4日)「[https://web.archive.org/web/20200104153422/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200104/k10012235351000.html ゴーン被告 “箱に隠れ出国” 元米軍特殊部隊員関与か]」</ref>、[[兵站]]・[[整備]]・[[軍事訓練|訓練]]等の後方支援など、戦闘一辺倒だった旧来型の傭兵と異なり提供するサービスは多岐に渡る。


軍の増派がたびたび政治問題化していることや、より多くの正規兵を最前線に送るために[[後方支援]]や警備活動の[[民間委託]]が進んだこと、民間軍事会社の社員の死者は公式な[[戦死]]者に含まれないなどの理由で活用が進んでいる。イラクやアフガニスタンでは、従来であれば正規軍の二線級部隊が行ってきた警備や兵站、情報収集など後方業務を外注する民間組織として正規軍の後方を支える役目を担い、多い時で約26万人の民間人が米国政府の業務に関わった<ref>{{Cite web|和書|url= http://diamond.jp/articles/-/33019?page=3 |title= アルジェリア人質事件で注目 日本人が知らない「民間軍事会社」の実態 |publisher= [[週刊ダイヤモンド]] |accessdate= 2015-04-17}}</ref>。
その一方で[[軍人]]、[[民間人]]、[[傭兵]]のどれにも当てはまらない非常に曖昧な存在であることや、[[需要]]が増大し急速に規模が拡大したため、管理が行き届かず多くの不祥事(2007年にブラックウォーター社が引き起こした民間人虐殺事件など)を起こした事などが問題になっている。また、[[2004年]]3月に、PMSCsコントラクターが民衆に惨殺され、町を引きずり回された後に焼却、橋に吊るされるという事件が発生。これが原因となり[[ファルージャの戦闘|ファルージャで多国籍軍と武装勢力が軍事衝突]]し、4月と11月の戦闘を合わせて多国籍軍側100人以上、武装勢力と民間人にそれぞれ1000人以上の死者が出た。


その一方で[[軍人]]、[[民間人]]、[[傭兵]]のどれにも当てはまらない曖昧な存在であることや、[[需要]]が増大し急速に規模が拡大したため、管理が行き届かず多くの不祥事(2007年に[[ブラックウォーターUSA|ブラックウォーター社]]が引き起こした民間人虐殺事件など)を起こした事などが問題になっている。[[2004年]]3月、民間軍事会社の要員が民衆に惨殺され、町を引きずり回された後に焼却、橋に吊るされるという事件が発生。これが原因となりファルージャで多国籍軍と武装勢力が軍事衝突し([[ファルージャの戦闘]])、4月と11月の戦闘を合わせて多国籍軍側100人以上、武装勢力と民間人にそれぞれ1000人以上の死者が出た。2019年末には保釈中の[[カルロス・ゴーン]]の国外逃亡を支援するなど、報酬次第では明白な違法行為を行う者も存在する<ref>[[朝日新聞]](2020年1月4日)「[https://www.asahi.com/articles/ASN142T3QN14UHBI00F.html ゴーン被告、プロが逃がす?元グリーンベレーの名前浮上]」</ref>。
2008年9月、スイスの国際会議においてアメリカや欧州諸国、中国、イラク、アフガニスタンなど17カ国は民間軍事会社に国際法を順守させるため、各国に対して適切な監督・免許制度の導入、採用時の審査の厳格化、戦時の民間人保護を規定した国際人道法や人権法に関する社員教育の強化など適切な監督を求める具体的な指針を盛り込んだ[[モントルー文書]]を採択した<ref>民間軍事会社の指針採択 国際人道法順守で17カ国 共同通信 2008年9月18日</ref>。

2008年9月、スイスの国際会議においてアメリカや欧州諸国、中国、イラク、アフガニスタンなど17カ国は民間軍事会社に国際法を順守させるため、各国に対して適切な監督・免許制度の導入、採用時の審査の厳格化、戦時の民間人保護を規定した国際人道法や人権法に関する社員教育の強化など適切な監督を求める具体的な指針を盛り込んだ[[モントルー文書]]を採択した<ref>民間軍事会社の指針採択 国際人道法順守で17カ国 共同通信 2008年9月18日</ref>。


== 名称 ==
== 名称 ==
[[日本]]では'''民間軍事会社'''、'''民間軍事請負企業'''、'''民間警備会社'''などと呼称される。民間軍事会社を示す[[英語]]での正式な名称が決まったのは2008年9月17日にスイス・[[モントルー]]で採択された[[モントルー文書]]で'''PMSC''' (private military and security company)(およびその複数形のPMSCs (… companies))の略語が使用されてからである。
[[日本]]では'''民間軍事会社'''、'''民間軍事請負企業'''などと呼称される。


民間軍事会社について[[報道機関]]や文献によって異なる名称が使用されており、'''PMC'''(private military company または private military contractor)、'''PMF'''(private military firms)とさまざまで、[[アメリカ国防総省]]や民間軍事会社の管理組織であるIPOAやBAPSCはPMSCの語を使用している。
民間軍事会社で働く戦闘要員は'''プライベート・オペレーター'''や'''コントラクター'''(contractor 請負人、契約者)と呼ばれる。


国際政治学者の[[P・W・シンガー]]は『戦争請負会社』(邦訳版:[[日本放送出版協会]] (2004/12)原著:Cornell University Press (July 2003))でPMFと表記している。
正式名称が決定される前は、民間軍事会社について[[報道機関]]や文献によって異なる名称が使用されており、'''PMC'''(private military company または private military contractor)、'''PMF'''(private military firms)、'''PSC'''(private security company または private security contractor)とさまざまだったが、モントルー指針にならい[[アメリカ国防総省]]や民間軍事会社の管理組織であるIPOAやBAPSCもPMSCの語を使用していることから、現在ではPMSCが正式名称となっている。


== 歴史 ==
国際政治学者の[[P・W・シンガー]]は『戦争請負会社』(邦訳版:[[日本放送出版協会]] (2004/12)原著:Cornell University Press (July 2003))でPMFと表記し、2004年の[[イラク]]国内で活動する民間軍事会社の各種ライセンスに関する規定と、武器を使用するルールや手順を定めている「CAP oder 17」ではPSCと明記され、[[ブラックウォーターUSA]]社が起こした事件に関する[[公聴会]]では、質問側がPMCを使用したのに対し、ブラックウォーター社側はPSCと答えている。
<!--[[File:US Navy 041109-M-2789C-016 Gunnery Sgt. Ryan P. Shane (center), platoon Gunnery Sergeant assigned to Company B, 1st Battalion 8th Marine Regiment (1-8), Regimental Combat Team 7, and another member of 1-8, recover a fatally wou.jpg|thumb|200px|武装勢力に銃撃された[[アメリカ海兵隊]]員(第2次[[ファルージャの戦闘|ファルージャ戦]])]]-->
===登場以前===
[[近代]]に入り民間企業が巨大化すると、[[鉱山]]で起きたストライキの鎮圧など警備員では対処できない事態を素早く解消するため、それまで手配師などに頼っていた傭兵の募集に代わり、会社の一部門として武装組織(会社軍)を編成するようになった。これらは退役した士官などの経験者を指揮官として迎え、[[グルカ兵]]やヨーロッパ人などの傭兵を兵としていた。構成は歩兵、騎兵、砲兵からなるヨーロッパの伝統的な陸軍を簡略化した組織であったが、資金力を背景に武装に関しては最新の兵器を揃えており、最新の軍事教育を受けたヨーロッパの将校を指導教官として雇用することもあった。


[[ジョン・ロックフェラー]]は[[鉱山]]や工場で発生したストライキを鎮圧するため積極的に会社軍を派遣していたが、コロラド燃料製鉄会社のストライキを鎮圧するため30人以上を射殺したことで[[ヘレン・ケラー]]が新聞で非難記事を連載したことや、社長となっていた[[ジョン・ロックフェラー2世|ロックフェラー2世]]が対話路線に転向したことでアメリカ国内では交渉で解決し、武力が必要な場合は[[州兵]]に任せるべきという風潮となった。また私企業が武力を保有することは次第に問題視されるようになり、欧米では国内での行動に制約が課されるようになった。
private security company (PSC) は、直訳すると民間保安会社(民間警備会社)となり、民間軍事会社と違い、単なる戦争屋や傭兵集団といった悪いイメージよりも、警備や安全提供などといった良いイメージをされやすくなるため、民間軍事会社側は公式文章や[[コマーシャル|CM]]、[[ウェブサイト]]などでPSCを用いることが多い<ref name="軍事研究 2008,10">『[[軍事研究]]』2008年10月号 pp.94–107</ref>(ただし、古い文献では、民間軍事会社側もPMCと呼称していることが多い)。また、軍隊の[[民営化]]に肯定的な意見を持つ者も、PSCを使用する傾向にある。逆に、民間軍事会社に批判的な記事や、古い文献、[[映画]]や[[ゲーム]]などではPMC、PMFが用いられることが多い。1995年のNHKのテレビ番組<ref>[[ETV特集]]「20世紀最強の軍隊 グルカ」。1995年放送のグルカ兵に関するドキュメンタリー。部隊縮小計画によって職を失ったグルカ兵が、民間軍事会社と契約してシエラレオネ内戦に派遣される様子が放送されている。</ref>では、民間軍事会社の社長は「コントラクター」に相当する人間を「guards([[警備員]])」と呼び、NHKも「民間の警備会社」や「警備員」と訳している。


国外において、西洋[[列強]]は[[東インド会社]]のような[[植民地]]を統治する[[勅許会社]]の会社軍に対し、反乱の鎮圧のみならず周辺にある国を植民地にするための戦争([[第二次シク戦争]]など)を許可していた。自国の軍隊の[[アウトソーシング]]であり、これにより遠方に軍隊を派遣する必要がなくなり、低コストで植民地を防衛することが可能となった。特に[[インド]]では[[ヴァンディヴァッシュの戦い]]や[[プラッシーの戦い]]のように会社軍同士の戦闘が度々発生した。植民地の会社軍は[[スィパーヒー]]など地元の傭兵が中心で兵の質はまちまちだったが、イギリスはこれらの戦いで活躍したグルカ兵に注目し、[[イギリス東インド会社]]軍で積極的に雇用するようになった。
== 歴史 ==

[[File:British PMC with G36K and ANA soldier.jpg|thumb|200px|[[アフガニスタンの軍事|アフガニスタン警察]]の隊員(左)と握手する[[イギリス]]の民間軍事会社のコントラクター(右)。]]
[[ロシア帝国]]の勅許会社である[[露米会社]]は[[ニコライ・レザノフ]]の部下で軍人の{{仮リンク|ニコライ・アレクサンドロヴィッチ・フヴォストフ|ru|Хвостов, Николай Александрович|label=ニコライ・フヴォストフ}}が会社の武装勢力を指揮し、日本を襲撃している([[文化露寇]])。
[[File:Gurkha bodyguard in Nangarhar.jpg|thumb|200px|元[[グルカ兵]]のコントラクター([[アフガニスタン]]、ナンガハル州)]]

[[File:US Navy 041109-M-2789C-016 Gunnery Sgt. Ryan P. Shane (center), platoon Gunnery Sergeant assigned to Company B, 1st Battalion 8th Marine Regiment (1-8), Regimental Combat Team 7, and another member of 1-8, recover a fatally wou.jpg|thumb|200px|武装勢力に銃撃された[[アメリカ海兵隊]]員(第2次[[ファルージャの戦闘|ファルージャ戦]])]]
これらの会社軍は指揮官は社員、傭兵はパートタイムで雇用して指揮下に置いているが、第三者へ兵力を提供することはなく、それまで領主が抱える私兵のような[[自力救済]]の延長か、政府が植民地を間接的に統制するための組織であった。


=== 民間軍事会社の登場 ===
=== 民間軍事会社の登場 ===
第二次世界大戦後には各国で法が整備され会社軍のような存在は規制がかかり、治安が不安定な地域での操業する鉱山や油田の警備に支障を来すようになった。
第二次世界大戦後から[[ダインコープ]]や[[SAS]]創始者のデビッド・スターリングが経営するウォッチガード・セキュリティといった企業が間接的な軍事サービスを行い、[[コンゴ動乱]]や[[ローデシア紛争]]などでは[[傭兵]]が戦闘や護衛にも関わっていたが、[[1991年]]の[[ソ連崩壊]]に伴う[[冷戦]]の終結により、[[アメリカ合衆国]]を中心とした各国は肥大化した軍事費と兵員の削減を開始し、数多くの[[退役軍人]]を生み出した。冷戦終結以降の世界では超大国同士がぶつかりあう大規模な戦闘の可能性は大幅に少なくなったものの、[[テロリズム]]や小国における[[内戦]]、[[民族紛争]]など小規模な戦闘や特定の敵国が断定できない[[非対称戦争]]が頻発化した。

そこで警備会社という名目で設立し、かつて会社軍が担当していた軍事サービスを他の企業に提供する会社が登場した。代表的な会社としては[[ダインコープ]]や[[特殊空挺部隊|SAS]]創始者の[[:en:David Stirling|デビッド・スターリング]]が経営する[[ウォッチガード・セキュリティ]]があり、これには自国企業を保護したいイギリス政府も出資していた。民間企業でも自社で直接雇用するのに比べ、必要なときに必要な数の人員を確保できるためメリットは大きかった。

[[コンゴ動乱]]や[[ローデシア紛争]]などでは[[傭兵]]が戦闘や護衛にも関わっていたが、[[1991年]]の[[ソビエト連邦の崩壊]]に伴う[[冷戦]]の終結により、[[アメリカ合衆国]]を中心とした各国は肥大化した軍事費と兵員の削減を開始し、数多くの[[退役軍人]]を生み出した。冷戦終結以降の世界では超大国同士がぶつかりあう大規模な戦闘の可能性は大幅に少なくなったものの、[[テロリズム]]や小国における[[内戦]]、[[民族紛争]]など小規模な戦闘や特定の敵国が断定できない[[非対称戦争]]が頻発化、不安定な地域で行動する民間人を護衛する需要も増加した。


優秀な軍歴保持者は有り余り、軍事予算の大幅な削減に伴い軍隊のコスト面での効率化が求められ、そして小規模の紛争が頻発する。この3つの要素が民間軍事会社を生み出す土壌を与える事となった。まさに戦争の[[アウトソーシング]]である。
優秀な軍歴保持者は有り余り、軍事予算の大幅な削減に伴い軍隊のコスト面での効率化が求められ、そして小規模の紛争が頻発する。この3つの要素が民間軍事会社を生み出す土壌を与える事となった。まさに戦争の[[アウトソーシング]]である。


こうして、民間軍事会社の元祖とも言える「エグゼクティブ・アウトカムズ」が誕生し、既存の軍関連会社も次々と民間軍事会社化していった。
こうして、民間軍事会社の元祖とも言える「[[エグゼクティブ・アウトカムズ]]」が誕生し、既存の軍関連会社も次々と民間軍事会社化していった。


=== 1990年代 ===
=== 1990年代 ===
[[ファイル:MacKenzieSlcu.jpg|260px|サムネイル|シエラレオネ軍とグルカセキュリティー社]]
[[1989年]]に[[南アフリカ共和国]]で誕生した[[エグゼクティブ・アウトカムズ]](Executive Outcomes,略称EO)社は、[[フレデリック・ウィレム・デクラーク]]や[[ネルソン・マンデラ]]政権下で行われた[[アパルトヘイト]]政策の廃止や[[軍縮]]によって職を失った兵士を雇用することで、優秀な社員を多数有する会社となった。
[[1989年]]に[[南アフリカ共和国]]で誕生した[[エグゼクティブ・アウトカムズ]](Executive Outcomes,略称EO)社は、[[フレデリック・ウィレム・デクラーク]]や[[ネルソン・マンデラ]]政権下で行われた[[アパルトヘイト]]政策の廃止や[[軍縮]]によって職を失った兵士を雇用することで、優秀な社員を多数有する会社となった。


特に第32大隊などの精鋭部隊に所属していた[[黒人]]兵士を多く雇用していたが、彼らは[[アンゴラ内戦]]で家族や財産を失い、逃げ延びた先の南アフリカでは白人達に周辺国への軍事介入や同じ黒人の弾圧に動員され、アパルトヘイト廃止後行き場を失った者達だった(EO社の解体後はポムフレットなど辺境の町で貧しく暮らしている)。
特に[[第32大隊 (南アフリカ)|第32大隊]]などの精鋭部隊に所属していた[[黒人]]兵士を多く雇用していたが、彼らは[[アンゴラ内戦]]で家族や財産を失い、逃げ延びた先の南アフリカでは白人達に周辺国への軍事介入や同じ黒人の弾圧に動員され、アパルトヘイト廃止後行き場を失った者達だった(EO社の解体後はポムフレットなど辺境の町で貧しく暮らしている)。


EO社はアンゴラ内戦中の[[1993年]]に[[アンゴラ]]政府と契約を結び、[[アンゴラ共和国軍|正規軍]]の訓練と直接戦闘を実行。結果[[アンゴラ全面独立民族同盟]]に壊滅的被害を与えることに成功し、20年続いた内戦をわずか1年で終結させた。その後、国際社会の圧力でアンゴラ政府はEO社との契約を打ち切り、国連が平和維持を行うことになったが平和維持部隊は任務に失敗し、アンゴラは内戦に逆戻りした。
EO社はアンゴラ内戦中の[[1993年]]に[[アンゴラ]]政府と契約を結び、[[アンゴラ共和国軍|正規軍]]の訓練と直接戦闘を実行。結果[[アンゴラ全面独立民族同盟]](UNITA)に壊滅的被害を与えることに成功し、20年続いた内戦をわずか1年で終結させた。その後、国際社会の圧力でアンゴラ政府はEO社との契約を打ち切り、国連が平和維持を行うことになったが平和維持部隊は任務に失敗し、アンゴラは内戦に逆戻りした。


また、[[シエラレオネ内戦]]では、残虐な行動と[[少年兵]]を利用することで知られた反政府勢力[[革命統一戦線]](RUF)の攻勢で、先に展開したグルカ・セキュリティー・サービス社は[[ロバート・C・マッケンジー]]を捕食されるなど大きな被害を出し撤退、首都[[フリータウン]]も陥落寸前の状態であったが、EO社はわずか300人の部隊でRUFに壊滅的被害を与え、RUFが占拠していた[[ダイヤモンド]]鉱山を奪還することで和平交渉の席に着かせることに成功した。しかし、こちらもアンゴラと同様に内戦に逆戻りした。
また、[[シエラレオネ内戦]]では、残虐な行動と[[少年兵]]を利用することで知られた反政府勢力[[革命統一戦線]](RUF)の攻勢で、先に展開したグルカ・セキュリティー・サービス社は司令官であった[[ロバート・C・マッケンジー]]が殺害されるなど大きな被害を出し撤退、首都[[フリータウン]]も陥落寸前の状態であったが、EO社はわずか300人の部隊でRUFに壊滅的被害を与え、RUFが占拠していた[[ダイヤモンド]]鉱山を奪還することで和平交渉の席に着かせることに成功した。しかし、こちらもアンゴラと同様に内戦に逆戻りした。


EO社は次第に肥大化し、[[戦闘機]]、[[攻撃機]]、[[攻撃ヘリコプター]]などの航空兵器や、[[戦車]]、[[歩兵戦闘車]]のような強力な陸上兵器、負傷者輸送用の[[ボーイング707]]なども運用するようになったが、危機感を抱いた南アフリカ政府によって[[1998年]]に解体された。しかし、内戦の戦局をも変えてしまう民間軍事会社の登場は世界に衝撃を与えた。
EO社は次第に肥大化し、[[戦闘機]]、[[攻撃機]]、[[攻撃ヘリコプター]]などの航空兵器や、[[戦車]]、[[歩兵戦闘車]]のような強力な陸上兵器、負傷者輸送用の[[ボーイング707]]なども運用するようになったが、危機感を抱いた南アフリカ政府によって[[1998年]]に解体された。しかし、内戦の戦局をも変えてしまう民間軍事会社の登場は世界に衝撃を与えた。

[[パプアニューギニア]]では、{{仮リンク|ブーゲンビル紛争|en|Bougainville Civil War}}において、政府が同国の{{仮リンク|パプアニューギニア国防軍|en|Papua New Guinea Defence Force}}よりも民間軍事会社の[[サンドライン・インターナショナル]]を重用したため、国軍による[[クーデター]]が発生している。
{{main|w:Sandline affair}}

=== 2000年代 ===
=== 2000年代 ===
[[File:Gurkha bodyguard in Nangarhar.jpg|thumb|200px|元[[グルカ兵]]のコントラクター([[アフガニスタン]]、ナンガハル州)]]
[[1990年代]]に登場した民間軍事会社は、その後急速に業務を拡大していき、[[2001年]]の[[アメリカ同時多発テロ事件]]以降からは[[イラク]]や[[アフガニスタン]]での活動が注目を集めるようになった。しかし、急速な組織拡大から法規の作成が追いつかず、管理する法律も組織も無い無法状態が続いたため、殺人や虐待など数々の不祥事を起こしてきた。
[[1990年代]]に登場した民間軍事会社は、その後急速に業務を拡大していき、[[2001年]]の[[アメリカ同時多発テロ事件]]以降からは[[イラク]]や[[アフガニスタン]]での活動が注目を集めるようになった。しかし、急速な組織拡大から法規の作成が追いつかず、管理する法律も組織も無い無法状態が続いたため、殺人や虐待など数々の不祥事を起こしてきた。


2001年にはアメリカで民間軍事会社の管理組織である[[:en:International Peace Operations Association|International Peace Operations Association]]が発足、[[2006年]]には[[イギリス]]でアメリカとは異なる民間軍事会社管理組織であるBritish Association Of Private Security Companiesが発足した。イギリスの場合は非常に厳格民間軍事会社にISOやBSの取得を義務付けており[[プレゼンテーション]]においてもイギリスの会社はアメリカと違うことを強調している。
2001年にはアメリカで民間軍事会社の管理組織である[[:en:International Peace Operations Association|International Peace Operations Association]]が発足、[[2006年]]には[[イギリス]]でアメリカとは異なる民間軍事会社管理組織であるBritish Association Of Private Security Companiesが発足した。イギリスの場合はアメリカよりも非常に厳格で、民間軍事会社にISOやBSの取得を義務付けており[[プレゼンテーション]]においてもイギリスの民間軍事会社はアメリカのそれ違うことを強調している。


イラクにおける管理組織は[[連合国暫定当局]]が行ってきたが解体にともない[[2004年]]8月に連合国暫定当局から分離した[[NPO法人]]として[[:en:Private Security Company Association of Iraq|Private Security Company Association of Iraq]]が発足した。イラクでは連合国暫定当局が最後に発行した[[:en:Coalition Provisional Authority Order 17 | CPA Order17]]という規定に基づいて行動していたが、この規定は大変に問題のあるもので、民間軍事会社はイラクの法律に従う必要が無く、あらゆる免責特権を認め、税金も免除するなど民間軍事会社を完全に[[治外法権]]化する物であった。
イラクにおける管理組織は[[連合国暫定当局]]が行ってきたが解体にともない[[2004年]]8月に連合国暫定当局から分離した[[NPO法人]]として[[:en:Private Security Company Association of Iraq|Private Security Company Association of Iraq]]が発足した。イラクでは連合国暫定当局が最後に発行した[[:en:Coalition Provisional Authority Order 17|CPA Order17]]という規定に基づいて行動していたが、この規定は大変に問題のあるもので、民間軍事会社はイラクの法律に従う必要が無く、あらゆる免責特権を認め、税金も免除するなど民間軍事会社を完全に[[治外法権]]化する物であった。


[[2007年]]9月には[[ブラックウォーターUSA]]のコントラクターがイラクで輸送部隊の護衛中に市中で無差別発砲を行いイラク人を17人射殺するという事件が起きると、イラク政府も厳しい措置を取らざるを得なくなり、2009年1月1日でCPA Order17の無効を宣言し、民間軍事会社から免責特権を剥奪した。これ以降、民間軍事会社はイラクの国内法に従う義務が生じPrivate Security Company Association OF Iraqは[[2009年]]現在は実質的に活動していない。
[[2007年]]9月には[[ブラックウォーターUSA]]のコントラクターがイラクで輸送部隊の護衛中に市中で無差別発砲を行いイラク人を17人射殺するという事件が起きると、イラク政府も厳しい措置を取らざるを得なくなり、2009年1月1日でCPA Order17の無効を宣言し、民間軍事会社から免責特権を剥奪した。これ以降、民間軍事会社はイラクの国内法に従う義務が生じPrivate Security Company Association OF Iraqは[[2009年]]現在は実質的に活動していない。
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=== 2010年代 ===
=== 2010年代 ===
イラク戦争後、民間軍事会社は各地の小規模紛争に派遣されるようになった。[[リビア内戦]]においては、イスラエルのグローバルCSTが主にアフリカ系からなる警備要員や東欧・中東系の戦闘機パイロットなど多数のオペレーターを派遣して非武装市民への殺傷を含む過剰な業務を行い、[[シリア騒乱]]では、アメリカの民間軍事会社が[[自由シリア軍]]など反アサド派を訓練するためにトルコで活動していた。
イラク戦争後、民間軍事会社は各地の小規模紛争に派遣されるようになった。[[2011年リビア内戦|リビア内戦]]においては、イスラエルのグローバルCSTが主に[[アフリカ]]系からなる警備要員や東欧・中東系の戦闘機パイロットなど多数の要員を派遣して非武装市民への殺傷を含む過剰な業務を行い、[[シリア内戦]]では、アメリカの民間軍事会社が[[自由シリア軍]]など反アサド派を訓練するためにトルコで活動していた。一方、シリア政権側もロシア系の民間軍事会社の先駆けで[[香港]]を拠点とする[[スラヴ軍団]]から同様の支援を受けていた<ref>{{Cite web|和書|title=プーチン大統領の傭兵部隊|url=http://www.g-v.co.jp/201407_ABE.html|publisher=隔月刊国際情報誌グローバルヴィジョン|accessdate=2018-12-26}}</ref>。アフリカではブラックウォーター社の設立者だった[[エリック・プリンス]]らが[[中華人民共和国|中国]]政府系の香港企業[[フロンティア・サービス・グループ]]で中国の国家戦略である[[一帯一路]]を警備面から支援していた<ref>{{cite web|last1=Horton|first1=Chris|title=The American mercenary behind Blackwater is helping China establish the new Silk Road|url=https://qz.com/957704/the-american-mercenary-behind-blackwater-is-helping-china-establish-the-new-silk-road/|website=Quartz|accessdate=2018-09-10}}</ref><ref>{{cite web|last1=Scahill|first1=Jeremy|title=ERIK PRINCE IN THE HOT SEAT|url=https://theintercept.com/2016/03/24/blackwater-founder-erik-prince-under-federal-investigation/|publisher=The Intercept|accessdate=2017-12-10}}</ref>

また[[2014年]]以降の[[ウクライナ紛争 (2014年-)|騒乱]]下にある[[ウクライナ]]においても西欧の民間軍事会社<ref group="注">アメリカの「グレイストーン」、イギリスの「イージス」、ポーランドの「ASBCオタゴ」の名前が挙がっている</ref>の要員らしき外国人が多数確認されたという証言がある。


[[2015年]]には[[2015年イエメン内戦|イエメン]]で、アメリカのスピアー・オペレーションズ・グループがアラブ首長国連邦の依頼により、イエメンにいる政敵の暗殺作戦を実行していた。
また[[2014年]]以降の騒乱下にある[[ウクライナ]]においても西欧の民間軍事会社<ref>アメリカの「グレイストーン」、イギリスの「イージス」、ポーランドの「ASBCオタゴ」の名前が挙がっている</ref>の要員らしき外国人が多数確認されたという証言がある。
=== 2020年代 ===
[[2022年ロシアのウクライナ侵攻]]にて、ロシアの[[ワグネル・グループ]]がロシア正規軍と並んで主要な軍事力として機能している<ref>{{Cite web |last=Ma |first=Alexandra |title=Ukraine posts image of dog tag it said belonged to a killed mercenary from the Wagner Group, said to be charged with assassinating Zelenskyy |url=https://www.businessinsider.com/ukraine-posts-photos-dog-tag-says-wagner-group-2022-3 |date=9 March 2022 |website=Business Insider |accessdate=2022-08-17}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=ロシアがウクライナ、イギリスに配備した何千人ものワグネル・グループ傭兵:3,000人が死亡、200人が任務遂行に失敗 |url=https://voi.id/ja/news/159583/read |website=VOI |date=2022-04-20 |accessdate=2022-08-17}}</ref>。ワグネルは元正規軍兵士だけでなくロシア国内の刑務所で[[囚人]]を戦闘員として参加させ<ref name=":0">{{Cite web |title=ЧВК «Вагнера» вербует заключенных колоний Петербурга для поездки на Донбасс «идти в авангарде, помогать обнаруживать нацистов» |url=https://istories.media/reportages/2022/07/04/chvk-vagner-verbuet-zaklyuchennikh-kolonii-peterburga-dlya-poezdki-na-donbass-idti-v-avangarde-pomogat-obnaruzhivat-natsistov/ |website=istories.media |access-date=2022-07-31 |language=ru |date=2022-07-04}}</ref>、生還した者には恩赦を与えていた。ドンバス地域の[[バフムート]]を掌握するための[[バフムートの戦い|戦闘]]に中心的な役割を果たす<ref name=cnn35204097>{{Cite news|url=https://www.cnn.co.jp/world/35204097.html|title=激戦地バフムート、ワグネルとロシア国防省が掌握を宣言|work=CNN.co.jp|agency=[[CNN]]|date=2023-05-21|accessdate=2023-06-245}}</ref>などの戦果を上げてき、それに伴いワグネルの能力も認められ、創始者の[[エフゲニー・プリゴジン]]のロシアにおける政治的な評価が高まった<ref>{{Cite news|url=https://www.cnn.co.jp/world/35203744.html|title=ワグネルのトップ、怒りのボルテージ上げる これは何を意味するのか?|work=CNN.co.jp|agency=[[CNN]]|date=2023-05-13|accessdate=2023-06-24}}</ref>。しかしやがてプリゴジンは[[セルゲイ・ショイグ]]国防大臣や[[ワレリー・ゲラシモフ]]参謀総長を痛烈に批判するようになり、2023年6月23日には[[ワグネルの反乱|武装蜂起]]を宣言するに至った<ref name=cnn35204097 />。


これに対しウクライナ側も外国人義勇兵を多く募集した他、ウクライナ軍への訓練及び人命救助活動を実施するため、米軍の元将兵などで編成された[[モーツァルト・グループ]]という民間軍事会社が活動を行っている<ref name=":02">{{Cite news |last=Gettleman |first=Jeffrey |date=2022-10-09 |title=An American in Ukraine Finds the War He's Been Searching For |language=en-US |work=The New York Times |url=https://www.nytimes.com/2022/10/09/world/europe/ukraine-war-americans.html |access-date=2022-10-26 |issn=0362-4331}}</ref><ref name=":12">{{Cite web |date=2022-08-05 |title=Mozart Group: the western ex-military personnel training Ukrainian recruits |url=https://www.theguardian.com/world/2022/aug/05/mozart-group-western-ex-military-training-ukrainian-recruits |access-date=2022-10-26 |website=the Guardian |language=en}}</ref><ref name=komori>{{Cite web|和書|url=https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72628|date=2022-11-9|accessdate=2022-11-21|website=JBpress|title=その名は「モーツァルト」、大義に燃えるウクライナ外国人志願兵部隊の活躍}}</ref><ref name=afpbb220929>{{Cite web|和書|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3425978|date=2022-9-29|accessdate=2022-11-21|website=AFPBB News|title=ロシア「ワグネル」ならウクライナは「モーツァルト」 支援組織立ち上げ}}</ref>。
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== 業務 ==
== 業務 ==
民間軍事会社は、それまでの傭兵が担っていた直接戦闘行為に特化した戦闘集団ではなく、兵站・整備・訓練・教育・戦闘に関するアドバイスも行い、従来の“戦争の犬たち”([[フレデリック・フォーサイス]]の[[戦争の犬たち|同名の小説]]より)と揶揄される荒くれ者、[[アウトロー|無法者]]が集まる「血に飢えた戦闘集団」というイメージと一線を画すよう努めている。
民間軍事会社は、それまでの傭兵が担っていた直接戦闘行為に特化した戦闘集団ではなく、兵站・整備・訓練・教育・戦闘に関するアドバイスも行い、従来の“戦争の犬たち”([[フレデリック・フォーサイス]]の[[戦争の犬たち|同名の小説]]より)と揶揄される荒くれ者、[[アウトロー|無法者]]が集まる「血に飢えた戦闘集団」というイメージと一線を画すよう努めている。
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=== 直接戦闘参加型(実戦と指揮) ===
=== 直接戦闘参加型(実戦と指揮) ===
[[File:US Navy 100823-F-6228L-042 Gas Turbine System Technician (Mechanical) 3rd Class Dain Dillon and an Asia Security Group guardsman perform tower watch at a forward operating base.jpg|thumb|200px|[[アメリカ軍]]兵士(右)と警備活動を行うアジア・セキュリティー・グループ社のコントラクター(左)]]
[[File:US Navy 100823-F-6228L-042 Gas Turbine System Technician (Mechanical) 3rd Class Dain Dillon and an Asia Security Group guardsman perform tower watch at a forward operating base.jpg|thumb|200px|[[アメリカ軍]]兵士(右)と警備活動を行うアジア・セキュリティー・グループ社のコントラクター(左)]]
民間軍事会社が[[連隊]]や[[大隊]]などの正規軍のような、戦術単位での[[部隊]]を編成することは無く、他国の正規軍との直接戦闘は行わない。主に民間軍事会社が戦う相手は、[[テロリスト]]や[[ゲリラ]]など軍人ではなく、警察では手に負えない「犯罪者」とされる相手であり、会社の装備も戦車や戦闘機などは保有しておらず、従来の傭兵よりも重装備化した警備員に近い形態が多い一方、[[MiG-27 (航空機)|MiG-27]]、[[MiG-23 (航空機)|MiG-23]]、[[Su-25 (航空機)|Su-25]]といった戦闘機、攻撃機や[[Mi-24 (航空機)|Mi-24]]攻撃ヘリコプター、[[BMP-2]]歩兵戦闘車といった装備を運用(契約国が保有していたものを借用する場合もある)していたエグゼクティブ・アウトカムズ社のような例もある。また、西欧資本の民間軍事会社であっても[[M16自動小銃|M16]]シリーズといった西欧製の小火器を使用するとは限らず、価格面や現地での信頼性を意識して[[AK47]]シリーズなど、東欧製の小火器で武装しているケースも少なくない
民間軍事会社が[[連隊]]や[[大隊]]などの正規軍のような、戦術単位での[[部隊]]を編成することは無く、他国の正規軍との直接戦闘は行わない。主に民間軍事会社が戦う相手は軍人ではなく、[[テロリスト]]や[[ゲリラ]]など警察では手に負えない「犯罪者」とされる相手であり、会社の装備も戦車や戦闘機などは保有しておらず、従来の傭兵よりも重装備化した警備員に近い形態が多い一方、[[MiG-27 (航空機)|MiG-27]]、[[MiG-23 (航空機)|MiG-23]]、[[Su-25 (航空機)|Su-25]]といった戦闘機、攻撃機や[[Mi-24 (航空機)|Mi-24]]攻撃ヘリコプター、[[BMP-2]]歩兵戦闘車といった装備を運用(契約国が保有していたものを借用する場合もある)していたエグゼクティブ・アウトカムズ社のような例もある。


==== 顧客 ====
特定の政府組織や国と契約を結び、戦闘を専門とする実戦部隊を派遣し、その国の[[地下資源]]の供給地となる施設の[[警備]]、また軍の後方兵站輸送部隊の警護や[[要人警護]]、[[国際連合|国連]]、[[非政府組織|NGO]]職員、観光客や報道陣が特定の危険地域を通過する際の護衛任務なども担っている。イラクとアフガニスタンではアメリカの[[アメリカ国防総省|国防総省]]だけでなく[[アメリカ合衆国国務省|国務省]]からも多くの仕事を請けており、[[アメリカ軍]]に国務省職員の警護にまで人員を割く余裕が無いため、イラクとアフガニスタンに展開している国務省職員の警護の大半を民間軍事企業が受け持っている。
特定の政府組織や国と契約を結び、戦闘を専門とする実戦部隊を派遣し、その国の[[地下資源]]の供給地となる施設の[[警備]]、また軍の後方兵站輸送部隊の警護や[[要人警護]]、[[国際連合|国連]]、[[非政府組織|NGO]]職員、観光客や報道陣が特定の危険地域を通過する際の護衛任務なども担っている。イラクとアフガニスタンではアメリカの[[アメリカ国防総省|国防総省]]だけでなく[[アメリカ合衆国国務省|国務省]]からも多くの仕事を請けており、[[アメリカ軍]]に国務省職員の警護にまで人員を割く余裕が無いため、イラクとアフガニスタンに展開している国務省職員の警護の大半を民間軍事企業が受け持っている。


==== 警備手段 ====
自動小銃や携帯対戦車兵器など[[軽装歩兵]]と同等の装備を持つゲリラやテロリストの襲撃が予想される地域での警備は[[拳銃]]や[[警棒]]を持った軽装な警備員は役に立たない。このような地域を移動する場合には[[ガントラック]]などの簡易[[装甲車]]に軽機関銃をすえつけて常に周囲に銃口を向けて威嚇しながら移動することで、敵の襲撃意思そのものを削いで襲撃を断念させることで安全を確保するような警護体制がとられる。また、道路を頻繁にパトロールすることで爆発物の設置を断念させる業務も受け持っている。このように基本的には敵に襲撃を断念させる状況を作り出すことが主目的であり、直接の戦闘行為は最後の手段である。
自動小銃や携帯対戦車兵器など[[軽装歩兵]]と同等の装備を持つゲリラやテロリストの襲撃が予想される地域での警備においては[[拳銃]]や[[警棒]]を持った軽装な警備員は役に立たない。このような地域を移動する場合には[[ガントラック]]などの簡易[[装甲車]]に軽機関銃をすえつけて常に周囲に銃口を向けて威嚇しながら移動することで、敵の襲撃意思そのものを削いで襲撃を断念させることで安全を確保するような警護体制がとられる。また、道路を頻繁にパトロールすることで爆発物の設置を断念させる業務も受け持っている。このように基本的には敵に襲撃を断念させる状況を作り出すことが主目的であり、直接の戦闘行為は最後の手段である。


==== その他の業務 ====
近年、アメリカ軍と[[中央情報局|CIA]]はパキスタンで[[RQ-1 プレデター|MQ-1 プレデター]]や[[MQ-9 リーパー]]といった武装無人機による空爆を行っているが、この空爆の目標となるテロリストの捜索に民間軍事会社が使用されている。これは冷戦終結後にCIAの人員削減が行われたことで対テロ戦が活発化した現在人員不足に陥っていることや、コストの安さ、作戦が失敗した場合に政府の責任が問われないといった理由がある<ref>[http://mainichi.jp/select/world/news/20100501ddm007030129000c.html 毎日新聞ニュースサイト]{{リンク切れ|date=2014年6月}}<!--URLでググればそれらしき文書が見つかる--></ref>。また、無人機の操縦に関しても民間会社の社員が担当する場合があるが、攻撃に関しては交戦規定の関係で兵士が行っている<ref>[http://mainichi.jp/select/world/news/20100502ddm007030059000c.html 毎日新聞ニュースサイト]{{リンク切れ|date=2014年6月}}<!--URLでググればそれらしき文書が見つかる--></ref>。
近年、アメリカ軍と[[中央情報局|CIA]]はパキスタンで[[RQ-1 プレデター|MQ-1 プレデター]]や[[MQ-9 リーパー]]といった武装無人機による空爆を行っているが、この空爆の目標となるテロリストの捜索に民間軍事会社が使用されている。これは冷戦終結後にCIAの人員削減が行われたことで対テロ戦が活発化した現在人員不足に陥っていることや、コストの安さ、作戦が失敗した場合に政府の責任が問われないといった理由がある<ref>{{ウェブアーカイブ |deadlink=yes |title=テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/2「情報」が招く誤爆(毎日新聞2010年5月1日) |url=http://mainichi.jp/select/world/news/20100501ddm007030129000c.html |archiveurl=https://web.archive.org/web/20100522114831/http://mainichi.jp/select/world/news/20100501ddm007030129000c.html |archiveservice=WayBackMachine |archivedate=2010-05-22}}</ref>。また、無人機の操縦に関しても民間会社の社員が担当する場合があるが、攻撃に関しては交戦規定の関係で兵士が行っている<ref>{{ウェブアーカイブ |deadlink=yes |title=テロとの戦いと米国:第4部 オバマの無人機戦争/3 コソボ、イラクで操作した…(毎日新聞2010年5月2日) |url=http://mainichi.jp/select/world/news/20100502ddm007030059000c.html |archiveurl=https://web.archive.org/web/20100522114843/http://mainichi.jp/select/world/news/20100502ddm007030059000c.html |archiveservice=WayBackMachine |archivedate=2010-05-22}}</ref>。


==== 服装 ====
このような警備やその結果としての戦闘に従事する民間軍事会社のコントラクターらは、[[ジュネーヴ条約]]で「[[傭兵]]」として扱われないために、正規軍の兵士のような[[軍服]]を着用することはめったにない。このため[[民間人]]に近い服装の上に、[[ボディアーマー]]や銃器を装備をした「PMC装備」と呼ばれる独特の外見が特徴である。(正規軍でも特殊部隊の隊員や情報部員などが、このような格好をすることがある)
このような警備やその結果としての戦闘に従事する民間軍事会社のコントラクターらは、[[ジュネーヴ条約]]で「[[傭兵]]」として扱われないために、正規軍の兵士のような[[軍服]]を着用することはめったにない。このため[[民間人]]に近い服装の上に、[[ボディアーマー]]や銃器を装備をした「PMC装備」と呼ばれる独特の外見が特徴である。(正規軍でも特殊部隊の隊員や情報部員などが、このような格好をすることがある)


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民間軍事企業に所属する社員は軍の公式の戦死者リストや負傷者リストにカウントされないため、戦争における人的被害者数を数値上少なくできる。
民間軍事企業に所属する社員は軍の公式の戦死者リストや負傷者リストにカウントされないため、戦争における人的被害者数を数値上少なくできる。


民間軍事企業関連の人間がイラクにどのくらいいるのかは軍の上層部でも正確な数は把握していないのが現状である。民間軍事会社に所属している人間の死亡者数は一説には300~500人に達するという{{要出典|date=2013年2月}}
民間軍事企業関連の人間がイラクにどのくらいいるのかは軍の上層部でも正確な数は把握していないのが現状である。


=== 短所 ===
=== 短所 ===
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主な事例としては、キューバの[[グァンタナモ米軍基地|グアンタナモ刑務所]]におけるイラク人捕虜の虐待では実際に虐待行為に参加した米軍兵士は[[軍法会議]]で厳しい判決を受けるも、刑務所を運営していた[[タイタン社]]所属の社員は比較的軽い処分で処理された。また、[[コソボ紛争]]では民間軍事企業所属の社員が地元の少女2人を[[強姦|レイプ]]し、その様子をビデオカメラに収めるという行為にも拘わらず、同じく軽い処分で済まされた。そして[[イラク戦争]]において、民間人を無差別に銃撃して「テロリスト相手の[[正当防衛]]」と偽証したブラックウォーター社社員に対しても、これといった処罰は行なわれなかった。
主な事例としては、キューバの[[グァンタナモ米軍基地|グアンタナモ刑務所]]におけるイラク人捕虜の虐待では実際に虐待行為に参加した米軍兵士は[[軍法会議]]で厳しい判決を受けるも、刑務所を運営していた[[タイタン社]]所属の社員は比較的軽い処分で処理された。また、[[コソボ紛争]]では民間軍事企業所属の社員が地元の少女2人を[[強姦|レイプ]]し、その様子をビデオカメラに収めるという行為にも拘わらず、同じく軽い処分で済まされた。そして[[イラク戦争]]において、民間人を無差別に銃撃して「テロリスト相手の[[正当防衛]]」と偽証したブラックウォーター社社員に対しても、これといった処罰は行なわれなかった。

また、活動が[[ジュネーヴ条約]]に規制されないことから、社員らに戦争犯罪的な行為が『業務』として正式に命じられることもある。一方、社員側もジュネーヴ条約や[[ハーグ陸戦条約]]に基づいた[[捕虜]]としての権利を認められずに、奴隷的[[強制労働]]や裁判無しでの「[[死刑|処刑]]」に処される可能性があるなどのデメリットを有する{{要出典|date=2013年2月}}。

傭兵が正規兵の代わりに「汚れ仕事」を命じられる、その『役得』として正規兵以上の略奪暴行を働く、そして敗れた傭兵は正規兵とは異なりどう虐待されても文句は言えないのは古代以来延々と続く問題であり、傭兵を使う限り抜本的な解決は困難である{{要出典|date=2013年2月}}。

==== ストライキや契約破棄 ====
民間軍事会社であることから、作戦の遂行に拘わらず会社内での社員に対する待遇問題や保障問題によるストライキが起き、予定されていたサービスが供給されない可能性がある。また、[[契約]]内容と実際の戦場のリスクを天秤にかけた結果割りに合わないと判断し一方的に契約を破棄した場合に、会社と社員に対しせいぜい[[債務不履行]]による[[損害賠償]]請求ができるだけで、正規の軍人のように[[抗命罪]]や[[敵前逃亡|敵前逃亡罪]]などで[[軍法会議]]に告発して処罰する事が不可能なため、軍事作戦に致命的な影響を及ぼしかねない(彼らにとってはあくまで契約に基づいたビジネスである)など、不安材料も多々はらんでいる。ただし、契約と契約先の意向が社員の安全よりも優先されるのが民間企業の民間企業たるゆえんであり、これらの点は実際問題としては考えにくい{{誰2|date=2013年2月}}。


==== 軍人の引き抜きによる訓練コストのタダ乗り ====
==== 軍人の引き抜きによる訓練コストのタダ乗り ====
ここ近年{{いつ|date=2014年6月}}では民間軍事企業に所属する[[将官]]クラスの[[退役軍人]]による優秀な人材の[[職業紹介事業|ヘッドハンティング]]が大きな問題となっている。国を守る為の人材として国の多額の税金を費やして教育された[[特殊部隊]]員や空軍[[操縦士|パイロット]]などの優秀な人材が30代の一番脂の乗り切った時期に数多く民間軍事企業に引き抜かれてしまうのである。
近年{{いつ|date=2014年6月}}では民間軍事企業に所属する[[将官]]クラスの[[退役軍人]]による優秀な人材の[[職業紹介事業|ヘッドハンティング]]が大きな問題となっている。国を守る為の人材として国の多額の税金を費やして教育された[[特殊部隊]]員や空軍[[パイロット (航空)|パイロット]]などの優秀な人材が30代の一番脂の乗り切った時期に数多く民間軍事会社に引き抜かれてしまうのである。

アメリカの特殊部隊[[アメリカ陸軍特殊部隊群|グリーンベレー]]の隊員の年収はおよそ5万ドル程度{{要出典|date=2013年2月}}と言われているが、同部隊所属の肩書きがあればイラクでは1日で1000ドルは稼げると言われている{{誰2|date=2013年2月}}。


また、部隊の運用に無理解な上層部に愛想を尽かした現役軍人達が、経験者である退役軍人が経営する民間軍事会社に『[[転職]]』することも多い。
また、部隊の運用に無理解な上層部に愛想を尽かした現役軍人達が、経験者である退役軍人が経営する民間軍事会社に『[[転職]]』することも多い。
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傭兵である彼らはあくまで金銭目的の[[ビジネスマン]]であって、国家への“忠誠”に必ずしも縛られていない。ゆえに高度な[[軍事機密|軍機]]への接触、またそれらを用いた任務には就かせられない。常に懸念される[[裏切り|寝返り]]の恐れ(とはいえ、契約に際して必要不可欠な「信頼関係」を決定的に損なうため裏切り・離反の可能性は少ないともいわれる)、忠誠心の低さは、中世の傭兵以来基本的に変わることはない。
傭兵である彼らはあくまで金銭目的の[[ビジネスマン]]であって、国家への“忠誠”に必ずしも縛られていない。ゆえに高度な[[軍事機密|軍機]]への接触、またそれらを用いた任務には就かせられない。常に懸念される[[裏切り|寝返り]]の恐れ(とはいえ、契約に際して必要不可欠な「信頼関係」を決定的に損なうため裏切り・離反の可能性は少ないともいわれる)、忠誠心の低さは、中世の傭兵以来基本的に変わることはない。


また、精強でも忠誠心がなく信用されない傭兵と、たとえ無能でも忠誠心だけは確かで信用の置ける「忠臣」との感情的な対立が軍の運用に悪影響をもたらすのも、中世以来の伝統である。元々近代国民国家が[[徴兵]]、[[国民皆兵]]制度というシステムを編み出したのは、傭兵のこうした欠点の反映でもある。
{{独自研究範囲|date=2015年3月|また、精強でも忠誠心がなく信用されない傭兵と、たとえ無能でも忠誠心だけは確かで信用の置ける「忠臣」との感情的な対立が軍の運用に悪影響をもたらすのも、中世以来の伝統である。元々近代国民国家が[[徴兵]]、[[国民皆兵]]制度というシステムを編み出したのは、傭兵のこうした欠点の反映でもある。}}


== 社員 ==
=== その他 ===
[[パプアニューギニア]]では、{{仮リンク|ブーゲンビル紛争|en|Bougainville Civil War}}において、政府が同国の{{仮リンク|パプアニューギニア国防軍|en|Papua New Guinea Defence Force}}よりも民間軍事会社の{{仮リンク|サンドライン・インターナショナル|en|Sandline International}}を重用したため、国軍による[[クーデター]]が発生している。
{{main|[[:en:Sandline affair]]}}
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== 従業員 ==
=== 人員数 ===
=== 人員数 ===
1991年の[[湾岸戦争]]時には全兵士における民間軍事会社員の比率は100:1と言われていたが、2003年の[[イラク戦争]]時はおよそ10:1と言われている。イラクに駐留する民間軍事会社の人員は、一説には[[アメリカ人]]が3千人から5千人。[[イギリス]]などの[[ヨーロッパ人]]や[[南アフリカ]]人では7千人から1万人。貧困国の出身者では1万5千人から2万人。[[イラク]]現地で雇用された者が2万5千人から3万人と言われている。また、受注した会社がさらに他の会社に仕事を丸投げしたり再発注しており、イラクに駐留する民間軍事会社の正確な社員数を把握する事の障害にもなっている。
1991年の[[湾岸戦争]]時には全兵士における民間軍事会社従業員の比率は100:1と言われていたが、2003年の[[イラク戦争]]時はおよそ10:1と言われている。イラクに駐留する民間軍事会社の人員は、一説には[[アメリカ人]]が3千人から5千人。[[イギリス]]などの[[ヨーロッパ人]]や[[南アフリカ]]人では7千人から1万人。貧困国の出身者では1万5千人から2万人。[[イラク]]現地で雇用された者が2万5千人から3万人と言われている。また、受注した会社がさらに他の会社に仕事を丸投げしたり再発注しており、イラクに駐留する民間軍事会社の正確な社員数を把握する事の障害にもなっている。


1994年の[[ルワンダ紛争]]においてはエグゼクティブ・アウトカムズ社はいつでも1500人規模の部隊を展開出来る準備を整えていた(これはアフガニスタン侵攻時のアメリカ海兵隊の先行侵攻部隊と同規模である。)ちなみに作戦期間は4週間を計画しており、1日あたりの費用はおよそ60万ドル。(国連など、依頼する組織が無かったため実され
1994年の[[ルワンダ紛争]]においてはエグゼクティブ・アウトカムズ社はいつでも1500人規模の部隊を展開出来る準備を整えていた(これはアフガニスタン侵攻時のアメリカ海兵隊の先行侵攻部隊と同規模である。作戦期間は4週間を計画しており、1日あたりの費用はおよそ60万ドルと見積もっていたが結局依頼する組織が無かったため実されることはなかった


=== 経歴 ===
=== 経歴 ===
[[アメリカ人]]や[[イギリス人]]など欧米圏の社員を雇用する際には、正規軍の兵士経験者(特に[[デルタフォース]]や[[DEVGRU]]といった有名特殊部隊に所属する元兵士を優遇する)を雇用することが主体であるが、社内の基準を満たしていれば(厳格な選抜試験を受けさせる会社もあれば、契約書にサインすれば誰でも入れる会社もある)、警察官や軍隊経験のない一般市民を雇用することもある。


先進国の人員だけを雇用して警備などをしては、限られた人件費が高騰することや素早く効率的に人材を供給できないという事情から、[[フィジー]]、[[ネパール]]、[[フィリピン]]、[[コロンビア]]などの、近年まで内戦や紛争状態にあり、実戦経験者が豊富な貧困国から元兵士が送られている割合が多い。アメリカのブラックウォーター社においては貧困国の出身者が警備要員の4割、「トリプル・キャノピー社<ref group="注">元[[アメリカ陸軍特殊部隊群|グリーンベレー]]のトム・カーティスとマット・マンによって設立された民間軍事会社。後に元[[デルタフォース]]のイギー・バルデラスも経営陣に入る。</ref>」に至っては8割を占めている。トリプル・キャノピー社は設立当初実態のない会社でありながらも大型契約を取得し、[[チリ人]]やフィジー人と少数のアメリカ人を雇って、イラク全土にある13ヶ所の[[連合暫定施政当局]]に1000人もの警備員を派遣した。
[[アメリカ人]]や[[イギリス人]]など欧米圏の社員を雇用する際には、正規軍の兵士(特に[[デルタフォース]]や[[DEVGRU]]といった有名特殊部隊に所属する元兵士を優遇する)を雇用することが主体であるが、社内の基準を満たしていれば(厳格な選抜試験を受けさせる会社もあれば、契約書にサインすれば誰でも入れる会社もある)、警察官や軍隊経験のない一般市民を雇用することもある。[[南アフリカ]]人の社員(多くは英国系の会社に所属する)の場合、上記のEO社のように[[アパルトヘイト]]に参加して職を失った白人の元兵士である場合が多く、そのことをPMCに批判的なジャーナリストや南アフリカ政府の関係者から批判されることもある。


また、イラク現地では多くのイラク人が雇用されている。G4Sの場合は英国人2名にイラク人6人で身辺警護小隊を編成しており、欧米人の[[将校]][[下士官]]に現地人の[[兵|兵士]]という構成が取られている。このような雇用方式は「エリニュス社<ref group="注">元イギリス軍人のジョナサン・ガラットと南アフリカの[[外交官]]でナミビアの統治副責任者であったショーン・クリアリーによって創設された会社。</ref>」や「アーマー・グループ<ref group="注">元SAS隊員のアルスター・モリソンによって設立された会社。後にG4Sに吸収される。</ref>」など、他の英国系民間軍事会社でも用いられる方針である。イラク人は警備員だけではなく、空港の荷物チェック係といった非戦闘員としても雇用されている。
先進国の人員だけを雇用して警備などをしては、限られた人件費が高騰することや素早く効率的に人材を供給できないという事情から、[[フィジー]]、[[ネパール]]、[[フィリピン]]、[[コロンビア]]などの、近年まで内戦や紛争状態にあり、実戦経験者が豊富な貧困国から元兵士が送られている割合が多い。アメリカのブラックウォーター社においては貧困国の出身者が警備要員の4割、「トリプル・キャノピー社<ref>元[[アメリカ陸軍特殊部隊群|グリーンベレー]]のトム・カーティスとマット・マンによって設立された民間軍事会社。後に元[[デルタフォース]]のイギー・バルデラスも経営陣に入る。</ref>」に至っては8割を占めている。トリプル・キャノピー社は設立当初実態のない会社でありながらも大型契約を取得し、チリ人やフィジー人と少数のアメリカ人を雇って、イラク全土にある13ヶ所の[[連合暫定施政当局]]に1000人もの警備員を派遣した。

リクルートに関しては、ピンからキリまでが実態であり、貧困国の新聞に警備要員と称して募集広告をかけ、戦場に送り込むといった粗っぽい手口を講じる会社も存在する<ref>{{Cite web|和書|date=2020-01-31 |url=https://www.afpbb.com/articles/-/3266120?cx_part=top_category&cx_position=2 |title=警備の仕事のはずが…UAE企業、スーダン人をリビア・イエメン紛争にあっせんか |publisher=AFP |accessdate=2020-02-01}}</ref>。


また、イラク現地では多くのイラク人が雇用されている。G4Sの場合は英国人2名にイラク人6人で身辺警護小隊を編成しており、欧米人の[[将校]][[下士官]]に現地人の[[兵|兵士]]という構成が取られている。このような雇用方式は「エリニュス社<ref>元イギリス軍人のジョナサン・ガラットと南アフリカの[[外交官]]でナミビアの統治副責任者であったショーン・クリアリーによって創設された会社。</ref>」や「アーマー・グループ<ref>元SAS隊員のアルスター・モリソンによって設立された会社。後にG4Sに吸収される。</ref>」など、他の英国系民間軍事会社でも用いられる方針である。イラク人は警備員だけではなく、空港の荷物チェック係といった非戦闘員としても雇用されている。
=== 報酬 ===
=== 報酬 ===
元有名[[特殊部隊]]所属の肩書きを持つ人材は1日で1000[[アメリカ合衆国ドル|ドル]]程度の収入が見込めるが、ネパールの[[グルカ兵]]が民間軍事会社で働いた場合の給料は月給1000ドル程度である。ただ、ネパールの[[公務員]]の平均年収が1300ドルであることから考えると月給1000ドルという給料は彼らの所得水準から見ると大変に高額である。このため、貧困国の兵士にとっては民間軍事会社で得る給料は普通に働く場合の10倍以上にもなり、一攫千金を夢見るに十分な額である。


逆に[[日本]]などの[[先進国]]の国民から見れば一般企業の賃金と大差の無い、もしくはそれ以下の給与水準であり、危険性に比して薄給で、日本人が民間軍事会社で就労しても大金を稼げるとはいえない。実際にイラクで死亡した日本人の年収は四百数十万円程度で、軍歴が長く[[下士官]]であったことから考えれば先進国の正規軍と変わらない報酬である。このため、民間軍事会社の給与は裕福な先進国の国民から見れば安く、貧困国の国民から見れば高給ということになっている。また、軍隊と比べると遺族補償、軍人恩給、褒賞といった福利厚生面は手薄だったり制度自体がない事も多い。
元有名[[特殊部隊]]所属の肩書きを持つ人材は1日で1000[[アメリカ合衆国ドル|ドル]]程度の収入が見込めるが、ネパールの[[グルカ兵]]が民間軍事会社で働いた場合の給料は月給1000ドル程度である。ただ、ネパールの[[公務員]]の平均年収が1300ドルであることから考えると月給1000ドルという給料は彼らの所得水準から見ると大変に高額である。このため、貧困国の兵士にとっては民間軍事会社のコントラクターになって得る給料は普通に働く場合の10倍以上にもなり、一攫千金を夢見るに十分な額である。


なお、民間軍事会社においても兵士は兵士、下士官は下士官で終わりという点に(多少の例外はあるものの)変化はなく、たとえ入社前に歴戦の勇士でも、入社後にどれだけ実績を重ねても、入社前に幕僚課程や上級士官課程を取得していない者は現場指揮官以上に昇進できない。
逆に[[日本]]などの[[先進国]]の国民から見れば一般企業の賃金と大差の無い、もしくはそれ以下の給与水準であり、危険性に比して薄給で、日本人が民間軍事会社で就労しても大金を稼げるとはいえない。実際にイラクで死亡した日本人コントラクターの年収は四百数十万円程度で、軍歴が長く[[下士官]]であったことから考えれば先進国の正規軍と変わらない報酬である。このため、民間軍事会社の給与は裕福な先進国の国民から見れば安く、貧困国の国民から見れば高給ということになっている。

なお、民間軍事会社においても兵士は兵士、下士官は下士官で終わりという点に変化はなく、たとえ入社前に歴戦の勇士でも、入社後にどれだけ実績を重ねても、入社前に幕僚課程や上級士官課程を取得していない者は現場指揮官以上に昇進できない。また、学閥ならぬ「過去に所属していた部隊閥」も{{独自研究範囲|date=2013年12月|深刻である。}}


== 民間軍事会社・関連企業一覧 ==
== 民間軍事会社・関連企業一覧 ==
=== 協会組織 ===
* [[:en:Private Security Company Association of Iraq|Private Security Company Association of Iraq]] - イラクの民間軍事会社管理組織
* [[:en:International Peace Operations Association|International Peace Operations Association]] - 民間軍事会社と関連組織による組合
* British Association Of Private Security Companies - イギリスの民間軍事会社管理組織

=== 米国 ===
=== 米国 ===
* [[:en:AirScan|AirScan]]
* [[ATAC (企業)|ATAC]]
* [[ATAC (企業)|ATAC]] - [[戦闘機]]による仮想敵業務の代行を行う企業。
* [[:en:Custer Battles|Custer Battles]] - 複数のトラブルを起こし、契約を解除される
* [[:en:Defion Internacional|Defion Internacional]]
* [[ダインコープ・インターナショナル]]
* [[ダインコープ・インターナショナル]]
* [[ブラックウォーターUSA|アカデミ]](旧:ブラックウォーターUSA)
* [[:en:ITT Corporation|ITT Corporation]]
* [[トリプル・キャノピー (企業)|トリプル・キャノピー]]
* [[:en:KBR|KBR]]
* [[ドラケン・インターナショナル]]
* [[:en:Military Professional Resources Inc.|Military Professional Resources Inc.]]

* [[:en:MVM, Inc.|MVM, Inc.]]
=== イギリス ===
* [[:en:Northbridge Services Group|Northbridge Services Group]]
* [[ノースロップ・グラマン]]
* [[:en:Paratus World Wide Protection|Paratus World Wide Protection]]
* [[レイセオン]]
* [[:en:Triple Canopy, Inc.|Triple Canopy, Inc.]]
* [[:en:Sharp End International|Sharp End International]]
* [[:en:Titan Corporation|Titan Corporation]]
* [[:en:Vinnell Corporation|Vinnell Corporation]]
* [[ブラックウォーターUSA|Xe]] - 旧ブラックウォーター社
* [[:en:Pathfinder Security Services|Pathfinder Security Services]]


=== 英国 ===
* [[G4S]]
* [[G4S]]
* [[エリニュス・インターナショナル]]
* [[:en:Aegis Defence Services|Aegis Defence Services]] - [[ティム・スパイサー]]によって創設。
* [[:en:ArmorGroup|ArmorGroup]]
* [[:en:Control Risks Group|Control Risks Group]]
* [[:en:Erinys International|Erinys International]]
* [[:en:Sandline International|Sandline International]] - [[ティム・スパイサー]]によって創設。
* [[HART International]]


===日本===
=== カナダ ===
[[日本]]では[[銃刀法]]、[[警備業法]]により[[警備員]]の装備品は[[警棒|警戒棒]]、[[ライオットシールド|盾]]など非殺傷性の[[防犯装備|護身用具]]に限定されているため、日本国内に武力を持つ民間軍事会社は合法的に存在できないが、民間軍事会社にて働く日本人は推定30人程度と言われている。


* [[ガルダ・ワールド]]
[[2005年]]5月には、イラクで米軍の業務委託を受けていたクウェートの輸送会社「P.W.Cロジスティクス社」の車列を警備していた[[イギリス]]の警備会社「ハート・セキュリティー社<ref>イギリス特殊部隊[[特殊空挺部隊|SAS]]の元隊員リチャード・ベセルが設立した会社で、実態は民間軍事会社である。</ref>」の車列に対して武装勢力の攻撃があり、同社の従業員として雇われていた日本人男性'''S'''が負傷し、[[拉致]]された後、死亡した。Sはかつて[[陸上自衛隊]]で2年間活動した経験([[第6普通科連隊]]に配属され、退職時は[[第1空挺団 (陸上自衛隊)|第1空挺団]]に所属)があり、その後[[フランス外人部隊]]に21年間在籍し、その間に[[第2外人落下傘連隊]]での活動経験もあった。


=== イスラエル ===
[[2014年]][[8月]]、日本[[東京都]][[江東区]][[青海]]2-7-4に本店を置いているとしている自称民間軍事会社「ピーエムシー株式会社」CEO<ref>[http://megalodon.jp/2015-0201-1747-57/privatemilitary.jp/about 魚拓:PMC JAPAN about]</ref>を務める日本人男性'''Y'''が拘束され、2015年に入ってから「イスラム国」により「処刑」されている。なお、前述の所在地は[[レンタルオフィス]]であり<ref>[http://www.the-soho.com/access the SOHO アクセス]</ref>、業務の請負元なども明らかになっていない。


* [[グローバルCST]]
=== その他 ===

* [[エグゼクティブ・アウトカムズ]] - [[南アフリカ]]
=== ロシア ===
* [[:en:Omega Group|Omega Group]] - [[ノルウェー]]
* [[ワグネル・グループ]]
* [[グローバルCST]] - [[イスラエル]] カダフィ側の護衛兵達を派遣したと言われる。
* コンボイ
* [[Orel AntiTerror]] - [[ロシア]]
* [[スラヴ軍団]]
* [[:en:Defion International|Defion International]] - [[ペルー]]

* [[:en:Integrated Risk Management Services|Integrated Risk Management Services]] - [[アイルランド]]
=== ウクライナ ===
* [[:en:Unity Resources Group|Unity Resources Group]] - [[オーストラリア]]

* [[グルカ・セキュリティー・グループ]] - [[ネパール]]
* [[モーツァルト・グループ]]
* [[Stealth C' Lot]] - [[韓国]]

=== 南アフリカ ===

* [[エグゼクティブ・アウトカムズ]]


== 関連作品 ==
== 登場作品 ==
''『[[民間軍事会社が登場する作品の一覧]]』を参照。''
{{main|民間軍事会社が登場する作品の一覧}}


==脚注==
==脚注==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考資料 ==
== 参考文献 ==
{{参照方法|date=2014年6月}}
{{参照方法|date=2014年6月}}
* 外注される戦争 [[菅原出]](著) [[草思社]] ISBN 4794215762
* {{Citation |和書 |title=外注される戦争 |author=菅原出 |author-link=菅原出 |publisher=[[草思社]] |isbn=978-4-7942-1576-5 }}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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* [[準軍事組織]]
* [[準軍事組織]]
* [[戦争ポルノ]]
* [[戦争ポルノ]]
*[[代理戦争]]
* [[代理戦争]]
*[[従軍記者]]
* [[従軍記者]]
*[[戦場カメラマン]]
* [[戦場カメラマン]]
* [[無人戦闘機]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
264行目: 265行目:
* [http://www.privateforces.com privateforces.com]
* [http://www.privateforces.com privateforces.com]
* [http://www.PrivateMilitary.org/ PrivateMilitary.org - Private Military Companies (PMCs) Weblink!] - 民間軍事会社総合サイト(英語)
* [http://www.PrivateMilitary.org/ PrivateMilitary.org - Private Military Companies (PMCs) Weblink!] - 民間軍事会社総合サイト(英語)
* [http://www.cpa-iraq.org CPAイラク]
* [http://www.cpa-iraq.org CPAイラク]
* [http://www.pscai.org PSCAI] プライベート・セキュリティ・カンパニー・アソシエィション・オブ・イラク(英語)
* [http://www.pscai.org PSCAI] プライベート・セキュリティ・カンパニー・アソシエィション・オブ・イラク(英語)
* [http://www.ipoaworld.org IPOA] インターナショナル・ピース・オペレーティング・アソシエィション(英語)
* [http://www.ipoaworld.org IPOA] インターナショナル・ピース・オペレーティング・アソシエィション(英語)
272行目: 273行目:
* [http://peaceops.com/web/v5n1.html journal of international Peace Operations ] 民間軍事会社の業界紙 IPOAが隔月で発行している(英語)
* [http://peaceops.com/web/v5n1.html journal of international Peace Operations ] 民間軍事会社の業界紙 IPOAが隔月で発行している(英語)


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2024年5月22日 (水) 16:23時点における最新版

アフガニスタン警察の隊員(左)と握手するイギリスの民間軍事会社のコントラクター(右)。

民間軍事会社(みんかんぐんじがいしゃ)とは、直接戦闘要人警護や施設、車列などの警備軍事教育兵站などの軍事サービスを行う企業

PMC(private military company または private military contractor)、PMF(private military firm)、PSC(private security company または private security contractor)、PMSC(private military and security company、複数形はPMSCs) などと様々な略称で呼ばれる。2008年9月17日にスイス・モントルーで採択されたモントルー文書でその地位や法的責任などが定義されている。傭兵ジュネーヴ条約違反であるが、国家の法律上、国際法上は民間軍事会社も性質はジュネーヴ条約違反である。また、存在がジュネーヴ条約違反であるために、民間軍事会社にジュネーヴ条約を守る責任や義務は無い(責任と義務は雇用主に発生する)。国家の法律上と国際法上の法解釈学では、存在はグレーゾーンとされる。

概要

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1980年代後半から1990年代にかけて誕生し、2000年代の「対テロ戦争」で急成長した。国家を顧客とし、人員を派遣、正規軍の業務を代行したり、支援したりする企業であることから、新手の軍需産業と定義されつつある[1]

主な業務としては軍隊や特定の武装勢力・組織・国に対して武装した社員を派遣しての警備・戦闘業務、武装勢力に拘束された人質の救出や窮地に陥った要人の逃亡支援など救助・救援業務[2]兵站整備訓練等の後方支援など、戦闘一辺倒だった旧来型の傭兵と異なり提供するサービスは多岐に渡る。

軍の増派がたびたび政治問題化していることや、より多くの正規兵を最前線に送るために後方支援や警備活動の民間委託が進んだこと、民間軍事会社の社員の死者は公式な戦死者に含まれないなどの理由で活用が進んでいる。イラクやアフガニスタンでは、従来であれば正規軍の二線級部隊が行ってきた警備や兵站、情報収集など後方業務を外注する民間組織として正規軍の後方を支える役目を担い、多い時で約26万人の民間人が米国政府の業務に関わった[3]

その一方で軍人民間人傭兵のどれにも当てはまらない曖昧な存在であることや、需要が増大し急速に規模が拡大したため、管理が行き届かず多くの不祥事(2007年にブラックウォーター社が引き起こした民間人虐殺事件など)を起こした事などが問題になっている。2004年3月、民間軍事会社の要員が民衆に惨殺され、町を引きずり回された後に焼却、橋に吊るされるという事件が発生。これが原因となりファルージャで多国籍軍と武装勢力が軍事衝突し(ファルージャの戦闘)、4月と11月の戦闘を合わせて多国籍軍側100人以上、武装勢力と民間人にそれぞれ1000人以上の死者が出た。2019年末には保釈中のカルロス・ゴーンの国外逃亡を支援するなど、報酬次第では明白な違法行為を行う者も存在する[4]

2008年9月、スイスの国際会議においてアメリカや欧州諸国、中国、イラク、アフガニスタンなど17カ国は民間軍事会社に国際法を順守させるため、各国に対して適切な監督・免許制度の導入、採用時の審査の厳格化、戦時の民間人保護を規定した国際人道法や人権法に関する社員教育の強化など適切な監督を求める具体的な指針を盛り込んだモントルー文書を採択した[5]

名称

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日本では民間軍事会社民間軍事請負企業などと呼称される。

民間軍事会社について報道機関や文献によって異なる名称が使用されており、PMC(private military company または private military contractor)、PMF(private military firms)とさまざまで、アメリカ国防総省や民間軍事会社の管理組織であるIPOAやBAPSCはPMSCの語を使用している。

国際政治学者のP・W・シンガーは『戦争請負会社』(邦訳版:日本放送出版協会 (2004/12)原著:Cornell University Press (July 2003))でPMFと表記している。

歴史

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登場以前

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近代に入り民間企業が巨大化すると、鉱山で起きたストライキの鎮圧など警備員では対処できない事態を素早く解消するため、それまで手配師などに頼っていた傭兵の募集に代わり、会社の一部門として武装組織(会社軍)を編成するようになった。これらは退役した士官などの経験者を指揮官として迎え、グルカ兵やヨーロッパ人などの傭兵を兵としていた。構成は歩兵、騎兵、砲兵からなるヨーロッパの伝統的な陸軍を簡略化した組織であったが、資金力を背景に武装に関しては最新の兵器を揃えており、最新の軍事教育を受けたヨーロッパの将校を指導教官として雇用することもあった。

ジョン・ロックフェラー鉱山や工場で発生したストライキを鎮圧するため積極的に会社軍を派遣していたが、コロラド燃料製鉄会社のストライキを鎮圧するため30人以上を射殺したことでヘレン・ケラーが新聞で非難記事を連載したことや、社長となっていたロックフェラー2世が対話路線に転向したことでアメリカ国内では交渉で解決し、武力が必要な場合は州兵に任せるべきという風潮となった。また私企業が武力を保有することは次第に問題視されるようになり、欧米では国内での行動に制約が課されるようになった。

国外において、西洋列強東インド会社のような植民地を統治する勅許会社の会社軍に対し、反乱の鎮圧のみならず周辺にある国を植民地にするための戦争(第二次シク戦争など)を許可していた。自国の軍隊のアウトソーシングであり、これにより遠方に軍隊を派遣する必要がなくなり、低コストで植民地を防衛することが可能となった。特にインドではヴァンディヴァッシュの戦いプラッシーの戦いのように会社軍同士の戦闘が度々発生した。植民地の会社軍はスィパーヒーなど地元の傭兵が中心で兵の質はまちまちだったが、イギリスはこれらの戦いで活躍したグルカ兵に注目し、イギリス東インド会社軍で積極的に雇用するようになった。

ロシア帝国の勅許会社である露米会社ニコライ・レザノフの部下で軍人のニコライ・フヴォストフロシア語版が会社の武装勢力を指揮し、日本を襲撃している(文化露寇)。

これらの会社軍は指揮官は社員、傭兵はパートタイムで雇用して指揮下に置いているが、第三者へ兵力を提供することはなく、それまで領主が抱える私兵のような自力救済の延長か、政府が植民地を間接的に統制するための組織であった。

民間軍事会社の登場

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第二次世界大戦後には各国で法が整備され会社軍のような存在は規制がかかり、治安が不安定な地域での操業する鉱山や油田の警備に支障を来すようになった。

そこで警備会社という名目で設立し、かつて会社軍が担当していた軍事サービスを他の企業に提供する会社が登場した。代表的な会社としてはダインコープSAS創始者のデビッド・スターリングが経営するウォッチガード・セキュリティがあり、これには自国企業を保護したいイギリス政府も出資していた。民間企業でも自社で直接雇用するのに比べ、必要なときに必要な数の人員を確保できるためメリットは大きかった。

コンゴ動乱ローデシア紛争などでは傭兵が戦闘や護衛にも関わっていたが、1991年ソビエト連邦の崩壊に伴う冷戦の終結により、アメリカ合衆国を中心とした各国は肥大化した軍事費と兵員の削減を開始し、数多くの退役軍人を生み出した。冷戦終結以降の世界では超大国同士がぶつかりあう大規模な戦闘の可能性は大幅に少なくなったものの、テロリズムや小国における内戦民族紛争など小規模な戦闘や特定の敵国が断定できない非対称戦争が頻発化、不安定な地域で行動する民間人を護衛する需要も増加した。

優秀な軍歴保持者は有り余り、軍事予算の大幅な削減に伴い軍隊のコスト面での効率化が求められ、そして小規模の紛争が頻発する。この3つの要素が民間軍事会社を生み出す土壌を与える事となった。まさに戦争のアウトソーシングである。

こうして、民間軍事会社の元祖とも言える「エグゼクティブ・アウトカムズ」が誕生し、既存の軍関連会社も次々と民間軍事会社化していった。

1990年代

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シエラレオネ軍とグルカセキュリティー社

1989年南アフリカ共和国で誕生したエグゼクティブ・アウトカムズ(Executive Outcomes,略称EO)社は、フレデリック・ウィレム・デクラークネルソン・マンデラ政権下で行われたアパルトヘイト政策の廃止や軍縮によって職を失った兵士を雇用することで、優秀な社員を多数有する会社となった。

特に第32大隊などの精鋭部隊に所属していた黒人兵士を多く雇用していたが、彼らはアンゴラ内戦で家族や財産を失い、逃げ延びた先の南アフリカでは白人達に周辺国への軍事介入や同じ黒人の弾圧に動員され、アパルトヘイト廃止後行き場を失った者達だった(EO社の解体後はポムフレットなど辺境の町で貧しく暮らしている)。

EO社はアンゴラ内戦中の1993年アンゴラ政府と契約を結び、正規軍の訓練と直接戦闘を実行。結果アンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)に壊滅的被害を与えることに成功し、20年続いた内戦をわずか1年で終結させた。その後、国際社会の圧力でアンゴラ政府はEO社との契約を打ち切り、国連が平和維持を行うことになったが平和維持部隊は任務に失敗し、アンゴラは内戦に逆戻りした。

また、シエラレオネ内戦では、残虐な行動と少年兵を利用することで知られた反政府勢力革命統一戦線(RUF)の攻勢で、先に展開したグルカ・セキュリティー・サービス社は司令官であったロバート・C・マッケンジーが殺害されるなど大きな被害を出し撤退、首都フリータウンも陥落寸前の状態であったが、EO社はわずか300人の部隊でRUFに壊滅的被害を与え、RUFが占拠していたダイヤモンド鉱山を奪還することで和平交渉の席に着かせることに成功した。しかし、こちらもアンゴラと同様に内戦に逆戻りした。

EO社は次第に肥大化し、戦闘機攻撃機攻撃ヘリコプターなどの航空兵器や、戦車歩兵戦闘車のような強力な陸上兵器、負傷者輸送用のボーイング707なども運用するようになったが、危機感を抱いた南アフリカ政府によって1998年に解体された。しかし、内戦の戦局をも変えてしまう民間軍事会社の登場は世界に衝撃を与えた。

パプアニューギニアでは、ブーゲンビル紛争英語版において、政府が同国のパプアニューギニア国防軍英語版よりも民間軍事会社のサンドライン・インターナショナルを重用したため、国軍によるクーデターが発生している。

2000年代

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グルカ兵のコントラクター(アフガニスタン、ナンガハル州)

1990年代に登場した民間軍事会社は、その後急速に業務を拡大していき、2001年アメリカ同時多発テロ事件以降からはイラクアフガニスタンでの活動が注目を集めるようになった。しかし、急速な組織拡大から法規の作成が追いつかず、管理する法律も組織も無い無法状態が続いたため、殺人や虐待など数々の不祥事を起こしてきた。

2001年にはアメリカで民間軍事会社の管理組織であるInternational Peace Operations Associationが発足、2006年にはイギリスでアメリカとは異なる民間軍事会社管理組織であるBritish Association Of Private Security Companiesが発足した。イギリスの場合はアメリカよりも非常に厳格で、民間軍事会社にISOやBSの取得を義務付けておりプレゼンテーションにおいてもイギリスの民間軍事会社はアメリカのそれとは違うことを強調している。

イラクにおける管理組織は連合国暫定当局が行ってきたが解体にともない2004年8月に連合国暫定当局から分離したNPO法人としてPrivate Security Company Association of Iraqが発足した。イラクでは連合国暫定当局が最後に発行したCPA Order17という規定に基づいて行動していたが、この規定は大変に問題のあるもので、民間軍事会社はイラクの法律に従う必要が無く、あらゆる免責特権を認め、税金も免除するなど民間軍事会社を完全に治外法権化する物であった。

2007年9月にはブラックウォーターUSAのコントラクターがイラクで輸送部隊の護衛中に市中で無差別発砲を行いイラク人を17人射殺するという事件が起きると、イラク政府も厳しい措置を取らざるを得なくなり、2009年1月1日でCPA Order17の無効を宣言し、民間軍事会社から免責特権を剥奪した。これ以降、民間軍事会社はイラクの国内法に従う義務が生じPrivate Security Company Association OF Iraqは2009年現在は実質的に活動していない。

このような無法状態を改善しようとする動きもあり、2008年9月17日にスイスモントルーで17ヶ国によって採択されたモントルー文書で初めて国際的な規制が出来た。指針であり条約ではないため、国際法としての拘束力は無いが、新たな条約締結へ向けた活動が行われている。

2010年代

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イラク戦争後、民間軍事会社は各地の小規模紛争に派遣されるようになった。リビア内戦においては、イスラエルのグローバルCSTが主にアフリカ系からなる警備要員や東欧・中東系の戦闘機パイロットなど多数の要員を派遣して非武装市民への殺傷を含む過剰な業務を行い、シリア内戦では、アメリカの民間軍事会社が自由シリア軍など反アサド派を訓練するためにトルコで活動していた。一方、シリア政権側もロシア系の民間軍事会社の先駆けで香港を拠点とするスラヴ軍団から同様の支援を受けていた[6]。アフリカではブラックウォーター社の設立者だったエリック・プリンスらが中国政府系の香港企業フロンティア・サービス・グループで中国の国家戦略である一帯一路を警備面から支援していた[7][8]

また2014年以降の騒乱下にあるウクライナにおいても西欧の民間軍事会社[注 1]の要員らしき外国人が多数確認されたという証言がある。

2015年にはイエメンで、アメリカのスピアー・オペレーションズ・グループがアラブ首長国連邦の依頼により、イエメンにいる政敵の暗殺作戦を実行していた。

2020年代

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2022年ロシアのウクライナ侵攻にて、ロシアのワグネル・グループがロシア正規軍と並んで主要な軍事力として機能している[9][10]。ワグネルは元正規軍兵士だけでなくロシア国内の刑務所で囚人を戦闘員として参加させ[11]、生還した者には恩赦を与えていた。ドンバス地域のバフムートを掌握するための戦闘に中心的な役割を果たす[12]などの戦果を上げてき、それに伴いワグネルの能力も認められ、創始者のエフゲニー・プリゴジンのロシアにおける政治的な評価が高まった[13]。しかしやがてプリゴジンはセルゲイ・ショイグ国防大臣やワレリー・ゲラシモフ参謀総長を痛烈に批判するようになり、2023年6月23日には武装蜂起を宣言するに至った[12]

これに対しウクライナ側も外国人義勇兵を多く募集した他、ウクライナ軍への訓練及び人命救助活動を実施するため、米軍の元将兵などで編成されたモーツァルト・グループという民間軍事会社が活動を行っている[14][15][16][17]

従業員

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人員数

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1991年の湾岸戦争時には全兵士における民間軍事会社従業員の比率は100:1と言われていたが、2003年のイラク戦争時はおよそ10:1と言われている。イラクに駐留する民間軍事会社の人員は、一説にはアメリカ人が3千人から5千人。イギリスなどのヨーロッパ人南アフリカ人では7千人から1万人。貧困国の出身者では1万5千人から2万人。イラク現地で雇用された者が2万5千人から3万人と言われている。また、受注した会社がさらに他の会社に仕事を丸投げしたり再発注しており、イラクに駐留する民間軍事会社の正確な社員数を把握する事の障害にもなっている。

1994年のルワンダ紛争においてはエグゼクティブ・アウトカムズ社はいつでも1500人規模の部隊を展開出来る準備を整えていた(これはアフガニスタン侵攻時のアメリカ海兵隊の先行侵攻部隊と同規模である)。作戦期間は4週間を計画しており、1日あたりの費用はおよそ60万ドルと見積もっていたが、結局依頼する組織が無かったため実行されることはなかった。

経歴

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アメリカ人イギリス人など欧米圏の社員を雇用する際には、正規軍の兵士経験者(特にデルタフォースDEVGRUといった有名特殊部隊に所属する元兵士を優遇する)を雇用することが主体であるが、社内の基準を満たしていれば(厳格な選抜試験を受けさせる会社もあれば、契約書にサインすれば誰でも入れる会社もある)、警察官や軍隊経験のない一般市民を雇用することもある。

先進国の人員だけを雇用して警備などをしては、限られた人件費が高騰することや素早く効率的に人材を供給できないという事情から、フィジーネパールフィリピンコロンビアなどの、近年まで内戦や紛争状態にあり、実戦経験者が豊富な貧困国から元兵士が送られている割合が多い。アメリカのブラックウォーター社においては貧困国の出身者が警備要員の4割、「トリプル・キャノピー社[注 2]」に至っては8割を占めている。トリプル・キャノピー社は設立当初実態のない会社でありながらも大型契約を取得し、チリ人やフィジー人と少数のアメリカ人を雇って、イラク全土にある13ヶ所の連合暫定施政当局に1000人もの警備員を派遣した。

また、イラク現地では多くのイラク人が雇用されている。G4Sの場合は英国人2名にイラク人6人で身辺警護小隊を編成しており、欧米人の将校下士官に現地人の兵士という構成が取られている。このような雇用方式は「エリニュス社[注 3]」や「アーマー・グループ[注 4]」など、他の英国系民間軍事会社でも用いられる方針である。イラク人は警備員だけではなく、空港の荷物チェック係といった非戦闘員としても雇用されている。

リクルートに関しては、ピンからキリまでが実態であり、貧困国の新聞に警備要員と称して募集広告をかけ、戦場に送り込むといった粗っぽい手口を講じる会社も存在する[18]

報酬

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元有名特殊部隊所属の肩書きを持つ人材は1日で1000ドル程度の収入が見込めるが、ネパールのグルカ兵が民間軍事会社で働いた場合の給料は月給1000ドル程度である。ただ、ネパールの公務員の平均年収が1300ドルであることから考えると月給1000ドルという給料は彼らの所得水準から見ると大変に高額である。このため、貧困国の兵士にとっては民間軍事会社で得る給料は普通に働く場合の10倍以上にもなり、一攫千金を夢見るに十分な額である。

逆に日本などの先進国の国民から見れば一般企業の賃金と大差の無い、もしくはそれ以下の給与水準であり、危険性に比して薄給で、日本人が民間軍事会社で就労しても大金を稼げるとはいえない。実際にイラクで死亡した日本人の年収は四百数十万円程度で、軍歴が長く下士官であったことから考えれば先進国の正規軍と変わらない報酬である。このため、民間軍事会社の給与は裕福な先進国の国民から見れば安く、貧困国の国民から見れば高給ということになっている。また、軍隊と比べると遺族補償、軍人恩給、褒賞といった福利厚生面は手薄だったり制度自体がない事も多い。

なお、民間軍事会社においても兵士は兵士、下士官は下士官で終わりという点に(多少の例外はあるものの)変化はなく、たとえ入社前に歴戦の勇士でも、入社後にどれだけ実績を重ねても、入社前に幕僚課程や上級士官課程を取得していない者は現場指揮官以上に昇進できない。

民間軍事会社・関連企業一覧

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米国

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イギリス

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カナダ

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イスラエル

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ロシア

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ウクライナ

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南アフリカ

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登場作品

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脚注

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注釈

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  1. ^ アメリカの「グレイストーン」、イギリスの「イージス」、ポーランドの「ASBCオタゴ」の名前が挙がっている
  2. ^ グリーンベレーのトム・カーティスとマット・マンによって設立された民間軍事会社。後に元デルタフォースのイギー・バルデラスも経営陣に入る。
  3. ^ 元イギリス軍人のジョナサン・ガラットと南アフリカの外交官でナミビアの統治副責任者であったショーン・クリアリーによって創設された会社。
  4. ^ 元SAS隊員のアルスター・モリソンによって設立された会社。後にG4Sに吸収される。

出典

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  1. ^ Hawkins, Virgil. “戦争の民営化?民間軍事会社の台頭 |”. GNV. 2019年1月19日閲覧。
  2. ^ NHK(2020年1月4日)「ゴーン被告 “箱に隠れ出国” 元米軍特殊部隊員関与か
  3. ^ アルジェリア人質事件で注目 日本人が知らない「民間軍事会社」の実態”. 週刊ダイヤモンド. 2015年4月17日閲覧。
  4. ^ 朝日新聞(2020年1月4日)「ゴーン被告、プロが逃がす?元グリーンベレーの名前浮上
  5. ^ 民間軍事会社の指針採択 国際人道法順守で17カ国 共同通信 2008年9月18日
  6. ^ プーチン大統領の傭兵部隊”. 隔月刊国際情報誌グローバルヴィジョン. 2018年12月26日閲覧。
  7. ^ The American mercenary behind Blackwater is helping China establish the new Silk Road”. Quartz. 2018年9月10日閲覧。
  8. ^ ERIK PRINCE IN THE HOT SEAT”. The Intercept. 2017年12月10日閲覧。
  9. ^ Ma, Alexandra (9 March 2022). “Ukraine posts image of dog tag it said belonged to a killed mercenary from the Wagner Group, said to be charged with assassinating Zelenskyy”. Business Insider. 2022年8月17日閲覧。
  10. ^ ロシアがウクライナ、イギリスに配備した何千人ものワグネル・グループ傭兵:3,000人が死亡、200人が任務遂行に失敗”. VOI (2022年4月20日). 2022年8月17日閲覧。
  11. ^ ЧВК «Вагнера» вербует заключенных колоний Петербурга для поездки на Донбасс «идти в авангарде, помогать обнаруживать нацистов»” (ロシア語). istories.media (2022年7月4日). 2022年7月31日閲覧。
  12. ^ a b “激戦地バフムート、ワグネルとロシア国防省が掌握を宣言”. CNN.co.jp. CNN. (2023年5月21日). https://www.cnn.co.jp/world/35204097.html 2023-06-245閲覧。 
  13. ^ “ワグネルのトップ、怒りのボルテージ上げる これは何を意味するのか?”. CNN.co.jp. CNN. (2023年5月13日). https://www.cnn.co.jp/world/35203744.html 2023年6月24日閲覧。 
  14. ^ Gettleman, Jeffrey (2022年10月9日). “An American in Ukraine Finds the War He's Been Searching For” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2022/10/09/world/europe/ukraine-war-americans.html 2022年10月26日閲覧。 
  15. ^ Mozart Group: the western ex-military personnel training Ukrainian recruits” (英語). the Guardian (2022年8月5日). 2022年10月26日閲覧。
  16. ^ その名は「モーツァルト」、大義に燃えるウクライナ外国人志願兵部隊の活躍”. JBpress (2022年11月9日). 2022年11月21日閲覧。
  17. ^ ロシア「ワグネル」ならウクライナは「モーツァルト」 支援組織立ち上げ”. AFPBB News (2022年9月29日). 2022年11月21日閲覧。
  18. ^ 警備の仕事のはずが…UAE企業、スーダン人をリビア・イエメン紛争にあっせんか”. AFP (2020年1月31日). 2020年2月1日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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