「鉄筋コンクリート」の版間の差分
鉄筋コンクリート構造から鉄筋コンクリートへの一部転記の提案 |
鉄筋コンクリート構造より一部転記 |
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[[画像:Trebar.jpg|thumb|組み立てられた鉄筋。奥行き方向に伸びているのが主鉄筋で、垂直に組まれているのがせん断補強鉄筋である。]] |
[[画像:Trebar.jpg|thumb|組み立てられた鉄筋。奥行き方向に伸びているのが主鉄筋で、垂直に組まれているのがせん断補強鉄筋である。]] |
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'''鉄筋コンクリート'''(てっきんコンクリート、''[[:en:Reinforced concrete|reinforced concrete]]'', '''RC''')は、引張りに弱い[[コンクリート]]を補強するために鉄筋を配したコンクリートである。鉄筋は引張りが作用しても引き抜けないように、両端をアルファベットのJの形状に曲げたフックにしたり、節(リブ)のある[[異形鉄筋]]が用いられる。 |
'''鉄筋コンクリート'''(てっきんコンクリート、''[[:en:Reinforced concrete|reinforced concrete]]'', '''RC''')は、引張りに弱い[[コンクリート]]を補強するために鉄筋を配したコンクリートである。鉄筋は引張りが作用しても引き抜けないように、両端をアルファベットのJの形状に曲げたフックにしたり、節(リブ)のある[[異形鉄筋]]が用いられる。 |
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== 概要 == |
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金属の[[鉄]]がもつ性質の容易に破断しない粘り強さ([[靱性]])と引張強度、セメントと骨材(こつざい)である[[砂]]及び砂利を水と混ぜた[[コンクリート]]がもつ高い圧縮強度を併用した構造の一つ。鉄を主な材料とする棒状に加工した鉄筋が、細長比と呼ばれる径と長さの比率が一定の限度を越えると、発生する座屈や撓み(たわみ)等の曲がりが生じてしまう性質を、コンクリートが鉄筋の周囲を拘束することで曲がらぬように抑え、他方、コンクリートが曲げや引張強度の面では脆い部分を鉄が補うようにバランスよく構造設計を行うことで、互いの弱点を相互補完する構造である。鉄とコンクリートの付着強度が大きく、また[[熱膨張率]]がほぼ等しい (1.0×10<sup>-5</sup>/K 前後) ということも、この二つの材料を組み合わせることが可能な理由として挙げられる。 |
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[[化学]]的な性質の点では、[[鉄]]は空気中に暴露していると大気中の[[酸素]]と結合し酸化して[[錆]]が発生し、長い年月を経ると強度を担うべき断面積が錆により腐食し、当初の強度を保てなくなる。しかし、コンクリートの成分に含まれるセメントが高[[アルカリ性]]であるため、鉄筋コンクリート中の鉄筋は[[不動態]]化している。そのため、鉄筋コンクリート中の鉄筋は腐食せず、要求性能を満たしつづける。 |
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その一方で、鉄筋コンクリート構造を構成する[[砂]]の産地が[[海]]か河[[川]]か[[山]]地かにより[[塩分]]を十分に脱塩しなかった場合等により、コンクリートの[[中性]]化が進むと内部で酸化が進行し、内部の鉄筋が錆により膨張してコンクリートの剥離・剥落が生じる。このような鉄筋の発錆による剥離・剥落を爆裂と称する<ref>但し、本来はコンクリートが火災により被り部分の剥落を生ずる現象を爆裂という</ref>。高度経済成長期には脱塩が曖昧なままに建設された建造物が多く、社会問題になった。[[長崎県]][[佐世保市]][[宇久島]]に位置する宇久長崎鼻灯台は、[[1959年]]に海水練りのコンクリートを用いた鉄筋コンクリートにより建造され、50年以上も経過した段階でも現役の構造物として稼働している<ref>『日経コンストラクション』2011.9.20p95</ref>。 |
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現在では[[異形鉄筋]]を使用して、普通コンクリートを打設するのが主流である。 |
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== 性質 == |
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遮音性能は物質の比重の大きさに比例し、単位当たりの重量が重いほど遮音効率が良い。加えて適正な品質管理を行ない密実に打設されたコンクリートは構造体として連続性をもち、セメントが化学反応により硬化する際に発生する[[クラック]]と呼ぶひび割れが生じない限りは高い水密性が期待できる。これらの性質から防音性、保温性に優れ[[マンション]]等の構造に採用されるほか、[[スランプ試験|スランプ]]と呼ぶコンクリートを打設する際の硬さや柔らかさの設定次第でいわゆる[[コンクリートパネル|コンパネ]]の通称で知られる[[合板|コンポジットパネル]]により組み立てられた型枠形状に流動性を以て追従し、平面形状や断面形状の自由度の高い形態を作り易く、意匠性の高い建物に使用されることが多い。一般戸建[[住宅]]を除き日本では多くの建物がこの工法で造られている。 |
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== 破壊メカニズム == |
== 破壊メカニズム == |
2016年7月6日 (水) 08:49時点における版
鉄筋コンクリート(てっきんコンクリート、reinforced concrete, RC)は、引張りに弱いコンクリートを補強するために鉄筋を配したコンクリートである。鉄筋は引張りが作用しても引き抜けないように、両端をアルファベットのJの形状に曲げたフックにしたり、節(リブ)のある異形鉄筋が用いられる。
概要
金属の鉄がもつ性質の容易に破断しない粘り強さ(靱性)と引張強度、セメントと骨材(こつざい)である砂及び砂利を水と混ぜたコンクリートがもつ高い圧縮強度を併用した構造の一つ。鉄を主な材料とする棒状に加工した鉄筋が、細長比と呼ばれる径と長さの比率が一定の限度を越えると、発生する座屈や撓み(たわみ)等の曲がりが生じてしまう性質を、コンクリートが鉄筋の周囲を拘束することで曲がらぬように抑え、他方、コンクリートが曲げや引張強度の面では脆い部分を鉄が補うようにバランスよく構造設計を行うことで、互いの弱点を相互補完する構造である。鉄とコンクリートの付着強度が大きく、また熱膨張率がほぼ等しい (1.0×10-5/K 前後) ということも、この二つの材料を組み合わせることが可能な理由として挙げられる。
化学的な性質の点では、鉄は空気中に暴露していると大気中の酸素と結合し酸化して錆が発生し、長い年月を経ると強度を担うべき断面積が錆により腐食し、当初の強度を保てなくなる。しかし、コンクリートの成分に含まれるセメントが高アルカリ性であるため、鉄筋コンクリート中の鉄筋は不動態化している。そのため、鉄筋コンクリート中の鉄筋は腐食せず、要求性能を満たしつづける。
その一方で、鉄筋コンクリート構造を構成する砂の産地が海か河川か山地かにより塩分を十分に脱塩しなかった場合等により、コンクリートの中性化が進むと内部で酸化が進行し、内部の鉄筋が錆により膨張してコンクリートの剥離・剥落が生じる。このような鉄筋の発錆による剥離・剥落を爆裂と称する[1]。高度経済成長期には脱塩が曖昧なままに建設された建造物が多く、社会問題になった。長崎県佐世保市宇久島に位置する宇久長崎鼻灯台は、1959年に海水練りのコンクリートを用いた鉄筋コンクリートにより建造され、50年以上も経過した段階でも現役の構造物として稼働している[2]。
現在では異形鉄筋を使用して、普通コンクリートを打設するのが主流である。
性質
遮音性能は物質の比重の大きさに比例し、単位当たりの重量が重いほど遮音効率が良い。加えて適正な品質管理を行ない密実に打設されたコンクリートは構造体として連続性をもち、セメントが化学反応により硬化する際に発生するクラックと呼ぶひび割れが生じない限りは高い水密性が期待できる。これらの性質から防音性、保温性に優れマンション等の構造に採用されるほか、スランプと呼ぶコンクリートを打設する際の硬さや柔らかさの設定次第でいわゆるコンパネの通称で知られるコンポジットパネルにより組み立てられた型枠形状に流動性を以て追従し、平面形状や断面形状の自由度の高い形態を作り易く、意匠性の高い建物に使用されることが多い。一般戸建住宅を除き日本では多くの建物がこの工法で造られている。
破壊メカニズム
鉄筋コンクリートには、曲げ引張破壊と曲げ圧縮破壊、せん断破壊、付着割裂破壊、疲労破壊などの破壊メカニズムがある。
- 曲げ引張破壊
- コンクリート部材に曲げモーメントが作用したときに、引張り側の鉄筋が降伏に達して、部材が破壊するモード。
- 曲げ圧縮破壊
- 曲げ引張破壊と同じく、コンクリート部材に曲げモーメントが作用したときに、圧縮側のコンクリートが破壊に達して、部材が破壊するモード。鉄筋量が極端に多いときに発生する。
- せん断破壊
- コンクリート部材にせん断力が作用したときに、せん断耐力に達して破壊するモード。非常に脆性的な破壊であり、防がなければならない。
- 付着割裂破壊
- 鉄筋の引き抜きにより、鉄筋に沿ってクラックが入り、それが進展して部材の破壊に至るモード。異形鉄筋が引き抜きに耐えられなくなったときに発生する。
- 疲労破壊
- 部材の応力は破壊に達していなくとも、荷重を数百万回にもわたって受けることによって局所的にクラックが入り、それが進展して部材の破壊に至るモード。
- コーン状破壊
- コンクリート部材に打ち込んだアンカーに引き抜き力が作用したときに、せん断耐力に達して破壊するモード。
曲げ破壊を防止することを目的とした鉄筋を主鉄筋、せん断破壊を防止するための鉄筋をせん断補強鉄筋と呼ぶ。梁のせん断補強鉄筋を肋筋またはスターラップ、柱のせん断補強鉄筋を帯鉄筋またはフープと呼ぶこともある。主鉄筋は部材の長い方向に配され、せん断補強鉄筋はそれに垂直に固定される。梁の場合、通常、荷重は上からかかるので主鉄筋は上下端に配される。一方、柱の場合、地震などの方向の特定できない外力に耐える必要から四辺ともに配される。
関連項目
- コンクリート
- 鉄筋コンクリート構造
- 鉄骨鉄筋コンクリート構造
- 竹筋コンクリート
- JASS 5: 日本建築学会による鉄筋コンクリート工事の際に加工する鉄筋の定着長さや直径ごとに異なる間隔、コンクリートの配合の割合などを規定した標準工事仕様書
- ブロック塀
- 構造計算書偽造問題