コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「咳嗽」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
ZairanTD (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集
編集の要約なし
タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集 改良版モバイル編集
 
(24人の利用者による、間の30版が非表示)
1行目: 1行目:
{{Infobox medical condition
{{Infobox medical condition
| Name = 咳嗽
| Name = 咳嗽
| Image = Pertussis.jpg
| Image = Pertussis.jpg
| Caption =
| Caption = [[百日咳]]の患者
| ICD10 = {{ICD10|R|05||r|00}}
| ICD10 = {{ICD10|R|05||r|00}}
| ICD9 = {{ICD9|786.2}}
| ICD9 = {{ICD9|786.2}}
| ICDO =
| ICDO =
| OMIM =
| OMIM =
| DiseasesDB = 17149
| DiseasesDB = 17149
| MedlinePlus = 003072
| MedlinePlus = 003072
| eMedicineSubj = ENT
| eMedicineSubj = ENT
| eMedicineTopic = 1048560
| eMedicineTopic = 1048560
}}
}}
'''咳嗽'''(がいそう、cough)とは、医療分野における症状の一種であり、[[肺]]や気道から空気を強制的に排出させるため、通常繰り返して起こる[[気管]]・[[喉頭]]・呼吸筋の反射的な収縮運動である。一般的には'''咳'''(せき)という。


'''咳嗽'''(がいそう、{{lang-en|cough}})とは、医療分野における症状の一種であり、[[肺]]や気道から空気を強制的に排出させるための生体防御運動であり、通常繰り返して起こる[[気管]]・[[喉頭]]・呼吸筋の反射的な収縮運動である{{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.II}}。一般的には'''咳'''(せき)という。
== 概要 ==
[[咽頭]]や[[気管]]・[[気管支]]粘膜の刺激が誘引となって起こる。咳嗽をきたす疾患や状態は数多くある。誤嚥やほこりによって[[気道]]に異物が入った場合にも起こるが、長時間咳嗽が続く場合は、呼吸器・神経系の疾患を疑わせる所見である。


== 分類と原因 ==
痰を伴わない乾いたせきのことを'''乾性咳嗽'''(かんせいがいそう)といい、一般的には'''空咳'''(からせき)ともいう。[[痰]]や[[喀血]]を伴う湿ったものを'''湿性咳嗽'''(しっせいがいそう)と呼ぶ。乾性咳嗽は、[[間質性肺炎]]、[[異型肺炎]]、[[胸膜炎]]など典型的な[[肺炎]]とは異なった肺炎を示唆する。また、[[ACE阻害薬]]の有名な副作用でもある。湿性咳嗽は気道の炎症性病変や[[肺水腫]]を示唆する。
日本呼吸器学会咳嗽ガイドライン 第2版の定義{{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.II}}では、
# 咳嗽とは,気道内に貯留した分泌物や異物を気道外に排除するための生態防御反応である。
# 気道壁表層の咳受容体の刺激が迷走神経を介して延髄[[咳中枢]]に伝達され咳嗽が発生する。
# 気道壁表層の咳受容体の感受性亢進を介する経路と,気道平滑筋収縮による平滑筋内の知覚神経の刺激を介する経路の 2 つがある。


更に分類すると
1回の咳嗽で2[[カロリー|kcal]](≒8.4[[ジュール|kJ]])のエネルギーを消費するといわれ、咳嗽が続くとエネルギーを著しく消耗する。[[風邪]]などで咳嗽が続く場合は栄養状態に注意する必要がある。また、老人は咳の衝撃に耐えられず肋骨を骨折してしまうケースも少なくない。
# 咳嗽反応亢進
#* 乾性咳嗽を呈する呼吸器疾患、[[アンジオテンシン変換酵素阻害薬]](ACE阻害薬)の副作用
#: (気管支壁表層の咳受容体感受性の亢進による咳嗽と、気管支壁深層にある気管支平滑筋の収縮による咳嗽を含む)
# 適正な咳嗽反応
#* 湿性咳嗽を呈する呼吸器疾患、刺激物の吸入、心因性咳嗽、咳払い
# 咳嗽反応低下
#* 脳血管障害(不顕性誤嚥)、ADL 低下、睡眠、ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、麻酔薬、昏睡、意識障害

痰を伴わない乾いたせきのことを'''乾性咳嗽'''(かんせいがいそう)といい、一般的には'''空咳'''(からせき)ともいう{{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.III}}。[[痰]]や[[喀血]]を伴う湿ったものを'''湿性咳嗽'''(しっせいがいそう)と呼ぶ{{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.III}}。乾性咳嗽は、[[間質性肺炎]]、[[異型肺炎]]、[[胸膜炎]]、[[過敏性肺炎]]など典型的な[[肺炎]]とは異なった肺炎を示唆する。また、湿性咳嗽は気道の炎症性病変や[[肺水腫]]を示唆する。

=== 消費カロリー ===
岡野弘は1992年4月に『リハビリテーション医学』第29巻4号で発表した論文「呼吸器疾患の治療」<ref name="Okano">{{Cite journal|和書 |author= 岡野弘 |url=https://doi.org/10.2490/jjrm1963.29.281 |title= 呼吸器疾患の治療 |journal=リハビリテーション医学 |year=1992 |volume=29 |issue=4 |page=286 |doi=10.2490/jjrm1963.29.281 |publisher=日本リハビリテーション医学会 |quote=第35回日本リハビリテーション医学会医師卒後教育研修会 |accessdate = 2024-06-13}}</ref>のなかで、「呼吸筋の収縮により消費するエネルギーは、1回の咳嗽で2calを要し、1分間に1回の咳嗽が10時間持続すると1,200calを消費する」というWilliams と Wilkinsによる1979年の研究を紹介した。


== 診断 ==
== 診断 ==
咳嗽、[[肺癌]]・[[結核]]・肺塞栓症の初発症状である場合もある{{Sfn|日本呼吸器学会|2012}}。
; 急性咳嗽:感染性疾患と急性上気道炎(上気道感染症つまり[[風邪症候群|風邪]])が多い{{Sfn|日本呼吸器学会|2012}}。
; 慢性咳嗽:過敏性肺炎、[[慢性閉塞性肺疾患]]、[[咳喘息]]・[[喘息]]、アトピー咳嗽、[[副鼻腔気管支症候群]]{{Sfn|日本呼吸器学会|2012}}。また、[[肺癌]]・[[結核]]・肺塞栓症の初発症状である場合もある{{Sfn|日本呼吸器学会|2012}}。
[[日本呼吸器学会]]の咳嗽ガイドラインによれば、1-2週間以上持続する咳嗽患者に対しては胸部[[X線撮影]]を推奨している(推奨グレードA){{Sfn|日本呼吸器学会|2012}}。
[[日本呼吸器学会]]の咳嗽ガイドラインによれば、1-2週間以上持続する咳嗽患者に対しては[[胸部X線検査]]を推奨している(推奨グレードA){{Sfn|日本呼吸器学会|2012}}。

欧米に於いて慢性化した咳嗽の原因として多いものは、[[上気道咳嗽症候群]](後鼻漏症候群)、[[気管支喘息]]([[咳喘息]])、[[逆流性食道炎]]である<ref name="Benich">{{Cite journal |author=BENICH III, JOSEPH J; Carek, Peter J |year=2011 |url=https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2011/1015/p887.html |title=Evaluation of the patient with chronic cough |journal=American family physician |volume=84 |issue=8 |pages=887-892}}</ref>とされているが日本では多くない{{Sfn|日本呼吸器学会|2012}}。

== 検査 ==
胸部X線撮影、血液検査、喀痰検査、生理学的検査


== 治療 ==
== 治療 ==
[[日本呼吸器学会]]ガイドラインによれば、乾性咳嗽に対する非特異的治療薬は中枢性鎮咳薬および気管支拡張薬(推奨グレードB)であり、また湿性咳嗽に対する非特異的治療薬は、去痰薬・小青竜湯・吸入抗コリン薬(推奨グレートB)などであった{{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}}。
日本呼吸器学会ガイドラインによれば、乾性咳嗽に対する非特異的治療薬は中枢性鎮咳薬および気管支拡張薬(推奨グレードB)であり、また湿性咳嗽に対する非特異的治療薬は、去痰薬・小青竜湯・吸入抗コリン薬(推奨グレートB)などであった{{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}}。

[[ハーバード大学医学大学院|ハーバード大学医学部]]の専門家によると、多くの市販咳止め薬は有効性の証拠がほとんどなく、おそらく出費に見合う価値がない。一般的な風邪による咳には、[[抗ヒスタミン薬]]と[[充血除去薬]]を含む[[鎮咳去痰薬|咳止め薬]]が適している<ref>{{Cite web|title=No coughing matter|url=https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/no-coughing-matter|website=Harvard Health|accessdate=2020-11-20|first=Harvard Health|last=Publishing}}</ref>。

=== 蜂蜜 ===
上気道感染症(風邪など)の症状である[[喉]]の[[痛み]]や[[咳]]が出る場合は、[[蜂蜜]]がその症状を軽減する可能性があると2020年11月に[[ハーバード大学医学大学院|ハーバード大学医学院]]で公開された。科学者は蜂蜜には抗菌特性があり、大人では上気道感染症(風邪など)の症状に対処するための無害な方法であると結論付けた<ref>{{Cite web|title=Got a cold? Try some honey|url=https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/got-a-cold-try-some-honey|website=Harvard Health|accessdate=2020-11-03|first=Harvard Health|last=Publishing}}</ref>。但し、1歳未満の乳児には[[ボツリヌス菌|乳児ボツリヌス症]]を発症する可能性があるので与えてはいけない。


=== 中枢性鎮咳薬 ===
=== 中枢性鎮咳薬 ===
鎮咳薬は基本的に咳中枢に作用するが、必要な咳嗽をも止めるリスクがある{{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}}。
鎮咳薬は基本的に咳中枢に作用するが、必要な咳嗽をも止めるリスクがある{{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}}。
日本呼吸器学会ガイドラインでは、明らかな上気道炎などにとどめ、中枢性鎮咳薬の使用はできる限り控えると勧告されている(グレードD){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}}
日本呼吸器学会ガイドラインでは、明らかな上気道炎などにとどめ、中枢性鎮咳薬の使用はできる限り控えると勧告されている(グレードD){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}}。


* [[リン酸コデイン]]・[[リン酸ジヒドロコデイン]] {{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}} 麻薬性中枢性鎮咳薬であるので、副作用に注意する必要がある。
* リン酸[[コデイン]]・[[リン酸ジヒドロコデイン]] {{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}} - 麻薬性中枢性鎮咳薬であるので、副作用に注意する必要がある。
* [[デキストロメトルファン]]臭化水素酸塩 {{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}} 非麻薬性中枢性鎮咳神経刺激薬である(メジコン:ヒスタミン遊離作用がありアレルギー増悪に注意)。
* [[デキストロメトルファン]]臭化水素酸塩 {{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}} - 非麻薬性中枢性鎮咳神経刺激薬である(メジコン:ヒスタミン遊離作用がありアレルギー増悪に注意)。
* [[:en:Tipepidine|チペピジン]]ヒベンズ酸塩(アスベリン){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}}は、リン酸コデインと同等の鎮咳作用を持つ非麻薬性中枢性鎮咳薬であると同時に、去痰作用も有する。
* [[:en:Tipepidine|チペピジン]]ヒベンズ酸塩(アスベリン){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}} - リン酸コデインと同等の鎮咳作用を持つ非麻薬性中枢性鎮咳薬であると同時に、去痰作用も有する。
* 車前草エキス(フスタギン)もチペピジンと同様の作用を有する(痰の粘稠度を低下させる去痰作用)。副作用が少ない。
* 車前草エキス(フスタギン)もチペピジンと同様の作用を有する(痰の粘稠度を低下させる去痰作用)。副作用が少ない。


=== 気管支拡張薬 ===
=== 気管支拡張薬 ===
以下の[[気管支拡張]](アドレナリンβ2受容体刺激)もよく使われる。気管支を広げ呼吸を楽にする。
以下の[[気管支拡張]](アドレナリンβ2受容体刺激)もよく使われる。気管支を広げ呼吸を楽にする。


* [[塩酸ツロブテロール]](ホクナリン){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}} は、気管支拡張剤で唯一貼付剤がある。
* [[塩酸ツロブテロール]](ホクナリン){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}} は、気管支拡張剤で唯一貼付剤(ホクナリンテープ)がある。
* プロカテロール塩酸塩(メプチン){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}} 等。
* プロカテロール塩酸塩(メプチン){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}} 等。


=== 去痰薬 ===
=== 去痰薬 ===
* [[カルボシステイン]](ムコダイン:粘膜修復作用あり){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}}
* [[カルボシステイン]](ムコダイン:粘膜修復作用あり){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}}
* [[アンブロキソール]]塩酸塩 (ムコソルバン){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}}
* [[アンブロキソール]]塩酸塩 (ムコソルバン){{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}}
* [[ブロムヘキシン]]塩酸塩 (ビソルボン:気道粘液溶解剤、粘液分泌促進薬)
* [[ブロムヘキシン]]塩酸塩 (ビソルボン:気道粘液溶解剤、粘液分泌促進薬)


=== 漢方薬 ===
=== 漢方薬 ===
* [[小青竜湯]]、[[麦門冬湯]]{{Sfn|日本呼吸器学会|2012|at=Chapt.VI}}
* [[小青竜湯]]、[[麦門冬湯]]{{Sfn|日本呼吸器学会|2012|loc=Chapt.VI}}


== 診療科 ==
== 診療科 ==
58行目: 83行目:


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|2}}
{{Reflist|2}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite |和書|title=咳嗽に関するガイドライン第2版 |publisher=日本呼吸器学会 |date=2012-05-30 |url=http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0148/G0000523/0001 |ref=harv}}
* {{Cite report |和書|title=咳嗽に関するガイドライン第2版 |author=日本呼吸器学会 |publisher=[[日本医療機能評価機構]] |date=2012-05-30 |url=https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0148/G0000523/0001 |ref=harv }}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/07-肺と気道の病気/肺疾患の症状/成人のせき 成人のせき] - [[MSDマニュアル]]
* [http://www.jrs.or.jp/home/ 日本呼吸器学会]
* [https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/23-小児の健康上の問題/乳児と幼児の症状/小児のせき 小児のせき] - [[MSDマニュアル]]
* [http://netconf.eisai.co.jp/cough/c_spe.htm 日本咳嗽研究会]
* [https://www.jrs.or.jp/ 日本呼吸器学会]

* [https://www.kubix.co.jp/cough/ 日本咳嗽会]
{{DEFAULTSORT:かいそう}}


{{Medical-stub}}
{{Medical-stub}}
{{呼吸器疾患}}
{{呼吸器疾患}}
{{Respiratory system symptoms and signs}}
{{Normdaten}}


{{DEFAULTSORT:かいそう}}
[[Category:症候]]
[[Category:症候]]
[[Category:反射 (生物)]]
[[Category:反射 (生物)]]
[[Category:風邪]]

2024年8月19日 (月) 14:23時点における最新版

咳嗽
百日咳の患者
概要
分類および外部参照情報
ICD-10 R05
ICD-9-CM 786.2
DiseasesDB 17149
MedlinePlus 003072
eMedicine ENT/1048560

咳嗽(がいそう、英語: cough)とは、医療分野における症状の一種であり、や気道から空気を強制的に排出させるための生体防御運動であり、通常繰り返して起こる気管喉頭・呼吸筋の反射的な収縮運動である[1]。一般的には(せき)という。

分類と原因

[編集]

日本呼吸器学会咳嗽ガイドライン 第2版の定義[1]では、

  1. 咳嗽とは,気道内に貯留した分泌物や異物を気道外に排除するための生態防御反応である。
  2. 気道壁表層の咳受容体の刺激が迷走神経を介して延髄咳中枢に伝達され咳嗽が発生する。
  3. 気道壁表層の咳受容体の感受性亢進を介する経路と,気道平滑筋収縮による平滑筋内の知覚神経の刺激を介する経路の 2 つがある。

更に分類すると

  1. 咳嗽反応亢進
    (気管支壁表層の咳受容体感受性の亢進による咳嗽と、気管支壁深層にある気管支平滑筋の収縮による咳嗽を含む)
  2. 適正な咳嗽反応
    • 湿性咳嗽を呈する呼吸器疾患、刺激物の吸入、心因性咳嗽、咳払い
  3. 咳嗽反応低下
    • 脳血管障害(不顕性誤嚥)、ADL 低下、睡眠、ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、麻酔薬、昏睡、意識障害

痰を伴わない乾いたせきのことを乾性咳嗽(かんせいがいそう)といい、一般的には空咳(からせき)ともいう[2]喀血を伴う湿ったものを湿性咳嗽(しっせいがいそう)と呼ぶ[2]。乾性咳嗽は、間質性肺炎異型肺炎胸膜炎過敏性肺炎など典型的な肺炎とは異なった肺炎を示唆する。また、湿性咳嗽は気道の炎症性病変や肺水腫を示唆する。

消費カロリー

[編集]

岡野弘は1992年4月に『リハビリテーション医学』第29巻4号で発表した論文「呼吸器疾患の治療」[3]のなかで、「呼吸筋の収縮により消費するエネルギーは、1回の咳嗽で2calを要し、1分間に1回の咳嗽が10時間持続すると1,200calを消費する」というWilliams と Wilkinsによる1979年の研究を紹介した。

診断

[編集]
急性咳嗽
感染性疾患と急性上気道炎(上気道感染症、つまり風邪)が多い[4]
慢性咳嗽
過敏性肺炎、慢性閉塞性肺疾患咳喘息喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群[4]。また、肺癌結核・肺塞栓症の初発症状である場合もある[4]

日本呼吸器学会の咳嗽ガイドラインによれば、1-2週間以上持続する咳嗽患者に対しては胸部X線検査を推奨している(推奨グレードA)[4]

欧米に於いて慢性化した咳嗽の原因として多いものは、上気道咳嗽症候群(後鼻漏症候群)、気管支喘息咳喘息)、逆流性食道炎である[5]とされているが日本では多くない[4]

検査

[編集]

胸部X線撮影、血液検査、喀痰検査、生理学的検査

治療

[編集]

日本呼吸器学会ガイドラインによれば、乾性咳嗽に対する非特異的治療薬は中枢性鎮咳薬および気管支拡張薬(推奨グレードB)であり、また湿性咳嗽に対する非特異的治療薬は、去痰薬・小青竜湯・吸入抗コリン薬(推奨グレートB)などであった[6]

ハーバード大学医学部の専門家によると、多くの市販咳止め薬は有効性の証拠がほとんどなく、おそらく出費に見合う価値がない。一般的な風邪による咳には、抗ヒスタミン薬充血除去薬を含む咳止め薬が適している[7]

蜂蜜

[編集]

上気道感染症(風邪など)の症状である痛みが出る場合は、蜂蜜がその症状を軽減する可能性があると2020年11月にハーバード大学医学院で公開された。科学者は蜂蜜には抗菌特性があり、大人では上気道感染症(風邪など)の症状に対処するための無害な方法であると結論付けた[8]。但し、1歳未満の乳児には乳児ボツリヌス症を発症する可能性があるので与えてはいけない。

中枢性鎮咳薬

[編集]

鎮咳薬は基本的に咳中枢に作用するが、必要な咳嗽をも止めるリスクがある[6]。 日本呼吸器学会ガイドラインでは、明らかな上気道炎などにとどめ、中枢性鎮咳薬の使用はできる限り控えると勧告されている(グレードD)[6]

  • リン酸コデインリン酸ジヒドロコデイン [6] - 麻薬性中枢性鎮咳薬であるので、副作用に注意する必要がある。
  • デキストロメトルファン臭化水素酸塩 [6] - 非麻薬性中枢性鎮咳神経刺激薬である(メジコン:ヒスタミン遊離作用がありアレルギー増悪に注意)。
  • チペピジンヒベンズ酸塩(アスベリン)[6] - リン酸コデインと同等の鎮咳作用を持つ非麻薬性中枢性鎮咳薬であると同時に、去痰作用も有する。
  • 車前草エキス(フスタギン)もチペピジンと同様の作用を有する(痰の粘稠度を低下させる去痰作用)。副作用が少ない。

気管支拡張薬

[編集]

以下の気管支拡張薬(アドレナリンβ2受容体刺激)もよく使われる。気管支を広げ呼吸を楽にする。

  • 塩酸ツロブテロール(ホクナリン)[6] は、気管支拡張剤で唯一貼付剤(ホクナリンテープ)がある。
  • プロカテロール塩酸塩(メプチン)[6] 等。

去痰薬

[編集]

漢方薬

[編集]

診療科

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ a b 日本呼吸器学会 2012, Chapt.II.
  2. ^ a b 日本呼吸器学会 2012, Chapt.III.
  3. ^ 岡野弘「呼吸器疾患の治療」『リハビリテーション医学』第29巻第4号、日本リハビリテーション医学会、1992年、286頁、doi:10.2490/jjrm1963.29.2812024年6月13日閲覧。「第35回日本リハビリテーション医学会医師卒後教育研修会」 
  4. ^ a b c d e 日本呼吸器学会 2012.
  5. ^ BENICH III, JOSEPH J; Carek, Peter J (2011). “Evaluation of the patient with chronic cough”. American family physician 84 (8): 887-892. https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2011/1015/p887.html. 
  6. ^ a b c d e f g h i j k 日本呼吸器学会 2012, Chapt.VI.
  7. ^ Publishing, Harvard Health. “No coughing matter”. Harvard Health. 2020年11月20日閲覧。
  8. ^ Publishing, Harvard Health. “Got a cold? Try some honey”. Harvard Health. 2020年11月3日閲覧。

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]