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「愛国心」の版間の差分

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[[ファイル:"Be Patriotic sign your country's pledge to save the food." - NARA - 512548.jpg|thumb|right|「愛国的であれ」1917年(大正6年)、<br>[[第一次世界大戦]]中の[[アメリカ合衆国]]食品管理局によるポスター。]]
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'''愛国心'''(あいこくしん)または'''愛国主義'''(あいこくしゅぎ、'''パトリオティズム'''、{{lang-en|patriotism}})は、
'''愛国心'''(あいこくしん)または'''愛国主義'''(あいこくしゅぎ、'''パトリオティズム'''、{{lang-en-short|patriotism}})は、自分の[[国家]]に対し、[[愛着]]や[[忠誠]]を抱く心情<ref>[http://dic.search.yahoo.co.jp/search?p=%E6%84%9B%E5%9B%BD%E5%BF%83&ei=UTF-8&fr=top_ga1_sa デジタル大辞林、日本大百科全書(ニッポニカ)、他]</ref>。

自分の[[国家]]に対し、[[愛着]]や[[忠誠]]を抱く心情<ref>[http://dic.search.yahoo.co.jp/search?p=%E6%84%9B%E5%9B%BD%E5%BF%83&ei=UTF-8&fr=top_ga1_sa デジタル大辞林、日本大百科全書(ニッポニカ)、他]</ref>。


== 用語 ==
== 用語 ==

2017年3月25日 (土) 20:36時点における版

「愛国的であれ」1917年(大正6年)、
第一次世界大戦中のアメリカ合衆国食品管理局によるポスター。

愛国心(あいこくしん)または愛国主義(あいこくしゅぎ、パトリオティズム: patriotism)は、自分の国家に対し、愛着忠誠を抱く心情[1]

用語

英語の「愛国者」(patriot)との用語は、エリザベス朝で初めて使用され、語源は6世紀の後期ラテン語で「国の人」を意味する patriota である[2]。また「愛国主義」(patriotism)の用語が派生したのは、18世紀初頭である[3]

概説

「愛国心」は祖国に対する愛着である。この愛着は自分の祖国に対しての、民族的、文化的、政治的、あるいは歴史的などの異なった観点によって特徴づけられ、またナショナリズムに近接した概念である[4][5][6]。祖国防衛を超えた過剰な愛国心は、排外主義あるいはジンゴイズムに繋がる場合がある。

国歌国旗は愛国心の象徴ともされる。

歴史

古代ギリシアの民主制のポリスでは、市民はポリス間の戦争において兵士として国を防衛することが義務であった。

18世紀、ヨーロッパ啓蒙主義思想家は、従来の教会に対する忠誠より、国家に対する忠誠を重視した。聖職者は彼らの「愛する国」が天国であるため、公立学校で教えることは許されるべきではない、と論じられた。愛国心の古典的概念の最も有力な支持者の1人はジャン=ジャック・ルソーであった[4]。啓蒙主義者らはまた、彼らが過剰とみなした愛国主義は批判した。

1774年、サミュエル・ジョンソンは著作『愛国者』で、彼が偽りの愛国主義と考えたものを批判した。1775年4月7日、彼は有名な「愛国心は卑怯者の最後の逃げ口上」との発言をした[7]

フランス革命 により誕生した近代国民国家であるフランスは、市民革命の波及による王朝転覆を恐れた周辺各王国から攻撃されることなり、それまでの傭兵に代わって革命主体である市民が自ら国の防衛のため戦争を担うこととなった。ここに民主制国家の国民に同時にナショナリズムが高揚した。各国民国家では、国旗国歌をはじめ、言語、文化、宗教、教育などの標準化が進められ、場合によっては植民地などの被征服地域も含められた。このため少数民族や被征服民族などでは、国家に対する愛国心・忠誠心と、民族による伝統的文化や誇りが分裂する場合も発生した。

第一次世界大戦総力戦となり、各国では兵士だけでなく国民全体に戦意高揚が求められ、この時期に各国に戦争祈念施設も設立された。また社会主義勢力では、従来はカール・マルクスは「労働者には祖国は無い」と国際主義を提唱していたが、第一次世界大戦の際に各国の戦争に協力する社会民主主義社会愛国主義)と、レーニン主義共産主義に分裂し、共産主義でも後のスターリン主義毛沢東思想では愛国主義が強調された(左翼ナショナリズム)。

第二次世界大戦終結後は、アジアアフリカ諸国でナショナリズム(民族主義)が高揚し、多数の独立運動や民族解放闘争が行われ、それぞれの地域で愛国心が強調された。

議論

愛国心とは、卑怯者の最後の逃げ口上だ — サミュエル・ジョンソン
帝国主義はいわゆる愛国主義を経となし,いわゆる軍国主義を緯となして,もって織り成せるの政策にあらずや — 幸徳秋水著『帝国主義』
軍部が精神に重きを置き過ぎ、国力の差を軽視した — 昭和天皇が自身の第5子・長男の皇太子明仁親王(当時、現:天皇)に宛てた手紙

「愛国心」には話者によりその意味するところには大きな幅がある。愛国心の対象である「国」を社会共同体と政治共同体とに切り分けると以下となる。

  • 社会共同体としての「国」に対する愛着は「愛郷心」(あいきょうしん)と言い換えることができる
  • 政治共同体としての「国」に対する愛着は「忠誠心」(loyalty)と言い換えることができる

愛国心によって表出する態度・言動の程度は様々で、ノスタルジーから民族主義国粋主義まで幅広い。これらを十把一絡げに全て「愛国心」と表現することもできるため、その内容は不明確である。

  • 政府側の期待する「愛国心」は現政府に対する「忠誠心」と解釈できる
  • 反政府側の訴える「愛国心」は革命後の新政府に対する「忠誠心」、もしくは時の政府に靡かない「愛郷心」と解釈できる

また、愛国心は大衆を煽動する道具とされてきた一面もある。国家が占領または支配下に置いた地域における愛国心教育には、複数のパターンが見られる。ナチス・ドイツ影響下のヴィシー・フランスや、日本支配下の満州国では、愛国心を育てる教育を行なわれた。第二次世界大戦後の日本西ドイツ及び東ドイツでは、「軍国主義的愛国心」を批判し、民主主義の教育が重視された。

愛国心教育

日本

明治維新近代化を経て学制を実施し、1890年(明治23年)10月30日に発布された教育勅語を国民の教育方針として掲げ、学校教育では「修身」という現在の「道徳」に相当する科目を設け、明治大正昭和初期を経て、戦争を遂行するにあたり、大日本帝国の国内(内地および外地朝鮮台湾)、その他の戦争によるアジアの占領地域で、軍国主義に基づく富国強兵路線に沿いつつ、国教として国家神道を確立させ、「5. 忠君愛国(大君たる天皇に忠節を誓い、神国日本を愛する)」を根幹に据えた徹底した愛国心教育が行われた。

第二次世界大戦敗戦後は、連合国軍占領下で、「日本が戦争を起こすに至ったのは盲目的な愛国教育によるところが大きい」と占領軍(GHQ/SCAP)は認識した。日本教職員組合(日教組)などは「教え子を再び戦場に送るな、青年よ再び銃を取るな」をスローガンに掲げ、「お国のために」を禁忌視した。例えば、主に公立学校の教育現場で公的な行為として日の丸掲揚・君が代斉唱を行ない、また児童・生徒に強制することには強く反対した。このように、愛国心(忠誠心)教育は一部の学校を除いて実施されてこなかった(君が代に対する意見の対立については、「国旗及び国歌に関する法律」を参照)。

2006年平成18年)12月22日に、第1次安倍内閣自公連立政権)により、「教育基本法」が改正され、その内の第2条「教育の目標」の一つとして、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」という条文が盛り込まれ、国際化社会の中での愛国心教育の推進を目標に据えるようになった。

中国

1994年に中国共産党の中央宣伝部が「愛国主義教育実施要綱」を起草し、愛国心教育が制度化された[8]。祖国である中華人民共和国を愛することが国民の義務とされ、学校では国旗の掲揚は毎日行い、小学・中学・高校生は全員国歌「義勇軍行進曲」が歌えなければならないとされている。

文献情報

脚注

  1. ^ デジタル大辞林、日本大百科全書(ニッポニカ)、他
  2. ^ Henry George Liddell, Robert Scott, A Greek-English Lexicon, πατρι-ώτης
  3. ^ Oxford English Dictionary
  4. ^ a b Historical Dictionary of the Enlightenment - Harvey Chisick - Google Books. Books.google.com. https://books.google.com/books?id=5N-wqTXwiU0C&pg=PA313 2013年11月3日閲覧。 
  5. ^ Nationalism (Stanford Encyclopedia of Philosophy)”. Plato.stanford.edu. 2013年11月3日閲覧。
  6. ^ Patriotism (Stanford Encyclopedia of Philosophy)”. Plato.stanford.edu. 2013年11月3日閲覧。
  7. ^ Boswell, James (1986), Hibbert, Christopher, ed., The Life of Samuel Johnson, New York: Penguin Classics, ISBN 0-14-043116-0 
  8. ^ 岡村志嘉子「中国の愛国主義教育に関する諸規定」、国立国会図書館『レファレンス』2004年12月。[1]

関連項目

外部リンク