コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「アスパルテーム」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
Cewbot (会話 | 投稿記録)
m Bot作業依頼:インターネットアーカイブ - log
30行目: 30行目:


== 概要 ==
== 概要 ==
[[1965年]]に[[アメリカ合衆国]]の[[サール (企業)|サール薬品]]が、[[ガストリン]]の合成研究中に強い甘味を発見したことを発端として、その研究・開発が進められた。現在の製法を開発したのは[[日本国|日本]]の[[味の素|味の素株式会社]]であり、日本、アメリカ、[[カナダ]]、および[[ヨーロッパ]]で[[特許]]を有している<ref>[http://web.archive.org/web/20050312031847/http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2004feb/24/K20040224MKA2Z100000037.html 甘味料、発明対価1億8900万円 味の素特許訴訟判決] - [[京都新聞]]、2004年2月24日。(2005年3月12日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。日本およびアメリカでは[[1983年]]に使用が認可されている。
[[1965年]]に[[アメリカ合衆国]]の[[サール (企業)|サール薬品]]が、[[ガストリン]]の合成研究中に強い甘味を発見したことを発端として、その研究・開発が進められた。現在の製法を開発したのは[[日本国|日本]]の[[味の素|味の素株式会社]]であり、日本、アメリカ、[[カナダ]]、および[[ヨーロッパ]]で[[特許]]を有している<ref>[http://web.archive.org/web/20050312031847/http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2004feb/24/K20040224MKA2Z100000037.html 甘味料、発明対価1億8900万円 味の素特許訴訟判決] - [[京都新聞]]、2004年2月24日。(2005年3月12日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。日本およびアメリカでは[[1983年]]に使用が認可されている。


主にロー[[生理的熱量|カロリー]]、ノンカロリーの飲料、また食品に添加される。味は、後甘味でわずかに後引きがあり、砂糖に近く柔らか。[[砂糖]]、[[アセスルファムカリウム]]、[[ソルビトール]]など他の甘味料と合わせて使用されることがある。アスパルテームとアセスルファムカリウムを1:1で併用すると甘味度が40%強化され、甘味の立ち上がりが砂糖に近くなる。
主にロー[[生理的熱量|カロリー]]、ノンカロリーの飲料、また食品に添加される。味は、後甘味でわずかに後引きがあり、砂糖に近く柔らか。[[砂糖]]、[[アセスルファムカリウム]]、[[ソルビトール]]など他の甘味料と合わせて使用されることがある。アスパルテームとアセスルファムカリウムを1:1で併用すると甘味度が40%強化され、甘味の立ち上がりが砂糖に近くなる。
46行目: 46行目:
[[ヒト]]や[[サル]]の[[腸]]において[[メタノール]]、[[アスパラギン酸]]、および[[フェニルアラニン]]に代謝され、吸収された後に体内[[たんぱく質]]に併合されたり[[二酸化炭素]]として排出されることが報告されている<ref>Opperman JA et al; J NUTR 103 (10): 1460-6 (1973)</ref><ref>Trefz F et al; Human Genetics 93 (4): 369-74 (1994)</ref>。
[[ヒト]]や[[サル]]の[[腸]]において[[メタノール]]、[[アスパラギン酸]]、および[[フェニルアラニン]]に代謝され、吸収された後に体内[[たんぱく質]]に併合されたり[[二酸化炭素]]として排出されることが報告されている<ref>Opperman JA et al; J NUTR 103 (10): 1460-6 (1973)</ref><ref>Trefz F et al; Human Genetics 93 (4): 369-74 (1994)</ref>。
メタノールは[[失明]]や致死などの人体への毒性が知られているが、果物や野菜や酒類にも含まれるなど、量によっては無視しうるものである。アスパルテームの代謝で摂取することになるメタノールはトマトや柑橘類のジュースから摂取する量よりも少なく、問題にならない量であることがわかっている<ref name=pmid10628311/><ref name=Butchko>{{cite journal |last1=Butchko |first1=H |last2=Stargel |first2=WW |last3=Comer |first3=CP |last4=Mayhew |first4=DA |last5=Benninger |first5=C |last6=Blackburn |first6=GL |last7=De Sonneville |first7=LM |last8=Geha |first8=RS |last9=Hertelendy |first9=Z |title=Aspartame: Review of Safety |journal=Regulatory Toxicology and Pharmacology |volume=35 |issue=2 Pt 2 |pages=S1–93 |year=2002 |pmid=12180494 |doi=10.1006/rtph.2002.1542}}</ref>。
メタノールは[[失明]]や致死などの人体への毒性が知られているが、果物や野菜や酒類にも含まれるなど、量によっては無視しうるものである。アスパルテームの代謝で摂取することになるメタノールはトマトや柑橘類のジュースから摂取する量よりも少なく、問題にならない量であることがわかっている<ref name=pmid10628311/><ref name=Butchko>{{cite journal |last1=Butchko |first1=H |last2=Stargel |first2=WW |last3=Comer |first3=CP |last4=Mayhew |first4=DA |last5=Benninger |first5=C |last6=Blackburn |first6=GL |last7=De Sonneville |first7=LM |last8=Geha |first8=RS |last9=Hertelendy |first9=Z |title=Aspartame: Review of Safety |journal=Regulatory Toxicology and Pharmacology |volume=35 |issue=2 Pt 2 |pages=S1–93 |year=2002 |pmid=12180494 |doi=10.1006/rtph.2002.1542}}</ref>。
アスパラギン酸は[[アスパラガス]]に多く含まれる[[アミノ酸]]であり、また一部の[[スポーツドリンク]]などに配合されている。フェニルアラニンは食品に含まれる[[必須アミノ酸]]である。FDAは「健常人ではアスパルテームには[[アレルギー]]性はないが、[[フェニルケトン尿症]]患者では危険性があるかもしれない」という見解を示している<ref>[http://web.archive.org/web/19990117002652/http://www.cfsan.fda.gov/~dms/wh-alrg1.html FOOD ALLERGIES RARE BUT RISKY](1999年1月17日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。これはフェニルアラニンが同患者に悪影響を与えるためである。
アスパラギン酸は[[アスパラガス]]に多く含まれる[[アミノ酸]]であり、また一部の[[スポーツドリンク]]などに配合されている。フェニルアラニンは食品に含まれる[[必須アミノ酸]]である。FDAは「健常人ではアスパルテームには[[アレルギー]]性はないが、[[フェニルケトン尿症]]患者では危険性があるかもしれない」という見解を示している<ref>[http://web.archive.org/web/19990117002652/http://www.cfsan.fda.gov/~dms/wh-alrg1.html FOOD ALLERGIES RARE BUT RISKY](1999年1月17日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。これはフェニルアラニンが同患者に悪影響を与えるためである。


[[脳腫瘍]]との関連を指摘する報告はあったものの、再試験では否定されている<ref>[http://web.archive.org/web/19970505134817/http://www.fda.gov/bbs/topics/ANSWERS/ANS00772.html FDA Statement on Aspartame], November 18, 1996.(1997年5月5日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]]); &mdash;FDAによるアスパルテームと腫瘍に関する声明では、'70年代の脳腫瘍と関連を指摘した報告についてはPBOIの[[ラット]]での再試験では再現しなかったこと、それとともに日本での追加試験でも再現しなかったことを踏まえて承認したと説明している。またアスパルテームが上市されてからアメリカにおける脳腫瘍の疫学調査に有意な変化が見られないことも説明している。</ref>。また、科学的に有効性が確認されている発がん性試験ガイドラインに沿った試験法では、アスパルテームに発がん性は認められていない<ref>BRYAN,GT; ARTIFICIAL SWEETENERS AND BLADDER CANCER: ASSESSMENT OF POTENTIAL URINARY BLADDER CARCINOGENICITY OF ASPARTAME AND IS DIKETOPIPERAZINE DERIVATIVE IN MICE; FOOD SCI. TECHNOL. 12(ASPARTAME):321-348, 1984</ref>ため、[[国際がん研究機関|IARC]]はアスパルテームを[[発癌性]]物質として区分していない。
[[脳腫瘍]]との関連を指摘する報告はあったものの、再試験では否定されている<ref>[http://web.archive.org/web/19970505134817/http://www.fda.gov/bbs/topics/ANSWERS/ANS00772.html FDA Statement on Aspartame], November 18, 1996.(1997年5月5日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]]); &mdash;FDAによるアスパルテームと腫瘍に関する声明では、'70年代の脳腫瘍と関連を指摘した報告についてはPBOIの[[ラット]]での再試験では再現しなかったこと、それとともに日本での追加試験でも再現しなかったことを踏まえて承認したと説明している。またアスパルテームが上市されてからアメリカにおける脳腫瘍の疫学調査に有意な変化が見られないことも説明している。</ref>。また、科学的に有効性が確認されている発がん性試験ガイドラインに沿った試験法では、アスパルテームに発がん性は認められていない<ref>BRYAN,GT; ARTIFICIAL SWEETENERS AND BLADDER CANCER: ASSESSMENT OF POTENTIAL URINARY BLADDER CARCINOGENICITY OF ASPARTAME AND IS DIKETOPIPERAZINE DERIVATIVE IN MICE; FOOD SCI. TECHNOL. 12(ASPARTAME):321-348, 1984</ref>ため、[[国際がん研究機関|IARC]]はアスパルテームを[[発癌性]]物質として区分していない。


一方、2007年のCBS NEWSの報道によると、Ramazzini財団委託の[[マウントサイナイ医科大学]]Morando Soffritti博士は、[[ラット]]に対して胎児の段階から死ぬまでの間FDAの一日許容消費量(約2g;ダイエットソーダで7.5缶/日)の二倍のアスパルテームを投与し続けた結果、癌の発病率の上昇が統計的に認められるという研究結果を出した<ref>[http://www.cbsnews.com/stories/2007/04/24/earlyshow/health/main2721195.shtml Aspartame's Safety Questioned Again]</ref>。ヨーロッパ食品安全審査局(EFSA)はこの報告について検討し、[[用量反応性]]が無いこと、対照群と死亡率に差が無いことなどを挙げ、データとして不適当で再考するための根拠としては不十分であると結論付けた。FDAはRamazzini財団の結果について、「われわれの結論(アスパルテーム承認)は百例を超える毒性試験あるいは臨床試験に基づいたものである」と述べている<ref>[http://web.archive.org/web/20060820113036/http://www.fda.gov/fdac/features/2006/406_sweeteners.html Artificial Sweeteners: No Calories ... Sweet!](2006年8月20日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。[[イタリア]]で7000人以上を対象に行われた2007年の症例対照研究では、アスパルテームを含む人工甘味料に発がん性は認められなかった<ref>S Gallus, Artificial sweeteners and cancer risk in a network of case–control studies; Annals of Oncology 2007 18(1):40-44; doi:10.1093/annonc/mdl346 </ref>。自身の見解と異なるこれらの結果について、Soffrittiらは言及していない<ref>Environ Health Perspect. doi:10.1289/ehp.10881</ref>。
一方、2007年のCBS NEWSの報道によると、Ramazzini財団委託の[[マウントサイナイ医科大学]]Morando Soffritti博士は、[[ラット]]に対して胎児の段階から死ぬまでの間FDAの一日許容消費量(約2g;ダイエットソーダで7.5缶/日)の二倍のアスパルテームを投与し続けた結果、癌の発病率の上昇が統計的に認められるという研究結果を出した<ref>[http://www.cbsnews.com/stories/2007/04/24/earlyshow/health/main2721195.shtml Aspartame's Safety Questioned Again]</ref>。ヨーロッパ食品安全審査局(EFSA)はこの報告について検討し、[[用量反応性]]が無いこと、対照群と死亡率に差が無いことなどを挙げ、データとして不適当で再考するための根拠としては不十分であると結論付けた。FDAはRamazzini財団の結果について、「われわれの結論(アスパルテーム承認)は百例を超える毒性試験あるいは臨床試験に基づいたものである」と述べている<ref>[http://web.archive.org/web/20060820113036/http://www.fda.gov/fdac/features/2006/406_sweeteners.html Artificial Sweeteners: No Calories ... Sweet!](2006年8月20日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。[[イタリア]]で7000人以上を対象に行われた2007年の症例対照研究では、アスパルテームを含む人工甘味料に発がん性は認められなかった<ref>S Gallus, Artificial sweeteners and cancer risk in a network of case–control studies; Annals of Oncology 2007 18(1):40-44; doi:10.1093/annonc/mdl346 </ref>。自身の見解と異なるこれらの結果について、Soffrittiらは言及していない<ref>Environ Health Perspect. doi:10.1289/ehp.10881</ref>。


== 他の人工甘味料との比較 ==
== 他の人工甘味料との比較 ==
62行目: 62行目:


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
*[http://web.archive.org/web/20060616055535/http://www.ajinomoto.co.jp/pal/pdf/factbook.pdf Perfect Guide パルスイート・カロリーゼロ] - 味の素; 安全性試験結果の参考文献あり。(2006年6月16日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])
*[http://web.archive.org/web/20060616055535/http://www.ajinomoto.co.jp/pal/pdf/factbook.pdf Perfect Guide パルスイート・カロリーゼロ] - 味の素; 安全性試験結果の参考文献あり。(2006年6月16日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])
*[http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/food-inf/data/additive-back/kanmi-02.html アスパルテーム(横浜市衛生研究所 - 食品衛生情報)]
*[http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/food-inf/data/additive-back/kanmi-02.html アスパルテーム(横浜市衛生研究所 - 食品衛生情報)]



2017年9月4日 (月) 20:47時点における版

アスパルテーム[1]
{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 22839-47-0
ChemSpider 118630
E番号 E951 (その他)
KEGG C11045
特性
化学式 C14H18N2O5
融点

246–247 °C

沸点

分解

への溶解度 10 g/L at 20 °C
危険性
NFPA 704
1
1
0
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

アスパルテームaspartame、アスパルテイム、略称 APM ; 発音 [ˈæspərtm] または [əˈspɑːrtm])とは、人工甘味料の一つである。ショ糖の100~200倍の甘味を持つ[2]

概要

1965年アメリカ合衆国サール薬品が、ガストリンの合成研究中に強い甘味を発見したことを発端として、その研究・開発が進められた。現在の製法を開発したのは日本味の素株式会社であり、日本、アメリカ、カナダ、およびヨーロッパ特許を有している[3]。日本およびアメリカでは1983年に使用が認可されている。

主にローカロリー、ノンカロリーの飲料、また食品に添加される。味は、後甘味でわずかに後引きがあり、砂糖に近く柔らか。砂糖アセスルファムカリウムソルビトールなど他の甘味料と合わせて使用されることがある。アスパルテームとアセスルファムカリウムを1:1で併用すると甘味度が40%強化され、甘味の立ち上がりが砂糖に近くなる。

日本では、旧厚生省が天然に存在しない添加物に分類している[4]。味の素の製品である「パルスイート®」などに含まれている。アスパルテームを使用した食品や添加物には「L-フェニルアラニン化合物である旨又はこれを含む旨の表示」義務がある。

日本生活協同組合連合会などは安全性への懸念などからアスパルテームを含む食品の取り扱いを行ってこなかったが、2002年3月に留意使用添加物から除外することに決め、取り扱い制限を解除した。

化学的性質

アミノ酸由来であり、フェニルアラニンのメチルエステルと、アスパラギン酸とがペプチド結合した構造を持つジペプチドのメチルエステルである。甘味を持つのはL型・ L-型のみで、それ以外は苦味がある。常温では白い結晶性の粉末である。pH安定性はやや不安定(pHや温度による)で、水溶性は1g/100ml(20℃)、浸透性は29osm/kg(1%水溶液)。CAS登録番号は[22839-47-0]。

安全性

米国食品医薬品局 (FDA) の審査では、経口摂取されたアスパルテームの大部分が分解も代謝も受けずに体外に排泄されるという結果が出ている。従って生理的熱量は極めて小さく、また調味料として普通に使う量では急性毒性や慢性毒性の問題が起こらないと解釈されている[5][6]

ヒトサルにおいてメタノールアスパラギン酸、およびフェニルアラニンに代謝され、吸収された後に体内たんぱく質に併合されたり二酸化炭素として排出されることが報告されている[7][8]。 メタノールは失明や致死などの人体への毒性が知られているが、果物や野菜や酒類にも含まれるなど、量によっては無視しうるものである。アスパルテームの代謝で摂取することになるメタノールはトマトや柑橘類のジュースから摂取する量よりも少なく、問題にならない量であることがわかっている[5][9]。 アスパラギン酸はアスパラガスに多く含まれるアミノ酸であり、また一部のスポーツドリンクなどに配合されている。フェニルアラニンは食品に含まれる必須アミノ酸である。FDAは「健常人ではアスパルテームにはアレルギー性はないが、フェニルケトン尿症患者では危険性があるかもしれない」という見解を示している[10]。これはフェニルアラニンが同患者に悪影響を与えるためである。

脳腫瘍との関連を指摘する報告はあったものの、再試験では否定されている[11]。また、科学的に有効性が確認されている発がん性試験ガイドラインに沿った試験法では、アスパルテームに発がん性は認められていない[12]ため、IARCはアスパルテームを発癌性物質として区分していない。

一方、2007年のCBS NEWSの報道によると、Ramazzini財団委託のマウントサイナイ医科大学Morando Soffritti博士は、ラットに対して胎児の段階から死ぬまでの間FDAの一日許容消費量(約2g;ダイエットソーダで7.5缶/日)の二倍のアスパルテームを投与し続けた結果、癌の発病率の上昇が統計的に認められるという研究結果を出した[13]。ヨーロッパ食品安全審査局(EFSA)はこの報告について検討し、用量反応性が無いこと、対照群と死亡率に差が無いことなどを挙げ、データとして不適当で再考するための根拠としては不十分であると結論付けた。FDAはRamazzini財団の結果について、「われわれの結論(アスパルテーム承認)は百例を超える毒性試験あるいは臨床試験に基づいたものである」と述べている[14]イタリアで7000人以上を対象に行われた2007年の症例対照研究では、アスパルテームを含む人工甘味料に発がん性は認められなかった[15]。自身の見解と異なるこれらの結果について、Soffrittiらは言及していない[16]

他の人工甘味料との比較

サッカリンナトリウムはアスパルテームに比べ、ショ糖に似た甘みを持つ。キシリトールなどの糖アルコールと同じ用途であるが、構造は全く異なる。なお、アスパルテームはエステルであり加水分解されるため、水分のある状態での長期安定性に劣る点が食品添加物としての欠点である。

アスパルテームよりもショ糖に近い味を持つとされるスクラロース(商品名:スプレンダ、Splenda)やアセスルファムカリウムも利用される。

脚注

  1. ^ Merck Index, 11th Edition, 861.
  2. ^ 「代用甘味料の利用法」『e-ヘルスネット』 厚生労働省、2010年10月31日閲覧。
  3. ^ 甘味料、発明対価1億8900万円 味の素特許訴訟判決 - 京都新聞、2004年2月24日。(2005年3月12日時点のアーカイブ
  4. ^ 厚生省「表5 食品添加物の年齢別摂取量」マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査 (平成12年12月14日 厚生省) (日本食品化学研究振興財団)
  5. ^ a b Henkel, John (1999). “Sugar Substitutes: Americans Opt for Sweetness and Lite”. FDA Consumer Magazine 33 (6): 12–6. PMID 10628311. オリジナルのJanuary 2, 2007時点におけるアーカイブ。. http://replay.waybackmachine.org/20070102024642/http://www.fda.gov/fdac/features/1999/699_sugar.html. 
  6. ^ Magnuson, B. A.; Burdock, G. A.; Doull, J.; Kroes, R. M.; Marsh, G. M.; Pariza, M. W.; Spencer, P. S.; Waddell, W. J. et al. (2007). “Aspartame: A Safety Evaluation Based on Current Use Levels, Regulations, and Toxicological and Epidemiological Studies”. Critical Reviews in Toxicology 37 (8): 629–727. doi:10.1080/10408440701516184. PMID 17828671. 
  7. ^ Opperman JA et al; J NUTR 103 (10): 1460-6 (1973)
  8. ^ Trefz F et al; Human Genetics 93 (4): 369-74 (1994)
  9. ^ Butchko, H; Stargel, WW; Comer, CP; Mayhew, DA; Benninger, C; Blackburn, GL; De Sonneville, LM; Geha, RS et al. (2002). “Aspartame: Review of Safety”. Regulatory Toxicology and Pharmacology 35 (2 Pt 2): S1–93. doi:10.1006/rtph.2002.1542. PMID 12180494. 
  10. ^ FOOD ALLERGIES RARE BUT RISKY(1999年1月17日時点のアーカイブ
  11. ^ FDA Statement on Aspartame, November 18, 1996.(1997年5月5日時点のアーカイブ); —FDAによるアスパルテームと腫瘍に関する声明では、'70年代の脳腫瘍と関連を指摘した報告についてはPBOIのラットでの再試験では再現しなかったこと、それとともに日本での追加試験でも再現しなかったことを踏まえて承認したと説明している。またアスパルテームが上市されてからアメリカにおける脳腫瘍の疫学調査に有意な変化が見られないことも説明している。
  12. ^ BRYAN,GT; ARTIFICIAL SWEETENERS AND BLADDER CANCER: ASSESSMENT OF POTENTIAL URINARY BLADDER CARCINOGENICITY OF ASPARTAME AND IS DIKETOPIPERAZINE DERIVATIVE IN MICE; FOOD SCI. TECHNOL. 12(ASPARTAME):321-348, 1984
  13. ^ Aspartame's Safety Questioned Again
  14. ^ Artificial Sweeteners: No Calories ... Sweet!(2006年8月20日時点のアーカイブ
  15. ^ S Gallus, Artificial sweeteners and cancer risk in a network of case–control studies; Annals of Oncology 2007 18(1):40-44; doi:10.1093/annonc/mdl346
  16. ^ Environ Health Perspect. doi:10.1289/ehp.10881

参考文献

関連項目