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キシリトール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
キシリトール[1]
識別情報
CAS登録番号 87-99-0
E番号 E967 (その他)
特性
化学式 C5H12O5
モル質量 152.15 g mol−1
密度 1.52 g/cm3
融点

92-96 ℃

沸点

216 ℃

関連する物質
関連するアルカン ペンタン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
キシリトールの結晶
フィッシャー投影式

キシリトール (xylitol) は化学式 C5H12O5 で表される、キシロースから合成される糖アルコールの一種。メソ化合物である。天然の代用甘味料として知られ、最初はカバノキから発見されギリシア語 Ξυλον(Xylon、木)から命名された。北欧諸国で多用されている[要出典]。旧厚生省は天然にも存在する添加物に分類している[2]

冷涼感があり、後味の切れが早い。スクロースと同程度の甘みを持ち、エネルギーが4割と低い。分子量は152.15である。また、加熱による甘みの変化がないため、加工にも適している。

医療への応用

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う蝕
キシリトールは口腔内の細菌による酸の産生がほとんどなく、またミュータンス菌Streptococcus mutans)の一部の代謝を阻害(無益回路の生成による)する効果があることから[注釈 1]、非う蝕性甘味料として知られる。1976年にアリエ・シェイニンらがフィンランドで行った実験をはじめとして、う蝕予防効果があることが実証されている。しかし、キシリトールの再石灰化促進作用については証明されておらず、非う蝕原性であるが抗う蝕性と言うことはできない。現状での結論として、キシリトール配合のガムなどを適切に利用することでう蝕の予防に一定の効果が認められるが、う蝕が治るということはないとされている(ガムをかむことにより分泌される唾液による口内の清浄化効果、pHが低下しない状態の維持とこれによる脱灰防止と歯の再石灰化促進効果はあるものの、それは「キシリトールそのもの」とは関係がない)。
口腔衛生
口腔内の細菌による酸の産生がほとんどなく、また清涼効果や湿潤効果、味による唾液分泌効果、洗浄効果があるので用いられる。
糖尿病
キシリトールは上記の通り、スクロースに比べカロリーが4割低い。この他、スクロースより吸収速度が遅いため、血糖値の急上昇を引き起こさない[3]
骨粗鬆症
キシリトールは骨粗鬆症の治療に役立つ可能性が指摘されている。フィンランドの研究者グループは、研究のネズミで骨の弱体化が防がれ、骨密度が改善されたことを発見した[4][5]
急性中耳炎
キシリトールのガムが急性中耳炎を防ぐのに役立つことを示した研究報告がある[6]

健康上の問題

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キシリトールは、他の糖アルコールの大部分と同様、弱い下剤の働きをする。毒性は無い。キシリトールの摂取回数の増加に伴う下痢の発生頻度の増加は見られず、う蝕予防効果を期待するレベルのキシリトールガム摂取は胃腸状態にほとんど影響しないとする実験結果もある[7]

主にガムなどでキシリトール配合による虫歯予防を謳っている製品があるが、キシリトール以外に砂糖など、う蝕性の高い甘味料が配合されている場合、虫歯予防本来の効果は期待できない。キシリトールの摂取を国を挙げて推進している国、フィンランド歯科医師会のキシリトール製品推薦条件は以下である。

  • キシリトールが甘味料中50%以上含まれていること
  • キシリトール以外の甘味料は、低酸産生のものを使用していること
  • 製品にはクエン酸のような、酸触症発生の危機のある酸を含んではならない
  • 口腔内での酸産生試験を行い、非酸産生を確認すること

健康にリスクがあるかもしれないというような研究の発表が報じられている[8]

イヌへの影響

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イヌに対してはインスリンの分泌を促進し、長期間かつ多量に与えた場合には肝臓へのグリコーゲンの蓄積が起こるが、単回投与における毒性は極めて低いとされる[9]。獣医師による研究ではイヌが摂取した場合、多量のインスリンを放出し肝機能に影響が出るなど、場合によっては生命に危険が及ぶとの報告もある[10][11][12][13]。ただし、肝臓障害の原因はまだ明らかではない[14]

食事の有無や咀嚼の有無などに左右されるが、100mg/kg以上のキシリトール摂取によって、過剰にインスリンが分泌され、血糖値が低下し、嘔吐や沈鬱、衰弱などの臨床症状が現れる[14]

脚注

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注釈

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  1. ^ ただし、この効果に抵抗を示す株もある。キシリトールを長期に渡り用いている場合、口内のミュータンス菌はキシリトールによる無益回路の生成が発生しないキシリトール非感受性の株が多くなってくる。(ただし、この場合でも、現状、勢いの非常に強いS.mutansの悪性株の発見はキシリトール感受性の株に偏っているので、それらが存在しない(あるいは存在しにくい)事による恩恵はあると言える。)

出典

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  1. ^ MSDS for xylitol
  2. ^ 厚生省生活衛生局食品化学課 (2000年12月14日). “表5 食品添加物の年齢別摂取量”. マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査. 日本食品化学研究振興財団. 2008年1月11日閲覧。[要検証]
  3. ^ 花崎憲子,大喜多祥子,倉賀野妙子,和田淑子『血糖コントロールに配慮した嗜好品へのキシリトールの利用』日本調理科学会、2007年。doi:10.11402/ajscs.19.0.139.0 
  4. ^ Mattila, P. T.; Svanberg, M. J.; Jamsa, T.; Knuuttila, M. L. (2002). "Improved bone biomechanical properties in xylitol-fed aged rats". Metabolism 51(1): 92–96. オンライン版アブストラクト
  5. ^ Mattila, P. T. (1999), Dietary xylitol in the prevention of experimental osteoporosis: Beneficial effects on bone resorption, structure and biomechanics, Institute of Dentistry, University of Oulu, http://jultika.oulu.fi/files/isbn951425158X.pdf 2023年9月16日閲覧。 
  6. ^ Uhari, M. et al. (1998). "A novel use of xylitol sugar in preventing acute otitis media". Pediatrics 102(4): 879–974.
  7. ^ 仲井雪絵,進賀知加子,守谷恭子,加持真理,瀧村(米田)美穂枝,山中香織,森裕佳子, 紀瑩,竹本弘枝,下野勉『妊娠期からのキシリトール摂取が齲蝕原性菌の母子伝播および齲蝕発症に及ぼす影響―第3報キシリトールの長期経口摂取は下痢の発現を誘発するのか?―』一般財団法人日本小児歯科学会、2007年。doi:10.11411/jspd1963.45.2_335 
  8. ^ キシリトール多量摂取、心臓発作・脳卒中のリスク2倍に 新研究 (CNN, 2024年6月7日
  9. ^ 食品添加物の指定、使用基準の改正に関する食品衛生調査会、毒性部会及び添加物部会合同部会報告について 別添1 キシリトールの指定について”. 厚生労働省行政情報 食品衛生調査会関係資料. 日本食品化学研究振興財団 (1996年12月3日). 2006年10月3日閲覧。 “ビーグル犬を用いた...104週間の反復投与試験において、...肝比重量の増加、血清酵素値の上昇及び門脈周辺の肝細胞質の淡明化は、高濃度のキシリトール投与により、インスリン分泌が促進され、グリコーゲンが生成し、それが肝臓に蓄積したことなどによるものであると考えられる。...単回投与試験における毒性も極めて低い。
  10. ^ Eric K. Dunayer, MS, VMD; Sharon M. Gwaltney-Brant, DVM, PhD, DABVT. (2006).: "Acute hepatic failure and coagulopathy associated with xylitol ingestion in eight dogs": オンライン版アブストラクト, 2008年6月15日閲覧.
  11. ^ 須崎恭彦 (2006年11月9日). “キシリトールは犬に危険? その2”. 獣医師須崎のペットに手作り食. 2015年12月8日閲覧。 “論文 Acute hepatic failure and coagulopathy associated with xylitol ingestion in eight dogs Eric K. Dunayer, MS, VMD; Sharon M. Gwaltney-Brant, DVM, PhD, DABVT ...には、犬の体重1kg当たり1.4-2.0gのキシリトールを摂取して肝障害になり死亡した例が紹介されております。
  12. ^ “甘味料キシリトール、犬には危険=米報告”. ロイター (Yahoo!ニュース). (2006年9月30日). オリジナルの2006年10月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20061011212144/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060930-00000403-reu-ent 2015年12月8日閲覧。 
  13. ^ “ペットに人間の食物× かわいさ余って… 死に至ることも”. 読売新聞 東京朝刊: p. 17. (2007年1月16日). "...犬や猫に人と同じ食べ物...を与える愛好家が多く、獣医師らが注意を呼び掛けている。...安易に与えると命取りになる可能性もあるという。...犬であれば、タマネギやチョコレート(カカオ)、ブドウ、キシリトール入りのガムなどだ。" 
  14. ^ a b 左向敏紀,大島誠之助『禁忌食(その3)—犬のキシリトール中毒』日本ペット栄養学会、2013年。doi:10.11266/jpan.16.30https://doi.org/10.11266/jpan.16.302020年3月27日閲覧 

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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