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「ゼフュロス」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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スライドのみを持ちバルブを持たないトランペット(=en:Slide trumpet)と混同されかねない記述であったため、スライドとピストンバルブの両方を持つ楽器であることがわかるように少し修正。また、この種の楽器として史上初であるかどうかは疑わしいため、Template:要検証範囲を設定
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'''ゼフュロス'''('''Zephyros''')は、[[日本]]の[[トランペット]]奏者である[[曽我部清典]]の発案によって作られたスライド付き[[トランペット]]。[[1993年]]に初めて実用化された<ref name="jade">[http://www.jade.dti.ne.jp/~ebakos/zephyros/zephyros-J.html 曽我部清典公式サイト「ゼフュロスII誕生!」]</ref>。
'''ゼフュロス'''('''Zephyros''')は、[[日本]]の[[トランペット]]奏者である[[曽我部清典]]の発案によって作られたスライドとピストンバルブを併せ持つ[[トランペット]]。[[1993年]]に初めて実用化された<ref name="jade">[http://www.jade.dti.ne.jp/~ebakos/zephyros/zephyros-J.html 曽我部清典公式サイト「ゼフュロスII誕生!」]</ref>。


==概要==
==概要==
ライド付きトランペット構想は多くのトランペッターの概念にあったものの、トランペットの限られた管の長さの中でスライド部を確保するという技術的困難が伴ったため、長年実現されなかった。しかし、常に新しい音楽表現を追究してきた曽我部にとってC管のスライド付きトランペットの開発は悲願であり、必要不可欠なものであった<ref name="jade"></ref>。
通常の(ピトンバルブを持つ)トランペットにスライドを取り付ける構想は多くのトランペッターの概念にあったものの、トランペットの限られた管の長さの中でスライド部を確保するという技術的困難が伴った{{要検証範囲|ため、長年実現されなかった|date=2018年4月|title=関連項目に挙げた英語版Wikipediaの"Firebird"の記事によると、Firebirdは1983年に開発されており、また20世紀初頭に同様の楽器をC.G.コーン社が作っていたとの記述がある。よって「長年実現されなかった」という記述は不正確だと思われる。}}。しかし、常に新しい音楽表現を追究してきた曽我部にとってC管のスライド付きトランペットの開発は悲願であり、必要不可欠なものであった<ref name="jade" />。


1993年、曽我部は[[名古屋市|名古屋]]のバルドン楽器の竹山に製作を依頼。[[7月]]に試作器が出来上がるが、ベルなどに問題が発生したため、[[ヤマハ]]の管楽器アトリエに改良を依頼し、[[ピッコロトランペット]]のベルなどを取り付けたり、スライド部の改良を施したりするが、B♭管用にしかならない。このため、ネロ楽器が引き続き製作を引き受け、音色を豊かに幅広くさせる目的でのベルの焼き鈍しと[[銀]][[メッキ]]を施したC管スライド付きトランペットはついに完成する。これが初代の'''ゼフュロス'''である<ref name="jade"></ref>。
1993年、曽我部は[[名古屋市|名古屋]]のバルドン楽器の竹山に製作を依頼。[[7月]]に試作器が出来上がるが、ベルなどに問題が発生したため、[[ヤマハ]]の管楽器アトリエに改良を依頼し、[[ピッコロトランペット]]のベルなどを取り付けたり、スライド部の改良を施したりするが、B♭管用にしかならない。このため、ネロ楽器が引き続き製作を引き受け、音色を豊かに幅広くさせる目的でのベルの焼き鈍しと[[銀]][[メッキ]]を施したC管スライド付きトランペットはついに完成する。これが初代の'''ゼフュロス'''である<ref name="jade" />。


その後、改良が重ねられ、ピストンにヤマハで新しく開発されたXENOIIを使用した'''ゼフュロスII'''(ヤマハのE♭管のベル使用)をはじめ、'''ゼフュロスIII'''(B♭管 グローバル社製)が次々に開発され、ゼフュロスIVではベル部分を長く取ったため、音色と吹奏感に飛躍的な改善がみられた<ref name="jade"></ref>。
その後、改良が重ねられ、ピストンにヤマハで新しく開発されたXENOIIを使用した'''ゼフュロスII'''(ヤマハのE♭管のベル使用)をはじめ、'''ゼフュロスIII'''(B♭管 グローバル社製)が次々に開発され、ゼフュロスIVではベル部分を長く取ったため、音色と吹奏感に飛躍的な改善がみられた<ref name="jade" />。


=== ゼフュロスⅡの特徴 ===
=== ゼフュロスⅡの特徴 ===
通常のC管よりやや鋭い音が特徴。スライド部の長さを確保するため、管の細い部分が多く、大きなベルの取り付けができなかった。その後、E♭トランペットのベルを焼き鈍し、柔らかくすることで音色に幅を持たせることに成功、低音域にも対応できるよう改良された。スライド付きでグリッサンドが自由に使え、トロンボーンで使えない音程にもピストンとの併用で対応できる。グリッサンドの幅はピストンを押さない状態で増4度、ピストンを全部押した状態で約長3度<ref name="jade"></ref>。
通常のC管よりやや鋭い音が特徴。スライド部の長さを確保するため、管の細い部分が多く、大きなベルの取り付けができなかった。その後、E♭トランペットのベルを焼き鈍し、柔らかくすることで音色に幅を持たせることに成功、低音域にも対応できるよう改良された。スライド付きでグリッサンドが自由に使え、トロンボーンで使えない音程にもピストンとの併用で対応できる。グリッサンドの幅はピストンを押さない状態で増4度、ピストンを全部押した状態で約長3度<ref name="jade" />。


=== ゼフュロスⅣの特徴 ===
=== ゼフュロスⅣの特徴 ===

2018年4月19日 (木) 22:07時点における版

ゼフュロスZephyros)は、日本トランペット奏者である曽我部清典の発案によって作られたスライドとピストンバルブを併せ持つトランペット1993年に初めて実用化された[1]

概要

通常の(ピストンバルブを持つ)トランペットにスライドを取り付ける構想は多くのトランペッターの概念にあったものの、トランペットの限られた管の長さの中でスライド部を確保するという技術的困難が伴ったため、長年実現されなかった[要検証]。しかし、常に新しい音楽表現を追究してきた曽我部にとってC管のスライド付きトランペットの開発は悲願であり、必要不可欠なものであった[1]

1993年、曽我部は名古屋のバルドン楽器の竹山に製作を依頼。7月に試作器が出来上がるが、ベルなどに問題が発生したため、ヤマハの管楽器アトリエに改良を依頼し、ピッコロトランペットのベルなどを取り付けたり、スライド部の改良を施したりするが、B♭管用にしかならない。このため、ネロ楽器が引き続き製作を引き受け、音色を豊かに幅広くさせる目的でのベルの焼き鈍しとメッキを施したC管スライド付きトランペットはついに完成する。これが初代のゼフュロスである[1]

その後、改良が重ねられ、ピストンにヤマハで新しく開発されたXENOIIを使用したゼフュロスII(ヤマハのE♭管のベル使用)をはじめ、ゼフュロスIII(B♭管 グローバル社製)が次々に開発され、ゼフュロスIVではベル部分を長く取ったため、音色と吹奏感に飛躍的な改善がみられた[1]

ゼフュロスⅡの特徴

通常のC管よりやや鋭い音が特徴。スライド部の長さを確保するため、管の細い部分が多く、大きなベルの取り付けができなかった。その後、E♭トランペットのベルを焼き鈍し、柔らかくすることで音色に幅を持たせることに成功、低音域にも対応できるよう改良された。スライド付きでグリッサンドが自由に使え、トロンボーンで使えない音程にもピストンとの併用で対応できる。グリッサンドの幅はピストンを押さない状態で増4度、ピストンを全部押した状態で約長3度[1]

ゼフュロスⅣの特徴

ベル部分を長く取ることで音色と吹奏感を飛躍的に改善させる。艶消しの表面には梨地仕上げの工程でピーニングという加工硬化作用が施されることで金属が鍛えられ、音に悪影響を及ぼす残留応力の除去にも成功した[2]

ゼフュロスのための作品

この画期的なスライド付きトランペットは新たな音楽表現を切り開く可能性を秘めていたため、多くの先進的な作曲家の創造力を刺激し、短期間に多くの作品が生まれた。

(初演順・日付は初演日)

  • 伊東乾 ミカ(サッフォーの詩による愛と死の歌)1993.11.22 
  • 伊東乾 フェスティーナレンテ(デュオバージョン)1994.5.15 
  • 伊東乾 フェスティーナ・レンテ(協奏曲)1994.9.16 
  • 野田雅巳 ペシャワールの谺 1994.12.23 
  • 中川俊郎 クィド・スム・ミゼール(哀れなる我何を)1995.10.26 
  • 松平頼則 源氏物語(モノオペラ)1995.10.28 
  • 川島素晴 Πολυπροσωποζ III 1995.12.21 
  • 土屋雄 モノディ 1995.12.21 
  • 中川俊郎 唇・舌・歯・喉のためのエチュード 1996.1.5
  • 中村滋延 KAGAMI 1996.1.5
  • 中川俊郎 ファンファール・ストリエ 1996.8.3
  • 山口淳 化身V 1996.10.15
  • 松平頼暁 インタールード・フォー・レクイエム 1996.12.6
  • 久田典子 コンプレッション・ポテンツィアータ 1996.12.6
  • 川島素晴 Πολυπροσωποζ II 1997.4.27 
  • 田中吉史 eco lontanissima V 1997.5.10 
  • 曽我部清典 Nach allen Seiten F liegen..... 1997.5.10 
  • 松岡貴史 忘れられた時 1998.1.17 
  • 柴山拓郎 Duo Duet 1999.6.4
  • 川島素晴 変奏曲、2つの間奏と終曲を伴う 1999.6.4 
  • 柴山拓郎 Duo Duet(solo version) 1999.9.26 
  • 土屋雄 A study of Resonance 1999.9.26 
  • 松岡みち子 天水〜(ゼフュロス・鉦・キーボードのための) 2000.2.20  
  • 三輪眞弘 メガホンM 2000.7.14 
  • 後藤英 タン・トレッセ2 2001.2.10
  • 川島素晴 ゑすとslide物語 2001.3.25 
  • マウリツィオ・ピサーティ 雪女 2001.10.22 
  • 後藤國彦 雪中の狩人 2002.12.27 
  • 平部やよい 融ける石 2003.8.25 

[1] その他、ゼフュロスのために編曲された曲として、バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」(鈴木隆太・曽我部清典編)、宇多田ヒカルFirst Love」(原田敬子編)など約6曲がある。

脚注

  1. ^ a b c d e f 曽我部清典公式サイト「ゼフュロスII誕生!」
  2. ^ 曽我部清典公式サイト「Zephyros IV誕生!!」

関連項目

外部リンク