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「山口連続殺人放火事件」の版間の差分

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焼失した女性A宅の隣家には、「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者 かつを」と白い紙に毛筆のようなもので[[川柳]]が記された張り紙があり{{Efn|事件の数年前に被害者K宅の風呂で放火とみられる不審火があり、その数日後から張られていた<ref name="tsukebi2"/><ref name="sankei20130724">[https://web.archive.org/web/20130724211109/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130724/crm13072408440003-n1.htm 【山口連続殺人】「悪口言われ孤立」 不明男、警察に2年前相談+(1/2ページ) - MSN産経ニュース]</ref>。張り紙の「かつを」は、Hの氏名ではなく、取調べに対して「[[相田みつを]]をひねったもので、特に意味はない」と自供しているという}}、県警は7月22日午後、[[殺人罪 (日本)|殺人]]と[[非現住建造物等放火罪|非現住建造物等放火]]の疑いでこの家を家宅捜索するとともに、姿を消した当時63歳の住民の男Hを[[重要参考人]]として行方を捜索した。また事態の悪化を防ぐために、近隣住民5世帯9人に対して翌日朝まで現場近くの郷公民館に避難するよう呼びかけた<ref>{{Cite news|title=山中に範囲広げ捜索 住民は施設で一夜 山口5人殺害|newspaper=朝日新聞|date=2013-07-23|url=http://www.asahi.com/national/update/0723/SEB201307230003.html |archiveurl=https://web.archive.org/web/20130724024458/http://www.asahi.com/national/update/0723/SEB201307230003.html |archivedate=2013-07-24}}</ref>。
焼失した女性A宅の隣家には、「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者 かつを」と白い紙に毛筆のようなもので[[川柳]]が記された張り紙があり{{Efn|事件の数年前に被害者K宅の風呂で放火とみられる不審火があり、その数日後から張られていた<ref name="tsukebi2"/><ref name="sankei20130724">[https://web.archive.org/web/20130724211109/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130724/crm13072408440003-n1.htm 【山口連続殺人】「悪口言われ孤立」 不明男、警察に2年前相談+(1/2ページ) - MSN産経ニュース]</ref>。張り紙の「かつを」は、Hの氏名ではなく、取調べに対して「[[相田みつを]]をひねったもので、特に意味はない」と自供しているという}}、県警は7月22日午後、[[殺人罪 (日本)|殺人]]と[[非現住建造物等放火罪|非現住建造物等放火]]の疑いでこの家を家宅捜索するとともに、姿を消した当時63歳の住民の男Hを[[重要参考人]]として行方を捜索した。また事態の悪化を防ぐために、近隣住民5世帯9人に対して翌日朝まで現場近くの郷公民館に避難するよう呼びかけた<ref>{{Cite news|title=山中に範囲広げ捜索 住民は施設で一夜 山口5人殺害|newspaper=朝日新聞|date=2013-07-23|url=http://www.asahi.com/national/update/0723/SEB201307230003.html |archiveurl=https://web.archive.org/web/20130724024458/http://www.asahi.com/national/update/0723/SEB201307230003.html |archivedate=2013-07-24}}</ref>。


7月24日には、周辺住民の心のケアと健康管理のため、現地に[[保健師]]が派遣され<ref name="cn727top"/>、規制線を張り、報道人や記者が公民館へ避難した住民と接触するのを遮断した<ref name="gendai-tokubetsu1">[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36870 特別ルポ 「連続放火殺人」の集落で見たものは…山口・八つ墓村あれから起きたこと] 週刊現代 2013年9月2日 </ref>{{Refnest|name="tsukebi4-kiseisen"|事件の後は、うちの前から河村さんちのシモまで、黄色い規制線が貼られていまして記者も入れなかったんですよ。だから私たちは取材を受けていないのに、テレビでは近所の人の座談会というのがあって……私も後から知ったんだけど、全然知らない人たちが、Hさんの草刈機を近所の人が燃やしたらしいとかそういう話をしていて、私は本当に、テレビに出る『近所の人』というタレントがいるのかと思った。<ref name="tsukebi4>[https://note.mu/tk84yuki/n/n8dbf7f16be07 ルポ「つけびの村」 04/06]</ref>}}。
7月24日には、周辺住民の心のケアと健康管理のため、現地に[[保健師]]が派遣され<ref name="cn727top"/>、規制線を張り、報道人や記者が公民館へ避難した住民と接触するのを遮断した<ref name="gendai-tokubetsu1">[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36870 特別ルポ 「連続放火殺人」の集落で見たものは…山口・八つ墓村あれから起きたこと] 週刊現代 2013年9月2日 </ref>{{Refnest|name="tsukebi4-kiseisen"|事件の後は、うちの前から河村さんちのシモまで、黄色い規制線が貼られていまして記者も入れなかったんですよ。だから私たちは取材を受けていないのに、テレビでは近所の人の座談会というのがあって……私も後から知ったんだけど、全然知らない人たちが、Hさんの草刈機を近所の人が燃やしたらしいとかそういう話をしていて、私は本当に、テレビに出る『近所の人』というタレントがいるのかと思った。<ref name="tsukebi4">[https://note.mu/tk84yuki/n/n8dbf7f16be07 ルポ「つけびの村」 04/06]</ref>}}。
25日には事件現場付近の山中で、[[被疑者|容疑者]]の[[携帯電話]]や衣類などが見つかり、翌7月26日朝から170人体勢で捜索を行った<ref name="cn727top"/>。
25日には事件現場付近の山中で、[[被疑者|容疑者]]の[[携帯電話]]や衣類などが見つかり、翌7月26日朝から170人体勢で捜索を行った<ref name="cn727top"/>。
=== 逮捕 ===
=== 逮捕 ===
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妄想性障害のHは事件以前以後にさまざまな「被害」の主張を行い、それを真に受けて発言する関係者もいた{{Refnest|事件当時取材に答えていた〝遠くの村人〟たちによる、郷集落でのいじめの話は、Hが以前にそうした被害を誰かに話したものが広まっているかのような印象を受けた。犬について文句を言った話は、郷の誰からも聞けなかった。いじめた相手にいじめの話を聞かせてくれと言ってもなかなか話してくれない。そういうことかと思っていたが「あの人がいじめていた」という耳打ちすらされないのである<ref name="tsukebi2"/>}}{{Efn|Hは集落内では狂暴な振る舞いをする一方、集落の外では好人物として受けとられるような二面性があった<ref name="aera-jekyll-hyde">[https://dot.asahi.com/wa/2013073100019.html?page=1 山口連続殺人 容疑者は「ジキルとハイド」だった? 〈週刊朝日〉|AERA dot.]</ref><ref name="tsukebi2"/>。}}。また、事件直後に大量のマスメディアが集落に押しかけたが、規制線が張られ、住民と接触することができなかったために、Hの主張や噂の真偽を直接住民に確認することはできなかった{{Refnest|道の反対側には残りの5家族が暮らしているが、事件から1ヵ月経った今でも規制は解かれていない。地区の真ん中を走る道路の端から端まで規制線で遮られていて、地域住民と警察関係者、親戚、知人しか中に入ることができない。<ref name="gendai-tokubetsu1"/>}}<ref name="tsukebi4-kiseisen"/>{{Efn|name="helper"|当時、マスコミの取材に応えて、「Hが介護に熱心だった」、Sの刺傷事件について「ちょっと酒を飲んだ席での話ですから、ちょっと(鋭利なものが)当たったぐらいじゃないか」と笑顔を交えて語ったのは当該地区の住民でなくHの父Tの世話をしていた集落外の元[[ホームヘルパー]](当時 65歳の女性)である<ref>[https://web.archive.org/web/20130802044615/http://www.news24.jp/articles/2013/07/29/07233311.html H容疑者の飼い犬、身柄確保と同時に死ぬ | 日テレNEWS24]</ref>。}}。そのような状況下で事実関係を把握しないまま噂や妄想が真実であったかのような報道が行われ、憶測により様々な発言が飛び交い{{Efn|典型が、板垣英憲<ref>[https://blogos.com/article/67290/ 「心根優しい」親孝行なH容疑者は、「鬼の住処」山口県周南市金峰の限界集落に帰郷すべきでなかった - BLOGOS]</ref>や香山リカ<ref>[https://www.news-postseven.com/archives/20130804_203514.html 山口殺人事件に香山リカ「Uターンしたら仲間に入るの難しい」|NEWSポストセブン]</ref>。他に、山口県出身ということで意見した[[城繁幸]]の「濃密な人間関係の中にいやでも引きずり出されたものと思われる。ひょっとすると、そういう関係で何らかのトラブルがあったのかもしれない」「[[無縁社会]]のリスクが孤独死だとすれば、“[[村社会|有縁社会]]”のリスクは、こうした人間関係のトラブルと言える」など<ref>{{Cite news | author = [[城繁幸]] |url=http://www.j-cast.com/kaisha/2013/07/24180040.html?p=all | title = 周南市連続殺人事件の背景について出身者はこう見る | newspaper = J-CASTニュース | date = 2013-07-24 | accessdate = 2016-10-08}}</ref>。}}、集落住民のHへのいやがらせや「[[村八分]]が原因になった」といった事実に基づかない誹謗中傷がなされた{{Refnest|Hは起訴前と起訴後に各1回の精神鑑定を受け、2度目の鑑定では事件発生当時に妄想性障害に陥っていたと結論づけられている。判決はこの鑑定結果も踏まえ、集落の住民たちによる「嫌がらせ」はHの妄想だったと認めたが、妥当な判断だ。インターネット上で巻き起こったHへの同情論は、まぎれもなく被害者や現場住民に対する「二次被害」だろう<ref name="tocana">{{Cite news|title=村八分の妄想に陥った凶悪犯 ― 山口5人連続殺人・Hの"本当の孤独"|newspaper=TOCANA|date=2015-10-22|url=https://tocana.jp/2015/10/post_7674_entry.html}}</ref>}}{{Refnest|郷集落で暮らす住民の一人が重い口を開いた。「メディアは、よってたかって彼をいじめたと報道していますが、誰もいじめていませんよ。溶け込まなかった彼の弱さもありますし、被害妄想だと思う」<ref name="gendai-tokubetsu3">[https://gendai.ismedia.jp/articles/-/36870?page=3 特別ルポ 「連続放火殺人」の集落で見たものは…山口・八つ墓村あれから起きたこと(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(3/6)]</ref>}}。特にインターネットでは「村社会みたいな閉鎖的な環境」が原因、「集落ぐるみのいじめがなければ、加害者は殺人を犯すような人物ではなかった」といった集落への[[ヘイトスピーチ]]やHへ同情する擁護論が広がった<ref>[https://web.archive.org/web/20130802012137/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130802/crm13080209440003-n1.htm 【ネットろんだん】山口5人殺害 限界集落の容疑者に“奇妙な同情”+(1/3ページ) - MSN産経ニュース]</ref>。
妄想性障害のHは事件以前以後にさまざまな「被害」の主張を行い、それを真に受けて発言する関係者もいた{{Refnest|事件当時取材に答えていた〝遠くの村人〟たちによる、郷集落でのいじめの話は、Hが以前にそうした被害を誰かに話したものが広まっているかのような印象を受けた。犬について文句を言った話は、郷の誰からも聞けなかった。いじめた相手にいじめの話を聞かせてくれと言ってもなかなか話してくれない。そういうことかと思っていたが「あの人がいじめていた」という耳打ちすらされないのである<ref name="tsukebi2"/>}}{{Efn|Hは集落内では狂暴な振る舞いをする一方、集落の外では好人物として受けとられるような二面性があった<ref name="aera-jekyll-hyde">[https://dot.asahi.com/wa/2013073100019.html?page=1 山口連続殺人 容疑者は「ジキルとハイド」だった? 〈週刊朝日〉|AERA dot.]</ref><ref name="tsukebi2"/>。}}。また、事件直後に大量のマスメディアが集落に押しかけたが、規制線が張られ、住民と接触することができなかったために、Hの主張や噂の真偽を直接住民に確認することはできなかった{{Refnest|道の反対側には残りの5家族が暮らしているが、事件から1ヵ月経った今でも規制は解かれていない。地区の真ん中を走る道路の端から端まで規制線で遮られていて、地域住民と警察関係者、親戚、知人しか中に入ることができない。<ref name="gendai-tokubetsu1"/>}}<ref name="tsukebi4-kiseisen"/>{{Efn|name="helper"|当時、マスコミの取材に応えて、「Hが介護に熱心だった」、Sの刺傷事件について「ちょっと酒を飲んだ席での話ですから、ちょっと(鋭利なものが)当たったぐらいじゃないか」と笑顔を交えて語ったのは当該地区の住民でなくHの父Tの世話をしていた集落外の元[[ホームヘルパー]](当時 65歳の女性)である<ref>[https://web.archive.org/web/20130802044615/http://www.news24.jp/articles/2013/07/29/07233311.html H容疑者の飼い犬、身柄確保と同時に死ぬ | 日テレNEWS24]</ref>。}}。そのような状況下で事実関係を把握しないまま噂や妄想が真実であったかのような報道が行われ、憶測により様々な発言が飛び交い{{Efn|典型が、板垣英憲<ref>[https://blogos.com/article/67290/ 「心根優しい」親孝行なH容疑者は、「鬼の住処」山口県周南市金峰の限界集落に帰郷すべきでなかった - BLOGOS]</ref>や香山リカ<ref>[https://www.news-postseven.com/archives/20130804_203514.html 山口殺人事件に香山リカ「Uターンしたら仲間に入るの難しい」|NEWSポストセブン]</ref>。他に、山口県出身ということで意見した[[城繁幸]]の「濃密な人間関係の中にいやでも引きずり出されたものと思われる。ひょっとすると、そういう関係で何らかのトラブルがあったのかもしれない」「[[無縁社会]]のリスクが孤独死だとすれば、“[[村社会|有縁社会]]”のリスクは、こうした人間関係のトラブルと言える」など<ref>{{Cite news | author = [[城繁幸]] |url=http://www.j-cast.com/kaisha/2013/07/24180040.html?p=all | title = 周南市連続殺人事件の背景について出身者はこう見る | newspaper = J-CASTニュース | date = 2013-07-24 | accessdate = 2016-10-08}}</ref>。}}、集落住民のHへのいやがらせや「[[村八分]]が原因になった」といった事実に基づかない誹謗中傷がなされた{{Refnest|Hは起訴前と起訴後に各1回の精神鑑定を受け、2度目の鑑定では事件発生当時に妄想性障害に陥っていたと結論づけられている。判決はこの鑑定結果も踏まえ、集落の住民たちによる「嫌がらせ」はHの妄想だったと認めたが、妥当な判断だ。インターネット上で巻き起こったHへの同情論は、まぎれもなく被害者や現場住民に対する「二次被害」だろう<ref name="tocana">{{Cite news|title=村八分の妄想に陥った凶悪犯 ― 山口5人連続殺人・Hの"本当の孤独"|newspaper=TOCANA|date=2015-10-22|url=https://tocana.jp/2015/10/post_7674_entry.html}}</ref>}}{{Refnest|郷集落で暮らす住民の一人が重い口を開いた。「メディアは、よってたかって彼をいじめたと報道していますが、誰もいじめていませんよ。溶け込まなかった彼の弱さもありますし、被害妄想だと思う」<ref name="gendai-tokubetsu3">[https://gendai.ismedia.jp/articles/-/36870?page=3 特別ルポ 「連続放火殺人」の集落で見たものは…山口・八つ墓村あれから起きたこと(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(3/6)]</ref>}}。特にインターネットでは「村社会みたいな閉鎖的な環境」が原因、「集落ぐるみのいじめがなければ、加害者は殺人を犯すような人物ではなかった」といった集落への[[ヘイトスピーチ]]やHへ同情する擁護論が広がった<ref>[https://web.archive.org/web/20130802012137/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130802/crm13080209440003-n1.htm 【ネットろんだん】山口5人殺害 限界集落の容疑者に“奇妙な同情”+(1/3ページ) - MSN産経ニュース]</ref>。


しかし、そのような主張や憶測が事実であるとの裏付けは捜査や聞き取り調査によっても得られることはなく、Hによる妄想、[[ガセネタ|ガセ情報]]と認定されている{{Refnest|だが、そんなHに対し、インターネット上では「かわいそう」と同情の声が湧き上がっている。Hが事件前、現場の集落で被害者ら住民たちから「嫌がらせ」を受けていたという情報が流布したためだ。結論から言うと、それはガセ情報だが<ref name="tocana"/>|}}{{Refnest|name="tsukebi-nouyaku"|事件当初からこの村にはHへのいじめがあった、と騒がれていた。だが村人たちに話を聞けば、草刈機を燃やされた話は真偽不明であり、河村二次男さんに農薬を撒かれたという話も、実際には農作業の際に多く農薬を撒く河村さんと、それを「故意に撒かれた」と受け取ったHとで認識は違っていた。Hだけを狙った〝いじめ〟は確認できなかったのである。<ref name="tsukebi5>[https://note.mu/tk84yuki/n/ne4995dd23077 ルポ「つけびの村」 05/06]</ref>}}。
しかし、そのような主張や憶測が事実であるとの裏付けは捜査や聞き取り調査によっても得られることはなく、Hによる妄想、[[ガセネタ|ガセ情報]]と認定されている{{Refnest|だが、そんなHに対し、インターネット上では「かわいそう」と同情の声が湧き上がっている。Hが事件前、現場の集落で被害者ら住民たちから「嫌がらせ」を受けていたという情報が流布したためだ。結論から言うと、それはガセ情報だが<ref name="tocana"/>|}}{{Refnest|name="tsukebi-nouyaku"|事件当初からこの村にはHへのいじめがあった、と騒がれていた。だが村人たちに話を聞けば、草刈機を燃やされた話は真偽不明であり、河村二次男さんに農薬を撒かれたという話も、実際には農作業の際に多く農薬を撒く河村さんと、それを「故意に撒かれた」と受け取ったHとで認識は違っていた。Hだけを狙った〝いじめ〟は確認できなかったのである。<ref name="tsukebi5">[https://note.mu/tk84yuki/n/ne4995dd23077 ルポ「つけびの村」 05/06]</ref>}}。


事件当時、金峰の郷地区は既に[[限界集落]]であったが<ref name="gendai-tokubetsu1"/>、事件により人口は半減し、復興の試みが続けられているものの、高齢化の進展と事件の影響による転出者が出ている<ref>[https://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2015/0721/2p.html 集落再興、広がる動き 周南・金峰事件2年 - 山口新聞/ニュース]</ref><ref>[https://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2016/0503/2p.html 集落消滅危機に若者が農業移住 周南・金峰 不幸乗り越え - 山口新聞]</ref><ref>「周南5人殺害 悲しみ癒やす花5年」読売新聞 山口 : 地方発 2018年7月20日</ref>。
事件当時、金峰の郷地区は既に[[限界集落]]であったが<ref name="gendai-tokubetsu1"/>、事件により人口は半減し、復興の試みが続けられているものの、高齢化の進展と事件の影響による転出者が出ている<ref>[https://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2015/0721/2p.html 集落再興、広がる動き 周南・金峰事件2年 - 山口新聞/ニュース]</ref><ref>[https://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2016/0503/2p.html 集落消滅危機に若者が農業移住 周南・金峰 不幸乗り越え - 山口新聞]</ref><ref>「周南5人殺害 悲しみ癒やす花5年」読売新聞 山口 : 地方発 2018年7月20日</ref>。

2019年3月29日 (金) 00:06時点における版

山口連続殺人放火事件
事件のあった山口県周南市
場所 日本の旗 日本山口県周南市金峰
日付 2013年7月21日 (2013-07-21)日曜日
21時00分頃 (UTC+9)
標的 民間人
攻撃手段 放火鈍器で殴る
武器 鈍器・火
死亡者 5人
犯人 当時63歳の男
動機 「近隣住民との対立」という妄想
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山口連続殺人放火事件(やまぐち れんぞくさつじんほうかじけん)は、2013年平成25年)7月21日山口県周南市金峰(旧鹿野町)で発生した、近隣に住む高齢者5人が殺害された連続殺人放火事件である。

概要

2013年7月21日午後9時ごろ、周南市金峰郷地区[1]の住民から「近所の家が燃えている」と周南市消防本部に通報があった。約50メートル離れた農業の女性A宅と無職男性A宅の2軒が燃えており、消火活動にあたったが、2軒とも全焼した。女性宅から1人、無職男性宅から2人の遺体が見つかり、それぞれ住民の女性Aと男性A、その妻である女性Bと確認された。

捜査

周南警察署が放火の可能性もあるとみて捜査を開始したところ[2]、翌7月22日日中、近隣住民の男性が1人の遺体を発見した。さらに捜査員が別の住宅で1人の遺体を発見した。遺体はいずれも外傷があり、遺体が発見された住宅に住む女性Cと男性Bだった。被害者は5人とも鈍器のようなもので殴打されたことによる頭蓋骨骨折脳挫傷が死因だった[3]山口県警察は連続殺人放火事件と断定し、周南警察署内に捜査本部を設置した[4]

2人のうち、女性Cは火災発生直後から翌日午前1時過ぎまで近くの住民の家に避難し、県警も火災の約2時間後に本人の無事を確認していたことから犯人は3人を殺害し放火した後も約5時間にわたり付近に潜伏したあと、2人の住宅に侵入して殺害した可能性があることが分かった[5]

焼失した女性A宅の隣家には、「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者 かつを」と白い紙に毛筆のようなもので川柳が記された張り紙があり[注釈 1]、県警は7月22日午後、殺人非現住建造物等放火の疑いでこの家を家宅捜索するとともに、姿を消した当時63歳の住民の男Hを重要参考人として行方を捜索した。また事態の悪化を防ぐために、近隣住民5世帯9人に対して翌日朝まで現場近くの郷公民館に避難するよう呼びかけた[8]

7月24日には、周辺住民の心のケアと健康管理のため、現地に保健師が派遣され[4]、規制線を張り、報道人や記者が公民館へ避難した住民と接触するのを遮断した[9][11]。 25日には事件現場付近の山中で、容疑者携帯電話や衣類などが見つかり、翌7月26日朝から170人体勢で捜索を行った[4]

逮捕

火災発生から6日目の7月26日午前9時ごろ、Hが郷公民館から約1キロメートル離れた山道に、下着姿・裸足で座っているのを捜索中の県警機動隊員が見つけ、氏名を確認したところ本人と認めたため、任意同行を求め周南警察署で事情聴取を行ったあと、殺人・非現住建造物等放火の容疑で逮捕した[12][13]。Hは5人の殺害を認め、県警は翌7月27日午前、身柄を山口地方検察庁に送った[14]。担当弁護人は山口県弁護士会所属の国選弁護人、山田貴之と沖本浩の二人が当たっている[15]

裁判

第一審(山口地裁)

2015年(平成27年)、山口地方裁判所で行われた裁判員裁判において、Hは供述を一転させて「4人の足と腰は殴ったが頭は殴っておらず、火もつけていない」と殺人・放火を否認して無罪を主張し、一方の山口地方検察庁は「社会を震撼させた重大かつ凶悪な事件」として死刑求刑した。山口地方検察庁はHが妄想性パーソナリティ障害であることを認めたものの責任能力はあったとし、弁護側は心神喪失もしくは心神耗弱の状態であると主張していた。

2015年(平成27年)7月28日、山口地裁(大寄淳裁判長)は「Hの罪責は重大。極刑は免れることは出来ない」として、求刑通りの死刑判決を言い渡した[16][17]。弁護側は判決を不服として広島高等裁判所へ即日控訴した。

控訴審(広島高裁)

広島高等裁判所での控訴審初公判(多和田隆史裁判長)は2016年(平成28年)7月25日に開かれた[18]。初公判を前に弁護団は、広島市内の広島弁護士会館で会見し、改めて無罪主張する方針を示した。さらに「誰も目撃者がいない事件。本人と現場を結び付ける客観的証拠がどれだけあるかが大事だ」として、広島高裁に52に上る証拠(一審で凶器と認定された木の棒や現場に残された足跡と一致する、被害者の血液DNAが付着した可能性があるHの衣服の鑑定、Hの親族の証人尋問など)を請求する考えを明かした。

責任能力を判断する上で争点となる妄想性パーソナリティ障害については、「H本来の人格に基づくもの」と結論付けた一審判決に対し、かつて東京にいたHが金峰に戻った際に障害の影響で人格が変わったことを親族の証言で明らかにしたいという考えを明かした。また、弁護団が一審後に依頼し「妄想性パーソナリティ障害の影響が著しい」とした精神科医の私的鑑定の意見書を証拠として請求したが、検察側が不同意としたこと、また「その精神科医を証人申請することになるが、裁判所が却下すれば再鑑定の申請をせざるを得ない」ということも明らかにした[19]

広島高等検察庁は控訴棄却を求め、一方の弁護側は「仮にHが犯人であった場合でも、心神喪失か心神耗弱が認められるべきだ」と一審同様無罪を主張し、即日結審した[20](弁護側は「事件当時の被告の完全責任能力は認められない」と主張し、新たな精神鑑定を請求したが認められなかった[21]。また、前述の52の証拠を請求したがこれも「いずれも必要性がない」と却下された[22])。

2016年(平成28年)9月13日の判決公判で広島高裁は、一審判決で「被害者がHの噂をしたり、挑発したりなどの嫌がらせをししていると思い込む妄想性障害が報復という動機の形成に影響したが、報復を選択したのは元来の人格に基づく」と、Hの責任能力を認定した判断について「不合理な点はない」とした。Hの人格については「やられた場合は暴力的な方法でやり返す傾向がある」とした一審での精神鑑定医の評価を妥当と判断した。「暴力的な面があったことを裏付ける証拠はなく、責任能力を認めたのは誤り」とした弁護側の主張を退けた。その上で殺人、放火はHの犯行と断定、「妄想性パーソナリティ障害の影響を考慮しても被害者の数が5人に上り、結果は極めて重大。報復感情を満たすため5人の命を奪ったのは身勝手というほかなく、死刑が不当とはいえない」として一審判決を支持し、控訴を棄却した[23][24]

裁判長が「控訴棄却」の主文を読み上げたとき、Hは身動きせず前を向いて聞き入っており[25]、「控訴棄却」の主文を聴いても動揺は見せず、言い渡し後には弁護士を見て軽くうなずいてから退廷した。傍聴した被害者遺族たちは、控訴審でも無罪を主張して謝罪もなく法廷を立ち去るHを無表情に見つめ、閉廷後に弁護士を通じて「上告せず刑に服してほしい」とするコメントを発表した[26]

Hの弁護人は翌9月14日、判決を不服として最高裁判所上告した[27]。2017年12月現在、Hは広島拘置所収監されている[19]

集落住民への二次被害

妄想性障害のHは事件以前以後にさまざまな「被害」の主張を行い、それを真に受けて発言する関係者もいた[28][注釈 2]。また、事件直後に大量のマスメディアが集落に押しかけたが、規制線が張られ、住民と接触することができなかったために、Hの主張や噂の真偽を直接住民に確認することはできなかった[30][11][注釈 3]。そのような状況下で事実関係を把握しないまま噂や妄想が真実であったかのような報道が行われ、憶測により様々な発言が飛び交い[注釈 4]、集落住民のHへのいやがらせや「村八分が原因になった」といった事実に基づかない誹謗中傷がなされた[36][38]。特にインターネットでは「村社会みたいな閉鎖的な環境」が原因、「集落ぐるみのいじめがなければ、加害者は殺人を犯すような人物ではなかった」といった集落へのヘイトスピーチやHへ同情する擁護論が広がった[39]

しかし、そのような主張や憶測が事実であるとの裏付けは捜査や聞き取り調査によっても得られることはなく、Hによる妄想、ガセ情報と認定されている[40][42]

事件当時、金峰の郷地区は既に限界集落であったが[9]、事件により人口は半減し、復興の試みが続けられているものの、高齢化の進展と事件の影響による転出者が出ている[43][44][45]

Hの妄想性障害

Hは一審の地裁・二審の高裁で妄想性障害と認定されている。

精神科医の岩波明は、地裁・高裁が「近所の人がうわさ話をしている」との主張自体がHの妄想であると認定したことに対し同様の見解を示しており、「妄想性障害が難しいのは、『一見しっかりしている』っていうことなんです。そうなると警察や病院の対応も、ちょっと二の足を踏むわけなんですよね。難しいのは一見人格的にまともそうに見えるけど内面は妄想の世界にいる、そういう人が地域にいるときに誰も手が出せない。それは大きな問題ですよね。今の法律だと誰も手を出せないですよね」と述べている[46]

一審で弁護を担当した沖本浩は、精神鑑定の本鑑定を行った岡田医師により、妄想性障害の患者に対して新たな情報を提供すると、これが鍵となってそれまでの妄想と新たな情報が結びついて、妄想が広がって行く「鍵体験」を引き起こす傾向があるとの注意を受け、弁護活動に支障をきたす恐れがあることから証拠書類の差し入れを制限した。2017年に聞き取りのために面会と手紙のやり取りを繰り返した高橋ユキによると、「『鍵体験』により、妄想性障害は確実に進行している」[46]

Hの来歴と主張

介護による帰郷
郷地区出身であるHは、職業不定の両親の次男として産まれ、元々"W"という名前であった[47][48]。中学卒業後、兄のツテで上京しボクシングを始め、そのジムやパチンコ屋への住み込みを経て土建業に従事、30代のころからタイル職人として神奈川県川崎市で暮らしていたが、アパートの住人との諍いも多く、つれ込んだホステスとの口論で警察が呼ばれたり、駐車場で怒鳴りつけ、子供を投げ飛ばすなど、暴力的な傾向があったという[49][50][51]
「自分の生まれたところで死にたい」と1994年に44歳で帰郷し、実家で両親の介護にあたった[52]。介護ヘルパーの評判は良かったが、善意の押しつけが激しく、母親がHの暴力から逃れて被害者の一人に助けを求めることもあったという[53]
川崎在住時は左官として働いており、帰郷した際には左官の技術を生かして自宅を建築し、地元のテレビ番組や新聞にも取り上げられるなどした[54][52]。住宅のリフォームを収入手段として考えており、近隣住民もチラシ配りなどで協力したが、本人の難しい性格も災いして、両親と死別した後、地区住民とのトラブルが相次ぐようになった[54][37]。移住後、2009年に"K"と改名したが、住民はそのことを知らなかった[46]
地区住民との対立
Hは移住早々にネオンの輝く酒場とトレーニングルームを併設した建物を建てて、そこを地域住民の社交場とする地区の「村おこし」を提案したが、山間の集落では浮いた不釣り合いなもので、Hが自治会活動などを通じて周辺住民との関係構築を重ねていなかったこともあり上手くいくことはなかった[6][注釈 5]
Hは移住当初こそ集落の旅行に参加するなどしたが、回覧板の受け取りを拒否し、草刈りや植樹活動、祭りなどの自治会活動にもまったく参加しなかった[注釈 6][4]。「村八分というよりも自分から遠ざかっていった」という様子で[51]、自宅にブラジャーを付けたマネキン人形や実際は作動しない監視カメラを設置したこともあった[47]。またHは2011年1月ごろ、「集落の中で孤立している」「近所の人に悪口を言われ、困っている」として、周南署に相談していた[7]。近隣住民はHがそこまで追い詰められているとは思っていなかったという[37]精神安定剤の服用を始め、「俺は薬を飲んでいるのだから、10人や20人殺したって罪にならない」などの発言もしていた[55][6]
川崎時代に稼いだ一千万円の預貯金を生活費に当てていたが、犯行前にはほとんど仕事がなく、家財道具を売り払って食いつないでいたといい、犯行時には、預貯金1627円、所持金4246円のみで、「生活が立ちいかなくなり自殺を決意。どうせ死ぬなら、近隣住民に報復をと考え犯行を決意した」(検察官)と指摘されている[56]
自家用車絡みのトラブル
Hは川崎在住時から、昼夜を問わずサングラスをかけるこだわりがあり、大型SUVハイラックスサーフの車高を変えたり、当時珍しかった携帯電話を搭載するなど様々な改造を施していた。その自家用車の出し入れや駐車をめぐって怒鳴りつけたり、暴力を振るうなどしていたという証言がある[50][57]
金峰に移住してからも川崎時代同様に自動車一台がようやく通ることのできる山間の集落で改造した大型SUVを乗り回し、住民によると、常にサングラスをかけた威圧的態度で、車に目を向けるだけで睨み返し、因縁をつけ、別の車と立ち往生すると『下がれ、どけ』と大きな声で怒鳴り、Hが車を下げて道を譲ることはまったくなく、『車にキズをつけるなよ』と言っていたという[51][10][29]
農薬散布のトラブル
Hは農薬の散布を巡っても、近所の住民とトラブルを引き起こしていた[58][42]。被害者K夫婦が田んぼの世話で農薬を散布すると、それを飼い犬への攻撃とみなして、Kにカラオケを大音量で流して威圧したり、Kが他の女性と話していると「殺してやろうか」などと脅迫した[6][10]。被害に遭った女性Kの夫は「殺されるかもしれない」と周囲に不安を漏らし、Hとの争いを避けるために田んぼを手放した[59][6]。また、Hは「野焼きの煙が自分の家に来るようにしている」[51]、家の裏で勝手に農薬や除草剤をまいたなどと主張していた。
「夜這いを妨害された恨み」との主張
Hは、週刊誌の取材で、被害者Kの夫の父が戦時中に夜這いをしてまわり、Hの母も襲おうとしたのをHの兄が妨害したのを恨んで、Hが帰郷直後、Kの夫が「兄貴にはイジメられたぞ」とからんできたといい、それと時を同じくして農機具を燃やされ、挙句に刃物で切りつけられたりといった数多の“事件”が起きたと主張したが[60]、高橋ユキは名指しされた当人への聞き取りを含む現地取材の結果、事実関係が異なり、誰に聞いても裏付けとなる証言がまったく出ないことから、Hの言い分のみをもとに作り上げた記事の可能性が高いと結論づけている[6]
草刈り作業のトラブル
Hは地区のあぜの草刈り作業にあたって、「地域で一番若いという理由から、機械や燃料の費用などをすべて1人で負担させられた上に、地区住民がHの機械を草と一緒に燃やし、さらに機械を焼失させたことについての謝罪もないなどの仕打ちを受けている」と知人に訴えていたが、地域住民への聞き取りでは、H家は親の代に他所の集落から移って来たために農地を持っておらず、農作業などしていなかったし[61]、誰も草刈機が燃えたなどという事件は知らず、そもそもHは草刈り機を持っていなかったという[6][62]
Hが飼い始めた犬(ラブラドール・レトリバー2匹[63])に対し、地区住民に苦情を言われたと思って、住民に「血を見るぞ」「殺してやる」と大声を上げ、糞を始末するよう注意した被害者Sの胸ぐらを掴んだり、木の棒を持ち回して犬を散歩していたとの証言もある[6]
Hは犬の健康のための努力はそんなにしておらず、家の目の前で狂犬病の予防注射などが行われているにも関わらず参加することはなく、犬はフィラリアに感染していた。一匹は動物愛護団体へ搬送する途中に死亡した。[41]
カレーのトラブル
Hは「犬の飲み水に農薬を入れられ、自分が家でつくっていたカレーにも農薬を入れられました」と主張したが、公判を傍聴した者によるとHは勝手口で七輪により一ヶ月分のカレーをまとめて作成した後、それを冷蔵庫に入れることもなく放置していたため、腐ったものを食べて食中毒になったのではないかとのことである[6]
ポエム
Hはトレーニングルームを中心に壁にびっしりと自作のポエムを貼り付けており、傍聴した記者やマニアが一様にこの写真のことを真っ先に挙げるほど異様なものだった[6]。また、「つけびして」の川柳の貼り紙について、「〝つけびして〟は、集落内で自分の悪い噂を流すこと。〝田舎者〟は集落の人を指す。(紙を貼りだしたのは)周囲の人たちの反応を知りたかった。自分の中に抱え込んだ気持ちを知ってほしかった」と弁護士に語ったという[64]。国外ではこの川柳から「俳句キラー」として報道された[65][66]
被害者Sによる傷害事件
Hは、親戚である被害者の一人S宅へ度々食事に行って酒飲していたが、Sには酒乱の気があり普段は物腰柔らかだが酒を飲むと刃物を持ち出すことがあったという。2003年、母の葬儀にともなう香典返しにS宅を訪れて酒飲し口論となり、Sが刃物を持ち出してHを刺す事件があった。Sはこれにより罰金15万円を課された[48][51]
この件について、Hは「飲み行って、刺されたことがあるんですよ。酒癖が悪いらしかったんですよ、でもそれを知りませんから。最初から言えよ、と」笑いながら語り、「その日は刺されて胸を押さえて帰ったんです。でも(血が)止まったから寝て、次の日に病院に行きました。ごめんも言わないです。酒癖悪いですから。みんな飲みますから、Sも飲みます。」といった具合で、Hも集落の住民も大事とは考えていなかった[46][48]
Hは、川崎在住時から「もともとはっきりモノを言うタイプだったけれど、酒が入ると理屈っぽくなる。そのせいか、酒の席でケンカになることがよくあった」(元同僚)という[57]

脚注

以下において、記事名に被告人の実名が使われている場合、その箇所をイニシャル「H」で表記する。

注釈

  1. ^ 事件の数年前に被害者K宅の風呂で放火とみられる不審火があり、その数日後から張られていた[6][7]。張り紙の「かつを」は、Hの氏名ではなく、取調べに対して「相田みつををひねったもので、特に意味はない」と自供しているという
  2. ^ Hは集落内では狂暴な振る舞いをする一方、集落の外では好人物として受けとられるような二面性があった[29][6]
  3. ^ 当時、マスコミの取材に応えて、「Hが介護に熱心だった」、Sの刺傷事件について「ちょっと酒を飲んだ席での話ですから、ちょっと(鋭利なものが)当たったぐらいじゃないか」と笑顔を交えて語ったのは当該地区の住民でなくHの父Tの世話をしていた集落外の元ホームヘルパー(当時 65歳の女性)である[31]
  4. ^ 典型が、板垣英憲[32]や香山リカ[33]。他に、山口県出身ということで意見した城繁幸の「濃密な人間関係の中にいやでも引きずり出されたものと思われる。ひょっとすると、そういう関係で何らかのトラブルがあったのかもしれない」「無縁社会のリスクが孤独死だとすれば、“有縁社会”のリスクは、こうした人間関係のトラブルと言える」など[34]
  5. ^ Hの父Tは、兄弟と違って定職につかず、また農作業もせずに日常的に集落の人間と酒を飲んでいたが、「酒代を誤魔化して多めに取る者」として認知されていた。また、集落の様々なものを窃盗しているとみなされていた事情もあった[48]
  6. ^ 住民によると、Hはまったく自治会など集落の共同作業で働くことはなく、自身が産物などを譲り受けるにも礼を言わずに選り好みをし、飲食などで世話になった家にも返礼品を持っていくことは一切なかったという[6]

出典

  1. ^ 周南市内から北東約15キロの集落。事件前の人口は8世帯14人(2013年6月末現在)だった。
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  10. ^ a b c ルポ「つけびの村」 04/06
  11. ^ a b 事件の後は、うちの前から河村さんちのシモまで、黄色い規制線が貼られていまして記者も入れなかったんですよ。だから私たちは取材を受けていないのに、テレビでは近所の人の座談会というのがあって……私も後から知ったんだけど、全然知らない人たちが、Hさんの草刈機を近所の人が燃やしたらしいとかそういう話をしていて、私は本当に、テレビに出る『近所の人』というタレントがいるのかと思った。[10]
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  28. ^ 事件当時取材に答えていた〝遠くの村人〟たちによる、郷集落でのいじめの話は、Hが以前にそうした被害を誰かに話したものが広まっているかのような印象を受けた。犬について文句を言った話は、郷の誰からも聞けなかった。いじめた相手にいじめの話を聞かせてくれと言ってもなかなか話してくれない。そういうことかと思っていたが「あの人がいじめていた」という耳打ちすらされないのである[6]
  29. ^ a b 山口連続殺人 容疑者は「ジキルとハイド」だった? 〈週刊朝日〉|AERA dot.
  30. ^ 道の反対側には残りの5家族が暮らしているが、事件から1ヵ月経った今でも規制は解かれていない。地区の真ん中を走る道路の端から端まで規制線で遮られていて、地域住民と警察関係者、親戚、知人しか中に入ることができない。[9]
  31. ^ H容疑者の飼い犬、身柄確保と同時に死ぬ | 日テレNEWS24
  32. ^ 「心根優しい」親孝行なH容疑者は、「鬼の住処」山口県周南市金峰の限界集落に帰郷すべきでなかった - BLOGOS
  33. ^ 山口殺人事件に香山リカ「Uターンしたら仲間に入るの難しい」|NEWSポストセブン
  34. ^ 城繁幸 (2013年7月24日). “周南市連続殺人事件の背景について出身者はこう見る”. J-CASTニュース. http://www.j-cast.com/kaisha/2013/07/24180040.html?p=all 2016年10月8日閲覧。 
  35. ^ a b “村八分の妄想に陥った凶悪犯 ― 山口5人連続殺人・Hの"本当の孤独"”. TOCANA. (2015年10月22日). https://tocana.jp/2015/10/post_7674_entry.html 
  36. ^ Hは起訴前と起訴後に各1回の精神鑑定を受け、2度目の鑑定では事件発生当時に妄想性障害に陥っていたと結論づけられている。判決はこの鑑定結果も踏まえ、集落の住民たちによる「嫌がらせ」はHの妄想だったと認めたが、妥当な判断だ。インターネット上で巻き起こったHへの同情論は、まぎれもなく被害者や現場住民に対する「二次被害」だろう[35]
  37. ^ a b c 特別ルポ 「連続放火殺人」の集落で見たものは…山口・八つ墓村あれから起きたこと(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(3/6)
  38. ^ 郷集落で暮らす住民の一人が重い口を開いた。「メディアは、よってたかって彼をいじめたと報道していますが、誰もいじめていませんよ。溶け込まなかった彼の弱さもありますし、被害妄想だと思う」[37]
  39. ^ 【ネットろんだん】山口5人殺害 限界集落の容疑者に“奇妙な同情”+(1/3ページ) - MSN産経ニュース
  40. ^ だが、そんなHに対し、インターネット上では「かわいそう」と同情の声が湧き上がっている。Hが事件前、現場の集落で被害者ら住民たちから「嫌がらせ」を受けていたという情報が流布したためだ。結論から言うと、それはガセ情報だが[35]
  41. ^ a b ルポ「つけびの村」 05/06
  42. ^ a b 事件当初からこの村にはHへのいじめがあった、と騒がれていた。だが村人たちに話を聞けば、草刈機を燃やされた話は真偽不明であり、河村二次男さんに農薬を撒かれたという話も、実際には農作業の際に多く農薬を撒く河村さんと、それを「故意に撒かれた」と受け取ったHとで認識は違っていた。Hだけを狙った〝いじめ〟は確認できなかったのである。[41]
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参考文献

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  • 高橋ユキルポ「つけびの村」』 2018年7月

関連項目

外部リンク

座標: 北緯34度11分15.0秒 東経131度52分4.0秒 / 北緯34.187500度 東経131.867778度 / 34.187500; 131.867778