「ルパン三世 EPISODE:0 ファーストコンタクト」の版間の差分
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2020年6月17日 (水) 00:24時点における版
『ルパン三世 EPISODE:0 ファーストコンタクト』(ルパンさんせい エピソードゼロ ファーストコンタクト)は、モンキー・パンチ原作のアニメ『ルパン三世』のTVスペシャルシリーズ第14作。2002年7月26日に日本テレビ系の『金曜特別ロードショー』にて放送された。視聴率は20.6%[1]。
概要
第二次世界大戦中に各国諜報部員が捜し求めていた秘伝の金属「クラム・オブ・ヘルメス」とその製法が記された錬金術書の争奪戦を軸に、ルパンファミリーの「ファーストコンタクト(最初の出会い)」のエピソードが明かされる。
ゲストヒロインは、前作『ルパン三世 アルカトラズコネクション』ではエピローグにしか登場しなかったが、本作のゲストヒロインもストーリーには直接絡まないものの、進行役の役割を果たしている。
銭形警部の所持する十手がTVスペシャル『ルパン三世 炎の記憶〜TOKYO CRISIS〜』以来4年ぶりに登場している。なお、不二子のヘアカラーは過去の話をするストーリーということから、過去では茶髪、現代では金髪となっている。両方のカラーリングの不二子が見られるのはこの作品が唯一である。ルパンの衣装のカラーリングは『ルパン三世 ワルサーP38』以来となる黒いシャツに黄色のネクタイ、黒いズボンの組み合わせであった。
演出は、ルパンと次元の初めの勝負するシーンは出崎統が監督を務めたTVスペシャルの止め絵、ルパンと五ェ門が勝負するシーンは『TV第1シリーズ』第5話「十三代目五ェ門登場」の演出とほぼ同じ[注 1]である、第1話のラストの「裏切りは女のアクセサリーみたいなものさ」という台詞があるなど、初期のTVシリーズや劇場版、TVスペシャルなどをイメージした演出が目立つ。
脚本について、当初は原作者であるモンキー・パンチの承諾もあったため、「本作限りの設定」としてルパンファミリーの出会いのみ描かれる(つまり、ラストのどんでん返しが無い)予定だった。だが長年ルパンに携わったスタッフ(飯岡順一や柏原寛司ら)がこれを聞いたところ「原作の琴線に触れるものは止めたほうがいい」と反対意見を出した[注 2]ため、議論を重ねた結果、映画『ユージュアル・サスペクツ』を参考にどんでん返しのシーンが追加され、作品が完成したという[2]。そのため、五ェ門との出会いや銭形がICPOに出向する件[注 3]は既出設定と矛盾しているが、「ジャーナリストの女性に対して語って聞かせた話」に仕立てることで「どこまでが真実で、どこからが虚構か」を曖昧にさせており、一応の整合性を計っている[注 4][注 5]。
キャラクターデザインは長年TVスペシャルで作画を担当してきた平山智が担当しており、本作で興されたデザインは2010年の『ルパン三世 the Last Job』まで使用されたほか、クロスオーバー作品である『ルパン三世VS名探偵コナン』や、釧路バスで運行されているルパン三世ラッピングバス等にも使用されるなど、TVスペシャル以外でも比較的目にする機会の多いデザインとなっている。
大野雄二の音楽については書き下ろし楽曲に加えて、過去のTVスペシャルのBGMや、大野のソロアルバムのナンバーも織り交ぜて使用されている。また、オープニングに「ルパン三世のテーマ'89」、エンディングにTV第2シリーズで使われていた「ルパン三世のテーマ'78」のアレンジバージョンが使われた。ルパン三世のアニメシリーズでオープニングテーマとエンディングテーマの両方に「ルパン三世のテーマ」が使用されるのは初めてであり、TVスペシャルのエンディングでインストゥルメンタルを使用した例は本作が初である。
2011年に実施された「ルパン三世アニメ40周年記念 マイ・ベストエピソード投票」の「TVスペシャル部門」では本作が第1位に選ばれた。
あらすじ
「今、初めて明かされるルパンと次元の出会い!?」
ある夜、次元は女性記者のエリナにルパン三世との出会い、いわゆる「ファーストコンタクト」を語り始めた。 ルパンとその仲間達の出会いが初めてあかされる。次々と起こる事件の中、出会うルパンと次元。その中で友情、裏切りが描かれる。そこにルパンと不二子の初めての出会いも織りまぜ、話は二転三転する。
また、犯人捜査のため、警視庁からニューヨーク市警を訪れた銭形もはじめてルパンと遭遇する。そして、斬鉄剣を求めて五ェ門も登場する。今回のお宝「クラム・オブ・ヘルメス」を追う中で、錯綜する人間関係。
おなじみのメンバーである次元、不二子、五ェ門、銭形警部は一体どのようにして出会ったのか。そして、ルパンと次元はそれぞれ相手の腕前をどう思っているのか、また五ェ門の持っている斬鉄剣の秘密など、ルパンと仲間達の過去が今明らかになる。
ゲストキャラクター
- ガルベス
- 声 - 森山周一郎
- ガルベス一家のドンで、「クラム・オブ・ヘルメス」の(当時の)所持者。
- オープニングで次元を雇い、ルパンの抹殺を図るが、結果的に二人の出会いのきっかけを作ってしまう。その後、ルパンの策略に嵌まって重傷を負うもマフィアをまとめ、最後はマシンガンを片手に次元・五ェ門と戦うが敗北。銭形に捕まったルパンに手錠をすり替えられて逮捕された。
- ルパン抹殺に対する次元のしくじりをその拳銃の腕を見込んで1度は許したり、自分を騙した不二子との取り引きを了承したりとマフィアのボスらしく器の大きい人物ではあるが、お宝への執着心は人一倍でルパンに強奪されたクラム・オブ・ヘルメスに最後まで未練たらしい言動を見せるなど、悪人ではあるが良くも悪くも人間臭く、どこか憎めない人物。
- シェイド
- 声 - 咲野俊介
- ガルベスの用心棒で、「掃除屋」。スーパーブラックホークを二挺拳銃で撃つことを武器にしている。次元を忌み嫌っており、彼の事でガルベスに抗議したり、不二子に平手打ちを返されるなど醜態を晒し続けた。
- 実はブラッドを殺害した真犯人であり、終盤ではお宝に執着するガルベスを見限り、不二子と手を組んでルパンを殺そうとするが、真実を知った不二子の背後からの銃撃を受け、倒れる。最後はクラム・オブ・ヘルメスの巻物と二人を道連れにしようと、手榴弾で高笑いしながら自爆した。
- ブラッド
- 声 - 小杉十郎太
- ルパンの当時の商売敵であり親友である売り出し中の泥棒で、不二子の恋人でもある。ルパンが不二子と出会うきっかけを作った人物。
- ルパンでさえ出来なかった「クラム・オブ・ヘルメス」の奪取に成功するが、直後にシェイドに撃たれてしまい、拷問を受けるが不二子の居場所は割らなかった。そしてやって来たルパンに看取られながら息を引き取った。
- 出身はニューヨークのスラム街にある小さな港町らしい。
- ジョージ・マックフライ
- 声 - 永井一郎
- ニューヨーク市警察の窓際老刑事。
- 当初はやる気を失っていたが、銭形と行動を共にしていくうちに彼の刑事(デカ)魂を感じ取り昔の自分を取り戻し始める。その後はルパンが銭形警部と出会うきっかけを作り、銭形に対してICPOに入ることを勧める(このとき、「国際刑事警察機構」という名称が彼の口から出てくる)。
- エンディングでは、エリナの隣に定年退職をした後であろう彼の姿が描かれている。
- クロフォード
- 声 - 池田勝
- 当時のニューヨーク市警察本部長。権威主義者で、銭形を毛嫌いしており、銭形が掴んだルパンの手掛かり(五ェ門がルパンに送った果たし状)を「(銭形が自分の手柄のために)自分で書いたのだろう」と破り捨てるなどしていた。
- ルパンが彼に化けた際は殴り倒されてしまうなど散々な目に遭い、最終的にはガルベス一味を壊滅させた銭形を褒め上げたが、逆に散々問題ばかり起こしたことを理由に強制送還させようとした挙げ句、前述のような態度をとり続けられた銭形の気に障り、ルパンの変装だと言い張った銭形によってガルベス一味と共に護送されてしまう。
- ハンス・ダラハイド
- 声 - 大木民夫
- ルパンが五ェ門と出会うきっかけを作った大富豪で、「クラム・オブ・ヘルメス」を開ける唯一の鍵(斬鉄剣)の当時の所持者。表向きは貿易会社の社長であるが、裏では密輸組織とも繋がりのある車いすに乗った初老の男。
- 本人曰く「市警にも友人は多い」とのこと。見事にルパンの策略に嵌まって、鍵(斬鉄剣)を盗まれる。
- エリナ
- 声 - 朴璐美
- 女性記者。
- 次元(ルパンの変装)に張り付き、ルパン一家結成の謎を探るが、本当か嘘か解らない情報を掴まされて煙に巻かれる。
- ファーストコンタクトエピソードの全てを録音機で録音していたが、その録音機は最後は自爆する仕掛けになっており、今まで語られたエピソードは全て水泡に帰してしまった。しかしラストにて、斬られたクラム・オブ・ヘルメスをルパン達が盗んだ所を見ている。
声の出演
- ルパン三世 - 栗田貫一
- 銭形警部 - 納谷悟朗
- 次元大介 - 小林清志
- 石川五ェ門 - 井上真樹夫
- 峰不二子 - 増山江威子
- ガルベス - 森山周一郎
- シェイド - 咲野俊介
- ブラッド - 小杉十郎太
- ジョージ・マックフライ - 永井一郎
- クロフォード本部長 - 池田勝
- ハンス・ダラハイド - 大木民夫
- エリナ - 朴璐美
- 岸祐二
- 小野大輔
- 江川大輔
- 加藤将之
- 奥田啓人
- よのひかり
スタッフ
- 原作 - モンキー・パンチ(中央公論新社刊)
- 監督・絵コンテ - 大原実
- 脚本 - 米村正二
- 音楽 - 大野雄二
- 音楽監督 - 鈴木清司
- 音響監督 - 加藤敏
- 音響効果 - 糸川幸良
- 音響制作 - 東北新社
- 音響制作担当 - 田中信作
- 美術監督 - 宮野隆
- キャラクターデザイン・総作画監督 - 平山智
- 作画監督 - 宮繁之、片岡康治
- メカニックデザイン・メカニック作画監督 - 石本英治
- 色彩設計 - 西香代子
- 撮影監督 - 林コージロー
- 編集 - 佐野由里子
- 制作担当 - 浄園祐
- 演出 - のがみかずお
- プロデューサー - 小野利恵子(日本テレビ)、尾﨑穏通(TMS)、大石祐道(TMS)
- 音楽プロデューサー - 山田慎也、国分浩安
- 挿入歌「LOVE SQUALL(po do amor)」
- 唄 - ソニア・ローザ
- サウンドトラック - 「LUPIN THE THIRD JAZZ~Bossa&Fusion」、「LUPIN THE THIRD JAZZ~Another"JAZZ"」、「ルパン三世~EPISODE:0『ファーストコンタクト』~オリジナルサウンドトラック」
- アニメーション制作 - 東京ムービー
- 製作 - 日本テレビ、トムス・エンタテインメント
出典・脚注
- ^ LUPIN THE THIRD -ルパン三世-
- ^ 飯岡順一『私の「ルパン三世」奮闘記 アニメ脚本物語』河出書房新社、2015年
注釈
- ^ 他にも五ェ門に関する一部の演出に関しては原作初期の対五ェ門篇が一部踏襲されている。
- ^ 理由として飯岡は「自分達でルパン三世の分からない部分を明確に決定しようとするのは作り手側の傲慢さ」であることや、「作者が許可しても原作があっての作品だから、分からないものは分からないほうがいい」という思いを挙げている。
- ^ 『TV第2シリーズ』第1話「ルパン三世颯爽登場」で語られたもの。
- ^ 本作の回想とは別に『TV第1シリーズ』以前のルパンファミリーの最初の出会いが、本作の放送から10年後の2012年に、峰不二子を主役にしたスピンオフシリーズの『LUPIN the Third -峰不二子という女-』にて、ルパンたちの若き日のエピソードとして新たに第1話から描かれている。
- ^ ただし、本作に関わったジョージやタクシードライバーも現実に登場しており、また五ェ門との決闘も後の『PART5』ではルパン一味の回想として登場している