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== 利用 ==
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秋に掘り上げて日干し乾燥させた[[根茎]]は薬用に使われ、[[利尿]]、[[解毒]]、[[皮膚病]]に効果があり、[[リウマチ]]の体質改善に役立つと考えられてきた{{sfn|馬場篤|1996|p=57}}。漢方では'''菝葜'''(ばつかつ)と呼んで、[[膀胱炎]]や[[腫れ|腫れ物]]に治療薬として使われる{{sfn|奥田重俊監修 講談社編|1996|p=108}}。民間療法として、[[おでき]]、[[にきび]]、腫れ物などに、乾燥根茎1日量10 - 15グラムを、水200 [[立方センチメートル|cc]]でとろ火にて半量になるまで煎じ、3回に分けて服用する用法が知られている{{sfn|馬場篤|1996|p=57}}。
秋に掘り上げて日干し乾燥させた[[根茎]]は薬用に使われ、[[利尿]]、[[解毒]]、[[皮膚病]]に効果があり、[[リウマチ]]の体質改善に役立つと考えられてきた{{sfn|馬場篤|1996|p=57}}。漢方では'''菝葜'''(ばつかつ)と呼んで、[[膀胱炎]]や[[腫れ|腫れ物]]に治療薬として使われる{{sfn|奥田重俊監修 講談社編|1996|p=108}}。民間療法として、[[おでき]]、[[尋常性痤瘡|にきび]]、腫れ物などに、乾燥根茎1日量10 - 15グラムを、水200 [[立方センチメートル|cc]]でとろ火にて半量になるまで煎じ、3回に分けて服用する用法が知られている{{sfn|馬場篤|1996|p=57}}。


若葉は5 - 6月、果実は10 - 11月ころに採取し、食用にできる{{sfn|奥田重俊監修 講談社編|1996|p=108}}。若葉は軽く茹でて水にさらし、[[お浸し]]や[[和え物]]、[[炒め物]]などに調理される{{sfn|奥田重俊監修 講談社編|1996|p=108}}。赤い果実は、そのまま生食したり、[[焼酎]]に[[果糖]]を加えて漬け込んで[[果実酒]]にもできる{{sfn|奥田重俊監修 講談社編|1996|p=108}}。
若葉は5 - 6月、果実は10 - 11月ころに採取し、食用にできる{{sfn|奥田重俊監修 講談社編|1996|p=108}}。若葉は軽く茹でて水にさらし、[[お浸し]]や[[和え物]]、[[炒め物]]などに調理される{{sfn|奥田重俊監修 講談社編|1996|p=108}}。赤い果実は、そのまま生食したり、[[焼酎]]に[[果糖]]を加えて漬け込んで[[果実酒]]にもできる{{sfn|奥田重俊監修 講談社編|1996|p=108}}。

2020年8月25日 (火) 00:52時点における版

サルトリイバラ
Smilax china
Smilax china
(2008年5月23日、神奈川県川崎市
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: ユリ目 Liliales
: サルトリイバラ科 Smilacaceae
: シオデ属 Smilax
: サルトリイバラ S. china
学名
Smilax china
L.[1]
英名
China root
変種品種[2]
  • S. c. var. kuru
  • コミノサルトリイバラ S. c. var. igaensis
  • トキワサルトリイバラ S. c. var. yanagitae
  • キミノサルトリイバラ S. c. f. xanthocarpa

サルトリイバラ(猿捕茨、学名: Smilax china)は、サルトリイバラ科(またはユリ科シオデ属分類される多年生植物(半低木)。別名は、ガンタチイバラ、カカラなど。茎には棘があり、秋に赤い果実をつける。地中に肥大化して横たわる根茎があり、薬用にされる。

名称

和名サルトリイバラの由来は、つる性のにはがあって、「これではサル(猿)も思うようには動けない」という意味で、この植物の小枝が絡み合って、鋭い鉤爪(かぎづめ)がたくさんついていて猿が引っ掛かりそうな感じがするので「猿捕り茨(いばら)」の名がある[3][4]

漢語で「菝葜」と書く。別名、ガンタチイバラ[5][6]カラタチイバラ[3]カカラ[3][5][7]、カメイバラ[7]、コバンノキ[7]、サンキライ[6]などともいう[8]

分布・生育地

東アジア中国朝鮮半島日本)に分布する。日本では北海道本州四国九州までの範囲に分布する[3]。 山野や丘陵の林縁や林内などに自生し[9]、日が当たり水はけのよい場所を好む。

形態・生態

雌雄異株つる性の落葉低木[9]根茎は、固く屈曲していて、横に這って太い[9][10]。茎の長さは70センチメートル (cm) から数メートル (m) で[5]、根元は太いが、緑色の枝は細くてたくさん分枝し、つる状に伸びて棘と巻きひげで絡まってやぶを作る[6][4]。高さ2 - 3 mほどになり、があるは硬く、緑色で、這うように伸びてごとに曲がり、ほかの低木の枝から枝へと絡みつく[3][10][10]。茎には固い棘が所々まばらに生えるが、しばしば棘がないものもある[11][12][13]

互生し、葉身の長さ3 - 12 cmの円形から広卵形、または広楕円形で、基部は円く、葉先は尖って突端が少し凹んでいる[7]。葉は葉軸を中心にやや折れ曲がっている[5]。葉質は革質で硬く、全縁で表面には光沢があり、くっきりした3 - 5本の葉脈が入り葉の先端で合流する[11][12][13]葉柄は短く、托葉の先が変化した巻きひげは、1対ずつついて長くなって絡みつく[6][9]。新芽は赤みを帯びて、葉が大きく生長するまでは、舟の帆のように立ってつき、目立つ[14]

花期は初夏(4 - 7月)[9][10]。新葉とともに葉腋より花茎を出して、散形花序を伸ばし、淡黄緑色の多数の小が集まって咲く[9]。花の6枚の花被片は先端が反り返る。雄花には雄蘂が6本、雌花には子房が3室・柱頭が3本ある[11][12][13]

果実液果で、直径7 - 10ミリメートル (mm) 程度の形で、散形花序につき、に熟すと赤くなってよく目立つ[11][12][13]。表面はカキブドウのように、無害な白い粉が入る[14]。一つの果実には、種子が5個前後入っている[15]。種子は長さは4 mmほどの大きさがあり、倒卵形・広楕円形・球形など、さらには平らな面があったり鈍い陵があったりと、さまざまな形のものがある[15]

ルリタテハ幼虫食草とする[16][17]他、フタホシオオノミハムシも食草とする。

利用

秋に掘り上げて日干し乾燥させた根茎は薬用に使われ、利尿解毒皮膚病に効果があり、リウマチの体質改善に役立つと考えられてきた[9]。漢方では菝葜(ばつかつ)と呼んで、膀胱炎腫れ物に治療薬として使われる[3]。民間療法として、おできにきび、腫れ物などに、乾燥根茎1日量10 - 15グラムを、水200 ccでとろ火にて半量になるまで煎じ、3回に分けて服用する用法が知られている[9]

若葉は5 - 6月、果実は10 - 11月ころに採取し、食用にできる[3]。若葉は軽く茹でて水にさらし、お浸し和え物炒め物などに調理される[3]。赤い果実は、そのまま生食したり、焼酎果糖を加えて漬け込んで果実酒にもできる[3]四国地方などの西日本の地域では、葉で菓子柏餅を包む風習もある[3]。紀州などでは、サルトリイバラの葉で包むので柏餅とはよばず、五郎四郎餅とよばれる[7]。かつては、葉を乾燥させてお茶代わりに飲んだり、タバコに混ぜたりしたといわれる[3]園芸用では、庭園の添景木に使われたり、赤く熟す果実は水分が少ないため生花に向いている[15]。繁殖は、秋に赤く熟した果実をつぶして取り出した種子を水洗いして保存し、3月頃に播種する[9]

近縁種

中国では近縁種のサンキライ(山帰来)も自生する。サルトリイバラは、中国の何にあたる植物なのか種々の説があり、土伏苓(どぶくりょう)、菝葜(ばっけい)などとされる[9]。中国の山帰来の代用品として、和の山帰来とするのは、サルトリイバラの根茎である[9][7]

脚注

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Smilax china L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年12月6日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “BG Plants簡易検索結果表示”. 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList). 千葉大学. 2013年12月6日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k 奥田重俊監修 講談社編 1996, p. 108.
  4. ^ a b 辻井達一 2006, p. 211.
  5. ^ a b c d 大嶋敏昭監修 2002, p. 191.
  6. ^ a b c d 谷川栄子 2015, p. 106.
  7. ^ a b c d e f 辻井達一 2006, p. 212.
  8. ^ 樹に咲く花』 492頁。
  9. ^ a b c d e f g h i j k 馬場篤 1996, p. 57.
  10. ^ a b c d 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓 2003, p. 176.
  11. ^ a b c d 鈴木庸夫 2005, p. 215.
  12. ^ a b c d 池田健蔵・遠藤博編 1997, p. 29.
  13. ^ a b c d 本田正次ほか監修 1984, p. 599.
  14. ^ a b 谷川栄子 2015, p. 107.
  15. ^ a b c 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2018, p. 245.
  16. ^ 猪又敏男編・解説、松本克臣写真『蝶』山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年(原著1996年)、205頁。ISBN 4-635-06062-4 
  17. ^ 森上信夫、林将之『昆虫の食草・食樹ハンドブック』文一総合出版、2007年、32頁。ISBN 978-4-8299-0026-0 
  18. ^ a b 辻井達一 2006, p. 214.

参考文献

関連項目

外部リンク