コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「クリノメーター」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
m 関連項目: Commonscat修正
m 外部リンクの修正 http:// -> web.archive.org (upp.so-net.ne.jp) (Botによる編集)
 
(10人の利用者による、間の20版が非表示)
1行目: 1行目:
{{簡易区別|鉱山業で用いられる傾斜の測定器具}}
{{告知|疑問|ウィキデータの対応項目、[[WP:JPOV]]の疑い|date=2020年11月}}
{{参照方法|date=2018年11月13日 (火) 06:24 (UTC)}}
{{参照方法|date=2018年11月13日 (火) 06:24 (UTC)}}
[[ファイル:Stratum compass-clar hg.jpg|thumb|250px|クリノメーターの一例]]
[[ファイル:Stratum compass-clar hg.jpg|thumb|250px|クリノメーターの一例]]
'''クリノメーター'''(clinometer)とは、[[地質調査]](地表踏査)に、[[地]]・[[層]]面などの[[走向]]・[[傾斜 (地質学)|傾斜]]る[[道具]]る。[[レンズ#ルーペ|ルーペ]]・[[ハンマー (地質調査)|ハンマー]]と共に、地質調査の[[三種の神器]]とも呼ばれる<ref name="Shibata2017">{{Cite journal |title= 野沢 保博士のフィールドノート |url= http://www.num.nagoya-u.ac.jp/outline/report/pdf/032_02.pdf |accessdate= 2020-09-13 |journal= 名古屋大学博物館報告 |volume= 32 |pages= 17-25 |year= 2017 |format= PDF |author1= 柴田賢 |author2= 鬼頭剛 |ref= {{SfnRef|柴田|鬼頭|2017}} |doi= 10.18999/bulnum.032.02}}</ref>。間縄測量などの簡単な[[測量]]にも使える。
'''クリノメーター'''とは、[[地質調査]](地表踏査)に、[[面構造 (質学)|面構造]]および{{仮リンク|線構造 (地質学)|en|Lineation (geology)|label=線構造}}の測定を行うときに用いる[[道具]]である{{Sfn|天野秋山|2004|p=53}}。面構造の場合は、[[層]]面などの[[走向]]・[[傾斜 (地質学)|傾斜]]利用され{{Sfn|天野・秋山|2004|p=53}}
[[レンズ#ルーペ|ルーペ]]・[[ハンマー (地質調査)|ハンマー]]と共に、地質調査の[[三種の神器]]とも呼ばれる<ref name="Shibata2017">{{Cite journal |title= 野沢 保博士のフィールドノート |url= http://www.num.nagoya-u.ac.jp/outline/report/pdf/032_02.pdf |accessdate= 2020-09-13 |journal= 名古屋大学博物館報告 |volume= 32 |pages= 17-25 |year= 2017 |format= PDF |author1= 柴田賢 |author2= 鬼頭剛 |ref= {{SfnRef|柴田|鬼頭|2017}} |doi= 10.18999/bulnum.032.02}}</ref>。間縄測量などの簡単な[[測量]]にも使える。

なお、英語圏では {{en|compass and clinometer}} や {{en|geological compass}} などとよばれる{{Sfn|清水|1996|p=361}}。この器具のことをクリノメーターというのは日本国内に限られる{{Sfn|清水|1996|p=361}}。


== 概要 ==
== 概要 ==
[[ファイル:Clinometer-name.jpg|thumb|250px|'''クリノメーターの各部位の名前'''<br/>コンパスの東西表示が逆になっている点、方位目盛りが90度表示である点が特徴。]]
[[ファイル:Clinometer-name.jpg|thumb|250px|'''日本国内で使用されるクリノメーターの各部位の名前'''<br/>コンパスの東西表示が逆になっている点、方位目盛りが90度表示である点が特徴。]]
'''クリノメーター'''主に[[傾斜計]]([[振り子]])・[[方位磁針]]・[[水準器]]から構成される。[[日本]]で使われているクリノメーターの特徴は
日本では、板付きクリノメーターがよく用いられる{{Sfn|天野・秋山|2004|p=53}}。日本でよく使用されるクリノメーターは、[[方位磁針]]・[[傾斜計]]([[振り子]])・[[水準器]]から構成される{{Sfn|久田|2011|p=54}}特徴として、読み取りの便宜上、方位磁針の東・西の表示が逆になっている点{{Sfn|天野・秋山|2004|p=53}}方位角度が360°表示でなく90°表示になっている点が挙げられる。

*読み取りの便宜上、通常と違い方位磁針の[[東]]・[[西]]の表示が逆になっている
日本国内においては、本体の材質は従来は[[木材|木]]もしくは[[アルミニウム合金]]だったが、近年では[[プラスチック]]製も登場した。振り子と磁針がオイルダンプされたカプセルに封入されているのも特徴である。また最近になって[[デジタル]]式クリノメーターも実用化された。
*方位角度が360°表示でなく90°表示になっている

の2点である。日本国内においては、本体の材質は従来は[[木材|木]]もしくは[[アルミニウム合金]]だったが、近年では[[プラスチック]]製も登場した。振り子と磁針がオイルダンプされたカプセルに封入されているのも特徴である。また最近になって[[デジタル]]式クリノメーターも実用化された。
このほか、日本ではクリノコンパスも用いられている{{Sfn|久田|2011|p=54}}。

[[File:Brunton.JPG|thumb|欧米で使用されるブラントンコンパス]]
なお、欧米では、[[ブラントンコンパス]]がよく用いられる{{Sfn|久田|2011|p=54}}。ブラントンコンパスは、方位磁針・水準器・傾斜器から構成されている{{Sfn|久田|2011|p=54}}。


== 測定方法 ==
== 面構造の測定方法 ==
=== 走向の測定 ===
=== 走向の測定 ===
測定面にクリノメーターの長辺を[[水平]]に当てて、磁針の示す[[方位角]]を読み取る。 
測定面にクリノメーターの長辺を[[水平]]に当てて、磁針の示す[[方位角]]を読み取る。 
20行目: 30行目:
クリノメーターを当てるだけの広さの適当な面が無い、あるいは測定面に近寄れないなどの場合に、適当な板を測定面と平行に固定し、その板の面を測定することもよくある。実際上、測定面が理想的な[[平面]]なのは稀で、大抵は凸凹していたりうねっていたりするので、測定面全体としての平均的な走向・傾斜を正確に測定するには、むしろ補助走向板を常時、活用するのが望ましい。
クリノメーターを当てるだけの広さの適当な面が無い、あるいは測定面に近寄れないなどの場合に、適当な板を測定面と平行に固定し、その板の面を測定することもよくある。実際上、測定面が理想的な[[平面]]なのは稀で、大抵は凸凹していたりうねっていたりするので、測定面全体としての平均的な走向・傾斜を正確に測定するには、むしろ補助走向板を常時、活用するのが望ましい。


<gallery width="250px" perrow="2"|thumb|>
<gallery width="250px" perrow="2" |thumb|="">
ファイル:走向.gif|走向の測定方法
ファイル:走向.gif|走向の測定方法
ファイル:傾斜.gif|傾斜の測定方法
ファイル:傾斜.gif|傾斜の測定方法
</gallery>
</gallery>


== 東西逆表示ルーツ ==
== 線構造測定方法 ==
{{節スタブ|date=2020年11月}}
1650年ごろ[[長崎]]に来た[[オランダ人]][[医師]][[カスパル]] (Caspal) によって、当時の[[ヨーロッパ]]の測量技術が伝えられ、後に規矩(きく)術として伝承し、実用化された。その一人の[[金沢清左衛門]]が、[[航海]]用に世界初となる東西が逆の磁石逆盤を考案した。そのうちに当時[[振矩師]](ふりがねし)と呼ばれた[[鉱山]]の測量家達がその方式を取り入れて使い始めた方位測定器が、現在のクリノメーターの前身であるらしい<ref>[http://ci.nii.ac.jp/naid/110003038969/ 清水大吉郎、1984]</ref>。
線構造の測定の際は、まず、線構造の層理面についてクリノメーターを使って走向・傾斜を測定する{{Sfn|天野・秋山|2004|p=55}}。次に、層理面上に走向線をかき、走向線と線構造のなす角({{仮リンク|レーク (地質学)|en|Rake (geology)|label=レーク}})を分度器で測定する{{Sfn|天野・秋山|2004|pp=55-56}}。

また、トレンドは、走向板を走向線上で垂直に立てたうえで、クリノメーターで走向を測定することで直接把握できる{{Sfn|天野・秋山|2004|p=57}}。プランジは、クリノメーターの長辺を走向線上で垂直に立てることで測定できる{{Sfn|天野・秋山|2004|p=57}}。


== 日本最古のクリノメーターを発見 ==
== 日本最古のクリノメーターを発見 ==
[[岩松暉]]によると、日本最古と思われるクリノメーターは[[尚古集成館]]にて発見された。
[[岩松暉]]によると、日本最古と思われるクリノメーターは[[尚古集成館]]にて発見された<ref>{{cite journal|和書|author=岩松暉|title=実践的地質学の源流としての薩摩|journal=鹿児島県地学会誌|number=62|pages=17-32|year=1989|url=http://fung.html.xdomain.jp/miscellany/practice.html|accessdate=2021-06-30|archiveurl=|archivedate=}}</ref>
<blockquote>名票には単なる測量器械とあった。しかし、東西が逆に刻印されているし、何よりも振子が付いている。おまけに90゜までの目盛も打ってある。明らかに傾斜を測定する道具である。方位を狙う折り畳み式の[[アリダード]]まであり、鏡がないだけでブラントンコンパスそっくり、ただ、水準器がない。裏にネジ山が切ってあるところをみると、平板など別なものに付けて使ったものらしい。恐らくそれに水準器が付いていたのであろう。そのためか,本体には製造会社名や国名など一切書かれていない。どうしてこんなものが尚古集成館にあるのだろうか<ref>[http://www005.upp.so-net.ne.jp/fung/miscellany/practice.html 岩松暉(1989)]</ref>。</blockquote>
[[地質学者]]ならではの発見であった。


== クリノメーターの分類 ==
== クリノメーターの分類 ==
{{独自研究|section=1|date=2022年11月}}
===従来よりあるクリノメーター===
===従来よりあるクリノメーター===
木またはアルミニウム合金製で、方位磁針・傾斜計は[[ガラス]]板で覆われている。多くの[[地質学|地質]][[学生]]・[[研究者]]・[[技術者]]などが長年、慣れ親しんでいるモデルである。
木またはアルミニウム合金製で、方位磁針・傾斜計は[[ガラス]]板で覆われている。多くの[[地質学|地質]][[学生]]・[[研究者]]・[[技術者]]などが長年、慣れ親しんでいるモデルである。
40行目: 52行目:
|height=200
|height=200
|lines=2
|lines=2
|File:ClinomaterWood.jpg|木製クリノメーター<br/>[[教科書]]にも登場する、一番オーソドックスなクリノメーター。木製なの手によくなじみ、軽くて、水に落としても沈まない。
|File:ClinomaterWood.jpg|木製クリノメーター<br/>[[教科書]]にも登場する、一番オーソドックスなクリノメーター。木製で水に落としても沈まない。
|File:ClinometerAluminium.jpg|アルミ合金製クリノメーター<br/>木製クリノメーターと構造はほぼ同じである。初心者からベテランまで幅広くされている。
|File:ClinometerAluminium.jpg|アルミ合金製クリノメーター<br/>木製クリノメーターと構造はほぼ同じである。初心者からベテランまで幅広く用いられる。
|File:DSC00830.JPG|深田式クリノコンパス<br/>名器である。ベテラン向き。走向角・傾斜角を高い[[精度]]で測定できるところが画期的である。メーカーの昭和測器の都合で生産は打ち切られている。最新の情報によると、本器を若干、小型化したものが市販されている{{要出典|date=2017年10月}}。
|File:深田式クリノコンパス.JPG|深田式クリノコンパス<br/>ベテラン向き。走向角・傾斜角を高い[[精度]]で測定できる。メーカーの生産は打ち切られている。本器を若干、小型化したものが市販されている{{要出典|date=2017年10月}}。
}}
}}


=== プラスチック製のクリノメーター ===
=== プラスチック製のクリノメーター ===
プラスチック製で、方位磁針・傾斜計はオイルダンプされたカプセルに封入されている。当初は[[山岳]]用品店などで販売されているシルバ社やスント社の傾斜計装備された高級コンパスを個人が購入しクリノメーターとして使いやすいように水準器を貼り付けるなどの工夫をしていた。現在では複数の国内メーカーがシルバ社製のコンパスを改造してクリノコンパスとして市販している。最大の利点はオイルダンプであることで、磁針が静止したままほとんど振れず、読み取りが一瞬ですみ、し正確に読み取れる。水に強くて壊れにくく、磁針の磨耗もほとんど無く、メンテナンスフリーであるのもオイルダンプの利点である。本体がプラスチックなので非常に軽い(水には沈む)。 
プラスチック製で、方位磁針・傾斜計はオイルとともにカプセルに封入されている。当初はシルバ社やスント社の傾斜計装備高級コンパスを個人が購入し、水準器を貼り付けるなどの工夫をしていた。現在では複数の国内メーカーがシルバ社製のコンパスを改造してクリノコンパスとして市販している。最大の利点はオイル封入により磁針が静止したままほとんど振れず、読み取りが一瞬か正確に可能なことである。水に強くて壊れにくく、磁針の磨耗もほとんど無く、メンテナンスフリーである。本体がプラスチックなので非常に軽い(水には沈む)。 


{{Gallery
{{Gallery
81行目: 93行目:
|isbn = 4-320-04626-9
|isbn = 4-320-04626-9
}}
}}
* {{Cite book|和書|author=天野一男・秋山雅彦|title=フィールドジオロジー入門|year=2004|editor=日本地質学会フィールドジオロジー刊行委員会|series=
* {{Cite book|和書
フィールドジオロジー|publisher=共立出版|isbn=4-320-04681-1|ref={{SfnRef|天野・秋山|2004}}}}
|author = [[天野一男]]
|coauthors = [[秋山雅彦]]
|editor = [[日本地質学会]]フィールドジオロジー刊行委員会編
|title = フィールドジオロジー入門
|year = 2004
|publisher = 共立出版
|series = フィールドジオロジー
|isbn = 4-320-04681-1
}}
* {{Cite book|和書
* {{Cite book|和書
|author = [[坂幸恭]]
|author = [[坂幸恭]]
97行目: 101行目:
|publisher = [[朝倉書店]]
|publisher = [[朝倉書店]]
|isbn = 4-254-16234-0
|isbn = 4-254-16234-0
}}
* {{Cite book|和書
|author = [[地学団体研究会]]新版地学事典編集委員会編
|title = 地学事典
|edition = 新版
|year = 1996
|publisher = [[平凡社]]
|isbn = 4-582-11506-3
}}
}}
* {{Cite journal|和書
* {{Cite journal|和書
118行目: 114行目:
|issn=
|issn=
|doi=
|doi=
|url= http://ci.nii.ac.jp/Detail/detail.do?LOCALID=ART0003500494&lang=ja
|url= https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680516946176
|format= PDF
|format= PDF
}}
}}
* {{Cite book|和書|author=清水大吉郎|year=1996|chapter=クリノメーター|page=361|editor=[[地学団体研究会]]新版地学事典編集委員会 編|title=地学事典|edition=新版|publisher=[[平凡社]]|isbn=4-582-11506-3|ref={{SfnRef|清水|1996}}}}
* {{Cite book|和書|author=久田健一郎|year=2011|chapter=地質調査|pages=53-70|editor=上野健一・久田健一郎 編|title=地球学調査・解析の基礎|series=地球学シリーズ|publisher=古今書院|isbn=978-4-7722-5254-6|ref={{Sfnref|久田|2011}}}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
134行目: 132行目:
== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://gkiseki.web.fc2.com/book/ch04s03.html 走向傾斜の測り方]
* [http://gkiseki.web.fc2.com/book/ch04s03.html 走向傾斜の測り方]
* [http://www005.upp.so-net.ne.jp/fung/miscellany/practice.html 岩松暉応用地質雑文集]
* [https://web.archive.org/web/20040221184735/http://www005.upp.so-net.ne.jp/fung/miscellany/practice.html 岩松暉応用地質雑文集]


{{工具の種類}}
{{工具の種類}}

2024年12月21日 (土) 20:48時点における最新版

クリノメーターの一例

クリノメーターとは、地質調査(地表踏査)において、面構造および線構造英語版の測定を行うときに用いる道具である[1]。面構造の場合は、地層面などの走向傾斜の測定で利用される[1]

ルーペハンマーと共に、地質調査の三種の神器とも呼ばれる[2]。間縄測量などの簡単な測量にも使える。

なお、英語圏では compass and clinometergeological compass などとよばれる[3]。この器具のことをクリノメーターというのは日本国内に限られる[3]

概要

[編集]
日本国内で使用されるクリノメーターの各部位の名前
コンパスの東西表示が逆になっている点、方位目盛りが90度表示である点が特徴。

日本では、板付きクリノメーターがよく用いられる[1]。日本でよく使用されるクリノメーターは、方位磁針傾斜計振り子)・水準器から構成される[4]。特徴として、読み取りの便宜上、方位磁針の東・西の表示が逆になっている点[1]、方位角度が360°表示でなく90°表示になっている点が挙げられる。

日本国内においては、本体の材質は従来はもしくはアルミニウム合金だったが、近年ではプラスチック製も登場した。振り子と磁針がオイルダンプされたカプセルに封入されているのも特徴である。また最近になってデジタル式クリノメーターも実用化された。

このほか、日本ではクリノコンパスも用いられている[4]

欧米で使用されるブラントンコンパス

なお、欧米では、ブラントンコンパスがよく用いられる[4]。ブラントンコンパスは、方位磁針・水準器・傾斜器から構成されている[4]

面構造の測定方法

[編集]

走向の測定

[編集]

測定面にクリノメーターの長辺を水平に当てて、磁針の示す方位角を読み取る。 

傾斜の測定

[編集]

測定面の最大傾斜方向つまり走向方向に対して直角の方向にクリノメーターの長辺側の側面を当てて、傾斜計の示す傾斜角を読み取る。

補助走向板の活用

[編集]

クリノメーターを当てるだけの広さの適当な面が無い、あるいは測定面に近寄れないなどの場合に、適当な板を測定面と平行に固定し、その板の面を測定することもよくある。実際上、測定面が理想的な平面なのは稀で、大抵は凸凹していたりうねっていたりするので、測定面全体としての平均的な走向・傾斜を正確に測定するには、むしろ補助走向板を常時、活用するのが望ましい。

線構造の測定方法

[編集]

線構造の測定の際は、まず、線構造の層理面についてクリノメーターを使って走向・傾斜を測定する[5]。次に、層理面上に走向線をかき、走向線と線構造のなす角(レーク英語版)を分度器で測定する[6]

また、トレンドは、走向板を走向線上で垂直に立てたうえで、クリノメーターで走向を測定することで直接把握できる[7]。プランジは、クリノメーターの長辺を走向線上で垂直に立てることで測定できる[7]

日本最古のクリノメーターを発見

[編集]

岩松暉によると、日本最古と思われるクリノメーターは尚古集成館にて発見された[8]

クリノメーターの分類

[編集]

従来よりあるクリノメーター

[編集]

木またはアルミニウム合金製で、方位磁針・傾斜計はガラス板で覆われている。多くの地質学生研究者技術者などが長年、慣れ親しんでいるモデルである。

プラスチック製のクリノメーター

[編集]

プラスチック製で、方位磁針・傾斜計はオイルとともにカプセルに封入されている。当初はシルバ社やスント社の傾斜計装備の高級コンパスを個人が購入し、水準器を貼り付けるなどの工夫をしていた。現在では複数の国内メーカーがシルバ社製のコンパスを改造してクリノコンパスとして市販している。最大の利点はオイル封入により磁針が静止したままほとんど振れず、読み取りが一瞬かつ正確に可能なことである。水に強くて壊れにくく、磁針の磨耗もほとんど無く、メンテナンスフリーである。本体がプラスチックなので非常に軽い(水には沈む)。 

デジタルクリノメーター

[編集]

内蔵センサが測定するデジタル式のクリノメーター。読み取りが一瞬ですむ、結果を記録できる、GPS内蔵のものは同時に位置情報も記録できるなどの利点がある。さらに、測定・解析に手間がかかる線構造の方向も一瞬で知ることができる。 近年はスマートフォンの普及に伴って、スマートフォンをクリノメーター代わりに使用できるアプリケーションが開発されている。スマートフォンに内蔵されている地図アプリケーションと連携することにより、自動でルートマップを作成できるアプリケーションも存在している[9]。国内ではジーエスアイ株式会社などが開発、販売を行い、従来の外国製デジタルクリノメーターに比べ安価で機能的である。膨大なデータを扱う構造地質関係の分野や、GPSを活用しての地形図の使いにくい地域での地質調査に有効である。 

脚注

[編集]
  1. ^ a b c d 天野・秋山 2004, p. 53.
  2. ^ 柴田賢; 鬼頭剛 (2017). “野沢 保博士のフィールドノート” (PDF). 名古屋大学博物館報告 32: 17-25. doi:10.18999/bulnum.032.02. http://www.num.nagoya-u.ac.jp/outline/report/pdf/032_02.pdf 2020年9月13日閲覧。. 
  3. ^ a b 清水 1996, p. 361.
  4. ^ a b c d 久田 2011, p. 54.
  5. ^ 天野・秋山 2004, p. 55.
  6. ^ 天野・秋山 2004, pp. 55–56.
  7. ^ a b 天野・秋山 2004, p. 57.
  8. ^ 岩松暉「実践的地質学の源流としての薩摩」『鹿児島県地学会誌』第62号、1989年、17-32頁、2021年6月30日閲覧 
  9. ^ 小島佑季彦, 西開地一志, & 豊田守. (2011). Android 携帯端末の地質調査への応用. In 日本地質学会学術大会講演要旨 日本地質学会第 118 年学術大会・日本鉱物科学会 2011 年年会合同学術大会 (水戸大会) (pp. 29-29)., doi:10.14863/geosocabst.2011.0.29.0

参考文献

[編集]
  • 羽田忍『地質図の読み方・書き方』共立出版〈地学ワンポイント〉、1990年。ISBN 4-320-04626-9 
  • 天野一男・秋山雅彦 著、日本地質学会フィールドジオロジー刊行委員会 編『フィールドジオロジー入門』共立出版〈フィールドジオロジー〉、2004年。ISBN 4-320-04681-1 
  • 坂幸恭『地質調査と地質図』朝倉書店、1993年。ISBN 4-254-16234-0 
  • 清水大吉郎日本の"クリノメーター"の歴史」(PDF)『日本地質学会学術大会講演要旨』第91巻、日本地質学会、1984年、576頁。 
  • 清水大吉郎 著「クリノメーター」、地学団体研究会新版地学事典編集委員会 編 編『地学事典』(新版)平凡社、1996年、361頁。ISBN 4-582-11506-3 
  • 久田健一郎 著「地質調査」、上野健一・久田健一郎 編 編『地球学調査・解析の基礎』古今書院〈地球学シリーズ〉、2011年、53-70頁。ISBN 978-4-7722-5254-6 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]