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「日本国との平和条約第11条の解釈」の版間の差分

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日本国との平和条約 2006年9月23日 (土) 13:10から移転
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2006年10月6日 (金) 14:39時点における版

サンフランシスコ条約の11条解釈において様々な意見がある。各国に承認された外務省訳(条約正文ではない)では第11条の"Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan"を"極東国際軍事裁判所並びに国内外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判の受諾"と訳した。外務省は、"Japan accepts the judgments"の箇所を「裁判を受諾」と訳したものの、通常"the judgments"は「諸判決」と訳すほうが自然ともいえるとして、その文意については議論がされてきた。「裁判を受諾」では、何を受諾したかについて、日本語文として意味が不明瞭なため、その内容が問題となる。以下に表で分類する。"the judgments"を「裁判」と訳すか「諸判決」と訳すかでまず大分類される。

"the judgments"を外務省訳の「裁判」と理解した場合に、その「裁判」の語意を「一連の訴訟手続きそのもの」つまり通常我々が「裁判」として使っている語意で受け取るべきという見解と、「裁判」という言葉は法律用語で「判決」を意味するから「判決」と受け取るべきという見解がある。通常の意味の「裁判」の意味で受け取るべきと言う見解では、書き下した場合には「裁判を受け入れる」との意となり、「裁判」を判決と受け取るべきと言う見解では書き下した場合には、「結果を受け入れる」との意となる。

"the judgments"をそもそも「諸判決」と訳すべきと理解する者にも、意味において、外務省訳と対立する場合と、そうでない場合がある。外務省訳の「裁判」を「諸判決」と受け取った場合でも、「結果を受け入れる」と解釈するか、「諸判決を受け入れる」と解釈するかに分かれる。

表1 the judgments 判決か裁判か?
正文 accepts the judgments
外務省訳 裁判
翻訳 「裁判」で正しい あれはどう訳しても「諸判決」
解釈 「裁判」は一連の訴訟手続き全体 「裁判」は判決を指す 「諸判決」は諸判決
真意 「裁判」を受け入れる 「結果」を受け入れる 「諸判決」を受け入れる 「結果」を受け入れる

第11条の意味と政府答弁

東京裁判における判決、ないしは、そこにおける事実等の認定をめぐっての解釈に関する争いの中で、この条約の第11条の規定の一部により日本が「東京裁判を受諾」したのだから、その判決ないしは事実認定、ときにはそこから導かれた現在の政治状況等について、日本自身が認めているものと解する主張と、それを否定する主張の対立が見られる。

近年の政府の答弁においては、ジャッジメントの訳語については裁判という訳語が、正文に準ずるものとして締約国の間で承認されていることから、『これはそういうものとして受け止めるしかない』とした上で、「ジャッジメント」には、

  • 『ジャッジメントの内容となる文書、これは、従来から申し上げておりますとおり、裁判所の設立、あるいは審理、あるいはその根拠、管轄権の問題、あるいはその様々なこの訴因のもとになります事実認識、それから起訴状の訴因についての認定、それから判定、いわゆるバーディクトと英語で言いますけれども、あるいはその刑の宣告でありますセンテンス、そのすべてが含まれている』  (第162回国会 外交防衛委員会 第13号 平成17年6月2日(木曜日))

としている。

これをもって、政府は事実認定等を含めた裁判全体を受諾したのであるから、裁判の対象となった事項について、東京裁判の事実認定等以外の解釈はできない、などの意味で「東京裁判を受諾」したとし、政府もそれを認めている、と解する見解がある。

(しかしこれは日本側の付けた訳文に依る解釈のようで、 通常の法律解釈として、契約とちがって一方的な宣告である裁判において、judgmentを受け入れて刑に服することが、自動的に裁判の基礎の総てに承認の誓いをすることになるか、などの法理論は未確認である。)

別の解説としては、「1212頁にわたる多数意見の判決文の一部には東京裁判が正当なものであるということを宣言した箇所があり、日本はjudgmentsを具体的には判決文として受け入れたことで、自動的に東京裁判のあり方自体をその後も受け入れたことになる」とも語られる。

(当時の日本の理解や翻訳時の事情、その違いのもたらす意味があるかなどの詳細については未確認である。 またjudgmentsに判決文という意味が本来存在するかも同様である。)


これらに対立する見解もある。例えば、当時の国会で、

  • 『戦犯に関しましては、平和條約に特別の規定を置かない限り、平和條約の効力発生と同時に、戦犯に対する判決は将来に向つて効力を失い、裁判がまだ終つていない瀞は釈放しなければならないというのが国際法の原則であります。従つて十一條はそういう当然の結果にならないために置かれたものでございまして、第一段におきまして、日本は極東軍事裁判所の判決その他各連合国の軍事裁判所によつてなした裁判を承諾いたすということになつております。後段は--(略)--恩赦、釈放、減刑などに関する事柄--(略)』  (昭和26年10月11日の国会答弁、(第012回国会 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第2号))

とする政府答弁があることから、「独立するから国際法の原則が適用されて東京裁判は効力を失う、しかし戦犯を釈放しないで量刑を引き継ぐ約束をする、という理解と了解」 の元に、日本は条約を批准したのであり、それ以上の意味は発効しないという解釈である。  

また補足的なことがらだが、議論のおそらく精神的な部分について、

これらの議論で「独立条件、国際社会との約束」という言葉が使われることに対して、 国際法の原則にない約束が成立していても、後になって、本来の国際法上の独立の権利は損なわれない、とする意見もある。

(2006年時点で、アメリカとの取引の可能性を匂わす報道傾向が一部にあるが根拠は不明である。)

中国・韓国との関係

第25条によれば、「第21条の規定を留保して、この条約は、ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益を与えるものではない。」と定め、その第21条には、「この条約の第25条の規定にかかわらず、中国は、第10条及び第14条(a)2の利益を受ける権利を有し、朝鮮は、この条約の第2条、第4条、第9条及び第12条の利益を受ける権利を有する」とある。

そのため、ここでの「中国」と「朝鮮」が何を指すとしても、第11条が除外されており、また、両国と終結した平和条約にも特別の言及が見られない以上、中国(中華民国及び中華人民共和国)及び朝鮮(大韓民国及び朝鮮民主主義人民共和国)との関係で、中国・韓国が、東京裁判、そしてその裁判ないし判決の結果について干渉する権利はないとする主張がある。

なお、別に結ばれた日華(中華民国)平和条約において、戦争状態の結果生じた問題についてはサンフランシスコ平和条約に準ずるとされている。

外部リンク