「カリヨン」の版間の差分
m Botによる: {{Normdaten}}を追加 |
FlatLanguage (会話 | 投稿記録) m →音楽: 英語版が存在しない仮リンクを除去 |
||
(29人の利用者による、間の55版が非表示) | |||
1行目: | 1行目: | ||
{{otheruseslist|西洋の鐘の一種|投資銀行|カリヨン (投資銀行)|エドワード・エルガーの楽曲|カリヨン (エルガー)}} |
{{otheruseslist|西洋の鐘の一種|投資銀行|カリヨン (投資銀行)|エドワード・エルガーの楽曲|カリヨン (エルガー)}} |
||
[[Image:Carillon, Washington Park.JPG|thumb|right|200px|ワシントン公園のカリヨン。]] |
[[Image:Carillon, Washington Park.JPG|thumb|right|200px|ワシントン公園のカリヨン。]] |
||
[[Image:bellcontrols.jpg|thumb|right|200px|カリヨンのバトン鍵盤。]] |
<!--[[Image:bellcontrols.jpg|thumb|right|200px|カリヨンのバトン鍵盤。]]--> |
||
[[Image:Carillonneur.jpg|thumb| |
[[Image:Carillonneur.jpg|thumb|upright=1.14|200px|フランス・ペルピニャンのサン=ジャン=バプティスト教会でのブライアン・スウェイガーによるカリヨン演奏。]] |
||
'''カリヨン'''({{lang-fr-short|carillon}}、{{IPAc-en|US|ˈ|k|ær|ə|l|ɒ|n}} {{respell|KERR|əl|on}} or {{IPAc-en|UK|k|ə|ˈ|r|ɪ|l|j|ən}} {{respell|kə|RIL|yən}};{{sfn|"Carillon." ''Oxford English Dictionary''}}<ref>{{cite encyclopedia |title=Carillon |encyclopedia=Cambridge Advanced Learner's Dictionary {{enlink|Cambridge Advanced Learner's Dictionary|a=on}} |publisher=[[Cambridge University Press]] |url=https://dictionary.cambridge.org/us/dictionary/english/carillon |access-date=2022-04-21}}</ref> {{IPA-fr|kaʁijɔ̃|lang}})は、[[調律]]した[[鐘]]と[[鍵盤 (楽器)|鍵盤]]を組み合わせて演奏する有音程[[打楽器]]であり[[鍵盤楽器]]<ref name="carillon">{{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20160307042707/http://www.cs.yale.edu/homes/douglas-craig/bells/Basic/what-is-a-carillon.pdf |title=What is a carillon? |author=Marietta Douglas |date=2016-03-07}} Marietta Douglasによるカリヨンの解説。2002/06</ref>、[[体鳴楽器]]。日本語では'''組み鐘'''と訳される<ref name="Itami">{{Cite web|和書|url=https://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/SHIMIN/KOKUSAIHEIWA/1383653184806.html |title=フランドルの鐘(カリヨン) |website=伊丹市ホームページ|date=2021-03-31|accessdate=2021-05-27}}</ref>。音色を揃え調律した青銅製の鐘を複数組み合わせ、鍵盤を使ってメロディーと[[和声]]を演奏する。多くは塔状の建築物に納めた鐘を、塔内にあるコンソールから演奏する。現在の形態に近いものは15世紀に[[オランダ]]で開発され<ref name="Itami" />、19世紀まで[[ネーデルラント]](現在のベルギー、オランダ、フランスの一部)を中心に広まり、現代では世界中に分布している。 |
|||
'''カリヨン'''({{lang-fr-short|carillon}})は、複数の[[鐘]]を組み合わせて旋律を演奏できるようにしたものをいう。[[鐘楼]]建築物に設置され、最低23鐘2[[オクターブ]]以上で、バトン式[[鍵盤 (楽器)|鍵盤]]で演奏する<ref>{{citation|url=http://www.cs.yale.edu/homes/douglas-craig/bells/Basic/what-is-a-carillon.pdf|title=What is a carillon?|author=Marietta Douglas|year=2002}}</ref>。[[日本語]]では'''組み鐘'''と訳される。 |
|||
== 概要 == |
|||
カリヨンは[[鐘楼]]などの塔状の建築物として設置される楽器であり、歴史的には時報を流す目的で設置されてきた<ref name="gakkihaku">{{Cite web|和書|url=https://www.gakkihaku.jp/mgr/wp-content/uploads/2020/03/tayori8.pdf |title=浜松市楽器博物館だより No.8|author=浜松市楽器博物館 |accessdate=2021-11-01 |archivedate=2022-05-21 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20220521080340/https://www.gakkihaku.jp/mgr/wp-content/uploads/2020/03/tayori8.pdf }}</ref>。その多くは[[教会]]、[[学校]]、[[地方政府|地方自治体]]などの団体が保有している。演奏にはバトン式鍵盤とペダルを用いるため[[鍵盤楽器]]であり、鐘を叩くことで発音するため[[体鳴楽器]]である。 |
|||
カリヨンはタワーベルと同じくスイングベルから派生した楽器である。カリヨンの練習用の楽器から[[グロッケンシュピール]]が作られた。また、カリヨンの持つ自動演奏の仕掛けは[[オルゴール]]の元となった<ref name="orgel">{{Cite web|和書|url=http://www.musemuse.jp/Musemuse_Comment/illustration_carillon.html |title=カリヨンのしくみ |website=オルゴールの小さな博物館 |accessdate=2021-05-25 |archivedate=2022-03-20 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20220328054532/http://www.musemuse.jp/Musemuse_Comment/illustration_carillon.html}}</ref>。1999年にはベルギー、フランスの古いカリヨンが当時の技術、景観、あるいは重要な建築であると評価され、[[ベルギーとフランスの鐘楼群]]が世界遺産に登録されている。 |
|||
カリヨンを含めて、調律した鐘を並べて演奏する楽器には音色、サイズ、重さ、形状において多彩なバリエーションがある。カリヨンと演奏方法やアクション機構が同じでも鐘が23個(2オクターブ)以下のものはカリヨンではなくチャイムと呼ばれる<ref name="GCNAabout" />。 |
|||
カリヨンは大まかに伝統的カリヨンと非伝統的カリヨンの2つに分類される。伝統的カリヨンとは、人がバトン式鍵盤を用いて演奏し、電気式や電子式、コンピューターによるアクションの伝達を行わないものである。伝統的カリヨンは700ほどあると考えられており<ref name="PFINGST2012">{{Cite web|url=https://www.hkw.de/media/texte/pdf/2012_1/programm_5/pfingst_carillon_programm.pdf |title=PFINGST-CARILLON 2012|accessdate=2021-05-27}}</ref>、その多くはヨーロッパのネーデルラント周辺と、アメリカ合衆国にある。非伝統的カリヨンとは、鍵盤を持たず、人が演奏できないか、人が演奏してもその動力を電気式や電子式で鐘に伝えるようになっているものである<ref name="GCNAabout">{{Cite web|url=https://www.gcna.org/about-carillons|title=About Carillons|accessdate=2021-05-25}}</ref>。500個ほどの存在が知られており、その多くは西ヨーロッパにあると考えられている<!--訳注 日本国内やアジア圏のものはほとんどカウントされていない数値-->。数は少ないものの、演奏の仕組を小型化・軽量化して台車に乗るようした移動式のカリヨンもあり、トラベリングカリヨンと呼ばれている。 |
|||
伝統的カリヨンと非伝統的カリヨンの境界について、楽器によっては両方の特徴を持つものもあり、文献、団体などによって境界が異なる<ref name="TowerBellIntro">{{Cite web|url=http://www.towerbells.org/TowerBells.html#Section1 |title=Carillons, Tower Bells - Introduction |accessdate=2021-05-29}}</ref>。本記事では北アメリカ大陸カリヨン連盟(GCAN)の定義に従い、単にカリヨンと記載した際には「人が演奏可能なバトン式鍵盤を持ち、機械式のアクションで人力を伝達して2オクターブ以上の調律した鐘を叩いて演奏する楽器」を中心に記載する。 |
|||
楽器の数が限られているため、演奏者の数は少ない。カリヨン奏者となるためには、ベルギーやオランダにあるカリヨン専門の学校や、北アメリカの複数の大学のカリヨン奏者の育成コースで演奏方法を学ぶことができる。専門の学校を卒業するか、ギルド認定試験に合格することで認定カリヨン奏者になれる。 |
|||
日本国内にはカリヨンと呼ばれる楽器あるいはモニュメントが1993年時点で300箇所以上ある{{sfn|レア, et.al.|1994|p=5}}。そのほぼ全ては鍵盤を持たない自動演奏のみが可能なものか、鍵盤があっても動力を電気式で伝える非伝統的カリヨンであり、この項目でいうカリヨンには該当していない。日本国内でカリヨンに当てはまるものは4つ、そのうち3つが世界カリヨン協会にカリヨンとして登録されている<ref name="CarillonIJapan">{{Cite web |url=http://www.carillon.org/eng/fs_carillon.htm |title=Asia, World list of carillons |accessdate=2021-05-29 }}</ref>。また、いくつかの歴史的カリヨンの存在が確認されている。2021年時点で日本出身で認定を受けたカリヨン奏者は数人のみ知られており、2019年に日本カリヨン協会<ref name="ACAJ home">{{Cite web|和書|url=https://japan-carillon-association.jimdosite.com/|title=日本カリヨン協会|accessdate=2021-06-13}}</ref>、2020年に日本カリヨン演奏家協会<ref name="JCCS">{{Cite web|和書|url=https://jpncarillon.com//|title=日本カリヨン演奏家協会|accessdate=2021-06-13}}</ref>が設立されている。 |
|||
== 名称と語源 == |
|||
カリヨンという語は、18世紀ごろに古[[フランス語]]の {{Lang|fro|carignon}} (または {{Lang|fro|quarregon}} と綴る。「4個組みのベル」の意)から造られた。{{Lang|fro|quarregon}} はラテン語の {{Lang|la|quaternionem}}(クワテルニオ、「4個組」を意味する)、これはさらにラテン語の{{Lang|la|quater}}(「4回」を意味する)から来ている{{sfn|"Carillon." ''Online Etymology Dictionary''}}。最も初期のカリヨンは、4つの鐘を組み合わせて[[ウエストミンスターの鐘]]のようなメロディーを奏でていたためこう呼ばれた。 {{Lang|en|carillon}} という語はかつて楽器ではなく、複数の鐘で演奏するメロディーを指していた可能性がある{{sfn|"Carillon." ''Oxford English Dictionary''}}。ドイツ語では、フランス語の {{Lang|fr|carignon}} を使うかドイツ語で {{Lang|de|Glockenspiel}} (「鐘の演奏」を意味する)と呼ぶ。これは楽器名の[[グロッケンシュピール]]({{Lang|de|glockenspiel}})と同じ綴りだが区別する必要がある<ref>{{cite web |title=Was ist ein Carillon? |trans-title=What is a Carillon? |language=de |website=Deutsche Glockenspielvereinigung e.V. |url=https://glockenspieler.de/was-ist-ein-carillon |access-date=2021-04-27 |url-status=live |archivedate=2021-02-25 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210225212429/https://glockenspieler.de/was-ist-ein-carillon}}</ref>。オランダ語では {{lang|nl|beiaard}} と呼ばれており、その語源はよくわかっていない{{sfn|Rombouts|2014|p=62}}。 |
|||
カリヨンの演奏者をカリヨン奏者と呼び、英語圏ではフランス語から {{Lang|fr|carillonneur}} ({{IPAc-en|US|ˌ|k|ɛr|ə|l|ə|ˈ|n|ɜːr}} {{respell|KERR|ə|lə|NUR}}, {{IPAc-en|UK|k|ə|ˌ|r|ɪ|l|j|ə|ˈ|n|ɜːr}} {{respell|kə|RIL|yə|NUR|link=no}}{{sfn|"Carillonneur." Merriam-Webster Online}})、日本語でもこれを英語風に読んでカリヨネアと呼ぶことがある。カリヨン、カリヨネアは18世紀の[[スペイン継承戦争]]後にこの楽器がイギリス軍に紹介されてから英語話者の間で使われるようになった{{sfn|Price|1983|p=222|ps=: "The player of this unique keyboard is known in Flemish as a {{Lang|nl|beiaardier}} and in French as a {{Lang|fr|carillonneur}} , which last term was also adopted in English after the campaigns of [[ジョン・チャーチル (初代マールバラ公)|Marlborough]] brought British troops on to Flemish soil and gave a British march to be chimed from Flemish towers."}}。フランス語の {{Lang|fr|carillonneur}} はカリヨンを演奏する男性にのみ使われる言葉であり、フランス語で女性のカリヨン奏者を表す{{Lang|fr|carillonneuse}} は英語圏、日本語圏では使われていない。英語圏では他にカリヨン奏者を表す言葉として {{Lang|en|carillonist}} も使われている。{{Lang|en|carillonist}} のほうがスペルがわかりやすく発音も明快であるため、一部のカリヨン奏者は {{Lang|en|carillonneur}} を {{Lang|en|carillonist}} で置き換えることを望んでいる{{sfnm|Barnes|2014|1p=41|Halsted|2012|2p=10}}。2018年に、世界カリヨン連盟は会話で使用するのに好ましい用語として ''carillonist'' を採用した{{sfn|Ng|Lewis|2020|p=1}}。 |
|||
== 特徴 == |
|||
=== 構造 === |
|||
==== 鍵盤 ==== |
|||
[[File:Clavier du carillon.jpg|thumb|alt=カリヨン演奏に使用する木製のバトン式鍵盤とペダル|フンンス、[[メーヌ=エ=ロワール県]]の聖心教会のカリヨンコンソール]] |
|||
カリヨンは[[鍵盤楽器]]であり、人間が演奏可能なバトン状の鍵盤を持つ。鍵盤の形状はピアノやオルガンとは大きく異なるものの、鍵盤の配列はよく似ている{{sfn|Lehr|2005|p=85}}。他の鍵盤楽器のキーに当たるものは丸みを帯びた木の棒(=バトン)で作られており、長さは20cm弱、太さ2cm弱の独特の形状をしている。鍵盤の構成は他の鍵盤楽器同様、ピアノの白鍵にあたる[[全音階]]のバトンが横一列に並び、その5cm〜10cmほど上にピアノの黒鍵に相当する半音階のバトンが並ぶ{{sfn|Lehr|2005|p=85}}。バトンのサイズはピアノやオルガンの鍵盤よりも大きく、隣り合うバトン同士は5cmほど離れている。奏者は手を握り、拳の小指側でバトンを叩くようにして演奏する{{sfn|Gouwens|2017|p=3}}。そのため片方の腕で出せる音は基本的には一度に1音のみとなり、両手両足を用いても一度に4音となる。低音側の1.5オクターブから2オクターブはペダルにも割り当てられ、鍵盤でもペダルでも音を出すことができる。ペダルと鍵盤は接続されており、ペダルを踏むと同じ音の鍵盤側のバトンも下がる挙動となる{{sfn|Lehr|2005|p=85}}。カリヨンのペダルはオルガンほど長くはなく、短く太く、間隔が広く作られている{{sfn|Courter, et.al.|2006|p=2}}<ref group="注釈" name="WCF pedal">WCF keyboard 2006 の規格ではナチュラルのペダルの長さはB1の音で129mm, 太さ 30mm、ペダル間隔は85mm</ref>。 |
|||
20世紀以降、カリヨンの鍵盤とペダルには、北アメリカカリヨンギルド (GCNA) による規格と、北ヨーロッパ規格の二つが存在していた。二つの規格は外側のペダルが内側に向けて曲がっているかどうか、キーのストロークなど幾つかの点で違いがあった{{sfnm|Courter et al.|2006|1p=3|Rombouts|2014|2pp=292–93}}。2006年に世界カリヨン協会がこれらをまとめたWCF Keyboard 2006を作成し、それ以降カリヨンを新たに作るか、既存のキーボードを改修する際の基準として使うよう推奨している<ref>{{cite web |title=Carillon Keyboard Standards |website=World Carillon Federation |url=https://www.carillon.org/eng/dynamic_frame_eng.htm?https://www.carillon.org/eng/actueel/gdansk_3.htm |access-date=2021-04-27 |url-status=live |archivedate=2021-04-27 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210427185924/https://www.carillon.org/eng/dynamic_frame_eng.htm?https%3A%2F%2Fwww.carillon.org%2Feng%2Factueel%2Fgdansk_3.htm}}</ref>。 |
|||
==== アクション機構 ==== |
|||
[[File:Vredesbeiaard aarschot.jpg|thumb|left|alt=塔内に吊り下げられている複数の鐘とワイヤーによるアクション機構|ベルギー、[[アールスホット]]にある49の鐘を持つピース・カリヨンの鐘とアクション機構<ref>{{cite web |title=BEARSTPC |website=TowerBells.org |url=http://www.towerbells.org/data/BEARSTPC.HTM |access-date=2021-08-04 |archivedate=2021-08-04 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210804223306/http://www.towerbells.org/data/BEARSTPC.HTM |url-status=live }}</ref>]] |
|||
鍵盤のそれぞれのキーは、[[ステンレス]]製のワイヤーによる伝達システムに接続している。キーを押した力でワイヤーを引っ張り、その力を滑車を経由して他のワイヤーに伝達し、最終的にクラッパー(鐘の舌)を鐘にむけて揺れる動きに変換する。クラッパーは静止時には鐘から5cmほどの距離で停止する{{sfn|Lehr|2005|p=76}}。音の低い大きな鐘では、クラッパーは音を出した後重力によって元の位置に戻る。音の高い小さな鐘では、クラッパーを元の位置に戻すための戻りバネ (return spring) を取り付けており、一度の打鍵で何度も鳴らないようになっている{{sfn|Lehr|2005|p=84}}。大きな鐘のクラッパーは大きく重いためこの機構は不要である{{sfn|Lehr|2005|p=79}}。鍵盤のすぐ上には、ターンバックル(引き締めネジ)と呼ばれるワイヤーの調節機構を持ち、温度変化で伸び縮みするワイヤーを調節できる{{sfn|Lehr|2005|p=85}}。 |
|||
==== 鐘の収容 ==== |
|||
カップ型をした青銅製の鐘は、塔の頂上部の鋼鉄や木製の梁に吊り下げられる。鐘の配置は設置する空間、塔の高さと構造、鐘の数とサイズ、重さによって異なる配置となる。特に大きく重い低音の鐘は、音のバランスを確保するために演奏室の下に配置されることが多い{{sfn|Lehr|2005|pp=86–87}}。 |
|||
ほとんどのカリヨンでは、演奏時にはクラッパーだけが動いて音を出し、鐘は動かない{{sfnm|Rice|1914|1p=23|Lehr|2005|2p=10}}。一部の楽器にのみ、一番重い鐘を揺らして[[スイングベル]]のように音を出す機構を持つものがある<ref>{{Cite web |title=Playing Mechanism |publisher=The Guild of Carillonneurs in North America{{enlink|The Guild of Carillonneurs in North America|a=on}} |url=https://www.gcna.org/playing-mechanism |access-date=2021-02-16 |url-status=live |archivedate=2021-01-23 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210123212459/https://www.gcna.org/playing-mechanism}}</ref>。 |
|||
==== 自動演奏機構 ==== |
|||
[[File:The_Belfry_Ghent.jpg|thumb|right|alt=金属の筒に杭を打ち込んだ大型の自動演奏用シリンダー|ドイツ、[[ゲント]]の鐘楼にある自動演奏のためのシリンダー]] |
|||
{{Double image aside|destra|Salzburg Glockenspiel 01.jpg|160|Salzburg Glockenspiel 02.jpg|160|[[ザルツブルグ]]の自動演奏カリヨンのシリンダー。音を出す箇所を指定するために杭を打ち込む穴が7940個開けられている}} |
|||
カリヨンには、単純な曲や[[ウェストミンスターの鐘]]の自動演奏機構を備えているものがある{{sfn|Lehr|2005|pp=59–60}}。ヨーロッパでは多くのカリヨンが時計に接続した大きな金属製のシリンダー状の演奏ドラムを使用している{{sfn|Lehr|2005|pp=87–88}}。演奏ドラムの表面には金属製の杭を打ち込んであり、そのすぐ脇に鐘を鳴らすハンマーに接続したレバーを並べて設置している。時刻が来てドラムを回転させると、杭がレバーに引っかかり、さらに回転すると杭からレバーが外れ、その力でハンマーが鐘を鳴らす構造となっている{{sfn|Lehr|2005|pp=90–95}}。杭は一時間おき、あるいは15分おきに簡単な曲を演奏するように配列されている。この機構の時計をゼンマイに、シリンダー部分を小型化、鐘をくし型の金属板にしたものが現代のシリンダー型の[[オルゴール]]である。 |
|||
北米のカリヨンでは演奏ドラムのシステムはあまり一般的ではなく、代わりに紙テープと空気圧による演奏システムを持つものがある{{sfn|Lehr|2005|pp=98}}。 |
|||
==== 重量 ==== |
|||
[[パイプオルガン]]と並んで、カリヨンは世界で最も重い楽器の一つである。カリヨンの重量は鐘のみでも4.5トン〜15トンほどであり、最も軽いものでも1トン、最も重い[[ニューヨーク]]、[[リバーサイド教会]]にある{{仮リンク|ローラ・スペルマン・ロックフェラー|en|Laura Spelman Rockefeller}}記念カリヨンのものでは91トンにもなる。一組のカリヨンの中で最も大きく重い鐘は{{仮リンク|ブルドン (鐘)|en|Bourdon (bell)}}と呼ばれる。ローラ・スペルマン・ロックフェラー記念カリヨンのブルドンは、カリヨン用に調律された鐘のなかで最も重いキャスティング(鐘の音が出る金属部分)であり、他のカリヨンの一番低い音よりもさらに一オクターブ低い音を出すことができる{{sfn|Rombouts|2014|p=310}}<ref>{{cite web |title=Carillon |website=Music at Riverside |publisher=The Riverside Church in the City of New York |url=https://www.trcnyc.org/music/ |access-date=2021-02-06 |url-status=live |archivedate=2020-12-03 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201203204255/https://www.trcnyc.org/music/}}</ref>。ロックフェラー記念カリヨンの鐘以外の発音部分、固定鐘、スングベル、クラッパー、梁などの重量を加えると227トン前後の重量になる<ref>{{cite report |title=The Riverside Church |publisher=[[New York City Landmarks Preservation Commission]] |year=2000|date=2000-05-16 |page=7 |url=http://s-media.nyc.gov/agencies/lpc/lp/2037.pdf |accessdate=2021-05-05 |url-status=live |archivedate=2021-03-16 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210316010628/http://s-media.nyc.gov/agencies/lpc/lp/2037.pdf}}</ref>。 |
|||
=== 音 === |
|||
==== 調律 ==== |
|||
<!--{{Further|鐘史学|鐘の鋳造}}--> |
|||
カリヨンは鐘を叩くことで音を出すため、[[ザックス=ホルンボステル分類]]では打奏体鳴楽器の舌奏式釣鐘(111.242.222)に分類される<ref>{{cite web |author1-last=Von Hornbostel |author1-first=Erich |author1-link=Erich von Hornbostel |author2-last=Sachs |author2-first=Curt |author2-link=Curt Sachs |editor-last=Guizzi |editor-first=Febo |translator1-last=Baines |translator1-first=Anthony |translator1-link=Anthony Baines |translator2-last=Wachsmann |translator2-first=Klaus |translator2-link=Klaus Wachsmann |title=Classification of Musical Instruments |year=2018 |publisher=Fondazione Ugo e Olga Levi Onlus |page=11 |url=https://www.suonoeimmagine.unito.it/SAMIC/HS_REF_EN_v01_072018.pdf |access-date=2021-08-01 |url-status=live |archivedate=2020-10-28 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201028165738/https://www.suonoeimmagine.unito.it/SAMIC/HS_REF_EN_v01_072018.pdf}}</ref>。カリヨンに使用する鐘は、通常の銅よりも大きな剛性と共鳴音を得るために[[ベルブロンズ]](または{{仮リンク|ベルメタル|en|Bell metal}})と呼ばれる[[銅]]と[[スズ]]の特殊な合金で作る{{sfnm|Rombouts|2014|1p=45|Johnston|1986|2p=40}}。鐘の音色と音質は、鐘の重さと輪郭、形状によって決まり、鐘が欠けたり腐食したりしなければ鐘の音が変化することはない{{sfn|Price|1983|p=210}}。鐘の形状に応じて[[倍音]]と部分音の構成が変化する{{sfn|Gouwens|2013|pp=72–73}}。倍音、部分音には調和する音も調和しない音の両方があり、心地よい、調和のとれた一連の音色を生み出すには鐘の輪郭を注意深く調整する必要がある。鐘の製作者は通常5つの主要な音程に焦点を合わせて調整を行う。特に、ティアス (tierce) と呼ばれる[[短三度]]の倍音は、カリヨンの独特の音を生み出すことが知られており、現在も研究の対象となっている{{sfn|Lehr|2005|pp=37–42, 50–51}}。 |
|||
鋳造のみによって完全に調律した鐘を造ることができないため、鐘はやや厚めに鋳造し、[[旋盤]]で表面を削りとって調律を行う。音色の調整が完了すると、以後鐘の音色が変わることはほとんどなく、設置後に鐘を劣化させるのは火事と大気汚染だけであると言われている{{sfn|Lehr|2005|pp=37–40}}。 古いヨーロッパのカリヨンは[[中全音律]]に調律されていた。現代のカリヨン、特に北米のカリヨンは[[平均律]]に調整されている{{sfn|Brink|2017}}。 |
|||
{{Listen |
|||
| header = カリヨンの音声サンプル |
|||
| type = music |
|||
| filename = Twinkle Twinkle Little Star on the Netherlands Carillon.ogg |
|||
| title = 北米のカリヨン{{nowrap|(3 min 53 s)}} |
|||
| description = リサ・ロニーの演奏する {{仮リンク|ネーデルランド・カリヨン|en|Netherlands Carillon}} 2012年 |
|||
| filename2 = Luksemburgo, katedralo dNS, kariljono, 1.ogg |
|||
| title2 = ルクセンブルガーカリヨン {{nowrap|(1 min 6 s)}} |
|||
| description2 = [[ノートルダム大聖堂 (ルクセンブルク)]]のカリヨン, 2018年 |
|||
| filename3 = O Canada and God Save the King instrumental 1927.ogg |
|||
| title3 = カナダのカリヨン{{nowrap|(3 min 20 s)}} |
|||
| description3 = パーシバル・プライスが演奏する {{仮リンク|ピース・タワー|en|Peace Tower}}カリヨン 1927年 |
|||
}} |
|||
==== 音量 ==== |
|||
カリヨンにはピアノと同等か、それ以上の[[ダイナミックレンジ]]を持つ楽器が存在する。演奏者は演奏時のタッチによって幅広い音量を表現できる。大きな鐘(低い音)のダイナミックレンジは小さい鐘(高い音)よりも広いものとなる。小さな鐘は質量が少ないため、大きな鐘のごく一部の音量しか表現することができない。 |
|||
==== 音域 ==== |
|||
カリヨンの音域はそのカリヨンの鐘の数に比例し、鐘の数は主に楽器を造る際の資金で決まる。大きな鐘の鋳造コストは小さいものよりも高く、鐘を多く鋳造するにはより多くの資金が必要となる。カリヨンと呼ぶには、少なくとも23個(2オクターブ)以上の鐘を持つことが条件となり、それ未満の楽器は[[チャイム]]{{Enlink|Chime (bell instrument)|en}} と呼ばれる{{sfnm|Rice|1914|1p=23|Rombouts|2014|2p=310|Brink|2017|3p=|"Organization." World Carillon Federation||4p=|"Carillon." ''Encyclopaedia Britannica''|5p=}}。カリヨンの音域に標準的な規格はなく{{sfn|Brink|2017}}、主に鐘の個数によって幾つかの小分類が使用されている。 |
|||
* 23個 - 27個の鐘を持つものは2オクターブカリヨン、35個から39個の鐘を持つものは3オクターブカリヨンと呼ばれる。これらのカリヨンで演奏するには、狭い音域向けに書かれた楽譜を使用する<ref>{{cite web |title=A Musical Instrument |publisher=The Guild of Carillonneurs in North America |url=https://www.gcna.org/carillon-instrument |access-date=2021-02-16 |url-status=live |archivedate=2021-01-23 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210123212451/https://www.gcna.org/carillon-instrument}}</ref>。 |
|||
* 45個 - 50個の鐘を持つカリヨン(4オクターブ)はコンサートカリヨン、またはスタンダードカリヨンと呼ばれる{{sfn|Lehr|2005|p=60}}。 |
|||
* 50個以上の鐘を持つものはしばしばグレートカリヨンやグランドカリヨンなどと呼ばれる<ref group="注釈" name="grateCarillonExamples">例: |
|||
* {{cite magazine |last=Rodriguez |first=Susan T. |title=Metz Bicentennial Grand Carillon, Indiana University |work=Architect Magazine{{Enlink|Architect Magazine|en}} |date=2020-10-09 |url=https://www.architectmagazine.com/project-gallery/metz-bicentennial-grand-carillon-indiana-university_o |archivedate=2021-01-19 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210119023909/https://www.architectmagazine.com/project-gallery/metz-bicentennial-grand-carillon-indiana-university_o |url-status=live |access-date=2021-05-17}} |
|||
* {{cite press release |last=LaRocca |first=Aaron |title=Netherlands Carillon to be Restored and Elevated to 'Grand Carillon' Status |date=2019-10-21 |publisher=[[National Park Service]] |url=https://www.nps.gov/gwmp/learn/news/netherlands-carillon-to-be-restored-and-elevated-to-grand-carillon-status.htm |access-date=2021-05-17|archivedate=2021-06-21 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210613192848/https://www.nps.gov/gwmp/learn/news/netherlands-carillon-to-be-restored-and-elevated-to-grand-carillon-status.htm |url-status=live }} |
|||
* {{cite web |title=Millennium Carillon in Moser Tower & Visitor Center |website=Naperville Park District |url=https://www.napervilleparks.org/facilities/millenniumcarillon |access-date=2021-05-17|archivedate=2021-05-17 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210517125213/https://www.napervilleparks.org/facilities/millenniumcarillon |url-status=live }} |
|||
* {{cite news |last=Harhen |first=Nora |title=Wait, the Campanile’s Bells Aren’t Automated? |work=The Daily Californian{{Enlink|The Daily Californian|en}} |date=2014-11-17 |url=https://www.dailycal.org/2014/11/07/wait-campaniles-bells-arent-automated/ |access-date=2021-05-17|archivedate=2021-03-17 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210517125213/https://www.dailycal.org/2014/11/07/wait-campaniles-bells-arent-automated/ |url-status=live }}</ref>。 |
|||
* 15個から23個の鐘を持つカリヨンのうち、1940年以前に作られたものは、世界カリヨン協会では歴史的カリヨンと呼んでいる{{sfn|"Organization." World Carillon Federation}}。 |
|||
鐘の個数では、[[ミシガン州]][[ブルームフィールドヒルズ]]にあるカーク・イン・ザ・ヒルズ長老派教会にあるカークカリヨンと、[[韓国]]の[[大田広域市]]にある大田科学技術大学のカリヨンがいずれも77個の鐘を持ち、世界最大となっている{{sfn|Slater|2003|p=19|ps=: "The Kirk-in-the-Hills 77-bell carillon is famous as the carillon with the world’s largest number of bells (bourdon 12,860 pounds [5,833 kg], note G)."}}<ref>{{cite web |title=Carillon |website=Music Ministry |publisher=Kirk in the Hills{{enlink|Kirk in the Hills|a=on}} |url=https://kirkinthehills.org/worship/music/ |access-date=2021-02-07 |url-status=live |archivedate=2021-02-07 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210207165922/https://kirkinthehills.org/worship/music/}}</ref>。 |
|||
[[File:Forty-Nine-Bell Carillon with B-flat in Bass Staff Notation.png|thumb|alt=カリヨンの音域範囲を五線譜で示したもの|49鐘のカリオンの音域の例。低音のC{{music|sharp}} がなく、 B{{music|flat}} が存在している{{sfn|Brink|2017}}<ref name="Chesman quote">{{harvnb|Chesman|2015|p=3|ps=: "In general, the lowest C on the pedal would be tenor C, that is, the second space on the [[バス記号|bass clef]]."}}</ref>]] |
|||
カリヨンは他の楽器と合奏することがほとんどないため、最低音の鐘はどの音でも大きな問題はない。そのため、設置する場所、あるいは資金の都合で最低音となる鐘が選ばれる{{sfn|Lehr|2005|p=59}}。楽譜の記載と演奏を容易にするため、カリヨンの鍵盤にはCコンパスと呼ばれるCの基準位置を示すことが一般的となっており、古い楽器や、小さいサイズのカリヨンの多くは移調楽器である{{sfn|Lehr|2005|p=59}}。転置は、[[完全四度]]下から1オクターブ上までどこでも可能である。米国ではカリヨンを本格的なコンサート楽器として確立するために、コンサートピッチ調律されている新しいカリヨンが増えている{{sfn|Rombouts|2014|p=310}}。 |
|||
[[File:Forty-Nine-Bell Carillon with B-flat in Bass Piano Keyboard.svg|thumb|alt=カリヨンの音域範囲をピアノの鍵盤で示したもの|upright=1.7|上記の画像の音域範囲をピアノの鍵盤で示したもの。中央のC音を黄色で示している)<ref name="Chesman quote"/>]] |
|||
Cコンパス基準で考えると、多くのカリヨンでは大きい方から2番目と4番目の鐘となる[[嬰ハ|C{{music|sharp}}]]と[[変ホ|E{{music|flat}}]]の鐘が欠けている。理由として主に財政的な問題が挙げられる。これらの鐘を省くことでカリヨンの構造を簡略化して、大掛かりなカリヨンでは費用を20%前後削減できることがある。1900年代初頭以降、ヨーロッパではE{{music|flat}}の鐘を追加するカリヨンが時々あり、そう言った楽器ではC{{music|sharp}}の代わりにC音の長二度下であるB{{music|flat}}も追加することがよくある{{sfn|Lehr|2005|p=59}}。 |
|||
楽器によって音域や鐘、それを演奏する鍵盤のサイズが異なり、鍵盤全体が移調されている楽器もあり、演奏時に必要な動作やタッチが楽器ごとに大きく変わるなどの事情から、多くのカリヨンでは鐘楼ごとに専属のカリヨン奏者を抱えている。 |
|||
== 歴史 == |
== 歴史 == |
||
=== 起源 === |
|||
[[ラテン語]]の“四個で一組”が語源。フランドル地方(ベルギー、[[オランダ]])の伝統楽器で、[[14世紀]]ごろ、時刻を知らせる[[教会]]や物見塔、鐘楼の大鐘が鳴ることを事前に知らせるための「前打ち」と呼ばれる小さな鐘が付け加えられたことに始まる。[[15世紀]]から[[16世紀]]にかけて競い合うように前打ちの鐘の数が増え、[[17世紀]]に全盛期を迎えたが、中全調律から平均律への移行に伴い、調性の問題から民衆に好まれる演奏曲が減少したこと、また、カリヨン鋳造家の衰退も相まって、[[19世紀]]には機械式時計の発達と合わせ衰退するが、[[20世紀]]初頭になりカリヨンの魅力が見直され、1922年にベルギー・メッヘレンにカリヨン学校が創立され([[:en:Royal_Carillon_School_"Jef_Denyn"|Royal Carillon School "Jef Denyn"]])、北米でも1934年に北米カリヨンギルド[https://www.gcna.org The Guild of Carillonneur in North America])が設立され、鋳造、調律技術、奏者の育成が図られている。 |
|||
カリヨン以前、鐘は時報として用いられ、また、なんらかのメッセージを伝えるために利用されており、カリヨンはこの二つを合わせる形で生み出された。 |
|||
[[File:Earliest Carillonneur Picture.png|thumb|alt=初期のカリヨン。天井にぶら下げたたくさんの鐘に接続したロープとそれに繋がった鍵盤を演奏する人。|人が演奏するカリヨンを描いた最も古い絵 ''De Campanis Commentarius'' (1612) より。 [[Angelo Rocca]]作{{sfn|Rombouts|2014|p=75}}<ref>{{cite book|title=De Campanis Commentarius|url={{Google books|gULg5jHyrpQC|De Campanis Commentarius|page=T11|plainurl=yes}}}} p. 挿絵11</ref>]] |
|||
== バトン式鍵盤 == |
|||
カリヨンには、手動演奏のための手鍵盤と足鍵盤が備えられており、鍵盤と鐘はワイヤーで繋がっている。カリヨンそのものが非常に重量のあるものであるために、演奏には多大な力を必要とされ、指で簡単に演奏できる仕組みが不可能である。したがって、バトン(リレーで手渡す棒「バトン」と同義語)と呼ばれる丈夫な棒で鍵盤ができており、その一つ一つを奏者が拳で力を込めて叩きながら演奏する。拳によって大きな力エネルギーを鐘へと伝える必要があり、片手ごとに1音しか同時に演奏できないため、足鍵盤を併設して共に多くの音が発せされるスタイルが定着した。 |
|||
[[中世]]まで、鐘の奏者は[[スイングベル]]のクラッパーにロープを取り付けて、鐘は静止したままチャイムと呼ばれる方法で鳴らしていた。チャイムで鳴らす音はスイングで鳴らす場合と比べてより細かく音を制御できるため、聞こえる範囲にメッセージを届けるために使われていた。たとえば、鐘を鳴らすことで火事や差し迫った災害を知らせるためによく利用されていた。また、慶事には奏者がベルに取り付けたロープを集め、リズミカルに演奏することなども行われていた{{sfn|Rombouts|2013|pp=40–42}}。1478年に[[ダンケルク]]の男性が鐘でメロディーを演奏を行い、「神への敬意の表明が大きく躍進した」と述べている。また、1482年にベルギー、[[アールスト]]の[[宮廷道化師|jester]]という道化師が[[アントワープ]]でロープとバトンを使って鐘を鳴らしていた記録があり、これは鍵盤の存在を示唆している{{sfn|Rombouts|2013|p=59}}。 |
|||
[[日本]]においては、カリヨネアが少ないこともあり、鍵盤を有しない自動演奏のカリヨンが多い。 |
|||
14世紀に[[機械式時計]]のために開発された[[脱進機]]の技術がヨーロッパの時計塔に徐々に広がり、それまであった[[水時計]]が機械式時計に置き換えられていった{{sfn|Rombouts|2013|pp=49, 52–53}}。当時の時計には文字盤がなく、代わりに時刻に対応する数だけ鐘を鳴らして時刻を知らせていた。最終的にこの時報時計は、時刻を跨ぐ直前にお知らせの音を出し、続く内容に注目するよう促すものとなった。このお知らせの音は前鐘({{lang-en|forestrike|links=no}}、{{lang-nl|voorslag|links=no}})と呼ばれている{{sfnm|Rombouts|2013|1p=54|Gouwens|2013|2p=15}}。初期の前鐘は一つか二つの鐘を鳴らすだけのものであったが、徐々に鳴らす機構が改善され、15世紀半ばには3つから7つの鐘を組み合わせてシンプルなメロディー{{Enlink|Clock chime}}を演奏できるようになった{{sfn|Rombouts|2013|pp=54–55}}。 |
|||
== カリヨネア == |
|||
カリヨン奏者を[[フランス語]]では男性なら{{lang|fr|carillonneur|}}、女性なら{{lang|fr|carillonneuse|}}と言う。日本語では{{lang|fr|carillonneur|}}を英語風に読んだ「カリヨネア」とも呼ばれる。 |
|||
[[File:27225 Oudenaarde Stadhuis 20.jpg|thumb|175px|1510年に最も初期のカリヨンを設置した[[アウデナールデ]]市庁舎と鐘楼]] |
|||
[[オルガン]]奏者がカリヨンを演奏することもあるが、オランダとベルギーにはカリヨン学校があり、専門のカリヨネアを育成している。塔によって設置される鐘の数が異なることや、塔のサイズによって鐘の大きさが規定されるという事情のため、カリヨンごとに音域が異なり、鍵盤自体が移調されているものもある。このため、それぞれのカリヨン塔に専属のカリヨネアを抱えていることが多い。日本にもオランダないしベルギーのカリヨン学校で正規の教育を受け、卒業試験を経てディプロマを取得した数名の日本人カリヨネアが存在し、また、北米のカリヨンギルド(The Guild of Carillonneur in North America)のギルド試験に合格した日本人カリヨネアも2019年に誕生している。 |
|||
1510年に、{{仮リンク|アウデナールデ市庁舎|en|Oudenaarde Town Hall}}にこれらの二つの機能を統合した原始的なカリヨンが造られた。これには9つの鐘があり、それぞれの鐘が時計の前鐘の機構と人が演奏できる鍵盤の両方に接続していた{{sfnm|Rombouts|2014|1pp=60–61|Gouwens|2013|2p=16}}。[[ネーデルラント]](現代の[[ベルギー]]、[[オランダ]]、また[[フランス]]の[[ノール=パ・ド・カレー地域圏]])では鐘で音楽を奏でることへの関心が特に高まり、鐘の鋳造技術がヨーロッパの他の地域に比べて著しく発達した{{sfn|"Carillon." ''Encyclopaedia Britannica''}}。 |
|||
=== 開発 === |
|||
== 派生した楽器グロッケンシュピール == |
|||
カリヨネアの練習用や、もっと手軽に鐘の音楽が得られるために、カリヨンではなく金属棒を叩いて奏する[[グロッケンシュピール]](グロッケンは[[ドイツ語]]で「鐘」のこと)が発明された。当初は鍵盤によって演奏される形であったが、後に鍵盤が排除され、直接ばちで金属棒を叩く鉄琴が発明され、それが現在のグロッケンシュピールである。現在、グロッケンシュピール(鉄琴)というと、鍵盤のない金属打楽器のことを指し示すが、本来は鍵盤のついたものを指していたことが永い間忘れ去られていた。 |
|||
16世紀から17世紀にかけて、ネーデルラントでは新しい楽器の開発のために良い条件が整った。この地域は、[[アムステルダム]]と[[アントワープ]]の港を通じて、財政的手段と技術的優位性を獲得して鐘の鋳造の技術が発達した{{sfn|Swager|1993|p=14}}。さらに[[オーストリア]]の[[マルグリット・ドートリッシュ]]と[[カール5世 (神聖ローマ皇帝)|カール5世]]による政治情勢が、都市に相対的な富と権力をもたらした{{sfn|Rombouts|2014|p=74}} 。カリヨンは市民の誇るシンボルとして流行し、都市や町はお互いに最も高品質で最も大きな鐘を持つ楽器を所有することを競い合った。都市部には一つの街で複数のカリヨンを造るところがいくつもあり、田舎の小さな村でもカリヨンを作るための資金・資材を捻出するところがあった{{sfn|Rombouts|2014|pp=71, 73}} 。この需要により、鐘の鋳造家が産業としても成功し、ワグヘブンズや{{仮リンク|ファン・デン・ヘイン|en|Vanden Gheyn}}などの成功者が生まれた{{sfn|Gouwens|2013|p=16}}。16世紀から17世紀にかけて彼らが作ったカリヨンは50個にのぼる{{sfn|Swager|1993|p=12}}。1600年頃には、初期のカリヨンがこの地域の特徴として確立した{{sfn|Swager|1993|p=12}}。 |
|||
古い例では、[[ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル|ヘンデル]]の[[オラトリオ]]『[[サウル (ヘンデル)|サウル]]』や[[ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト|モーツァルト]]の『[[魔笛]]』で、古来の鍵盤式のグロッケンシュピールが使用された例が残っているが、鍵盤式のグロッケンシュピールが廃れてしまっていたため、打楽器としてのグロッケンシュピールによって代用されて演奏されてきた。ピリオド楽器を使用することが重要視される近年に至って、ようやく、本来のグロッケンシュピール、つまり現代でいうところの鍵盤付グロッケンシュピールが復興され、演奏にも使用されるようになった。 |
|||
[[File:Beiaard Lebuïnuskerk.JPG|thumb|alt=窓から内部の鐘が見えるカリヨン|オランダ、[[デーフェンテル]]の{{仮リンク|聖レビヌス大聖堂|en|Lebuïnuskerk, Deventer}} の鐘楼に釣られる{{仮リンク|ヘモニー兄弟|en|Pieter and François Hemony}}によるカリヨン。この鐘は1647年に[[ズトフェン]]で鋳造されている。<ref>{{cite web |title=NLDVNTSL |website=TowerBells.org |url=http://www.towerbells.org/data/NLDVNTSL.HTM |access-date=2021-05-19 |archivedate=2021-05-19 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210519142436/http://www.towerbells.org/data/NLDVNTSL.HTM |url-status=live }}</ref>]] |
|||
現在の練習機には、グロッケンシュピールの代わりにMIDIのセンサーと接続し、デジタル採録された音源を再生できる電子式のものもある。 |
|||
17世紀に、正確な鐘の調律技術で有名になった鋳造家{{仮リンク|ヘモニー兄弟|en|Pieter and François Hemony}}と[[ヤコブ・ファン・エイク]]が協力することで、現代のカリヨンにつながる重要な開発が行われた。ヤコブ・ファン・エイクは[[ユトレヒト]]で活動した盲目のカリヨン奏者で、オランダの幾つかの都市で時計台のチャイムやカリヨンの改善をするよう任命されていた。彼は鐘の音色に強い興味を抱いており、1633年に鐘のもつ5つの部分音を分離して記述する技術を確立した。また、鐘の厚さを調節することで、それぞれの[[部分音]]を互いに調和するよう調律できることを発見した{{sfnm|Price|1983|1p=219|Gouwens|2013|2pp=19–21}}。ヘモニー兄弟は、ヤコブ・ファン・エイクを顧問として、[[ズトフェン]]にある {{Llang|nl|Wijnhuistoren}} の塔に19個の鐘を持つカリヨンの製作を行った。鐘の調律にヤコブ・ファン・エイクの指導を加えたことにより、初めて現代の定義でいうカリヨンに到達したものとなった{{sfn|Swager|1993|pp=16–20}}。カリヨン奏者 John Gouwens によると、その鐘の品質が非常に良かったため、ヤコブ・ファン・エイクは2オクターブ(=23個)の鐘を鋳造するよう進言し、この時から標準的なカリヨンを構成する最小の鐘の数が23個と考えられるようになった{{sfn|Gouwens|2013|p=20}}。ヘモニー兄弟はその後36年間で51組のカリヨンを製作し{{sfnm|Price|1983|1p=219|Rombouts|2014|2p=94–95}}、その後18世紀にかけてカリヨン文化の最盛期となった{{sfn|"Carillon." ''Encyclopaedia Britannica''}}。 |
|||
== カリヨンの設置例 == |
|||
[[ベルギー]]と[[フランス]]の56の鐘楼が「[[ベルギーとフランスの鐘楼群]]」として[[世界遺産]]に登録されている。世界最多鐘数のカリヨン(世界カリヨン連盟に登録)は[[アメリカ合衆国]][[ミシガン州]]ブルームフィールド郡区にある Kirk in the Hills のカリヨン(77鐘)であったが<ref>{{citation|url=http://www.kirkinthehills.org/ministries/music/instruments/carillon|title=The Kirk Callion|publisher=Kirk in the Hills}}</ref>、[[大韓民国]][[大田広域市]]の大田科学技術大学校の鐘が78鐘に増えて世界最多になった<ref>{{citation|url=http://www.dst.ac.kr/eng/0103|title=Message from President|publisher=Daejeon Institute of Science and Technology}}</ref>。ヨーロッパでは主に都市の真ん中に設置され、その街の象徴の役割を果たすものが多いが、北米のカリヨンは街の象徴としてのカリヨンの他に、大学や植物園などに設置されているものが多いのが特徴である。例としてイェール大学、シカゴ大学、フロリダ大学、ミシガン大学、カリフォルニア州立バークレー校、カナダではトロント大学などがある。植物園に設置されている例としてはフロリダの[https://boktowergardens.org Bok Tower]などが有名である。カナダは国会議事堂の建物の中央部 [[:en:Peace_Tower|Peace Tower]]がカリヨンとなっている。 |
|||
=== |
=== 衰退 === |
||
1789年から巻き起こった[[フランス革命]]により、ネーデルラントとカリヨンは広範囲に被害を被った。[[オーストリア領ネーデルラント]]はフランスに征服され、1975年に併合された。また、[[ネーデルラント連邦共和国]]はいくつかの[[姉妹共和国]]を経て1810年にフランスに併合された。[[フランス第一共和政]]の2年目に<!--年代要調査-->[[公安委員会 (フランス革命)|公安委員会]]は銅不足を解消するため、カリヨンを解体して鐘を鋳つぶして銅を供出する指示を発布した{{sfn|Swager|1993|pp=39–40}}。カリヨンの所有者達は、新政府に要望書を出して「文化的に重要」{{sfn|Rombouts|2014|p=143}} と認めさせるか、鐘を取り外して埋めるなどして抵抗した{{sfn|Rombouts|2014|pp=145}}。当時110のカリヨンがあったが、そのうち約50個は戦争、火災、人為的破壊などの被害により破壊され、大部分は[[フランス革命戦争]]に使用する大砲を作るために鋳つぶされた{{sfn|Swager|1993|pp=39–41}}。 |
|||
オランダのマーストリヒト市庁舎は歴史的な建造物で、塔には49鐘のカリヨンがあり、毎週土曜日12時30分に鳴り響く<ref>『るるぶオランダ・ベルギー 2017年版』JTBパブリッシング、44頁</ref>。 |
|||
1750年から19世紀にかけて、戦争による破壊以外の点においても、人々のカリヨンへの関心が大幅に低下してしまった。多くの世帯で{{仮リンク|振り子式置き時計|en|Grandfather clock}}が使えるようになり、[[懐中時計]]を持つ人も増えたため、カリヨンによる時報の需要が大きく低下していた{{sfn|Rombouts|2014|p=149}}。さらに、当時あったカリヨンの多くは[[中全音律]]に調律されており、新しい[[半音階]]の音楽様式の演奏には不向きであり{{sfnm|Swager|1993|1pp=41–42|Rombouts|2014|2p=150}}、楽器としても時代に大きく取り残されていた。カリヨンのための曲が新たに作られることはなくなり{{sfn|Van Ulft|2020|p=33}}、カリヨン演奏の質も大幅に低下していた。1895年に音楽出版社の {{Llang|en|Schott frères}}{{enlink|Schott frères|en}} が {{仮リンク|マティアス・ファン・デン・ギュイエン|en|Matthias Vanden Gheyn}}の『ピアノのための11のカリヨン前奏曲』を出版した際に「現代のカリヨン奏者はこれらをカリヨンで演奏する方法を知らない」と不満を記している{{sfn|Price|1983|p=224}} 。さらに、カリヨン製作が減少したことにより、ヘモニー兄弟が確立した調律技術のうち、ヤコブ・ファン・エイクの発見に依らない部分の技術が失われてしまった。そのため、この時代に作られたカリヨンはそれ以前の物よりも品質がよくなかった{{sfn|"Carillon." ''Encyclopaedia Britannica''}}。 |
|||
=== 日本 === |
|||
[[1970年]]の[[日本万国博覧会]](オランダ館)で日本に初めて紹介された28鐘のカリヨンは、数個の鐘のみモニュメントとして[[大阪港#南港|大阪南港]]のポートタウンショッピングセンターに設置されている。設置数が少ないこともあり日本国内の演奏者は数少ない。 |
|||
=== 復興 === |
|||
1890年代初頭に、イギリスの[[律修司祭]]でチェンジリンガーだったアーサー・シンプソンが、鐘の調律に関する一連の記事を出版した。彼は当時の鐘鋳造家達が、鐘の貧弱な調律に無頓着であることを訴え、その解決方法を提案していた。{{仮リンク|ファン・デン・ヘイン|en|Vanden Gheyn}}の鐘の調律技術を再現しようとしていた{{仮リンク|ジョン・ウイリアム・テラー|en|John William Taylor}}はシンプソンと協力し、1世紀以上ぶりの1904年に調律した鐘の鋳造に成功した{{sfn|Rombouts|2014|pp=173–76}}。この技術の復活により、カリヨンの建造も復活し始めた{{sfn|"Carillon." ''Encyclopaedia Britannica''}}。 |
|||
[[File:Mechelen St-Romboutskathedraal 04.JPG|thumb|alt=荘厳な石煉瓦でできた灯籠|ジェフ・デニンがカリヨンに世界からの注目を集めたベルギー、[[メッヘレン]]にある[[聖ロンバウツ大聖堂]]の鐘楼]] |
|||
ベルギーの[[メッヘレン]]では{{仮リンク|ジェフ・デニン|en|Jef Denyn}}が楽器としてのカリヨン復活の中心的役割を担った。1887年に、彼の父親が盲目になり、デニンは[[聖ロンバウツ大聖堂]]の都市カリヨンの演奏を引き継ぐことになった{{sfn|Rombouts|2014|pp=177–78}}。演奏を始めてすぐに彼は演奏性の向上を訴えた。また、彼の父親が開発し、大聖堂に設置しかけていたタンブラー・ラック・システムを設置し、それにより音量コントロールの自由度を増し、速いパッセージ、トレモロを演奏できるようになった{{sfn|Rombouts|2014|pp=178–80}}。トレモロによって、ロマン派時代のカリヨンでは表現できなかった、長い間持続する音を表現できるようになった。 |
|||
[[File:Comparison of two carillon transmission systems.svg|thumb|alt=カリヨンの鐘と鍵盤間の接続方法の改良前と改良後を示したもの|(a)旧方式(ブリーチ・システム)での接続と、(b){{仮リンク|ジェフ・デニン|en|Jef Denyn}}が採用した新システム(タンブラー・ラック・システム)の比較{{sfn|Swager|1993|pp=48–49}}]] |
|||
カリヨン奏者としての技術向上と、改良したカリヨンによって、デニンの演奏は人々を魅了するようになった。市議会からの提案により、彼は毎週月曜日の夜に行う定期コンサートを始めた{{sfn|Swager|1993|pp=50–51}}。彼が1892年8月1日に行った最初のコンサートは、歴史上初めてのカリヨンによるコンサートとなり{{sfn|Rombouts|2014|p=181}}、またこの時から、カリヨンはBGMを奏でる楽器としてではなく、コンサート楽器としての評判を得るようになった{{sfn|Swager|1993|p=51}}。 |
|||
=== 王立カリヨン学校の設立 === |
|||
コンサートを開催したことで、デニンはアメリカ合衆国のニューヨーク州と政府の役人だった{{仮リンク|ウィリアム・ゴーラム・ライス|en|William Gorham Rice}}との面識を得る。ライスは[[ハーグ]]を旅してカリヨンを知り、カリヨンの本を執筆するために定期的にこの地を訪れて、カリヨン演奏家達を取材して回っていた。1913年8月18日のコンサートの後、デニンとライスはカリヨンの社会的影響力と教育的価値について意見を交換した{{sfn|Rombouts|2014|p=188}}。ライスは著書 ''Carillons of Belgium and Holland; tower music in the Low Countries''<ref name="Rice">{{Cite book|last=Rice|first=William Gorham|title=Carillons of Belgium and Holland; tower music in the Low Countries|date=1914-12|url=https://archive.org/details/carillonsbelgium00riceiala/mode/2up}}</ref>を1914年12月に出版し、3度再販した。この本は、英語でカリヨンについて書かれた初めての書物だった{{sfn|Keldermans|Keldermans|1996|p=39}}。<!--この本は、特に{{仮リンク|ベルギーの略奪|en|rape of Belgium}}に光を当て、アメリカで広く受け入れられる理想的状況を描いた{{sfnm|Rombouts|2014|1p=197–98|Thorne|2018}} 。(訳注・英語版にある記述だがカリヨンとの関連が不明のためコメントアウト)-->この本は成功し、1915年と1925年にも出版する動機となった{{sfn|Rombouts|2014|pp=198}}。ライスはアメリカ合衆国内でカリヨンの権威となり、1912年から22年までの間に書籍の出版だけではなく、複数の都市で35の講演、雑誌への記事掲載、ラジオ番組への出演、カリヨンに関する展示資料の提供を行った{{sfn|Rombouts|2014|p=208}}。1922年にライスは、[[ハーバート・フーヴァー]]と[[ジョン・ロックフェラー2世]]から資金援助を得て、ジェフ・デニンと共に[[メッヘレン]]にカリヨン専門の学校を作り、初代校長といて活動した。のちにその学校は{{仮リンク|王立カリヨン学校ジェフ・デニン|en|Royal Carillon School "Jef Denyn"}}と名付けられた{{sfnm|Price|1983|1pp=227–28|Rombouts|2014|2p=208|Gouwens|2013|3p=43}}<ref>{{Cite web|url=https://beiaardschool.mechelen.be/|title=Koninklijke Beiaardschool Mechelen|accessdate=2021-06-06}}学校名はKoninklijke Beiaardschool Jef Denyn Mechelen となっている。</ref>。 |
|||
=== 世界大戦による破壊 === |
|||
[[File:Stolen Bells during WWI.jpg|thumb|alt=盗んだ鐘でいっぱいの部屋と、そこを監視する軍服を着た二人の男性|{{仮リンク|オーストリア=ハンガリー帝国陸軍|en|Austro-Hungarian Army}}によって盗まれた鐘[[ウクライナ]]、[[リヴィウ]]、1916年]] |
|||
学術誌 「カナダの軍事史」(''Canadian Military History'')の雑誌『軍隊』(''Legion'')の編集者 Stephen Thorne は[[第一次世界大戦]]、[[第二次世界大戦]]の戦争中にカリヨンが破壊されたことを「ユニークで民主的な楽器の残忍な消滅」<ref group="注釈">原文 "brutal annihilation of a unique democratic music instrument"</ref>とみなしていた{{sfn|Thorne|2018}}。当時ベルギーとオランダの同盟国では独特で民主的な楽器の消滅として広く報道された。第二次世界大戦ではイギリスの調査団が、ナチス・ドイツはベルギーでは全ての鐘の3分の2を、オランダでは全ての鐘を押収したと主張している。1938年から1945年の間に175,000個の鐘が盗まれ、鐘の墓地({{Lang-de|Glockenfriedhöfe}})に集められた。そのうち150,000は鋳造所に送られ、銅の材料として使われた{{sfn|Thorne|2018}}。 |
|||
[[File:Bundesarchiv Bild 183-H26751, Hamburg, Glockenlager im Freihafen.jpg|thumb|alt=大量の破壊された鐘が積まれている様子|鐘の墓場{{lang-de|Glockenfriedhof|lt=bell cemetery|quote=y}} 1947年、[[ドイツ]]、[[ハンブルク]]]] |
|||
戦争の後、カナダ最初の州カリヨン奏者 (Dominion Carillonneur) で、アメリカ大陸での最初期のカリヨン奏者{{sfn|Slater|2003|p=45}}[[パーシバル・プライス]]<!-- Percival Price -->が残った鐘の調査と、その返還を手伝うため派遣された。プライスは、またとない機会を利用してヨーロッパの鐘の理想的な音色の性質について研究し、発表している<ref>{{Cite journal |title=Campanology, Europe, 1945-47. |first=Price |last=Percival |year=1948 |publisher=The University of Michigan Press |editor=Ann Arbor |url=https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=mdp.39015007927372&view=1up&seq=4&skin=2021}}</ref>{{sfn|Thorne|2018}}。 |
|||
=== 国際的認知 === |
|||
1970年代に、世界的なカリヨン組織の構想が練られて現実のものとなる。20世紀に造られた各国、または地域のカリヨン協会の連合組織として、世界中のカリヨン奏者とカリヨン愛好家のための組織[[世界カリヨン連盟]]が設立された。 |
|||
1999年に、[[ユネスコ]]は、建築の多様性と重要性を認めて、ベルギーにある32の鐘楼を世界遺産に指定した。2005年にはフランスにある23塔、ベルギーのジャンブルーの塔を追加指定して[[ベルギーとフランスの鐘楼群]]となった<ref name="WHS">{{cite web |title=Belfries of Belgium and France |website=[[UNESCO]] World Heritage Centre |publisher=[[United Nations]] |url=https://whc.unesco.org/en/list/943/ |access-date=2021-04-13 |url-status=live |archivedate=2021-03-23 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210323203523/https://whc.unesco.org/en/list/943/}}</ref>。2014年には、ベルギーとオランダのカリヨン文化を無形文化遺産としても登録し、[[フランドル]]の文化大臣 Sven Gatz <small>([[:en:Sven Gatz|英語版]])</small>は「ユネスコは、カリヨン奏者やこの文化的形態が今日の地域社会に関連するものであることを確かにしている人々の創造性を認識している」と述べている<ref>{{cite news |author=<!--Not stated--> |title=Belgische beiaardcultuur erkend als erfgoed |trans-title=Belgian Carillon Culture Recognized as Heritage |date=2014-11-25 |work=VRT NWS |language=nl |url=https://www.vrt.be/vrtnws/nl/2014/11/25/belgische_beiaardcultuurerkendalserfgoed-1-2159300/ |access-date=2021-04-13 |url-status=live |archivedate=2021-04-13 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210413223831/https://www.vrt.be/vrtnws/nl/2014/11/25/belgische_beiaardcultuurerkendalserfgoed-1-2159300/}}</ref><ref>{{cite news |author=<!--Not stated--> |title=Bespelen klokkenspel wordt cultureel erfgoed |trans-title=Playing Carillons Becomes Cultural Heritage |date=2014-08-21 |work=de Volkskrant{{Enlink|de Volkskrant|en}} |language=nl |url=http://www.volkskrant.nl/vk/nl/2664/Nieuws/article/detail/3722604/2014/08/21/Bespelen-klokkenspel-wordt-cultureel-erfgoed.dhtml |access-date=2021-04-13 |url-status=dead |archivedate=2016-03-04 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20160304140846/http://www.volkskrant.nl/vk/nl/2664/Nieuws/article/detail/3722604/2014/08/21/Bespelen-klokkenspel-wordt-cultureel-erfgoed.dhtml}}</ref>。 |
|||
2008年に映画『[[シュティの国へようこそ]]』でカリヨンを紹介している。この映画は{{as of|2021|lc=y|post=.}}フランス映画として売り上げが最も高い作品となっている<ref>{{cite web |title=Welcome to the Sticks |website=[[Box Office Mojo]] |publisher=[[IMDb]] |url=https://www.boxofficemojo.com/release/rl3703866881/rankings/?ref_=bo_rl_tab#tabs |access-date=2021-04-19|archivedate=19 April 2021 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210419223832/https://www.boxofficemojo.com/release/rl3703866881/rankings/?ref_=bo_rl_tab#tabs |url-status=live }}</ref>。 |
|||
2019年、[[アイルランド]]の[[コーヴ]]にある、{{仮リンク|コーヴ大聖堂|en|St Colman's Cathedral, Cobh}}のカリヨン演奏がアイルランドの重要文化財として認められている<ref>{{cite press release |author=<!--Not stated--> |title=Minister Madigan Announces State Recognition of Key Elements of Ireland’s Living Cultural Heritage |url=https://merrionstreet.ie/en/news-room/releases/minister_madigan_announces_state_recognition_of_key_elements_of_ireland’s_living_cultural_heritage.html |location=[[Dublin]] |publisher=Minister for Culture, Heritage and the Gaeltacht |agency=MerrionStreet.ie |date=2019-07-18 |access-date=2022-05-04 |url-status=live |archivedate=2021-02-27 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210227041916/https://merrionstreet.ie/en/news-room/releases/minister_madigan_announces_state_recognition_of_key_elements_of_ireland’s_living_cultural_heritage.html}}</ref>。 |
|||
== 使用法とレパートリー == |
|||
=== 音楽 === |
|||
カリヨンのレパートリーは、同様に長い歴史を持つ[[オルガン]]と比べて大きく近代に偏っており、1900年以前に作られた作品は15点しか伝わっていない{{sfn|Rombouts|2014|p=129}}。カリヨンの演奏は、初期のパイプオルガンの様に即興演奏に依存する時代が長く続いた。初期のカリヨン奏者たちは、特に引退が近づくと非常に多くのことを他の人に伝える必要があったことを示す証拠が記録に残されている{{sfn|Gouwens|2017|p=127}}。[[バロック音楽|バロック]]後期から[[ルネサンス音楽|ルネサンス]]初期にかけて、鍵盤楽器向けの楽譜は特定の楽器向けではなく、どの鍵盤楽器でも演奏できるように書かれていた。そのため、初期のカリヨン向けの楽譜は[[チェンバロ]]、[[オルガン]]、[[ピアノ]]などと同じものだった可能性がある。その数少ない証拠として、現代まで生き残った1746年出版の Joannes de Gruytters による ''De Gruytters carillon book'' がある{{sfn|Van Ulft|2020|p=32}}。この本に記されている曲は、明らかにカリヨンのために作曲されたものではなく他の楽器から編曲されており、他の鍵盤楽器でも簡単に演奏することができる。バロックの鍵盤楽器向けの曲はカリヨン向けの編曲に適したものが多く、[[アントニオ・ヴィヴァルディ|ヴィヴァルディ]]、[[フランソワ・クープラン|クープラン]], [[アルカンジェロ・コレッリ|コレッリ]]、[[ヨハン・セバスチャン・バッハ|バッハ]]、[[ジョージ・フレデリック・ヘンデル|ヘンデル]]、[[ウォルフガング・アマデウス・モーツアルト|モーツアルト]]などが特に適している。{{sfn|"Carillon." ''Encyclopaedia Britannica''}} |
|||
[[File:BIG 117025309040611.jpg|thumb|left|alt=カリヨンの鍵盤とその上部に置かれているカリヨン向けの楽譜|カリヨンの曲は[[大譜表]]に書かれる。ト音記号は手で演奏し、ヘ音記号は足で演奏する{{sfn|Brink|2017}}。]] |
|||
鍵盤楽全般向けではなく、カリヨンで演奏するために書かれた最も古い曲は{{仮リンク|マティアス・ファン・デン・ギュイエン|en|Matthias Vanden Gheyn}}による「11の前奏曲」である。彼の作品の構造は、彼が長い間カリヨンで各種のキーボード汎用の曲を演奏していた上で、カリヨンでの音楽演奏を一般的なものにしたいと考えていたことを示唆している{{sfn|Van Ulft|2020|p=33}}。1900年代初頭以降、技術面で挑戦的な彼の前奏曲はカリヨン奏者の標準的なレパートリーとなっている{{sfn|Rombouts|2014|p=115}}。 |
|||
ジェフ・デニンは、カリヨンでどのような音楽を演奏するべきかについて発言を行い、今がその音楽を書くときだ、と何人かの作曲家を説得した。その中には、彼の生徒だった {{仮リンク|Staf Nees|nl|Staf Nees}}、[[レオン・ヘンリー]]<!-- Léon Henry -->、{{仮リンク|Jef Rottiers|nl|Jef Rottiers}}や、{{仮リンク|ジェフ・ファン・ホーフ|en|Jef van Hoof}}のような他分野の作曲家達がいた{{sfn|Gouwens|2017|p=134}}。カリヨン学校では1925年にカリヨンの楽譜出版を開始した{{sfn|Price|1983|p=230}}。学校はカリヨン音楽において、高度な装飾音符、素早いパッセージ、トレモロ、バロック、ロマン派的要素などで構成する初期のメッヘレン様式あるいはフランドル様式と呼ばれるスタイルの提案者でもあった{{sfn|Van Ulft|2020|pp=33–34}}。 |
|||
1950年代、1960年代には[[カンザス大学]]から明らかに異なるアメリカ様式のカリヨン演奏が生み出された。大学のカリヨン奏者{{仮リンク|ロナルド・バーンズ (カリヨン奏者)|en|Ronald Barnes (carillonist)}}が彼の仲間に、カリヨンのために作曲することを勧めたことにより数多くの曲が作られた{{sfn|Rombouts|2014|p=289}}。バーンズの展開した運動のうち、[[ロイ・ハムリン・ジョンソン]]<!-- Roy Hamlin Johnson -->による、[[8音音階]]で作曲したカリヨン向けの一連の曲は最も成功したものである{{sfn|Keldermans|1996|pp=164}}。ジョンソンによるカリヨン向けの曲の多くは名作として知られている{{sfn|Gouwens|2017|p=140}}。バーンズはレパートリー拡大のためにオリジナル曲を56、数百の編曲を製作した。 |
|||
20世紀にカリヨン向けの作曲をした主要な作曲家として、Albert Gerken、Gary C. White、Johan Franco、{{仮リンク|ジョン・ポズドロ|en|John Pozdro}}などがいる{{sfn|Keldermans|1996|pp=163–65}}。アメリカ様式のカリヨンはメッヘレン様式の対局を成す形で発展した。メッヘレン様式の躍動的で素早いパッセージやトレモロに満ちた演奏者の芸の披露に対して、ゆっくりとしたパッセージ、希薄な和声、鐘の自然な音色に聴衆の注意を引きつける印象的なテーマなどを特徴としている。 |
|||
北アメリカでカリヨンの楽譜が最初出版されたのは、1934年に G. Schirmer, Inc{{Enlink|G. Schirmer, Inc.|en}}から[[カーティス音楽学校]]の学生だった[[サミュエル・バーバー]]、[[ジャン=カルロ・メノッティ]]、[[ニーノ・ロータ]]による学会の短期出版シリーズのものだった{{sfn|De Turk|1999|p=53}} 。北米カリヨンギルドが楽譜の出版を始める1961年まで{{sfn|Gouwens|2017|p=143}}、北アメリカでは散発的に楽譜が出版されている{{sfn|Rombouts|2014|pp=290–91}}。 |
|||
1968年には{{仮リンク|ボック・タワー・ガーデンズ|en|Bok Tower Gardens}}に、世界最大級のカリヨン音楽と関連するリソースを収めた{{仮リンク|アントン・ブリーズカリヨン図書館|en|Anton Brees Carillon Library}}が設立された<ref>{{cite web |title=Library & Archives: Anton Brees Carillon Library |website=Bok Tower Gardens{{Enlink|Bok Tower Gardens|en}} |url=https://boktowergardens.org/library/ |access-date=2021-03-30 |archivedate=2021-06-02 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210602213237/https://boktowergardens.org/library/ |url-status=live }}</ref>。 |
|||
=== 組織 === |
|||
1970年代に当時あった国や地域単位、あるいは国際的なカリヨン組織を連合し、カリヨン演奏者と愛好家の中心的な組織として世界カリヨン連盟(The World Carillon Federation)が設立された{{sfn|Rombouts|2014|p=312}}。{{As of|2021|post=,}}、14の組織で構成されている。 |
|||
{{div col|colwidth=30em}} |
|||
* {{lang|fr|Association Campanaire Wallonne}}(ワロン鐘奏者協会) |
|||
* {{lang|en|Carillon Society of Australia}}(カタルーニャ、ベルリンガー&カリヨン奏者友愛会) |
|||
* {{lang|en|Carillon Society of Britain and Ireland}} (イギリスカリヨン協会) |
|||
* {{lang|ca|Confraria de Campaners i Carillonistes de Catalunya}} (カタルーニャ、ベルリンガー&カリヨン奏者友愛会) |
|||
* {{lang|de|Deutsche Glockenspielvereinigung}}(ドイツカリヨン協会) |
|||
* {{lang|fr|Guilde des Carillonneurs de France}}(フランスカリヨン奏者ギルド) |
|||
* {{lang|fr|Guilde des Carillonneurs et Campanologues Suisses}}(スイスカリヨン奏者&鐘史学者ギルド) |
|||
* {{lang|en|The Guild of Carillonneurs in North America}}(北アメリカカリヨン奏者ギルド) |
|||
* {{lang|nl|Koninklijke Nederlandse Klokkenspel-Vereniging}}(オランダカリヨン協会) |
|||
* {{lang|lt|Lietuvos Karilionininkų Gildija}}(リトアニアカリヨン奏者ギルド) |
|||
* {{lang|no|Nordisk Selskap for Campanologi og Klokkespil}}(ノルウェー鐘史学&カリヨン協会) |
|||
* {{lang|pl|Polskie Stowarzyszenie Carillonowe}}(ポーランドカリヨン協会) |
|||
* {{lang|ru|Фонд Русский карильон}}(ロシアカリヨン協会) |
|||
* {{lang|nl|Vlaamse Beiaard Vereniging}}(フランドルカリヨン協会) |
|||
{{div col end}} |
|||
メンバー組織の多くは地域でのカリヨンの情報や会員の更新を知らせるために、会報を定期刊行している{{sfn|Rombouts|2014|p=313}}。連盟は3年おきにメンバー組織の母国で国際カリヨン会議 (World Carillon Congress) を開催している。会議では、カリヨンに関する講義、ワークショップ、委員会を開催し、ニュース、個別指導、研究開発などのテーマを扱う{{sfn|Rombouts|2014|p=313}}。 |
|||
== カリヨン奏者の教育 == |
|||
カリヨンの演奏はオルガン奏者が行うこともあるが、カリヨンの演奏者となるための訓練を受けられる機関が世界に複数あり、専門のカリヨン奏者の育成を行っている。ベルギー、メヘレン市にある王立カリヨン学校ジェフ・デナインは最も人気があるカリヨン演奏者育成のための教育プログラムの一つである{{sfn|Rombouts|2014|p=313}}。またベルギーの[[ルーヴェン]]にあるLCUA芸術大学では修士課程にカリヨンのコースを持ち、オランダの[[アメルスフォールト]]にある[[ユトレヒト芸術学校]]にはカリヨン専門の学科があり学士、修士課程を備える<ref>{{cite web |title=Utrecht School of the Arts, Faculty of Music |url=http://www.hku.nl/web/English/English/Bachelors/BachelorOfMusic/Carillon.htm |url-status=dead |archivedate=2012-10-18 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20121018141634/http://www.hku.nl/web/English/English/Bachelors/BachelorOfMusic/Carillon.htm|accessdate=2021-06-17}}</ref>。イギリス<ref>{{cite web |title=Carillonneur: Trevor Workman |website=Bournville Carillon |url=https://www.bournvillecarillon.co.uk/trevor-workman |access-date=2021-02-02 |url-status=live |archivedate=2020-10-24 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201024123258/https://www.bournvillecarillon.co.uk/trevor-workman}}</ref> 、フランス、デンマーク<ref>{{cite web |title=Løgum Kloster Kirkemusikskole |publisher=Locus Dei |url=http://www.locus-dei.dk/kms/ |access-date=2021-05-02 |url-status=dead |archivedate=2007-07-31 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20070731135548/http://www.locus-dei.dk/kms/}}</ref>にも学校が存在する。 |
|||
北アメリカカリヨンギルドは、毎年定期的に行う会議の会期中にカリヨン演奏者の試験を行っている。合格者はギルドのカリヨン会員として認められる。このプログラムは2012年に王立カリヨン学校ジェフ・デニンが北米に開設した関連学校の北アメリカカリヨン学校 (North American Carillon School) と提携して行われている{{sfn|Rombouts|2014|p=313}}{{sfn|"Learn to Play." ''The Guild of Carillonneurs in North America''}}。 |
|||
アメリカ合衆国のいくつかの大学にはカリヨン演奏の教育プログラムがある{{sfn|Rombouts|2014|p=313}}。[[カリフォルニア大学バークレー校]]<ref>{{cite web |title=Carillon Study |website=Berkeley Music |publisher=[[カリフォルニア大学バークレー校]] |url=https://music.berkeley.edu/performance-opportunities/carillon-study/ |date=2014-02-28 |access-date=2021-02-03 |url-status=live |archivedate=2020-08-10 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20200810083229/https://music.berkeley.edu/performance-opportunities/carillon-study/}}</ref>、[[カリフォルニア大学サンタバーバラ校]]<ref>{{cite web |title=Carillon |website=Department of Music |publisher=[[カリフォルニア大学サンタバーバラ校]] |url=https://www.music.ucsb.edu/ensembles/carillon |access-date=2021-02-03 |url-status=live |archivedate=2020-11-26 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201126045729/https://music.ucsb.edu/ensembles/carillon}}</ref>、[[ミシガン大学]]<ref>{{cite web |title=Carillon Studio |website=U-M School of Music, Theatre & Dance |publisher=[[ミシガン大学]] |url=https://smtd.umich.edu/current-students-3/carillon-studio/ |access-date=2021-02-03 |url-status=live |archivedate=2020-12-11 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201211010454/https://smtd.umich.edu/current-students-3/carillon-studio/}}</ref>、[[フロリダ大学]]<ref>{{cite web |title=Carillon Studio |website=College of the Arts |publisher=[[フロリダ大学]] |url=https://arts.ufl.edu/sites/carillon-studio/welcome/ |access-date=2021-02-03 |url-status=live |archivedate=2021-08-11 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20200811183906/https://arts.ufl.edu/sites/carillon-studio/welcome/}}</ref>、[[デンバー大学]]<ref>{{cite web |title=Carillon Studio |website=Lamont School of Music |publisher=[[デンバー大学]] |url=https://liberalarts.du.edu/lamont/academics/carillon-studio |access-date=2021-02-03 |url-status=live |archivedate=2021-02-03 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210203150355/https://liberalarts.du.edu/lamont/academics/carillon-studio}}</ref>、[[ミシガン大学]]<ref>{{cite web |title=Carillon Studio |website=U-M School of Music, Theatre & Dance |publisher=[[University of Michigan]] |url=https://smtd.umich.edu/current-students-3/carillon-studio/ |access-date=2021-02-03 |url-status=live |archivedate=2020-12-11 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201211010454/https://smtd.umich.edu/current-students-3/carillon-studio/}}</ref>では、カリヨン演奏についての全過程を学ぶことができる。[[クレムゾン大学]]、<ref>{{cite web |title=Keyboard Studies |website=Department of Performing Arts |publisher=[[クレムゾン大学]] |url=https://www.clemson.edu/caah/departments/performing-arts/students/Music/Keyboard/index.html |access-date=2021-08-19 |url-status=live |archivedate=2021-02-14 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210214101727/https://www.clemson.edu/caah/departments/performing-arts/students/Music/Keyboard/index.html}}</ref>、[[インディアナ大学]],<ref>{{cite web |title=Applied Carillon Study at the Jacobs School of Music |website=IU Jacobs School of Music |publisher=[[インディアナ大学]] |url=https://blogs.iu.edu/jsomorgan/applied-carillon-study/ |access-date=2021-04-22 |url-status=live |archivedate=2021-04-22 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210422021804/https://blogs.iu.edu/jsomorgan/applied-carillon-study/}}</ref>、[[アイオワ州立大学]],<ref>{{cite web |title=Edgar W. and Margaret MacDonald Stanton Memorial Carillon |website=Department of Music and Theatre |publisher=[[アイオワ州立大学]] |url=https://www.music.iastate.edu/carillon |access-date=2021-02-03 |url-status=live |archivedate=2020-11-27 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201127055813/https://www.music.iastate.edu/carillon}}</ref>、[[カンザス大学]]<ref>{{cite web |title=Carillon Recitals |website=School of Music |date=2013-07-26 |publisher=[[カンザス大学]] |url=https://music.ku.edu/organ/carillon/recitals |access-date=2021-02-03 |url-status=live |archivedate=2020-09-19 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20200919001456/http://music.ku.edu/organ/carillon/recitals}}</ref>、{{仮リンク|マーケット大学|en|Marquette University}}<ref>{{cite web |title=Carillon Discovery Course |website=Diederich College of Communication |publisher=マーケット大学 |url=https://www.marquette.edu/communication/carillon-discovery-course.php |access-date=2021-02-03 |url-status=live |archivedate=2020-11-26 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201126220237/https://www.marquette.edu/communication/carillon-discovery-course.php}}</ref>では、カリヨン演奏に関する限定したプログラムを受けることができる。また、大学で雇用されているカリヨン奏者や、大学以外の施設が持つカリヨンでは、個人レッスンを提供しているところがある{{sfn|"Learn to Play." ''The Guild of Carillonneurs in North America''}}。学校でカリヨンを持っていてもカリヨンのコースを持たない学校では、多くの場合クラブ活動や、{{仮リンク|イェール記念カリヨン|en|Yale Memorial Carillon}}のイェール・カリヨン演奏者ギルドのように学生が自主的に行う教育プログラムがある。 |
|||
[[カナダ]]では[[トロント大学]]内で卒業生を中心とした有志が演奏を行なっており、一部教育もなされている<ref>{{Cite web |title=Soldiers’ Tower Carillon | University of Toronto Alumni |publisher=[[トロント大学]]同窓会 |url=https://alumni.utoronto.ca/alumni-networks/shared-interests/soldiers-tower/soldiers-tower-carillon |access-date=2022-05-21 |url-status=live |archivedate=2021-04-29 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20211202142951/https://alumni.utoronto.ca/alumni-networks/shared-interests/soldiers-tower/soldiers-tower-carillon}}</ref>。[[オタワ]]にある[[カールトン大学]]は[[カナダ国会議事堂]]と連携してCertificateプログラム(学部卒の単位の一部に加算可能)を持っている<ref>{{Cite web |title=Certificate in Carillon Studies |publisher=[[カールトン大学]] |url=https://carleton.ca/music/carillon/ |access-date=2022-05-21 |url-status=live |archivedate=2022-03-21 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20220302105049/https://carleton.ca/music/carillon/}}</ref>。 |
|||
{{要出典|範囲={{as of|2021|lc=y|post=.}}、日本においては日本カリヨン協会が、会員である修士を収めた日本人カリヨン演奏家によるオンラインレッスンを中心に個人レッスンをおこなっている。|title=日本カリヨン協会による発表確認できず|date=2022年5月}}日本国内においては、現在カリヨン公式証明書を取得できる学校は存在しない。 |
|||
== 楽器の分布 == |
|||
=== 世界での分布 === |
|||
世界的にカリヨンの数を集計している機関が幾つか存在する。一部の機関は特定の種類のカリヨンのみの集計を専門としており、例えば戦争記念・平和カリヨン登録機関(War Memorial and Peace Carillons registry)では、[[戦争記念施設]]や世界平和を志して造られたカリヨンのみを集計している<ref name="WMPC">{{cite web |title=World map of peace carillons |publisher=Network of War Memorial and Peace Carillons |website=War Memorial and Peace Carillons |url=https://www.peacecarillons.org/world-map-of-peace-carillons/ |access-date=2021-02-04 |url-status=live |archivedate=2020-12-29 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201219035606/https://www.peacecarillons.org/world-map-of-peace-carillons/}}</ref>。世界カリヨン連盟では、伝統的カリヨン、すなわちバトン式鍵盤を使い、コンピューターや電子的なメカニズムを使用せずに演奏するものを集計している<ref name="WCF carillon list">{{cite web |title=Carillons |website=World Carillon Federation |url=http://www.carillon.org/eng/fs_carillon.htm |access-date=2021-01-30 |url-status=live|archivedate=2021-01-11 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210111190849/https://www.carillon.org/eng/fs_carillon.htm }}</ref>。TowerBellsでは伝統的カリヨンも非伝統的なカリヨンも合わせて集計しており、地図や技術仕様、仕様の要約を公開している<ref name="TowerBells About">{{cite web |title=More About Carillons and Other Tower Bell Instruments |website=TowerBells.org |url=http://www.towerbells.org/data/Data_Top.html |access-date=2021-02-04 |url-status=live |archivedate=2021-01-11 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210111190849/https://www.carillon.org/eng/fs_carillon.htm }}</ref>{{sfn|"Organization." World Carillon Federation}}。 |
|||
TowerBellsと世界カリヨン連盟によると、世界には約700の伝統的カリヨンが存在している。[[南極大陸]]を除くすべての大陸に3つ以上のカリヨンが存在しているものの、20を超えるカリヨンを持つ国は6カ国しかない{{sfn|"Indexes to Traditional Carillons Around the World." ''TowerBells.org''}}<ref name="WCF carillon list"/>。「偉大なカリヨンの国」と呼ばれる{{sfn|Rombouts|2014|p=309}}これらの国のうち、オランダ、ベルギー、アメリカ合衆国の3カ国に世界のカリヨンの2/3が存在する。また、ネーデルラント周辺の西ヨーロッパとアメリカ合衆国にあるカリヨンを合わせると90%以上になる。 |
|||
北米のカリヨンのうち約80%は宗教機関と教育機関が保有しており<ref name="TowerBells NA Owner Type">{{cite web |title=North American traditional carillons by type of institution |website=TowerBells.org |url=http://www.towerbells.org/data/IXNATRinstype.html |access-date=2021-04-28 |url-status=live |archivedate=2020-09-03 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20200903024555/http://www.towerbells.org/data/IXNATRinstype.html}}</ref> 、一方ヨーロッパではほぼすべてのカリヨンを地方自治体が保有している<ref>{{cite magazine |last=Lee |first=Roy |title=From the President's Corner |magazine=Carillon News |issue=105 |date=April 2021 |page=3 |publisher=The Guild of Carillonneurs in North America{{enlink|The Guild of Carillonneurs in North America|a=on}} |url=https://www.gcna.org/resources/Documents/Carillon-News-2021-04.pdf |access-date=2021-05-05 |url-status=live |archivedate=2021-05-05 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210505144025/https://www.gcna.org/resources/Documents/Carillon-News-2021-04.pdf}}</ref>。 |
|||
現存しているほぼすべてのカリヨンは100年以内に作られたものであり、18世紀以前に造られて現存するカリヨンは50個ほと考えられている{{sfn|Rombouts|2014|p=310}}。TowerBellによると、さらに483の非伝統的カリヨンがアメリカとヨーロッパに存在している{{sfn|"Indexes to Non-traditional Carillons Around the World." ''TowerBells.org''}}。 |
|||
{{Gallery |
|||
| align = center |
|||
| height = 130px |
|||
| width = 50px |
|||
| mode = nolines |
|||
| File:National Carillon, ACT - Rectilinear projection.jpg |
|||
| alt1 = オーストラリアのキャンベラにある大きな白レンガの鐘楼 |
|||
| [[オーストラリア]]、[[キャンベラ]]にある55個の鐘のカリヨン、{{仮リンク|ナショナル・カリヨン|en|National Carillon}} |
|||
| File:Thomas Rees Memorial Carillon.jpg |
|||
| alt2 = イリノイ州スプリング・フィールドにあるコンサートカリヨン |
|||
| [[アメリカ合衆国]][[イリノイ州]][[スプリング・フィールド]]の67個の鐘のカリヨン、{{仮リンク|トーマス・リース記念カリヨン|en|Thomas Rees Memorial Carillon}} |
|||
| File:Parlement d'Ottawa.jpg |
|||
| alt3 = カナダ、オタワにある大時計を備えた大きな石レンガの鐘楼 |
|||
| カナダ、[[オタワ]]にある53個の鐘のカリヨン、{{仮リンク|ピース・タワー|en|Peace Tower}} |
|||
| File:150607 Carillon Berlin Tiergarten.jpg |
|||
| alt4 = ドイツ、ベルリンにある茶色い正方形の鐘楼 |
|||
| [[ドイツ]]、[[ベルリン]]にある68個の鐘の{{仮リンク|ティーアガルテンのカリヨン|en|Carillon in Berlin-Tiergarten}} |
|||
| File:Mechelen St-Romboutskathedraal 04.JPG |
|||
| alt5 = ベルギー、メッヘレンにある凝った装飾レンガによる鐘楼 |
|||
| [[ベルギー]]、[[メッヘレン]]にある[[聖ロンバウツ大聖堂|聖ロンバウツ教会]]の鐘楼。49個の鐘のカリヨンを二つ備えている。 |
|||
| File:Ames iowastate.jpg |
|||
|alt6=大学構内の森に建てられたレンガ造り、三角屋根の鐘楼 |
|||
|[[アイオワ州立大学]]の鐘楼「マクドナルド・スタントン記念カリヨン」''MacDonald Stanton Memorial Carillon'' |
|||
}} |
|||
=== 日本 === |
|||
現在日本国内に設置されているカリヨンのうち、本格的な鍵盤を有するカリヨンは次の4基である。 |
現在日本国内に設置されているカリヨンのうち、本格的な鍵盤を有するカリヨンは次の4基である。 |
||
* [[インテックス大阪]] |
* [[インテックス大阪]] |
||
*:37鐘、3オクターブ、小型の鐘で総重量5トンと軽量なトラベリングカリヨン(移動式床置型)で、 |
*:37鐘、3オクターブ、小型の鐘で総重量5トンと軽量なトラベリングカリヨン(移動式床置型)で、1984年の第2回御堂筋パレードにフロート参加したのちに大阪市に寄贈された<ref name="IntexOsaka">{{Cite web|和書|title=施設案内 展示アートギャラリー |trans-title=What is a Carillon? |language=ja |website=Intex Osaka |url=https://www.intex-osaka.com/jp/facilities/art/ |access-date=2021-06-17 |url-status=live |archivedate=2021-02-06 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210206205015/https://www.intex-osaka.com/jp/facilities/art/ }}</ref>。[[大阪城公園]]に運ばれてブラスバンドとのジョイントコンサートや多数の市民が演奏体験したこともある。 |
||
* JR[[伊丹駅 (JR西日本)|伊丹駅]]西側広場 |
|||
*:1990年11月9日竣工。カリヨン塔の高さが15メートル、ベルギー、クロコマティック社製43鐘、4オクターブある。8月15日に平和の鐘カリヨン[[コンサート]]、6月19日頃に国際カリヨンの日を記念したコンサートが開催される。カリヨン塔の5階部分に鐘が設置され、鍵盤は4階部分にある。愛称「フランドルの鐘」<ref>[http://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/SHIMIN/KOKUSAIHEIWA/1383653184806.html フランドルの鐘(カリヨン)] 伊丹市</ref>。日本で公共の場に設置された唯一のカリヨン。また、2021年6月に世界平和カリヨンにも登録されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/SHIMIN/JINKEN/tabunka_kyousei_heiwa/carillon/1383653184806.html |title= |
|||
フランドルの鐘(カリヨン)|website=伊丹市 |language=ja |accessdate=2022-05-21|archivedate=2022-05-21|archiveurl=https://web.archive.org/web/20220521081918/https://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/SHIMIN/JINKEN/tabunka_kyousei_heiwa/carillon/1383653184806.html}}</ref>。 |
|||
* [[神慈秀明会]]神苑(非公開) |
|||
*:[[イオ・ミン・ペイ]]が設計した[[三味線]]の[[撥]]の形のベルタワーで、カリヨン塔の高さが60メートル、50鐘、4オクターブ、鐘も大きく日本最大のカリヨンである。教祖殿前の広場に設置されている。 |
|||
* [[ハウステンボス]] |
* [[ハウステンボス]] |
||
*:「カロヨン」と称する。37鐘、3オクターブあり、屋内にタワー型で設置されている。開園当時は50鐘のトラベリングカロヨン(電動自動車に搭載)が園内を運行していた。 |
*:「カロヨン」と称する。37鐘、3オクターブあり、屋内にタワー型で設置されている。開園当時は50鐘のトラベリングカロヨン(電動自動車に搭載)が園内を運行していた。 |
||
* [[神慈秀明会]]神苑(非公開) |
|||
*:[[イオ・ミン・ペイ]]が設計した[[三味線]]の[[撥]]の形のベルタワーで、カリヨン塔の高さが60メートル、50鐘、4オクターブ、鐘も大きく日本最大のカリヨンである。教祖殿前の広場に設置されている。なお、教祖殿は、鉄筋コンクリート建造物の柱間距離が日本最大である。 |
|||
* JR[[伊丹駅 (JR西日本)|伊丹駅]]西側広場 |
|||
*:1990年11月9日竣工。カリヨン塔の高さが15メートル、43鐘、4オクターブある。8月15日に平和の鐘カリヨン[[コンサート]]、6月19日頃に国際カリヨンの日を記念したコンサートが開催される。カリヨン塔の5階部分に鐘が設置され、鍵盤は4階部分にある。愛称「フランドルの鐘」<ref>[http://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/SHIMIN/KOKUSAIHEIWA/1383653184806.html フランドルの鐘(カリヨン)] 伊丹市</ref>。日本で公共の場に設置された唯一のカリヨン。 |
|||
==== 日本国内の歴史的カリヨン ==== |
|||
ほか、日本には、鐘の数は数個から数十個まで様々であるが、デザインに優れた自動演奏のカリヨンが数多くある。[[宇都宮市]]の[[ベルモール]]のカリヨンは、ツリー型で49鐘、[[コンピュータ]]での音量調整機能で室内設置に対応しており、自動演奏はもとよりキーボードで演奏もできる。 |
|||
* カトリック夙川教会に1926年-1932年にかけて設置されたフランス、{{仮リンク|パッカール社|en|Fonderie Paccard}}製の歴史的カリヨンが存在する<ref name="夙川教会">{{Cite web|和書|url=https://kobecco.hpg.co.jp/27012/ |title=清麗な音色で夙川の人々の心を濯ぐ日本最古のカリヨン 夙川 Shukugawa|website=Kobecco 神戸っ子 |language=ja |accessdate=2021-05-28|archivedate=2021-03-21|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210529173747/https://kobecco.hpg.co.jp/27012/}}</ref>。機械式のアクションと演奏できるコンソール、自動演奏機構、スイングベルの機構も持つ。 |
|||
== 脚注 == |
|||
{{脚注ヘルプ}} |
|||
{{Reflist}} |
|||
* [[椙山女学園中学校・高等学校|椙山女学園]]に、1931年に設置された10鐘の歴史的チャイムが存在する。このチャイムは金剛鐘と呼ばれており、1920年ごろにイギリスの{{仮リンク|ジレット&ジョンストン|en|Gillett & Johnston}}社で制作されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://mshc.sugiyama-u.ac.jp/b8729f2234689af7ecb89bcb69c806093373fb28.pdf |title=清椙山女学園のあゆみ |language=ja |accessdate=2022-05-21 |archivedate=2022-05-21 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20220521051250/https://mshc.sugiyama-u.ac.jp/b8729f2234689af7ecb89bcb69c806093373fb28.pdf/}}</ref>。手動のアクションで演奏可能なコンソールがあり、同校の生徒によって毎日始業時に演奏されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.sugiyama-u.ac.jp/junior/about/outline/song-bell/ |title=校歌・金剛鐘 |language=ja |accessdate=2022-05-21 |archivedate=2021-10-07 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20211007130735/https://www.sugiyama-u.ac.jp/junior/about/outline/song-bell/}}</ref>。 |
|||
==== 非伝統的カリヨン ==== |
|||
ほか、日本にはデザインに優れた様々な非伝統的カリヨンが数多くある。[[宇都宮市]]の[[ベルモール]]のカリヨンは、ツリー型で49鐘、[[コンピュータ]]での音量調整機能で室内設置に対応しており、自動演奏はもとよりキーボードで演奏もできる。[[国立音楽大学]]の講堂前には電子式アクションで鍵盤を使って演奏できる47鐘のグロッケンシュピールがある<ref>{{Cite web|和書|title=前川建築のホールとその響きを探る|url=https://www.saf.or.jp/saitama/pdf/library/library05_20190821.pdf|accessdate=2021-06-17 |archivedate=2021-06-17|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210617145059/https://www.saf.or.jp/saitama/pdf/library/library05_20190821.pdf}} p.15</ref>。 |
|||
== 移動式カリヨン == |
|||
[[File:Carillon small portable.jpg|thumb|right|250px|alt=多数の鐘を吊り下げ、カリヨンの鍵盤をつけた小さいサイズのフレーム|''Cast in Bronze'' の持つトラベリングカリヨンのうちの一台。2008年6月、コロラドで行われたルネサンス・フェスティバルにて]] |
|||
塔ではなく、小型のフレームに鐘と鍵盤を納め、移動できるようにした移動式カリヨン、あるいはトラベリングカリヨン(Traveling, mobile carillons) と呼ばれる形態のカリヨンは、塔に納めるものに比べて非常に軽く小さい{{sfn|Widmann|2014|p=12}}。移動式カリヨンは1933年から1938年の間にイギリスの{{仮リンク|ノーラ・ジョンストン|en|Nora Johnston}}が考案した。彼女は伝統的なバトン式鍵盤を{{仮リンク|チャイムバー|en|Chime bar}}のシステムに接続したものを、移動可能なフレームに固定して、ラジオのドキュメンタリー番組、オーケストラのコンサート、コマーシャル出演で演奏するためにそれに乗ってアメリカ合衆国を二回訪れた{{sfn|Rombouts|2014|pp=245–46}} 。のちに別の人の手によって、カリヨンの鐘を使ったものが作られた{{sfn|Widmann|2014|pp=15–19}}。 |
|||
世界カリヨン連盟<ref name="WCF mobile carillon list">{{cite web |title=Traveling Carillons |website=World Carillon Federation |url=http://www.carillon.org/eng/fs_reizende.htm |access-date=2021-01-31 |url-status=live |archivedate=2020-12-07 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201207201543/http://www.carillon.org/eng/fs_reizende.htm}}</ref>とTowerBells<ref name="TowerBells Traveling Carillons">{{cite web |title=Traveling Carillons and Chimes Worldwide |website=TowerBells.org |url=http://www.towerbells.org/data/IXtraveling.html |access-date=2021-04-28 |url-status=live |archivedate=2020-07-13 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20200713230842/http://www.towerbells.org/data/IXtraveling.html}}</ref>によると、世界に約20の移動式カリヨンがあり、そのうち17が伝統的カリヨンとされている。ほとんどの移動式カリヨンは西ヨーロッパとアメリカにあり、販促用の道具として鐘の鋳造社が保有している。 |
|||
アメリカ合衆国にある二つの移動式カリヨンはいずれも「ベルの精神」を特徴として他の楽器と一緒に鐘を演奏する音楽グループ Cast in Bronze が所有している。Cast in Bronze は楽器の保存と宣伝を使命としており、アメリカ合衆国の大衆にカリヨンを広く紹介したことで知られている{{sfn|Rombouts|2014|p=316}}。 |
|||
日本国内には、ハウステンボス開演時に運行していた電気自動車にカリヨンをのせたトラベリングカロヨン(50鐘)と、ベルギーから大阪市に寄贈されたトラベリングカリヨン(37鐘)がある。いずれも{{as of|2021|lc=y|post=.}}は演奏はされていない。 |
|||
<!-- |
|||
== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
||
* {{仮リンク|アントン・ブリーズカリヨン図書館|en|Anton Brees Carillon Library}} |
|||
*[[グロッケンシュピール]] |
|||
* [[ベルギーとフランスの鐘楼群]] |
|||
*[[鍵盤付きグロッケンシュピール]] |
|||
* {{仮リンク|チェンジ・リンギング|en|Change ringing}} |
|||
*[[編鐘]] |
|||
* {{仮リンク|チャイム (鐘を用いた楽器)|en|Chime (bell instrument)}} |
|||
* {{仮リンク|電子的カリヨン|en|Electronic carillon}} |
|||
* Ring of bells |
|||
* {{仮リンク|鐘史学|en|Campanology}} |
|||
* {{仮リンク|ロシア正教のベルリンギング|en|Russian Orthodox bell ringing}} |
|||
--> |
|||
== 脚注 == |
|||
=== 注釈 === |
|||
<references group="注釈" /> |
|||
=== 出典 === |
|||
{{Reflist|2}} |
|||
== 参考文献 == |
|||
{{refbegin}} |
|||
=== 書籍 === |
|||
* {{cite book |last=Gouwens |first=John |title=Campanology: A Study of Bells, with an Emphasis on the Carillon |year=2013 |publisher=North American Carillon School |isbn=978-1-4840-3766-9|ref=harv}} |
|||
* {{cite book |last=Gouwens |first=John |title=Playing the Carillon: An Introductory Method |year=2017 |edition=5 |publisher=The Guild of Carillonneurs in North America |oclc=765849175|ref=harv}} |
|||
* {{cite book |last=Johnston |first=Ronald J. |title=Bell-ringing: The English Art of Change-ringing |year=1986 |publisher=[[Viking Press]] |isbn=978-0-670-80176-3 |ol=OL2328271M}} |
|||
* {{cite book |author-last1=Keldermans |author-first1=Karel |author-last2=Keldermans |author-first2=Linda |title=Carillon: The Evolution of a Concert Instrument in North America |year=1996 |publisher=Springfield Park District{{Enlink|Springfield Park District|en}} |isbn=0-9652252-0-8 |ol=1024319M |url=https://openlibrary.org/books/OL1024319M/Carillon |accessdate=2021-02-07 |archivedate=2021-06-13 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210613192847/https://openlibrary.org/books/OL1024319M/Carillon |url-status=live |ref={{harvid|Keldermans|1996}}}} |
|||
* {{cite book |last=Lehr |first=André |title=Campanology Textbook: The Musical and Technical Aspect of Swinging Bells and Carillons |language=nl |translator-last=Schafer |translator-first=Kimberly |year=2005 |publisher=The Guild of Carillonneurs in North America |oclc=154672090|ref=harv}} |
|||
* {{cite book |last=Price |first=Percival |title=Bells and Man |year=1983 |publisher=[[Oxford University Press]] |isbn=978-0-19-318103-8 |ref=harv}} |
|||
* {{cite book |last=Rice |first=William Gorham |author-link=:en:William Gorham Rice |title=Carillons of Belgium and Holland: Tower Music in the Low Countries |year=1914 |publisher=John Lane Company{{Enlink|John Lane Company|en}} |hdl=2027/uc2.ark:/13960/t5p84727t}} |
|||
* {{cite book |last=Rombouts |first=Luc |author-link= |title=The New Grove Dictionary of Music and Musicians, Second Edition |publisher=Oxford University Press |language=en |year=2000 |volume=part 5|pages=128-134}} |
|||
* {{cite book |last=Rombouts |first=Luc |author-link= |title=Singing Bronze: A History of Carillon Music |year=2014 |publisher=Leuven University Press{{Enlink|Leuven University Press|en}} |translator=Communicationwise |isbn=978-90-5867-956-7 |url=https://books.google.com/books?id=jQ-RCAAAQBAJ&pg=PA111|accessdate=2021-02-01 |archivedate=2016-06-17 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20160617175303/https://books.google.com/books?id=jQ-RCAAAQBAJ&pg=PA111 |url-status=live |ref=harv}} |
|||
* {{Cite book|1=和書 |last=レア |first=アンドレ |author2=海老沢 敏 |author3=新宮 晋 |author4=田村 紘三 |authorlink=|year=1994|date=1994-11-25 |title=世界カリヨン紀行 |publisher=新潮社|language=ja |isbn=4-10-602032-7 |asin=4106020327 |ref={{harvid|レア, et.al.|1994}} }} |
|||
* {{cite thesis |last=Swager |first=Brian |title=A History of the Carillon: Its Origins, Development, and Evolution as a Musical Instrument |year=1993 |type=DMus |publisher=[[インディアナ大学システム|インディアナ大学]] |oclc=53120808 |url=http://www.allegrofuoco.com/media/SWAGER.I.U.Document.1993.pdf |accessdate=2021-07-25 |url-status=live |archivedate=2021-07-25 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210725200535/http://www.allegrofuoco.com/media/SWAGER.I.U.Document.1993.pdf }} |
|||
=== 学術誌 === |
|||
* {{cite journal |last=Barnes |first=Ronald |author-link=Ronald Barnes (carillonist) |title=The North American Carillon Movement |journal=The Bulletin |volume=36 |issue=1 |date=1987 |pages=20–37 |publisher=The Guild of Carillonneurs in North America |url=https://www.gcna.org/bulletin |format=PDF |access-date=2021-07-03 |url-access=subscription |oclc=998832003 |archivedate=2021-02-10 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210210124235/https://www.gcna.org/bulletin |url-status=live }} |
|||
* {{cite magazine |last=Brink |first=Joey |title=Composing for Carillon |magazine=NewMusicBox{{Enlink|NewMusicBox|en}}] |date=2017-12-19 |url=https://nmbx.newmusicusa.org/composing-for-carillon/ |access-date=2021-04-13 |oclc=1120054332 |url-status=live |archivedate=2021-04-02 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210402155038/https://nmbx.newmusicusa.org/composing-for-carillon/}} |
|||
* {{cite journal |last=De Turk |first=William |title=Barber, Menotti, Rota: Carillon Composers in Residence |journal=The Bulletin |volume=48 |issue=1 |date=1999 |pages=53–65 |publisher=The Guild of Carillonneurs in North America |url=https://www.gcna.org/bulletin |format=PDF |access-date=2021-04-05 |url-access=subscription |oclc=998832003 |archivedate=2021-02-10 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210210124235/https://www.gcna.org/bulletin |url-status=live |ref=harv}} |
|||
* {{cite magazine |last=Halsted |first=Margo |title=What's in a Name? |magazine=Carillon News |issue=88 |date=2012-11 |page=10 |publisher=The Guild of Carillonneurs in North America |url=https://www.gcna.org/resources/Documents/Carillon-News-2012-11.pdf |access-date=2021-04-13 |oclc=1120054332 |url-status=live |archivedate=2020-05-24 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20200524130945/https://www.gcna.org/resources/Documents/Carillon-News-2012-11.pdf}} |
|||
* {{cite magazine |last=Thorne |first=Stephen J. |title=The Seizing of Europe's Bells |magazine=Legion |date=2018-11-21 |url=https://legionmagazine.com/en/2018/11/the-seizing-of-europes-bells/ |access-date=2021-04-14 |oclc=1120054332 |url-status=live |archivedate=2021-01-26 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210126183404/https://legionmagazine.com/en/2018/11/the-seizing-of-europes-bells/ |ref=harv }} |
|||
* {{cite journal |last=Van Ulft |first=Carlo |title=Carillon Music: An Evolution |journal=The Bulletin |volume=69 |issue=1 |date=2020 |pages=32–36 |publisher=The Guild of Carillonneurs in North America |url=https://www.gcna.org/bulletin |format=PDF |access-date=2021-04-05 |url-status=live |url-access=subscription |oclc=998832003|ref=harv}} |
|||
* {{cite journal |last=Widmann |first=John |title=World Carillon Federation: Mobile Carillons |journal=The Bulletin |volume=63 |issue=2 |date=2014 |pages=12–19 |publisher=The Guild of Carillonneurs in North America |url=https://www.gcna.org/bulletin |format=PDF |access-date=2021-04-16 |url-access=subscription |oclc=998832003 |archivedate=2021-02-10 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210210124235/https://www.gcna.org/bulletin |url-status=live |ref=harv}} |
|||
=== インターネット上の情報源 === |
|||
* {{cite report |last1=Courter |first1=John |author-link1=John Courter |last2=Hurd |first2=Timothy |last3=Janssens |first3=Liesbeth |last4=Macoska |first4=Patrick |last5=Oldenbeuving |first5=Gert |last6=van Wely |first6=Bob |title=Consensus on technical norms for a world standard carillon keyboard WCF Keyboard 2006 |year=2006 |type=PDF |publisher=World Carillon Federation |url=http://www.carillon.org/pdf/Technical_Norms.pdf |accessdate=2021-02-16 |url-status=live |archivedate=2016-11-17 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20161117233716/http://www.carillon.org/pdf/Technical_Norms.pdf |ref={{harvid|Courter, et.al.|2006}}}} |
|||
* {{cite web |last1=Ng |first1=Tiffany |last2=Lewis |first2=Emmet |title=International Bibliography of Carillon Music by Women, Transgender, and Nonbinary Composers |date=2020-04-30 |website=DeepBlue |publisher=University of Michigan Publishing{{Enlink|University of Michigan Library#Michigan Publishing|a=on}} |page=1 |hdl=2027.42/153530 |url=https://hdl.handle.net/2027.42/153530 |access-date=2021-04-13 |archivedate=2021-06-13 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210613192844/https://deepblue.lib.umich.edu/handle/2027.42/153530 |url-status=live |ref=harv }} |
|||
* {{cite web |last=Rech |first=Adelheid |title=How the Carillon Works |website=The Carillon |publisher=Essential Vermeer 3.0 |url=http://www.essentialvermeer.com/music/carillon/carillon_b.html |access-date=2021-02-16 |url-status=live |archivedate=2020-02-20 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20200220154358/http://www.essentialvermeer.com/music/carillon/carillon_b.html |ref={{harvid|Rech, "How the Carillon Works." Essential Vermeer}}}} |
|||
* {{cite encyclopedia |title=Carillon |encyclopedia=[[Encyclopaedia Britannica]] |url=https://www.britannica.com/art/carillon |access-date=2021-04-13 |url-status=live |archivedate=2020-10-29 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20201029165511if_/https://www.britannica.com/art/carillon |ref={{sfnRef|"Carillon." ''Encyclopaedia Britannica''}}}} |
|||
* {{cite OED|carillon|access-date=2021-02-16|ref={{sfnRef|"Carillon." ''Oxford English Dictionary''}}}} |
|||
* {{cite web |title=Carillon |website=[[Online Etymology Dictionary]] |url=https://www.etymonline.com/word/carillon |access-date=2021-02-16 |url-status=live |archivedate=2019-01-01 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20190501163615/https://www.etymonline.com/word/carillon |ref={{sfnRef|"Carillon." ''Online Etymology Dictionary''}}}} |
|||
* {{cite web |title=Carillon Bells |website=The Guild of Carillonneurs in North America |url=https://www.gcna.org/carillon-bells |access-date=2021-02-16 |url-status=live |archivedate=2021-01-23 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210123212453/https://www.gcna.org/carillon-bells |ref={{sfnRef|"Carillon Bells." ''GThe uild of Carillonneurs in North America''}}}} |
|||
* {{cite web |title=Indexes to Non-traditional Carillons Around the World |website=TowerBells.org |url=http://www.towerbells.org/data/NT_type_ixs.html |access-date=2021-05-04 |ref={{sfnRef|"Indexes to Non-traditional Carillons Around the World." ''TowerBells.org''}} |archivedate=2021-05-05 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210505001843/http://www.towerbells.org/data/NT_type_ixs.html |url-status=live }} |
|||
* {{cite web |title=Indexes to Traditional Carillons Around the World |website=TowerBells.org |url=http://www.towerbells.org/data/TR_type_ixs.html |access-date=2021-05-04 |ref={{sfnRef|"Indexes to Traditional Carillons Around the World." ''TowerBells.org''}} |archivedate=2020-07-11 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20200711191707/http://towerbells.org/data/TR_type_ixs.html |url-status=live }} |
|||
* {{cite report |last=Ng |first=Tiffany |title=Annotated Bibliography of African American Carillon Music |date=2021-02-03 |orig-date=First published 26 November 2018 |publisher=MUniversity of Michigan Library{{Enlink|University of Michigan Library#Michigan Publishing|a=on}} |via=DeepBlue |hdl=2027.42/146525 |url=https://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/handle/2027.42/146525/Ng%20Af-Am%20bibliography%203rd%20ed%2002-2021.pdf?sequence=7&isAllowed=y |accessdate=2021-07-24 |archivedate=2021-07-22 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210722230226/https://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/handle/2027.42/146525/Ng%20Af-Am%20bibliography%203rd%20ed%2002-2021.pdf?sequence=7&isAllowed=y |url-status=live }} |
|||
* {{cite web |title=A Musical Instrument |website=The Guild of Carillonneurs in North America |url=https://www.gcna.org/carillon-instrument |access-date=2021-02-16 |url-status=live |archivedate=2021-01-23 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210123212451/https://www.gcna.org/carillon-instrument |ref={{sfnRef|"A Musical Instrument." ''The Guild of Carillonneurs in North America''}}}} |
|||
* {{cite report |last1=Ng |first1=Tiffany |last2=Lewis |first2=Emmet |title=International Bibliography of Carillon Music by Women, Transgender, and Nonbinary Composers |date=2020-04-30 |publisher=University of Michigan Library{{Enlink|University of Michigan Library#Michigan Publishing|a=on}} |via=DeepBlue |hdl=2027.42/153530 |url=https://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/handle/2027.42/153530/Ng_Lewis_Womxn_carillon%20composers_v1-2.pdf?sequence=6&isAllowed=y |accessdate=2021-07-24 |archivedate=2021-06-13 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210613192929/https://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/handle/2027.42/153530/Ng_Lewis_Womxn_carillon%20composers_v1-2.pdf?sequence=6&isAllowed=y |url-status=live }} |
|||
<!--* {{cite web |title=Playing Mechanism |website=The Guild of Carillonneurs in North America |url=https://www.gcna.org/playing-mechanism |access-date=2021-02-16 |url-status=live |archivedate=2021-01-23 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210123212459/https://www.gcna.org/playing-mechanism |ref={{sfnRef|"Playing Mechanism." ''The Guild of Carillonneurs in North America''}}}}--> |
|||
* {{cite web |title=Organization |publisher=World Carillon Federation |url=http://www.carillon.org/eng/fs_orga.htm |access-date=2021-06-14 |url-status=live |archivedate=2021-03-09 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210309113533/http://www.carillon.org/eng/fs_orga.htm |ref={{sfnRef|"Organization." World Carillon Federation}} }} |
|||
{{refend}} |
|||
== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
||
{{Sister project links|display=Carillon|d=Q505174|commons=yes|commonscat=Carillons|wikt=no|b=no|v=no|s=no|n=no|q=no}} |
|||
{{commonscat|Carillons}} |
|||
{{EB1911 poster|Carillon}} |
|||
*[http://www.carillon.co.jp/ 株式会社 カリヨン・センター] |
|||
*[http://www.europebell.net/ ヨーロッパベル販売株式会社:カリヨンの設置会社] |
|||
* [https://northamericancarillonschool.com/home 北アメリカカリヨン学校 (Noth American Carillon School)] |
|||
{{Normdaten}} |
|||
* [http://towerbells.org/data/TR_type_ixs.html TowerBellによる世界のカリヨン一覧] {{In lang|en}} |
|||
<!-- 以下の企業を追記している方へ 本記事のノートを確認し、適切に対処してください --> |
|||
<!-- * 日本でのカリヨンの施工業者 ヨーロッパベル販売株式会社 --> |
|||
{{楽器}}{{Normdaten}} |
|||
{{DEFAULTSORT:かりよん}} |
{{DEFAULTSORT:かりよん}} |
||
[[Category: |
[[Category:鐘]] |
||
[[Category:鍵盤楽器]] |
|||
[[Category:鐘楼]] |
[[Category:鐘楼]] |
||
[[Category: |
[[Category:鍵盤楽器]] |
||
[[Category:自動演奏機械]] |
|||
[[Category:旋律打楽器]] |
|||
<!-- |
|||
[[Category:バロック時代の楽器]] [[Category:Baroque instruments]] |
|||
[[Category:ベルギーの楽器]][[Category:Belgian musical instruments]] |
|||
[[Category:カリヨン]][[Category:Carillons| ]] |
|||
[[Category:オランダの楽器]][[Category:Dutch musical instruments]] |
|||
[[Category:体鳴楽器]][[Category:Idiophones]] |
|||
[[Category:Carillons ]] |
|||
--> |
2024年10月21日 (月) 07:30時点における最新版
カリヨン(仏: carillon、アメリカ: [ˈkærəlɒn] KERR-əl-on or イギリス: [kəˈrɪljən] kə-RIL-yən;[1][2] フランス語: [kaʁijɔ̃])は、調律した鐘と鍵盤を組み合わせて演奏する有音程打楽器であり鍵盤楽器[3]、体鳴楽器。日本語では組み鐘と訳される[4]。音色を揃え調律した青銅製の鐘を複数組み合わせ、鍵盤を使ってメロディーと和声を演奏する。多くは塔状の建築物に納めた鐘を、塔内にあるコンソールから演奏する。現在の形態に近いものは15世紀にオランダで開発され[4]、19世紀までネーデルラント(現在のベルギー、オランダ、フランスの一部)を中心に広まり、現代では世界中に分布している。
概要
[編集]カリヨンは鐘楼などの塔状の建築物として設置される楽器であり、歴史的には時報を流す目的で設置されてきた[5]。その多くは教会、学校、地方自治体などの団体が保有している。演奏にはバトン式鍵盤とペダルを用いるため鍵盤楽器であり、鐘を叩くことで発音するため体鳴楽器である。
カリヨンはタワーベルと同じくスイングベルから派生した楽器である。カリヨンの練習用の楽器からグロッケンシュピールが作られた。また、カリヨンの持つ自動演奏の仕掛けはオルゴールの元となった[6]。1999年にはベルギー、フランスの古いカリヨンが当時の技術、景観、あるいは重要な建築であると評価され、ベルギーとフランスの鐘楼群が世界遺産に登録されている。
カリヨンを含めて、調律した鐘を並べて演奏する楽器には音色、サイズ、重さ、形状において多彩なバリエーションがある。カリヨンと演奏方法やアクション機構が同じでも鐘が23個(2オクターブ)以下のものはカリヨンではなくチャイムと呼ばれる[7]。
カリヨンは大まかに伝統的カリヨンと非伝統的カリヨンの2つに分類される。伝統的カリヨンとは、人がバトン式鍵盤を用いて演奏し、電気式や電子式、コンピューターによるアクションの伝達を行わないものである。伝統的カリヨンは700ほどあると考えられており[8]、その多くはヨーロッパのネーデルラント周辺と、アメリカ合衆国にある。非伝統的カリヨンとは、鍵盤を持たず、人が演奏できないか、人が演奏してもその動力を電気式や電子式で鐘に伝えるようになっているものである[7]。500個ほどの存在が知られており、その多くは西ヨーロッパにあると考えられている。数は少ないものの、演奏の仕組を小型化・軽量化して台車に乗るようした移動式のカリヨンもあり、トラベリングカリヨンと呼ばれている。
伝統的カリヨンと非伝統的カリヨンの境界について、楽器によっては両方の特徴を持つものもあり、文献、団体などによって境界が異なる[9]。本記事では北アメリカ大陸カリヨン連盟(GCAN)の定義に従い、単にカリヨンと記載した際には「人が演奏可能なバトン式鍵盤を持ち、機械式のアクションで人力を伝達して2オクターブ以上の調律した鐘を叩いて演奏する楽器」を中心に記載する。
楽器の数が限られているため、演奏者の数は少ない。カリヨン奏者となるためには、ベルギーやオランダにあるカリヨン専門の学校や、北アメリカの複数の大学のカリヨン奏者の育成コースで演奏方法を学ぶことができる。専門の学校を卒業するか、ギルド認定試験に合格することで認定カリヨン奏者になれる。
日本国内にはカリヨンと呼ばれる楽器あるいはモニュメントが1993年時点で300箇所以上ある[10]。そのほぼ全ては鍵盤を持たない自動演奏のみが可能なものか、鍵盤があっても動力を電気式で伝える非伝統的カリヨンであり、この項目でいうカリヨンには該当していない。日本国内でカリヨンに当てはまるものは4つ、そのうち3つが世界カリヨン協会にカリヨンとして登録されている[11]。また、いくつかの歴史的カリヨンの存在が確認されている。2021年時点で日本出身で認定を受けたカリヨン奏者は数人のみ知られており、2019年に日本カリヨン協会[12]、2020年に日本カリヨン演奏家協会[13]が設立されている。
名称と語源
[編集]カリヨンという語は、18世紀ごろに古フランス語の carignon (または quarregon と綴る。「4個組みのベル」の意)から造られた。quarregon はラテン語の quaternionem(クワテルニオ、「4個組」を意味する)、これはさらにラテン語のquater(「4回」を意味する)から来ている[14]。最も初期のカリヨンは、4つの鐘を組み合わせてウエストミンスターの鐘のようなメロディーを奏でていたためこう呼ばれた。 carillon という語はかつて楽器ではなく、複数の鐘で演奏するメロディーを指していた可能性がある[1]。ドイツ語では、フランス語の carignon を使うかドイツ語で Glockenspiel (「鐘の演奏」を意味する)と呼ぶ。これは楽器名のグロッケンシュピール(glockenspiel)と同じ綴りだが区別する必要がある[15]。オランダ語では beiaard と呼ばれており、その語源はよくわかっていない[16]。
カリヨンの演奏者をカリヨン奏者と呼び、英語圏ではフランス語から carillonneur (アメリカ: [ˌkɛrələˈnɜːr] KERR-ə-lə-NUR, イギリス: [kəˌrɪljəˈnɜːr] kə-RIL-yə-NUR[17])、日本語でもこれを英語風に読んでカリヨネアと呼ぶことがある。カリヨン、カリヨネアは18世紀のスペイン継承戦争後にこの楽器がイギリス軍に紹介されてから英語話者の間で使われるようになった[18]。フランス語の carillonneur はカリヨンを演奏する男性にのみ使われる言葉であり、フランス語で女性のカリヨン奏者を表すcarillonneuse は英語圏、日本語圏では使われていない。英語圏では他にカリヨン奏者を表す言葉として carillonist も使われている。carillonist のほうがスペルがわかりやすく発音も明快であるため、一部のカリヨン奏者は carillonneur を carillonist で置き換えることを望んでいる[19]。2018年に、世界カリヨン連盟は会話で使用するのに好ましい用語として carillonist を採用した[20]。
特徴
[編集]構造
[編集]鍵盤
[編集]カリヨンは鍵盤楽器であり、人間が演奏可能なバトン状の鍵盤を持つ。鍵盤の形状はピアノやオルガンとは大きく異なるものの、鍵盤の配列はよく似ている[21]。他の鍵盤楽器のキーに当たるものは丸みを帯びた木の棒(=バトン)で作られており、長さは20cm弱、太さ2cm弱の独特の形状をしている。鍵盤の構成は他の鍵盤楽器同様、ピアノの白鍵にあたる全音階のバトンが横一列に並び、その5cm〜10cmほど上にピアノの黒鍵に相当する半音階のバトンが並ぶ[21]。バトンのサイズはピアノやオルガンの鍵盤よりも大きく、隣り合うバトン同士は5cmほど離れている。奏者は手を握り、拳の小指側でバトンを叩くようにして演奏する[22]。そのため片方の腕で出せる音は基本的には一度に1音のみとなり、両手両足を用いても一度に4音となる。低音側の1.5オクターブから2オクターブはペダルにも割り当てられ、鍵盤でもペダルでも音を出すことができる。ペダルと鍵盤は接続されており、ペダルを踏むと同じ音の鍵盤側のバトンも下がる挙動となる[21]。カリヨンのペダルはオルガンほど長くはなく、短く太く、間隔が広く作られている[23][注釈 1]。
20世紀以降、カリヨンの鍵盤とペダルには、北アメリカカリヨンギルド (GCNA) による規格と、北ヨーロッパ規格の二つが存在していた。二つの規格は外側のペダルが内側に向けて曲がっているかどうか、キーのストロークなど幾つかの点で違いがあった[24]。2006年に世界カリヨン協会がこれらをまとめたWCF Keyboard 2006を作成し、それ以降カリヨンを新たに作るか、既存のキーボードを改修する際の基準として使うよう推奨している[25]。
アクション機構
[編集]鍵盤のそれぞれのキーは、ステンレス製のワイヤーによる伝達システムに接続している。キーを押した力でワイヤーを引っ張り、その力を滑車を経由して他のワイヤーに伝達し、最終的にクラッパー(鐘の舌)を鐘にむけて揺れる動きに変換する。クラッパーは静止時には鐘から5cmほどの距離で停止する[27]。音の低い大きな鐘では、クラッパーは音を出した後重力によって元の位置に戻る。音の高い小さな鐘では、クラッパーを元の位置に戻すための戻りバネ (return spring) を取り付けており、一度の打鍵で何度も鳴らないようになっている[28]。大きな鐘のクラッパーは大きく重いためこの機構は不要である[29]。鍵盤のすぐ上には、ターンバックル(引き締めネジ)と呼ばれるワイヤーの調節機構を持ち、温度変化で伸び縮みするワイヤーを調節できる[21]。
鐘の収容
[編集]カップ型をした青銅製の鐘は、塔の頂上部の鋼鉄や木製の梁に吊り下げられる。鐘の配置は設置する空間、塔の高さと構造、鐘の数とサイズ、重さによって異なる配置となる。特に大きく重い低音の鐘は、音のバランスを確保するために演奏室の下に配置されることが多い[30]。
ほとんどのカリヨンでは、演奏時にはクラッパーだけが動いて音を出し、鐘は動かない[31]。一部の楽器にのみ、一番重い鐘を揺らしてスイングベルのように音を出す機構を持つものがある[32]。
自動演奏機構
[編集]カリヨンには、単純な曲やウェストミンスターの鐘の自動演奏機構を備えているものがある[33]。ヨーロッパでは多くのカリヨンが時計に接続した大きな金属製のシリンダー状の演奏ドラムを使用している[34]。演奏ドラムの表面には金属製の杭を打ち込んであり、そのすぐ脇に鐘を鳴らすハンマーに接続したレバーを並べて設置している。時刻が来てドラムを回転させると、杭がレバーに引っかかり、さらに回転すると杭からレバーが外れ、その力でハンマーが鐘を鳴らす構造となっている[35]。杭は一時間おき、あるいは15分おきに簡単な曲を演奏するように配列されている。この機構の時計をゼンマイに、シリンダー部分を小型化、鐘をくし型の金属板にしたものが現代のシリンダー型のオルゴールである。
北米のカリヨンでは演奏ドラムのシステムはあまり一般的ではなく、代わりに紙テープと空気圧による演奏システムを持つものがある[36]。
重量
[編集]パイプオルガンと並んで、カリヨンは世界で最も重い楽器の一つである。カリヨンの重量は鐘のみでも4.5トン〜15トンほどであり、最も軽いものでも1トン、最も重いニューヨーク、リバーサイド教会にあるローラ・スペルマン・ロックフェラー記念カリヨンのものでは91トンにもなる。一組のカリヨンの中で最も大きく重い鐘はブルドン (鐘)と呼ばれる。ローラ・スペルマン・ロックフェラー記念カリヨンのブルドンは、カリヨン用に調律された鐘のなかで最も重いキャスティング(鐘の音が出る金属部分)であり、他のカリヨンの一番低い音よりもさらに一オクターブ低い音を出すことができる[37][38]。ロックフェラー記念カリヨンの鐘以外の発音部分、固定鐘、スングベル、クラッパー、梁などの重量を加えると227トン前後の重量になる[39]。
音
[編集]調律
[編集]カリヨンは鐘を叩くことで音を出すため、ザックス=ホルンボステル分類では打奏体鳴楽器の舌奏式釣鐘(111.242.222)に分類される[40]。カリヨンに使用する鐘は、通常の銅よりも大きな剛性と共鳴音を得るためにベルブロンズ(またはベルメタル)と呼ばれる銅とスズの特殊な合金で作る[41]。鐘の音色と音質は、鐘の重さと輪郭、形状によって決まり、鐘が欠けたり腐食したりしなければ鐘の音が変化することはない[42]。鐘の形状に応じて倍音と部分音の構成が変化する[43]。倍音、部分音には調和する音も調和しない音の両方があり、心地よい、調和のとれた一連の音色を生み出すには鐘の輪郭を注意深く調整する必要がある。鐘の製作者は通常5つの主要な音程に焦点を合わせて調整を行う。特に、ティアス (tierce) と呼ばれる短三度の倍音は、カリヨンの独特の音を生み出すことが知られており、現在も研究の対象となっている[44]。
鋳造のみによって完全に調律した鐘を造ることができないため、鐘はやや厚めに鋳造し、旋盤で表面を削りとって調律を行う。音色の調整が完了すると、以後鐘の音色が変わることはほとんどなく、設置後に鐘を劣化させるのは火事と大気汚染だけであると言われている[45]。 古いヨーロッパのカリヨンは中全音律に調律されていた。現代のカリヨン、特に北米のカリヨンは平均律に調整されている[46]。
音量
[編集]カリヨンにはピアノと同等か、それ以上のダイナミックレンジを持つ楽器が存在する。演奏者は演奏時のタッチによって幅広い音量を表現できる。大きな鐘(低い音)のダイナミックレンジは小さい鐘(高い音)よりも広いものとなる。小さな鐘は質量が少ないため、大きな鐘のごく一部の音量しか表現することができない。
音域
[編集]カリヨンの音域はそのカリヨンの鐘の数に比例し、鐘の数は主に楽器を造る際の資金で決まる。大きな鐘の鋳造コストは小さいものよりも高く、鐘を多く鋳造するにはより多くの資金が必要となる。カリヨンと呼ぶには、少なくとも23個(2オクターブ)以上の鐘を持つことが条件となり、それ未満の楽器はチャイム (en) と呼ばれる[47]。カリヨンの音域に標準的な規格はなく[46]、主に鐘の個数によって幾つかの小分類が使用されている。
- 23個 - 27個の鐘を持つものは2オクターブカリヨン、35個から39個の鐘を持つものは3オクターブカリヨンと呼ばれる。これらのカリヨンで演奏するには、狭い音域向けに書かれた楽譜を使用する[48]。
- 45個 - 50個の鐘を持つカリヨン(4オクターブ)はコンサートカリヨン、またはスタンダードカリヨンと呼ばれる[49]。
- 50個以上の鐘を持つものはしばしばグレートカリヨンやグランドカリヨンなどと呼ばれる[注釈 2]。
- 15個から23個の鐘を持つカリヨンのうち、1940年以前に作られたものは、世界カリヨン協会では歴史的カリヨンと呼んでいる[50]。
鐘の個数では、ミシガン州ブルームフィールドヒルズにあるカーク・イン・ザ・ヒルズ長老派教会にあるカークカリヨンと、韓国の大田広域市にある大田科学技術大学のカリヨンがいずれも77個の鐘を持ち、世界最大となっている[51][52]。
カリヨンは他の楽器と合奏することがほとんどないため、最低音の鐘はどの音でも大きな問題はない。そのため、設置する場所、あるいは資金の都合で最低音となる鐘が選ばれる[54]。楽譜の記載と演奏を容易にするため、カリヨンの鍵盤にはCコンパスと呼ばれるCの基準位置を示すことが一般的となっており、古い楽器や、小さいサイズのカリヨンの多くは移調楽器である[54]。転置は、完全四度下から1オクターブ上までどこでも可能である。米国ではカリヨンを本格的なコンサート楽器として確立するために、コンサートピッチ調律されている新しいカリヨンが増えている[37]。
Cコンパス基準で考えると、多くのカリヨンでは大きい方から2番目と4番目の鐘となるC♯とE♭の鐘が欠けている。理由として主に財政的な問題が挙げられる。これらの鐘を省くことでカリヨンの構造を簡略化して、大掛かりなカリヨンでは費用を20%前後削減できることがある。1900年代初頭以降、ヨーロッパではE♭の鐘を追加するカリヨンが時々あり、そう言った楽器ではC♯の代わりにC音の長二度下であるB♭も追加することがよくある[54]。
楽器によって音域や鐘、それを演奏する鍵盤のサイズが異なり、鍵盤全体が移調されている楽器もあり、演奏時に必要な動作やタッチが楽器ごとに大きく変わるなどの事情から、多くのカリヨンでは鐘楼ごとに専属のカリヨン奏者を抱えている。
歴史
[編集]起源
[編集]カリヨン以前、鐘は時報として用いられ、また、なんらかのメッセージを伝えるために利用されており、カリヨンはこの二つを合わせる形で生み出された。
中世まで、鐘の奏者はスイングベルのクラッパーにロープを取り付けて、鐘は静止したままチャイムと呼ばれる方法で鳴らしていた。チャイムで鳴らす音はスイングで鳴らす場合と比べてより細かく音を制御できるため、聞こえる範囲にメッセージを届けるために使われていた。たとえば、鐘を鳴らすことで火事や差し迫った災害を知らせるためによく利用されていた。また、慶事には奏者がベルに取り付けたロープを集め、リズミカルに演奏することなども行われていた[57]。1478年にダンケルクの男性が鐘でメロディーを演奏を行い、「神への敬意の表明が大きく躍進した」と述べている。また、1482年にベルギー、アールストのjesterという道化師がアントワープでロープとバトンを使って鐘を鳴らしていた記録があり、これは鍵盤の存在を示唆している[58]。
14世紀に機械式時計のために開発された脱進機の技術がヨーロッパの時計塔に徐々に広がり、それまであった水時計が機械式時計に置き換えられていった[59]。当時の時計には文字盤がなく、代わりに時刻に対応する数だけ鐘を鳴らして時刻を知らせていた。最終的にこの時報時計は、時刻を跨ぐ直前にお知らせの音を出し、続く内容に注目するよう促すものとなった。このお知らせの音は前鐘(英語: forestrike、オランダ語: voorslag)と呼ばれている[60]。初期の前鐘は一つか二つの鐘を鳴らすだけのものであったが、徐々に鳴らす機構が改善され、15世紀半ばには3つから7つの鐘を組み合わせてシンプルなメロディー (Clock chime) を演奏できるようになった[61]。
1510年に、アウデナールデ市庁舎にこれらの二つの機能を統合した原始的なカリヨンが造られた。これには9つの鐘があり、それぞれの鐘が時計の前鐘の機構と人が演奏できる鍵盤の両方に接続していた[62]。ネーデルラント(現代のベルギー、オランダ、またフランスのノール=パ・ド・カレー地域圏)では鐘で音楽を奏でることへの関心が特に高まり、鐘の鋳造技術がヨーロッパの他の地域に比べて著しく発達した[63]。
開発
[編集]16世紀から17世紀にかけて、ネーデルラントでは新しい楽器の開発のために良い条件が整った。この地域は、アムステルダムとアントワープの港を通じて、財政的手段と技術的優位性を獲得して鐘の鋳造の技術が発達した[64]。さらにオーストリアのマルグリット・ドートリッシュとカール5世による政治情勢が、都市に相対的な富と権力をもたらした[65] 。カリヨンは市民の誇るシンボルとして流行し、都市や町はお互いに最も高品質で最も大きな鐘を持つ楽器を所有することを競い合った。都市部には一つの街で複数のカリヨンを造るところがいくつもあり、田舎の小さな村でもカリヨンを作るための資金・資材を捻出するところがあった[66] 。この需要により、鐘の鋳造家が産業としても成功し、ワグヘブンズやファン・デン・ヘインなどの成功者が生まれた[67]。16世紀から17世紀にかけて彼らが作ったカリヨンは50個にのぼる[68]。1600年頃には、初期のカリヨンがこの地域の特徴として確立した[68]。
17世紀に、正確な鐘の調律技術で有名になった鋳造家ヘモニー兄弟とヤコブ・ファン・エイクが協力することで、現代のカリヨンにつながる重要な開発が行われた。ヤコブ・ファン・エイクはユトレヒトで活動した盲目のカリヨン奏者で、オランダの幾つかの都市で時計台のチャイムやカリヨンの改善をするよう任命されていた。彼は鐘の音色に強い興味を抱いており、1633年に鐘のもつ5つの部分音を分離して記述する技術を確立した。また、鐘の厚さを調節することで、それぞれの部分音を互いに調和するよう調律できることを発見した[70]。ヘモニー兄弟は、ヤコブ・ファン・エイクを顧問として、ズトフェンにある Wijnhuistoren の塔に19個の鐘を持つカリヨンの製作を行った。鐘の調律にヤコブ・ファン・エイクの指導を加えたことにより、初めて現代の定義でいうカリヨンに到達したものとなった[71]。カリヨン奏者 John Gouwens によると、その鐘の品質が非常に良かったため、ヤコブ・ファン・エイクは2オクターブ(=23個)の鐘を鋳造するよう進言し、この時から標準的なカリヨンを構成する最小の鐘の数が23個と考えられるようになった[72]。ヘモニー兄弟はその後36年間で51組のカリヨンを製作し[73]、その後18世紀にかけてカリヨン文化の最盛期となった[63]。
衰退
[編集]1789年から巻き起こったフランス革命により、ネーデルラントとカリヨンは広範囲に被害を被った。オーストリア領ネーデルラントはフランスに征服され、1975年に併合された。また、ネーデルラント連邦共和国はいくつかの姉妹共和国を経て1810年にフランスに併合された。フランス第一共和政の2年目に公安委員会は銅不足を解消するため、カリヨンを解体して鐘を鋳つぶして銅を供出する指示を発布した[74]。カリヨンの所有者達は、新政府に要望書を出して「文化的に重要」[75] と認めさせるか、鐘を取り外して埋めるなどして抵抗した[76]。当時110のカリヨンがあったが、そのうち約50個は戦争、火災、人為的破壊などの被害により破壊され、大部分はフランス革命戦争に使用する大砲を作るために鋳つぶされた[77]。
1750年から19世紀にかけて、戦争による破壊以外の点においても、人々のカリヨンへの関心が大幅に低下してしまった。多くの世帯で振り子式置き時計が使えるようになり、懐中時計を持つ人も増えたため、カリヨンによる時報の需要が大きく低下していた[78]。さらに、当時あったカリヨンの多くは中全音律に調律されており、新しい半音階の音楽様式の演奏には不向きであり[79]、楽器としても時代に大きく取り残されていた。カリヨンのための曲が新たに作られることはなくなり[80]、カリヨン演奏の質も大幅に低下していた。1895年に音楽出版社の Schott frères (en) が マティアス・ファン・デン・ギュイエンの『ピアノのための11のカリヨン前奏曲』を出版した際に「現代のカリヨン奏者はこれらをカリヨンで演奏する方法を知らない」と不満を記している[81] 。さらに、カリヨン製作が減少したことにより、ヘモニー兄弟が確立した調律技術のうち、ヤコブ・ファン・エイクの発見に依らない部分の技術が失われてしまった。そのため、この時代に作られたカリヨンはそれ以前の物よりも品質がよくなかった[63]。
復興
[編集]1890年代初頭に、イギリスの律修司祭でチェンジリンガーだったアーサー・シンプソンが、鐘の調律に関する一連の記事を出版した。彼は当時の鐘鋳造家達が、鐘の貧弱な調律に無頓着であることを訴え、その解決方法を提案していた。ファン・デン・ヘインの鐘の調律技術を再現しようとしていたジョン・ウイリアム・テラーはシンプソンと協力し、1世紀以上ぶりの1904年に調律した鐘の鋳造に成功した[82]。この技術の復活により、カリヨンの建造も復活し始めた[63]。
ベルギーのメッヘレンではジェフ・デニンが楽器としてのカリヨン復活の中心的役割を担った。1887年に、彼の父親が盲目になり、デニンは聖ロンバウツ大聖堂の都市カリヨンの演奏を引き継ぐことになった[83]。演奏を始めてすぐに彼は演奏性の向上を訴えた。また、彼の父親が開発し、大聖堂に設置しかけていたタンブラー・ラック・システムを設置し、それにより音量コントロールの自由度を増し、速いパッセージ、トレモロを演奏できるようになった[84]。トレモロによって、ロマン派時代のカリヨンでは表現できなかった、長い間持続する音を表現できるようになった。
カリヨン奏者としての技術向上と、改良したカリヨンによって、デニンの演奏は人々を魅了するようになった。市議会からの提案により、彼は毎週月曜日の夜に行う定期コンサートを始めた[86]。彼が1892年8月1日に行った最初のコンサートは、歴史上初めてのカリヨンによるコンサートとなり[87]、またこの時から、カリヨンはBGMを奏でる楽器としてではなく、コンサート楽器としての評判を得るようになった[88]。
王立カリヨン学校の設立
[編集]コンサートを開催したことで、デニンはアメリカ合衆国のニューヨーク州と政府の役人だったウィリアム・ゴーラム・ライスとの面識を得る。ライスはハーグを旅してカリヨンを知り、カリヨンの本を執筆するために定期的にこの地を訪れて、カリヨン演奏家達を取材して回っていた。1913年8月18日のコンサートの後、デニンとライスはカリヨンの社会的影響力と教育的価値について意見を交換した[89]。ライスは著書 Carillons of Belgium and Holland; tower music in the Low Countries[90]を1914年12月に出版し、3度再販した。この本は、英語でカリヨンについて書かれた初めての書物だった[91]。この本は成功し、1915年と1925年にも出版する動機となった[92]。ライスはアメリカ合衆国内でカリヨンの権威となり、1912年から22年までの間に書籍の出版だけではなく、複数の都市で35の講演、雑誌への記事掲載、ラジオ番組への出演、カリヨンに関する展示資料の提供を行った[93]。1922年にライスは、ハーバート・フーヴァーとジョン・ロックフェラー2世から資金援助を得て、ジェフ・デニンと共にメッヘレンにカリヨン専門の学校を作り、初代校長といて活動した。のちにその学校は王立カリヨン学校ジェフ・デニンと名付けられた[94][95]。
世界大戦による破壊
[編集]学術誌 「カナダの軍事史」(Canadian Military History)の雑誌『軍隊』(Legion)の編集者 Stephen Thorne は第一次世界大戦、第二次世界大戦の戦争中にカリヨンが破壊されたことを「ユニークで民主的な楽器の残忍な消滅」[注釈 3]とみなしていた[96]。当時ベルギーとオランダの同盟国では独特で民主的な楽器の消滅として広く報道された。第二次世界大戦ではイギリスの調査団が、ナチス・ドイツはベルギーでは全ての鐘の3分の2を、オランダでは全ての鐘を押収したと主張している。1938年から1945年の間に175,000個の鐘が盗まれ、鐘の墓地(ドイツ語: Glockenfriedhöfe)に集められた。そのうち150,000は鋳造所に送られ、銅の材料として使われた[96]。
戦争の後、カナダ最初の州カリヨン奏者 (Dominion Carillonneur) で、アメリカ大陸での最初期のカリヨン奏者[97]パーシバル・プライスが残った鐘の調査と、その返還を手伝うため派遣された。プライスは、またとない機会を利用してヨーロッパの鐘の理想的な音色の性質について研究し、発表している[98][96]。
国際的認知
[編集]1970年代に、世界的なカリヨン組織の構想が練られて現実のものとなる。20世紀に造られた各国、または地域のカリヨン協会の連合組織として、世界中のカリヨン奏者とカリヨン愛好家のための組織世界カリヨン連盟が設立された。
1999年に、ユネスコは、建築の多様性と重要性を認めて、ベルギーにある32の鐘楼を世界遺産に指定した。2005年にはフランスにある23塔、ベルギーのジャンブルーの塔を追加指定してベルギーとフランスの鐘楼群となった[99]。2014年には、ベルギーとオランダのカリヨン文化を無形文化遺産としても登録し、フランドルの文化大臣 Sven Gatz (英語版)は「ユネスコは、カリヨン奏者やこの文化的形態が今日の地域社会に関連するものであることを確かにしている人々の創造性を認識している」と述べている[100][101]。
2008年に映画『シュティの国へようこそ』でカリヨンを紹介している。この映画は2021年現在[update]フランス映画として売り上げが最も高い作品となっている[102]。
2019年、アイルランドのコーヴにある、コーヴ大聖堂のカリヨン演奏がアイルランドの重要文化財として認められている[103]。
使用法とレパートリー
[編集]音楽
[編集]カリヨンのレパートリーは、同様に長い歴史を持つオルガンと比べて大きく近代に偏っており、1900年以前に作られた作品は15点しか伝わっていない[104]。カリヨンの演奏は、初期のパイプオルガンの様に即興演奏に依存する時代が長く続いた。初期のカリヨン奏者たちは、特に引退が近づくと非常に多くのことを他の人に伝える必要があったことを示す証拠が記録に残されている[105]。バロック後期からルネサンス初期にかけて、鍵盤楽器向けの楽譜は特定の楽器向けではなく、どの鍵盤楽器でも演奏できるように書かれていた。そのため、初期のカリヨン向けの楽譜はチェンバロ、オルガン、ピアノなどと同じものだった可能性がある。その数少ない証拠として、現代まで生き残った1746年出版の Joannes de Gruytters による De Gruytters carillon book がある[106]。この本に記されている曲は、明らかにカリヨンのために作曲されたものではなく他の楽器から編曲されており、他の鍵盤楽器でも簡単に演奏することができる。バロックの鍵盤楽器向けの曲はカリヨン向けの編曲に適したものが多く、ヴィヴァルディ、クープラン, コレッリ、バッハ、ヘンデル、モーツアルトなどが特に適している。[63]
鍵盤楽全般向けではなく、カリヨンで演奏するために書かれた最も古い曲はマティアス・ファン・デン・ギュイエンによる「11の前奏曲」である。彼の作品の構造は、彼が長い間カリヨンで各種のキーボード汎用の曲を演奏していた上で、カリヨンでの音楽演奏を一般的なものにしたいと考えていたことを示唆している[80]。1900年代初頭以降、技術面で挑戦的な彼の前奏曲はカリヨン奏者の標準的なレパートリーとなっている[107]。
ジェフ・デニンは、カリヨンでどのような音楽を演奏するべきかについて発言を行い、今がその音楽を書くときだ、と何人かの作曲家を説得した。その中には、彼の生徒だった Staf Nees、レオン・ヘンリー、Jef Rottiersや、ジェフ・ファン・ホーフのような他分野の作曲家達がいた[108]。カリヨン学校では1925年にカリヨンの楽譜出版を開始した[109]。学校はカリヨン音楽において、高度な装飾音符、素早いパッセージ、トレモロ、バロック、ロマン派的要素などで構成する初期のメッヘレン様式あるいはフランドル様式と呼ばれるスタイルの提案者でもあった[110]。
1950年代、1960年代にはカンザス大学から明らかに異なるアメリカ様式のカリヨン演奏が生み出された。大学のカリヨン奏者ロナルド・バーンズ (カリヨン奏者)が彼の仲間に、カリヨンのために作曲することを勧めたことにより数多くの曲が作られた[111]。バーンズの展開した運動のうち、ロイ・ハムリン・ジョンソンによる、8音音階で作曲したカリヨン向けの一連の曲は最も成功したものである[112]。ジョンソンによるカリヨン向けの曲の多くは名作として知られている[113]。バーンズはレパートリー拡大のためにオリジナル曲を56、数百の編曲を製作した。
20世紀にカリヨン向けの作曲をした主要な作曲家として、Albert Gerken、Gary C. White、Johan Franco、ジョン・ポズドロなどがいる[114]。アメリカ様式のカリヨンはメッヘレン様式の対局を成す形で発展した。メッヘレン様式の躍動的で素早いパッセージやトレモロに満ちた演奏者の芸の披露に対して、ゆっくりとしたパッセージ、希薄な和声、鐘の自然な音色に聴衆の注意を引きつける印象的なテーマなどを特徴としている。
北アメリカでカリヨンの楽譜が最初出版されたのは、1934年に G. Schirmer, Inc (en) からカーティス音楽学校の学生だったサミュエル・バーバー、ジャン=カルロ・メノッティ、ニーノ・ロータによる学会の短期出版シリーズのものだった[115] 。北米カリヨンギルドが楽譜の出版を始める1961年まで[116]、北アメリカでは散発的に楽譜が出版されている[117]。
1968年にはボック・タワー・ガーデンズに、世界最大級のカリヨン音楽と関連するリソースを収めたアントン・ブリーズカリヨン図書館が設立された[118]。
組織
[編集]1970年代に当時あった国や地域単位、あるいは国際的なカリヨン組織を連合し、カリヨン演奏者と愛好家の中心的な組織として世界カリヨン連盟(The World Carillon Federation)が設立された[119]。2021年現在[update]、14の組織で構成されている。
- Association Campanaire Wallonne(ワロン鐘奏者協会)
- Carillon Society of Australia(カタルーニャ、ベルリンガー&カリヨン奏者友愛会)
- Carillon Society of Britain and Ireland (イギリスカリヨン協会)
- Confraria de Campaners i Carillonistes de Catalunya (カタルーニャ、ベルリンガー&カリヨン奏者友愛会)
- Deutsche Glockenspielvereinigung(ドイツカリヨン協会)
- Guilde des Carillonneurs de France(フランスカリヨン奏者ギルド)
- Guilde des Carillonneurs et Campanologues Suisses(スイスカリヨン奏者&鐘史学者ギルド)
- The Guild of Carillonneurs in North America(北アメリカカリヨン奏者ギルド)
- Koninklijke Nederlandse Klokkenspel-Vereniging(オランダカリヨン協会)
- Lietuvos Karilionininkų Gildija(リトアニアカリヨン奏者ギルド)
- Nordisk Selskap for Campanologi og Klokkespil(ノルウェー鐘史学&カリヨン協会)
- Polskie Stowarzyszenie Carillonowe(ポーランドカリヨン協会)
- Фонд Русский карильон(ロシアカリヨン協会)
- Vlaamse Beiaard Vereniging(フランドルカリヨン協会)
メンバー組織の多くは地域でのカリヨンの情報や会員の更新を知らせるために、会報を定期刊行している[120]。連盟は3年おきにメンバー組織の母国で国際カリヨン会議 (World Carillon Congress) を開催している。会議では、カリヨンに関する講義、ワークショップ、委員会を開催し、ニュース、個別指導、研究開発などのテーマを扱う[120]。
カリヨン奏者の教育
[編集]カリヨンの演奏はオルガン奏者が行うこともあるが、カリヨンの演奏者となるための訓練を受けられる機関が世界に複数あり、専門のカリヨン奏者の育成を行っている。ベルギー、メヘレン市にある王立カリヨン学校ジェフ・デナインは最も人気があるカリヨン演奏者育成のための教育プログラムの一つである[120]。またベルギーのルーヴェンにあるLCUA芸術大学では修士課程にカリヨンのコースを持ち、オランダのアメルスフォールトにあるユトレヒト芸術学校にはカリヨン専門の学科があり学士、修士課程を備える[121]。イギリス[122] 、フランス、デンマーク[123]にも学校が存在する。
北アメリカカリヨンギルドは、毎年定期的に行う会議の会期中にカリヨン演奏者の試験を行っている。合格者はギルドのカリヨン会員として認められる。このプログラムは2012年に王立カリヨン学校ジェフ・デニンが北米に開設した関連学校の北アメリカカリヨン学校 (North American Carillon School) と提携して行われている[120][124]。
アメリカ合衆国のいくつかの大学にはカリヨン演奏の教育プログラムがある[120]。カリフォルニア大学バークレー校[125]、カリフォルニア大学サンタバーバラ校[126]、ミシガン大学[127]、フロリダ大学[128]、デンバー大学[129]、ミシガン大学[130]では、カリヨン演奏についての全過程を学ぶことができる。クレムゾン大学、[131]、インディアナ大学,[132]、アイオワ州立大学,[133]、カンザス大学[134]、マーケット大学[135]では、カリヨン演奏に関する限定したプログラムを受けることができる。また、大学で雇用されているカリヨン奏者や、大学以外の施設が持つカリヨンでは、個人レッスンを提供しているところがある[124]。学校でカリヨンを持っていてもカリヨンのコースを持たない学校では、多くの場合クラブ活動や、イェール記念カリヨンのイェール・カリヨン演奏者ギルドのように学生が自主的に行う教育プログラムがある。
カナダではトロント大学内で卒業生を中心とした有志が演奏を行なっており、一部教育もなされている[136]。オタワにあるカールトン大学はカナダ国会議事堂と連携してCertificateプログラム(学部卒の単位の一部に加算可能)を持っている[137]。
2021年現在[update]、日本においては日本カリヨン協会が、会員である修士を収めた日本人カリヨン演奏家によるオンラインレッスンを中心に個人レッスンをおこなっている。[要出典]日本国内においては、現在カリヨン公式証明書を取得できる学校は存在しない。
楽器の分布
[編集]世界での分布
[編集]世界的にカリヨンの数を集計している機関が幾つか存在する。一部の機関は特定の種類のカリヨンのみの集計を専門としており、例えば戦争記念・平和カリヨン登録機関(War Memorial and Peace Carillons registry)では、戦争記念施設や世界平和を志して造られたカリヨンのみを集計している[138]。世界カリヨン連盟では、伝統的カリヨン、すなわちバトン式鍵盤を使い、コンピューターや電子的なメカニズムを使用せずに演奏するものを集計している[139]。TowerBellsでは伝統的カリヨンも非伝統的なカリヨンも合わせて集計しており、地図や技術仕様、仕様の要約を公開している[140][50]。
TowerBellsと世界カリヨン連盟によると、世界には約700の伝統的カリヨンが存在している。南極大陸を除くすべての大陸に3つ以上のカリヨンが存在しているものの、20を超えるカリヨンを持つ国は6カ国しかない[141][139]。「偉大なカリヨンの国」と呼ばれる[142]これらの国のうち、オランダ、ベルギー、アメリカ合衆国の3カ国に世界のカリヨンの2/3が存在する。また、ネーデルラント周辺の西ヨーロッパとアメリカ合衆国にあるカリヨンを合わせると90%以上になる。
北米のカリヨンのうち約80%は宗教機関と教育機関が保有しており[143] 、一方ヨーロッパではほぼすべてのカリヨンを地方自治体が保有している[144]。
現存しているほぼすべてのカリヨンは100年以内に作られたものであり、18世紀以前に造られて現存するカリヨンは50個ほと考えられている[37]。TowerBellによると、さらに483の非伝統的カリヨンがアメリカとヨーロッパに存在している[145]。
-
アイオワ州立大学の鐘楼「マクドナルド・スタントン記念カリヨン」MacDonald Stanton Memorial Carillon
日本
[編集]現在日本国内に設置されているカリヨンのうち、本格的な鍵盤を有するカリヨンは次の4基である。
- インテックス大阪
- JR伊丹駅西側広場
- 神慈秀明会神苑(非公開)
- ハウステンボス
- 「カロヨン」と称する。37鐘、3オクターブあり、屋内にタワー型で設置されている。開園当時は50鐘のトラベリングカロヨン(電動自動車に搭載)が園内を運行していた。
日本国内の歴史的カリヨン
[編集]- カトリック夙川教会に1926年-1932年にかけて設置されたフランス、パッカール社製の歴史的カリヨンが存在する[149]。機械式のアクションと演奏できるコンソール、自動演奏機構、スイングベルの機構も持つ。
- 椙山女学園に、1931年に設置された10鐘の歴史的チャイムが存在する。このチャイムは金剛鐘と呼ばれており、1920年ごろにイギリスのジレット&ジョンストン社で制作されている[150]。手動のアクションで演奏可能なコンソールがあり、同校の生徒によって毎日始業時に演奏されている[151]。
非伝統的カリヨン
[編集]ほか、日本にはデザインに優れた様々な非伝統的カリヨンが数多くある。宇都宮市のベルモールのカリヨンは、ツリー型で49鐘、コンピュータでの音量調整機能で室内設置に対応しており、自動演奏はもとよりキーボードで演奏もできる。国立音楽大学の講堂前には電子式アクションで鍵盤を使って演奏できる47鐘のグロッケンシュピールがある[152]。
移動式カリヨン
[編集]塔ではなく、小型のフレームに鐘と鍵盤を納め、移動できるようにした移動式カリヨン、あるいはトラベリングカリヨン(Traveling, mobile carillons) と呼ばれる形態のカリヨンは、塔に納めるものに比べて非常に軽く小さい[153]。移動式カリヨンは1933年から1938年の間にイギリスのノーラ・ジョンストンが考案した。彼女は伝統的なバトン式鍵盤をチャイムバーのシステムに接続したものを、移動可能なフレームに固定して、ラジオのドキュメンタリー番組、オーケストラのコンサート、コマーシャル出演で演奏するためにそれに乗ってアメリカ合衆国を二回訪れた[154] 。のちに別の人の手によって、カリヨンの鐘を使ったものが作られた[155]。
世界カリヨン連盟[156]とTowerBells[157]によると、世界に約20の移動式カリヨンがあり、そのうち17が伝統的カリヨンとされている。ほとんどの移動式カリヨンは西ヨーロッパとアメリカにあり、販促用の道具として鐘の鋳造社が保有している。
アメリカ合衆国にある二つの移動式カリヨンはいずれも「ベルの精神」を特徴として他の楽器と一緒に鐘を演奏する音楽グループ Cast in Bronze が所有している。Cast in Bronze は楽器の保存と宣伝を使命としており、アメリカ合衆国の大衆にカリヨンを広く紹介したことで知られている[158]。
日本国内には、ハウステンボス開演時に運行していた電気自動車にカリヨンをのせたトラベリングカロヨン(50鐘)と、ベルギーから大阪市に寄贈されたトラベリングカリヨン(37鐘)がある。いずれも2021年現在[update]は演奏はされていない。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ WCF keyboard 2006 の規格ではナチュラルのペダルの長さはB1の音で129mm, 太さ 30mm、ペダル間隔は85mm
- ^ 例:
- Rodriguez, Susan T. (2020-10-09). “Metz Bicentennial Grand Carillon, Indiana University”. Architect Magazine (en) . オリジナルの2021-01-19時点におけるアーカイブ。 2021年5月17日閲覧。.
- LaRocca, Aaron (21 October 2019). "Netherlands Carillon to be Restored and Elevated to 'Grand Carillon' Status" (Press release). National Park Service. 2021年6月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月17日閲覧。
- “Millennium Carillon in Moser Tower & Visitor Center”. Naperville Park District. 2021年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月17日閲覧。
- Harhen, Nora (2014年11月17日). “Wait, the Campanile’s Bells Aren’t Automated?”. The Daily Californian (en) . オリジナルの2021年3月17日時点におけるアーカイブ。 2021年5月17日閲覧。
- ^ 原文 "brutal annihilation of a unique democratic music instrument"
出典
[編集]- ^ a b "Carillon." Oxford English Dictionary.
- ^ "Carillon". Cambridge Advanced Learner's Dictionary (en) . Cambridge University Press. 2022年4月21日閲覧。
- ^ What is a carillon? at the Wayback Machine (archived 2016-03-07) Marietta Douglasによるカリヨンの解説。2002/06
- ^ a b “フランドルの鐘(カリヨン)”. 伊丹市ホームページ (2021年3月31日). 2021年5月27日閲覧。
- ^ 浜松市楽器博物館. “浜松市楽器博物館だより No.8”. 2022年5月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月1日閲覧。
- ^ “カリヨンのしくみ”. オルゴールの小さな博物館. 2022年3月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月25日閲覧。
- ^ a b “About Carillons”. 2021年5月25日閲覧。
- ^ “PFINGST-CARILLON 2012”. 2021年5月27日閲覧。
- ^ “Carillons, Tower Bells - Introduction”. 2021年5月29日閲覧。
- ^ レア, et.al. 1994, p. 5.
- ^ “Asia, World list of carillons”. 2021年5月29日閲覧。
- ^ “日本カリヨン協会”. 2021年6月13日閲覧。
- ^ “日本カリヨン演奏家協会”. 2021年6月13日閲覧。
- ^ "Carillon." Online Etymology Dictionary.
- ^ “Was ist ein Carillon?” [What is a Carillon?] (ドイツ語). Deutsche Glockenspielvereinigung e.V.. 2021年2月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月27日閲覧。
- ^ Rombouts 2014, p. 62.
- ^ "Carillonneur." Merriam-Webster Online.
- ^ Price 1983, p. 222: "The player of this unique keyboard is known in Flemish as a beiaardier and in French as a carillonneur , which last term was also adopted in English after the campaigns of Marlborough brought British troops on to Flemish soil and gave a British march to be chimed from Flemish towers."
- ^ Barnes 2014, p. 41; Halsted 2012, p. 10.
- ^ Ng & Lewis 2020, p. 1.
- ^ a b c d Lehr 2005, p. 85.
- ^ Gouwens 2017, p. 3.
- ^ Courter, et.al. 2006, p. 2.
- ^ Courter et al. 2006, p. 3; Rombouts 2014, pp. 292–93.
- ^ “Carillon Keyboard Standards”. World Carillon Federation. 2021年4月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月27日閲覧。
- ^ “BEARSTPC”. TowerBells.org. 2021年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月4日閲覧。
- ^ Lehr 2005, p. 76.
- ^ Lehr 2005, p. 84.
- ^ Lehr 2005, p. 79.
- ^ Lehr 2005, pp. 86–87.
- ^ Rice 1914, p. 23; Lehr 2005, p. 10.
- ^ “Playing Mechanism”. The Guild of Carillonneurs in North America (en) . 2021年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月16日閲覧。
- ^ Lehr 2005, pp. 59–60.
- ^ Lehr 2005, pp. 87–88.
- ^ Lehr 2005, pp. 90–95.
- ^ Lehr 2005, pp. 98.
- ^ a b c Rombouts 2014, p. 310.
- ^ “Carillon”. Music at Riverside. The Riverside Church in the City of New York. 2020年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月6日閲覧。
- ^ The Riverside Church (PDF) (Report). New York City Landmarks Preservation Commission. 16 May 2000. p. 7. 2021年3月16日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)。2021年5月5日閲覧。
- ^ “Classification of Musical Instruments”. Fondazione Ugo e Olga Levi Onlus. p. 11 (2018年). 2020年10月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月1日閲覧。
- ^ Rombouts 2014, p. 45; Johnston 1986, p. 40.
- ^ Price 1983, p. 210.
- ^ Gouwens 2013, pp. 72–73.
- ^ Lehr 2005, pp. 37–42, 50–51.
- ^ Lehr 2005, pp. 37–40.
- ^ a b c d Brink 2017.
- ^ Rice 1914, p. 23; Rombouts 2014, p. 310; Brink 2017; "Organization." World Carillon Federation; "Carillon." Encyclopaedia Britannica.
- ^ “A Musical Instrument”. The Guild of Carillonneurs in North America. 2021年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月16日閲覧。
- ^ Lehr 2005, p. 60.
- ^ a b "Organization." World Carillon Federation.
- ^ Slater 2003, p. 19: "The Kirk-in-the-Hills 77-bell carillon is famous as the carillon with the world’s largest number of bells (bourdon 12,860 pounds [5,833 kg], note G)."
- ^ “Carillon”. Music Ministry. Kirk in the Hills (en) . 2021年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月7日閲覧。
- ^ a b Chesman 2015, p. 3: "In general, the lowest C on the pedal would be tenor C, that is, the second space on the bass clef."
- ^ a b c Lehr 2005, p. 59.
- ^ Rombouts 2014, p. 75.
- ^ De Campanis Commentarius p. 挿絵11
- ^ Rombouts 2013, pp. 40–42.
- ^ Rombouts 2013, p. 59.
- ^ Rombouts 2013, pp. 49, 52–53.
- ^ Rombouts 2013, p. 54; Gouwens 2013, p. 15.
- ^ Rombouts 2013, pp. 54–55.
- ^ Rombouts 2014, pp. 60–61; Gouwens 2013, p. 16.
- ^ a b c d e "Carillon." Encyclopaedia Britannica.
- ^ Swager 1993, p. 14.
- ^ Rombouts 2014, p. 74.
- ^ Rombouts 2014, pp. 71, 73.
- ^ Gouwens 2013, p. 16.
- ^ a b Swager 1993, p. 12.
- ^ “NLDVNTSL”. TowerBells.org. 2021年5月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月19日閲覧。
- ^ Price 1983, p. 219; Gouwens 2013, pp. 19–21.
- ^ Swager 1993, pp. 16–20.
- ^ Gouwens 2013, p. 20.
- ^ Price 1983, p. 219; Rombouts 2014, p. 94–95.
- ^ Swager 1993, pp. 39–40.
- ^ Rombouts 2014, p. 143.
- ^ Rombouts 2014, pp. 145.
- ^ Swager 1993, pp. 39–41.
- ^ Rombouts 2014, p. 149.
- ^ Swager 1993, pp. 41–42; Rombouts 2014, p. 150.
- ^ a b Van Ulft 2020, p. 33.
- ^ Price 1983, p. 224.
- ^ Rombouts 2014, pp. 173–76.
- ^ Rombouts 2014, pp. 177–78.
- ^ Rombouts 2014, pp. 178–80.
- ^ Swager 1993, pp. 48–49.
- ^ Swager 1993, pp. 50–51.
- ^ Rombouts 2014, p. 181.
- ^ Swager 1993, p. 51.
- ^ Rombouts 2014, p. 188.
- ^ Rice, William Gorham (1914-12). Carillons of Belgium and Holland; tower music in the Low Countries
- ^ Keldermans & Keldermans 1996, p. 39.
- ^ Rombouts 2014, pp. 198.
- ^ Rombouts 2014, p. 208.
- ^ Price 1983, pp. 227–28; Rombouts 2014, p. 208; Gouwens 2013, p. 43.
- ^ “Koninklijke Beiaardschool Mechelen”. 2021年6月6日閲覧。学校名はKoninklijke Beiaardschool Jef Denyn Mechelen となっている。
- ^ a b c Thorne 2018.
- ^ Slater 2003, p. 45.
- ^ Percival, Price (1948). Ann Arbor. ed. Campanology, Europe, 1945-47.. The University of Michigan Press .
- ^ “Belfries of Belgium and France”. UNESCO World Heritage Centre. United Nations. 2021年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月13日閲覧。
- ^ “Belgische beiaardcultuur erkend als erfgoed [Belgian Carillon Culture Recognized as Heritage]” (オランダ語). VRT NWS. (2014年11月25日). オリジナルの2021年4月13日時点におけるアーカイブ。 2021年4月13日閲覧。
- ^ “Bespelen klokkenspel wordt cultureel erfgoed [Playing Carillons Becomes Cultural Heritage]” (オランダ語). de Volkskrant (en) . (2014年8月21日). オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。 2021年4月13日閲覧。
- ^ “Welcome to the Sticks”. Box Office Mojo. IMDb. 19 April 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月19日閲覧。
- ^ "Minister Madigan Announces State Recognition of Key Elements of Ireland's Living Cultural Heritage" (Press release). Dublin: Minister for Culture, Heritage and the Gaeltacht. MerrionStreet.ie. 18 July 2019. 2021年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月4日閲覧。
- ^ Rombouts 2014, p. 129.
- ^ Gouwens 2017, p. 127.
- ^ Van Ulft 2020, p. 32.
- ^ Rombouts 2014, p. 115.
- ^ Gouwens 2017, p. 134.
- ^ Price 1983, p. 230.
- ^ Van Ulft 2020, pp. 33–34.
- ^ Rombouts 2014, p. 289.
- ^ Keldermans 1996, pp. 164.
- ^ Gouwens 2017, p. 140.
- ^ Keldermans 1996, pp. 163–65.
- ^ De Turk 1999, p. 53.
- ^ Gouwens 2017, p. 143.
- ^ Rombouts 2014, pp. 290–91.
- ^ “Library & Archives: Anton Brees Carillon Library”. Bok Tower Gardens (en) . 2021年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年3月30日閲覧。
- ^ Rombouts 2014, p. 312.
- ^ a b c d e Rombouts 2014, p. 313.
- ^ “Utrecht School of the Arts, Faculty of Music”. 2012年10月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月17日閲覧。
- ^ “Carillonneur: Trevor Workman”. Bournville Carillon. 2020年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月2日閲覧。
- ^ “Løgum Kloster Kirkemusikskole”. Locus Dei. 2007年7月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月2日閲覧。
- ^ a b "Learn to Play." The Guild of Carillonneurs in North America.
- ^ “Carillon Study”. Berkeley Music. カリフォルニア大学バークレー校 (2014年2月28日). 2020年8月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月3日閲覧。
- ^ “Carillon”. Department of Music. カリフォルニア大学サンタバーバラ校. 2020年11月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月3日閲覧。
- ^ “Carillon Studio”. U-M School of Music, Theatre & Dance. ミシガン大学. 2020年12月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月3日閲覧。
- ^ “Carillon Studio”. College of the Arts. フロリダ大学. 2021年8月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月3日閲覧。
- ^ “Carillon Studio”. Lamont School of Music. デンバー大学. 2021年2月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月3日閲覧。
- ^ “Carillon Studio”. U-M School of Music, Theatre & Dance. University of Michigan. 2020年12月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月3日閲覧。
- ^ “Keyboard Studies”. Department of Performing Arts. クレムゾン大学. 2021年2月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月19日閲覧。
- ^ “Applied Carillon Study at the Jacobs School of Music”. IU Jacobs School of Music. インディアナ大学. 2021年4月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月22日閲覧。
- ^ “Edgar W. and Margaret MacDonald Stanton Memorial Carillon”. Department of Music and Theatre. アイオワ州立大学. 2020年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月3日閲覧。
- ^ “Carillon Recitals”. School of Music. カンザス大学 (2013年7月26日). 2020年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月3日閲覧。
- ^ “Carillon Discovery Course”. Diederich College of Communication. マーケット大学. 2020年11月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月3日閲覧。
- ^ “Soldiers’ Tower Carillon”. トロント大学同窓会. 2021年4月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月21日閲覧。
- ^ “Certificate in Carillon Studies”. カールトン大学. 2022年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月21日閲覧。
- ^ “World map of peace carillons”. War Memorial and Peace Carillons. Network of War Memorial and Peace Carillons. 2020年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月4日閲覧。
- ^ a b “Carillons”. World Carillon Federation. 2021年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月30日閲覧。
- ^ “More About Carillons and Other Tower Bell Instruments”. TowerBells.org. 2021年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月4日閲覧。
- ^ "Indexes to Traditional Carillons Around the World." TowerBells.org.
- ^ Rombouts 2014, p. 309.
- ^ “North American traditional carillons by type of institution”. TowerBells.org. 2020年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月28日閲覧。
- ^ Lee, Roy (April 2021). “From the President's Corner”. Carillon News (The Guild of Carillonneurs in North America (en) ) (105): 3. オリジナルの2021-05-05時点におけるアーカイブ。 2021年5月5日閲覧。.
- ^ "Indexes to Non-traditional Carillons Around the World." TowerBells.org.
- ^ “施設案内 展示アートギャラリー” [What is a Carillon?]. Intex Osaka. 2021年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月17日閲覧。
- ^ フランドルの鐘(カリヨン) 伊丹市
- ^ “フランドルの鐘(カリヨン)”. 伊丹市. 2022年5月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月21日閲覧。
- ^ “清麗な音色で夙川の人々の心を濯ぐ日本最古のカリヨン 夙川 Shukugawa”. Kobecco 神戸っ子. 2021年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月28日閲覧。
- ^ “清椙山女学園のあゆみ”. 2022年5月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月21日閲覧。
- ^ “校歌・金剛鐘”. 2021年10月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月21日閲覧。
- ^ “前川建築のホールとその響きを探る”. 2021年6月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月17日閲覧。 p.15
- ^ Widmann 2014, p. 12.
- ^ Rombouts 2014, pp. 245–46.
- ^ Widmann 2014, pp. 15–19.
- ^ “Traveling Carillons”. World Carillon Federation. 2020年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月31日閲覧。
- ^ “Traveling Carillons and Chimes Worldwide”. TowerBells.org. 2020年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月28日閲覧。
- ^ Rombouts 2014, p. 316.
参考文献
[編集]書籍
[編集]- Gouwens, John (2013). Campanology: A Study of Bells, with an Emphasis on the Carillon. North American Carillon School. ISBN 978-1-4840-3766-9
- Gouwens, John (2017). Playing the Carillon: An Introductory Method (5 ed.). The Guild of Carillonneurs in North America. OCLC 765849175
- Johnston, Ronald J. (1986). Bell-ringing: The English Art of Change-ringing. Viking Press. ISBN 978-0-670-80176-3. OL OL2328271M
- Carillon: The Evolution of a Concert Instrument in North America. Springfield Park District (en) . (1996). ISBN 0-9652252-0-8. OL 1024319M. オリジナルの2021-06-13時点におけるアーカイブ。 2021年2月7日閲覧。
- Lehr, André (2005) (オランダ語). Campanology Textbook: The Musical and Technical Aspect of Swinging Bells and Carillons. The Guild of Carillonneurs in North America. OCLC 154672090
- Price, Percival (1983). Bells and Man. Oxford University Press. ISBN 978-0-19-318103-8
- Rice, William Gorham (1914). Carillons of Belgium and Holland: Tower Music in the Low Countries. John Lane Company (en) . hdl:2027/uc2.ark:/13960/t5p84727t
- Rombouts, Luc (2000) (英語). The New Grove Dictionary of Music and Musicians, Second Edition. part 5. Oxford University Press. pp. 128-134
- Rombouts, Luc Communicationwise訳 (2014). Singing Bronze: A History of Carillon Music. Leuven University Press (en) . ISBN 978-90-5867-956-7. オリジナルの2016-06-17時点におけるアーカイブ。 2021年2月1日閲覧。
- レア, アンドレ、海老沢 敏、新宮 晋、田村 紘三『世界カリヨン紀行』新潮社、1994年11月25日。ASIN 4106020327。ISBN 4-10-602032-7。
- Swager, Brian (1993). A History of the Carillon: Its Origins, Development, and Evolution as a Musical Instrument (PDF) (DMus). インディアナ大学. OCLC 53120808. 2021年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)。2021年7月25日閲覧。
学術誌
[編集]- Barnes, Ronald (1987). “The North American Carillon Movement” (PDF). The Bulletin (The Guild of Carillonneurs in North America) 36 (1): 20–37. OCLC 998832003. オリジナルの2021-02-10時点におけるアーカイブ。 2021年7月3日閲覧。.
- Brink, Joey (2017-12-19). “Composing for Carillon”. NewMusicBox (en) ]. OCLC 1120054332. オリジナルの2021-04-02時点におけるアーカイブ。 2021年4月13日閲覧。.
- De Turk, William (1999). “Barber, Menotti, Rota: Carillon Composers in Residence” (PDF). The Bulletin (The Guild of Carillonneurs in North America) 48 (1): 53–65. OCLC 998832003. オリジナルの2021-02-10時点におけるアーカイブ。 2021年4月5日閲覧。.
- Halsted, Margo (2012-11). “What's in a Name?”. Carillon News (The Guild of Carillonneurs in North America) (88): 10. OCLC 1120054332. オリジナルの2020-05-24時点におけるアーカイブ。 2021年4月13日閲覧。.
- Thorne, Stephen J. (2018-11-21). “The Seizing of Europe's Bells”. Legion. OCLC 1120054332. オリジナルの2021-01-26時点におけるアーカイブ。 2021年4月14日閲覧。.
- Van Ulft, Carlo (2020). “Carillon Music: An Evolution” (PDF). The Bulletin (The Guild of Carillonneurs in North America) 69 (1): 32–36. OCLC 998832003 2021年4月5日閲覧。.
- Widmann, John (2014). “World Carillon Federation: Mobile Carillons” (PDF). The Bulletin (The Guild of Carillonneurs in North America) 63 (2): 12–19. OCLC 998832003. オリジナルの2021-02-10時点におけるアーカイブ。 2021年4月16日閲覧。.
インターネット上の情報源
[編集]- Courter, John; Hurd, Timothy; Janssens, Liesbeth; Macoska, Patrick; Oldenbeuving, Gert; van Wely, Bob (2006). Consensus on technical norms for a world standard carillon keyboard WCF Keyboard 2006 (PDF) (PDF). World Carillon Federation. 2016年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)。2021年2月16日閲覧。
- “International Bibliography of Carillon Music by Women, Transgender, and Nonbinary Composers”. DeepBlue. University of Michigan Publishing (en) . p. 1 (2020年4月30日). hdl:2027.42/153530. 2021年6月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月13日閲覧。
- Rech, Adelheid. “How the Carillon Works”. The Carillon. Essential Vermeer 3.0. 2020年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月16日閲覧。
- "Carillon". Encyclopaedia Britannica. 2020年10月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月13日閲覧。
- "carillon". Oxford English Dictionary (3rd ed.). Oxford University Press. September 2005. 2021年2月16日閲覧。 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入。)
- “Carillon”. Online Etymology Dictionary. 2019年1月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月16日閲覧。
- “Carillon Bells”. The Guild of Carillonneurs in North America. 2021年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月16日閲覧。
- “Indexes to Non-traditional Carillons Around the World”. TowerBells.org. 2021年5月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月4日閲覧。
- “Indexes to Traditional Carillons Around the World”. TowerBells.org. 2020年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月4日閲覧。
- Ng, Tiffany (3 February 2021) [First published 26 November 2018]. Annotated Bibliography of African American Carillon Music (PDF) (Report). MUniversity of Michigan Library (en) . hdl:2027.42/146525. 2021年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)。DeepBlueより2021年7月24日閲覧。
- “A Musical Instrument”. The Guild of Carillonneurs in North America. 2021年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月16日閲覧。
- Ng, Tiffany; Lewis, Emmet (30 April 2020). International Bibliography of Carillon Music by Women, Transgender, and Nonbinary Composers (PDF) (Report). University of Michigan Library (en) . hdl:2027.42/153530. 2021年6月13日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)。DeepBlueより2021年7月24日閲覧。
- “Organization”. World Carillon Federation. 2021年3月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月14日閲覧。