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「タラスコ語」の版間の差分

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== 分類 ==
== 分類 ==
[[ISO 639-3]]による分類ではPurepechaとWestern Highland Purepechaの二種類の言語があり、この二者が「タラスコ語族」を形成するとしている。しかし、一方では両者を一つの言語と見る向きもあり<ref>アシャーら(2000)。</ref>、この場合は「[[孤立した言語]]」という扱いとなる。また、[[ジョーゼフ・グリーンバーグ]]は[[1987年]]の著作において{{仮リンク|クイトラテック語|en|Cuitlatec language}}や[[シンカ語族]]、[[レンカ語族]]といった現在は[[死語_(言語)|死語]]となっている諸々の言語と共にタラスコ語を「{{仮リンク|チブチャ・パエス語族|en|Amerind_languages#Classification}}」という一つの括りに分類する<ref>アシャーら(2000:32,53)。</ref>も、現在広く認められている説であるとは言い難い。
[[ISO 639-3]]による分類ではPurepechaとWestern Highland Purepechaの二種類の言語があり、この二者が「タラスコ語族」を形成するとしている。しかし、一方では両者を一つの言語と見る向きもあり<ref>アシャーら(2000)。</ref>、この場合は「[[孤立した言語]]」という扱いとなる。また、[[ジョーゼフ・グリーンバーグ]]は[[1987年]]の著作において{{仮リンク|クイトラテック語|en|Cuitlatec language}}や[[シンカ語族]]、[[レンカ語族]]といった現在は[[死語 (言語)|死語]]となっている諸々の言語と共にタラスコ語を「{{仮リンク|チブチャ・パエス語族|en|Amerind_languages#Classification}}」という一つの括りに分類する<ref>アシャーら(2000:32,53)。</ref>も、現在広く認められている説であるとは言い難い。


== 歴史 ==
== 歴史 ==

2021年3月3日 (水) 22:00時点における版

タラスコ語
プレペチャ語
P'urhépecha
発音 IPA: [pʰuˈɽepet͡ʃa]
話される国 メキシコの旗 メキシコ
地域 ミチョアカン州
民族 タラスコ族
話者数 13万5000人(2005年)[1]
言語系統
表記体系 ラテン文字
言語コード
ISO 639-1 -
ISO 639-2 -
ISO 639-3 各種:
pua — Western Highland Purepecha
tsz — Purepecha
Linguist List pua Purepecha
  tsz Trascan
Glottolog tara1323  Tarascan[2]
消滅危険度評価
Vulnerable (Moseley 2010)
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タラスコ語(タラスコご、: Tarascan)あるいはプレペチャ語(プレペチャご、P'urhépecha)とは、メキシコミチョアカン州パツクァロおよびその周辺で暮らす先住民(インディヘナ)タラスコ族の言語である。

分類

ISO 639-3による分類ではPurepechaとWestern Highland Purepechaの二種類の言語があり、この二者が「タラスコ語族」を形成するとしている。しかし、一方では両者を一つの言語と見る向きもあり[3]、この場合は「孤立した言語」という扱いとなる。また、ジョーゼフ・グリーンバーグ1987年の著作においてクイトラテック語英語版シンカ語族レンカ語族といった現在は死語となっている諸々の言語と共にタラスコ語を「チブチャ・パエス語族英語版」という一つの括りに分類する[4]も、現在広く認められている説であるとは言い難い。

歴史

タラスコ語の辞書は、少なくとも二種類が知られている。一つはフランス出身のフランシスコ会会士マトゥリノ・ヒルベルティスペイン語版の手により1559年に出版されたDiccionario de la lengua Tarasca ó de Michoacánで、もう一つはパブロ・ベラスケス・ガリャルドPablo Velásquez Gallardo)の手によるDiccionario de la lengua phorhepecha: Español-Phorhépecha, Phorhépecha-Español1978年)である。

地名に関して

グアナフアトケレタロといった地名の語源はタラスコ語によって解釈する事が可能である。例えば、前者はkuanhasï[5]カエル〉とjuáta[5]〉の合成語で〈カエルがいる山がちな場所〉と解釈する事ができ、また後者はk'éri[5] 〈大きな〉とireta[5] 〈集落〉に〈場所〉を表す接尾辞-rhuを足し合わせK'erietarho 〈大きな集落に〉、もしくはkérenda〉と-rhuKérendarho 〈岩場に〉等と解する事ができる[6]

音声

子音

子音には帯気音とそうではない音との区別が存在する。また、有声音は基本的に鼻音の後にしか現れない。

語例:

母音

基本的な母音は[a][e][i][ɨ][9][o][u]の六種類である。このうち[ɨ]非円唇中舌狭母音)は[s][t͡s]の後に現れる傾向が強い。

語例:

アクセント

表記体系

タラスコ語の表記はラテン文字によってなされる。但し、16世紀のヒルベルティの辞書と20世紀以降とでは表記の内容に差が見られる。たとえば、〈〉を表す言葉はヒルベルティの辞書においてはスペイン語正書法に則りhahquiと表されているが、2007年の語彙集においてはjájkiと表されている。また、ヒルベルティの辞書においては20世紀以降のタラスコ語で確認されている帯気音と非帯気音の区別が不明瞭である場合がある(語例: pirenipirèni 〈歌う〉の語頭の非帯気音/p/に対するpatamup'atamu〉の語頭の帯気音/pʰ/)。

アルファベット

表記[5][10]
A B Ch Ch' D E G I Ï J K K' M N Nh O P P' R Rh S T T' Ts Ts' U X
a b ch ch' d e g i ï j k k' m n nh o p p' r rh s t t' ts ts' u x
音価
a b t͡ʃ t͡ʃʰ d e g i/j ɨ x k m n ŋ o p ɾ ɽ s t t͡s t͡sʰ u/w ʃ

文法

形態論

全体的に語根に接尾辞がつく語形変化が多い傾向にある[11]

名詞

名詞複数形を作る場合には-echaという接尾辞をつける。但し、語によっては-icha-chaとなる場合もある。

  • 例: jósku[5]〉 → jóskuechaいくつもの星〉
    tsakapu〉 → tsakapuechaもしくはtsakapuichaいくつもの石〉
    tsïtsïkitsïtsïkicha 〈花

接尾辞-niを付けると〈…を〉の意となる(印欧語対格に相当)。

  • 例: echeri 〈大地〉 → echerini 〈大地

接尾辞-mpuは〈…を用いて〉という意味を表す(印欧語の具格の一部機能に相当)。但し、対象となる語にjimbóまたはjimpoという語を後置して同様の意味を表す場合もある。

  • 例: tsakaputsakapu jimbó 〈石

接尾辞-eriは〈…の〉という意を表す(印欧語の属格に相当)。

  • 例: tsakaputsakapueri 〈石

また、接尾辞-rhuが付くと、〈…という場所で〉の意味を表す(印欧語の処格に相当)。

  • 例: auandaauandarhu 〈空

動詞

動詞不定形に相当するもの[12]-niで終わる(例: exeni〈見る〉、pireni〈歌う〉)。

形容詞

統語論

言語文化

ピレクア英語版(「歌」の意)という伝承歌が知られている。

脚注

  1. ^ エスノローグ第18版における2005年のWestern Highland Purepechaの話者数は13万5千人Purepechaは同年4万人となっている。
  2. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Tarascan”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/tara1323 
  3. ^ アシャーら(2000)。
  4. ^ アシャーら(2000:32,53)。
  5. ^ a b c d e f g h i Lathrop (2007).
  6. ^ 2014/07/28 A VUELA Pluma (Cuatrocientos ochenta y tres años nos observan)”. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月28日閲覧。
  7. ^ Gilberti (1559).
  8. ^ ル・クレジオ(1987)。
  9. ^ なお、Lathrop (2007)においてはこの音は[ə]中舌中央母音)で表されている。
  10. ^ CURSO DE LENGUA P'URHÉPECHA 2016年9月3日閲覧。
  11. ^ Dryer (2013).
  12. ^ Foster (1969)では、動詞のうち-niで終わるものは「分詞法」(Participial mode)であると説明されている。

参考文献

  • R. E. アシャー、クリストファー・マーズレイ 編、土田滋、福井勝義 日本語版監修、福井正子 翻訳『世界民族言語地図』東洋書林、2000年。ISBN 4-88721-399-9
  • Dryer, Matthew S. (2013) "Feature 26A: Prefixing vs. Suffixing in Inflectional Morphology". In: Dryer, Matthew S.; Haspelmath, Martin, eds. The World Atlas of Language Structures Online. Leipzig: Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology. http://wals.info/ 
  • Foster, Mary LeCron (1969). The Tarascan Language. University of California Publications Linguistics 56. University of California Press 
  • Gilberti, Maturino (1559). Diccionario de la lengua Tarasca ó de Michoacán 
  • Lathrop, Maxwell (2007年). “VOCABULARIO DEL IDIOMA PURÉPECHA”. 2016年9月3日閲覧。
  • ル・クレジオ 原訳・序、望月芳郎 訳『チチメカ神話―ミチョアカン報告書―』新潮社、1987年。ISBN 4-10-515002-2
  • Lewis, M. Paul; Simons, Gary F.; Fennig, Charles D., eds. (2015). Ethnologue: Languages of the World (18th ed.). Dallas, Texas: SIL International.

外部リンク

タラスコ語学習サイト:
辞書サイト: