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「小田急1000形電車」の版間の差分

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==== [[牽引車]]としての役割 ====
==== [[牽引車]]としての役割 ====
* 9000形の運用終了に伴い、旅客運用のほか、新製車や[[小田急クヤ31形検測電車|クヤ31形検測車]]「TECHNO-INSPECTOR」などの牽引や、甲種輸送の牽引に使われている。このうち、クヤ31形の牽引に対応するのは1051×4・1751×6・1752×6である。
* 9000形の運用終了に伴い、旅客運用のほか、新製車や[[小田急クヤ31形電車|クヤ31形検測車]]「TECHNO-INSPECTOR」などの牽引や、甲種輸送の牽引に使われている。このうち、クヤ31形の牽引に対応するのは1051×4・1751×6・1752×6である。


== リニューアル ==
== リニューアル ==

2021年4月19日 (月) 21:33時点における版

小田急1000形電車
小田急1000形電車 1091×10
祖師ヶ谷大蔵駅にて)
基本情報
運用者 小田急電鉄
製造所 東急車輛製造
日本車輌製造
川崎重工業
製造年 1988年 - 1993年
製造数 196両
運用開始 1988年3月22日
主要諸元
編成 4両固定編成
6両固定編成
8両固定編成
10両固定編成
軌間 1,067 mm (狭軌
電気方式 直流1,500 V
最高運転速度 100 km/h
設計最高速度 110 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s(単独時)
2.7 km/h/s (在来車併結時)
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
編成定員 602名(4両編成未リニューアル車)
582名(4両編成リニューアル車)
916名(6両編成標準ドア未リニューアル車)
902名(6両編成ワイドドア車1751×6・1752×6)
903名(6両編成ワイドドア車1753×6 - 1756×6)
1,230名(8両編成)
1,544名(10両編成未リニューアル車)
1,492名(10両編成リニューアル車)
車両定員 144名(標準ドア未リニューアル・先頭車)
139名(標準ドアリニューアル・先頭車)
143名(ワイドドア車・先頭車)
157名(標準ドア未リニューアル・中間車)
152名(標準ドアリニューアル・中間車)
154名(ワイドドア車・中間車)
全長 20,150 mm(先頭車)
20,000 mm(中間車)
全幅 2,860 mm
全高 4,145mm(集電装置付車)
4,060 mm(集電装置無し車)
車体 ステンレス鋼
台車 住友金属工業 FS534(標準ドア車・電動台車)
住友金属工業 FS534A(ワイドドア車・電動台車)
住友金属工業 FS034(標準ドア車・付随台車)
住友金属工業 FS034A(ワイドドア車・付随台車)
主電動機 三菱電機 MB-5026-A
かご形三相誘導電動機
主電動機出力 175 kW × 4 (更新前)
190 kW × 4 (更新後)
駆動方式 WN駆動方式
歯車比 101:16, 6.31
制御方式 三菱電機GTOサイリスタ素子VVVFインバータ制御(更新前)
フルSiC[1]適用VVVFインバータ制御(更新後)
制御装置 三菱電機 MAP-184-15V15(更新前)
三菱電機 MAP-198-15V267またはMAP-194-15V279(更新後)
制動装置 回生制動併用電磁直通ブレーキ(更新前)
電気指令式電磁直通ブレーキ
純電気ブレーキ
保安装置 OM-ATS
D-ATS-P
CS-ATC(現在は撤去)
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小田急1000形電車(おだきゅう1000がたでんしゃ)は、小田急電鉄(小田急)が1988年昭和63年)以降に運用している通勤車両である。

9000形に代わる帝都高速度交通営団(現在の東京地下鉄千代田線への直通対応車として登場した。1988年(昭和63年)から1993年(平成5年)にかけて4両25編成・6両8編成・8両1編成・10両4編成の合計196両が製造され、1990年(平成2年)には幅2 mのワイドドア(乗務員室直後のみ幅1.5 m)を採用した車両が登場した。これらの車両は1700形(過去に存在した4両編成の場合は1500形)に分けられることがある。ワイドドア車の4両編成は2004年に一部の先頭車を中間車に改造した上で6両編成となった。

小田急では、編成表記の際には「新宿寄り先頭車両の車両番号(新宿方の車号)×両数」という表記を使用している[2]ため、特定の編成を表記する際には「1051×4」「1251×6」「1552×4」「1752×6」「1081×8」「1094×10」のように表記する。また、特定の車両は車両番号から「デハ1400番台」などのように表記し、小田原方面に向かって右側を「山側」、左側を「海側」と表記する。

登場の経緯

小田急では2600形VVVFインバータ制御方式の実用試験を行っていたが、その実績から営業用電車で本格的にインバータ制御を採用した。車体についても同社の車両で初めてステンレス鋼を採用した。採用にあたってはステンレス特有の光沢を押さえたいという小田急側の意向により全面ダルフィニッシュ仕上げとしている。ただし前面のみ繊維強化プラスチック (FRP) 製で、デザインは9000形に類似するものである。

9000形に代わる帝都高速度交通営団(現在の東京地下鉄千代田線への直通対応車でもあり、そのため車体幅なども9000形に準じており同形の発展形とみなすことができる。

このような条件を踏まえた開発・設計が行われ、登場したのが1000形である。

また1000形は小田急の開通60周年記念の意味も兼ねて導入されており、小田急10000形電車HiSE車も開通60周年の年に導入されている。

車体概説

本節では、登場当時の仕様を基本として、増備途上での変更点を個別に記述する。更新による変更については沿革で後述する。

1000形は全長20 mの車両による4両固定編成・6両固定編成・8両固定編成・10両固定編成が製造された。形式は先頭車が制御車のクハ1050番台で、中間車は電動車のデハ1000番台と付随車のサハ1050番台である。車両番号については、巻末の編成表を参照のこと。

車体

先頭車は車体長19,650 mm・全長20,150 mm、中間車は車体長19,500 mm・全長20,000 mmで、車体幅は当時の帝都高速度交通営団(営団地下鉄)千代田線への乗り入れを考慮して、2,860 mmとした。車体はステンレス鋼製のオールステンレス車両で、ステンレスの輝きを和らげるために表面をダルフィニッシュ(梨地)仕上げとしている。

車内内装については8000形後期車において採用された「暖色系」の色調を全面的に採用した。内張りは白色系にベージュ模様入りの化粧板を使用、床材は灰色のカラースキームとなった。なお、主電動機の三相交流化により、床のモーター点検蓋(トラップドア)は廃止されている。座席は赤色の表地に変更された。車内設備は8000形に準じているが、座席端の仕切りは袖仕切と呼ばれる化粧板を貼った板に(座席側はモケット張り)、客用ドア内側は化粧板仕上げに変更されている。天井はラインフローファン方式だが、ラインデリアは先頭車9台・中間車10台に増設された。

機器・乗務員室

冷房装置集約分散式のCU195Cとなった。8000形で実績のあるCU195Aの改良型である。

運転台主幹制御器は従来どおりの縦軸式ABFMタイプだが、オフ位置は右ではなく千代田線仕様の手前である。乗務員室内は緑色のカラースキームである。運転台計器盤は8000形よりも高くし、高運転台に準じたものとなった。乗務員室仕切りは運転席背面は配電盤などの機器設置スペースとしたため窓はなく、中央に仕切扉窓・右端に2段式の窓がある。遮光幕は中央の仕切扉窓のみある。

台車はFS-534(電動台車)とFS-034(付随台車)で、基礎制動装置は全台車が両抱き式踏面ブレーキ(クラスプブレーキ)である。いずれも小田急では2200形からの実績があるアルストムリンク式空気ばね台車である。

車両各所の写真

各編成の仕様

  • 通常タイプのドアを装備する6両編成と10両編成は全編成が千代田線への乗り入れに対応していたが、前項で述べたように4000形の投入およびD-ATS-Pの設置でATCが撤去されたため、乗り入れができなくなった。逆にワイドドアの6両編成は千代田線に乗り入れないため登場時よりATCを搭載していない。
  • 8・10両編成とワイドドア6両編成のドア鴨居部には、ドアチャイム(1751×6・1752×6を除く)とLED式の旅客案内表示器が設置され、次の駅・乗り換え案内や小田急からのお知らせなどを表示している。なお、10両編成には広告を掲示する枠が設置されておらず、すべての鴨居部に2装置を設置している。千代田線内では、小田急線内と異なる表示をしており、次の駅の案内(駅ナンバリング対応)と乗客へのお願い文(冒頭は東京地下鉄6000系などと同様に「東京メトロをご利用頂きましてありがとうございます。」の表示が出る)のみを表示する。
    • 8両:千鳥配置、黒枠
    • 10両:全ドア上、白枠(1091×10・1092×10は黒枠で3000形や8000形更新車と同型)
    • ワイドドア:千鳥配置、1751×6 - 1753×6・1754×6の2・3号車がオリジナルの形状、1754×6(2・3号車は除く) - 1756×6は黒枠
  • 1本のみの8両編成(1081×8)[注 1]は、小田急の通勤車で初めて自動放送装置を搭載した。これは試験的なもので、その後2000形以降の各系列で本格的に採用された。なお、この編成のみ、現在も英語放送が行われていない。また、4両編成も3000形または8000形更新車と併結運転を行っている場合に限り自動放送が流れるが、これは併結相手にある自動放送装置を使用している。この場合、自動放送の設定は相手側運転台での設定となる。
  • 8・10両編成は、併結運転を行わないので電気連結器は装備していない。
  • 6両の1252×6編成は、日本車輌製造において1989年(昭和64年)に落成したため、車内には「昭和64年 日本車輌」と記載された銘板があったが、10両化改造時にすべて小田急エンジニアリングのものに交換されており現存しない。また、この編成は1993年3月から2000年11月ごろまで、1251×6は2004年11月まで千代田線乗り入れ機器を外して地上線で使用されていた。
  • 元千代田線直通対応車のうち、分割可能編成の連結部乗務員室仕切扉の上部には「地下鉄線内では非常の場合通れます」という看板とステッカーが、また横には「地下鉄線内で非常の場合はつまみを左にまわしてください」のステッカーが貼付されている。
  • 車掌スイッチは千代田線非対応車では従来の押し棒式で、安全装置として戸閉鎖錠スイッチ[注 2]を設置している。
    • 一方、元千代田線対応車では戸閉鎖錠スイッチではなく、ひねり式[注 3]の車掌スイッチを使用している。

車内

沿革

  • 1988年昭和63年)3月22日:営業運転開始。
  • 1989年平成元年):営団地下鉄(現在の東京地下鉄)千代田線乗り入れ開始。
  • 1991年(平成3年)4月1日:ワイドドア車営業運転開始。
  • 2004年(平成16年):4両編成(計6編成)のワイドドア車すべてを6両編成(計4編成)に改造。
  • 2007年(平成19年):4+6両編成6本 (1061×4+1251×6 - 1066×4+1256×6) が通常ダイヤでの千代田線乗入れから撤退。
  • 2009年(平成21年):4両編成3本 (1059×4 - 1061×4) のカラーリング変更が行われる。
  • 2010年(平成22年):10両編成 (1091×10 - 1094×10) が千代田線乗入れから撤退。これにより、地上線のみの運用となった。
  • 2014年(平成26年):本形式のリニューアルが発表[3]
  • 2015年(平成27年)1月:リニューアル車1本目となる1066×4が運用を開始した。
  • 2016年(平成28年)8月:6両編成と4両編成の6号車と7号車を中間車改造して10両化された1本目、1095×10が運用開始。
  • 2019年(平成31年)3月:新宿発着の各駅停車の一部に10両固定編成および6+4両編成の充当開始。
  • 2020年令和2年)
    • 7月:1081×8が付随車2両を残し廃車される(当形式初の廃車)[4]
    • 8月:令和元年東日本台風による被害のため長期間運休していた箱根登山鉄道の全線での運転再開を記念し、赤塗装(レーティッシュ塗装)の4両編成(1058×4 - 1061×4)が小田急線全線で8月のみ運行する[5]
2020年8月に限定運行された赤塗装と標準塗装の併結編成(2020年8月3日 / 登戸駅)

千代田線での運用

2007年以降、小田急持ちの千代田線直通列車には本形式と4000形が使用されていたが、4000形の増備が進んだことと本形式へのD-ATS-P設置により2010年に、本形式は直通運用から外れた[6]

動向

3000形の1次車と併結して10両の各駅停車の運用に就く1000形 1062×4
(2019年11月21日 / 町田駅)
 
車体外装を箱根登山鉄道の車両と同様のデザインとした1000形4両編成
(2009年3月17日 / 栢山駅 - 富水駅間)
  • 2001年(平成13年)ごろから制御装置制動装置の交換が実施されている。純電気ブレーキ対応となり、起動・停止時の非同期領域磁励音が変化している。2012年8月の1091×10を最後に施工が完了している。また、同時期から座席が赤色モケットからピンク系バケットシートに交換され、2008年には全編成への施工が完了している。
  • 6両編成の小田原寄り先頭車の電気連結器は使用しないため、撤去されている。
  • 4両固定編成は、新製導入時から本形式の4両編成を2本連結した8両編成による新宿口での各停中心の運用に多く充当されてきたが、2000形3000形8両固定編成の新製と旧4000形9000形5000形4両固定編成の廃車で、本形式の4両編成を2本連結した8両編成による運用は少なくなり、4両編成車は6両編成の各形式と併結し、快速急行急行などの優等運用と4両単独で新松田駅以西の箱根登山線直通各停運用に就くことが多い。
  • また、千代田線直通対応車(主に6+4両編成)も4000形の新製と、優等列車の分割併合運用が大幅に減少したことから地上運用に充当される頻度が増加した。2007年(平成19年)8月7日江の島海岸での花火大会輸送時には10両固定編成が充当された。
  • 2019年現在、8両固定編成は2000形や3000形の8両固定編成同様、各駅停車の主力車両として運用されている。なお、保安装置・編成長の関係から小田原線新松田以西と江ノ島線での定期運用はなく[注 4]、小田原線新宿 - 本厚木間と多摩線での運用、6両単独編成は多摩線や江ノ島線、小田原線成城学園前小田原間の運用となっている。
  • 千代田線直通対応車は、2007年9月から4000形の投入を開始したため、その置き換えで分割可能編成が直通運用から離脱し、5000形・5200形を置き換えた。なお、直通運用から離脱した編成は車両不足の対策が可能になるよう乗り入れ機器は撤去されておらず、千代田線内での貫通扉の使用方法や女性専用車などのステッカーも千代田線に対応したままとなっていた。なお、ブランドマーク導入時に他系列も千代田線に対応したものに交換している。
  • 2008年3月15日のダイヤ改正以降、10両固定編成も4000形と共通で小田急線内の急行・快速急行運用に充当されるようになった。
  • 2008年3月15日からブランドマークの貼り付けが開始された。
  • 2009年3月のダイヤ改正に合わせて、箱根登山線内の折り返し運用および新松田駅 - 箱根湯本駅間の直通運用に使用される4両固定編成3本 (1059×4 - 1061×4) が、車体の外装を同社の1000形2000系に準じた赤色(箱根登山鉄道と姉妹提携を結んでいるスイスレーティッシュ鉄道をイメージしている)に変更された[7][8]。その後2012年3月に1058×4も同様のレーティッシュカラーに変更された。2012年3月以降、小田原 - 箱根湯本駅間の列車はこれらの車両に統一されている[9][10]
  • 1081×8は2020年6月30日を持って運用を終了した[4]

2018年現在、箱根登山鉄道に専従で充当される「レーティッシュカラー」の車両は、4両固定編成の1058×4 -1061×4の4編成である。


牽引車としての役割

  • 9000形の運用終了に伴い、旅客運用のほか、新製車やクヤ31形検測車「TECHNO-INSPECTOR」などの牽引や、甲種輸送の牽引に使われている。このうち、クヤ31形の牽引に対応するのは1051×4・1751×6・1752×6である。

リニューアル

製造から25年ほど経過したこともあり、リニューアルを実施することが2014年4月に発表された[3]。更新内容は以下の通り。

リニューアル改造を終えて営業運転を開始した1000形 1066×4
(2015年1月28日 / 参宮橋駅-南新宿駅)
 
リニューアル車車内
外観
内装
  • 車内インテリアについては、天井のラインデリア周りに風をイメージした青いラインが施され、壁面はブルー基調、床面は木漏れ日をイメージしたものとなった。座席は一般席がロビンスブルー、優先席がルベキュラーグレーとし、座面は1人あたり最大13ミリ拡幅された。座席の手すりは曲線型のものとなり、座席両端の仕切りが大型のものに交換された。つり革は丸型で、一般席部分は薄い青色、優先席部分は黄色となっている。先頭車には車いすスペースが設置された。
サービス機器など
  • 空調装置は、冷房能力を約8 %アップ(1両あたり50,000 kcal/h)した他、乗車率に応じた風量調整が可能な送風機を採用。
  • 行先・種別表示器は字幕式から高輝度フルカラーLEDに変更した[11]。本系列搭載のものは、従来品よりも省電力、高コントラストの新しいタイプとなっている[11]
  • 室内灯にはLED照明が採用され、色温度は一般席は白色系(5000 K)だが、優先席は暖色系(3200 K)として区別を図っている[11]
  • 各ドア上部には17インチワイド液晶ディスプレイ(LCD)が2台設置された[12]。LCDは右側が「TVOS(車内案内表示装置)」、左側が「小田急TV(電子広告)」である。広告画面の配信にはモバイルWiMAX通信方式としており、先頭車屋根上に受信アンテナを設置した[12]。合わせてドア開閉時に赤く点滅するドア開閉表示灯、ドアチャイムを新設した[11]
  • ドアエンジンは空気式で変更はないが、一定時間戸閉力を弱める戸閉力弱め制御機構が追加された[12]
  • 車内非常通報装置は警報式から乗務員と相互に通話可能なものに更新された。
  • 放送装置には自動放送装置が追加された[12]
走行機器など
  • 制御装置に量産車両としては世界初となるトランジスタ部にSiC-MOSFET、ダイオード部にSiC-SBDを使用した「フルSiC(炭化ケイ素)適用VVVFインバータ装置(三菱電機製)」を採用[13](ハイブリッドSiC素子を含めた場合は日本の鉄道車両で5例目の採用である[注 5][注 6]。)。これにより制御装置を大幅に小型・軽量化(約80 %低減)。またブレーキ時の回生電力量が増加し、現行の1000形と比較して定員時約20 %、最大約36 %の省エネを実現。2015年1月17日から5月8日に行った営業運転車両による省エネ効果の検証では、主回路システム(インバータ装置・高効率全閉形誘導電動機・低損失のフィルタリアクトルなどで構成)全体での消費電力量および電力回生率が、従来のSi-GTOサイリスタ搭載車と比較して、加速時の力行電力量が約17 %減少、減速時の電力回生ブレーキによる電力回生率が従来の34.1 %から52.1 %に向上し、全体として約40 %の省エネ効果を実証した[16]
  • モーターに190 kW高効率全密閉モーターを採用し、更なる省エネルギー化と低騒音化を実現。
  • 補助電源装置は、東洋電機製造製の静止形インバータ(SIV)、SVH210-4075A(定格容量210 kVA[注 7])に換装された。初充電回路からインバータ出力部および制御回路部を二重化した待機二重系方式であり、回路方式には高耐圧の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が採用され、3レベル方式とすることで低騒音化が図られている[17]
  • リニューアル後の本系列は3000形 3次車以降との併結運用が多くなることから、モニタ装置の車両情報管理装置(TIOS)化が実施された[11]。TIOSの搭載により、制御伝送機能の集約のほか、編成全体での遅れ込め制御の実現により、乗り心地の向上や省メンテナンス化が図られている[11]
  • ブレーキ装置はこれまでの電磁直通式から電気指令式(MBSA)に更新し、合わせて台車中継弁を設置することでブレーキ応答性の向上を実現した[12][注 8]

2015年1月、初めてリニューアル改造を終えた1066×4が運用に復帰した[3][13][18]。2015年度までに4両固定編成3本が順次施工され[19]、2016年8月に1056×4と1256×6、2017年1月に1052×4と1252×6が乗務員室を撤去し、それぞれ1095×10、1096×10となった[20]。以降も施工されている[21][22][23][24]

  • 施工編成数は以下の通り。
年度 4両 6両 8両 10両 合計両数 出典 備考
2014年度 2編成       8両 [3] 該当編成は1057×4・1066×4。 
2015年度 1編成       4両 [19] 該当編成は1063×4。
2016年度 (2編成) (2編成)   2編成 20両 [20] 4両固定編成と6両固定編成の運転台を撤去し、10両固定編成に改造。該当編成は1095×10(元1056×4+元1256×6)・1096×10(元1052×4+元1252×6)。
2017年度 1編成     1編成 14両 [21] 該当編成は1064×4・1091×10。
2018年度 1編成     1編成 14両 [22] 該当編成は1067×4・1093×10。 
2019年度 1編成     1編成 14両 [23] 該当編成は1069×4・1094×10。
2020年度 1編成   [注 9]   4両 [24] 該当編成は1065×4。
合計 7編成
(+2編成)
(2編成) 5編成
78両   2020年度鉄道事業設備投資計画時点での合計


ワイドドア車

通常の車両は扉幅は1,300 mm
 
ワイドドア車の扉幅は2,000 mm
運転台後ろのみ1,500 mm

1990年(平成2年)から1991年(平成3年)にかけて、幅2 mのワイドドア(クハ1050番台の乗務員室直後のみ幅1.5 m)を採用した車両が登場した。これらの車両は俗に1700形(過去に存在した4両編成の場合は1500形)に分けられる。

この車両には多くの試験的施策があり、側面にはLED式の種別・行先表示器のほか、1次車(1551×4・1552×4・1751×6・1752×6)では車内旅客案内表示装置と座席跳ね上げ機構を小田急で初めて搭載している。車内旅客案内表示装置は1551×4と1751×6にLED式スクロールタイプが、1552×4と1752×6に液晶式ディスプレイタイプ(LCD。ただし後に登場した3000形や4000形より小型)がそれぞれ採用された。その後新製した2次車 (1553×4 - 1556×4) もLCDを採用したが、液晶の劣化が早く、数年で撤去された。また、客室内の戸袋と扉以外の窓をパワーウィンドウとし、ボタン操作で開閉できるようになっている(これも本形式のみの装備)。

ラッシュ時の乗降をスムーズに行うために幅2 mのドアを採用していたが、その巨大な幅のドアが原因でかえって乗客がドア付近に滞留し、車内の流動性が悪化したことから、1998年(平成10年)に東急車輛製造で2000形と同一の幅1.6 mに改造する工事が行われた。この際に構体のドア開口部は従来どおりとしたため、開扉時に左右それぞれ0.2 m引き残している。車内はドア幅の縮小に合わせて内装を装備したため、引き残しているようには見えないが、閉扉時の扉窓位置が左右非対称となり、扉窓の両端部が仕切りと接しているように見える。ドア改造の際には1551×4と1751×6のLED式装置の一部を1552×4と1752×6に取り付け、1551×4・1751×6と1552×4・1752×6で千鳥配置となった。1553×4 - 1556×4の各編成では6両編成化工事の際に新しくLED式スクロールタイプを設置している。これは千代田線直通対応編成である1091×10 - 1094×10および1081×8の枠を黒くしたタイプで、1次車とは若干形状が異なる。ドアチャイムは1753×6 - 1756×6のみ設置されている。通常ドア編成と異なり、ワイドドア編成は優先席が各車両の両端(先頭車は連結面側のみ)に設けられている。また、一部編成には車椅子スペースが設置されている。

1991年の新製当初の段階では4両編成6本(24両)と6両編成2本(12両)の計36両が在籍し、4両編成は小田原寄りに通常ドア幅の1000形4両編成を連結した8両編成で新宿口の各駅停車に充当されていた。しかし2004年(平成16年)に4両編成は一部先頭車を中間車に改造した上で6両固定編成に組み換えて解消し、6両編成6本となり、現在は6両単独での運用に限定され、多摩線・江ノ島線・小田原線(新松田~小田原間)の各駅停車を中心に運用されている。

側面のLED式種別・行先表示器は、現在はゴシック体で、各駅停車に充当する時は種別と行先を交互に表示する。登場時は書体がゴシック体で、フォントはロゴ並みになっているなど画素が粗かったが、2005年(平成17年)より明朝体のものになるとともに英字も表示可能なもの(3000形1・2次車と同じ物)に交換した。また、2008年度に、1751×6・1752×6・1753×6が、2009年度に1754×6[25]・1755×6・1756×6が純電気ブレーキ化改造を受けた。

このグループは、登場以来千代田線直通に対応する編成は存在しない。

なお、車内の銘板は、ドアの幅の改造時にすべて東急車輛製造のものに交換されており、さらに1753×6 - 1756×6は組み換えの際に再度交換されている。このため、川崎重工業製であっても車内の銘板は「東急車輛」である。

車両各所の写真
車内各所の写真

日本の他鉄道事業者のワイドドア車としては、東京メトロ東西線用の05系第14 - 18編成と15000系に1.8 m幅のものを採用した事例がある。

編成表

凡例
Tc …制御車、M …電動車、T…付随車、VVVF…制御装置、SIV…補助電源装置、CP…電動空気圧縮機、PT…集電装置


2020年時点

4両固定編成

赤字はレーティッシュ塗装の車両である。

 
新宿
号車 7 8 9 10 備 考
形式 クハ1050 デハ1000 デハ1000 クハ1050
区分 Tc2 M2 M1 Tc1
車両番号 1151 1101 1001 1051
1152 1102 1002 1052 10両固定化
1153 1103 1003 1053 廃車済み
1154 1104 1004 1054 廃車済み
1155 1105 1005 1055 クハ1155は廃車済み
1156 1106 1006 1056 10両固定化
1157 1107 1007 1057 リニューアル済み
1158 1108 1008 1058
1159 1109 1009 1059
1160 1110 1010 1060
1161 1111 1011 1061
1162 1112 1012 1062
1163 1113 1013 1063 リニューアル済み
1164 1114 1014 1064 リニューアル済み
1165 1115 1015 1065 リニューアル済み
1166 1116 1016 1066 リニューアル済み
1167 1117 1017 1067 リニューアル済み
1168 1118 1018 1068 廃車済み
1169 1119 1019 1069 リニューアル済み
搭載機器 CP VVVF,SIV,PT VVVF,SIV,PT CP
自重 30.0 t 38.2 t 38.1 t 29.8 t
定員 144 157 157 144

6両固定編成

標準ドア

 
新宿
号車 1 2 3 4 5 6 備 考
形式 クハ1050 デハ1000 サハ1050 デハ1000 デハ1000 クハ1050
区分 Tc2 M3 T M2 M1 Tc1
車両番号 1451 1401 1351 1301 1201 1251
1452 1402 1352 1302 1202 1252 10両固定化
1453 1403 1353 1303 1203 1253
1454 1404 1354 1304 1204 1254
1455 1405 1355 1305 1205 1255 クハ1255は廃車済み
1456 1406 1356 1306 1206 1256 10両固定化
搭載機器 CP VVVF,SIV PT VVVF, PT VVVF,SIV,PT CP
自重 29.5 t 37.9 t 29.3 t 36.2 t 38.1 t 29.9 t
定員 144 157 157 157 157 144

ワイドドア

「Aタイプ」は6両固定編成で製造された編成、「Bタイプ」は4両固定編成の運転台を一部撤去して6両固定編成化した編成。

斜字 は川崎重工業製、それ以外は東急車輛製造製。

□はもと運転台のあった方向を示す(現在は4人掛け座席)。

 
新宿
号車 1 2 3 4 5 6
形式 クハ1050 デハ1000 サハ1050 デハ1000 デハ1000 クハ1050
区分 Tc2 M3 T M2 M1 Tc1
車両番号

( )内は旧番号

Aタイプ 1951 1901 1851 1801 1701 1751
1952 1902 1852 1802 1702 1752
Bタイプ 1953
(1652)
1903
(1602)
□1853
(1651)
1803
(1601)
1703
(1501)
1753
(1551)
1954
(1653)
1904
(1502)
1854□
(1552)
1804
(1603)
1704
(1503)
1754
(1553)
1955
(1655)
1905
(1605)
□1855
(1654)
1805
(1604)
1705
(1504)
1755
(1554)
1956
(1656)
1906
(1505)
1856□
(1555)
1806
(1606)
1706
(1506)
1756
(1556)
搭載機器 Aタイプ CP VVVF SIV,PT VVVF,PT VVVF,PT SIV,CP
Bタイプ SIV,CP VVVF,PT SIV VVVF,PT VVVF,PT SIV,CP
自重 Aタイプ 31.9 t 38.2 t 33.1 t 38.5 t 38.5 t 33.9 t
Bタイプ 33.9 t 39.1 t 33.6 t 39.4 t 38.5 t 33.9 t
定員 143 154 154 154 154 143

8両固定編成(付随車のみ現存)

 
新宿
号車 1 2 3 4 5 6 7 8 備 考
形式 クハ1050 デハ1000 サハ1050 デハ1000 サハ1050 デハ1000 デハ1000 クハ1050
区分 Tc2 M5 T3 M4 T1 M2 M1 Tc1
車両番号 1481 1431 1381 1331 1181 1131 1031 1081 サハ1381・1181以外は廃車済み
搭載機器 CP VVVF,SIV PT VVVF,PT   VVVF,SIV,PT VVVF,SIV,PT CP
自重 29.5 t 37.9 t 29.3 t 36.2 t 29.2 t 38.2 t 38.1 t 29.8 t
定員 144 157 157 157 157 157 157 144

10両固定編成

 
新宿
号車 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 備 考
形式 クハ1050 デハ1000 サハ1050 デハ1000 デハ1000 サハ1050 サハ1050 デハ1000 デハ1000 クハ1050
区分 Tc2 M5 T3 M4 M3 T2 T1 M2 M1 Tc1
車両番号
( )内は旧番号
1491 1441 1391 1341 1241 1291 1191 1141 1041 1091 リニューアル済み
1492 1442 1392 1342 1242 1292 1192 1142 1042 1092
1493 1443 1393 1343 1243 1293 1193 1143 1043 1093 リニューアル済み
1494 1444 1394 1344 1244 1294 1194 1144 1044 1094 リニューアル済み
1495
(1456)
1445
(1406)
1395
(1356)
1345
(1306)
1245
(1206)
1295
(1256)
1195
(1156)
1145
(1106)
1045
(1006)
1095
(1056)
リニューアル済み
1496
(1452)
1446
(1402)
1396
(1352)
1346
(1302)
1246
(1202)
1296
(1252)
1196
(1152)
1146
(1102)
1046
(1002)
1096
(1052)
リニューアル済み
搭載機器 CP VVVF,SIV PT VVVF, PT VVVF,SIV,PT     VVVF,SIV,PT VVVF,SIV,PT CP
自重 29.5 t 37.9 t 29.3 t 36.2 t 38.1 t 29.2 t 29.2 t 38.2 t 38.1 t 29.8 t
定員 144 157 157 157 157 157 157 157 157 144

脚注

注釈

  1. ^ 2020年6月30日をもって運用から離脱し、サハ1381・1181以外の車両は廃車済み
  2. ^ 専用のを挿入しないと車掌スイッチを使用できなくする安全装置。
  3. ^ 従来型と同様の押し棒式だが、安全のために開扉の際は棒を ひねり ながら上に押さないと開扉操作をできなくするもの。
  4. ^ 新松田 - 小田原間と江ノ島線の急行通過駅(一部停車駅を含む)は20 m車6両編成分のホーム有効長しかないため。
  5. ^ 日本では2013年にえちぜん鉄道MC7000形が日本の鉄道車両としては初のSiC素子を採用し、その後福井鉄道F1000形名古屋市営地下鉄2000形機器更新車東京メトロ05系千代田線用改造車へ波及したが、いずれもトランジスタ部にSi-IGBT素子、ダイオード部にSiC-SBD素子とを組み合わせたハイブリッドSiC適用の制御装置であった[14][15]
  6. ^ 小田急8000形西武6000系など、試験的なSiC素子の採用の形式を除く。
  7. ^ 三相交流200 V 60 Hz
  8. ^ ブレーキ読替装置は非装備のため電磁直通制動である1000形未更新車や8000形界磁チョッパ制御車との併結は不可能である。
  9. ^ リニューアルされる事なく廃車された。

出典

  1. ^ 根岸/津田/長谷川/井浦/山口「3.3kVフルSiCパワーモジュール」『三菱電機技報』2018年3月号、三菱電機、2018年3月、175-178頁。
  2. ^ 『鉄道ダイヤ情報』通巻145号 p.15
  3. ^ a b c d 世界初!制御装置にフルSiC適用のVVVFインバーターを採用通勤車両1000形のリニューアルに着手!〜運転電力を従来比約20%から最大36%削減〜 (PDF) 小田急電鉄公式サイトニュースリリース
  4. ^ a b 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』通巻978号 p.120 小田急1000形の動向
  5. ^ 鉄道チャンネル (2020年7月14日). “小田急電鉄、8月「赤い1000形車両」を小田急全線で運転 箱根登山電車の全線運転再開記念に | 鉄道チャンネル”. 鉄道チャンネル. 2020年7月14日閲覧。
  6. ^ 【小田急】1000形10輌編成に小変化”. 鉄道ホビダス. 2011年2月14日閲覧。
  7. ^ 「3月14日(土)のダイヤ改正より、箱根登山線内を運行する小田急通勤車両1000形のカラーリングを変更します」 (PDF) 小田急電鉄公式サイトニュースリリース(インターネットアーカイブ
  8. ^ railf.jp 箱根登山線専用カラーになった小田急1000形が回送される - 交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース 2009年3月14日
  9. ^ 「2012年3月17日(土) ダイヤ改正を実施します」 (PDF) 小田急電鉄公式サイトニュースリリース
  10. ^ 「2012年3月17日(土) ダイヤ改正を実施します」 (PDF) 箱根登山鉄道公式サイトニュースリリース(インターネットアーカイブ)
  11. ^ a b c d e f g h 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」2015年3月号研究と開発「小田急電鉄1000形リニューアル工事の概要」4-5頁
  12. ^ a b c d e 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」2015年3月号研究と開発「小田急電鉄1000形リニューアル工事の概要」6-7頁
  13. ^ a b 直流1500V架線対応「フルSiC適用VVVFインバーター装置」採用のお知らせ (PDF) 三菱電機公式サイトニュースリリース
  14. ^ 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」2014年5月号研究と開発「千代田線転籍車改造工事の概要」18-20頁
  15. ^ https://www.jase-w.eccj.or.jp/technologies-j/pdf/construction_transport/C-16.pdf
  16. ^ 世界初、営業運転鉄道車両で省エネを実証 主回路システム全体として約40%省エネ 小田急電鉄車両での「フルSiC適用VVVFインバーター装置」実証結果のお知らせ三菱電機公式サイトニュースリリース 2015年6月22日
  17. ^ 小田急電鉄株式会社1000形更新車用補助電源装置 (PDF) 東洋電機技報第131号(インターネットアーカイブ)
  18. ^ 小田急が通勤車両リニューアルへ 座席幅を最大13ミリ拡大 (PDF) THE PAGE(インターネットアーカイブ)
  19. ^ a b "2015年度の鉄道事業設備投資計画" (PDF) (Press release). 小田急電鉄. 2015年7月29日閲覧
  20. ^ a b "2016年度の鉄道事業設備投資計画" (PDF) (Press release). 小田急電鉄. 2016年5月4日閲覧
  21. ^ a b "2017年度の鉄道事業設備投資計画" (PDF) (Press release). 小田急電鉄. 2017年7月14日閲覧
  22. ^ a b "2018年度の鉄道事業設備投資計画" (PDF) (Press release). 小田急電鉄. 2018年5月26日閲覧
  23. ^ a b "2019年度の鉄道事業設備投資計画" (PDF) (Press release). 小田急電鉄. 2019年6月1日閲覧
  24. ^ a b "2020年度の鉄道事業設備投資計画" (PDF) (Press release). 小田急電鉄. 31 July 2020. 2020年8月10日閲覧
  25. ^ 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.258

参考文献

  • 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」
    • 2015年3月号研究と開発「小田急電鉄1000形リニューアル工事の概要」

関連項目