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「電子書籍」の版間の差分

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欧米では[[iPhone]]など[[スマートフォン]]において、画面の大きさや操作性の向上、また、[[Amazon.com]]の[[Kindle]]向けコンテンツを購入できるなど、環境が整備されてきたことから電子書籍の普及が始まっている。
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日本でもiPhoneは普及しているが、ケータイ小説を除けばコンテンツ整備が遅れていた<ref name = "電子書籍メジャー" />。これは配信サイトに当たる[[App Store]]におけるコンテンツの立ち上げと[[iOS (アップル)|iOS]]用のリーダーの開発が必要であった為であるが、その中で日本のApp Store上で2008年12月から[[産経デジタル]]が[[産経新聞]]紙面を配信するサービスが開始され、当時は先駆的な試みとして話題となった。
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2010年にはiPad発売により大きく潮流が変わり、多くのコンテンツプロバイダが参入するようになっている。同年、[[Android (オペレーティングシステム)|Android]]OS搭載のスマートフォンが本格的に発売されたことで、それに対応した電子書籍サイトの開設も進められている。これに関してはNTTドコモと大日本印刷の[[2Dfacto]]、シャープの[[GALAPAGOS]]など、端末の[[ベンダー]]側からもコンテンツ供給のアプローチが行われている。
2010年にはiPad発売により大きく潮流が変わり、多くのコンテンツプロバイダが参入するようになっている。同年、[[Android (オペレーティングシステム)|Android]]OS搭載のスマートフォンが本格的に発売されたことで、それに対応した電子書籍サイトの開設も進められている。これに関してはNTTドコモと大日本印刷の[[2Dfacto]]、シャープの[[GALAPAGOS]]など、端末の[[ベンダー]]側からもコンテンツ供給のアプローチが行われている。

2021年5月20日 (木) 23:08時点における版

電子書籍(でんししょせき)とは、主にインターネット上で流通する電磁的に記録された国内外に向けた読み物の総称である。電子ブックデジタル書籍デジタルブックEブックオンライン書籍とも呼ばれる。PCスマートフォンタブレットで閲覧用アプリを用いたり、電子書籍リーダーなどで閲覧する。既に出版された印刷書籍を電子ファイル化することで、印刷製本、在庫確保、流通、その他経費を大幅に削減し再販でき、絶版を避けられる。また個人が出版社などを介する事無く独自で出版出来るのも電子書籍の魅力である。

歴史

1970年代

1980年代

  • 1985年10月 - 日本初のCD-ROM「最新科学技術用語辞典」(三修社)発売。
  • 1986年7月 - 日本電子出版協会が設立される。
  • 1987年7月 - 岩波書店「広辞苑第三版」CD-ROM発売。当初は富士通のワープロOASYS100用であった。

1990年代

  • 1990年7月 - ソニーが電子ブックプレーヤー「DATA Discman DD-1」発売。
  • 1993年6月 - アドビシステムズ(現:アドビ)よりPDF作成ソフトであるAdobe Acrobat発売。
  • 1993年11月 - ボイジャー社がエキスパンドブック日本語版を発売。当時はApple社MacintoshHyperCardベースだった。
  • 1993年11月 - NECが「デジタルブック」を発売。
  • 1995年11月 - フジオンラインシステムが、日本初の電子書籍ストア「電子書店パピレス」を開始[1]
  • 1995年 - ボイジャー社よりエキスパンドブック・ツールキットⅡ発売。当初はMacintoshのみだったが、後にWindowsに対応した。
  • 1995年12月 - 新潮社よりCD-ROM版『新潮文庫の100冊』発売。エキスパンドブックを採用。
  • 1996年7月 - アオキシステムが、「ソフトアイランド」を開始。個人出版のデジタルコミックを販売。
  • 1997年6月 - 凸版印刷、電子書籍ダウンロードサイト「BookPark(コンテンツパラダイス→ビットウェイブックス)」を実験開始。
  • 1997年9月 - 電子図書館青空文庫を公開。
  • 1997年10月 - 富士ゼロックス(現:富士フイルムビジネスイノベーション)が新規事業としてオン・デマンド出版サービスBookParkを運営開始。
  • 1997年12月 - 光文社が『光文社電子書店』を開始。
  • 1998年7月 - ボイジャー社がT-Timeをリリース。
  • 1998年7月 - デジタル書店グーテンベルク21を開始。
  • 1998年11月 - 米国NuvoMediaが電子書籍リーダーRocket eBookを発売。
  • 1999年11月 - 電子書籍コンソーシアムが通信衛星を利用して電子書籍を配信するブックオンデマンドシステム総合実証実験を開始。
  • 1999年12月 - 光文社講談社角川書店集英社新潮社中央公論新社徳間書店文藝春秋の出版社8社が共同で出版社の権利保護(直交渉阻止)を目的として電子文庫出版社会を発足[2]

2000年代

  • 2000年9月 - 出版社8社の電子文庫出版社会が電子文庫ストア電子文庫パブリを開設。
  • 2001年6月 - イーブックイニシアティブジャパンが、インターネットカフェ「Necca」へ電子書籍サービスを提供開始。
  • 2002年1月 - 新潮社NECインターチャネルが共同で有料小説配信サービス「新潮ケータイ文庫」をEZweb公式メニューで開始。
  • 2002年6月 - イーブックイニシアティブジャパンが、岩波文庫電子版を岩見沢市立図書館に提供。
  • 2003年8月 - 角川デジックス(現:角川アスキー総合研究所)とバンダイネットワークスが、NTTドコモiモード向け電子書籍『文庫読み放題』をサービス開始。
  • 2003年10月 - パピレスがKDDIのau公式サイト向けサービス内で携帯電話向け電子書店を開始。
  • 2003年11月 - ビットウェイが、CDMA 1X WIN向けに「Handyブックショップ」を開設し、日本初の携帯電話向け電子コミックの配信を開始。
  • 2004年4月 - ソニーが、E Inkディスプレイを採用した電子書籍リーダーLIBRIeを発売。
  • 2004年12月 - Googleが提携図書館の蔵書をデジタル化し、検索可能にするGoogle Print Library Projectを発表。
  • 2005年 - Amazon.comが、フランスの電子書籍ソフトウェア会社Mobipocket.comを買収。
  • 2006年9月 - コミック出版社22社が、「デジタルコミック協議会」を発足[3]
  • 2007年3月 - 新潮社、有料月刊コミック誌「デジコミ新潮co㎡」を創刊。
  • 2007年4月 - パピレスが、電子コミックレンタルサービス『電子貸本Renta』を開始。
  • 2007年5月 - 小学館が電子コミック誌「モバイルフラワー」を創刊。
  • 2007年9月 - International Digital Publishing Forum(国際電子出版フォーラム)が、電子書籍フォーマットEPUBをリリース。
  • 2007年10月 - フランスBookeeが、電子書籍リーダーCybook Gen3を発売。
  • 2007年11月 - 紀伊國屋書店 、米国「OCLC NetLibrary」を通じ、日本の学術・教養書の電子版をインターネットで提供するサービスを開始。
  • 2007年11月 - 千代田区立図書館、インターネット上で電子書籍の貸出・返却ができるサービス「千代田Web図書館」を開始。
  • 2007年11月 - Amazon.comが、電子書籍リーダー「Kindle」を発売し、電子書籍ストア『Kindleストア』を開設。
  • 2007年12月 - ネクシィーズグループブランジスタが無料電子雑誌「旅色」を創刊。
  • 2008年7月 - 大日本印刷とその子会社am3が、ニンテンドーDS向け動画・書籍配信「DSvision」を開始。
  • 2008年10月 - 東京都書店商業組合、ACCESSとの協業で電子書籍販売モバイルサイト「ケータイ書店Booker's」を開始。
  • 2009年4月 - Amazon.comが、iPhone用電子書籍リーダーStanzaの提供元のLexcycleを買収。
  • 2009年 - Amazon.comが、書籍出版部門Amazon Publishingを設立。
  • 2009年11月 - バーンズ・アンド・ノーブルが、電子書籍リーダーNookを発売。
  • 2009年12月 - ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンがPlayStation Storeより PlayStation Portable向けコミックコンテンツの配信開始。

2010年代

電子書籍フォーマット

主要な電子書籍フォーマット

EPUB
米国の電子書籍標準化団体IDPFが推進するXMLベースのオープン規格。2011年のEPUB3より縦書きやルビがサポートされ、日本語への対応が向上した。国内、海外の複数の電子書籍ストアで採用されている。
AZW
Amazon Kindle用の電子書籍フォーマットである。AmaZon Wispernetの略と言われる。仏Mobipocket社の開発した「Mobipocket」フォーマット(MOBIフォーマット)がベースとなっており、Amazonによる同社の買収でKindle用の電子書籍フォーマットに転用された。なおDRM保護のされていないMOBIフォーマットの電子書籍はKindleで読むことが可能である。EPUB形式からの変換は「Kindle ダイレクト・パブリッシング」で公開されている「KindleGen」[2] というツールで、行うことが出来る。
Kindle Format 8
2011年、従来のMOBIフォーマットに代わって採用されたAmazon Kindle用のフォーマットである。略称はKF8またはAZW3。Kindle FireがKF8をはじめてサポートした電子書籍リーダーとなった。KF8はHTML5およびCSS3をベースにしており、拡張子は従来同様、.mobiまたは.azwが使用される。
.book(ドットブック)
日本のボイジャーが1990年代に開発した「エキスパンドブック (EBK) 形式」の後継フォーマットである。縦書きやルビをサポートしており、文芸作品や漫画単行本の電子書籍・携帯コミック化に採用されている。ビューワーソフトとして「T-time」が公開されており、有償版ではファイルの自作も可能である。2005年頃に携帯コミックのビューワーがセルシスの「ComicSurfing」と統合され「BookSurfing Reader」となり、2013年現在も携帯アプリを用いる携帯コミックでは主流フォーマットとなっている。ビットウェイが供給するウェブコミックサイトでも多く採用されており、日本の漫画においては主要なプラットフォームである。
XMDF
シャープが開発した電子書籍コンテンツのフォーマットである。大手出版社21社が参加する日本電子書籍出版社協会運営の「電子文庫パブリ」などで利用されている。専用リーダーソフトとして「ブンコビューア」でZaurusPalmOSPocketPCHandheldPCWindows向けが無料で公開されている。

他にもプレーンテキストPDFといった汎用文書フォーマットが商業電子書籍販売に利用されることもあり、JPEGPNGといった標準的な画像フォーマットで書面を保持すれば静止画閲覧ソフトがそのまま電子書籍閲覧ソフトとして利用できる。


リフロー型とフィックス型

リフロー型レイアウト 画面サイズの変更に追随して改行位置が変わる。

電子書籍は同じフォーマットでも、そのレイアウト(文章と画像の配置)の形式によりリフロー(再流動)型とフィックス(固定)型に分類される。

リフロー型は画面サイズ変更に追随してレイアウトが変更され、またフォントサイズや行間などを任意で変更することが出来る形式であり、小説や学術書など文章中心の書籍に多い。ページという概念がない。

フィックス型は画面サイズが変更されてもレイアウトが固定されていて、フォントサイズの変更も出来ない形式であり、写真集やコミックなどの書籍に多い。ページまるごと画像で取り込まれた形式のものもフィックス型と言われるが、画像であるためテキスト情報は持たず、文字列検索も出来ない。日本電子書籍出版社協会はフィックス型の場合、全ページ画像のみで構成されるよう勧告している[5]

電子書籍閲覧ソフト

端末機器

携帯電話

スマートフォン

欧米ではiPhoneなどスマートフォンにおいて、画面の大きさや操作性の向上、また、Amazon.comKindle向けコンテンツを購入できるなど、環境が整備されてきたことから電子書籍の普及が始まっている。

日本でもiPhoneは普及しているが、ケータイ小説を除けばコンテンツ整備が遅れていた[6]。これは配信サイトに当たるApp Storeにおけるコンテンツの立ち上げとiOS用のリーダーの開発が必要であった為であるが、その中で日本のApp Store上で2008年12月から産経デジタル産経新聞紙面を配信するサービスが開始され、当時は先駆的な試みとして話題となった。

2010年にはiPad発売により大きく潮流が変わり、多くのコンテンツプロバイダが参入するようになっている。同年、AndroidOS搭載のスマートフォンが本格的に発売されたことで、それに対応した電子書籍サイトの開設も進められている。これに関してはNTTドコモと大日本印刷の2Dfacto、シャープのGALAPAGOSなど、端末のベンダー側からもコンテンツ供給のアプローチが行われている。

スマートフォンは日本において大きく普及した2008年頃から注目を集め、その一種であるiPhoneが2009年時点の北アメリカで、電子書籍の端末としての認識が広がり始めている[6]。iPhoneは日本でも好評を博し、その流れを汲む製品であるiPadは「タブレット端末」であるが、2010年初夏より「電子書籍端末」として、日本のマスメディアでもよく取り上げられるようになった。

ケータイ

通信機能と液晶表示部を備え、アプリケーション(iアプリEZアプリS!アプリなどのJavaアプリ)をダウンロードできるフィーチャー・フォンは電子書籍コンテンツに対応した閲覧ソフトウェアさえ搭載すればすぐに電子書籍端末になる。普及台数や小型であること、すでにメールなどで小さな画面に違和感が少なくダウンロードも一般化していること、課金システムがすでにあることなど、多くの点で携帯電話機が電子書籍の端末として広範に普及する可能性は十分にある。 日本では、2003年11月にauが売り出したWINシリーズで本格的なサービスが開始された。当時の通信パケット料は従量制が一般的であり、書籍やコミックを携帯電話でダウンロードして閲覧するとコンテンツ代よりもパケット代の方が高くなる状況(いわゆる、パケ死)であったため、実現は困難であった。しかし、auのWINシリーズよりパケット定額モデルが登場し、容量の大きい書籍コンテンツでも配信可能となった。(2003年当時は、書籍のダウンロード可能容量は、1ファイルあたり、1.5Mバイトの制限があった)。このとき、書籍コンテンツを提供したCP(コンテンツプロバイダ)は、凸版印刷(ビットウェイ)、とシャープ、モバイルブックジェーピーの3社である。コミックは、凸版印刷(ビットウェイ)のHandyコミック(現BookLive)のみであった。

2004年前半にNTTドコモが売り出したFOMA 900iシリーズ(どちらもフィーチャー・フォンの先陣である)において実現したJavaアプリ(EZアプリiアプリ)のリッチ化により、PC向けの電子書籍サイトで採用されていた.bookフォーマットのリーダーであるT-timeのアプリ版リーダーがセルシスボイジャーによって開発された。その後、出版業界の要請もありビットウェイプラットフォーム供給者となり、ビットウェイの「Handyコミック」だけでなく、NTTソルマーレ(コミックシーモア)などのCPがコミック配信のメニューサイトを開設した。さらに着うたサイトと同じく徐々に同業者や供給者である出版社自社も参入した。これらは特に携帯コミックと形容されている。現在[いつ?]ウェブコミック勝手サイトを含めると1000サイト以上存在する。

また、2005年頃から青空文庫と同様、(自作の)文章をテキスト記述した勝手サイト (HTML) をWWW上に公開し、口コミで評判が広がるケータイ小説という形で電子書籍に近い形態のものが普及した。

携帯コミックの黎明期は単行本(またはその原稿)をスキャンしたものを1話単位で販売課金・配信するだけであったが、2006年頃からは本に掲載せず直にサイト上で描き下ろしを配信する形態のものが現れ、次第に「ウェブコミック」と称されるようになる。

日本での有料携帯電話用コンテンツの市場規模は、2005年から伸び始め、2007年には300億円にもなったというデータもあるが、多くが携帯コミックであり、利用者層が限られている。

auグループは2009年6月から電子書籍コンテンツの閲覧に最適化した高解像度液晶を搭載したフィーチャー・フォン「ブックケータイ biblio」を発売したが、大きさ・重さなどが災いしヒットにならず2010年春に後継機種を出さずに終売した。(2010年末に登場したbiblio leafは電子ブックリーダーである。)

パーソナルコンピュータ

パーソナルコンピュータは、ソフトウェアを選ぶことで多様な使用法が行なえ、電子書籍の再生もその1つとなる。デスクトップPCからネットブック、そして携帯情報端末までは、可搬性や用途の面で少しずつ異なりながら連続的に並んでおり、大きいものは画面が大きく動画表示などでも能力に余裕があるが可搬性・携帯性は損なわれる。小さいものは画面が小さく動画再生をはじめ処理性能が求められる機能は備えず、使用時間も制約を受けるが携帯性がある。

PC用アプリケーション

PCにダウンロードして実行することで、電子書籍コンテンツを再生するものがある。多くが独自の電子書籍ファイル・フォーマットに対応する電子書籍再生ソフトである。HTMLPDFのような広く利用されているフォーマットの電子書籍コンテンツでは電子書籍専用の再生ソフトは必要としない。なお、商品カタログや広告物など、ウェブ上に存在する無数のHTMLやPDFフォーマットのダウンロード・コンテンツを電子書籍と呼んでよいかはあいまいである。

タブレット

2010年4月3日に、まず米国から販売が始まり、その後、5月28日には世界各国でも販売が開始された iPadは、動画や音楽の再生機能やゲーム機能だけでなく、電子書籍閲覧機能も注目された。このような「タブレットPC」と呼ばれる平板状の携帯型PCは、高機能な携帯電話である「スマートフォン」では画面が小さすぎるがノートブックPCでは電子書籍を読むだけの用途には大きく重すぎて不便である読者層に適したものとして歓迎され、複数のメーカーから同様の製品が販売されて新たな携帯型情報端末のカテゴリを形成しはじめている。

専用端末

電子書籍を閲覧するための専用端末は電子書籍リーダーとも呼ばれ、書籍に比較していくつもの課題が求められる。

  • 読みやすい画面
  • 小型で書籍より軽いか同等
  • 長時間動作
  • コンテンツの購入が容易
  • 初期コストとなる専用端末の価格が廉価である

他にも、耐衝撃性や簡易な耐水性、複数の電子書籍フォーマット対応、盗難防止の工夫などが求められる。

また、携帯型情報端末ゆえに類似機器の機能の対応も可能な限り求められる。

  • 画面のカラー化
  • 動画、静止画、音楽の再生機能
  • インターネット接続機能

向上した技術

特に電子書籍専用端末に向いた最新技術には新たな種類の電子ペーパーがあり、これまで以上に省電力で高コントラストの表示が実現するとされる[6]。米Pixel Qi社は電子ペーパーと液晶の2つのモードを持つものがある。

端末本体価格は依然、高価であることが挙げられる。この辺りは普及による量産効果や共通規格の策定も絡んでコモディティ化などによる低価格化競争も期待されるが、現時点でそういった電子書籍データフォーマットの共通化などといった動向はみられず、依然として紙媒体を置き換えるほどの普及を見せるかどうかは未知数である。

専用端末の例

現在も発売されているものとしては、「Amazon Kindle」、「Rakuten Kobo」、また日本では未発売であるが「Barnes & Noble Nook」などがある。詳しくは「電子ブックリーダー」を参照。

PDA

1999年6月にシャープのISP兼ポータルサイトのSharp Space TownでPDAザウルス向けに電子書店「ザウルス文庫」を開始。このコンテンツにおいてXMDFフォーマットを初採用した。2001年11月に、凸版印刷のビットウェイがPDA向けに「@irBitway」の名称でサービスを開始。 2002年にはNTTドコモによるがInfogate接続のPC・PDA向けに「M-stage Book」を開始。NTTソルマーレがキオスク端末「Foobio」接続のPDA向けに、ソニースタイルCLIE向けにコンテンツ数は少ないものの電子書籍コンテンツの販売を行っていた。


サービス形態

電子書籍販売サービス

電子書籍流通事業日本国内大手のメディアドゥホールディングスによると、KindlecomiXology楽天KoboNookGoogle PlayiBooksが、海外六大電子書店である[7]

都度課金
商品購入する都度に決済する方式[8]。1冊ずつの個別購入からまとめ買い(一括購入)、犬耳書店のように読みたいトコだけの分冊購入、ポイントまたはチケット購入などがある。
自動継続課金型月額ポイント購入
月一定のポイントを自動継続で購入し、購入したポイントで電子書籍を購入する。ポイントが足りなくなったら都度ポイントを追加するか、月額コースを新たに登録して旧・月額コース解約が必要となる。ポイントには有効期限がある。キャリア決済(携帯電話会社の料金回収サービス)、クレジットカード決済に対応。
自動継続課金型定額読み放題
一定の読み放題プランを自動継続で購入することで指定された電子書籍が読み放題となる。クレジットカード決済、キャリア決済(携帯電話会社の料金回収サービス)に対応。
自動購入サービス
発売日に自動で申し込んだ電子雑誌や電子書籍が購入できるサービス。基本クレジットカード決済のみに対応。
前払い一括定期購読型
月から年までの定期購読がある。Fujisan.co.jpのみに採用されている。定期購読終了で閲覧は不可となる雑誌もある。クレジットカード決済、Web口座振替に対応。
時限制レンタル
時間制限付きで電子書籍が閲覧できるサービス。ストリーミング形式で時間が過ぎると返却(閲覧終了)となる。Renta!などはチケット購入し、電子書籍をチケットで購入するチケット制を採用している。
雑誌機能併設型
定期刊行物である雑誌のように定期配信する形式。自社コンテンツを期間限定の無料連載という形で宣伝し、電子書籍の販売を行う少年ジャンプ+などの期間無料型や有料で定期配信し、電子書籍の販売を行うものもある。
ユーザー生成コンテンツ(UGC)型
主にユーザー生成した電子出版物を期間限定で公開し、販売する(エブリスタなど)。
無料券配布型
無料で読めるチケットがある一定の条件を満たすことで付与される。
期間限定無料
ある一定期間無料で電子書籍が読める。
完全店頭決済型
電子書籍を取り扱い店舗のレジのみで決済する形態(GEOマンガ)。

事業者向けサービス

広告媒体としての電子書籍サービス

完全広告収入型コンテンツメディア
アプリ内課金なしの広告収入型(ブランジスタ、ニコニコ漫画など)。
書店への紙出版物の販促
空飛ぶ本棚(文教堂グループホールディングス

電子出版社

電子書籍ソリューション

電子書籍取次

電子書籍取次とは、出版社又は著作権者からコンテンツを預かり、国内・海外の電子書店又は電子図書館にコンテンツを供給する電子書籍流通業者である。

その他ソリューション企業

電子図書館サービス

インターネット上の電子図書館
青空文庫など
図書館の電子図書館サービス
国立国会図書館デジタルコレクション、ハーティトラストなど

図書館向けサービス

公立図書館では、2002年北海道岩見沢市立図書館が電子書籍の閲覧サービスを始めたが、需要が少なかったため、書店の指定した2カ月の無償での試行の後、取り止めとなった。 大学図書館では、紀伊國屋書店が手がける、OCLC(後にEBSCO Publishingに運営移管[11][12])の学術教養系和書・洋書の電子書籍配信サービス、ネットライブラリー(NetLibrary)が、早くから普及している。特に2009年10月、凸版印刷紀伊國屋書店の協業[11][13]後、学術教養系和書電子書籍のコンテンツ数が増えている。

図書館向け図書館利用者への電子書籍貸出サービス
図書館流通センターの「TRC-DL」、楽天グループのOverDrive社とメディアドゥの「OverDrive Japan」などが提供。
図書館内限定電子書籍閲覧サービス
凸版印刷の電子図書館サービスなど

配信形態

1980年代から90年代においてはフロッピーディスクCD-ROMといったメディアで配付されるものも多かったが、90年代後半からはインターネットの普及もあり、通信ネットワークで配信されるものが主流となった。

ネットワークでの配信方式は大きく分けて、配信先から電子書籍を端末に保存して読むダウンロード方式と、端末にデータを保存せずにオンラインのまま読むストリーミング方式がある。

携帯電話の配信形態

携帯電話の場合は、キャリア毎の端末機の仕様のため、実際には、KDDI (au)、ソフトバンクモバイルがダウンロード方式で、NTTドコモはストリーミング方式である。2003年11月に、はじめて携帯電話でダウンロード方式のコミック配信をビットウェイ社が開始した。携帯電話のコミック用ビューワーは、当初ベクター形式のコミックサーフィンとラスター方式のビットウェイ・ビューワーの2方式で始まった。その後、コミックサーフィンにラスター形式の機能が実装され、主流となった。

著作権保護を優先し認証を必要とする

電子書籍データを端末に一部、またはすべてダウンロードするが、閲覧するためにはインターネットに接続していることが必要な形式である。サーバから情報をダウンロードして、キャッシュとしては記憶されるが、この一時ファイルは閲覧中は開かれたままで、静的なデータとしては基本的に保存できない。インターネット上のサーバに接続していないと閲覧できないため、提供側はかなり確実な著作権保護を得られるが、閲覧者には利便性が損なわれる。基本的には一般のウェブブラウザプラグインと呼ばれる機能拡張プログラムをインストールして閲覧できるようになっているが、ウェブブラウザとは別に動作するものもある。

問題点

デジタルデバイド

専用端末の有無がデジタルデバイド(情報格差)を生じる可能性がある。特に米国では、政府は公的な発表をインターネットのような電子的な手段で行なうのに積極的だが、国民の全てがパソコンを持って閲覧できる環境に在るとは限らない。この点が米政府の完全電子公報化の足枷となっている。この問題は開発途上国ではさらに深刻であり、本来は社会を豊かにするための知識を提供する書籍が、電子化によるデジタルデバイドで、それら書籍に親しむべき貧困層の手に届かない危険性を生む。開発途上国でのデジタルデバイド問題を緩和するために、例えば100ドルPCという安価だが十分な性能を備えたパソコンの計画[14]などもあるが、どこまで普及できるか、普及後のサポートが行なえるのかなど、すぐに答えは出せない。

電子機器としての弱点

このほか、これら電子書籍と閲覧端末が何らかの形で電子機器に依存するため、これら機器に固有の問題も含んでいる。例えば、電力がなければそもそも利用できないため、発展途上国など停電が常態化している場所や電源が得がたい地域での利用が難しいこと、また繊細な電子機器は精密機器の例に漏れず故障しやすく衝撃や浸水などによってたやすく壊れてしまうこと、電子機器の操作が必要なこと、そして何より端末自身が旧態化することで、端末そのものの商品価値が損なわれるだけではなく、新機種への乗り換えに際して互換性の問題から旧来機種向けのデータを移行する手間がかかるか、あるいは旧機種向けデータをあきらめるしかないなどの懸念も存在する。また、電子機器の液晶の発する光によって目の疲れを引き起こしやすい。さらに、書き換え可能な電子情報であるため、文書の改ざんや削除など、第三者による意図的な攻撃から完全に逃れることがセキュリティー上の課題となる。

事業者側による電子書籍削除

紙の出版物とことなり、代金支払後であってもサービス提供元の都合等により一方的に電子書籍が削除され、利用できなくなることがある[15][16][17][18]

出版者による無断販売

  • 海賊版電子書籍の販売[19]
  • 同人誌の海賊版販売[20]
  • 流出した個人情報で電子書籍として販売[21]

著作権保護と可搬性

紙の出版物をデジタル情報化すれば、なんらかの複製制御の仕組みを配布方法や再生機器内に備えないと、デジタル情報は容易に複製物が作られるようになり、P2P型共有ソフトなどの違法な情報複製によって本来の著作物の販売が阻害されるなど著作権者の権利が侵害される可能性が高い。これを避けるために、電子書籍では当初からオンラインによる認証機能を設けたり、ダウンロードした端末以外で閲覧できないようにするといったハードウェア・キーを導入したりすることで、広範な複製は行なわれないようになっている。著作権者の権利はこれでほとんど保護されるが、利用者にとっては購入したコンテンツが特定の機器に縛られて可搬性が制限されたり、閲覧キーが損壊してしまえばまったく再生できず最悪では再購入する以外に手段がないなど、利便性が大きく失われることになる。これらが電子書籍の普及を阻害する一要因になっているとの指摘もある[22]。2010年にはApp Storeで紙の出版物をスキャンした電子書籍の海賊版が多数見つかり、問題となった[23]。2010年には、不足する電子書籍を利用者が手元の書籍等をスキャンして自ら電子情報化する「自炊」という作業が顕在化したが、その手法の派生として専門業者が登場し、スキャンデータの不法なコピーが流通する危険性に加えて、自炊作業によって本来は破棄される裁断済みの書籍束が他者のスキャンに幾度も利用されかねないという別の著作権侵害の問題を引き起こすと危惧されている[24]

電子化権利問題

コンテンツの多くは紙媒体での出版を前提とした契約下で関係者が製作に携わったものであり、その電子化と公開ではそれら関係者の利権がからみあい、デジタル情報ゆえに新たな契約が対象とする配布媒体・データ形態の範囲がわかりにくい、コンテンツの電子化にも技術面以外の様々なハードルが存在している。

Google社は著作権者に無断で電子書籍化を進めてそれらをネットワーク上で公開することで権利を侵害したとして、米国内で著者・出版社団体から訴えられ、2年以上にもわたる係争の結果、多額の和解料の支払いとユーザーに対する課金および著作権料徴収を徹底するという条件を飲むことでようやく和解に至っている。

コンテンツの提供者側の課題の1つは電子書籍に関わる複雑な権利関係をどのように処理するか、ということである。現在の電子書籍は、主にこれまで紙媒体で流通していた作品を電子化したものが大多数である。また、そのような作品が一番人気があり市場でも売れている。しかし、過去に出版された作品を電子化によって再版する場合に、権利を誰が所有しているのか明らかではないことが多い。なお、電子化を行う手段としては紙媒体をスキャンする方法と近年主流になっている印刷用に用意したDTPデータを電子書籍用のデータに変換することで電子化する方法がある。スキャンする方法では紙媒体のレイアウトもスキャンすることになるが、このレイアウトの権利(版面権)は著者ではなく、出版社が保持しているとの見解もあり、このような非常に複雑な権利関係の処理が出版業界に電子化を躊躇させている。また、収益性からオリジナルの電子書籍作品が流通しにくい事も電子書籍が普及しない一因とも言える。従来の紙による出版物であれば、書店取次ぎに出版物を卸した段階で(実際には数カ月のタイムラグがある)出版社に収入があり、それを原資に著者や制作に関する費用を支払うことができるが、電子書籍ではこのようなシステムを構築するのが難しい。一部の電子書籍書店ではアドバンス(売上げの前払い)で対応しているが、上手く機能しているとは言い難い。

著作権切れ出版物の供給

プロジェクト・グーテンベルクや青空文庫のような著作権切れコンテンツも存在するが、そういった過去の作品だけでは電子書籍の利用者のニーズを満たせない。著作権切れの書籍などをデジタル情報による無料コンテンツへ加工する作業は、ボランティアか無償提供目的の公益の事業などが行なっている。日本では国立国会図書館[25]や複数の大学図書館、美術館などが著作権適用期間を過ぎた古い書物や古文書の電子化を行なっているが、これらは互いに異なるファイル形式で記述しているために、利用者には不便である。また、逆に商業的な電子書籍の流通網は基本的に使用できないために、閲覧者の利便性を損なう面もある。

出版社・書店の影響

電子書籍が流通すれば電子書籍出版社が直接著作者から出版権を購入し販売することになる。そうなれば出版社や書店は大打撃を受けると予想されている。

日本国内の大手出版社は2010年2月に日本電子書籍出版社協会を発足させAmazonなど大手ネット書店に対抗している[26]

主な業界団体

以下は解散した団体

  • 電子書籍コンソーシアム(e-Book Japan) - 1998年10月設立。出版社・家電メーカー・出版取次など145社が参加。ブックオンデマンド実証実験を実施。2000年1月末に実証実験を終え、解散したと思われる

脚注

  1. ^ 沿革”. パピレス. 2017年11月24日閲覧。
  2. ^ 電子書籍サービスの課題と展望”. 紀伊國屋書店. 2017年11月24日閲覧。
  3. ^ デジタルコミック協議会が発足へ 出版社22社で29日に設立”. 文化通信社. 2017年11月24日閲覧。
  4. ^ 電子書店5社が発起人となり、「日本電子書店連合」を発足”. PR TIMES. 2018年4月29日閲覧。
  5. ^ 電書協 EPUB 3 制作ガイド”. 日本電子書籍出版社協会 (2015年1月1日). 2015年3月15日閲覧。
  6. ^ a b c 小谷卓也、Phil Keys著 『電子書籍メジャーへのページをひらく』、日経エレクトロニクス2009年6月29日号
  7. ^ メディアドゥ、日本原作マンガの海外への電子配信を開始”. 株式会社メディアドゥホールディングス. 2017年11月28日閲覧。
  8. ^ 課金方式とは”. ソフトバンク・ペイメント・サービス. 2017年11月28日閲覧。
  9. ^ 入居者が無料で雑誌・マンガ読み放題! 「ビューン読み放題マンション」を提供開始!”. 株式会社ビューン. 2017年11月28日閲覧。
  10. ^ ボイジャー 新潮社、講談社、インプレスと資本提携”. 株式会社ボイジャー. 2017年11月28日閲覧。
  11. ^ a b NetLibrary_Topics - 紀伊國屋書店 BookWeb Pro 《2020年01月10日閲覧;2011年2月3日付けでインターネットアーカイブ内に保存済み》
  12. ^ "NetLibrary 事業会社変更に関するお知らせ" (PDF) (Press release). 紀伊國屋書店. 18 March 2010. 2020年1月10日閲覧現在はインターネットアーカイブ内に残存
  13. ^ "紀伊國屋書店、凸版印刷が図書館向け電子書籍配信サービス「NetLibrary」における協業で合意、出版社向け新ビジネスモデルを構築" (PDF) (Press release). 紀伊國屋書店. 1 October 2009. 2020年1月10日閲覧現在はインターネットアーカイブ内に残存
  14. ^ IDG Japan 『MITメディアラボ、「100ドルノートPC」のプロトタイプを11月にリリースへ』 ITmedia、2005年9月29日。
  15. ^ 楽天の電子書籍サービス「Raboo」が終了へITmedia 2012年9月26日
  16. ^ ローソンの電子書籍サービス「エルパカBOOKS」終了 購入代金相当のポイント返金ITmedia 2014年1月6日
  17. ^ 買ったはずの蔵書が消える 電子書籍、企業撤退相次ぎ」『朝日新聞』2014年1月30日。2020年1月10日閲覧。「会員限定記事。記事冒頭の一部のみ公開。現在はインターネットアーカイブ内に残存」
  18. ^ 地球書店のサービス終了とコミックシーモアポイント進呈のお知らせ [1] NTTソルマーレ 2014年1月31日
  19. ^ 漫画だけではない、Kindle“海賊出版”の実態 Amazonの審査体制に「漫画村プロと変わらない」と批判も”. アイティメディア株式会社. 2018年4月29日閲覧。
  20. ^ Kindleストアでもし自分の同人誌が「無断」で売られていたら……? どうしたらいいかAmazonに聞いてみた”. アイティメディア株式会社. 2017年11月30日閲覧。
  21. ^ GMOインターネット漏洩情報 電子書籍で一時販売”. 日本経済新聞. 2017年11月30日閲覧。
  22. ^ ネットユーザー 電子書籍を利用しない理由は?」『web_R25』2011年9月29日。2020年1月10日閲覧。「現在はインターネットアーカイブ内に残存」
  23. ^ 電子書籍の海賊版「Appleに重大な責任」「それ自体違法」 出版4団体が強く抗議
  24. ^ 「自炊の森」はシステム変更へ、プレオープンは休止、権利者への配慮を模索? - PC-watch impress
  25. ^ 国立国会図書館-National Diet Library:電子図書館の蔵書 2010年7月13日時点
  26. ^ 西秀治「電子書籍化へ出版社が大同団結 国内市場の主導権狙い」『朝日新聞』2010年1月13日。2020年1月10日閲覧。「現在はインターネットアーカイブ内に残存」

参考文献

関連項目

外部リンク