「ヤハウェ」の版間の差分
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2006年10月23日 (月) 03:15時点における版
ヤハウェ (YHWH) は、旧約聖書(ユダヤ教、キリスト教の聖典、イスラム教でも重視される)で唯一神を表すヘブライ語 יהוה を、推定の上、音訳したものである。
またこの4つの子音は「神聖四文字(テトラグラマトン:ギリシャ語で”四つの文字”の意)」とも呼ばれる。日本語では他にヤハヴェ(YaHVeH)、ヤーウェ(YaHWeHのaHを長母音として音写)、エホバ(YeHoVaH)などの表記が用いられる。エホバの名称を用いる聖書翻訳が日本語訳では二つあり文語訳聖書が有名である。第二次大戦後出版された新しい翻訳(口語訳聖書、新改訳聖書、新共同訳聖書等)では多く「主」と訳されるようになったが、無教会派の関根正雄による旧約聖書訳では「ヤハウェ」が用いられている。エホバの証人の翻訳による新世界訳聖書では「エホバ」が用いられる。
יהוה は旧約聖書のヘブライ語本文中に6,828回出てくる。「彼はならせる」という意味であるヘブライ語動詞 היה (ハーヤー、「ある」「なる」) の使役形、未完了態と、同じ形である。聖書中で神の名の意味が明かされるのは、モーセが神の名をたずねる場面においてである。
神はモーセに、「わたしはある。わたしはあるという者だ」と言われ、また、「イスラエルの人々にこう言うがよい。『わたしはある』という方がわたしをあなた方に遣わされたのだと。」出エジプト記3章14節(日本聖書協会:新共同訳聖書より引用)
ユダヤ教成立以前の信仰をヤハウェ信仰と呼ぶ。旧約聖書では他に「神」という一般名詞であるエル(古典的なヘブライ語発音でエール)やエロヒム(同じくエローヒーム)などもヤハウェの呼称として用いられる。旧約聖書を教典とみなすキリスト教やイスラム教における神も同一の神だと解釈できる。
ユダヤ教徒が一般生活において、神の名を「ヤハウェ」と呼ぶことはない。かわりに「我が主」(アドナイ)「御名」(ハ・シェム)などの呼称を用いる。かつては大祭司が年に一度神殿の聖所に入り民全体のあがないの犠牲を捧げる時にのみ唱える特別な名であった。対して、アラビア語において、ヤハウェはアッラーフと呼称される。これはイスラームとキリスト教徒双方に共通する。
ヤハウェは、元来はシナイ山で信仰された山の精などを指したのではないかと考える者もいる。ヘブライ人がカナーンを侵略して定着するようになると、先住民カナーン人の最高神であるエールやバアルの性格を取り入れ、後にバビロン捕囚などを経てユダヤ教が成立してゆく過程において唯一絶対神の性格を帯びるようになっていったのではないかとする説もある。四資料説においては、「エル」を神の呼称とする資料(エロヒム資料)に比べ、ヤハウェを神の名とする資料(ヤハウェ資料)は新しく、祭儀を祭司階級に担われたものと考える点などにおいて、先行資料と異なっている。
神の名の発音
モーセの十戒により、神の名をみだりに唱えてはいけないとされたため、現在と同じく古代イスラエルでもアドナイ、或いはハ・シェムと呼称し、聖書に神名ヤハウェが記されている箇所もその様に読み替えていた。 ヘブライ文字は母音を記さず、またその後古典ヘブライ語が日常言語としては死語となってしまったため、神の名の本来の読み方が分からなくなっていた。
後に、ヘブライ文字に母音を表記する方法が考案された際、聖書に神名が記されている箇所には、アドナイと読み替える前提でその母音が付けられた。そのため、YHWH(YHVH)という神の名の子音の綴りに、アドナイ(’Ădōnay)の母音(-ă -ō -a)を付けてエホバ(Yəhōvah)と読む誤読が発生した(ヘブライ文字yには文法上弱母音のaを付けられない為、弱母音のeで発音される)。現在の学者は、元来の神名はヤハウェ(ヤーウェ)という意見でほぼ一致している。
キリスト教における受容
キリスト教、とりわけ三位一体の教説が成立して以降、ヤハウェをたんに神の名とするにとどまらず、特定の位格と結びついた名として捉える論考が現れる。一般に、西方教会においてはヤハウェ(ラテン語文献では多く「エホバ」)を父なる神と同一視することが多く、対して東方教会においてはヤハウェはイエス・キリストの神格における名であると考えられる。イエスのイコン、とりわけマンダリオンにおいてその光輪にギリシア文字「Ο・Ω・Ν」(ギリシア語: ho on 「在るもの」;ヤハウェの意訳) を記す習慣は後者の伝統に根ざしている。