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「新モンゴロイド」の版間の差分

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*[[ハプログループC2 (Y染色体)|ハプログループC2]]は主に[[モンゴル系民族]]や[[ツングース系民族]]、一部の[[テュルク系民族]]において高頻度であり、[[ディネ|アサバスカ族]]などの北米先住民にも中頻度見られ、中国北部や[[朝鮮半島]]でも中~低頻度、[[日本列島]]でも低頻度で見られる。その他、[[モンゴル帝国]]の拡大とともに中央アジアと[[西南アジア]]などでも確認される。また、[[東ヨーロッパ|東欧]]の[[ハンガリー]]の[[マジャル人]]と[[ブルガリア]]の[[ブルガリア人]]および[[トルコ]]の[[トルコ人]]にも中~低頻度にハプログループC2の遺伝子が見られる。
*[[ハプログループC2 (Y染色体)|ハプログループC2]]は主に[[モンゴル系民族]]や[[ツングース系民族]]、一部の[[テュルク系民族]]において高頻度であり、[[ディネ|アサバスカ族]]などの北米先住民にも中頻度見られ、中国北部や[[朝鮮半島]]でも中~低頻度、[[日本列島]]でも低頻度で見られる。その他、[[モンゴル帝国]]の拡大とともに中央アジアと[[西南アジア]]などでも確認される。また、[[東ヨーロッパ|東欧]]の[[ハンガリー]]の[[マジャル人]]と[[ブルガリア]]の[[ブルガリア人]]および[[トルコ]]の[[トルコ人]]にも中~低頻度にハプログループC2の遺伝子が見られる。


*[[ハプログループN (Y染色体)|ハプログループN]]は[[シベリア]]北部の[[サモエード人|サモエード系]]<ref name="Mongoloid">Tambets, Kristiina et al. 2004, The Western and Eastern Roots of the Saami?the Story of Genetic “Outliers” Told by Mitochondrial DNA and Y Chromosomes</ref>と東部の[[ヤクート|ヤクート人]]<ref name="Mongoloid"/>で高頻度であり、[[フィンランド]]の[[フィン人]](スオミ人)と[[ラップランド]]の[[サーミ人]]は中頻度で、および[[エストニア人]]と[[カレリア人]]などの[[北ヨーロッパ|北欧]]諸国と[[バルト三国]]などの民族でも低頻度に見られ、[[ウラル語族]]の担い手であると考えられる。ハプログループNは[[東アジア]]北部近辺で発祥したと考えられており、中国[[遼河文明]]時代の人骨からも高頻度に見つかっているため、かつては中国北部などの東アジア北部でも支配的であったと考えられるが、現代の東アジアにおいては概ね10%程度となっている。
*[[ハプログループN (Y染色体)|ハプログループN]]は[[シベリア]]北部の[[サモエード人|サモエード系]]<ref name="Mongoloid">Tambets, Kristiina et al. 2004, The Western and Eastern Roots of the Saami?the Story of Genetic “Outliers” Told by Mitochondrial DNA and Y Chromosomes</ref>と東部の[[ヤクート人]]<ref name="Mongoloid"/>で高頻度であり、[[フィンランド]]の[[フィン人]](スオミ人)と[[ラップランド]]の[[サーミ人]]は中頻度で、および[[エストニア人]]と[[カレリア人]]などの[[北ヨーロッパ|北欧]]諸国と[[バルト三国]]などの民族でも低頻度に見られ、[[ウラル語族]]の担い手であると考えられる。ハプログループNは[[東アジア]]北部近辺で発祥したと考えられており、中国[[遼河文明]]時代の人骨からも高頻度に見つかっているため、かつては中国北部などの東アジア北部でも支配的であったと考えられるが、現代の東アジアにおいては概ね10%程度となっている。


*[[ハプログループO (Y染色体)|ハプログループO]]は東アジアから[[東南アジア]]にかけて最多を占めるグループである。親系統別に見ると、[[コーカソイド]]系の[[ハプログループR (Y染色体)|ハプログループR]]と並んで現代人類において最も帰属人口の多い系統である。その人口の多さから、多岐に渡るサブグループを生み出している。日本においても[[ハプログループO1b2 (Y染色体)|O1b2]]が30%以上、[[ハプログループO2 (Y染色体)|O2]]が20%以上見られ、親系統別で見るとやはりO系統が最多である。<br />[[ハプログループO-M95 (Y染色体)|O1b1系統]]は中国南部や東南アジアで多い。<br />[[ハプログループO1b2 (Y染色体)|O1b2系統]]は日本本州の他、[[朝鮮半島]]や[[満州民族]]、中国北部などの[[北東アジア]]で比較的多い。<br />[[ハプログループO2 (Y染色体)|O2系統]]は[[漢民族]]で50%以上、[[朝鮮民族]]や[[ベトナム人]]で40%以上と東アジアで最多のサブグループである。
*[[ハプログループO (Y染色体)|ハプログループO]]は東アジアから[[東南アジア]]にかけて最多を占めるグループである。親系統別に見ると、[[コーカソイド]]系の[[ハプログループR (Y染色体)|ハプログループR]]と並んで現代人類において最も帰属人口の多い系統である。その人口の多さから、多岐に渡るサブグループを生み出している。日本においても[[ハプログループO1b2 (Y染色体)|O1b2]]が30%以上、[[ハプログループO2 (Y染色体)|O2]]が20%以上見られ、親系統別で見るとやはりO系統が最多である。<br />[[ハプログループO-M95 (Y染色体)|O1b1系統]]は中国南部や東南アジアで多い。<br />[[ハプログループO1b2 (Y染色体)|O1b2系統]]は日本本州の他、[[朝鮮半島]]や[[満州民族]]、中国北部などの[[北東アジア]]で比較的多い。<br />[[ハプログループO2 (Y染色体)|O2系統]]は[[漢民族]]で50%以上、[[朝鮮民族]]や[[ベトナム人]]で40%以上と東アジアで最多のサブグループである。

2021年6月28日 (月) 21:41時点における版

典型的な新モンゴロイドであるネネツの子供

新モンゴロイド(しんモンゴロイド、: neo-Mongoloid)とは、W・W・ハウエルズによるモンゴロイド分類日本では埴原和郎尾本恵市らが用いている[1]
モンゴロイドを形質的特徴を中心とする遺伝的特性から、「新」・「旧」という、定かではない単語を用いて分別した表現方法である。進化の程度が「新」・「古」という意味ではなく、寒冷地適応を経ているか否かの違いを表したというのが、世間に出回っている現段階における分類である。

新モンゴロイドはシベリアという極寒な気候・環境に適応した結果として形成された人種であるとの考えが有力である。

分布

新モンゴロイドは、主に現在のシベリアモンゴル中国朝鮮半島カザフスタンキルギスアラスカカナダグリーンランドに多く居住するとされる。

日本には、紀元前83世紀にかけての縄文時代終期から、弥生時代以降に渡来人として断続的に渡来し、日本列島在来の北方系古モンゴロイド縄文人・アイノイド)と混血して現在の大和民族倭人和人)が形成された。

特徴

新モンゴロイドの特徴の一つは切れ長の一重まぶたである。これは水分の多い眼球を極低温から保護するため厚い皮下脂肪に覆われているからである。またそれに伴い目頭に蒙古襞が見られる。体温低下と凍傷を防ぐために鼻や顎などの突出部分が小さい。これにより減った鼻腔容量を補うために頬骨が張り出し、結果として扁平な顔立ちとなる。氷着を防ぐため体毛は少なく頭髪が直毛である。体型はずんぐりとした丸型で四肢が短く胴が長い。頭形は前後に短く横に広い短頭が一般的である(民族によっては頭長幅指数90を超える超短頭の者も多い)。これらも球に近い形状は体積比で表面積が最も小さくなるからであり、極低温下での体熱放散を少なくするために有利だからである。このように新モンゴロイドの形質的特徴は主に寒冷地適応により説明される。同じ高緯度地域に住むコーカソイドが新モンゴロイドほどの寒冷地適応を経ていない理由は、偏西風と北大西洋海流によりヨーロッパ地域がシベリアほどの極低温にならなかったためであると考えられている。

新生児に蒙古斑が見られるのも特徴である。

特に北部モンゴロイド、旧アジア人種エスキモー人種に典型的な新モンゴロイドの特徴がみられ、中部モンゴロイドと南部モンゴロイドは古モンゴロイドとの混合特徴がみられる。

遺伝子

新モンゴロイド系民族で高頻度で観察されるY染色体ハプログループは、ハプログループC2NOQである。

Y染色体で見ると、古モンゴロイドとされる縄文人アイヌにて最多を占めるハプログループD1a2a系統と、新モンゴロイドとされる現代日本人漢民族チベット民族および朝鮮民族にて最多を占めるハプログループO系統テュルク系モンゴル系ツングース系にて最多を占めるハプログループC2系統では分岐から7万年以上もの時を経ている。

古モンゴロイドを特徴付けるハプログループD1a2a系統の祖先であるハプログループDEは、全ユーラシア人の共通祖先であるハプログループCTから早期に分岐したため、E系統以外のユーラシア系とは7万年以上の時間を経ている。E系統とも7万年程前、最も近縁であるD1a2b系統とも5万年以上前に分岐しており、非常に独立的であると言える。

その一方、新モンゴロイドの主要系統であるハプログループO系統は、コーカソイド系で最多を占めるハプログループR系統とは約4万年ほど前に分岐したため、これに従うと新モンゴロイドは古モンゴロイドよりコーカソイドに近いということになる。しかし、人種を反映する形態形質は、父系のY染色体ハプログループのみでなく、母系のミトコンドリアDNAハプログループとも相関性があること、さらに多くのY染色体ハプログループの系統が同一集団として同じ人種を形成した(遺伝子の系統と集団の系統が一致しない不完全遺伝子系統仕分けによる)ため、形質とY染色体ハプログループの系統は必ずしも一致しない。

最近の研究から、東アジア人(モンゴロイド)を特徴付ける遺伝子があることがわかった[4][5]

区分

その他

出典

  1. ^ 下中直人編 『世界大百科事典 21』 平凡社、447-448頁。
  2. ^ a b Tambets, Kristiina et al. 2004, The Western and Eastern Roots of the Saami?the Story of Genetic “Outliers” Told by Mitochondrial DNA and Y Chromosomes
  3. ^ Tambets et al 2004
  4. ^ Yuan, Dejian; Lei, Xiaoyun; Gui, Yuanyuan; Wang, Mingrui; Zhang, Ye; Zhu, Zuobin; Wang, Dapeng; Yu, Jun et al. (2019-06-09). “Modern human origins: multiregional evolution of autosomes and East Asia origin of Y and mtDNA” (英語). bioRxiv: 101410. doi:10.1101/101410. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/101410v6. 
  5. ^ Chen, Hongyao; Zhang, Ye; Huang, Shi (2020-03-11). “Ancient Y chromosomes confirm origin of modern human paternal lineages in Asia rather than Africa” (英語). bioRxiv: 2020.03.10.986042. doi:10.1101/2020.03.10.986042. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.03.10.986042v1. 

関連項目